特許第6187312号(P6187312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187312
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ソレノイドバルブ
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20170821BHJP
   F16K 11/07 20060101ALI20170821BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   F01L1/356 E
   F16K11/07 C
   F16K31/06 305L
   F16K31/06 385A
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-35771(P2014-35771)
(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-161197(P2015-161197A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】向出 仁樹
(72)【発明者】
【氏名】稲摩 直人
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−242714(JP,A)
【文献】 特開2012−219639(JP,A)
【文献】 特開2013−100768(JP,A)
【文献】 特開2012−122454(JP,A)
【文献】 特開2013−096374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/356
F16K 11/07
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに挿入された状態で取り付けられ、周壁部にポンプから吐出された流体が供給されるメインポート、内燃機関のバルブタイミングを進角側又は遅角側に制御する位相制御機構に連通する第1ポート、前記バルブタイミングを最遅角タイミング及び最進角タイミングの中間で固定する中間ロック機構と連通するサブポート、前記位相制御機構から前記第1ポートに戻された流体が外部に排出されることを許容する第2ポート、及び前記中間ロック機構から前記サブポートに戻された流体が外部に排出されることを許容する第3ポートを有するスリーブと、
前記スリーブの一端部から他端部まで往復移動可能に設けられたスプールと、
前記スプールの端部に設けられ、前記スプールを駆動するソレノイド部と、を備え、
前記スプールの移動に伴い、前記サブポートと前記第3ポートとが連通する時、前記サブポートと前記第3ポートとを連通する流路が、前記メインポート、前記第1ポート、及び前記第2ポートから独立して構成され
前記スプールが前記スリーブの端部に位置する時、前記サブポートと前記第3ポートとを連通する溝部を構成する第1の溝部、第2の溝部、及び第3溝部が隣接して前記スプールの外周面に形成されており、
前記スプールが前記スリーブの一端部に位置する時、前記第1の溝部及び前記第2の溝部が前記サブポートと前記第3ポートとを連通し、前記スプールが前記スリーブの他端部に移動した時に、前記第2の溝部及び前記第3溝部が前記サブポートと前記第3ポートとを連通するソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記溝部は、前記スプールの両端部のうち、前記ソレノイド部が設けられた端部とは異なる端部に設けられている請求項に記載のソレノイドバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の供給先を切り替え可能なソレノイドバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の給排制御にソレノイドバルブが利用されてきた(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の弁開閉時期制御装置では、ソレノイドバルブとして油圧制御弁が用いられる。この油圧制御弁では、弁開閉時期制御装置の進角室と連通する進角路、遅角室と連通する遅角路、及びロック機構に連通するロック油通路が、互いに異なるポートに接続される。