特許第6187273号(P6187273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6187273ポリアミドイミド樹脂微粒子分散液、およびポリアミドイミド樹脂微粒子分散液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187273
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ポリアミドイミド樹脂微粒子分散液、およびポリアミドイミド樹脂微粒子分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/02 20060101AFI20170821BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20170821BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20170821BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20170821BHJP
   C08K 5/3432 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C08J3/02 ACFG
   C08L79/08 C
   C08K5/05
   C08K5/07
   C08K5/3432
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-7255(P2014-7255)
(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-159558(P2014-159558A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2016年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-12638(P2013-12638)
(32)【優先日】2013年1月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】赤阪 寛章
(72)【発明者】
【氏名】坂根 智博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊也
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/062006(WO,A1)
【文献】 特開2012−116874(JP,A)
【文献】 特開昭49−000341(JP,A)
【文献】 特開2012−185393(JP,A)
【文献】 特開2009−067880(JP,A)
【文献】 特開2010−037506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28
99/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C08G 18/00− 18/87
71/00− 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均1次粒径が100nm〜300nmのポリアミドイミド樹脂微粒子、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、アルケニルコハク酸ジカリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンカルボン酸、(メタ)アクリル酸共重合物、およびカルボキシメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種の界面活性剤、および分散媒からなるポリアミドイミド樹脂微粒子分散液。
【請求項2】
前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、アルケニルコハク酸ジカリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリビニルピロリドン、およびポリスチレンカルボン酸から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤である請求項1に記載のポリアミドイミド樹脂微粒子分散液。
【請求項3】
前記分散媒は、水、有機溶媒である請求項1に記載のポリアミドイミド樹脂微粒子分散液。
【請求項4】
前記有機溶媒は、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒またはN−アルキルピロリジノン系溶媒である請求項3に記載のポリアミドイミド樹脂微粒子分散液。
【請求項5】
前記アルコール系溶媒は、炭素数が1〜6の直鎖状または分枝状のアルコール系溶媒であり、前記ケトン系溶媒は、カルボニル炭素に炭素数が1〜6の同一または異なるアルキル基が結合するケトン系溶媒であり、前記N−アルキルピロリジノン系溶媒は、ラクタム環内の窒素に炭素数1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基が結合するN−アルキルピロリジノンである請求項4に記載のポリアミドイミド樹脂微粒子分散液。
【請求項6】
ポリオキシエチレンオレイルエーテル、アルケニルコハク酸ジカリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンカルボン酸、(メタ)アクリル酸共重合物、およびカルボキシメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種の界面活性剤、平均1次粒径が100nm〜300nmのポリアミドイミド樹脂微粒子、および分散媒の混合物を機械分散させる分散工程を含むポリアミドイミド樹脂微粒子分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミドイミド樹脂微粒子分散液、およびポリアミドイミド樹脂微粒子分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドイミド樹脂(以下「PAI樹脂」と略すこともある)は、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性等に優れており、産業機器部品、フィルム、電気・電子部品、自動車部品、航空宇宙関連部材に使用されている。また、ポリアミドイミド樹脂は、ペレットとして使用される他に有機溶剤に溶解したワニスとしても使用されている。
【0003】
