(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
石油精製や石油化学などの技術分野では種々の炭化水素系ガスが発生するが、必ずしも効率よく種々の物質の原料ガスなどとして利用できておらず、より有効な物質に変換する方法が求められている。
【0003】
このような状況の下で、炭化水素系ガスを改質することによって水素および一酸化炭素を含む合成ガスを製造する方法として、炭化水素系の原料ガスを、水蒸気の存在下に水素と一酸化炭素とを含む合成ガスに改質する水蒸気改質の方法が知られている。
【0004】
この、炭化水素系ガスの水蒸気改質は、メタンなどの飽和炭化水素と水蒸気とを触媒の存在下に反応させ、比較的水素濃度の高い合成ガスを製造するのに適している。
【0005】
ところで、これら炭化水素系ガスの改質では、炭化水素が分解する過程で触媒上に炭素が析出することがある。この炭素析出の程度は炭化水素改質条件によって異なり、水蒸気改質の方法の場合、比較的炭素析出量が少ないと言われている。しかしながら、触媒上に析出する炭素は徐々に蓄積して触媒活性を低下させ、多量に析出した場合には反応管を閉塞させるおそれがあり、炭化水素の水蒸気改質においても、一般的には水蒸気と炭化水素の比(以下「水蒸気/炭化水素比」)を高く設定し、水蒸気を過剰に導入することにより炭素析出を抑制している。
【0006】
そして、炭化水素の改質触媒としては、アルミナなどの基体にニッケルを担持させたニッケル系触媒、ルテニウムを担持させたルテニウム系触媒(特許文献1参照)、さらには、アルミナなどの基体にロジウムを担持させたロジウム系触媒(特許文献2参照)などが知られている。
【0007】
また、炭素析出の抑制と低温での活性向上を目的に、ペロブスカイト型化合物であるアルミン酸ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムを用いた担体上に、ロジウム、コバルト、およびニッケルを活性成分として担持した触媒が知られている(特許文献3参照)。
【0008】
ところで、一般的な金属担持触媒の製造方法としては、担体となる酸化物を金属塩などの溶液に侵した後、熱処理を行うことで担体表面に活性金属を分散させる含侵法が用いられている(特許文献1〜3)。
【0009】
なお、担体成分は高い熱安定性や強度が求められるため、高温で熱処理を行うことで十分に安定化/焼結されるのに対して、担持金属は高い活性を得るために分散性を維持する必要がある。したがって、熱処理工程における凝集を最低限に抑えるために、上記の含侵法のように、担体の合成とは別の製造工程を用い、比較的低温の熱処理条件において担体上に固定されている。
【0010】
含侵工程を用いない触媒の製造方法としては、担体成分とともにNi化合物を混合、焼成して触媒を製造する混錬法がある。
【0011】
また、固相合成により担体成分であるSrTiO
3中にNiOを固溶させることでNi成分の分散性を向上させる方法(固相法)も提案されている(特許文献4)。
【0012】
しかしながら、含侵法により製造した触媒は、高い金属分散性を維持できるものの、担体成分の合成工程とは別に、金属成分を担持する含侵工程が必要となる。また、金属成分は比較的低温の熱処理により固着されるため、金属−担体間の結合が弱く、炭素析出による活性低下が問題となる。
【0013】
一方、固相法では、担体成分の合成と同時に金属成分の酸化物や塩を混合して熱処理することで、担体の合成/焼結と同時に金属成分を固着することができる。そして、固相法の場合、担体の合成/焼結のために高温で熱処理が行われることから、金属−担体間の結合が強くなり、炭素析出耐性が高くなる。しかしながら、金属成分が凝集するため、触媒活性が低くなるという問題がある。
【0014】
また、特許文献4の改質触媒のように、炭素析出耐性の高いSrTiO
3担体にNiOを固溶させることにより金属分散性を向上させるようにした改質触媒の場合も、SrTiO
3相に対するNiOの固溶量が少ないことから、固溶限界を超えたNi成分の分散性が低いため、低温域で触媒活性を高くすることは困難であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するものであり、プロパンなどの炭化水素を、水蒸気を用いて改質する際の水蒸気改質反応における活性が高く、特に燃料電池など低温域での触媒活性が求められる用途に適した炭化水素改質触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の炭化水素改質触媒は、
