【文献】
J.Biol.Chem., 1995, Vol. 270, No. 35, pp. 20717-20723
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号8、9及び10の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号12、13及び14の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含み、かつ、CAPRIN−1タンパク質と免疫学的反応性を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体又はそのフラグメント。
配列番号18、19及び20の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号22、23及び24の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含み、かつ、CAPRIN−1タンパク質と免疫学的反応性を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体又はそのフラグメント。
前記癌が乳癌、腎癌、膵臓癌、大腸癌、肺癌、脳腫瘍、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、白血病、リンパ腫、線維肉腫、肥満細胞腫又はメラノーマである、請求項8に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る抗体は、CAPRIN−1の所定の部分ポリペプチドを認識し結合する抗体であり、抗腫瘍活性を有する。本発明に係る抗体は、より具体的には、配列番号5で表されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、CAPRIN−1タンパク質の部分ポリペプチド(CAPRIN−1部分ポリペプチド)を認識する(すなわち、免疫学的反応性を有する)抗体である。本発明では、この抗体が、抗腫瘍活性を示すことを明らかにした。本発明は、上記のようなCAPRIN−1タンパク質の断片に結合し、かつ、抗腫瘍活性を示すすべての抗体に関する。
【0017】
本発明に係る上記のCAPRIN−1に対する抗体は、抗腫瘍活性を発揮しうる限りいかなる種類の抗体であってもよく、例えば、組換え抗体(例えば、合成抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体(scFv)など)、ヒト抗体、それらの抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)
2、Fvなど)を含む。これらの抗体及びそのフラグメントはまた、当業者に公知の方法により調製することが可能である。本発明に係る抗体は、CAPRIN−1タンパク質又はその部分ポリペプチドと免疫学的反応性を有する、すなわち、抗原−抗体反応を介してCAPRIN−1タンパク質と結合する、好ましくはCAPRIN−1タンパク質と特異的に結合することが望ましい。ここで、「CAPRIN−1タンパク質と特異的に結合する」とは、CAPRIN−1タンパク質に特異的に結合し、それ以外のタンパク質と実質的に結合しないことを意味する。本発明に係る抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましいが、均質な抗体を安定に生産できるかぎり、ポリクローナル抗体であってもよい。また、被験者がヒトである場合には、拒絶反応を回避又は抑制するためにヒト抗体又はヒト化抗体であることが望ましい。
【0018】
本発明に係るCAPRIN−1ポリペプチドに対する抗体の抗腫瘍活性は、後述するように、生体内で担癌動物に対する腫瘍増殖の抑制を調べることによって、あるいは、生体外で該ポリペプチドを発現する腫瘍細胞に対して、免疫細胞又は補体を介した細胞障害活性を示すか否かを調べることによって評価することができる。
【0019】
さらにまた、本発明における癌の治療及び/又は予防の対象である被験者は、ヒト、ペット動物、家畜類、競技用動物などの哺乳動物であり、好ましい被験者は、ヒトである。
【0020】
以下に、本発明についてより詳細に説明する。
【0021】
<抗体作製用抗原の作製>
本発明に係るCAPRIN−1に対する抗体を取得するための感作抗原として使用されるタンパク質又はその断片は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、マウス、ラット、ニワトリなど、その由来となる動物種に制限されない。しかし細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択することが好ましく、一般的には、哺乳動物由来のタンパク質が好ましく、特にヒト由来のタンパク質が好ましい。例えば、CAPRIN−1がヒトCAPRIN−1の場合、ヒトCAPRIN−1タンパク質やその部分ペプチド、ヒトCAPRIN−1を発現する細胞などを用いることができる。
【0022】
ヒトCAPRIN−1及びそのホモログの塩基配列及びアミノ酸配列は、例えばGenBank(米国NCBI)にアクセスし、BLAST、FASTAなどのアルゴリズム(Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:5873−5877,1993; Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389−3402, 1997)を利用することによって入手することができる。
【0023】
本発明では、ヒトCAPRIN−1の塩基配列(配列番号1又は3)又はアミノ酸配列(配列番号2又は4)を基準とした場合、これらのORF又は成熟部分の塩基配列又はアミノ酸配列と70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、さらに好ましくは95%〜100%、例えば97%〜100%、98%〜100%、99%〜100%又は99.5%〜100%の配列同一性を有する配列からなる核酸又はタンパク質がターゲットのCAPRIN−1になる((注)配列番号2と配列番号4のアミノ酸配列を比較すると、690位以降のアミノ酸残基が相違する。)。ここで、「%配列同一性」は、2つの配列を、ギャップを導入してか又はギャップを導入しないで、最大の類似度(又は一致度)となるようにアラインメント(整列)したとき、アミノ酸(又は塩基)の総数(ギャップの数を含む)に対する同一アミノ酸(又は塩基)のパーセンテージ(%)を意味する。
【0024】
CAPRIN−1タンパク質の断片としては、抗体が認識する最小単位であるエピトープ(抗原決定基)を含み、かつそのエピトープアミノ酸長〜該タンパク質の全長未満の長さを有するものを使用できる。エピトープは、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、抗原性又は免疫原性を有するポリペプチド断片を指し、その最小単位は、約7〜12アミノ酸、例えば8〜11アミノ酸、からなる。本発明に係る抗体の作製に用いるCAPRIN−1タンパク質の断片は、本発明の抗体が認識する、配列番号5で表されるアミノ酸配列(配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列中の513位〜528位の配列に相当する。)又は該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらのアミノ酸配列中の、連続する約7〜12アミノ酸、例えば連続する8〜11アミノ酸、からなるエピトープを少なくとも含む断片であることが好ましい。
【0025】
上記した、ヒトCAPRIN−1タンパク質やその部分ペプチドを含むポリペプチド断片は、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t―ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って合成することができる(日本生化学会編、生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、化学修飾とペプチド合成、東京化学同人(日本)、1981年)。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して常法により合成することもできる。
【0026】
また、公知の遺伝子工学的手法(Sambrookら, Molecular Cloning, 第2版, Current Protocols in Molecular Biology (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、Ausubelら, Short Protocols in Molecular Biology, 第3版, A compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology (1995), John Wiley & Sonsなど)を用いて、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを調製し、該ポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込んで宿主細胞に導入し、該宿主細胞中でポリペプチドを生産させることにより、目的とするヒトCAPRIN−1タンパク質やそのポリペプチド断片を得ることもできる。
【0027】
上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、公知の遺伝子工学的手法や市販の核酸合成機を用いた常法により、容易に調製することができる。例えば、ヒトCAPRIN−1遺伝子の塩基配列を含むDNAは、ヒト染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、該塩基配列を増幅できるように設計した一対のプライマーを用いてPCRを行うことにより調製することができる。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、耐熱性DNAポリメラーゼ(例えばTaqポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼなど)及びMg
2+含有PCRバッファーを用いて、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応行程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができるが、これに限定されない。PCRの手法、条件等については、例えばAusubelら, Short Protocols in Molecular Biology, 第3版, A compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology (1995), John Wiley & Sons(特に第15章)に記載されている。
【0028】
また、CAPRIN−1遺伝子の塩基配列及びCAPRIN−1タンパク質のアミノ酸配列情報に基づいて、適当なプローブやプライマーを調製し、それを用いてヒトなどのcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、所望のDNAを単離することができる。cDNAライブラリーは、CAPRIN−1のタンパク質を発現している細胞、器官又は組織から作製することが好ましい。そのような細胞や組織の例は、精巣、白血病、乳癌、リンパ腫、脳腫瘍、肺癌、膵臓癌、大腸癌などの癌又は腫瘍に由来する細胞又は組織である。上記したプローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、Sambrookら, Molecular Cloning, 第2版, Current Protocols in Molecular Biology (1989)、Ausbelら(上記)等に記載された方法に準じて行うことができる。このようにして得られたDNAから、ヒトCAPRIN−1タンパク質やその部分ペプチドをコードするDNAを得ることができる。
【0029】
発現ベクターを導入する上記宿主細胞としては、上記ポリペプチドを発現可能な細胞であればいかなるものであってもよく、原核細胞の例としては大腸菌など、真核細胞の例としてはサル腎臓細胞COS1、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO等の哺乳動物細胞、ヒト胎児腎臓細胞株HEK293、マウス胎仔皮膚細胞株NIH3T3、出芽酵母、分裂酵母等の酵母細胞、カイコ細胞、アフリカツメガエル卵細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
宿主細胞として原核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、原核細胞中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、マルチクローニングサイト、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性相補遺伝子、等を有する発現ベクターを用いる。大腸菌用発現ベクターとしては、pUC系、pBluescriptII、pET発現システム、pGEX発現システムなどが例示できる。上記ポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで原核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを原核宿主細胞中で発現させることができる。この際、該ポリペプチドを、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることもできる。
【0031】
宿主細胞として真核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターを用いる。そのような発現ベクターとしては、pKA1、pCDM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK−CMV、pBK−RSV、EBVベクター、pRS、pcDNA3、pYES2等が例示できる。上記と同様に、上記ポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで真核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを真核宿主細胞中で発現させることができる。発現ベクターとしてpIND/V5−His、pFLAG−CMV−2、pEGFP−N1、pEGFP−C1等を用いた場合には、Hisタグ(例えば(His)
