特許第6187233号(P6187233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6187233セメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187233
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】セメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/243 20060101AFI20170821BHJP
   C04B 14/30 20060101ALI20170821BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20170821BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C22B1/243
   C04B14/30
   C04B28/02
   C04B40/02
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-260580(P2013-260580)
(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公開番号】特開2015-117398(P2015-117398A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100140121
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 朝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】大塚 一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
(72)【発明者】
【氏名】上田 晴久
(72)【発明者】
【氏名】堤 武司
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−034013(JP,A)
【文献】 特開昭51−062102(JP,A)
【文献】 特開昭55−042235(JP,A)
【文献】 特開2005−225069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00〜61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉鉱石を、セメントを用いて塊成化したセメントボンド塊成鉱の養生方法であって、
(i)セメントを用いて塊成化した直後の前記塊成鉱を、下面に開孔を有する搬送・養生用台車に、俯仰自由で、該台車の長手方向に移動可能な積付け機によって静置し、自然通風にて、2時間以上、前養生し、その後、
(ii)オートクレーブで、150℃以上の飽和蒸気にて、2時間以上、本養生を行なう、
ことを特徴とするセメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生方法。
【請求項2】
前記前養生を4時間以上行うことを特徴とする請求項1に記載のセメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生方法。
【請求項3】
前記本養生を4時間以上行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載のセメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生方法。
【請求項4】
前記飽和蒸気として、170℃以上の飽和蒸気を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉鉱石を、セメントを用いて塊成化する際、塊成鉱の早期の強度発現と水分量の低減を図る養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、微粉鉱石を焼成や焼結によって塊成化する方法が知られている。一方、セメントを用いて微粉鉱石を塊成化する方法が提案されている(例えば、非特許文献1、参照)。
【0003】
セメントを用いて微粉鉱石を塊成化する方法は、焼成や焼結によって塊成化する方法に比べて、省エネルギーに優れ、排ガス問題がないため環境上好ましい方法である。しかし、造粒直後の造粒物は強度が弱く、ハンドリング可能な強度(圧潰強度で3N/mm2以上)まで1次養生を行ない、その後、2次養生を行なう方法が一般的に取られている(例えば、特許文献1及び2、参照)。
【0004】
そのため、造粒設備に隣接して1次養生ヤードを設ける必要があるが、1次養生ヤードのスペース制約のため、処理量が制限される。そのため、1次養生時間を短縮することが望まれている。
【0005】
また、1次養生が完了するまでに造粒物が雨に濡れると、造粒物中のセメント成分が雨で流れ出して造粒物が崩壊してしまうので、屋根付きのヤードを構築する必要があり、設備費が高くなる。そのためにも、1次養生時間を短縮する必要がある。
【0006】
また、1次養生後、造粒物同士がセメントの作用により大塊化し、これを破砕する時、発塵等の問題もある。それ故、1次養生、2次養生によらないセメントボンド塊成鉱の強度発現方法の開発が望まれていた。
【0007】
さらに、ヤードでの養生では、時間をかければ、強度は発現するものの、塊成鉱の水分は低減できず、高炉へ持ち込まれる。高炉への水分入量の観点から、塊成鉱の使用量が制約されていた。
