特許第6187314号(P6187314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187314
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/38 20060101AFI20170821BHJP
   H02K 5/08 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H02K3/38 A
   H02K5/08 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-37402(P2014-37402)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-162987(P2015-162987A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】小野 次良
(72)【発明者】
【氏名】村上 正憲
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅樹
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−201809(JP,A)
【文献】 実開昭59−097566(JP,U)
【文献】 特開2004−135406(JP,A)
【文献】 特開平04−145855(JP,A)
【文献】 特開2013−219987(JP,A)
【文献】 特開平11−098747(JP,A)
【文献】 特開2011−182612(JP,A)
【文献】 特開2012−200055(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0249329(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/38
H02K 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド成型により外郭が形成された有底円筒状のステータと、前記外郭の軸方向の端面に載置された回路基板と、前記軸方向の端面と前記回路基板を覆うように前記外郭の外周面に圧入された有底円筒状のブラケットと、前記軸方向の端面に前記軸方向の端面の円周方向に間隔をあけて立設された複数の端子と、前記ブラケットと前記複数の端子を区画しそれぞれを絶縁するための絶縁カバーとを備えた電動機であって、
前記絶縁カバーは、前記端子の上方を覆う上面壁と、前記上面壁の前記ブラケット側の端部から下方に延びて前記軸方向の端面に当接するとともに前記端子の前記ブラケット側の側方を覆う外周壁と、前記上面壁と前記外周壁の一端に一体的に形成され前記上面壁から下方に延びて前記軸方向の端面に当接する側面壁とを備えた断面L字状に形成され、
前記側面壁は、前記複数の端子のうち、前記回路基板に電気的に接続されない端子の円周方向の側方を覆うように形成され、
前記外周壁と前記側面壁は、前記端子の上端と前記上面壁の内面との間隔が所定の間隔となる高さを有することを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記絶縁カバーは、前記側面壁の前記ブラケットと反対側の端部から前記上面壁に一体的に円周方向に向かって前記側面壁を延長形成し前記軸方向の端面に当接する延長部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
モールド成型により外郭が形成された有底円筒状のステータと、前記外郭の軸方向の端面に載置された回路基板と、前記軸方向の端面と前記回路基板を覆うように前記外郭の外周面に圧入された有底円筒状のブラケットと、前記軸方向の端面に前記軸方向の端面の円周方向に間隔をあけて立設された複数の端子と、前記ブラケットと前記複数の端子を区画しそれぞれを絶縁するための絶縁カバーとを備えた電動機であって、
前記絶縁カバーは、前記端子の上方を覆う上面壁と、前記上面壁の前記ブラケット側の端部から下方に延びて前記軸方向の端面に当接するとともに前記端子の前記ブラケット側の側方を覆う外周壁とを備えて断面L字状に形成され、
前記軸方向の端面には、前記軸方向の端面から上方に延びて少なくとも前記上面壁の一端側の内面に当接する当接部を備え、
前記当接部は、前記複数の端子のうち、前記回路基板に電気的に接続されない端子側の前記上面壁の内面に当接するとともに、前記端子の上端と前記上面壁の内面との間隔が所定の間隔となる高さを有することを特徴とする電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラケットと端子を区画しそれぞれを絶縁する絶縁カバーを備えた電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動機には、ステータの内部にロータを回転可能に配置したインナーロータ型の電動機が知られている。電動機は、例えば、空気調和機に搭載する送風ファンを回転駆動するためのブラシレスDCモータとして用いられる。