6〜(His)
10)、FLAGタグ、mycタグ、HAタグ、GFPなど各種タグを付加した融合タンパク質として、上記ポリペプチドを発現させることができる。
【0032】
発現ベクターの宿主細胞への導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション、ウイルス感染、リポフェクション、細胞膜透過性ペプチドとの結合、等の周知の方法を用いることができる。
【0033】
宿主細胞から目的のポリペプチドを単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。例えば尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒分別沈殿法、透析、遠心分離、限外ろ過、ゲルろ過、SDS−PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明に係る抗体を作製するため、以上のようにして作製した抗原を後述の通り感作抗原として用いることができる。
【0035】
<抗体の構造>
抗体(免疫グロブリン)は通常少なくとも2本の重鎖及び2本の軽鎖を含むヘテロ多量体糖タンパク質である。IgMは別として、免疫グロブリンは、2本の同一の軽(L)鎖及び2本の同一の重(H)鎖で構成される約150kDaのヘテロ四量体糖タンパク質である。典型的には、それぞれの軽鎖は1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結されているが、種々の免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間のジスルフィド結合の数は変動する。それぞれの重鎖及び軽鎖はまた鎖内ジスルフィド結合も有する。それぞれの重鎖は一方の端に可変ドメイン(VH領域)を有し、それにいくつかの定常領域が続く。それぞれ軽鎖は可変ドメイン(VL領域)を有し、その反対の端に1つの定常領域を有する。軽鎖の定常領域は重鎖の最初の定常領域と整列しており、かつ軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。抗体の可変ドメインは特定の領域が相補性決定領域(CDR)と呼ばれる特定の可変性を示して抗体に結合特異性を付与する。可変領域の相対的に保存されている部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれている。完全な重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ3つのCDRにより連結された4つのFRを含む。3つのCDRは重鎖ではそのN末から順にCDRH1,CDRH2,CDRH3、同様に軽鎖ではCDRL1,CDRL2,CDRL3と呼ばれている。抗体の抗原への結合特異性には、CDRH3が最も重要である。また、各鎖のCDRはFR領域によって近接した状態で一緒に保持され、他方の鎖からのCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。定常領域は抗体が抗原に結合することに直接寄与しないが、種々のエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞性細胞障害活性(ADCC)への関与、Fcγ受容体への結合を介した食作用、新生児Fc受容体(FcRn)を介した半減期/クリアランス速度、補体カスケードのC1q構成要素を介した補体依存性細胞障害(CDC)を示す。
【0036】
<抗体の作製>
本発明における抗CAPRIN−1抗体とは、CAPRIN−1タンパク質の全長又はその断片と免疫学的反応性を有する抗体を意味する。特に本発明の抗CAPRIN−1抗体は、CAPRIN−1タンパク質の部分ポリペプチド(CAPRIN−1部分ポリペプチド)でありエピトープを含む配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、又は該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドと免疫学的に結合する抗体である。本発明の抗体は、好適には、配列番号5で表されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列中の、連続する約7〜12アミノ酸、例えば連続する8〜11アミノ酸、からなるエピトープを認識する。本発明のこの抗CAPRIN−1抗体は、全長CAPRIN−1タンパク質と特異的に結合することができる。本発明の抗体は、CAPRIN−1タンパク質又はその断片を抗原として得られた抗体の中から、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドと免疫学的に結合する抗体を常法により選択することによって取得することができる。
【0037】
ここで、「免疫学的反応性」とは、生体内で抗体とCAPRIN−1抗原(CAPRIN−1タンパク質の全長又はその部分ポリペプチド)とが結合する特性を意味する。本発明の抗体のCAPRIN−1へのこのような結合を介して腫瘍細胞を障害(例えば、死滅、抑制又は退縮)する機能が発揮される。本発明の抗体は、CAPRIN−1タンパク質と結合して腫瘍、例えば乳癌、腎癌、膵臓癌、大腸癌(例えば結腸癌)、肺癌、脳腫瘍、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、白血病、リンパ腫、線維肉腫、肥満細胞腫又はメラノーマなどを障害することができる。
【0038】
本発明の抗体は、任意の種類(タイプ)の抗体であってよい。本発明の抗体の種類の例としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、抗体フラグメント(例えばFab、F(ab’)
2、Fv)などを含む。また、抗体は、免疫グロブリン分子の任意のクラス、例えばIgG,IgE,IgM,IgA,IgD及びIgY、又は任意のサブクラス、例えばIgG1,IgG2,IgG3,IgG4,IgA1,IgA2などである。
【0039】
抗体はさらに、グリコシル化の他に、アセチル化、ホルミル化、アミド化、リン酸化、又はペグ(PEG)化などによって修飾されていてもよい。
【0041】
抗体が、モノクローナル抗体であるときには、例えば、CAPRIN−1を発現する乳癌細胞株SK−BR−3などをマウスに投与して免疫し、同マウスより脾臓を抽出し、細胞を分離の上、該細胞とマウスミエローマ細胞とを融合させ、得られた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、癌細胞増殖抑制作用を持つ抗体を産生するクローンを選択する。あるいは配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は該アミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合する抗体を産生するクローンを選択してもよい。癌細胞増殖抑制作用を持つモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ又は配列番号5等のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを単離し、当該ハイブリドーマを培養し、培養上清から一般的なアフィニティ精製法により抗体を精製することで、本発明の抗体を調製することが可能である。
【0042】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、例えば以下のようにしても作製することができる。まず、公知の方法にしたがって、感作抗原を動物に免疫する。一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
【0043】
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付すが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
【0044】
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞としては、公知の種々の細胞株、例えば、P3U1(P3−X63Ag8U1)、P3(P3x63Ag8.653)(J. Immunol. (1979)123, 1548−1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology (1978)81, 1−7)、NS−1(Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol. (1976)6, 511−519)、MPC−11(Margulies. D.H. et al., Cell (1976)8, 405−415)、SP2/0(Shulman, M. et al., Nature (1978)276, 269−270)、FO(deSt. Groth, S.F. et al., J. Immunol. Methods (1980)35, 1−21)、S194(Trowbridge, I.S. J.Exp.Med. (1978)148, 313−323)、R210(Galfre, G. et al., Nature (1979)277, 131−133)等が好適に使用される。
【0045】
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler, G. and Milstein, C. Methods Enzymol. (1981)73, 3−46)等に準じて行うことができる。
【0046】
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0047】
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
【0048】
細胞融合では、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000〜6000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とするハイブリドーマを形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去することが好ましい。
【0049】
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニング及び単一クローニングを行う。
【0050】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球、例えばEBウイルスに感染したヒトリンパ球をin vitroでタンパク質、タンパク質発現細胞又はその溶解物で感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞、例えばU266(登録番号TIB196)と融合させ、所望の活性(例えば、細胞増殖抑制活性)を有するヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることもできる。
【0051】
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
【0052】
すなわち、所望の抗原や所望の抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をスクリーニングすることによって作製できる。
【0053】
本発明で使用可能な抗体の別の例がポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は、例えば、次のようにして得ることができる。
【0054】
天然のCAPRIN−1タンパク質、あるいはGSTなどとの融合タンパク質として大腸菌等の微生物において発現させた組換えCAPRIN−1タンパク質、又はその部分ペプチドをマウス、ヒト抗体産生マウス、ウサギ等の小動物に免疫し血清を得る。あるいは、CAPRIN−1の断片である、配列番号5で表されるアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド(好ましくは当該アミノ酸配列からなるポリペプチド)、又は、配列番号5で表されるアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列中の連続する約7〜12アミノ酸、例えば連続する8〜11アミノ酸からなるエピトープを含む(好ましくは当該エピトープからなる)ポリペプチドを、感作抗原として、哺乳動物に免疫し、血清を得ることもできる。これらの血清を、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、CAPRIN−1タンパク質や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することにより、抗CAPRIN−1ポリクローナル抗体を調製することができる。本発明のポリクローナル抗体には、ヒト抗体産生動物(例えば、マウス)にCAPRIN−1タンパク質を免疫して得られる抗体が含まれる。
【0055】
ここで、ヒト抗体産生マウスとしては、例えばKMマウス(キリンファーマ/Medarex)及びXenoマウス(Amgen)が知られている(例えば、国際公開第WO02/43478号、同第WO02/092812号など)。このようなマウスをCAPRIN−1タンパク質又はその断片で免疫するときには、完全ヒトポリクローナル抗体を血液から得ることができる。また、免疫後のマウスから脾臓細胞を取出し、ミエローマ細胞との融合法によりヒト型モノクローナル抗体を作製することができる。
【0056】
抗原の調製は、例えば、動物細胞を用いた方法(特表2007−530068)やバキュロウイルスを用いた方法(例えば、国際公開第WO98/46777号など)などに準じて行うことができる。抗原の免疫原性が低い場合には、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、免疫を行えばよい。抗原はアジュバントとともに投与して免疫してもよい。
【0057】