近年、自動車、電子材料分野では、軽量化、小型化、微細化、薄膜化が進められており、これらの要求に応えるため、部材表面への微細な微粒子の適応が求められている。部材表面にポリアミドイミド樹脂微粒子をコーティングするには、その分散液を均一に部材に塗布した後、分散媒を除去する。また、ポリアミドイミド樹脂微粒子は、他の樹脂や複合材料に混合してチキソトロピー性の付与や耐衝撃性向上等の樹脂物性の改善にも効果があることが知られている。
【0004】
このようにポリアミドイミド樹脂微粒子は多くの用途で使用され、且つ様々な用途展開が期待される。部材表面へのポリアミドイミド樹脂微粒子のコーティングによる部材の軽量化、小型化、微細化、薄膜化のためには、ポリアミドイミド樹脂微粒子の粒径は1μm以下であることが好ましいが、1μm以下のポリアミドイミド樹脂微粒子の粉体は容易に凝集するので、通常、その粉体を樹脂に分散させることは困難である。したがって、その用途に適した分散媒に、ポリアミドイミド樹脂微粒子を均一に分散させた分散液が望まれている。ポリアミドイミド樹脂微粒子を分散媒に均一に分散させるには、微粒子の平均1次粒径が300nm以下であることが望ましく、さらに、分散安定性に優れたポリアミドイミド樹脂微粒子分散液を作製するには、適切な界面活性剤を選択し、機械的分散させることが必要である。
【0005】
ポリアミドイミド樹脂微粒子の合成方法として、例えば、トリメリット酸無水物クロライド等の酸クロリドを含む第1溶液と、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミン化合物を含む第2溶液を、第1溶液と第2溶液のいずれにも可溶な溶媒の存在下、超音波での攪拌によりポリアミドイミド樹脂微粒子を得る方法が知られている(例えば、特許文献1、2、3参照)。しかしながら、特許文献1、2および3では、具体的な製造例としては、酸クロリドとしてジカルボン酸クロリドを使用したポリアミド微粒子の製造が記載されているのみであり、ポリアミドイミド樹脂微粒子の具体的な製造例ならびにポリアミドイミド樹脂微粒子分散液は開示されていない。
【0006】
また、ポリアミドイミド樹脂微粒子の製造方法として、噴霧乾燥法による方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。この方法では、N−メチル−2−ピロリジノンに溶解したポリアミドイミド樹脂をモービルマイナー型スプレードライで噴霧乾燥して、平均粒径4.5μmのポリアミドイミド微粒子を得ている。さらに、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシナネートとトリメリット酸無水物の重合から平均粒径3μmのポリアミドイミド樹脂微粒子を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献5、6参照)。しかしながら、特許文献4、5および6にかかる方法では、平均粒径が1μm以下のポリアミドイミド樹脂微粒子を製造することができない。
【0007】
また、フェニル基を有する界面活性剤水溶液へ、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンに溶解させたポリアミドイミド樹脂を加えて、平均粒径が1μm以下のポリアミドイミド樹脂微粒子を析出させる方法が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
さらに、特許文献8には、有機溶媒にポリアミドイミド樹脂を溶解し、ポリアミドイミド樹脂を貧溶媒へ添加、またはフラッシュ晶析して、平均1次粒径300nm以下のポリアミドイミド樹脂微粒子を製造する方法が報告されている。しかしながら、特許文献7、8には、ポリアミドイミド樹脂微粒子分散液に関しては述べられていない。
【0008】
さらにまた、特許文献9には、ポリアミドイミド樹脂粉末の水分散液の作製方法が記載されているが、分散剤がイミド化率0%〜30%のポリアミド酸に限定されており、使用用途に制限がある。
【0009】
一方、有機溶媒に溶解したポリフェニレンサルファイド樹脂をフラッシュ冷却し、ポリフェニレンサルファイド樹脂微粒子を得、その樹脂微粒子を分散液とする方法が開示されている(特許文献10)。しかしながら、特許文献10には、ポリアミドイミド樹脂微粒子分散液を製造できることは、記載も示唆もされていない。
【0010】
このような状況から、分散安定性に優れた平均1次粒径300nm以下のポリアミドイミド樹脂微粒子の分散液の開発が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4304434号公報
【特許文献2】特開2005−97370号公報
【特許文献3】特開2006−257345号公報
【特許文献4】特開平4−285660号公報
【特許文献5】特開平11−246759号公報
【特許文献6】特開2000−17073号公報
【特許文献7】特開2009−067880号公報
【特許文献8】国際公開第2011/062006号
【特許文献9】特開2010−37506号公報
【特許文献10】国際公開第2009/119466号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は、分散安定性に優れたポリアミドイミド樹脂微粒子分散液、およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、驚くべきことに界面活性剤存在下、ポリアミドイミド樹脂微粒子を分散媒に懸濁し、機械的分散させると安定なポリアミドイミド樹脂微粒子分散液が得られることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、平均1次粒径が100nm〜300nmのポリアミドイミド樹脂微粒子、界面活性剤、および分散媒からなるポリアミドイミド樹脂微粒子分散液である。
また、本発明は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、もしくは高分子界面活性剤存在下、ポリアミドイミド樹脂微粒子を分散媒に機械的分散させる分散工程を含むポリアミドイミド樹脂微粒子分散液の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明を用いれば、工業的に安定して入手することが困難であった平均粒径300nm以下のPAI樹脂微粒子分散液を簡便かつ安定的に製造することができ、広く産業上有用な材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
[原料のPAI樹脂]
本発明で用いるポリアミドイミド樹脂は、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸モノクロリド等の酸成分とアミン成分とを重合させて得られるものである。