一方、油圧制御弁から排出された油が流通する排出路は、一つのポートに接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−172109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、油圧制御弁から油を排出する排出路が共通利用されているので、ロック油通路の油を排出する時に進角路や遅角路からも油が油圧制御弁に流通してきている場合には、進角路や遅角路からの油によりロック油通路から排出される油の流れが妨げられ、弁開閉時期制御装置の相対回転位相をロック位相とする場合にロック機構の動作が遅延する可能性がある。この場合、エンジン始動時にロック機構によりロックされていない状態となり得るので、エンジンの始動不良となったり燃料の不完全燃焼の原因となったりする。
【0005】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、流体を中間ロック機構から素早く排出することが可能なソレノイドバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係るソレノイドバルブの特徴構成は、ハウジングに挿入された状態で取り付けられ、周壁部にポンプから吐出された流体が供給されるメインポート、内燃機関のバルブタイミングを進角側又は遅角側に制御する位相制御機構に連通する第1ポート、前記バルブタイミングを最遅角タイミング及び最進角タイミングの中間で固定する中間ロック機構と連通するサブポート、前記位相制御機構から前記第1ポートに戻された流体が外部に排出されることを許容する第2ポート、及び前記中間ロック機構から前記サブポートに戻された流体が外部に排出されることを許容する第3ポートを有するスリーブと、前記スリーブの一端部から他端部まで往復移動可能に設けられたスプールと、前記スプールの端部に設けられ、前記スプールを駆動するソレノイド部と、を備え、前記スプールの移動に伴い、前記サブポートと前記第3ポートとが連通する時、前記サブポートと前記第3ポートとを連通する流路が、前記メインポート、前記第1ポート、及び前記第2ポートから独立して構成され、前記スプールが前記スリーブの端部に位置する時、前記サブポートと前記第3ポートとを連通する溝部を構成する第1の溝部、第2の溝部、及び第3溝部が隣接して前記スプールの外周面に形成されており、前記スプールが前記スリーブの一端部に位置する時、前記第1の溝部及び前記第2の溝部が前記サブポートと前記第3ポートとを連通し、前記スプールが前記スリーブの他端部に移動した時に、前記第2の溝部及び前記第3溝部が前記サブポートと前記第3ポートとを連通する点にある。
【0007】
このような特徴構成とすれば、中間ロック機構からサブポートに戻された流体をソレノイドバルブ外に排出する際には第3ポートのみから排出することができる。また、位相制御機構から第1ポートに戻された流体は、第3ポートには流通しないようにすることができる。このため、サブポートに戻された流体をソレノイドバルブ外に排出するにあたり、サブポートに戻された流体の流れが、他のポートを流通する流体により妨げられることがないので、中間ロック機構からの流体の排出を素早く行うことができる。したがって、内燃機関のバルブタイミングを所期の位置に固定するまでの時間を短くすることが可能となる。
【0008】
また、のような構成とすれば、サブポートと第3ポートとを連通する流路を、スプールを貫通して設ける必要がないので、当該流路を容易に構成することができる。したがって、ソレノイドバルブの製造コストを低減できる。
【0009】
また、のような構成とすれば、第3ポートから流体が排出されている状態としつつ、他のポートの給排状態を自由に設定することができる。
【0010】
また、前記溝部は、前記スプールの両端部のうち、前記ソレノイド部が設けられた端部とは異なる端部に設けられていると好適である。このような構成とすれば、第3ポートをスリーブにおけるスプールの先端の側に設けることができるので、第3ポートの開口面積を大きく設定することが可能となる。このため、流体の流路抵抗を小さくすることができるので、第3ポートに戻された流体を素早くソレノイドバルブの外側に排出し易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ソレノイドバルブが適用された弁開閉時期制御装置の断面図である。
図2図1のII−II線におけるロック状態の断面を示した図である。
図3図1のII−II線におけるロック解除状態の断面を示した図である。
図4図1のII−II線における最遅角位相状態の断面を示した図である。
