特許第6187299号(P6187299)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電装株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6187299-アルミニウム系電線の端子接続構造 図000002
  • 特許6187299-アルミニウム系電線の端子接続構造 図000003
  • 特許6187299-アルミニウム系電線の端子接続構造 図000004
  • 特許6187299-アルミニウム系電線の端子接続構造 図000005
  • 特許6187299-アルミニウム系電線の端子接続構造 図000006
  • 特許6187299-アルミニウム系電線の端子接続構造 図000007
  • 特許6187299-アルミニウム系電線の端子接続構造 図000008
  • 特許6187299-アルミニウム系電線の端子接続構造 図000009
  • 特許6187299-アルミニウム系電線の端子接続構造 図000010
  • 特許6187299-アルミニウム系電線の端子接続構造 図000011
  • 特許6187299-アルミニウム系電線の端子接続構造 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187299
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】アルミニウム系電線の端子接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/02 20060101AFI20170821BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20170821BHJP
   H01R 4/72 20060101ALI20170821BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01R4/02 C
   H01R4/18 A
   H01R4/72
   H01R13/52 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-26802(P2014-26802)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-153622(P2015-153622A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田 和美
(72)【発明者】
【氏名】大庭 卓也
【審査官】 板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−246886(JP,A)
【文献】 特開昭56−013685(JP,A)
【文献】 特開2011−165618(JP,A)
【文献】 特開2013−020761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02
H01R 4/18
H01R 4/72
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム系金属製の素線を撚って形成したアルミ芯線を絶縁樹脂製の絶縁被覆で被覆した電線を、端末側で絶縁被覆を皮剥してアルミ芯線を露出させ、銅系金属板からなる端子にアルミ芯線を溶接すると共に、皮剥端に隣接する絶縁被覆を前記端子に設けた絶縁被覆バレルで加締め圧着しており、
前記アルミ芯線と前記端子の溶接部の後端と前記電線の皮剥端との間のみアルミ芯線露出部を被覆材で覆い、
かつ、前記被覆材として絶縁樹脂テープを用い、該絶縁樹脂テープを前記アルミ芯線露出部に巻き付けて覆い、
あるいは前記被覆材として前記端子の前記溶接部の後部に前記絶縁被覆バレルと分離したバレルを該端子の基板の幅方向両側から突設し、該バレルで前記端子との溶接部の後部から前記絶縁被覆バレルの間の前記アルミ芯線露出部を囲んで加締めて被覆しているアルミニウム系電線の端子接続構造。
【請求項2】