本発明の抗体は、さらにまた、その抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた遺伝子組換え型抗体としても得ることができる(例えば、Carl, A.K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。具体的には、ハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域(V領域)のcDNAを合成する。目的とする抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。又は、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
【0058】
本発明の抗CAPRIN−1抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。しかし、ポリクローナル抗体、遺伝子改変抗体(キメラ抗体、ヒト化抗体など)などであってもよい。
【0059】
モノクローナル抗体には、ヒトモノクローナル抗体、非ヒト動物モノクローナル抗体(例えばマウスモノクローナル抗体、ラットモノクローナル抗体、ウサギモノクローナル抗体、ニワトリモノクローナル抗体など)、キメラモノクローナル抗体などが含まれる。モノクローナル抗体は、CAPRIN−1タンパク質又はその断片で免疫した非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ヒト抗体産生マウス、ニワトリ、ウサギなど)からの脾細胞とミエローマ細胞との融合によって得られたハイブリドーマを培養することによって作製されうる。キメラ抗体は、異なる動物由来の配列を組み合わせて作製される抗体であり、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体などである。キメラ抗体の作製は公知の方法を用いて行うことができ、例えば、抗体V領域をコードするDNAとヒト抗体C領域をコードするDNAとを連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。
【0060】
なお、後述の実施例に記載の方法により、抗腫瘍効果を有する、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるCAPRIN−1部分ポリペプチドと免疫学的反応性を有するモノクローナル抗体が作製される。
【0061】
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称される改変抗体である。ヒト化抗体は、免疫動物由来の抗体のCDRを、ヒト抗体の相補性決定領域へ移植することによって構築される。その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。
【0062】
具体的には、例えばマウス抗体、ウサギ抗体やニワトリ抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region; FR)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAを、ヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開第EP239400号、国際公開第WO96/02576号参照)。CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato K. et al., Cancer Research 1993, 53: 851−856)。また、FRは、異なるクラス又はサブクラスの様々なヒト抗体由来のフレームワーク領域と置換されていてもよい(国際公開第WO99/51743号参照)。
【0063】
CDRを介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato K. et al., Cancer Research 1993, 53: 851−856)。
【0064】
キメラ抗体やヒト化抗体を作製した後に、可変領域(例えば、FR)や定常領域中のアミノ酸を他のアミノ酸で置換等してもよい。
【0065】
アミノ酸の置換は、例えば15未満、10未満、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下のアミノ酸、好ましくは1〜5アミノ酸、より好ましくは1又は2アミノ酸、の置換であり、置換抗体は、未置換抗体と機能的に同等であるべきである。置換は、保存的アミノ酸置換が望ましく、これは、電荷、側鎖、極性、芳香族性などの性質の類似するアミノ酸間の置換である。性質の類似したアミノ酸は、例えば、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン)、無極性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン)、分枝鎖アミノ酸(ロイシン、バリン、イソロイシン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン)などに分類しうる。
【0066】
抗体修飾物としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を挙げることができる。本発明の抗体修飾物においては、結合される物質は限定されない。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。
【0067】
ここで「機能的に同等」とは、対象となる抗体が本発明の抗体と同様の生物学的あるいは生化学的活性、具体的には腫瘍を障害する機能、を有すること、ヒトへの適用時に拒絶反応を本質的に起こさないことなどを指す。このような活性としては、例えば、細胞増殖抑制活性、あるいは結合活性を例示することができる。
【0068】
あるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製するための、当業者によく知られた方法としては、ポリペプチドに変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto−Gotoh, T. et al., (1995) Gene 152, 271−275、Zoller, MJ., and Smith, M. (1983) Methods Enzymol. 100, 468−500、Kramer, W. et al., (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441−9456、Kramer, W. and Fritz, HJ., (1987) Methods Enzymol. 154, 350−367、Kunkel, TA., (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82, 488−492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763−2766)などを用いて、本発明の抗体に適宜変異を導入することにより、該抗体と機能的に同等な抗体を調製することができる。
【0069】
上記CAPRIN−1タンパク質のエピトープ又はそれを含むCAPRIN−1断片ポリペプチドを認識する抗体は、当業者に公知の方法により得ることが可能である。例えば、上記で得られる癌細胞増殖抑制作用を有する抗CAPRIN−1抗体が認識するCAPRIN−1タンパク質のエピトープを通常の方法(例えば、エピトープマッピングや後述にあるエピトープの同定の方法など)により決定し、該エピトープに含まれるアミノ酸配列を有するポリペプチドを免疫原として抗体を作製する方法や、通常の方法で作製された抗体のエピトープを決定し、抗CAPRIN−1抗体とエピトープが同じ抗体を選択する方法などにより得ることができる。ここで、「エピトープ」は、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、抗原性又は免疫原性を有するポリペプチド断片を指し、その最小単位は、約7〜12アミノ酸、好ましくは8〜11アミノ酸からなる。
【0070】
本発明の抗体は、CAPRIN−1と免疫学的反応性を有する抗体、あるいは、CAPRIN−1を特異的に認識する抗体、あるいは、CAPRIN−1と特異的に結合する抗体であって、癌に対する細胞障害活性、又は腫瘍増殖抑制作用、を示す抗体である。該抗体は、それを投与する対象動物において拒絶反応がほとんど又はまったく回避されるような構造をもつ抗体であることが好ましい。そのような抗体としては、例えば対象動物がヒトである場合、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体(例えばヒト−マウスキメラ抗体)、単鎖抗体、二重特異性抗体などが挙げられる。これらの抗体は、重鎖及び軽鎖の可変領域がヒト抗体由来のものであるか、あるいは、重鎖及び軽鎖の可変領域が非ヒト動物抗体由来の相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)とヒト抗体由来のフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)からなるものであるか、あるいは、重鎖及び軽鎖の可変領域が非ヒト動物抗体由来のものであり、かつ、重鎖及び軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のものである組換え型抗体である。好ましい抗体は、前2つの抗体である。
【0071】
これらの組換え型抗体は、次のようにして作製することができる。ハイブリドーマなどの抗体産生細胞からヒトCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体、ラットモノクローナル抗体、ウサギモノクローナル抗体、ニワトリモノクローナル抗体など)をコードするDNAをクローニングし、これを鋳型にして該抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードするDNAをRT−PCR法等により作製し、例えば、Kabat EU numbering system(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5thEd. Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, Md. (1991))に基づいて軽鎖及び重鎖の、各可変領域の配列、又は各CDR1、CDR2、CDR3の配列、又は各FR1、FR2、FR3、FR4の配列を決定することができる。
【0072】
さらに、これらの各可変領域をコードするDNA又は各CDRをコードするDNAを、遺伝子組換え技術(Sambrookら,Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))又はDNA合成機を用いて作製する。ここで、上記ヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、ヒト抗体産生動物(例えば、マウス)にヒトCAPRIN−1を免疫したのち、該免疫動物から切除した脾細胞とミエローマ細胞とを融合させることによって作製することができる。これとは別に、必要に応じて、遺伝子組換え技術又はDNA合成機を用いてヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の可変領域及び定常領域をコードするDNAを作製する。
【0073】
ヒト化抗体の場合には、ヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の可変領域をコードするDNA中のCDRコーディング配列を、それらに対応する、ヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ニワトリなど)由来の抗体のCDRコーディング配列と置換したDNAを作製し、それによって得られたDNAをそれぞれ、ヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の定常領域をコードするDNAと連結することによって、ヒト化抗体をコードするDNAを作製することができる。
【0074】
キメラ抗体の場合には、ヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ニワトリなど)由来の抗体の軽鎖又は重鎖の可変領域をコードするDNAをそれぞれ、ヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の定常領域をコードするDNAと連結することによって、キメラ抗体をコードするDNAを作製することができる。
【0075】
単鎖抗体の場合には、この抗体は重鎖可変領域と軽鎖可変領域とをリンカーを介して直線状に連結された抗体であり、重鎖可変領域をコードするDNA、リンカーをコードするDNA、及び軽鎖可変領域をコードするDNAを結合することによって単鎖抗体をコードするDNAを作製することができる。ここで、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はいずれも、ヒト抗体由来のものであるか、あるいは、CDRのみヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ニワトリなど)由来の抗体のCDRによって置換されたヒト抗体由来のものである。また、リンカーは、12〜19アミノ酸からなり、例えば15アミノ酸の(G
4S)
3(G. -B. Kimら,Protein Engineering Design and Selection 2007, 20(9): 425−432)が挙げられる。
【0076】
二重特異性抗体(例えば、diabody)の場合には、この抗体は2つの異なるエピトープと特異的に結合可能な抗体であり、例えば重鎖可変領域AをコードするDNA、軽鎖可変領域BをコードするDNA、重鎖可変領域BをコードするDNA、及び軽鎖可変領域AをコードするDNAをこの順序で結合する(ただし、軽鎖可変領域BをコードするDNAと重鎖可変領域BをコードするDNAとは上記のようなリンカーをコードするDNAを介して結合される。)ことによって二重特異性抗体をコードするDNAを作製することができる。ここで、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はいずれも、ヒト抗体由来のものであるか、あるいは、CDRのみヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ニワトリなど)由来の抗体のCDRによって置換されたヒト抗体由来のものである。