図5】ソレノイドバルブのポジションと作動油の給排状態を示した図である。
図6】第2進角ポジションのソレノイドバルブの状態を示した図である。
図7】第1進角ポジションのソレノイドバルブの状態を示した図である。
図8】ロック解除ポジションのソレノイドバルブの状態を示した図である。
図9】第1遅角ポジションのソレノイドバルブの状態を示した図である。
図10】第2遅角ポジションのソレノイドバルブの状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るソレノイドバルブは、弁開閉時期制御装置が有する中間ロック機構が、最遅角タイミング及び最進角タイミングの中間で固定したバルブタイミングを円滑に解除可能に構成される。以下、本実施形態のソレノイドバルブ100について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るソレノイドバルブ100によりオイルの給排が行われる弁開閉時期制御装置1の側方断面図である。図2図4は、図1のII−II線における各種状態の断面を示した図である。弁開閉時期制御装置1は、内燃機関Eとしてのエンジンを駆動源として備える車両や、エンジン及び電動モータを含む駆動源を備えるハイブリッド車両に搭載される。
【0014】
弁開閉時期制御装置1は、駆動側回転部材としての外部ロータ12と、従動側回転部材としての内部ロータ2とを備えて構成される。外部ロータ12は、内燃機関Eのクランク軸92に対して同期回転する。内部ロータ2は、内燃機関Eのカム軸91に対して一体回転すると共に外部ロータ12に対して相対回転可能に同軸に配置される。本実施形態では、弁開閉時期制御装置1は、外部ロータ12と内部ロータ2との軸芯Xを中心にした相対回転位相(相対回転角)の設定により、吸気弁93の開閉タイミングを制御する。
【0015】
図2に示されるように、外部ロータ12には、径方向内側に突出する複数個の突出部14が回転方向Sに沿って互いに離間させて形成され、外部ロータ12と内部ロータ2とにより流体圧室4が形成される。流体圧室4は、ベーン22によって回転方向Sに沿って進角室41と遅角室42とに仕切られている。遅角室42にオイルが供給されると、遅角室42の容積が大きくなり、外部ロータ12に対する内部ロータ2の相対回転位相が相対回転方向のうち遅角方向(矢印S2で示される方向)に移動(変位)される。進角室41にオイルが供給されると、進角室41の容積が大きくなり、相対回転位相が相対回転方向のうち進角方向(矢印S1で示される方向)に移動(変位)される。ベーン溝21とベーン22との間にはスプリング23が配設され、ベーン22は径方向外側に付勢される。これにより、進角室41と遅角室42との間でのオイルの漏洩を防止している。
【0016】
図1及び図2に示されるように、各進角室41に連通するよう、進角通路43が内部ロータ2及びカム軸91に形成される。また、各遅角室42に連通するよう、遅角通路44が内部ロータ2及びカム軸91に形成される。進角通路43及び遅角通路44はソレノイドバルブ100の所定のポートに接続される。
【0017】
ソレノイドバルブ100を制御することによって、進角室41及び遅角室42に対してオイルを供給、排出、又は給排を保持し、ベーン22に当該オイルの流体圧力を作用させる。このようにして、相対回転位相を進角方向S1又は遅角方向S2へ変位させ、或いは、任意の位相に保持する。
【0018】
また、図1に示されるように、内部ロータ2とフロントプレート11とに亘ってトーションスプリング3が設けられる。トーションスプリング3は、カム軸91のトルク変動に基づく遅角方向S2への平均変位力に抗するよう、内部ロータ2を進角側に付勢する。これにより、相対回転位相を円滑かつ迅速に進角方向S1へ変位させることが可能となる。
【0019】
このような構成により、内部ロータ2は外部ロータ12に対して軸芯Xの回りに一定の範囲内で円滑に相対回転移動可能である。外部ロータ12と内部ロータ2とが相対回転移動可能な一定の範囲、即ち最進角位相と最遅角位相との位相差は、流体圧室4の内部でベーン22が変位可能な範囲に対応する。遅角室42の容積が最大となるのが最遅角位相であり、進角室41の容積が最大となるのが最進角位相である。最遅角位相となった場合には、内燃機関Eのバルブ(吸気弁93や図示しない排気弁)の開閉タイミングであるバルブタイミングが最遅角タイミングとなり、最進角位相となった場合には、バルブタイミングが最進角タイミングとなる。
【0020】