PAI樹脂の製造法として、無水トリメリット酸とジイソシアネートを原料とするイソシアナート法(例えば、特公昭50−33120号公報)、無水トリメリット酸クロリドとジアミンをN,N―ジメチルアセトアミド中で重合させる酸クロリド法(例えば、特公昭42−15637号公報)、3価または5価の無機、ないし有機リン化合物の存在下、芳香族トリカルボン酸、その無水物またはそのエステルと、ジアミンとを溶液中で反応させる直接重合法(例えば、特公昭49−4077号公報)が知られているが、本発明におけるPAI樹脂は、いずれの方法によっても製造することができる。
本発明で用いるポリアミドイミド樹脂としては、市販のものから適宜選択して用いることも可能であり、具体的には東レ株式会社製ポリアミドイミド樹脂TI−5013P、ソルベイ社製トーロン等を用いることができる。
【0017】
[PAI樹脂微粒子の製造]
本発明におけるPAI樹脂微粒子は、上記したPAI樹脂を下記で説明する溶解工程と析出工程とを含む方法を経て製造することができる。
【0018】
本発明で用いるポリアミドイミド樹脂微粒子の製造にかかる溶解工程は、下記(a1)および(b1)から選択される。
(a1)ポリアミドイミド樹脂を有機溶媒に溶解させ、ポリアミドイミド樹脂濃度が5質量%未満のポリアミドイミド樹脂溶解液A1とする工程
(b1)ポリアミドイミド樹脂を有機溶媒に溶解させ、ポリアミドイミド樹脂濃度が10質量%未満のポリアミドイミド樹脂溶解液B1とする工程
【0019】
本発明で用いるポリアミドイミド樹脂微粒子の製造にかかる析出工程は、下記(a2)および(b2)から選択される。
(a2)ポリアミドイミド樹脂溶解液A1を、界面活性剤を実質的に含まないポリアミドイミド樹脂の微粒子を析出させる溶媒へ添加して、ポリアミドイミド樹脂の微粒子を析出させる工程
(b2)ポリアミドイミド樹脂溶解液B1を、フラッシュ晶析してポリアミドイミド樹脂の微粒子を析出させる工程
【0020】
上記溶解工程において、(a1)を選択した場合、析出工程は(a2)を選択し、(b1)の溶解工程を選択した場合、(b2)の析出工程を行うものである。すなわち、PAI樹脂の濃度が5質量%未満とする溶解工程(a1)では、PAI樹脂を単に貧溶媒へ添加する析出工程(a2)により微粒子が得られるが、5質量%以上では粗大粒子、もしくは塊状物となる。これに対してフラッシュ晶析による析出工程(b2)では、PAI樹脂の濃度が10質量%未満で微粒子を作製することが可能である。
【0021】
[溶解工程]
本発明における溶解工程は、上記溶解工程(a1)および(b1)から選択されるものである。
まず、ポリアミドイミド樹脂を有機溶媒に溶解させる方法について、以下説明する。
【0022】
本発明において、溶解工程では、有機溶媒を仕込んだ溶解槽内でPAI樹脂を有機溶媒に溶解させる。本発明で使用するPAI樹脂の形態は特に問わないが、具体的に例示するならば、粉末、顆粒、ペレット、フィルム、成形品等があげられる。操作性及び溶解に要する時間を短縮させる観点から、粉末、顆粒、ペレットが望ましく、特に粉末のPAI樹脂が好ましい。ここで、目的とするPAI樹脂微粒子を水溶性塗料等に使用する場合等を含め、共存する無機イオンによる装置の腐食等を防止するために、無機イオンを含有していない粉末、顆粒、ペレット状のPAI樹脂が特に好ましい。
【0023】
溶解工程で使用する有機溶媒は、PAI樹脂が溶解する溶媒であれば何れも使用できる。具体的には、N−メチル−2−ピロリジノン(以下、NMPと略する)等のN−アルキルピロリジノン類、N−メチル−ε−カプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下、DMIと略する)等のウレア類、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略する)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略する)等の鎖状アミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略する)、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン等のイオウ酸化物系極性溶媒の中から少なくとも一種選ばれる溶媒が挙げられる。
【0024】
溶解工程の溶解槽の雰囲気は、空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、あるいは溶媒蒸気の雰囲気下のいずれでも良いが、PAI樹脂の分解、劣化を抑制するため、更には安全に作業を進めるために酸素ガス濃度を低くする方が好ましい。ここで、不活性ガスとしては、窒素ガス、二酸化炭素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、経済性、入手容易性を勘案して、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスが好ましく、特に好ましくは窒素ガスあるいはアルゴンガスが用いられる。また、溶媒蒸気の雰囲気下とする方法としては、(1)溶解槽を減圧または真空にして空気を除去した後に反応槽を昇温する方法、(2)溶解槽内の空気を吸引しつつ、昇温し、溶媒蒸気が充満した状態になったところで吸引を止める方法、(3)溶解槽内の空気を吸引しつつ、溶媒蒸気が充満した状態になったところで吸引を止めるなどの方法、(4)溶解槽内の空気を吸引しつつ、溶媒と同種の蒸気を反応槽中に吹き込む方法、あるいはこれらを組合せた方法が挙げられ、それにより溶解槽内を気化した溶媒蒸気の雰囲気にすることができる。なお、(2)〜(4)の方法を採用する場合は溶解槽内の溶媒の量を把握しておくことが望ましい。
【0025】
PAI樹脂の有機溶媒への溶解方法は特に限定しないが、溶解槽として使用する容器にPAI樹脂、有機溶媒を入れ、撹拌しながら溶解する。常温で溶解しない場合、加熱することにより溶解させる。粒径の揃ったPAI樹脂微粒子を製造するには、PAI樹脂を有機溶媒に完全溶解させてから、析出させる溶媒に添加、もしくはフラッシュ晶析して析出させる方法が好ましいが、未溶解のPAI樹脂が存在してもよい。
【0026】
PAI樹脂の有機溶媒への溶解温度は、使用する有機溶媒の種類やPAI樹脂の濃度によって異なるが、通常は常温〜250℃、好ましくは常温〜100℃である。
PAI樹脂の有機溶媒への溶解時間は、有機溶媒の種類、PAI樹脂の仕込濃度、溶解温度によって異なるが、通常、5分から5時間であり、好ましくは、10分〜4時間の範囲である。
上記操作により、PAI樹脂を有機溶媒に溶解させることができる。
【0027】
本発明における溶解工程(a1)においては、PAI樹脂濃度を5質量%未満のPAI樹脂溶解液A1とする(以下溶解液A1と称する場合がある)。
PAI樹脂溶解液A1の粘度は、PAI樹脂の濃度が増加するにつれて急激に増加する。例えば、有機溶媒がNMPの場合、PAI樹脂濃度が5質量%では、PAI樹脂溶解液の粘度は11mPa・sであるのに対し、10質量%では54mPa・s、15質量%では225mPa・s、20質量%では837mPa・sと急激に増大する(後述の粘度測定法により測定)。
