特許第6187380号(P6187380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187380
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】回路構成体および電気接続箱
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20170821BHJP
   H05K 7/06 20060101ALI20170821BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H02G3/16
   H05K7/06 C
   H05K7/20 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-97717(P2014-97717)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-216754(P2015-216754A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 健人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶一
(72)【発明者】
【氏名】山根 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】北 幸功
(72)【発明者】
【氏名】大井 智裕
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−228799(JP,A)
【文献】 特開2005−80354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H05K 7/06
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続用開口部を有する基板と、
前記基板の一面側に積層された複数のバスバーと、
本体部および複数のリード端子を有し、前記リード端子が前記接続用開口部を通して露出された前記複数のバスバーに接続された電子部品と、
前記複数のバスバーのうち前記基板と反対側の面に接着剤を介して積層された放熱板と、を備えた回路構成体であって、
前記基板には前記接続用開口部の周辺に基板貫通孔が設けられるとともに、前記複数のバスバーのうち前記基板貫通孔に対応する位置にバスバー貫通孔が設けられており、
前記基板貫通孔および前記バスバー貫通孔が重なり合って形成された孔部内に前記接着剤が逃がされるようになっている回路構成体。
【請求項2】
前記複数のバスバーは接着シートを介して前記基板に積層されており、前記接着シートのうち前記基板貫通孔に対応する位置には、シート貫通孔が設けられている請求項1に記載の回路構成体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回路構成体をケースに収容してなる電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、回路構成体および電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載電装品の通電や断電を実行する装置として、種々の電子部品が実装された回路基板を備える回路構成体をケースに収容してなるものが知られている。
【0003】
このような装置において、回路基板に実装される電子部品は小型で優れた機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−99071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの電子部品は比較的発熱量が大きいため、電子部品から発生した熱がケース内にこもるとケース内が高温になり、ケース内に収容された電子部品の性能が低下する虞があった。
【0006】
そこで、回路基板や電子部品から発生した熱を放熱する様々な構造として、例えば、図6に示すように、回路基板112のうち電子部品115が配された面の反対側の面に、放熱部材130を設けた構成の回路構成体111が考えられる。
【0007】
一方、図5および図6に示すように、回路基板112のうち電子部品115に対応する領域に開口113を設けるとともに、回路基板112のうち電子部品115が配される面の反対側の面に複数のバスバー120を設け、電子部品115の端子117を開口113を通して露出されたバスバー120に接続する構成が考えられる。複数のバスバー120によって電力回路を構成することにより、電力回路に大電流を流すことが可能となる。
【0008】
しかし、回路基板112に設けられた開口113を通して電子部品115を複数のバスバー120に接続する場合、図6に示すように、バスバー120のうち回路基板112の反対側に面に積層された放熱部材接着用の接着剤135が隣り合うバスバー120の間の隙間S内に進入し、電子部品115の本体部116の下面に接触する場合がある。このような状態となると、回路基板112や電子部品115から発生した熱により接着剤135が膨張したり、逆に、冷却により収縮した場合に、電子部品115が接着剤135により押し上げられたり、引き込まれたりして、端子117とバスバー120との接続部分にクラックが入る等の接続不良が生じる虞がある。