【0077】
上記のようにして作製された組換えDNAを、1つ又は複数の適当なベクターに組み込み、これを宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞など)に導入し、(共)発現させることによって組換え型抗体を作製することができる(P.J. Delves., ANTIBODY PRODUCTION ESSENTIAL TECHNIQUES., 1997 WILEY、P. Shepherd and C. Dean., Monoclonal Antibodies., 2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS; J.W. Goding., Monoclonal Antibodies: principles and practice., 1993 ACADEMIC PRESS)。
【0078】
上記方法によって作製される本発明の抗体としては、例えば、以下の抗体(a)又は(b)が挙げられる。
【0079】
(a)配列番号8、9及び10の相補性決定領域を含む重鎖可変領域と配列番号12、13及び14の相補性決定領域を含む軽鎖可変領域とを含む抗体(例えば配列番号11の重鎖可変領域及び配列番号15の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0080】
(b)配列番号18、19及び20の相補性決定領域を含む重鎖可変領域と配列番号22、23及び24の相補性決定領域を含む軽鎖可変領域とを含む抗体(例えば配列番号21の重鎖可変領域及び配列番号25の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0081】
ここで、配列番号8、9及び10に示すアミノ酸配列は、それぞれ、重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3であり、また、配列番号12、13及び14に示すアミノ酸配列は、それぞれ、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3であり、配列番号18、19及び20に示すアミノ酸配列は、それぞれ、重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3であり、また、配列番号22、23及び24に示すアミノ酸配列は、それぞれ、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3である。
【0082】
また、本発明のヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体又は二重特異性抗体は、例えば以下の抗体(i)〜(iii)であり得る(抗体(a)で例示する)。
【0083】
(i)それぞれ配列番号8、9及び10のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2及びCDR3並びにヒト化抗体由来のフレームワーク領域を含む重鎖可変領域と、それぞれ配列番号12、13及び14のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2及びCDR3並びにヒト抗体由来のフレームワーク領域を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0084】
(ii)それぞれ配列番号8、9及び10のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2及びCDR3並びにヒト抗体由来のフレームワーク領域を含む重鎖可変領域とヒト抗体由来の重鎖定常領域とを含む重鎖と、それぞれ配列番号12、13及び14のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2及びCDR3並びにヒト抗体由来のフレームワーク領域を含む軽鎖可変領域とヒト抗体由来の軽鎖定常領域とを含む軽鎖と、を含んでなる抗体。
【0085】
(iii)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とヒト抗体由来の重鎖定常領域とを含む重鎖と、配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とヒト抗体由来の軽鎖定常領域とを含む軽鎖と、を含んでなる抗体。
【0086】
なお、ヒト抗体重鎖及び軽鎖の定常領域及び可変領域の配列は、例えばNCBI(米国:GenBank、UniGeneなど)から入手可能であり、例えばヒトIgG1重鎖定常領域については登録番号J00228、ヒトIgG2重鎖定常領域については登録番号J00230、ヒトIgG3重鎖定常領域については登録番号X03604、ヒトIgG4重鎖定常領域については登録番号K01316、ヒト軽鎖κ定常領域については登録番号V00557、X64135、X64133など、ヒト軽鎖λ定常領域については登録番号X64132、X64134などの配列を参照することができる。
【0087】
上記抗体は、好ましくは、細胞障害活性を有しており、これによって抗腫瘍効果を発揮することができる。
【0088】
また、上記抗体における重鎖及び軽鎖の可変領域やCDRの特定の配列は、単に例示を目的としたものであり、特定の配列に限定されないことは明らかである。ヒトCAPRIN−1に対する別のヒト抗体又は非ヒト動物抗体(例えばマウス抗体)を産生しうるハイブリドーマを作製し、ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を回収し、ヒトCAPRIN−1との免疫学的結合性及び細胞障害活性を指標として目的の抗体であるか否かを判定する。それによって目的のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを識別したのち、上記のとおり、該ハイブリドーマから目的の抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを作製し配列決定し、該DNAを別の抗体の作製のために利用する。
【0089】
さらに上記抗体は、CAPRIN−1を特異的に認識するという特異性を有する限り、各抗体の特にフレームワーク領域の配列及び/又は定常領域の配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加があってもよい。ここで数個とは、好ましくは2〜5個、より好ましくは2個又は3個を意味する。
【0090】
本発明の抗体の、CAPRIN−1タンパク質又はその断片に対する親和定数Ka(k
on/k
off)は、好ましくは、少なくとも10
7M
−1、少なくとも10
8M
−1、少なくとも5×10
8M
−1、少なくとも10
9M
−1、少なくとも5×10
9M
−1、少なくとも10
10M
−1、少なくとも5×10
10M
−1、少なくとも10
11M
−1、少なくとも5×10
11M
−1、少なくとも10
12M
−1、あるいは、少なくとも10
13M
−1である。
【0091】
本発明の抗体は、抗腫瘍剤とコンジュゲートすることができる。抗体と抗腫瘍剤との結合は、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、チオール基などと反応性の基(例えば、コハク酸イミジル基、ホルミル基、2−ピリジルジチオ基、マレイイミジル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基など)をもつスペーサーを介して行うことができる。
【0092】
抗腫瘍剤の例は、文献等で公知の下記の抗腫瘍剤、すなわち、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、チオテパ、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、ウレドーパ(uredopa)、アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethilenethiophosphoramide)、トリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)、ブラタシン、ブラタシノン、カンプトセシン、ブリオスタチン、カリスタチン(callystatin)、クリプトフィシン1、クリプトフィシン8、ドラスタチン、ズオカルマイシン、エレウテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチン(sarcodictyin)、スポンジスタチン、クロランブシル、クロロナファジン(chloRNAphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、カリケアマイシン(calicheamicin)、ダイネマイシン、クロドロネート、エスペラマイシン、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、デトルビシン(detorbicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、アドリアマイシン(adriamycin)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンC、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)、デノプテリン(denopterin)、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)、フルダラビン(fludarabine)、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6−アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、フロリン酸(frolinic acid)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン(amsacrine)、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン(bisantrene)、エダトラキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルシン(demecolcine)、ジアジコン(diaziquone)、エルフォルニチン (elfornithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium)、エポチロン(epothilone)、エトグルシド(etoglucid)、レンチナン、ロニダミン(lonidamine)、メイタンシン(maytansine)、アンサミトシン(ansamitocine)、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット(phenamet)、ピラルビシン、ロソキサントロン(losoxantrone)、ポドフィリン酸(podophyllinic acid)、2−エチルヒドラジド、プロカルバジン、ラゾキサン(razoxane)、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム(spirogermanium)、テニュアゾン酸(tenuazonic acid)、トリアジコン(triaziquone)、ロリジン(roridine)A、アングイジン(anguidine)、ウレタン、ビンデシン、ダカーバジン、マンノムスチン(mannomustine)、ミトブロニトール、ミトラクトール(mitolactol)、ピポブロマン(pipobroman)、ガシトシン(gacytosine)、ドキセタキセル、クロランブシル、ゲムシタビン(gemcitabine)、6−チオグアニン、メルカプトプリン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、エトポシド、イホスファミド、マイトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ノバントロン(novantrone)、テニポシド、エダトレキセート(edatrexate)、ダウノマイシン、アミノプテリン、キセローダ(xeloda)、イバンドロナート(ibandronate)、イリノテカン、トポイソメラーゼインヒビター、ジフルオロメチロールニチン(DMFO)、レチノイン酸、カペシタビン(capecitabine)、並びにそれらの薬学的に許容可能な塩又は誘導体を包含する。
【0093】
また、本発明の抗体と、抗腫瘍剤を併用投与することで、より高い治療効果を得ることができる。本手法は、CAPRIN−1が発現している癌患者に対して、外科的手術前後どちらにおいても適応できる。特に手術後に、従来抗腫瘍剤単独で処置されていたCAPRIN−1が発現している癌に対して、より高い癌再発防止や生存期間の延長が得られる。
【0094】