【0028】
PAI樹脂溶解液A1の粘度が高いと、後述する析出工程(a2)において、PAI樹脂溶解液A1を、PAI樹脂の微粒子を析出させる溶媒へ添加して微粒子が析出する際に、微粒子同士の融着等が生じ、粒径の小さな微粒子や粒径の揃った微粒子が得られない。
そのため、PAI樹脂溶解液A1をPAI樹脂を析出させる溶媒へ添加する場合のPAI樹脂の使用量は、通常は有機溶媒とPAI樹脂の合計100質量部に対してPAI樹脂5質量部未満とし、好ましくは0.1質量部以上5質量部未満、より好ましくは0.5〜4質量部である。
【0029】
一方、溶解工程(b1)においては、PAI樹脂濃度を10質量%未満のPAI樹脂溶解液B1とする(以下溶解液B1と称する場合がある)。
すなわち、後述する析出工程(b2)のようにフラッシュ晶析を利用してPAI樹脂微粒子を製造する場合には、PAI樹脂溶解液B1中のPAI樹脂濃度が10質量%未満であれば、安定してPAI樹脂微粒子を製造することが可能である。すなわち、溶解工程(b1)における溶解液B1のPAI樹脂の使用量は、PAI樹脂と有機溶媒の合計100質量部に対しPAI樹脂10質量部未満であり、好ましくは0.1質量部以上〜10質量部未満であり、より好ましくは0.5質量部以上〜7質量部以下である。
上記範囲であれば、析出工程(b2)において、PAI樹脂微粒子を工業生産に適用可能である。本発明においては前記有機溶媒にPAI樹脂を仕込み、常温溶解、もしくは加熱溶解させた後、PAI樹脂溶解液を後述する析出工程に供する。
【0030】
[析出工程]
本発明における析出工程は、析出工程(a2)および(b2)から選択されるものである。
【0031】
[析出工程(a2)]
析出工程(a2)では、溶解工程(a1)によって得たPAI樹脂溶解液A1を、界面活性剤を実質的に含まないPAI樹脂微粒子を析出させる溶媒(以下、析出用溶媒と称する)を仕込んだ他の容器(以下受槽と称する場合もある)内、または受槽内の析出用溶媒中に添加して、PAI樹脂微粒子を析出させる。析出工程(a2)では、常圧条件下(加圧条件下でも良い)で溶解させたPAI樹脂溶解液A1を、常圧条件下で受槽、または受槽内の析出用溶媒中へ添加する。
【0032】
析出工程(a2)における添加とは、単にPAI樹脂溶液A1を析出用溶媒へ入れることを言い、PAI樹脂溶解液A1を、PAI樹脂を析出させる溶媒を入れた容器に連続的に注入しても良いし、滴下しても良い。
【0033】
PAI樹脂微粒子を析出させる析出用溶媒としては、特に制限はないが、析出用溶媒中にPAI樹脂溶解液A1を均一に分散させる観点から、溶解工程で使用する有機溶媒と均一に混合する溶媒であることが好ましい。ここで均一に混合するとは、PAI樹脂を溶解する有機溶媒と析出用溶媒とを混合した場合、1日静置しても界面が現れず、均一に混じり合うことをいう。例えば、水に対しては、NMP、DMF、DMAc、アセトン、DMSO、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等が均一に混じり合う溶媒として挙げることができる。
【0034】
さらには、微細なPAI樹脂微粒子が得られる点、粒径が揃いやすい点から、析出用溶媒は、溶解工程(a1)で用いた有機溶媒と均一に混合する溶媒であって、かつPAI樹脂の貧溶媒であるか、または溶解工程(a1)で用いた有機溶媒と均一に混合する溶媒と貧溶媒とを含むことが好ましい。なお、PAI樹脂に対する溶解性は、同じ溶媒であっても温度により変化するため、ここでいう貧溶媒は、PAI樹脂溶解液A1を添加する際の温度において、PAI樹脂を溶解しにくい溶媒、すなわち添加するPAI樹脂溶解液A1中に溶解しているPAI樹脂を、析出させ得る溶媒であれば貧溶媒として用いることができる。そのため、溶解液A1に用い得る有機溶媒であっても、より低温とすることによりPAI樹脂の溶解性を所望の程度まで低下する有機溶媒であれば貧溶媒として使用することが可能である。
【0035】
例えば、析出工程(a2)で用いる析出用溶媒としては、NMPを溶解工程(a1)の有機溶媒に選択した場合には、NMP、アルコール類、アセトン類、水等が使用できる。析出用溶媒は、目的に応じて析出させる溶媒を選択することができる。析出用溶媒は、特に微細かつ粒径の揃ったPAI樹脂微粒子が得られやすい点から水を用いることが好ましい。
【0036】
また、析出工程(a2)で用いる析出用溶媒は、溶解工程(a1)で使用する有機溶媒と均一に混合するならば、単一の溶媒を用いてもよいし、2種類以上の溶媒を混合して用いてもよいが、特に微細かつ粒径の揃った微粒子が得られやすい点から水を含む混合溶媒を用いるのが好ましい。
析出工程(a2)で用いる析出用溶媒の使用量は特に限定しないが、溶解工程(a1)の有機溶媒1質量部に対して0.3〜100質量部の範囲を例示することができ、好ましくは0.4〜50質量部、更に好ましくは0.4〜10質量部である。
【0037】
PAI樹脂溶解液A1を析出用溶媒中に添加する場合、析出用溶媒を仕込んだ受槽を冷却しても、冷却しなくても良い。この添加によりPAI樹脂溶解液A1からPAI樹脂微粒子が析出し、PAI樹脂微粒子が分散もしくは懸濁した液(以下、懸濁液A2と称する)が得られる。受槽を冷却する場合、冷媒、あるいは氷水で冷却する。受槽の冷却温度は、使用する析出用溶媒により異なるが、PAI樹脂微粒子の析出用溶媒の凝固点〜凝固点+50℃、具体的には、水を析出用溶媒として使用する場合、添加直前の温度として0〜40℃が好ましく、0〜30℃がより好ましい。また、PAI樹脂微粒子を析出させる溶媒は、添加の際攪拌することが好ましい。
【0038】
[析出工程(b2)]
析出工程(b2)では、溶解工程(b1)によって得たPAI樹脂溶解液B1を、フラッシュ晶析してPAI樹脂微粒子を析出させる。
【0039】
本発明において、フラッシュ晶析とは、加熱・加圧下にある溶解槽内のPAI樹脂溶解液B1を、析出用溶媒が仕込まれた受槽内の温度および圧力を、溶解工程(b1)で用いた有機溶媒の沸点以下(受槽を冷却しても良い)・溶解槽の圧力以下(減圧下でも良い)に制御し、該制御された受槽中、または受槽内の析出溶媒中にノズルを介して噴出、あるいは、加圧下にあるPAI樹脂溶解液B1を、析出用溶媒が仕込まれた受槽内の圧力を、溶解槽の圧力以下(減圧下でも良い)に制御し、該制御された受槽内、または受槽内の析出用溶媒中にノズルを介して噴出させて移液し、それにより微細な微粒子を晶析させる方法を指す。
【0040】
PAI樹脂溶解液B1をフラッシュ晶析する場合、PAI樹脂溶解液B1が噴出するノズルの先端を受槽側の溶媒中に入れた状態でも、ノズル先端を析出用溶媒から離し、気相を介して析出用溶媒中にフラッシュしてもよいが、ノズルの先端を析出用溶媒中に入れてフラッシュすることが好ましい。