【0003】
従来のブラシレスDCモータとして、ステータは、インシュレータを介してステータ巻線を巻回したステータコアの内周面を除いて、樹脂によるモールド成型により有底円筒状の外郭が形成されている。外郭の軸方向の端面には、その端面の円周方向に間隔をあけて、ステータ巻線に接続された複数の端子が軸方向に立設されている。外郭の軸方向の端面の一部には、ステータ巻線への通電を制御する電気回路が形成された回路基板が載置されている。また、回路基板には、複数の端子のうちの一部の端子が回路基板の表面から突出するとともに電気的に接続されている。外郭の外周面には、有底円筒状のブラケットが外郭の軸方向の端面と回路基板を覆うように圧入されている。
【0004】
ブラケットと複数の端子の間には、ブラケットと複数の端子を区画しそれぞれを絶縁する絶縁カバーが配置されている。絶縁カバーは、複数の端子の上方を覆う上面壁と、上面壁のブラケット側の端部から下方に延びて外郭の軸方向の端面に当接するとともに複数の端子のブラケット側の側方を覆う外周壁と、上面壁と外周壁の両端に一体的に形成され上面壁から下方に延びる一対の側面壁を備えた断面L字状に形成されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1の絶縁カバーは、回路基板に電気的に接続されて回路基板の表面から突出した端子と、回路基板に電気的に接続されず外郭の軸方向の端面から突出した端子とを覆っている。また、絶縁カバーは、外周壁の下端部から下方に延びる複数の絶縁片を備え、外郭の外周面には、複数の絶縁片が収納される収納部が複数の端子に対応する位置に設けられている。それぞれの側面壁は、回路基板の表面に突き当たらない同一の長さに形成されており、回路基板に電気的に接続されず外郭の軸方向の端面から突出した端子の周囲においては、回路基板が存在しない箇所であるため、絶縁カバーの側面壁と外郭の軸方向の端面との間に隙間が形成されている。
【0005】
このように構成された従来のブラシレスDCモータは、電動機の組み立て時に、絶縁カバーの側面壁と外郭の軸方向の端面との間に形成された隙間の影響により、外部から絶縁カバーの上面壁に外郭の軸方向の端面に向かって押す力が加わると、絶縁カバーの上面壁の内周側が外郭の軸方向の端面側に沈み込むように変形する。このような絶縁カバーの変形により、絶縁カバーの外周壁が外郭の外周面よりも外側にはみ出し引っかかった状態になり、外周壁の下端部に備えた絶縁片が外郭の外周面の収納部から外側にはみ出した状態になる場合がある。この状態のままでブラケットを外郭の外周面に圧入すると、絶縁カバーの外周壁や係止片をブラケットと外郭の外周面とで挟み込んで破壊してしまい、ブラケットと端子の絶縁不良につながるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−201809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、電動機の組み立て時に絶縁カバーの変形を防ぐことができる電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の電動機は、モールド成型により外郭が形成された有底円筒状のステータと、外郭の軸方向の端面に載置された回路基板と、軸方向の端面と回路基板を覆うように外郭の外周面に圧入された有底円筒状のブラケットと、軸方向の端面に軸方向の端面の円周方向に間隔をあけて立設された複数の端子と、ブラケットと複数の端子を区画しそれぞれを絶縁するための絶縁カバーとを備えたものであって、絶縁カバーは、端子の上方を覆う上面壁と、上面壁のブラケット側の端部から下方に延びて軸方向の端面に当接するとともに端子のブラケット側の側方を覆う外周壁と、上面壁と外周壁の一端に一体的に形成され上面壁から下方に延びて軸方向の端面に当接する側面壁とを備えた断面L字状に形成され、側面壁は、複数の端子のうち、回路基板に電気的に接続されない端子の円周方向の側方を覆うように形成され、外周壁と側面壁は、端子の上端と上面壁の内面との間隔が所定の間隔となる高さを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の電動機において、絶縁カバーは、側面壁のブラケットと反対側の端部から上面壁に一体的に円周方向に向かって側面壁を延長形成し軸方向の端面に当接する延長部を備えたことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の電動機は、モールド成型により外郭が形成された有底円筒状のステータと、外郭の軸方向の端面に載置された回路基板と、軸方向の端面と回路基板を覆うように外郭の外周面に圧入された有底円筒状のブラケットと、軸方向の端面に軸方向の端面の円周方向に間隔をあけて立設された複数の端子と、ブラケットと複数の端子を区画しそれぞれを絶縁するための絶縁カバーとを備えたものであって、絶縁カバーは、