本発明の抗体との併用投与に用いられる抗腫瘍剤の例は、文献等で公知の下記の抗腫瘍剤、すなわち、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、チオテパ、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、ウレドーパ(uredopa)、アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethilenethiophosphoramide)、トリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)、ブラタシン、ブラタシノン、カンプトセシン、ブリオスタチン、カリスタチン(callystatin)、クリプトフィシン1、クリプトフィシン8、ドラスタチン、ズオカルマイシン、エレウテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチン(sarcodictyin)、スポンジスタチン、クロランブシル、クロロナファジン(chloRNAphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、カリケアマイシン(calicheamicin)、ダイネマイシン、クロドロネート、エスペラマイシン、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、デトルビシン(detorbicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、アドリアマイシン(adriamycin)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンC、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)、デノプテリン(denopterin)、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)、フルダラビン(fludarabine)、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6−アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)、カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、フロリン酸(frolinic acid)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン(amsacrine)、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン(bisantrene)、エダトラキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルシン(demecolcine)、ジアジコン(diaziquone)、エルフォルニチン (elfornithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium)、エポチロン(epothilone)、エトグルシド(etoglucid)、レンチナン、ロニダミン(lonidamine)、メイタンシン(maytansine)、アンサミトシン(ansamitocine)、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット(phenamet)、ピラルビシン、ロソキサントロン(losoxantrone)、ポドフィリン酸(podophyllinic acid)、2−エチルヒドラジド、プロカルバジン、ラゾキサン(razoxane)、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム(spirogermanium)、テニュアゾン酸(tenuazonic acid)、トリアジコン(triaziquone)、ロリジン(roridine)A、アングイジン(anguidine)、ウレタン、ビンデシン、ダカーバジン、マンノムスチン(mannomustine)、ミトブロニトール、ミトラクトール(mitolactol)、ピポブロマン(pipobroman)、ガシトシン(gacytosine)、ドキセタキセル、クロランブシル、ゲムシタビン(gemcitabine)、6−チオグアニン、メルカプトプリン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、エトポシド、イホスファミド、マイトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ノバントロン(novantrone)、テニポシド、エダトレキセート(edatrexate)、ダウノマイシン、アミノプテリン、キセローダ(xeloda)、イバンドロナート(ibandronate)、イリノテカン、トポイソメラーゼインヒビター、ジフルオロメチロールニチン(DMFO)、レチノイン酸、カペシタビン(capecitabine)、並びにそれらの薬学的に許容可能な(公知の)塩又は(公知の)誘導体も包含する。上記の内、特にシクロホスファミド、パクリタキセル、ドキセタキセル、ビノレルビンが好ましく用いられる。
【0095】
あるいは、本発明の抗体には、文献等で公知の、
211At、
131I、
125I、
90Y、
186Re、
188Re、
153SM、
212Bi、
32P、
175Lu、
176Lu、
89Sr、
64Cu、
111Inなどの放射性同位体を結合することも可能である(Hideo Saji,YAKUGAKU ZASSHI 128(3)323−332 8(2008),Jpn)。などの放射性同位体を結合することも可能である。放射性同位体は、腫瘍の治療や診断のために有効なものが望ましい。このような放射性同位体も、本発明における抗腫瘍剤に含まれる。
【0096】
<エピトープの同定>
本発明の抗体は、以下の実施例に示されるように、配列番号5で示されるアミノ酸配列中のエピトープと結合する。本発明の抗体に対するエピトープを確認する方法の一つとして、配列番号5のポリペプチド中のエピトープをプレートに固定化して、本エピトープに対する抗体の反応性を評価する方法があげられる。具体的には、オリゴエチレングリコールなどのスペーサーを介して吸電子性官能基が付いたプレートに配列番号5のポリペプチド中のエピトープを反応させて固定化したものに本発明の抗体を反応させ、HRP(Horseradish Peroxidase)などで標識された、本発明の抗体に結合する二次抗体を反応させることで、抗体の反応性を評価(本発明の抗体が結合するエピトープを確認)することができる。なお、プレートに固定化する配列番号5のポリペプチド中のエピトープは、配列番号5の配列において少なくとも該エピトープを含む配列そのもの、または、その一部が修飾されたもの(例えば、N末端残基やC末端残基に数個の任意のアミノ酸やKLHなどのタンパク質が修飾されたもの、あるいはMAPタンパク質に(ポリ)ペプチドを修飾したものなど)が用いられ、これらいずれかの(ポリ)ペプチドに対して本発明の抗体が結合すればよい。
【0097】
一方、本発明の抗体であっても上記方法で配列番号5のポリペプチドに反応しない(エピトープを確認できない)場合があるかもしれない。その場合には、抗原と抗体が結合しやすい溶液条件下で抗原と抗体を反応させ免疫沈降法によって抗原−抗体複合体を取得した後、抗体に結合した部分ポリペプチドを分離して、そのアミノ酸配列を調べることで本発明の抗体のエピトープを確認することができる。なお、抗原は、例えば前記の配列番号5のポリペプチドそのもの、一部修飾されたもの、またはCAPRIN−1タンパク質でも、上記方法で本発明の抗体が反応するエピトープが確認されればよい。
【0098】
<抗腫瘍効果>
本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体によるCAPRIN−1発現癌細胞に対する抗腫瘍効果は、以下の機序により起こると考えられる:CAPRIN−1発現細胞のエフェクター細胞抗体依存的細胞障害性(ADCC)、及びCAPRIN−1発現細胞の補体依存的細胞障害性(CDC)。但しこの機序により本発明の範囲を限定することは意図しない。
【0099】
また、上記機序による抗腫瘍効果は、癌細胞の細胞表面に発現する抗体が結合する標的分子の数に相関することが知られている(Niwa R., Clinical Cancer Research 2005 Mar 15;11(6):2327−2336)。癌細胞の細胞表面に発現する標的分子の数は、細胞表面の分子数を測定できる既存の測定キットを用いて調べることが可能である。すなわち、抗体が結合する標的分子の数は、標的分子に対する抗体などを一次抗体として癌細胞に反応させ、予め分子数が知られた検量線ビーズと共に、蛍光標識された抗一次抗体を反応させ、サンプルの平均蛍光強度を測定し、検量線を得て標的分子の数を知ることができる。
【0100】
従って、本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体の活性評価は、以下実施例に具体的に示されるように、生体外でCAPRIN−1を発現する癌細胞に対して上記ADCC活性又はCDC活性を測定すること、あるいは本発明にある抗CAPRIN−1抗体を一次抗体として用いた場合の癌細胞の細胞表面に発現するCAPRIN−1分子の数を調べることで評価することができる。
【0101】
本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体は、癌細胞上のCAPRIN−1タンパク質と結合し、上記活性によって、抗腫瘍作用を示すことから、癌の治療あるいは予防に有用であると考えられる。すなわち本発明は、抗CAPRIN−1抗体を有効成分とする、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物を提供する。抗CAPRIN−1抗体を人体に投与する目的(抗体治療)で使用する場合には、免疫原性を低下させるため、ヒト抗体やヒト化抗体にすることが好ましい。
【0102】
なお、抗CAPRIN−1抗体と癌細胞表面上のCAPRIN−1タンパク質との結合親和性が高い程、抗CAPRIN−1抗体による、より強い抗腫瘍活性が得られる。従って、本発明の抗体は、CAPRIN−1タンパク質と高い結合親和性を有するため、より強い抗腫瘍効果が期待でき、癌の治療及び/又は予防を目的とした医薬組成物として適応することが可能になる。本発明の抗体は、高い結合親和性として、前述したように、結合定数(親和定数)Ka(k
on/k
off)が、好ましくは、少なくとも10
7M
−1、少なくとも10
8M
−1、少なくとも5×10
8M
−1、少なくとも10
9M
−1、少なくとも5×10
9M
−1、少なくとも10
10M
−1、少なくとも5×10
10M
−1、少なくとも10
11M
−1、少なくとも5×10
11M
−1、少なくとも10
12M
−1、あるいは、少なくとも10
13M
−1を有することが好ましい。
【0103】
また、抗CAPRIN−1抗体と結合する癌細胞表面上のCAPRIN−1分子の数が多い程、抗CAPRIN−1抗体による、より強い抗腫瘍活性が得られる。抗腫瘍効果を期待するためには、CAPRIN−1分子の数は、本発明の抗CAPRIN−1抗体を測定に用いた場合に、該抗体が結合する癌細胞1個当たりのCAPRIN−1分子の数が10
4個以上、好ましくは10
5個以上が望ましい。細胞表面上のCAPRIN−1分子の数が多い腫瘍(癌細胞)が、本発明の抗体の投与対象となる癌として特に好ましい。
【0104】
<抗原発現細胞への結合>
抗体がCAPRIN−1に結合する能力は、実施例で述べられるような例えばELISA法、ウエスタンブロット法、免疫蛍光及びフローサイトメトリー分析などを用いた結合アッセイを利用して特定することができる。
【0105】
<免疫組織化学染色>
CAPRIN−1を認識する抗体は、当業者に周知の方法での免疫組織化学により、外科手術の間に患者から得た組織や、自然に又はトランスフェクション後にCAPRIN−1を発現する細胞系を接種した異種移植組織を担持する動物から得た組織から、パラホルムアルデヒド又はアセトン固定した凍結切片又はパラホルムアルデヒドで固定したパラフィン包埋した組織切片を使用して、CAPRIN−1との反応性に関して試験することができる。
【0106】
免疫組織化学染色のため、CAPRIN−1に対して反応性のある抗体を、様々な方法で染色させることができる。例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合ヤギ抗マウス抗体、ヤギ抗ウサギ抗体やヤギ抗ニワトリ抗体を反応させることにより、可視化することができる。
【0107】
<医薬組成物、及び癌の治療及び/又は予防方法>
本発明の癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物の標的は、CAPRIN−1遺伝子を発現する癌(細胞)であれば特に限定されない。
【0108】
本明細書で使用される「腫瘍」及び「癌」という用語は、悪性新生物を意味し、互換的に使用される。
【0109】
本発明において対象となる癌としては、CAPRIN−1タンパク質をコードする遺伝子を発現している癌であり、好ましくは、乳癌、腎癌、膵臓癌、大腸癌、肺癌、脳腫瘍、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、白血病、リンパ腫、線維肉腫、肥満細胞腫又はメラノーマである。
【0110】
これらの特定の癌には、例えば、乳腺癌、複合型乳腺癌、乳腺悪性混合腫瘍、乳管内乳頭状腺癌、肺腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌、神経上皮組織性腫瘍である神経膠腫、脳室上衣腫、神経細胞性腫瘍、胎児型の神経外胚葉性腫瘍、神経鞘腫、神経線維腫、髄膜腫、慢性型リンパ球性白血病、リンパ腫、消化管型リンパ腫、消化器型リンパ腫、小〜中細胞型リンパ腫、盲腸癌、上行結腸癌、下行結腸癌、横行結腸癌、S状結腸癌、直腸癌、卵巣上皮癌、胚細胞腫瘍、間質細胞腫瘍、膵管癌、浸潤性膵管癌、膵臓癌の腺癌、腺房細胞癌、腺扁平上皮癌、巨細胞腫、膵管内乳頭粘液性腫瘍、粘液性嚢胞腺癌、膵芽腫、漿液性嚢胞腺癌、固体乳頭状癌、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、インスリノーマ、多発性内分泌腺腫症1(Wermer症候群)、非機能性島細胞腫、ソマトスタチノーマ、VIP産生腫瘍が包含されるが、これらに限定されない。
【0111】
また、対象となる好ましい被験者(患者)は、哺乳動物であり、例えば霊長類、ペット動物、家畜類、競技用動物などを含む哺乳動物であり、特にヒト、イヌ及びネコが好ましい。
【0112】
本発明で用いられる抗体を医薬組成物として用いる場合には、当業者に公知の方法で製剤化することが可能である。例えば、水若しくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体又は媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
【0113】
注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0114】
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO−60と併用してもよい。
【0115】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
【0116】
投与は、経口又は非経口であり、好ましくは非経口投与であり、具体的には、注射剤型、経鼻投与剤型、経肺投与剤型、経皮投与型などが挙げられる。注射剤型の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などにより全身又は局部的に投与することができる。
【0117】