中間ロック機構6は、内燃機関Eの始動直後等のオイルの流体圧力が安定しない状況において、外部ロータ12と内部ロータ2とを所定の相対位置に保持することで、外部ロータ12と内部ロータ2との相対回転位相を最遅角位相と最進角位相との間の中間ロック位相に拘束する。このように相対回転位相を中間ロック位相に保持することにより、バルブタイミングが最遅角タイミング及び最進角タイミングの中間で固定され、クランク軸92の回転位相に対するカム軸91の回転位相を適正に維持し、内燃機関Eの安定的な回転を実現する。
【0021】
本実施形態では、中間ロック機構6は、図1及び図2に示されるように、中間ロック通路61と、中間ロック溝62と、収容部63と、プレート状の2つの中間ロック部材64と、スプリング65と、を備えて構成される。
【0022】
中間ロック通路61は、内部ロータ2とカム軸91とに形成され、中間ロック溝62とソレノイドバルブ100とを接続する。ソレノイドバルブ100を制御することによって、中間ロック溝62へのオイルの給排を切換えることができる。中間ロック溝62は、内部ロータ2の外周面2aに周方向に延在して形成されており、相対回転方向に一定の幅を有している。収容部63は、外部ロータ12の二箇所に形成されている。二つの中間ロック部材64は各収容部63に夫々配設され、収容部63から径方向に出退可能である。このため、本実施形態では中間ロック部材64は外部ロータ12に形成される。スプリング65は収容部63に配設され、各中間ロック部材64を径方向内側、即ち、中間ロック溝62の側に付勢する。
【0023】
中間ロック溝62からオイルが排出されていると、2つの中間ロック部材64の夫々が突出して中間ロック溝62の夫々に嵌入することにより、中間ロック溝62の所定の位置に各中間ロック部材64が夫々同時に係止することとなる。この結果、図2に示されるように、外部ロータ12に対する内部ロータ2の相対回転位相が上述した中間ロック位相に拘束される。ソレノイドバルブ100を制御して、中間ロック溝62にオイルを供給すると、図3に示されるように、両方の中間ロック部材64が中間ロック溝62から収容部63へ引退して相対回転位相の拘束が解除され、内部ロータ2は相対回転移動自在となる。
【0024】
弁開閉時期制御装置1は、上述した中間ロック機構6に加え、最遅角ロック機構7も備えている。最遅角ロック機構7は、アイドリング運転時等の低速回転時において、外部ロータ12と内部ロータ2とを所定の相対位置に保持することで、相対回転位相を最遅角位相に拘束する。即ち、カム軸91のトルク変動に基づく遅角方向S2及び進角方向S1の変位力に拘らず、内部ロータ2が相対回転移動しないため、安定したアイドリング運転状態を実現できる。
【0025】
最遅角ロック機構7は、図2に示されるように、最遅角ロック通路71と、最遅角ロック溝72と、収容部73と、プレート状の最遅角ロック部材74と、スプリング75と、を備えている。本実施形態では、最遅角ロック通路71は、複数の進角通路43のうちの一つと併用して構成される。最遅角ロック部材74は、2つの中間ロック部材64のうち進角方向S1の側の中間ロック部材64と同一の部材である。同様に、収容部73は、二つの収容部63のうち進角方向S1の側の収容部63と同一であり、スプリング75は、その収容部63に配設されるスプリング65と同一である。
【0026】
このような構成において、最遅角ロック溝72からオイルが排出されていると、最遅角ロック部材74は最遅角ロック溝72に突出する。図4に示されるように、最遅角ロック溝72に最遅角ロック部材74が係止されると、内部ロータ2の外部ロータ12に対する相対回転移動が拘束され、相対回転位相が最遅角位相に保持される。ソレノイドバルブ100を制御して相対回転位相を進角側へ変位させようとすると、最遅角ロック溝72にオイルが供給され、最遅角ロック部材74が最遅角ロック溝72から収容部73へ引退する。即ち、相対回転位相の拘束は解除される。相対回転位相が最遅角位相以外の位相であるときは、最遅角ロック部材74は最遅角ロック溝72と位置ずれしているため、内部ロータ2の外周面2aに摺接するだけである。
【0027】
このような構成において、図2に示されるような中間ロック状態において、ソレノイドバルブ100により中間ロック通路61へオイルが供給されれば、図3に示されるように、中間ロックが解除された状態となる。その後、ソレノイドバルブ100による中間ロック通路61へのオイルの供給が継続して行われる限りは、中間ロック溝62にオイルが供給され続けるため、中間ロック部材64が中間ロック溝62に突入することはない。