【0041】
PAI樹脂溶解液B1のフラッシュ晶析によるPAI樹脂微粒子の製造では、PAI樹脂の濃度を所定濃度以下に制御すれば、平均1次粒径300nm以下、特に200nm以下のPAI微粒子を得ることができる。
しかも、フラッシュ晶析では、高圧でPAI樹脂溶解液B1を一挙に押し出すので、PAI樹脂溶解液B1がより短時間で受槽中の析出用溶媒に拡散し、微細で、球状または球状に近いPAI微粒子が生成する。ノズルの先端を析出用溶媒中に入れてフラッシュ晶析する場合、PAI樹脂溶解液B1が、直接析出用溶媒に接触し、拡散するため、微細で、より球状または球状に近いPAI微粒子を得ることができる。そのため析出用溶媒中にフラッシュするフラッシュ晶析を用いることがより好ましい。
【0042】
また、析出工程(b2)のフラッシュ晶析は、加熱・加圧下、または加圧下に保持した溶解槽内のPAI樹脂溶解液B1を、大気圧下(減圧下でもよい)の受槽にフラッシュ晶析することにより行うことが好ましい。例えば溶解工程(b1)において、溶解槽としてオートクレーブ等の耐圧容器中で加熱・溶解させると容器内は加熱による自製圧により加圧状態となる(窒素等の不活性ガスでさらに加圧してもよい)。この状態から放圧して大気圧下の受槽に放出させることにより、PAI樹脂微粒子の析出をよりいっそう簡便に行うことができる。また、溶解工程(b1)において、常温、加圧下でPAI樹脂を有機溶媒に溶解させた場合、PAI樹脂溶解液B1を、大気圧下(減圧下でもよい)の受槽内の析出用溶媒中にフラッシュ晶析することにより、PAI樹脂微粒子を得ることができる。
【0043】
析出工程(b2)で用いる析出用溶媒としては、特に制限はなく、析出工程(a2)で説明したのと同様のもの、例えば、溶解工程(b1)で用いた有機溶媒と均一に混合する溶媒であって、かつPAI樹脂の貧溶媒であるか、または溶解工程(b1)で用いた有機溶媒と均一に混合する溶媒と貧溶媒との混合液を用いることができる。
析出工程(b2)で用いる析出用溶媒の使用量は特に限定しないが、溶解工程(b1)で使用する有機溶媒1質量部に対して0.3〜100質量部の範囲を例示することができ、好ましくは0.4〜50質量部、更に好ましくは0.4〜10質量部である。
【0044】
析出工程(a2)におけるフラッシュ晶析方法は特に限定しないが、通常は常温〜250℃、好ましくは常温〜100℃の溶解液B1を加圧されている圧力以下、あるいは減圧下の容器に1段でフラッシュ晶析する方法、または溶解液B1を入れた溶解槽内よりも圧力の低い容器に多段でフラッシュ晶析する方法等が採用できる。具体的には、例えば前記溶解工程において、溶解槽としてオートクレーブ等の耐圧容器中で加熱・溶解させると、容器内は加熱による自製圧により加圧状態となる(窒素等の不活性ガスでさらに加圧してもよい)。この加圧状態とした溶解液B1を、PAI樹脂微粒子の析出用溶媒を入れた大気圧の受槽にフラッシュさせるか、減圧下の受槽にフラッシュさせる。また、オートクレーブ等の耐圧容器中で加熱しないで溶解させた場合、任意の圧力に加圧して加圧状態とした溶解液B1を、PAI樹脂微粒子の析出用溶媒を入れた大気圧の受槽にフラッシュさせるか、減圧下の受槽にフラッシュさせる。フラッシュ晶析する溶解液の圧力(ゲージ圧)は0.2〜4MPaであることが好ましい。この環境からこれをフラッシュ晶析、好ましくは大気圧下に、より好ましくは大気圧下の受槽にフラッシュ晶析することが好ましい。
【0045】
PAI樹脂微粒子溶解液B1をフラッシュ晶析する場合は、受槽を冷却しても冷却しなくても良い。フラッシュ晶析によりPAI樹脂溶解液B1からPAI樹脂微粒子が析出し、PAI樹脂微粒子の分散もしくは懸濁した液(以下、フラッシュ液B2と称する)が得られる。分散した液(以下、分散液と称することもある)とは、その液を1日以上静置しても微粒子が沈降せず、分散媒と微粒子との界面が現れない液のことを言い、懸濁した液(以下、懸濁液と称することもある)とは、1日静置すると微粒子が沈降し、分散媒と微粒子との界面が現れる液のことを言う。ここで、PAI樹脂微粒子の分散液、もしくは懸濁液の分散媒は、溶解工程で使用する有機溶媒と析出工程で使用する析出用溶媒の混合物である。受槽を冷却する場合、冷媒、あるいは氷水で冷却する。受槽の冷却温度は、析出用溶媒により異なるが、PAI樹脂微粒子を析出させる溶媒が凝固しない温度〜15℃、具体的には析出用溶媒として水を使用する場合、フラッシュ晶析直前の温度として0〜40℃が好ましく、0〜30℃がより好ましい。
【0046】
フラッシュ晶析方法では、溶解槽からの連結管出口を受槽の大気中、または析出用溶媒中に入れ、フラッシュ晶析する方法が挙げられるが、析出用溶媒中に入れる方がより微細なPAI樹脂微粒子が得られるので好ましい。
【0047】
析出工程(b2)により得られるPAI樹脂微粒子は、分散液もしくは懸濁液の状態で得ることができる。なお、この際、仕込んだPAI樹脂の未溶解分等の粗粒を含む場合には、ろ過等により除くことも可能である。
【0048】
析出工程(a2)および析出工程(b2)により得られるPAI樹脂微粒子は、平均1次粒径が100nm以上300nm以下、より好ましい態様においては100nm以上200nm以下の微粒子である。PAI樹脂微粒子の1次粒径の下限としては90nm程度である。また、粒度の揃った微粒子が得られ、通常変動係数が70%以下、好ましい態様においては60%以下であるポリアミドイミド樹脂微粒子が得られる。
【0049】
[ろ過・単離工程]
本発明において、析出工程(a2)および(b2)で得られたPAI樹脂微粒子を含む懸濁液A2またはフラッシュ液B2からPAI樹脂微粒子を単離する方法としては、ろ過、遠心分離、遠心ろ過等の従来公知の固液分離方法で行うことができる。平均1次粒径300nm以下の微細なPAI樹脂微粒子を固液分離操作で効率よく単離するためには、凝集によって粒径を増大させた後、ろ過や遠心分離等の固液分離操作を行うことが望ましい。凝集によって粒径を増大させる方法としては、経時的に凝集させる自然凝集法、塩析による凝集法などを用いることができる。これらの凝集法を用いることにより工業的な固液分離方法に適した粒径の大きな凝集体を得ることができる。凝集により得られるPAI樹脂微粒子の平均粒径としては5〜100μm(後述の測定方法による粒径)、好ましくは、20〜100μmである。
【0050】