【0009】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、接続信頼性が高い回路構成体および電気接続箱を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に開示される技術は、接続用開口部を有する基板と、前記基板の一面側に積層された複数のバスバーと、本体部および複数のリード端子を有し、前記リード端子が前記接続用開口部を通して露出された前記複数のバスバーに接続された電子部品と、前記複数のバスバーのうち前記基板と反対側の面に接着剤を介して積層された放熱板と、を備えた回路構成体であって、前記基板には前記接続用開口部の周辺に基板貫通孔が設けられるとともに、前記複数のバスバーのうち前記基板貫通孔に対応する位置にバスバー貫通孔が設けられており、前記基板貫通孔および前記バスバー貫通孔が重なり合って形成された孔部内に前記接着剤が逃がされるようになっている

【0011】
本明細書に開示される技術によれば、基板貫通孔とバスバー貫通孔とが連通されており、接続用開口部の周辺の接着剤は、隣り合うバスバーの間の隙間内だけでなく、これらの貫通孔内に逃げるから、バスバー間の隙間に進入する接着剤の量が減少し、接着剤が電子部品の本体部の下面に直接接触することが抑制される。従って、電子部品や基板の発熱により接着剤が熱膨張した場合や、逆に、冷却により接着剤が収縮した場合でも、電子部品がその影響を直接受けることが抑制され、もって、リード端子とバスバーとの接続部が影響を受けることも抑制される。よって、接続信頼性が高い回路構成体および電気接続箱を得ることができる。
【0012】
上記回路構成体において、複数のバスバーを接着シートを介して基板に積層し、接着シートのうち基板貫通孔に対応する位置に、シート貫通孔を設ける構成としてもよい。
【0013】
上記の態様によれば、複数のバスバーを接着シートを介して基板に積層する場合にも、接着シートのうち基板貫通孔に対応する位置にシート貫通孔を設けることにより、基板貫通孔とシート貫通孔とバスバー貫通孔とを連通させて、同様の効果を得ることができる。
【0014】
また、本明細書に開示される技術は、上記回路構成体をケースに収容してなる電気接続箱である。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に開示された技術によれば、回路構成体又は電気接続箱において、接続信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態の回路構成体の一部の分解斜視図
図2】電気接続箱の中の平面図
図3】コイルをバスバーに接続した状態の一部拡大平面図
図4図3のA−A線における一部断面図
図5】仮想的な技術に係る、コイルをバスバーに接続した状態の一部拡大平面図
図6図5のB−B線における一部断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態を図1ないし図4によって説明する。
【0018】
本実施形態の電気接続箱10は、回路基板12、および、放熱板30を含む回路構成体11と、回路構成体11を収容する合成樹脂製のケース40と、を備える。なお、以下の説明においては、図1における上側を、表側又は上側とし、下側を、裏側又は下側として説明する。
【0019】
図1に示すように、回路構成体11は、回路基板12と、回路基板12の表面(図1における上面)に配されたコイル15と、回路基板12の裏面(図1における下面)に配された複数のバスバー20と、バスバー20の裏面に配された放熱板30(図4参照)とを備える。
【0020】
回路基板12は略L字形状をなし、その表面には、プリント配線技術により図示しない導電回路が形成されている。
【0021】
コイル15は表面実装型のコイルであって、図1および図4に示すように、直方体状の本体部16を有し、本体部16の底面のうちの対向2辺の縁部周辺に一対のリード端子17が設けられた形態をなしている。
【0022】
複数のバスバー20は、金属板材を所定形状にプレス加工してなる。バスバー20は概ね矩形状をなしており、隣り合うバスバー20との間に隙間Sを介して所定のパターンで配策されている。いくつかのバスバー20の側縁には、外方に突出する接続片21が、バスバー20と一体に形成されている。これら接続片21にはボルトを挿通するためのボルト取り付け孔21Aが貫通して形成されており、これらのボルト取り付け孔21Aに図示しないボルトが挿通されるとともに車両に取り付けられた電源端子と螺合されることにより、接続片21は外部電源と電気的に接続されるようになっている。
【0023】
複数のバスバー20は、回路基板12の裏面に、絶縁性の接着シート25を介して接着されている。接着シート25は、回路基板12とほぼ同形状をなしている。
【0024】
図1に示すように、回路基板12のうちコイル15が配される位置には、コイル15をバスバー20上に実装するための接続用開口部13が形成されている。図3に示すように、接続用開口部13のうちコイル15の本体部16が配される部分は、本体部16の底面より僅かに大きい矩形状に開口している。また、コイル15のリード端子17が位置する一対の縁部側には、幅が短い開口(以下拡張部13Aとする)が拡張して設けられている。
【0025】
また、接着シート25のうち、回路基板12の接続用開口部13に対応する位置には、接続用開口部13とほぼ同形状で、かつ、やや大きな開口寸法を有するシート開口部26が設けられている(図1および図3参照)。