【0028】
図4に示されるように、相対回転位相が最遅角位相に変位し、最遅角ロック部材74が最遅角ロック溝72に対向すると、最遅角ロック部材74(64)が最遅角ロック溝72に突入し、最遅角ロック状態となる。
【0029】
次に、本実施形態に係るソレノイドバルブ100について説明する。図6図10に示されるように、ソレノイドバルブ100は、スリーブ110とスプール120とソレノイド部130とを備えて構成される。スリーブ110は、周壁部111と、当該周壁部111の軸方向一方の側の開口部を閉じる蓋状の底部112とを有して形成される。周壁部111には、進角通路43、遅角通路44、中間ロック通路61、弁開閉時期制御装置1にオイルを供給する供給源としてのポンプPの吐出路P1、排出路171、及び排出路172が夫々連通して設けられる。
【0030】
スリーブ110は、メインポート151、第1ポート152、サブポート153、第2ポート154、第3ポート155を有して構成する。メインポート151は、周壁部111にポンプPから吐出された流体としてのオイルが供給される。本実施形態では、メインポート151はメインポート151Aとメインポート151Bとの一対から構成される。ポンプPの吐出路P1には逆止弁190が設けられ、当該逆止弁190の下流側でメインポート151A及びメインポート151Bに連通するよう吐出路P1が分岐される。
【0031】
第1ポート152は、バルブタイミングを進角側及び遅角側に制御する位相制御機構に連通する。バルブタイミングを進角側及び遅角側に制御する位相制御機構とは、上記弁開閉時期制御装置1が相当し、具体的には進角室41及び遅角室42にあたる。本実施形態では、第1ポート152は進角室41に連通する第1ポート152A及び遅角室42に連通する第1ポート152Bの一対からなる。したがって、第1ポート152Aには進角通路43が連通して設けられ、第1ポート152Bには遅角通路44が連通して設けられる。
【0032】
サブポート153は、中間ロック機構6と連通する。中間ロック機構6には、中間ロック通路61を介してオイルが供給される。したがって、サブポート153は中間ロック通路61と連通して設けられる。
【0033】
第2ポート154は、位相制御機構から第1ポート152に戻された流体としてのオイルがスリーブ110の外部に排出されることを許容する。このため、第2ポート154とオイルパン170とに亘って排出路171が連通して設けられる。上述したように第1ポート152は第1ポート152A及び第1ポート152Bの一対からなる。したがって、夫々の第1ポート152に対して独立してオイルを排出できるように、第2ポート154も第2ポート154A及び第2ポート154Bの一対から構成される。
【0034】
第3ポート155は、中間ロック機構6からサブポート153に戻された流体としてのオイルがスリーブ110の外部に排出されることを許容する。このため、第3ポート155とオイルパン170とに亘って排出路172が連通して設けられる。
【0035】
スリーブ110は、ハウジングの内部に挿入された状態で取り付けられる。ハウジングとは、上述した進角通路43、遅角通路44、中間ロック通路61、ポンプP、及びオイルパン170に連通する連通路が設けられ、スリーブ110を支持する。
【0036】
スプール120はスリーブ110の一端部から他端部まで往復移動可能に設けられる。したがって、スプール120は、スリーブ110の軸方向に沿って往復移動可能に設けられる。
【0037】
本実施形態では、スプール120は、軸方向両側に開口部を有して形成される。これにより、スプール120の一端部から他端部まで往復移動する場合にスプール120に作用する空気抵抗を低減することができるので、スプール120が前記軸方向に沿って素早く移動することが可能となる。
【0038】
ソレノイド部130は、上述したハウジングの外側に吐出した状態でスプール120の端部に設けられる。ソレノイド部130には、通電によって磁界を発生させ、周方向に沿って配置されるコイル131と、発生した磁界によってコイル131の径方向内側で往復移動するプランジャ132を備えて構成される。
【0039】
プランジャ132はスプール120の一端側に設けられる。スプール120の一端側とは、本実施形態ではスプール120の軸方向両端部のうち、スリーブ110の底部112に対向しない側の端部である。したがって、コイル131に通電してプランジャ132を往復移動制御し、スプール120をスリーブ110内で駆動することが可能となる。