【0008】
このため、従来の1次養生、2次養生によらないセメントボンド塊成鉱の強度発現方法、さらには、塊成鉱の低水分化を可能にする養生方法の開発が望まれていた。
【0009】
図1に、従来の1次ヤード・2次ヤードによる養生方法を示す。微粉鉱石ホッパー1、副原料ホッパー2、セメントホッパー3より、それぞれ所定割合で切出した原料に混練用添加水4aを加えながら、混練・解砕機5で混練・解砕を行ない、次いで、造粒用添加水4bを加えながら皿型造粒機6aで造粒する。
【0010】
造粒物は、篩7でアンダーサイズ、オーバーサイズを除去した後、落下衝撃を極力与えないように設計された積付け機9にて、1次養生ヤード8で3日間1次養生し、その後、2次ヤード10で10日間2次養生を行ない、高炉での必要強度(圧潰強度で6N/mm2)まで強度を発現させて、高炉で使用する。
【0011】
一方、オートクレーブ処理は、コンクリートの養生、スラグのエージング処理に使われている技術であるが(例えば、特許文献3及び特許文献4、参照)、セメントを結合材としたコールドペレットについては、そのプロセス条件、ハンドリング方法等に不明な点が多く、これまで、報告例は殆どない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭51−025402号公報
【特許文献2】特開2005−200719号公報
【特許文献3】特開昭47−008602号公報
【特許文献4】特開2012−041234号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】高橋愛和,高橋礼二郎:鉄と鋼,70(1984),p37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来技術の現状に鑑み、微粉鉱石を、セメントを用いて塊成化する方法において、塊成鉱(以下「セメントボンド塊成鉱」という。)の早期の強度発現を実現するとともに、処理後のセメントボンド塊成鉱の水分を低減することを課題とし、該課題を解決するオートクレーブ養生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。その結果、次の知見を得るに至った。
【0016】
セメントボンド塊成鉱を、俯仰自由で台車の長手方向に移動可能な積付け機で、下面に開孔を有する搬送・養生用台車上に静置して、自然通風で、2時間以上、前養生を行い、その後、150℃以上の飽和蒸気で、2時間以上、オートクレーブ養生を行なえば、セメントボンド塊成鉱の早期の強度発現を実現できるとともに、処理後のセメントボンド塊成鉱の水分を低減することができる。
【0017】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
【0018】
(1)微粉鉱石を、セメントを用いて塊成化したセメントボンド塊成鉱の養生方法であって、
(i)セメントを用いて塊成化した直後の前記塊成鉱を、下面に開孔を有する搬送・養生用台車に、俯仰自由で、該台車の長手方向に移動可能な積付け機によって静置し、自然通風にて、2時間以上、前養生し、その後、
(ii)オートクレーブで、150℃以上の飽和蒸気にて、2時間以上、本養生を行なう、
ことを特徴とするセメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生方法。
【0019】
(2)前記前養生を4時間以上行うことを特徴とする前記(1)に記載のセメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生方法。
【0020】
(3)前記本養生を4時間以上行なうことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のセメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生方法。
【0021】
(4)前記飽和蒸気として、170℃以上の飽和蒸気を用いることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のセメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、強度が高く、かつ、水分量が低減したセメントボンド塊成鉱を、短時間で歩留り良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来のセメントボンド塊成鉱の製造方法を示す図である。
図2】セメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生の実施形態の一例を示す図である。
図3】積付け場での搬送・養生用台車へのセメントボンド塊成鉱の積付けのための積付け機の一態様を示す図である。
図4】セメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生の実施形態の別の一例を示す図である。
図5】セメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生の実施形態の別の一例を示す図である。
図6】搬送・養生用台車毎の積付けから前養生、オートクレーブ養生(本養生)、払出し待機までの一連のタイムチャートを示す図である。
図7】プロセス条件を決定するために、前養生時間と本養生時間を変えて、150℃の飽和蒸気でオートクレーブ養生(本養生)を行った時の塊成鉱(造粒物)の形状変化を示す図である。