具体的には、自然凝集法の場合、析出工程(a2)および(b2)で得られた懸濁液A2またはフラッシュ液B2を、1日以上静置することにより、あるいは、無機金属塩、または有機金属塩(無機金属塩、有機金属塩を合わせて塩析剤と略すことがある)をPAI樹脂微粒子1質量部に対して0.01〜1000質量部、好ましくは0.02〜500質量部程度を加える塩析により粒径の大きな凝集体を得ることができる。塩析により樹脂微粒子を凝集する場合、具体的には、懸濁液A2、もしくはフラッシュ液B2に直接塩析剤を添加する、あるいは、上記塩析剤の0.1〜20質量%の溶液を懸濁液A2、もしくはフラッシュ液B2に添加する等の方法が挙げられる。塩析剤として使用する無機金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化カリウム等が挙げられる。塩析剤として使用する有機金属塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム等が挙げられる。塩析剤を溶解させる溶媒としては、水が好ましい。また、上記塩析剤をあらかじめ析出工程(a2)、もしくは析出工程(b2)の析出用溶媒中に添加し、溶解しておくこともできる。このときのPAI樹脂微粒子の析出用溶媒としては、水が好ましい。添加する塩析剤の量はPAI樹脂微粒子1質量部に対して0.01質量部以上でかつ、PAI樹脂微粒子を析出させる溶媒への飽和溶解量以下が望ましい。本発明のように析出工程(a2)または(b2)により得られたPAI樹脂微粒子は、このような方法で凝集させることにより固液分離が容易となる。また、このような方法で凝集させても極めて再分散の容易なPAI樹脂微粒子が得られるのである。
【0051】
上記凝集で得られたPAI樹脂微粒子の固液分離の方法としては、ろ過、遠心分離等の方法が挙げられる。ろ過や遠心分離の際にはメンブレンフィルター(ろ過)やろ布(ろ過、遠心分離)などを使用できる。フィルターの目開きとしては、得ようとするPAI樹脂微粒子の粒度に応じて適宜決定されるが、メンブレンフィルターの場合、通常0.1〜50μm程度、ろ布の場合、通気度が5cm/cm・sec at 124.5Pa以下のものが使用できる。固液分離後のウエットケークを分散媒に再分散して分散液を調整するには(分散工程)、ウエットケーク中の溶媒を分散工程で用いる分散媒へ置換する。分散媒へ置換するには、ウエットケークを分散工程で用いる分散媒でリスラリーするか、分散工程で用いる分散媒でかけ洗い洗浄すれば良い。
【0052】
[分散工程]
本発明のPAI樹脂微粒子分散液は、上記ろ過・単離工程で得られたPAI樹脂微粒子を、界面活性剤および分散媒とともに機械的分散を行なうことにより、凝集したPAI樹脂微粒子を再分散してPAI樹脂微粒子分散液を得る。ろ過・単離工程でPAI樹脂微粒子を乾燥させると分散されがたくなるため、所望の平均粒径のPAI樹脂微粒子分散液を得るためには、分散工程で用いるPAI樹脂微粒子が分散媒を含んだ状態にしておくことが必要である。分散工程に用いるPAI樹脂微粒子は50質量%以上の分散媒を含んだ状態であることが好ましい。
【0053】
本発明のPAI樹脂微粒子分散液において、分散媒として用いられる溶媒は、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン等の炭素数が1〜6の直鎖状または環状の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、2−メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル等のエステル系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、1−クロロナフタレン、ヘキサフルオロイソプロパノール等のハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン等の炭素数が1〜6の直鎖状または分枝状のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等の炭素数が1〜6の直鎖状または分枝状のアルコール系溶媒、N−メチル−2−ピロリジノン、N−エチル−2−ピロリジノン等のラクタム環内の窒素に炭素数1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基が結合するN−アルキルピロリジノン系溶媒、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−エチル−ε−カプロラクタム等のラクタム環内の窒素に炭素数1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基が結合するN−アルキルカプロラクタム系溶媒、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン等の極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジグライム、ジメトキシエタン等の炭素数が1〜6の直鎖状、分枝状または環状のエーテル系溶媒等の有機溶媒、および水の中から選ばれる少なくとも一種の溶媒を例示できる。水、または、炭素数が1〜6の直鎖状または分枝状のアルコール系溶媒、カルボニル炭素に炭素数が1〜6の同一または異なるアルキル基が結合するケトン系溶媒、ラクタム環内の窒素に炭素数1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基が結合するN−アルキルピロリジノンが好ましい。電子部品等の製造工程で有機溶媒を使用し、水の使用が好ましくない場合、有機溶媒の分散液が用いられ、水性塗料や水系コーティング剤等の用途、部材の製造工程で水が使用できる用途では、水分散液が用いられる。このように用途により、有機溶媒を分散媒とする分散液や水を分散媒とする分散液が使い分けられており、用途の応じて分散媒を選択可能なPAI樹脂微粒子分散液が求められている。
【0054】
本発明のPAI樹脂微粒子分散液は、固液分離操作等で得られた凝集したPAI樹脂微粒子に界面活性剤、分散媒を加えて分散工程に供する。機械的分散によって生成するPAI樹脂微粒子の再凝集を抑制し、分散媒への分散性を向上させるために、界面活性剤の添加を行う。界面活性剤の添加時期は、機械的分散の前後いずれでもかまわないが、機械的分散中のPAI樹脂微粒子の凝集防止のため、分散前添加、または分散前添加と分散中添加を併用した添加方法が好ましい。
【0055】
本発明において用いる界面活性剤としては、使用する分散媒に溶解するものであれば良く、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤、高分子界面活性剤等が挙げられる。
【0056】
アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、アルキルエーテル硫酸ナトリウム、モノアルキルリン酸カリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸カリウム、脂肪酸エステルスルホン酸ナトリウム、脂肪酸エステル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸アルキロースアミド硫酸エステルナトリウム、脂肪酸アミドスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0057】