端子の上方を覆う上面壁と、上面壁のブラケット側の端部から下方に延びて軸方向の端面に当接するとともに端子のブラケット側の側方を覆う外周壁とを備えて断面L字状に形成され、軸方向の端面には、軸方向の端面から上方に延びて少なくとも上面壁の一端側の内面に当接する当接部を備え、当接部は、複数の端子のうち、回路基板に電気的に接続されない端子側の上面壁の内面に当接するとともに、端子の上端と上面壁の内面との間隔が所定の間隔となる高さを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電動機によれば、絶縁カバーは、端子の上方を覆う上面壁と、上面壁のブラケット側の端部から下方に延びて軸方向の端面に当接するとともに端子のブラケット側の側方を覆う外周壁と、上面壁と外周壁の一端に一体的に形成され上面壁から下方に延びて軸方向の端面に当接する側面壁とを備えた断面L字状に形成され、側面壁は、複数の端子のうち、回路基板に電気的に接続されない端子の円周方向の側方を覆うように形成され、外周壁と側面壁は、端子の上端と上面壁の内面との間隔が所定の間隔となる高さを有することにより、電動機の組み立て時、回路基板に電気的に接続されない端子の周囲において、外部から絶縁カバーの上面壁に外郭の軸方向の端面に向かって押す力が加わっても、側面壁が外郭の軸方向の端面に当接しているので、絶縁カバーが変形するのを防ぐことができる。
【0012】
また、本発明の電動機によれば、絶縁カバーは、側面壁のブラケットと反対側の端部から上面壁に一体的に円周方向に向かって側面壁を延長形成し軸方向の端面に当接する延長部を備えたことにより、側面壁が断面L字状に形成されるため、側面壁の強度を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の電動機によれば、絶縁カバーは、端子の上方を覆う上面壁と、上面壁のブラケット側の端部から下方に延びて軸方向の端面に当接するとともに端子のブラケット側の側方を覆う外周壁とを備えて断面L字状に形成され、軸方向の端面には、軸方向の端面から上方に延びて少なくとも上面壁の一端側の内面に当接する当接部を備え、当接部は、複数の端子のうち、回路基板に電気的に接続されない端子側の上面壁の内面に当接するとともに、端子の上端と上面壁の内面との間隔が所定の間隔となる高さを有することにより、電動機の組み立て時、回路基板に電気的に接続されない端子の周囲において、外部から絶縁カバーの上面壁に外郭の軸方向の端面に向かって押す力が加わっても、当接部が上面壁の一端側の内面に当接しているので、絶縁カバーが変形するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による電動機を示す説明図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
図2】本発明による電動機を示す一部分解斜視図である。
図3図2中の絶縁カバーのB矢視を示す外観図である。
図4】本発明による電動機のステータと絶縁カバーを示す分解斜視図である。
図5】本発明による電動機を示す絶縁カバーを取り付けた状態を示す説明図であり、(a)は一部分解斜視図、(b)は(a)に示すC部分を拡大した部分拡大斜視図、(c)は図1(b)に示すD部分を拡大した部分拡大断面図である。
図6】本発明による電動機を示す絶縁カバーを取り付けた状態の第2の実施形態を示す説明図であり、(a)は一部分解斜視図、(b)は(a)に示すE部分を拡大した部分拡大斜視図、(c)は図1(b)に示すD部分を拡大した部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1乃至図5は、本実施形態における電動機を説明する図である。本実施形態における電動機Mは、インナーロータ型電動機であり、例えば、空気調和機に搭載する送風ファンを回転駆動するためのブラシレスDCモータとして用いられる。
【0016】
電動機Mは、図1および図2に示すように、有底円筒状のステータ1と、ステータ1の中心に、ロータ出力軸21を有し回転自在に配置されるロータ2とを備えている。ステータ1には、ステータコア12の内周面121を除いて樹脂によるモールド成型が施され、有底円筒状の外郭11が形成される。
【0017】
ステータ1には、外郭11の軸方向の下端面111の中央に一体的に埋設された有底円筒状の第1ブラケット31が設けられている。第1ブラケット31は、例えば、亜鉛メッキ鋼板からなり、ロータ2のロータ出力軸21を支持する一方の軸受22を収納している。また、ステータ1には、外郭11の開口11a側である軸方向の上端面112に回路基板4が載置され、回路基板4と軸方向の上端面112を覆って外郭11の外周面113に固定された有底円筒状の第2ブラケット32が設けられている。第2ブラケット32は、第1ブラケット31と同様に、例えば、亜鉛メッキ鋼板からなり、その中央には他方の軸受23を収納する軸方向に突出した有底円筒状の軸受収納部321が形成されている。
【0018】