【0040】
ソレノイドバルブ100は、コイル131に供給する電力の設定により、スプールスプリング139の付勢力に抗して、スプール120を任意の位置に操作できるように構成されている。本実施形態では、具体的な操作位置(ポジション)としてスプール120は、第2進角ポジションPA2と、第1進角ポジションPA1と、ロック解除ポジションPLと、第1遅角ポジションPB1と、第2遅角ポジションPB2との五つのポジションに操作できるように構成されている。図5には、第2進角ポジションPA2と、第1進角ポジションPA1と、ロック解除ポジションPLと、第1遅角ポジションPB1と、第2遅角ポジションPB2とに操作した際のオイルの給排の概要が示される。
【0041】
第2進角ポジションPA2では、図6に示されるように、第1ポート152Aにのみオイルが供給され、第1ポート152Bとサブポート153とからオイルが排出される。第1進角ポジションPA1では、図7に示されるように、第1ポート152Aとサブポート153とにオイルが供給され、第1ポート152Bからオイルが排出される。ロック解除ポジションPLでは、図8に示されるように、サブポート153にのみオイルが供給され、第1ポート152A及び第1ポート152Bは閉塞(オイルの給排を阻止)される。第1遅角ポジションPB1では、図9に示されるように、第1ポート152Bとサブポート153とにオイルが供給され、第1ポート152Aからオイルが排出される。第2遅角ポジションPB2では、図10に示されるように、第1ポート152Bにのみオイルが供給され、第1ポート152A及びサブポート153からオイルが排出される。
【0042】
本実施形態では、コイル131に電力を供給しない状態でスプール120は、第2進角ポジションPA2にあり、コイル131に供給する電力を所定値増大させることにより第1進角ポジションPA1、ロック解除ポジションPL、第1遅角ポジションPB1、第2遅角ポジションPB2の順序で切り換えられる。
【0043】
このように複数のポジションを配置したことにより、スプール120を中央位置のロック解除ポジションPLに操作した状態から、コイル131に供給される電流値を所定値低減することで、第1進角ポジションPA1に移行し、更に、第2進角ポジションPA2に移行させることが可能となる。同様に、スプール120を中央位置のロック解除ポジションPLに操作した状態から、コイル131に供給される電流値を所定値増大させることにより、第1遅角ポジションPB1に移行し、更に、第2遅角ポジションPB2に移行させることが可能となる。
【0044】
次に、図6図10を用いて、夫々のポジションにおけるソレノイドバルブ100の状態について説明する。
ここで、スプール120の外周面には、径方向に突出する凸状部からなる、外端部160、第1ランド部161、第2ランド部162、第3ランド部163、第4ランド部164、第5ランド部165、及び根元側凸部166が、夫々、スプール120の先端側から根元側に位置をずらして設けられる。
【0045】
コイル131に電力が供給されない状態では、スプール120は図6に示す第2進角ポジションPA2にある。このポジションでは、スプール120がスリーブ110の端部に位置し、この時、ポンプPから供給されたオイルは、スプール120の第4ランド部164と第5ランド部165とにより形成される第5溝部185を介して第1ポート152Aに供給される。また、スプール120が第2進角ポジションPA2にある時には、第1ポート152Bからのオイルが、第3ランド部163と第4ランド部164とにより形成される第4溝部184を介して第2ポート154Bに流通される。更に、スプール120の外周面において、外端部160と第1ランド部161とにより形成されたサブポート153と第3ポート155とを連通する溝部としての第1溝部181を介して、サブポート153からのオイルが第3ポート155に流通される。
【0046】
これにより、第1ポート152Aから進角通路43を介して進角室41にオイルが供給されると共に、遅角室42のオイルが遅角通路44から第1ポート152Bに送られ、第2ポート154Bから排出される。その結果、相対回転位相は進角方向S1に変位する。また、中間ロック溝62のオイルが排出されるため、進角方向S1に変位する際に、中間ロック機構6の一対の中間ロック部材64がスプリング65の付勢力により中間ロック溝62に係合して中間ロック位相にロックすることも可能となる。
【0047】