前記アルミニウム系電線は車両に配索される電線で、芯線断面積が8mm以上の太物電線で電源線、アース線として用いられるものである請求項1に記載のアルミニウム系電線の端子接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウム系電線の端子接続構造に関し、特に、車両に配索されるアルミニウム系電線と端子として溶接する接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、車両に配線する電線として、軽量等の理由からアルミウム系金属製の素線を撚ったアルミ芯線を絶縁樹脂で被覆したアルミニウム系電線(以下、アルミ電線と略称する)が用いられている。該アルミ電線の芯線断面積が8mm以上で電源線等として用いられる太物電線では、端子との電気接続信頼性を高める点からアルミ芯線は端子に溶接されている。
【0003】
即ち、図9に示すように、アルミ電線100の端末で絶縁被覆102から露出させたアルミ芯線101は銅系金属板からなる端子120の基板121に溶接されている。かつ、アルミ芯線101に連続する絶縁被覆102は端子120の基板121から突設された絶縁被覆バレル122で加締め圧着されている。
【0004】
前記端子120は銅系金属板を加工して形成されているため、該端子120の基板121とアルミ芯線101との接触は銅とアルミニウムの異種金属接触となり、該接触部分に溶雪剤やバッテリ液に含まれる電解液、塩分や溶残酸素を含む水分が付着すると、ガルバニック腐食が発生する。該腐食は、図10(A)に示すA領域では、アルミ芯線101と端子120の基板121との溶接部には隙間が殆ど生じないため電解液や水分の浸水を防止できる。しかしながら、アルミ電線100の絶縁被覆102の皮剥端102eの境界位置までアルミ芯線101を溶接することは出来ない。よって、図10(A)に示すように、アルミ芯線101の溶接領域Aと皮剥端102eとの間のB領域には溶接出来ない芯線露出部105がある。図10(B)に示すように、この芯線露出部105のアルミ芯線の素線101a間および素線101aと端子120の基板121との間に隙間Cが発生する。素線101a間の隙間を伝って、素線101aと基板121の間の隙間Cに浸水が生じると、基板121に腐食が発生し、該腐食が芯線溶接部の領域へと広がる問題がある。
【0005】
前記問題に対して、特開2013−62206号公報で、図11に示すアミル電線の接続構造が提供されている。該端子200では、電線接続部201の基板の前部から後端まで連続する長いバレル203と204を基板の幅方向両側から突設している。アルミ電線100のアルミ芯線101を基板に溶接した後に、バレル203と204とをアルミ芯線101および絶縁被覆102に連続して加締め圧着し、かつ、重ねたバレル203と204を溶接すると共に前端を端子基板側に押圧して前端面も封鎖し、端子200に接続するアルミ芯線101をバレル203と204で覆って封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−62206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、端子の幅方向両側から長尺なバレルを突設し、芯線及び絶縁被覆の両方に連続したバレルで加締め圧着する場合、芯線と絶縁被覆の外径が相違するため、種々の問題が発生する。即ち、芯線に圧着させると絶縁被覆にバレルが深く食い込んで、絶縁被覆に損傷が発生する恐れがある。一方、絶縁被覆に密着させるように加締めると、芯線外周に隙間は生じる。さらに、バレルの前端を端子基板に当接するまで押圧する必要がある。よって、バレルに負荷する押圧力を長さ方向で変える必要があるが、その場合、圧着装置の構成が非常に複雑になる問題がある。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、アルミ電線のアルミ芯線を銅系金属製の端子に溶接して接続する端子において、電線と端子との電気接続信頼性を維持しながら水分の付着する腐食を抑制することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、アルミニウム系金属製の素線を撚って形成したアルミ芯線を絶縁樹脂製の絶縁被覆で被覆した電線を、端末側で絶縁被覆を皮剥してアルミ芯線を露出させ、銅系金属板からなる端子にアルミ芯線を溶接すると共に、皮剥端に隣接する絶縁被覆を前記端子に設けた絶縁被覆バレルで加締め圧着しており、