炭化水素系ガスを、水蒸気を用いて改質し、水素と一酸化炭素とを含む合成ガスを得るために
、還元処理を行ってから使用される触媒であって、
還元処理を行う前の状態において、BaNiY
2O
5およびBaZrO3を含有することを特徴としている。
【0018】
また、Ba、Zr、およびYのモル数が、Ba/(Zr+Y)=1の要件を満たしていることが好ましい。
【0019】
上記要件を満たすことにより、さらに確実に、水蒸気改質反応における活性の高い炭化水素改質触媒を提供することが可能になる。
【0020】
また、ZrとYのモル比が、Zr:Y=0.8:0.2〜0.5:0.5の範囲にあることが好ましい。
【0021】
上記要件を満たすことにより、水蒸気改質反応における活性の高い炭化水素改質触媒を提供することが可能になり、例えば、プロパンを水蒸気改質する場合に、600℃というような低い温度条件下で、70%以上のプロパン転化率を実現することができる。
【0022】
また、本発明
の炭化水素改質触媒は
、還元処理を行うと、(a)金属Niと、(b)BaとZrとYの複合酸化物とを含む
物質となることを特徴としている。
【0023】
また、上述の(a)金属Niと、(b)BaとZrとYの複合酸化物と、を含む炭化水素改質触媒においては、前記金属Niの粒子径が50nm以下であることが好ましい。
【0024】
金属Niの粒子径が50nmになるようにした場合、Ni粒子の比表面積が大きく、水蒸気改質反応における活性の高い炭化水素改質触媒を提供することができるようになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の炭化水素改質触媒は、BaNiY
2O
5を含有するものであることから、例えばプロパンなどの炭化水素系ガスを、水蒸気を用いて改質する場合に、600℃程度の低い温度条件(改質条件)下においても、高い触媒活性を示し、効率よく水蒸気改質を行うことが可能になる。
また、本発明の炭化水素改質触媒は、BaZrO3を含有している、すなわち、触媒中にBaZrO3相が共存していることにより、触媒の焼結を抑制することが可能になる。その結果、大きな比表面積を維持することが可能になり、水蒸気改質反応における活性の高い炭化水素改質触媒を提供することができるようになる。
【0026】
そのため、本発明の炭化水素改質触媒は、特に燃料電池など低温域での触媒活性が求められる用途に有意義に用いることができる。
なお、本発明の炭化水素改質触媒においては、触媒中にBaNiY
2O
5相を含むことから、還元前処理によって生成するNiが高い分散性を有し、低温であっても高い活性を発現する。
【0027】
また、請求項1〜
3のいずれかに記載の本発明の炭化水素改質触媒を還元処理することにより得られる、(a)金属Niと、(b)BaとZrとYの複合酸化物とを含む炭化水素改質触
媒は、炭化水素ガスの改質に用いられて、請求項1〜
3のいずれかの触媒の形態(酸化された形態)と、上述の(a)金属Niと、(b)BaとZrとYの複合酸化物とを含む触媒の形態(還元された形態)との間で形態の変化を繰り返すことにより、継続的に活性の高い炭化水素改質触媒として使用することができる。
【0028】
本発明にかかる炭化水素改質触媒は、炭化水素と水を原料として、水素と一酸化炭素とを含む合成ガスを製造する際の触媒として機能する。
例えば、炭化水素がプロパンである場合に、本発明にかかる炭化水素改質触媒を用いることにより、下記の式(1)に示すように、プロパン(C
3H
8)と、水(H
2O)を原料として、効率よく水素と一酸化炭素とを含む合成ガスを生成させることができる。
C
3H
8+3H
2O → 7H
2+3CO ……(1)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0031】
[実施形態]
[1]炭化水素改質触媒の作製
(1)本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒Aの作製
素原料として炭酸バリウム(BaCO
3)と、酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、酸化イットリウム(Y
2O
3)と、酸化ニッケル(NiO)とを用意した。