図7に示す第1進角ポジションPA1では、第2進角ポジションPA2と同様に、ポンプPから供給されたオイルは、第5溝部185を介して第1ポート152Aに供給される。また、第1ポート152Bからのオイルが、第4溝部184を介して第2ポート154Bに流通される。更に、この第1進角ポジションPA1では、ポンプPからメインポート151Bに供給されたオイルが、スプール120の第2ランド部162と第3ランド部163とにより形成される第3溝部183を介してサブポート153に流通される。
【0048】
これにより、第1ポート152Aから進角通路43を介して進角室41にオイルが供給されると共に、遅角室42のオイルが遅角通路44から第1ポート152Bに送られ、第2ポート154Bから排出される。その結果、相対回転位相は進角方向S1に変位する。また、相対回転位相が中間ロック位相にある場合には、サブポート153からのオイルによる圧力が一対の中間ロック部材64に作用し、スプリング65に抗して中間ロック部材64をシフトさせ中間ロック機構6のロックを解除する。
【0049】
また、この第1進角ポジションPA1に操作した場合には、中間ロック部材64を内部ロータ2の外周面から離間させ、中間ロック部材64から内部ロータ2に作用する抵抗を解除した状態で、相対回転位相を進角方向S1に変位させることが可能となる。
【0050】
図8に示すロック解除ポジションPLでは、第5ランド部165が第1ポート152Aを閉塞し、第4ランド部164が第1ポート152Bを閉塞する位置関係になる。これと同時にメインポート151Bがサブポート153に連通する位置関係になる。つまり、第1ポート152Aと第1ポート152Bとでオイルが遮断され、サブポート153にオイルが供給される。
【0051】
これにより、ロック解除ポジションPLでは、相対回転位相が中間ロック位相にある場合には、サブポート153からのオイルの油圧が中間ロック通路61を介して一対の中間ロック部材64に作用し、スプリング65に抗して中間ロック部材64をシフトさせ中間ロック機構6のロック状態を解除する。
【0052】
図9に示す第1遅角ポジションPB1では、ポンプPからメインポート151Aに供給されたオイルは、第5溝部185を介して第1ポート152Bに流通される。また、第1ポート152Aからのオイルが、第5ランド部165と根元側凸部166とにより形成される第6溝部186を介して第2ポート154Aに流通される。
【0053】
更に、この第1遅角ポジションPB1では、ポンプPからメインポート151Bに供給されたオイルが、第3溝部183を介してサブポート153に流通される。
【0054】
これにより、第1ポート152Bから遅角通路44を介して遅角室42にオイルが供給されると共に、進角室41のオイルが進角通路43から、第1ポート152Aに送られ、第2ポート154Aから排出される。その結果、相対回転位相は遅角方向S2に変位する。また、相対回転位相が中間ロック位相にある場合には、サブポート153からのオイルが一対の中間ロック部材64に作用し、スプリング65に抗して中間ロック部材64をシフトさせ中間ロック機構6のロックを解除する。
【0055】
また、この第1遅角ポジションPB1では、中間ロック部材64を内部ロータ2の外周面から離間させることになるので、中間ロック部材64から内部ロータ2に作用する抵抗を解除した状態で相対回転位相を遅角方向S2に変位させることが可能となる。
【0056】
図10に示す第2遅角ポジションPB2では、スプール120がスリーブ110の端部に位置し、この時、第1遅角ポジションPB1と同様に、ポンプPから供給されたオイルは、第5溝部185を介して第1ポート152Bに流通される。また、第1ポート152Aからのオイルが、第6溝部186を介して第2ポート154Aに流通される。更に、サブポート153と第3ポート155とを連通する溝部としての第2溝部182が、スプール120の外周面において、第1ランド部161と第2ランド部162とにより形成される。したがって、サブポート153からのオイルが第2溝部182を介して第3ポート155に流通することが可能となる。
【0057】
これにより、第1ポート152Bから遅角通路44を介して遅角室42にオイルが供給されると共に、進角室41のオイルが進角通路43から第1ポート152Aに送られ、第2ポート154Aから排出される。その結果、相対回転位相は遅角方向S2に変位する。また、中間ロック溝62のオイルが排出されるため遅角方向S2に変位する際に、一対の中間ロック部材64がスプリング65の付勢力により収容部63に係合し、最遅角ロック位相に達すると一方の中間ロック部材64が収容部73に係合してロック状態に移行する。