また、ステータ1は、電磁鋼板の積層体からなるステータコア12と、ステータコア12を絶縁被覆するインシュレータ13と、インシュレータ13を介してステータコア12のティース部(図示省略)に巻回されるステータ巻線14とを備えている。ロータ2は、軸受22、23に回転可能な状態で支持されたロータ出力軸21と、ロータ出力軸21に同軸的に取付けられた円盤状のロータコア24と、ロータコア24の外周側に取付けられた板状の複数のロータマグネット25とを備えている。このように構成されたステータ1とロータ2は、ステータコア12の内周面121(ティース部の先端面)が、ロータマグネット25の外周面251に所定の間隔(いわゆるエアギャップ)をもって対向するように配置されている。
【0019】
軸方向の上端面112側の外郭11の外周面113には、図2および図4に示すように、第2ブラケット32を圧入するための圧入段差面114が設けられている。圧入段差面114は第2ブラケット32が圧入された際、第2ブラケット32の外周面322と外郭11の外周面113とが同一平面になるように、ステータ1の径方向に一段低く形成されている。また、圧入段差面114は、その外径が第2ブラケット32の内径よりも若干大径に形成され、第2ブラケット32を圧入段差面114に圧入可能になっている。
【0020】
外郭11の軸方向の上端面112には、軸方向の上端面112の円周方向に間隔をあけて立設された5つの端子151〜155が設けられている。4つの端子151〜154は、外郭11に埋設されたステータ巻線14に接続されており、端子151〜153は、回路基板4に半田付けされて電気的に接続されるステータ巻線14のU相、V相、W相の端子であり、端子154は、回路基板4には電気的に接続されないN相の端子である。残りの1つの端子155は、回路基板4を軸方向の上端面112に固定する端子である。
【0021】
また、外郭11の軸方向の上端面112には、回路基板4を位置決めした状態で載置するための3つのボス161〜163が設けられている。さらに、2つのボス161、162は、軸方向の上端面112に取り付けられる絶縁カバー5を位置決めするためのボスとしても作用する。
【0022】
絶縁カバー5は、図2乃至図5に示すように、第2ブラケット32と4つの端子151〜154とを区画しそれぞれを絶縁するPBT(ポリブチレンテレフタレート)などの樹脂からなるカバーである。絶縁カバー5は、4つの端子151〜154の上方を覆う上面壁51と、上面壁51の第2ブラケット32側の端部511から下方に延びる外周壁52と、上面壁51と外周壁52の一端(端子154側)に一体的に形成され上面壁51から下方に延びる側面壁53とを備えている。また、絶縁カバー5は、上面壁51と外周壁52の他端(端子151側)に一体的に形成され上面壁51から下方に延びる側面壁54を備えている。この絶縁カバー5は、円環扇形状であり断面L字状に形成されており、上面壁51、外周壁52、側面壁53および側面壁54が一体形成されている。
【0023】
上面壁51には、2つのボス161、162に対向するように形成した2つの嵌合孔512、513が設けられている。絶縁カバー5は、2つのボス161、162に2つの嵌合孔512、513を圧入することにより位置決めされている。外周壁52は、その下端部521が軸方向の上端面112に当接するとともに、4つの端子151〜154の第2ブラケット32側(第2ブラケット32の外周面322側)の側方を覆っている。側面壁53は、その下端部533が軸方向の上端面112に当接するとともに、端子154の円周方向の側方を覆っている。側面壁54は、回路基板4の表面41に突き当たらない長さに形成されており、端子151の円周方向の側方を覆っている。また、絶縁カバー5には、図3に示すように、側面壁53の第2ブラケット32と反対側の端部531から上面壁51に一体的に円周方向に向かって側面壁53を延長形成した延長部532を有している。この延長部532も、その下端部が軸方向の上端面112に当接する。さらに、外周壁52と側面壁53は、図5に示すように、4つの端子151〜154の上端と上面壁51の内面514との間隔が所定の間隔Tとなる高さHを有している。この高さHを有する側面壁53の形成により、絶縁カバー5の製造バラツキがあっても、上述の所定の間隔Tが確保されるので、側面壁53が軸方向の上端面112から浮いた状態にならない。
【0024】
さらに、絶縁カバー5には、外周壁52の下端部521から下方に延びる4つの絶縁片522を備えている。4つの絶縁片522は、外周壁52の円周方向に間隔をあけて4つの端子151〜154に対応する位置に形成されている。4つの絶縁片522は、外周壁52と同じ曲率で外周壁52から径方向の外側に少し突き出るように形成された片である。
【0025】
一方、外郭11の圧入段差面114には、図4に示すように、圧入段差面114の上端面112側に、4つの絶縁片522が収納される4つの収納部115が4つの端子151〜154に対応する位置に設けられている。4つの収納部115は、4つの絶縁片522の形状に合致する溝からなり、圧入段差面114から径方向に一段低く形成されている。4つの収納部115は、径方向の深さが絶縁片522の厚さよりも大きく形成され、絶縁片522の外周面が圧入段差面114よりも内側に配置されている。4つの絶縁片522の形成により、4つの端子151〜154と第2ブラケット32との絶縁距離を確保することができる。