そして、これらの各素原料をモル比で、Ba:Zr:Y比が1.00:0.95:0.05で、焼成後に得られる触媒中のNiOの含有率が10質量%となるように秤量し、さらに玉石と水とバインダーとを加えて混合した。
それから、得られた混合物を120℃のオーブン中で乾燥し、粉砕・分級することにより、1.5〜2.5mmの粒状とした。
次に、得られた粒状試料を、空気中にて1000℃/1hの条件で焼成することにより、本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒Aを得た。
【0032】
(2)本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒Bの作製
素原料として炭酸バリウム(BaCO
3)と、酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、酸化イットリウム(Y
2O
3)と、酸化ニッケル(NiO)とを用意した。
そして、これらの各素原料をモル比で、Ba:Zr:Y比が1.00:0.90:0.10で、焼成後に得られる触媒中のNiOの含有率が10質量%となるように秤量し、さらに玉石と水とバインダーとを加えて混合した。
それから、得られた混合物を120℃のオーブン中で乾燥し、粉砕・分級することにより、1.5〜2.5mmの粒状とした。
次に、得られた粒状試料を、空気中にて1000℃/1hの条件で焼成することにより、本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒Bを得た。
【0033】
(3)本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒Cの作製
素原料として炭酸バリウム(BaCO
3)と、酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、酸化イットリウム(Y
2O
3)と、酸化ニッケル(NiO)とを用意した。
そして、これらの各素原料をモル比で、Ba:Zr:Y比が1.00:0.80:0.20で、焼成後に得られる触媒中のNiOの含有率が10質量%となるように秤量し、さらに玉石と水とバインダーとを加えて混合した。
それから、得られた混合物を120℃のオーブン中で乾燥し、粉砕・分級することにより、1.5〜2.5mmの粒状とした。
次に、得られた粒状試料を、空気中にて1000℃/1hの条件で焼成することにより、本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒Cを得た。
【0034】
(4)本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒Dの作製
素原料として炭酸バリウム(BaCO
3)と、酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、酸化イットリウム(Y
2O
3)と、酸化ニッケル(NiO)とを用意した。
そして、これらの各素原料をモル比で、Ba:Zr:Y比が1.00:0.70:0.30で、焼成後に得られる触媒中のNiOの含有率が10質量%となるように秤量し、さらに玉石と水とバインダーとを加えて混合した。
それから、得られた混合物を120℃のオーブン中で乾燥し、粉砕・分級することにより、1.5〜2.5mmの粒状とした。
次に、得られた粒状試料を、空気中にて1000℃/1hの条件で焼成することにより、本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒Dを得た。
【0035】
(5)本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒Eの作製
素原料として炭酸バリウム(BaCO
3)と、酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、酸化イットリウム(Y
2O
3)と、酸化ニッケル(NiO)とを用意した。
そして、これらの各素原料をモル比で、Ba:Zr:Y比が1.00:0.60:0.40で、焼成後に得られる触媒中のNiOの含有率が10質量%となるように秤量し、さらに玉石と水とバインダーとを加えて混合した。
それから、得られた混合物を120℃のオーブン中で乾燥し、粉砕・分級することにより、1.5〜2.5mmの粒状とした。