【0058】
このように、ソレノイドバルブ100は、スプール120の移動に伴い、図6に示される第2進角ポジションPA2や、図10に示される第2遅角ポジションPB2のように、サブポート153と第3ポート155とが連通する時、サブポート153と第3ポート155とを連通する流路が、メインポート151、第1ポート152、及び第2ポート154から独立して構成される。
【0059】
すなわち、図6に示される第2進角ポジションPA2や図10に示される第2遅角ポジションPB2では、サブポート153と第3ポート155とは第1溝部181又は第2溝部182により連通され、メインポート151A、メインポート151B、第1ポート152A、第1ポート152B、第2ポート154A、及び第2ポート154Bとは第2ランド部162又は第3ランド部163により遮断される。このため、中間ロック通路61からサブポート153に流通してきたオイルは、第3ポート155のみから排出され、当該オイルが第2ポート154A、及び第2ポート154Bから排出されることも無いし、遅角通路44から第1ポート152Bに流通してきたオイル或いは進角通路43から第1ポート152Aに流通してきたオイルが第3ポート155から排出されることも無い。したがって、中間ロック通路61からサブポート153に流通してきたオイルをスムーズに第3ポート155から排出することが可能となる。
【0060】
また、図6図10に示されるように、スプール120がスリーブ110の一端部に移動した時にサブポート153と第3ポート155とを連通する第1の溝部に相当する第1溝部181と、スプール120がスリーブ110の他端部に移動した時にサブポート153と第3ポート155とを連通する第2の溝部に相当する第2溝部182とは、互いに隣接して設けられる。このため、ソレノイドバルブ100を第3ポート155から流体を排出している状態としつつ、他のポートの給排状態を自由に設定することができる。
【0061】
更に、本実施形態では、第1溝部181と第2溝部182は、スプール120の両端部のうち、ソレノイド部130が設けられた端部とは異なる端部に設けられる。特に本実施形態では、中間ロック通路61からサブポート153に流通してきたオイルを、第3ポート155を介してオイルパン170に排出する際に用いられる第1溝部181が、スプール120の先端側に設けられている。このため、第3ポート155の開口面積を大きくすることができるので、第3ポート155からオイルを排出し易くできる。
【0062】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、サブポート153と第3ポート155とを連通する第1溝部181及び第2溝部182がスプール120の外周面に形成されているとして説明したが、第1溝部181及び第2溝部182を、スプール120を貫通して設けることも可能である。
【0063】
上記実施形態では、第1溝部181と第2溝部182とが互いに隣接しているとして説明したが、第1溝部181と第2溝部182とは隣接させないで設けることも可能である。
【0064】
上記実施形態では、第1溝部181及び第2溝部182は、スプール120の両端部のうち、ソレノイド部130が設けられた端部とは異なる端部に設けられているとして説明したが、第1溝部181及び第2溝部182をソレノイド部130設けられた端部の側に設けることも可能である。
【0065】
上記実施形態では、第1ポート152Aには進角通路43が連通して設けられ、第1ポート152Bには遅角通路44が連通して設けられるとして説明したが、第1ポート152Aには遅角通路44を連通して設け、第1ポート152Bには進角通路43を連通して設けることも可能である。
【0066】
本発明は、流体の供給先を切り替え可能なソレノイドバルブに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
6:中間ロック機構
100:ソレノイドバルブ
110:スリーブ
111:周壁部
120:スプール
130:ソレノイド部
132:プランジャ
151:メインポート
152:第1ポート
153:サブポート
154:第2ポート
155:第3ポート
181:第1溝部(第1の溝部)
182:第2溝部(第2の溝部)
E:内燃機関
P:ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10