前記アルミ芯線と前記端子の溶接部の後端と前記電線の皮剥端との間のみアルミ芯線露出部を被覆材で覆い、
かつ、前記被覆材として絶縁樹脂テープを用い、該絶縁樹脂テープを前記アルミ芯線露出部に巻き付けて覆い、
あるいは前記被覆材として前記端子の前記溶接部の後部に前記絶縁被覆バレルと分離したバレルを該端子の基板の幅方向両側から突設し、該バレルで前記端子との溶接部の後部から前記絶縁被覆バレルの間の前記アルミ芯線露出部を囲んで加締めて被覆しているアルミニウム系電線の端子接続構造を提供している。
【0011】
本発明者は、前記従来例の図9に示すアルミ電線の端子接続構造とした場合において、塩水噴霧試験して端子の腐食状態を観察した。
その結果、図10(A)のI−I線断面のアルミ芯線と端子の溶接部では、該溶接部の界面で腐食は殆ど発生していなかった。一方、図10(A)のII−II線断面のアルミ芯線が端子に溶接されていないアルミ芯線露出部では、腐食が発生しており、この腐食はアルミ芯線が撚線であるため外周だけでなくアルミ芯線の中央部まで腐食していた。
前記試験結果より、アルミ芯線が基板に溶接されている領域Aでは、溶接により隙間が発生しないため隙間を伝う浸水が起っていなかった。よって、アルミ芯線の外面に水分が付着してもアルミ芯線と端子の溶接部界面に腐食が発生しないため、該芯線溶接部を防水ためにバレル等で被覆する必要はないことが確認できた。
一方、溶接部の後端と皮剥端との間の領域Bの溶接出来ないアルミ芯線露出部が存在する領域では、アルミ芯線の素線の間に隙間が存在するため浸水が生じていた。
前記のように、浸水で端子に腐食が発生する恐れが多いのは、端子に溶接されていないアルミ芯線露出部であるため、該アルミ芯線露出部の防水を図る構成としている。
【0012】
本発明では、前記のように、アルミ芯線の溶接部の後端と前記電線の皮剥端との間のアルミ芯線露出部を粘着テープまたはバレルからなる被覆材で被覆して防水している。前記粘着テープで被覆する場合は、アルミ芯線の溶接部の後端から絶縁被覆バレルによる加締め部分を越えた電線の絶縁被覆の外周面まで被覆することが好ましい。
【0013】
本発明で用いるアルミ電線は、車両に配索される電線で、芯線断面積が8mm以上の太物電線で電源線またはアース線として用いられるアルミ電線に好適に用いられる。これは、電源線等として用いられる太物のアルミ電線は、芯線を端子に溶接することで電気接続信頼性を高めることができることに因る。かつ、前記のように、アルミ電線では異種金属の銅系金属からなる端子との異種金属接触による腐食が発生しやすいため、該腐食発生の防止のために、太物アルミ電線と端子とは溶接で接続することが義務付けられている場合が多いことによる。
【0014】
前記端子の電気接触部の形状は、タブ形状のオス型、ボックス形状のメス型、ボルト穴を設けたボルト締めタイプ等の任意の形状でよい。
【0015】
本発明のアルミ電線の端子接続構造の形成方法は、アルミ電線の端末で絶縁被覆を皮剥してアルミ芯線を露出させ、露出させたアルミ芯線を前記端子の電線接続部の基板の芯線溶接部上に配置して超音波溶接し、その後、圧着装置で絶縁被覆バレルを絶縁被覆に加締め圧着し、最後に、基板に溶接されていない溶接部後端から皮剥端のアルミ芯線露出部を少なくとも覆うように、前記絶縁樹脂テープを巻き付けている。なお、被覆材としてアルミ芯線露出を囲むバレルを端子に設けている場合は、絶縁被覆バレルを加締め圧着する時に同時に前記アルミ芯線露出部を囲むバレルを加締め圧着して、該アルミ芯線露出部を被覆している。
【0016】
前記のように、端子への芯線の溶接は超音波溶接で行うことが好ましい。
溶接方法としては、抵抗溶接と超音波溶接を用いることが可能であるが、芯線がアルミニウム系金属のアルミ電線では、アルミニウム系金属の融点が高いため、抵抗溶接では加熱温度が高くなり、熱影響で絶縁被覆の熱劣化が発生する可能性がある。よって、アルミ電線では超音波溶接が好適に用いられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアルミニウム系電線の端子接続構造では、アルミ芯線の溶接部の後端と電線の絶縁被覆の皮剥端との間のみ溶接できずに芯線が露出するアルミ芯線露出部をテープまたはバレルからなる被覆材で被覆して防水している。該構造としているため、アルミ芯線を端子に溶接接続する際に発生する非溶接箇所からの浸水防止を図れ、アルミ芯線と銅系端子との異種金属接触部での腐食を防止、抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態の端子の斜視図である。