【0026】
さらに、回路基板12のうち、接続用開口部13の一対の拡張部13Aの周辺領域には、複数の小径の基板貫通孔14Aが設けられており、接着シート25のうち基板貫通孔14Aに対応する位置には、シート貫通孔14Bが設けられており、複数のバスバー20のうち基板貫通孔14Aに対応する位置には、バスバー貫通孔14Cが設けられている(図3参照)。これらの貫通孔14A,14B,14Cが互いに重なり合うことにより、回路基板12、接着シート25、および、複数のバスバー20の積層体を表裏に亘って貫通する孔部14が形成されている。
【0027】
コイル15は、回路基板12の表面側のうち、接続用開口部13が設けられた領域に配されている。本実施形態においては、コイル15のリード端子17は、例えばハンダ付け等公知の手法により、接続用開口部13およびシート開口部26を通して露出された一対のバスバー20の表面に接続されている。
【0028】
バスバー20の下面(裏面)には、放熱板30が配置されている(図4参照)。放熱板30は、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等の熱伝導性に優れる金属材料からなる板状部材であり、回路基板12およびコイル15において発生した熱を放熱する機能を有する。放熱板30は、例えば熱硬化性の接着剤35によりバスバー20の裏面側に接着されている。接着剤35は、絶縁性かつ熱伝導性を有する接着剤である。
【0029】
続いて、本実施形態に係る電気接続箱10の製造工程の一例を説明する。まず、図1に示すように、表面にプリント配線技術により導電路が形成された回路基板12の下面に、所定の形状に切断された接着シート25を重ね合わせるとともに、複数のバスバー20を所定のパターンで並べた状態で加圧する。これにより、回路基板12および複数のバスバー20は接着シート25を介して互いに接着・固定される。この状態において、複数のバスバー20の上面の一部は、回路基板12の接続用開口部13および接着シート25のシート開口部26を通して露出された状態とされている。
【0030】
続いて、スクリーン印刷により回路基板12の所定の位置にはんだを塗布する。その後、所定の位置にコイル15を載置し、リフローはんだ付けを実行する。
【0031】
次に、放熱板30の上面に接着剤35を塗布し、コイル15および複数のバスバー20を配した回路基板12を上方から重ね合わせる。この時、回路基板12、接着シート25、および、バスバー20の積層体には、表裏に亘って貫通する複数の孔部14が設けられているから、接着剤35は隣り合うバスバー20の間の隙間Sだけでなく、孔部14内にも逃がされる(図4参照)。その後加熱を行うことにより、接着剤35を硬化させる。
【0032】
最後に、放熱板30が重ねられた回路基板12(回路構成体11)をケース40内に収容し、電気接続箱10とする。
【0033】
続いて、本実施形態に係る電気接続箱10の作用、効果について説明する。本実施形態によれば、接続用開口部13の周辺の接着剤35は、隣り合うバスバー20の間の隙間S内だけでなく、複数の孔部14内に逃げるから、バスバー20間の隙間Sに進入する接着剤35の量が減少し、接着剤35がコイル15の本体部16の下面に直接接触することが抑制される。従って、コイル15や回路基板12の発熱により接着剤35が熱膨張した場合や、逆に、冷却により接着剤35が収縮した場合でも、コイル15の本体部16がその影響を直接受けることが抑制され、もって、バスバー20およびリード端子17の接続部分も影響を受けにくい。すなわち、接続信頼性が高い回路構成体11および電気接続箱10を得ることができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、複数のバスバー20は接着シート25を介して回路基板12に積層されており、接着シート25のうち基板貫通孔14Aに対応する位置には、シート貫通孔14Bが設けられている。これにより、基板貫通孔14Aとシート貫通孔14Bとバスバー貫通孔14Cとを連通させて、接着剤35を、基板貫通孔14A、シート貫通孔14B、及びバスバー貫通孔14Cから逃がすことができる。
【0035】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0036】
(1)上記実施形態では、複数の孔部14を、拡張部13Aの周辺領域に設けたが、接続用開口部13の周囲全体を囲むように設けてもよく、要は、回路基板12の導電パターンに影響を及ぼさない位置であればどこに設けてもよい。
【0037】
(2)孔部14の位置や形状、数は、上記実施形態に限るものではなく、例えば、長孔状の孔部を一対設ける構成等、他の構成とすることもできる。
【0038】
(3)上記実施形態では、コイル15を実装する例を示したが、コイル15に限らず、コンデンサやシャント抵抗等、他の電子部品を実装する場合に適用することもできる。
【符号の説明】
【0039】
10…電気接続箱
11…回路構成体
12…回路基板
13…接続用開口部
13A…拡張部
14…孔部
14A…基板貫通孔
14B…シート貫通孔
14C…バスバー貫通孔
15…コイル(電子部品)
16…本体部
17…リード端子
20…バスバー
25…接着シート
26…シート開口部
30…放熱板
35…接着剤
40…ケース
S…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6