また、患者の年齢、体重、性別、症状などにより適宜投与方法を選択することができる。抗体又は抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する医薬組成物の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、患者あたり0.001〜100000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができるが、これらの数値に必ずしも制限されるものではない。投与量、投与方法は、患者の体重、年齢、性別、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0118】
本発明の抗体又はそのフラグメントを含む上記の医薬組成物を被験者に投与することによって癌、好ましくは、乳癌、腎癌、膵臓癌、大腸癌、肺癌、脳腫瘍、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、白血病、リンパ腫、線維肉腫、肥満細胞腫又はメラノーマを治療及び/又は予防することができる。
【0119】
さらに、本発明の医薬組成物を、上で例示したような抗腫瘍剤又は抗腫瘍剤を含む医薬組成物と組み合わせて、被験者に併用投与することを含む、癌の治療及び/又は予防方法も本発明に包含される。本発明の抗体又はそのフラグメントと抗腫瘍剤は、同時に、又は、別々に被験者に投与されうる。別々に投与する場合には、いずれの医薬組成物が先であっても又は後であってもよく、それらの投与間隔、投与量、投与経路及び投与回数は、専門医によって適宜選択されうる。同時に投与する別の医薬剤型には、例えば、本発明の抗体又はそのフラグメントと抗腫瘍剤を、薬理学上許容される担体(又は媒体)中で混合し製剤化して得られる医薬組成物も包含されるものとする。また、抗腫瘍剤を含有する上記医薬組成物及び剤型のいずれに対しても、本発明の抗体を含有する医薬組成物及び剤型についての処方、製剤化、投与経路、用量、癌などの説明を適用しうる。
【0120】
したがって、本発明は、本発明の医薬組成物と、上で例示したような抗腫瘍剤を含む医薬組成物とを含む、癌の治療及び/又は予防のための組み合わせ医薬品及びそれを投与することを含む、癌の治療及び/又は予防方法も提供する。また、本発明は、本発明の抗体又はそのフラグメントと抗腫瘍剤とを、薬理学上許容される担体とともに含む、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物も提供する。
【0121】
<ポリペプチド及びDNA>
本発明はさらに、本発明の上記抗体又はそのフラグメント(抗体結合フラグメント)をコードするDNAも提供する。そのようなDNAは、上記抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードするDNAであってもよいし、上記抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードするDNAであってもよい。そのようなDNAはまた、上記抗体の各相補性決定領域を単独で又は組み合わせてコードするDNAであってもよい。そのようなDNAは、例えば、上記抗体(a)の場合、配列番号8、9及び10のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む重鎖可変領域をコードするDNA、配列番号12、13及び14のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む軽鎖可変領域をコードするDNA、などを含む。
【0122】
これらの配列のDNAによってコードされる相補性決定領域(CDR)が抗体の特異性を決定する領域であるため、抗体のそれ以外の領域(すなわち、定常領域及びフレームワーク領域)をコードする配列は他の抗体由来の配列であってもよい。ここで他の抗体とはヒト以外の生物由来の抗体も含むが、副作用低減の観点からはヒト由来のものが好ましい。すなわち、上記のDNAでは、重鎖及び軽鎖の各フレームワーク領域及び各定常領域をコードする領域がヒト抗体由来の対応アミノ酸配列をコードする塩基配列を含むことが好ましい。
【0123】
さらに、本発明の抗体をコードするDNAの別の例は、例えば上記抗体(a)の場合、配列番号11のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むDNA、軽鎖可変領域をコードする領域が配列番号15のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNAなどである。ここで、配列番号11のアミノ酸配列をコードする塩基配列の例は、配列番号16の塩基配列である。また配列番号15のアミノ酸配列をコードする塩基配列の例は、配列番号17の塩基配列である。これらのDNAでも、重鎖及び軽鎖の各定常領域をコードする領域を含む場合、その領域がヒト抗体由来の対応アミノ酸配列(重鎖及び軽鎖の各定常領域のアミノ酸配列)をコードする塩基配列を含むことが好ましい。
【0124】
これら抗体のDNAは、例えば上記の方法又は以下の方法で得ることができる。まず、本発明の抗体を産生するハイブリドーマから、市販のRNA抽出キットを用いて全RNAを調製し、ランダムプライマー等を用いて逆転写酵素によりcDNAを合成する。次いで既知のマウス抗体重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子の各可変領域においてそれぞれ保存されている配列のオリゴヌクレオチドをプライマーに用いたPCR法によって、抗体をコードするcDNAを増幅させる。定常領域をコードする配列については、既知の配列をPCR法で増幅することによって得ることができる。DNAの塩基配列は、配列決定用プラスミド又はファージに組み込むなどして、常法により決定することができる。
【0125】
本発明は更に、上記抗体(a)又は(b)に関わる以下のポリペプチド及びDNAも提供する。
【0126】
(i)配列番号11又は配列番号21のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び該ポリペプチドをコードするDNA(例えば、配列番号16又は配列番号26の塩基配列を含むDNA)。
【0127】
(ii)配列番号15又は配列番号25のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び該ポリペプチドをコードするDNA(例えば、配列番号17又は配列番号27の塩基配列を含むDNA)。
【0128】
(iii)配列番号8、9及び10、配列番号18、19及び20に示すアミノ酸配列からなる群から選択される、重鎖CDRポリペプチド、及び該ポリペプチドをコードするDNA。
【0129】
(iv)配列番号12、13及び14、配列番号22、23及び24に示すアミノ酸配列から選択される、軽鎖CDRポリペプチド、及び該ポリペプチドをコードするDNA。
【0130】
これらのポリペプチド及びDNAは、上記の通り、遺伝子組み換え技術を用いて作製することができる。
【0131】
<本発明の要約>
上で説明した本発明を以下に要約する。
【0132】
(1)配列番号5で表されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるCAPRIN−1部分ポリペプチドと免疫学的反応性を有する、抗体又はそのフラグメント。
【0133】
(2)CAPRIN−1タンパク質を発現する癌細胞に対し細胞障害活性を有する、上記(1)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0134】
(3)前記抗体が、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である、上記(1)又は(2)に記載の抗体又はそのフラグメント。
【0135】
(4)ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体又は多重特異性抗体である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗体又はそのフラグメント。
【0136】
(5)配列番号8、9及び10の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号12、13及び14の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含み、かつ、CAPRIN−1タンパク質と免疫学的反応性を有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の抗体又はそのフラグメント。
【0137】
(6)配列番号18、19及び20の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号22、23及び24の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含み、かつ、CAPRIN−1タンパク質と免疫学的反応性を有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の抗体又はそのフラグメント。
【0138】
(7)抗腫瘍剤がコンジュゲートされた、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の抗体又はそのフラグメント。
【0139】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の抗体又はそのフラグメントを有効成分として含むことを特徴とする、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
【0140】
(9)前記癌が乳癌、腎癌、膵臓癌、大腸癌、肺癌、脳腫瘍、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、白血病、リンパ腫、線維肉腫、肥満細胞腫又はメラノーマである、上記(8)に記載の医薬組成物。
【0141】
(10)上記(8)又は(9)に記載の医薬組成物と、抗腫瘍剤を含む医薬組成物とを含んでなる、癌の治療及び/又は予防のための組み合わせ医薬品。
【0142】
(11)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の抗体又はそのフラグメントをコードするDNA。
【0143】
(12)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の抗体若しくはそのフラグメント、(8)若しくは(9)に記載の医薬組成物、又は上記(10)に記載の組み合わせ医薬品を、被験者に投与することを含む、癌の治療及び/又は予防方法。
【実施例】
【0144】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの具体例によって制限されないものとする。
【0145】
実施例1 各組織でのCAPRIN−1発現解析
CAPRIN−1遺伝子のイヌ及びヒトの正常組織及び各種細胞株における発現をWO2010/016526の実施例1(4)に従ってRT−PCR法により調べた。その結果、健常なイヌ組織では精巣に強い発現が見られ、一方イヌ乳癌及び腺癌組織で発現が見られた。さらに、ヒト組織での発現を併せて確認したところ、イヌCAPRIN−1遺伝子と同様、正常組織で発現が確認できたのは精巣のみだったが、癌細胞ではヒト乳癌細胞株8種(ZR75−1、MCF7、T47D、SK−BR−3、MDA−MB−157、BT−20、MDA−MB−231V、MRK−nu−1)及び膵臓癌細胞株4種(Capan−2、MIAPaCa−2、Panc−1、BxPc−3)など、多種類の癌細胞株で発現が検出された。この結果から、CAPRIN−1は精巣以外の正常組織では発現が見られず、一方、乳癌細胞株及び膵臓癌細胞株に発現していることが確認された。
【0146】
実施例2 CAPRIN−1に対するマウスモノクローナル抗体の作製
(1)マウスモノクローナル抗体の作製
WO2010/016526の実施例3で調製した配列番号2のアミノ酸配列を有するヒトCAPRIN−1タンパク質100μgを等量のMPL+TDMアジュバント(シグマ社製)と混合し、これをマウス1匹当たりの抗原溶液とした。抗原溶液を6週齢のBalb/cマウス(日本SLC社製)の腹腔内に投与後、1週間毎に7回投与を行い、免疫を完了した。最後の免疫から3日後に摘出したそれぞれの脾臓を滅菌した2枚のスライドガラスに挟んで擦り潰し、PBS(−)(日水社製)を用いて洗浄し1500rpmで10分間遠心して上清を除去する操作を3回繰り返して脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞とマウスミエローマ細胞SP2/0(ATCCから購入)とを10:1の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10% FBSを含むRPMI1640培地200μlとPEG1500(ベーリンガー社製)800μlを混和して調製したPEG溶液を加えて5分間静置して細胞融合を行った。1700rpmで5分間遠心し、上清を除去後、Gibco社製のHAT溶液を2%当量加えた15% FBSを含むRPMI1640培地(HAT選択培地)150mlで細胞を懸濁し、96穴プレート(ヌンク社製)の1ウェル当たり100μlずつ、プレート15枚に播種した。7日間、37℃、5%CO
2の条件で培養することで、脾臓細胞とミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
【0147】
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。WO2010/016526の実施例3に記載の手法で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% Bovine Serum Albumin(BSA)溶液(シグマ社製)を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(Invitrogen社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
【0148】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。WO2010/016526の実施例3で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5%BSA溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(インビトロジェン社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、CAPRIN−1タンパクに反応性を示すモノクローナル抗体を産生する61個のハイブリドーマ株を得た。