図2】前記端子に接続する電線の正面図である。
図3】前記端子と電線との超音波接続方法を示す図面である。
図4】前記端子と電線とを溶接接続した状態を示し、(A)は正面図、(B)は平面図である。
図5】前記端子と電線との溶接後に粘着テープを巻き付けた状態を示し、(A)は断面図、(B)は一部正面図、(C)は平面図である。
図6参考実施形態を示す概略図である。
図7】第実施形態を示し、(A)は端子の概略正面図、(B)はアルミ芯線露出部にバレルを加締めた状態を示す断面図である。
図8】試験結果を示すグラフである。
図9】従来例を示す図面である。
図10】(A)(B)は従来例の問題点の説明図である。
図11】他の従来例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図5に第1実施形態を示す。
図1に示す端子1は、前記図9に示す従来の端子120と同形状としている。即ち、銅系金属板を打ち抜き加工した後に折り曲げ加工して形成している。端子1は平板形状の基板2の長さ方向の一側(後側)に電線接続部3を設けると共に、他側(前側)に電気接触部4を設けている。電気接触部4は相手型端子(図示せず)の電気接触部と接触させて電気接続を行うものである。本実施形態では、図1に示すように、ボルト締め端子としているため、電気接触部4の基板2aの幅を拡げ、その中央にボルト穴5を設けている。
前記電線接続部3は長方形の平板形状の基板2bの前部上面を芯線溶接部6としている。該芯線溶接部6の後部の基板の幅方向の両側の側面より絶縁被覆バレル7(7a、7b)を突設している。
【0020】
前記端子1に接続するアルミニウムまたはアルミニウム合金を芯線とするアルミニウム系電線10(以下、アルミ電線10と略称する)は、車両に配線する電線で、芯線断面積が8mm以上太物電線からなり、電源線またはアース線として用いている。図2に示すように、電線10は、端末で絶縁被覆12を皮剥し、アルミニウム系金属からなる素線11aを撚ったアルミ芯線11を絶縁被覆12の皮剥端12eから突出させている。
【0021】
前記端子1はアルミ電線10に図3に示す方法で接続して、図4に示すように、アルミ電線10を端子1に超音波接続している。即ち、アルミ芯線11を端子1の芯線溶接部6上に超音波溶接し、絶縁被覆12を絶縁被覆バレル7で加締め圧着している。この状態で、アルミ芯線11の溶接部Xの後端から絶縁被覆の皮剥端12eまでは溶接されていないアルミ芯線露出部15が存在する。該アルミ芯線露出部15及び絶縁被覆バレル7による加締め圧着部を越えた位置の絶縁被覆12を、図5に示すように、塩化ビニール等の絶縁樹脂からなり、粘着剤が塗布された粘着テープ8(以下、テープ8と略称する)をハーフラップ巻きで巻き付けて被覆している。即ち、アルミ芯線露出部15をテープ8からなる被覆材で被覆している。
【0022】
端子1とアルミ電線10との接続方法を図3に基づいて説明する。
端末でアルミ芯線11を露出させたアルミ電線10を端子1上にセットし、アルミ芯線11を端子1の芯線溶接部6上に位置させ、絶縁被覆12の皮剥端12eを絶縁被覆バレル7より僅か前方に位置させる。この状態で、超音波溶接装置30の固定台(アンビル)31の所定位置に端子1を定置し、上方から超音波電極(ホーン)32を下降して、露出したアルミ芯線11の上面を加圧する。この状態で超音波を負荷し、アルミ芯線11を基板1の芯線溶接部6に溶接する。
【0023】
ホーン32を絶縁被覆12の皮剥端12eに当接させて位置させると、絶縁被覆12に熱損傷が発生するため、ホーン32の端面32aは皮剥端12eとの間に隙間Zをあけている。よって、ホーン32で端子1に溶接されるアルミ芯線11の溶接部Xと皮剥端12eとの間に、溶接されていないアルミ芯線露出部15が残る。この溶接されていないアルミ芯線露出部15が存在するY領域は、溶接部Xの後端から皮剥端12eへ上方傾斜した状態で存在する。