図8】プロセス条件を決定するために、前養生時間と本養生時間を変えて、170℃の飽和蒸気でオートクレーブ養生(本養生)を行った時の塊成鉱(造粒物)の形状変化を示す図である。
図9】オートクレーブ養生を行った時の本養生温度と養生後の塊成鉱の圧潰強度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のセメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生方法(以下「本発明養生方法」ということがある。)は、微粉鉱石を、セメントを用いて塊成化したセメントボンド塊成鉱の養生方法であって、
(i)セメントを用いて塊成化した直後の前記塊成鉱を、下面に開孔を有する搬送・養生用台車に、俯仰自由で、該台車の長手方向に移動可能な積付け機によって静置し、自然通風にて、2時間以上、前養生し、その後、
(ii)オートクレーブで、150℃以上の飽和蒸気にて、2時間以上、本養生を行なう、
ことを特徴とする。
【0026】
以下、本発明養生方法について図面に基づいて説明する。
【0027】
図2に、セメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生の実施形態の一例を示す。微粉鉱石ホッパー1、副原料ホッパー2、セメントホッパー3より、それぞれ所定割合で切出した原料に混練用添加水4aを加えながら、混練・解砕機5で混練・解砕を行ない、次いで、造粒用添加水4bを加えながら皿型造粒機6aで造粒する。造粒物(塊成鉱)は、篩7でアンダーサイズ、オーバーサイズを除去する。
【0028】
造粒物(塊成鉱)のアンダーサイズ、オーバーサイズを除去するまでの工程は、従来工程と同じである。造粒物(塊成鉱)のアンダーサイズ、オーバーサイズを除去した後、積付け場12にて、落下衝撃を極力与えないように設計された積付け機15で、下面に開孔を有する搬送・養生用台車11上のバケット16内に静置する。
【0029】
静置後、搬送・養生用台車11を前養生場13に移動させ、自然通風で、2時間以上、塊成鉱の前養生を行う。その後、バケット16をオートクレーブ装置14に入れて、150℃以上の飽和蒸気で、2時間以上、オートクレーブ養生(本養生)を行なう。
【0030】
自然通風による前養生は、4時間以上行うことが好ましく、オートクレーブ養生(本養生)は、4時間以上行うことが好ましい。また、飽和蒸気は、170℃以上の飽和蒸気を用いるのが好ましい。170℃以上の飽和蒸気を用い、4時間以上、オートクレーブ養生(本養生)を行うことがより好ましい。
【0031】
本発明養生方法におけるオートクレーブ養生は、台車を使ったスラグのエージング処理装置(特許文献4、参照)を参考にして実機化したが、実機化は、落下衝撃を極力与えないように設計した積付け機で、下面に開孔を有する搬送・養生用台車上のバケット内に静置することができたことで、実現することができた。
【0032】
塊成化直後の塊成鉱は、スラグと異なり、衝撃や落下に弱く、スラグのようにショベルカーでハンドリングすることができない。落下等により塊成鉱の鉱粉が増加すると、前養生時の通気性の悪化、オートクレーブ養生時の飽和蒸気の塊成鉱内への浸透不良等が起きる。
【0033】
これらの現象の発現を回避するため、図3に示す、俯仰自由で、下面に開孔を有する搬送・養生用台車の長手方向に移動可能(図中、矢印、参照)な積付け機を考案した。
【0034】
この積付け機15によって、篩分け後の塊成鉱を、落下距離を極力小さくして、下面に開孔を有する搬送・養生用台車11上のバケット16内に静置することができる。
【0035】
塊成鉱の積付け時、積付け機15と搬送・養生用台車11が干渉するのを防ぐため、周辺部へは造粒物の流れ込みを利用して装入する。図3中の実線は積付け初期の積付け状況を示し、二点鎖線は積付け後期の積付け状況を示している。
【0036】
図4に、セメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生の実施形態の別の一例を示す。図4に示す実施形態は、基本的に、図2に示す実施形態と同じであるが、造粒機としてブリケットマシン6bを使用した実施形態である。
【0037】
図5に、セメントボンド塊成鉱のオートクレーブ養生の実施形態のさらに別の一例を示す。造粒機として押出し成型機6cを使用した実施形態である。
【0038】
表1に、本発明養生方法で用いる設備の諸元を示す。表1に示す諸元は一例であり、本発明養生方法で用いる設備は、これに限定されるものではない。
【0039】
【表1】
【0040】
本発明養生方法を連続的に実施し、セメントボンド塊成鉱の養生作業を効率的に行うためには、複数の搬送・養生用台車を用意し、複数のオートクレーブ装置を設置する必要がある。
【0041】
図6に、搬送・養生用台車毎の積付けから前養生、オートクレーブ養生(本養生)、払出し、待機までの一連のタイムチャートを示す。図6に示すタイムチャートは、搬送・養生用台車10台とオートクレーブ装置4台を使用する場合のタイムチャートである。
【0042】
ここで、図7に、前養生時間と本養生時間を変えて、150℃の飽和蒸気でオートクレーブ養生(本養生)を行った時の塊成鉱(造粒物)の形状変化を示す。
【0043】
図7に示す結果は、ドライベースで微粉鉄鉱石90%、結合材のセメント5%、塩基度調整用の石灰石の微粉末5%を配合して造粒した造粒物を、150℃の飽和蒸気でオートクレーブ養生処理した時、前養生時間(30℃の温風を0.3m/secの風速で通風)と本養生時間を変えて実験を行なった時の養生後の造粒物(塊成鉱)の形状変化である。
【0044】