カチオン系界面活性剤としては、アルキルメチルアンモニウムクロリド、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、アルキルピリジニウムクロリドなどが挙げられる。
【0058】
両性イオン界面活性剤としては、アルキルアミノカルボン酸塩、カルボキシベタイン、アルキルベタイン、スルホベタイン、ホスホベタインなどが挙げられる。
【0059】
非イオン系界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンビフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェノキシフェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸トリエタノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどが挙げられる。
【0060】
なお、上記の界面活性剤の例示において、アルキルとは、炭素数1から30までの直鎖型飽和炭化水素基、または分岐型飽和炭化水素基が挙げられる。アルキルの代わりに直鎖型不飽和炭化水素基、または分岐型不飽和炭化水素基であってもよい。
【0061】
高分子界面活性剤としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリピロール、ポリチオフェン、(メタ)アクリル酸共重合物、マレイン酸共重合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ビニルピリジン共重合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアクリルアミド等の合成系高分子界面活性剤、カルキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセスロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の半合成系高分子界面活性剤が用いられる。
【0062】
なお、高分子界面活性剤は、非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の一般的な界面活性剤が分子内に一対の親水性基と親油性基を持つ構造に対し、分子内に多数の親水性基と親油性基を有する複雑な構造を持ち、且つ分子量も大きい界面活性剤のことである。このように一般的な界面活性剤と高分子界面活性剤は、構造的にも分子量的にも大きく異なる。本発明で用いる高分子界面活性剤は、数平均分子量が1000以上(GPC測定、スチレン換算)の高分子界面活性剤が好ましく、5,000以上がより好ましい。上限としては特に制限はないが、1,000,000以下であることが好ましい。
【0063】
本発明のPAI樹脂微粒子分散液中の界面活性剤の添加量は、PAI樹脂微粒子100質量部に対して0.01〜100質量部の範囲であり、好ましくは0.5〜100質量部の範囲であり、より好ましくは、1〜100質量部の範囲である。この範囲の量の界面活性剤を用いることにより、機械的分散によって得られたPAI樹脂微粒子を分散媒に均一に分散させることができる。
また、本発明のPAI樹脂微粒子分散液中のPAI樹脂微粒子と分散媒との混合割合は、分散媒100質量部に対してPAI樹脂微粒子1〜50質量部の範囲であることが好ましく、特に1〜30質量部であることが好ましい。
【0064】
本発明において、上記ろ過・単離工程で得られたPAI樹脂微粒子は、最大限平均粒径が小さくなるように機械的分散される。機械的分散後のPAI樹脂微粒子分散液中のPAI樹脂微粒子の平均粒径は、後述の測定方法において、500nm以下である。PAI樹脂微粒子分散液においても、場合によっては粗粒や沈殿物を含む場合もある。その際には、粗粒や沈殿物と分散部を分離して利用してもよい。分散液のみを得る場合には、粗粒や沈殿物と分散部の分離を行えばよく、そのためには、デカンテーション、ろ過、遠心分離などを行い粗粒や沈殿部分を除去すればよい。
なお、本明細書において、分散とは、室温(25℃)条件下にて1日以上静置してもPAI樹脂微粒子と分散媒との界面が現れない状態をいう。
【0065】
本発明において、上記ろ過・単離工程で得られたPAI樹脂微粒子は、後述する測定方法により平均粒径が500nm以下になるまで、上記界面活性剤および分散媒とともに機械的分散を行うことが好ましい。本発明のPAI樹脂微粒子分散液において、分散しているPAI樹脂微粒子の平均粒径の下限に制限はないが、凝集抑制の点から100nm以上であることが好ましい。
【0066】
本発明において使用する機械的分散装置として、市販の機械的分散装置を挙げることができる。特にPAI樹脂微粒子を効率よく分散し、粒径の小さなPAI樹脂微粒子の分散液を作製するために好適な機械的分散装置として、超音波分散装置、ボールミル装置、ビーズミル装置、サンドミル装置、コロイドミル装置、湿式ジェットミル装置、湿式微粒化装置(例えば、スギノマシン製アルティマイザー)等が挙げられるが、なかでも超音波分散装置、ビーズミル装置、コロイドミル装置、湿式微粒化装置、湿式ジェットミル装置から選択される装置が好ましい。機械的分散の際の分散の力は一般に大きくなるほど、また分散時間が長くなるほど得られるPAI樹脂微粒子の平均粒径は、小さくなる方向にあるが、これらが過度になると再凝集が生じやすくなるので、適切な範囲に制御される。例えばビーズミルではビーズ径やビーズ量の選択、周速の調整で、その制御が可能であり、超音波分散装置では、超音波周波数の選択、超音波出力の調整で、その制御が可能である。
【0067】
上記によりPAI樹脂微粒子が微細に分散した、安定性の高いPAI樹脂微粒子の分散液を得ることができる。
このような微細なPAI樹脂微粒子の分散液は、室温(25℃)条件下にて5日間静置してもPAI樹脂微粒子が凝集せず、塗料、接着剤、ポリマーコンパウンド分野における特に有用な添加剤として使用することができる。
【実施例】
【0068】
[平均粒径の測定]
PAI樹脂微粒子の平均粒径は日機装製レーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置MT3300EXIIを用い、分散媒としてポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(商品名ノナール912A 東邦化学工業製 以後、ノナール912Aと称す)の0.5質量%水溶液を用いて測定した。具体的にはマイクロトラック法によるレーザーの散乱光を解析して得られる微粒子の総体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブが50%となる点の粒径(メジアン径:d50)を微粒子の平均粒径とした。