【0026】
以上のように構成された電動機Mの組み立て時においては、3つのボス161〜163に嵌め込まれるように回路基板4を位置合わせするとともに、回路基板4から4つの端子151〜153、155を突出させる。この結果、回路基板4が外郭11の上端面112に搭載され、4つの端子151〜153、155が半田付けされる。次に、2つのボス161、162に、絶縁カバー5の上面壁51の嵌合孔512、513を圧入するとともに、4つの絶縁片522を4つの収納部115に収納させる。この結果、絶縁カバー5が外郭11の上端面112側に取り付けられる。
【0027】
このとき、上面壁51により4つの端子151〜154の上方が覆われる。また、外周壁52により4つの端子151〜154の第2ブラケット32側の側方が覆われ、外周壁52の下端部521が外郭11の軸方向の上端面112に当接した状態となる。さらに、側面壁53により端子154の円周方向の側方が覆われ、側面壁53の下端部533が外郭11の軸方向の上端面112に当接した状態となる。また、端子154の周囲が回路基板4の存在しない箇所になり、上面壁51の内面514と外郭11の軸方向の上端面112との間に高さHの隙間が形成された状態となる。
【0028】
この結果、上面壁51と外郭11の軸方向の上端面112との間に隙間が形成される端子154の周囲において、外部から絶縁カバー5の上面壁51に外郭11の軸方向の上端面112に向かって押す力が加わっても、側面壁53の下端部533が外郭11の軸方向の上端面112に当接した状態となっているため、絶縁カバー5の上面壁51の内周側が外郭11の軸方向の上端面112側に沈み込むように変形するのを防ぐことができる。したがって、従来技術のように、絶縁カバー5の外周壁52が外郭11の圧入段差面114よりも外側にはみ出し引っかかった状態になり、外周壁52の下端部521に備えた絶縁片522が外郭11の圧入段差面114の収納部115から外側にはみ出した状態に陥ることがない。このため、第2ブラケット32を外郭11の圧入段差面114に圧入するときに、絶縁カバー5の外周壁52や絶縁片522を第2ブラケット32と外郭11の圧入段差面114とで挟み込んで破壊してしまうことがなく、第2ブラケット32と端子154の絶縁不良を防ぐことができる。
【0029】
また、絶縁カバー5の側面壁53は、側面壁53を延長形成した延長部532を有し断面L字状に形成されているため、側面壁53の強度を向上させることができる。したがって、外部から絶縁カバー5の上面壁51に外郭11の軸方向の上端面112に向かって押す力が加わっても、絶縁カバー5の側面壁53を破壊してしまうことがない。
【0030】
以上説明してきた第1の実施形態による電動機Mでは、絶縁カバー5は、上面壁51と外周壁52の一端(端子154側)に一体的に形成され、上面壁51から下方に延びて外郭11の軸方向の上端面112に当接する側面壁53を備えるようにしたが、本発明はこれに限らない。例えば、第2の実施形態による電動機Mでは、絶縁カバー5に側面壁53を形成する替わりに、図6に示すように、外郭11の軸方向の上端面112に一体的に形成され、外郭11の軸方向の上端面112から上方に延びて、少なくとも上面壁51の一端側(端子154側)の内面514に当接する側面壁やボスなどの当接部6を備える。このようにしても、上述の第1の実施形態と同様に電動機Mの組み立て時に絶縁カバー5の変形を防ぐことができる。なお、他の実施形態としては、絶縁カバー5に側面壁53を形成する替わりに、外郭11の軸方向の上端面112の端子153と端子154との間にボスを設けるとともに、このボスに対向するように絶縁カバー5の上面壁51に嵌合孔を設けるようにしても、上述の実施形態と同様に電動機Mの組み立て時に絶縁カバー5の変形を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 ステータ
11 外郭
11a 開口
111 下端面
112 上端面
113 外周面
114 圧入段差面
115 収納部
12 ステータコア
121 内周面
13 インシュレータ
14 ステータ巻線
151〜155 端子
161〜163 ボス
2 ロータ
21 ロータ出力軸
22 軸受
23 軸受
24 ロータコア
25 ロータマグネット
251 外周面
31 第1ブラケット
32 第2ブラケット
321 軸受収納部
322 外周面
4 回路基板
41 表面
5 絶縁カバー
51 上面壁
511 端部
512、513 嵌合孔
514 内面
52 外周壁
521 下端部
522 絶縁片
53 側面壁
531 端部
532 延長部
533 下端部
54 側面壁
6 当接部
H 高さ
T 間隔
M 電動機
図1
図2
図3
図4
図5
図6