前養生時間2時間以上、本養生時間2時間以上で、塊成鉱の形状が良好であることが解る。
【0045】
図8に、前養生時間と本養生時間を変えて、170℃の飽和蒸気でオートクレーブ養生(本養生)を行った時の塊成鉱(造粒物)の形状変化を示す。
【0046】
図8に示す結果は、ドライベースで微粉鉄鉱石90%、結合材のセメント5%、塩基度調整用の石灰石の微粉末5%を配合して造粒した造粒物(塊成鉱)を、170℃の飽和蒸気でオートクレーブ養生した時、前養生時間(30℃の温風を0.3m/secの風速で通風)と本養生時間を変えて実験を行なった時の養生後の造粒物(塊成鉱)の形状変化である。
【0047】
以上の結果から、前養生時間が不十分であると、造粒物(塊成鉱)の崩壊や一部剥離等の不具合を生じるが、2時間以上の前養生後、及び、2時間以上のオートクレーブ養生(本養生)で、養生後の形状が良好な塊成鉱を得ることができ、さらに、4時間以上の前養生と4時間以上の本養生を行えば、表面のヒビ割れもない極めて良好な形状の塊成鉱を得ることができることが解る。
【0048】
図9に、オートクレーブ養生を行った時の本養生温度と養生後の塊成鉱の圧潰強度の関係を示す。本養生温度が高い程、養生後の塊成鉱の圧潰強度は上昇する。本養生温度150℃以上で、高炉で必要な強度6N/mm2を以上を確保することができる。本養生時間が長いほど、養生後の塊成鉱の強度は上昇するが、養生時間が4時間以上になると、強度上昇が飽和傾向になることが解る。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0050】
〔実施例1〕
表2に、実機作製前に行ったオートクレーブ養生の結果の一例を示す。ドライベースで微粉鉄鉱石90%、結合材のセメント5%、塩基度調整用の石灰石の微粉末5%を配合して造粒した造粒物に、2時間以上の前養生、2時間以上の本養生を行えば、塊成鉱の形状は良好であり、さらに、4時間以上の前養生、4時間以上の本養生を行えば、表面のヒビもなく、極めて良好な形状の塊成鉱を得ることができた。
【0051】
130℃の飽和蒸気による養生では、高炉に必要な6N/mm2以上の圧潰強度は得られなかった。
【0052】
また、養生後は塊成鉱を自然放冷したが、塊成鉱は養生後の温度が高いために、蒸発が急激に起き、150℃以上の飽和蒸気による養生で、水分は2%以下となった。
【0053】
【表2】
【0054】
〔実施例2〕
図2に示す実施形態に従って本発明養生方法を実施した。原料の配合は、実施例1での条件と同じで、微粉鉄鉱石90%、結合材のセメント5%、塩基度調整用の石灰石の微粉末5%である。
【0055】
積付け場12から前養生場13に、搬送・養生用台車11を移動させ、4時間、自然通風による前養生を行なった。塊成鉱は、ボールミル5での解砕・混練作用による昇温と、セメントの水和熱による発熱で、冬場でも40℃の品温があり、自然通風による前養生条件を満足していた。オートクレーブ養生を行なっても、塊成鉱の崩壊、一部剥離はなかった。
【0056】
前養生の終わった搬送・養生用台車11をオートクレーブ装置14まで移動させ、バケットをオートクレーブに入れ、4時間、170℃の飽和蒸気で養生を行った。養生後の塊成鉱の圧潰強度は7N/mm2以上、水分2%以下で、高炉での使用に十分に応えられるものであった。
【0057】
なお、ウェットベースで50t/hrの造粒物を処理するのに、積載量32m3の台車で、積込み1時間、前置き4時間、オートクレーブ養生4時間、養生後の塊成鉱の払出し、待機に1時間の計10時間の時間を要した。
【0058】
〔実施例3〕
図4に示す実施形態(造粒にブリケットマシンを使用)に従って本発明養生方法を実施した。原料の配合は、実施例1での条件と同じで、微粉鉄鉱石90%、結合材のセメント5%、塩基度調整用の石灰石の微粉末5%である。前養生、オートクレーブ養生の条件は実施例2と同じである。養生後の塊成鉱の強度は8N/mm2以上、水分は1%以下で、高炉での使用に十分に応えられるものであった。
【0059】
〔実施例4〕
図5に示す実施形態(造粒に押出し成型機を使用)に従って本発明養生方法を実施した。原料の配合は、実施例1での条件と同じで、微粉鉄鉱石90%、結合材のセメント5%、塩基度調整用の石灰石の微粉末5%である。前養生、オートクレーブ養生の条件は実施例2と同じである。養生後の塊成鉱の強度は7.5N/mm2以上、水分は2%以下で、高炉での使用に十分に応えられるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
前述したように、本発明によれば、強度が高く、かつ、水分量が低減したセメントボンド塊成鉱を、短時間で歩留り良く得ることができる。それ故、本発明のセメントボンド塊成鉱は、高炉の水分入量の制約を受けず、高炉に大量に装入することが可能である。よって、本発明は、鉄鋼産業において利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0061】
1 微粉鉱石ホッパー
2 副原料ホッパー
3 セメントホッパー
4a 混練用添加水
4b 造粒用添加水
5 混練・解砕機(ボールミル)
6a 造粒機(パンペレタイザー)
6b 造粒機(ブリケットマシン)
6c 造粒機(押出し成型機)
7 篩
8 1次養生ヤード
9 積付け機
10 2次養生ヤード又は鉱石ヤード
11 搬送・養生用台車
12 積付け場
13 前養生場
14 オートクレーブ装置
15 積付け機
16 バケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9