【0069】
[平均1次粒径の測定]
本発明での平均1次粒径は日本電子製走査型電子顕微鏡JEOL JMS−6700Fで得られた画像(倍率:30,000倍)から任意の100個の粒子を選び、その最大長さを粒径として粒径を測長し、その平均値を平均1次粒径とした。
【0070】
[機械的分散]
機械的分散は日本精機製超音波ホモジナイザー、US−300T(超音波発振器:定格出力300W、発振周波数19.5KHz±1KHz(周波数自動追尾型)、超音波変換器:φ26mmPZT(ボルト締電歪型)振動素子)を用い、所定の出力になるように調整の上超音波発振チップをPAI樹脂微粒子分散液中に接液して行った。
【0071】
製造例1
〔溶解工程〕
溶解槽として10Lのオートクレーブを使用し、該オートクレーブに撹拌機、温度測定器、およびインターナルの溶解液抜き出し管を装着した。抜き出し管にはバルブ開閉ができる連結管を装着した。また、フラッシュ晶析の受槽として50Lの耐圧タンクを使用し、該耐圧タンクに撹拌機、コンデンサー、ガス通気管、および前記溶解槽に装着した連結管の他端(フラッシュ晶析出口)を受槽の析出用溶媒中に入る位置に装着した。
溶解槽にPAI樹脂(東レ株式会社製、TI―5013P)180g、NMP(関東化学社製)5,820g(PAI樹脂濃度:3質量%)を仕込み、窒素置換して密封し、室温で1時間撹拌した後、窒素ガスで0.5MPaまで加圧した。
〔析出工程〕
前記受槽に、析出用溶媒として水6,000gを投入し、受槽に設置した連結管の先端を水中に入れた。受槽を氷冷し、窒素ガスを通気した。このとき受槽の温度は5℃であった。溶解槽の連結管のバルブを開き、PAI樹脂溶解液を受槽水中にフラッシュ晶析し、フラッシュ液を得た。
次いで、フラッシュ液に5質量%酢酸マグネシウム水溶液180gを加え、30分間撹拌した後、1時間静置した。懸濁液をろ過、水洗してPAI樹脂微粒子ウエットケークを得た(固形分濃度:17.5質量%)。平均1次粒径は110nmであった。
【0072】
実施例1
製造例1のPAI樹脂微粒子ウエットケーク34.3gに10質量%ポリオキシエチレンオレイルエーテル(エチレンオキシド24モル付加物)水溶液12g、イオン交換水28.7gを加えて1400rpmで10分間攪拌して懸濁液を得た。その懸濁液を超音波(120W)で40分間処理し、平均粒径287nmまで分散した。遠心分離により粗粒を除去し、平均粒径200nmの分散液を得た。この分散液は、5日室温間静置しても凝集せず、安定であった。
【0073】
実施例2
製造例1のPAI樹脂微粒子ウエットケーク34.3gに10質量%ポリオキシエチレンオレイルエーテル(エチレンオキシド40モル付加物)水溶液12g、イオン交換水28.7gを加えて1400rpmで10分間攪拌して懸濁液を得た。その懸濁液を超音波(120W)で40分間処理し、平均粒径285nmまで分散した。遠心分離により粗粒を除去し、平均粒径200nmの分散液を得た。この分散液は、5日間室温静置しても凝集せず、安定であった。
【0074】
実施例3
製造例1のPAI樹脂微粒子ウエットケーク34.3gにラテムルASK(花王株式会社、アルケニルコハク酸ジカリウム)4.3g、イオン交換水36.4gを加えて1400rpmで10分間攪拌して懸濁液を得た。その懸濁液を超音波(120W)で40分間処理し、平均粒径288nmまで分散した。遠心分離により粗粒を除去し、平均粒径198nmの分散液を得た。この分散液は、5日間室温静置しても凝集せず、安定であった。
【0075】
実施例4
製造例1のPAI樹脂微粒子ウエットケーク34.3gにネオペレックスG−15(花王株式会社、ドデシルベンゼンスルホン酸)7.5g、イオン交換水33.2gを加えて1400rpmで10分間攪拌して懸濁液を得た。その懸濁液を超音波(120W)で40分間処理し、平均粒径290nmまで分散した。遠心分離により粗粒を除去し、平均粒径198nmの分散液を得た。この分散液は、5日間室温静置しても凝集せず、安定であった。
【0076】
実施例5
製造例1のPAI樹脂微粒子ウエットケーク34.3gにポリビニルピロリドンK30(東京化成株式会社)1.2g、イオン交換水39.5gを加えて1400rpmで10分間攪拌して懸濁液を得た。その懸濁液を超音波(120W)で40分間処理し、平均粒径286nmまで分散した。遠心分離により粗粒を除去し、平均粒径199nmの分散液を得た。この分散液は、5日間室温静置しても凝集せず、安定であった。
【0077】
実施例6
製造例1のPAI樹脂微粒子ウエットケーク34.3gにポリスチレンカルボン酸(東ソー株式会社)1.2g、イオン交換水39.5gを加えて1400rpmで10分間攪拌して懸濁液を得た。その懸濁液を超音波(120W)で40分間処理し、平均粒径290nmまで分散した。遠心分離により粗粒を除去し、平均粒径200nmの分散液を得た。この分散液は、5日間室温静置しても凝集せず、安定であった。
【0078】
実施例7
製造例1のPAI樹脂微粒子ウエットケーク中の水をイソプロピルアルコールに置換し、イソプロピルアルコールのウエットケークとした(固形分濃度:17.9質量%)。そのウエットケーク20.9gにポリビニルピロリドンK30(東京化成株式会社)0.75g、イソプロピルアルコール53.4gを加えて1400rpmで10分間攪拌して懸濁液を得た。その懸濁液を超音波(120W)で40分間処理し、平均粒径1.5μmまで分散した。遠心分離により粗粒を除去し、平均粒径240nmの分散液を得た。この分散液は、5日間室温静置しても凝集せず、安定であった。
【0079】
実施例8
製造例1のPAI樹脂微粒子ウエットケーク中の水をn−プロピルアルコールに置換し、n−プロピルアルコールのウエットケークとした(固形分濃度:18.3質量%)。そのウエットケーク20.5gにポリビニルピロリドンK30(東京化成株式会社)0.75g、n−プロピルアルコール53.9gを加えて1400rpmで10分間攪拌して懸濁液を得た。その懸濁液を超音波(120W)で40分間処理し、平均粒径1.7μmまで分散した。遠心分離により粗粒を除去し、平均粒径248nmの分散液を得た。この分散液は、5日間室温静置しても凝集せず、安定であった。
【0080】
比較例1
製造例1のPAI樹脂微粒子ウエットケーク34.3gにイオン交換水40.7gを加えて1400rpmで10分間攪拌して懸濁液を得た。その懸濁液を超音波(120W)で40分間処理し、平均粒径292nmまで分散した。遠心分離により粗粒を除去し、平均粒径200nmの分散液を得た。この分散液を室温静置すると除々に凝集し、2日後の平均粒径は、4.5μmであった。
【0081】
比較例2
実施例7のウエットケーク20.9gにイソプロピルアルコール54.1gを加えて1400rpmで10分間攪拌して懸濁液を得た。その懸濁液を超音波(120W)で40分間処理したが、平均粒径5.5μmまでしか分散できなかった。