【0149】
次にそれらモノクローナル抗体の内、CAPRIN−1を発現する乳癌細胞の細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、10
6個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231Vを1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(インビトロジェン社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、抗体の代わりに何も処理していない6週齢のBalb/cマウスの血清をハイブリドーマ培養用培地で500倍希釈したものを用いて行い、コントロールとした。その結果、コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、乳癌細胞の細胞表面に反応するモノクローナル抗体2個(抗CAPRIN−1抗体#1、2)を選抜した。
【0150】
(2)抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1が認識するCAPRIN−1エピトープの同定
(1)で取得した、癌細胞の細胞表面に反応するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体(抗CAPRIN−1抗体#1、2)を用いて、認識するCAPRIN−1エピトープ領域の同定を行った。ヒトCAPRIN−1タンパク質のアミノ酸配列中、12〜16アミノ酸から成る、93個の候補ペプチドを合成し、それぞれ1mg/mlの濃度になるようにDMSOで溶解した。
【0151】
各ペプチドを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中に30μg/mlの濃度になるように溶解し、96穴プレート(Nunc社製、製品番号:436006)の1穴あたり100μlずつ添加して4℃で一晩静置した。液を捨て、10mMエタノールアミン/0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(PH9.6)を1穴あたり200μlずつ添加し、室温で1時間静置した後、液を捨て、0.5%Tween20を含むPBS(PBST)にて2回洗浄することによって、各ペプチドが固相化されたプレートを作製した。
【0152】
これに、抗CAPRIN−1抗体#1を含む細胞培養上清を1穴あたり50μl添加し、室温で1時間振とうした後、液を除去し、PBSTにて3回洗浄した。次に、HRPが標識された抗マウスIgG(Invitrogen社製)抗体をPBSTにて3000〜4000倍希釈した2次抗体溶液をウェルに50μlずつ添加した後、液を除去し、PBSTにて6回洗浄を行った。
【0153】
TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。
【0154】
その結果、配列番号5のポリペプチドに抗CAPRIN−1抗体#1、2は特異的に反応した。また、上記12〜16アミノ酸から成る93個の候補ペプチドのうち、配列番号5のポリペプチドと一部のアミノ酸配列が重なり合う配列番号8および9のポリペプチドに対して実施例2で得た抗CAPRIN−1抗体#1、2は反応性を示さなかった。以上の結果より、実施例2(1)で得られた抗CAPRIN−1抗体#1、2が特異的に認識するCAPRIN−1の部分配列として配列番号5のポリペプチドが同定された。
【0155】
(3)抗CAPRIN−1抗体#1、2の可変領域遺伝子のクローニング
実施例2(1)で得られたモノクローナル抗体について、WO2010/016526の実施例5に記載の方法に従って可変領域をコードする遺伝子配列及びそのアミノ酸配列を解析した。その結果、モノクローナル抗体#1は配列番号11に示すアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号15に示すアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むものであり、抗体#2は配列番号21に示すアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号25に示すアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むものであった。得られたモノクローナル抗体#1の重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号16に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号17に、抗体#2の重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号26に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号27に示す。
【0156】
さらに、実施例2(1)で得られたモノクローナル抗体#1は配列番号11に示すアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号15に示すアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、そのうち、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号8、配列番号9、配列番号10に示すアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号12、配列番号13、配列番号14に示すアミノ酸配列からなること、抗体#2は配列番号21に示すアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号25に示すアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、そのうち、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号18、配列番号19、配列番号20に示すアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号22、配列番号23、配列番号24に示すアミノ酸配列からなることが示された。
【0157】
実施例3 癌細胞表面上に存在するCAPRIN−1の部分ポリペプチドに対するポリクローナル抗体の作製
癌細胞表面上に存在するCAPRIN−1の部分ポリペプチドに対するポリクローナル抗体を得るために、実施例2で取得した抗CAPRIN−1抗体#1のエピトープ領域を含むポリペプチド(配列番号5で示されるCAPRIN−1由来ペプチド)、配列番号2のヒトCAPRIN−1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基番号50−98領域のポリペプチドおよび配列番号2中のアミノ酸残基番号233−305領域のポリペプチドを合成した。これらのペプチド1mgずつを抗原として、等容量の不完全フロイントアジュバント(IFA)溶液と混合し、これを2週間毎に4回、ウサギの皮下に投与を行った。その後血液を採取し、各ポリクローナル抗体を含む抗血清を得た。さらにこれら抗血清をプロテインG担体(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて精製しPBSで置換した、癌細胞表面上に存在するCAPRIN−1の部分ポリペプチドに対するポリクローナル抗体を得た。また、抗原を投与していないウサギの血清を上記と同様にしてプロテインG担体を用いて精製したものをコントロール抗体とした。
【0158】
実施例4 癌細胞膜面上でのCAPRIN−1タンパク質の発現解析
次にCAPRIN−1遺伝子の発現が多く確認されたヒト乳癌細胞株8種(ZR75−1、MCF7、T47D、SK−BR−3、MDA−MB−157、BT−20、MDA−MB−231V、MRK−nu−1)について、その細胞表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現しているかどうかを調べた。上記で遺伝子発現が認められた各ヒト乳癌細胞株それぞれ5×10
5細胞を1.5mlのミクロ遠心チューブにて遠心分離した。これに本実施例3で上記の通り調製した配列番号5に示されるCAPRIN−1由来ペプチドに対するポリクローナル抗体2μg(5μl)と95μlの0.1%牛胎児血清を含むPBSを添加して混ぜ、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、1μlのAlexa488標識Goat anti−rabbit IgG抗体(インビトロジェン社製)及び98μlの0.1%牛胎児血清(FBS)を含むPBSを添加して混ぜ、氷上で30時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、CAPRIN−1由来ペプチドに対するポリクローナル抗体の代わりに実施例3で上記の通り調製したコントロール抗体を用いて行い、コントロールとした。その結果、抗CAPRIN−1抗体を添加された細胞は、コントロールに比べて、いずれの癌細胞も蛍光強度が35%以上強かった。このことから、上記ヒト癌細胞株の細胞膜表面上にCAPRIN−1タンパクが発現していることが確認された。なお、上記蛍光強度の増強率は、各細胞における平均蛍光強度(MFI値)の増加率にて表され、以下の計算式により算出した。
【0159】
平均蛍光強度の増加率(蛍光強度の増強率)(%)=((抗CAPRIN−1抗体を反応させた細胞のMFI値)−(コントロールMFI値))÷(コントロールMFI値)×100。
【0160】
また、同様の上記手法を用いて、腎癌細胞株2種(Caki−1,Caki−2)、膀胱癌細胞株(T24)、卵巣癌細胞株(SKOV3)、肺癌細胞株2種(QG56、A549)、前立腺癌細胞株(PC3)、子宮頸癌細胞株(SW756)、線維肉腫細胞株(HT1080)、脳腫瘍細胞株2種(T98G,U87MG)、胃癌細胞株(MKN28)、大腸癌細胞株3種(Lovo、DLD−1、HCT−116)、膵臓癌細胞株4種(Capan−2、MIAPaCa−2、Panc−1、BxPC−3)について蛍光強度を測定したところ、コントロールに比べていずれの癌細胞も蛍光強度が35%以上強かった。
【0161】
なお、本結果は、実施例2で取得された抗CAPRIN−1抗体#1を用いた場合も同様に癌細胞膜面上でのCAPRIN−1タンパク質の発現が確認された。
【0162】
実施例5 ヒト−マウスキメラモノクローナル抗体の作製
実施例2で得られた、抗CAPRIN−1抗体#1、#2の重鎖可変領域を含んだ遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、マウス抗体由来のリーダー配列と配列番号6のアミノ酸配列を含むヒトIgG
1のH鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA4/myc−His(Invitrogen社製)ベクターへ常法に従って挿入した。また、抗CAPRIN−1抗体#1の軽鎖可変領域を含んだ遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、マウス抗体由来のリーダー配列と配列番号7のアミノ酸配列を含むヒトIgG
1のL鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA3.1/myc−His(Invitrogen社製)ベクターへ常法に従って挿入した。
【0163】
次に、上記にある抗CAPRIN−1抗体#1、#2の重鎖可変領域が挿入された上記組換えベクターと、軽鎖可変領域が挿入された上記組換えベクターをCHO−K1細胞(理研セルバンクより入手)に導入した。具体的には、12穴培養プレートの1ウェル当たりに1mlの10%FBSを含むHam’s F12培地(Invitrogen社製)で培養された2×10
5個のCHO−K1細胞をPBS(−)で洗浄したのちに、1ウェル当たり1mlの10%FBSを含むHam’s F12培地を新たに加えたウェルに30μlのOptiMEM(Invitrogen社製)に溶解した上記各ベクター250ngとPolyfect transfection reagent(QIAGEN社製)30μlとを混合したものを添加した。上記組換えベクターを導入したCHO−K1細胞を、200μg/mlゼオシン(Invitrogen社製)並びに200μg/mlジェネチシン(ロシュ社製)を添加した10% FBSを含むHam’sF12培地で培養したのち、96ウェルプレートの1ウェル当たりに0.5個となるように上記組換えベクターを導入したCHO−K1細胞を播種して、実施例2で得た抗CAPRIN−1抗体#1、#2の可変領域を有するヒト−マウスキメラモノクローナル抗体#1、#2を安定的に産生する細胞株を作製した。
【0164】
作製した細胞株を150cm
2フラスコを用いて5×10
5個/mlで血清を含まないOptiCHO培地(Invitrogen社製)30mlを用いて5日間培養し、ヒト−マウスキメラモノクローナル抗体#1、#2を含むそれぞれの培養上清を得た。
【0165】