次に、得られた粒状試料を、空気中にて1000℃/1hの条件で焼成することにより、本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒Eを得た。
【0036】
(6)本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒Fの作製
素原料として炭酸バリウム(BaCO
3)と、酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、酸化イットリウム(Y
2O
3)と、酸化ニッケル(NiO)とを用意した。
そして、これらの各素原料をモル比で、Ba:Zr:Y比が1.00:0.50:0.50で、焼成後に得られる触媒中のNiOの含有率が10質量%となるように秤量し、さらに玉石と水とバインダーとを加えて混合した。
それから、得られた混合物を120℃のオーブン中で乾燥し、粉砕・分級することにより、1.5〜2.5mmの粒状とした。
次に、得られた粒状試料を、空気中にて1000℃/1hの条件で焼成することにより、本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒Fを得た。
【0037】
(7)比較用の炭化水素改質触媒Gの作製
素原料として炭酸バリウム(BaCO
3)と、酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、酸化ニッケル(NiO)とを用意した。
そして、これらの各素原料をモル比で、Ba:Zr比が1.00:1.00で、焼成後に得られる触媒中のNiOの含有率が10質量%となるように秤量し、さらに玉石と水とバインダーとを加えて混合した。
それから、得られた混合物を120℃のオーブン中で乾燥し、粉砕・分級することにより、1.5〜2.5mmの粒状とした。
次に、得られた粒状試料を、空気中にて1000℃/1hの条件で焼成することにより、本発明の要件を備えていない比較用の炭化水素改質触媒Gを得た。
【0038】
(8)比較用の炭化水素改質触媒Hの作製
素原料として炭酸ストロンチウム(SrCO
3)と、酸化チタン(TiO
2)と、酸化ニッケル(NiO)とを用意した。
そして、これらの各素原料をモル比で、Sr:Ti比が1.00:1.00で、焼成後に得られる触媒中のNiOの含有率が10質量%となるように秤量し、さらに玉石と水とバインダーとを加えて混合した。
それから、得られた混合物を120℃のオーブン中で乾燥し、粉砕・分級することにより、1.5〜2.5mmの粒状とした。
次に、得られた粒状試料を、空気中にて1000℃/1hの条件で焼成することにより、本発明の要件を備えていない比較用の炭化水素改質触媒Hを得た。
【0039】
[2]各触媒A〜Hの結晶相および比表面積の確認
(1)結晶相
上述のようにして作製した本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒A〜F、本発明の要件を備えていない比較用の炭化水素改質触媒GおよびHについて、粉末XRD測定により結晶相の確認を行った。
【0040】
(2)比表面積
上述のようにして作製した本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒A〜F、本発明の要件を備えていない比較用の炭化水素改質触媒GおよびHについて、BET1点法により比表面積を調べた。
【0041】
実施形態にかかる炭化水素改質触媒A〜F、比較用の炭化水素改質触媒GおよびHの結晶相と比表面積を表1に示す。なお、NiO相の回折線はBaZrO
3相の回折線と重なるため、BaZrO
3相が存在する触媒に関しては、NiO相の有無を回折線からは確認することができないため、括弧付きで記載した。
【0042】
[3]触媒の還元前処理
上述のようにして作製した炭化水素改質触媒を用いて炭化水素ガスの改質試験を行う前に、実施形態にかかる炭化水素改質触媒A〜F、比較用の炭化水素改質触媒GおよびHのそれぞれについて、還元前処理を実施した。
還元前処理は、各炭化水素改質触媒を、
図1に示す装置の反応管1内に充填し、ヒーター2により600℃の温度に加熱して、水素50%を含有する窒素中で1hの熱処理を行うことにより実施した。
【0043】
[4]プロパンの水蒸気改質試験
上述のようにして還元処理済みの炭化水素改質触媒を用いて、改質温度:600℃の条件で、プロパンの水蒸気改質試験を行い、改質温度:600℃における触媒活性(プロパン転化率)と炭素析出量を確認した。