【0024】
前記アルミ芯線露出部15、絶縁被覆バレル7による加締め圧着部、さらに端子1の後端1eより延在するアルミ電線10の絶縁被覆12の部分まで、即ち、領域Yの範囲を含めた領域に被覆材の前記テープ8を巻き付けて被覆している。詳しくは、図5に示すように、端子1の基板2の下面から上面側のアルミ芯線露出部15、前記絶縁被覆バレル7による加締め圧着部の上面側にテープ8を巻き付け、さらに、端子1の基板2の後端から延在する電線10の外周面にテープ8を連続的にハーフラップ巻きで巻き付けている。
【0025】
このように、端子1と接続するアルミ電線10は、溶接部Xはテープ8およびバレル等の被覆材で被覆していないが、溶接部Xの後端側の溶接されていないアルミ芯線露出部15が存在するY領域はテープ8からなる被覆材で被覆され、水がかからないようにして防水している。
【0026】
図6参考実施形態を示す。
参考実施形態では、前記アルミ芯線露出部15、絶縁被覆バレル7による加締め圧着部、さらに端子1の後端1eより延在する電線10の絶縁被覆12の部分までのY領域を含む範囲に、被覆材としてテープに代えて、絶縁樹脂からなる熱収縮チューブ20で被覆している。
即ち、加熱前の熱収縮していない内径が大きな熱収縮チューブ20を前記範囲に被せ、その後、所要温度で加熱して熱収縮チューブ20を収縮し、アルミ芯線露出部15、基板2、絶縁被覆12の外周面に熱収縮チューブ20を密着させ、浸水経路となる隙間を無くしている。他の構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0027】
図7に第実施形態を示す。
該第実施形態では、前記アルミ芯線露出部15の被覆材として、該アルミ芯線露出部15を加締め圧着するバレル19A、19Bを、端子1の電線接続部3の芯線溶接部6の後部に設けている。該バレル19A、19Bは後端に設ける絶縁被覆バレル7とスリット状の隙間をあけて分離して設けている。
【0028】
該バレル19A、19Bと絶縁被覆バレル7を加締め圧着する圧着装置の押圧片(図示せず)は分離し、同時に加締め圧着作動をするが、加締め圧着動作は個別としている。 前記バレル19A、19Bは図7(B)に示すように、一方のバレル19Aをアルミ芯線露出部15の外面に密着させて先端側を折り返し、他方のバレル19Bをバレル19Aの外面に重ねるようにして被覆している。
【0029】
「実験例」
アルミ電線を用い、前記参考実施形態の熱収縮チューブ20でアルミ芯線露出部を被覆したアルミ電線の端子接続構造(参考実施例)と、前記熱収縮チューブ20で被覆していないアルミ電線の前記図9に示す接続構造(従来例)について、塩水噴霧をしながら、腐食による電圧降下の有無を測定した。
その結果は、図8に示すように、参考実施例では96時間経過しても電圧降下はなかった。一方、従来例では24時間経過後から電圧降下が発生した。
【0030】
前記のように、アルミ芯線の溶接部Xは被覆していない状態であっても、溶接されていないアルミ芯線露出部15を被覆するだけで、腐食発生を防止または抑制できる。よって、アルミ芯線露出部15の素線11a間に隙間があり、溶存酸素が存在して腐食が発生しても、アルミ芯線露出部を被覆材で被覆していることにより、空気に含まれる溶存酸素の供給を遅延させることができ、その結果、腐食の進行を大幅に遅らせることができることが確認できた。
【0031】
本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を越えない範囲で種々に変更することができる。例えば、端子はボルト締め端子に変えて、電気接触部をタブ状としてオス端子としても良いし、ボックス状としてメス端子にしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 端子
2 基板
3 電線接続部
4 電気接触部
6 芯線溶接部
7 絶縁被覆バレル
8 テープ
10 電線
11 アルミ芯線
12 絶縁被覆
12e 皮剥端
15 アルミ芯線露出部
20 熱収縮チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11