また、比較抗体として、WO2010/016526に記載されるマウス由来の抗CAPRIN−1モノクローナル抗体であり同文献中の配列番号26の重鎖可変領域と配列番号27の軽鎖可変領域を有する比較抗体1、配列番号28の重鎖可変領域と配列番号29の軽鎖可変領域を有する比較抗体2、配列番号30の重鎖可変領域と配列番号31の軽鎖可変領域を有する比較抗体3、配列番号32の重鎖可変領域と配列番号33の軽鎖可変領域を有する比較抗体4、配列番号34の重鎖可変領域と配列番号35の軽鎖可変領域を有する比較抗体5、配列番号36の重鎖可変領域と配列番号37の軽鎖可変領域を有する比較抗体6、配列番号38の重鎖可変領域と配列番号39の軽鎖可変領域を有する比較抗体7、配列番号40の重鎖可変領域と配列番号41の軽鎖可変領域を有する比較抗体8、配列番号42の重鎖可変領域と配列番号43の軽鎖可変領域を有する比較抗体9、配列番号44の重鎖可変領域と配列番号45の軽鎖可変領域を有する比較抗体10、配列番号46の重鎖可変領域と配列番号47の軽鎖可変領域を有する比較抗体11、WO2011/096517に記載される抗CAPRIN−1モノクローナル抗体であり同文献中の配列番号43の重鎖可変領域と配列番号47の軽鎖可変領域を有する比較抗体12、配列番号43の重鎖可変領域と配列番号の軽鎖可変領域を有する比較抗体13、WO2011/096528に記載される抗CAPRIN−1モノクローナル抗体であり同文献中の配列番号43の重鎖可変領域と配列番号47の軽鎖可変領域を有する比較抗体14、配列番号51の重鎖可変領域と配列番号55の軽鎖可変領域を有する比較抗体15、配列番号59の重鎖可変領域と配列番号63の軽鎖可変領域を有する比較抗体16、配列番号76の重鎖可変領域と配列番号80の軽鎖可変領域を有する比較抗体17、配列番号84の重鎖可変領域と配列番号88の軽鎖可変領域を有する比較抗体18、配列番号92の重鎖可変領域と配列番号96の軽鎖可変領域を有する比較抗体19、WO2011/096519に記載される抗CAPRIN−1モノクローナル抗体であり同文献中の配列番号42の重鎖可変領域と配列番号46の軽鎖可変領域を有する比較抗体20、WO2011/096533に記載される抗CAPRIN−1モノクローナル抗体であり同文献中の配列番号43の重鎖可変領域と配列番号51の軽鎖可変領域を有する比較抗体21、配列番号47の重鎖可変領域と配列番号51の軽鎖可変領域を有する比較抗体22、配列番号63の重鎖可変領域と配列番号67の軽鎖可変領域を有する比較抗体23、WO2011/096534に記載される抗CAPRIN−1モノクローナル抗体であり同文献中の配列番号43の重鎖可変領域と配列番号47の軽鎖可変領域を有する比較抗体24、配列番号43の重鎖可変領域と配列番号51の軽鎖可変領域を有する比較抗体25、配列番号63の重鎖可変領域と配列番号67の軽鎖可変領域を有する比較抗体26についても上記と同様にして、比較試料であるヒト−マウスキメラ比較抗体1〜26をそれぞれ安定的に産生する細胞株を作製し、作製した細胞株を150cm
2フラスコを用いて5×10
5個/mlで血清を含まないOptiCHO培地(Invitrogen社製)30mlを用いて5日間培養し、ヒト−マウスキメラ比較モノクローナル抗体1〜26を含む培養上清を得た。
【0166】
実施例6 抗CAPRIN−1モノクローナルを用いた各種癌細胞表面でのCAPRIN−1の発現
次にCAPRIN−1遺伝子の発現が確認されたヒト乳癌細胞株8種(ZR75−1、MCF7、T47D、SK−BR−3、MDA−MB−157、BT−20、MDA−MB−231V、MRK−nu−1)、腎癌細胞株2種(Caki−1,Caki−2)、膀胱癌細胞株(T24)、卵巣癌細胞株(SKOV3)、肺癌細胞株2種(QG56、A549)、前立腺癌細胞株(PC3)、子宮頸癌細胞株(SW756)、線維肉腫細胞株(HT1080)、脳腫瘍細胞株2種(T98G,U87MG)、胃癌細胞株(MKN28)、大腸癌細胞株3種(Lovo、DLD−1、HCT−116)、膵臓癌細胞株4種(Capan−2、MIAPaCa−2、Panc−1、BxPC−3)について、実施例2で得られた抗CAPRIN−1抗体#1、#2を含むそれぞれの培養上清を用いて、各細胞の細胞表面上でのCAPRIN−1タンパク質の発現を調べた。各細胞株それぞれ10
6細胞を1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離した。上記抗体を含む各細胞培養上清(100μl)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体(Jackson ImmunoResearch社製)を添加し、4℃で30分間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。陰性コントロールには二次抗体のみを反応したものを用いた。その結果、抗CAPRIN−1抗体#1、#2は、それぞれ陰性コントロールに比べて、蛍光強度が30%以上強い反応性を示した。このことから、上記ヒト癌細胞株の細胞膜表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現していることが確認された。なお、上記蛍光強度の増強率は、各細胞における平均蛍光強度(MFI値)の増加率にて表され、以下の計算式により算出した。
【0167】
平均蛍光強度の増加率(蛍光強度の増強率)(%)=((抗CAPRIN−1抗体を反応させた細胞のMFI値)−(コントロールMFI値))÷(コントロールMFI値)×100。
【0168】
実施例7 CAPRIN−1由来ペプチド(配列番号5)に対する抗体の癌細胞に対する抗腫瘍活性
配列番号5に示すCAPRIN−1由来ペプチドに対する抗体のCAPRIN−1を発現する癌細胞に対する細胞障害性の強さを評価するために、ADCC活性を測定した。実施例3で調製した配列番号5に示すペプチドに対するポリクローナル抗体を用いて評価を行った。比較する抗体として、その他のヒトCAPRIN−1由来ペプチドに対するポリクローナル抗体(実施例3で調製した、ヒトCAPRIN−1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基番号50−98に対するポリクローナル抗体とアミノ酸残基番号233−305に対するポリクローナル抗体)を用い、陰性コントロールとして、実施例3で調製したウサギ血清由来のコントロール抗体を用いて同様に評価した。
【0169】
CAPRIN−1の発現が確認されているヒト乳癌細胞株MDA−MB−231V、ヒト大腸癌細胞株DLD−1、ヒト膵臓癌細胞株Capan−2、ヒト肺癌細胞株QG56を10
6個50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地で3回洗浄し、96穴V底プレート1穴あたり2×10
3個ずつ添加した。これに、上記配列番号5に示すヒトCAPRIN−1由来ペプチドに対するポリクローナル抗体および上記にあるその他のヒトCAPRIN−1由来ペプチドに対するポリクローナル抗体2種類(ヒトCAPRIN−1の配列番号2のアミノ酸残基番号50−98に対するポリクローナル抗体とアミノ酸残基番号233−305に対するポリクローナル抗体)をそれぞれ1μgずつ添加し、さらにヒトおよびウサギの末梢血から定法に従って分離したリンパ球をそれぞれ4×10
5個ずつ添加して、37℃、5%CO
2の条件下で4時間培養した。培養後、障害を受けた癌細胞から放出される培養上清中のクロミウム(Cr)51の量を測定し、各ヒトCAPRIN−1由来ペプチドに対するポリクローナル抗体による癌細胞に対するADCC活性を算出した。その結果、ヒトCAPRIN−1の配列番号2のアミノ酸残基番号50−98およびアミノ酸残基番号233−305のアミノ酸配列を有するヒトCAPRIN−1部分ペプチドを免疫して得たポリクローナル抗体の場合にはヒト乳癌細胞株MDA−MB−231V、ヒト大腸癌細胞株DLD−1、ヒト膵臓癌細胞株Capan−2、ヒト肺癌細胞株QG56における活性は、いずれの抗体もそれぞれ8%未満であったのに対して、配列番号5に示すヒトCAPRIN−1由来ペプチドに対するポリクローナル抗体を添加した群はいずれの癌細胞株に対しても27%以上の細胞障害活性が確認された。陰性コントロールの抗体は、いずれの癌細胞に対しても5%未満の活性であった。従って、配列番号5に示すCAPRIN−1に対する抗体は、CAPRIN−1を発現する癌細胞に対して、強い細胞障害活性を発揮することが明らかになった。
【0170】
なお、細胞障害活性は、上記のように、本発明で用いられるCAPRIN−1に対する抗体、リンパ球及びクロミウム51を取り込ませた2×10
3個の各癌細胞株を混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式
*により算出した癌細胞株に対する細胞障害活性を示した結果である。
【0171】
*式:細胞障害活性(%)=CAPRIN−1に対する抗体及びリンパ球を加えた際の標的細胞からのクロミウム51遊離量÷1N塩酸を加えた標的細胞からのクロミウム51遊離量×100。
【0172】
実施例5で得た、ヒト−マウスキメラモノクローナル抗体#1、#2のヒト癌細胞に対する細胞障害活性を評価した。上記抗体を産生する各細胞培養上清をHitrap ProteinA SepharoseFF(GEヘルスケア社製)を用いて精製し、PBS(−)に置換して0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過したものを活性測定用の抗体として用いた。10
6個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231V、ヒト大腸癌細胞株DLD−1、ヒト膵臓癌細胞株Capan−2、ヒト肺癌細胞株QG56を50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10%FBSを含むRPMI1640培地で3回洗浄し、96穴V底プレート1穴あたり2×10
3個ずつ添加して標的細胞とした。これに、上記精製抗体ヒト−マウスキメラモノクローナル抗体#1、#2及び実施例5で得たヒト−マウスキメラ比較モノクローナル抗体1〜26をそれぞれ0.75μg添加し、さらに定法に従って調製した、ヒト末梢血リンパ球細胞から定法を用いてヒトNK細胞を含む細胞集団を分離した。ヒトNK細胞を含む細胞集団は、末梢血単核球細胞分離用の比重分離液Histopaque(シグマアルドリッチ社)を用いて分離したヒト末梢血単核球細胞をFITC蛍光色素で標識された抗体(抗ヒトCD3抗体、抗ヒトCD20抗体、抗ヒトCD19抗体、抗ヒトCD11c抗体、抗HLA−DR抗体(ベクトンアンドディッキンソン社))で反応させ、セルソーター(FACS Vantage SE(ベクトンアンドディッキンソン社))を用いて、上記抗体で染まらないNK細胞を含んだ細胞集団を分離したもの、又はヒトNK細胞分離キット(ミルテニー社製)を用いて分離したものを用いた。分離したNK細胞を含んだ細胞を1ウェル当たり2×10
5個添加して、37℃、5%、CO
2の条件下で4時間培養した。培養後、障害を受けた腫瘍細胞から放出される培養上清中のクロミウム51の量を測定し、抗CAPRIN−1抗体による癌細胞に対する細胞障害活性を算出した。陰性コントロールにはアイソタイプコントロール抗体を添加したものを用いた。その結果、アイソタイプコントロール抗体を用いた場合の細胞障害活性はいずれの癌細胞に対しても5%未満であり、ヒト−マウスキメラ比較モノクローナル抗体1〜26を用いた場合の細胞障害活性は、MDA−MB−231Vでは5%未満、DLD−1では8%未満、Capan−2では6%未満、QG56では6%未満であったのに対して、ヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#1は、MDA−MB−231Vでは15%以上、DLD−1では24%以上、Capan−2では26%以上、QG56では19%以上であった。同様に、他の癌細胞、乳癌細胞株T47D、Hs578T、BT−20、SK−BR−3、MCF7、MRK−nu−1、グリオーマ細胞株T98G、肺癌細胞株A549、腎臓癌細胞株Caki−1、子宮頸癌細胞株SW756、膀胱癌細胞株T24、胃癌細胞株MKN28大腸癌細胞株SW480、白血病細胞株AML5及びリンパ腫細胞株Ramosについて、アイソタイプコントロール抗体を用いた場合及び比較抗体1〜比較抗体26を用いた場合はいずれも4%未満であったのに対し、ヒト−マウスキメラモノクローナル抗体#1、#2は細胞障害活性が10%以上認められた。以上の結果より、配列番号5に示すCAPRIN−1由来ペプチドに対する抗体はADCC活性によってCAPRIN−1を発現する癌細胞を障害することが示され、比較抗体1〜26に比べてヒト−マウスキメラモノクローナル抗体#1、#2は、ヒト癌細胞に対して強い細胞障害活性を示すことが明らかになった。
【0173】
なお、細胞障害活性は、上記のように、本発明で用いられるCAPRIN−1に対する抗体、リンパ球(NK細胞を含む集団)細胞及びクロミウム51を取り込ませた2×10
3個の各癌細胞株を混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式
*により算出した癌細胞株に対する細胞障害活性を示した結果である。
【0174】
*式:細胞障害活性(%)=CAPRIN−1に対する抗体及びリンパ球(NK細胞を含む集団)細胞を加えた際の標的細胞からのクロミウム51遊離量÷1N塩酸を加えた標的細胞からのクロミウム51遊離量×100。
【0175】
実施例8 抗CAPRIN−1抗体#1、#2が認識する各種癌細胞表面でのCAPRIN−1の分子数
ヒト乳癌細胞株(MDA−MB−231V)、腎癌細胞株(Caki−1)、膀胱癌細胞株(T24)、卵巣癌細胞株(SKOV3)、肺癌細胞株(QG56、A549)、膵臓癌細胞株(Capan−2)、前立腺癌細胞株(PC3)、子宮頸癌細胞株(SW756)、線維肉腫細胞株(HT1080)、脳腫瘍細胞株(T98G)、胃癌細胞株(MKN28)、大腸癌細胞株(Lovo、DLD−1)、白血病細胞株(AML5)、リンパ腫細胞株(Ramos)について、抗CAPRIN−1抗体#1、#2が認識する各種癌細胞表面でのCAPRIN−1分子の数を分子数測定キット“QIFIKIT”(DAKO社製)を用いて調べた。同様にして、実施例5で作製した抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の比較モノクローナル抗体1〜26についても各種癌細胞表面でのCAPRIN−1分子の数を調べた。
【0176】
添付プロトコールに従い、各細胞株に抗CAPRIN−1抗体#1及び比較抗体1〜比較抗体26を最終濃度が5μg/mlとなるようにPBSで希釈し、各細胞株に添加して30分反応させた。PBSで洗浄した後、キットに添付の検量ビーズとともに各細胞株へキットに添付の蛍光標識された二次抗体抗マウスIgG抗体を添加して氷上で45分間静置した。各細胞株及び検量ビーズをPBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定して平均蛍光強度値(mean)を得た。また、比較抗体についても同様の測定を行い、meanを得た。陰性コントロールにはアイソタイプコントロール抗体を反応させたものを用い、meanを得た。各平均蛍光強度値(mean)を用いてキットに添付の方法に従い分子数を算出した。その結果、抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1、#2ならびに比較抗体12〜26が認識する各種癌細胞表面でのCAPRIN−1の分子数は、調べたすべてのヒト癌細胞において細胞1個当たり10
5個以上であった。一方、比較抗体1〜11については細胞1個当たり10
5個より少なかった。