【0044】
水蒸気改質試験は、
図1に示す試験装置を用いて行った。この試験装置は、金属製の反応管1と、反応管1の外部に配設されたヒーター2とを備えており、内部に炭化水素改質触媒3が充填された反応管1の入口4から炭化水素ガスが投入され、触媒3と接触して改質された、水素と一酸化炭素とを含む合成ガスが出口5から排出されるように構成されている。
【0045】
この実施形態では、上述のようにして作製した還元処理済みの各炭化水素改質触媒0.3gを、反応管1内に充填し、ヒーター2により600℃の温度に加熱して、C
3H
8/H
2O=5.7の原料ガスを100cc/minの条件で流通させた。
【0046】
なお、改質試験中は出口5から得られた合成ガスを分析装置へと導入してガス濃度を測定し、3hの改質試験を実施した。
また、改質試験終了後は、触媒を取り出し、TG−DTA測定により炭素燃焼による重量の減少量から、炭化水素改質触媒への炭素析出量を算出した。
本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒A〜F、比較用の炭化水素改質触媒GおよびHについてのプロパン転化率と炭素析出量を表1に併せて示す。
【0048】
表1に示すように、BaNiY
2O
5相が含まれる、本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒A〜Fは、BaNiY
2O
5相が含まれない比較例の炭化水素改質触媒よりも高い活性を示すことが確認された。
また、本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒A〜Fの場合、炭素析出がないことが確認された。
【0049】
また、ZrとYのモル比がZr:Y=0.8:0.2〜0.5:0.5の範囲にある、表1の炭化水素改質触媒C、D、EおよびFにおいて、プロパン転化率が70%以上と、特に高い触媒活性を示すことが確認された。
【0050】
焼成後(合成後)の炭化水素改質触媒Cの透過電子顕微鏡像を
図2Aに示し、Ni成分のEDXマッピング像を
図2Bに示す。
また、600℃で還元処理を行った後の、炭化水素改質触媒Cの透過電子顕微鏡像を
図3Aに示し、Ni成分のEDXマッピング像を
図3Bに示す。
【0051】
図2A,Bに示すように、焼成後(合成後)の炭化水素改質触媒C中のNi成分は、BaNiY
2O
5相の結晶構造中に分散しているため、粒子状のNi成分は確認されない。
【0052】
一方、
図3A,Bに示すように、還元処理済み炭化水素改質触媒C中のNi成分は、50nm以下の粒子状態で触媒上に分散している。
つまり、BaNiY
2O
5相を生成する触媒では、通常のNiOであれば凝集してしまう1000℃の焼成温度であっても、BaNiY
2O
5相の状態をとることにより、
図2A,Bに示すようにNi成分が結晶構造中に一様に分散した状態を維持することができる。したがって、還元処理を行った後でも、
図3A,Bに示すように金属Niは50nm以下の微粒子として存在することが可能となり、低温域でも高い触媒活性を得ることができる。
【0053】
これに対してBaNiY
2O
5相を生成しない比較用の炭化水素改質触媒では、混合したNi成分は1000℃の焼成中にNiOとして凝集して分散性が低下してしまうため、還元後の触媒であっても低い触媒活性しか得ることができない。
【0054】
なお、本発明の実施形態にかかる炭化水素改質触媒A〜Fの場合、Zr成分の含有量が多いほど比表面積が大きくなっている。これは、BaZrO
3相が存在することによって触媒の焼結が抑えられることによるものと考えられる。したがって、BaNiY
2O
5相に加えてBaZrO
3相を含有させることによって耐熱性や触媒活性をさらに向上させることが可能になる。
【0055】
なお、上記実施形態では、BaNiY
2O
5と、BaZrO
3の両方を含む炭化水素改質触媒(すなわち、BaNiY
2O
5相と、BaZrO
3相とを共存させた炭化水素改質触媒)を例にとって説明したが、BaNiY
2O
5相を含むがBaZrO
3相を含まない組成とした場合にも、上記実施形態の炭化水素改質触媒の場合に準じる効果が得られることが確認されている。
【0056】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。