(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押圧部材は、前記二つの吸着材をそれぞれ前記容器の内壁面に押し付けない非押圧状態から、前記二つの吸着材をそれぞれ前記容器の内壁面に押し付ける押圧状態へ変化させるための部材であり、
前記二つの吸着材は、前記押圧部材が前記非押圧状態であるときに、前記容器の内部に収容される、
請求項1に記載の化学蓄熱装置。
前記押圧部材は、前記二つの吸着材が収容された状態の前記容器の内部に挿入されることで、前記二つの吸着材をそれぞれ前記容器の内壁面に押し付けて、前記二つの吸着材の間に前記反応媒体流路を形成する、
請求項2に記載の化学蓄熱装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、NH
3を物理吸着する活性炭等の吸着材は、NH
3を吸着する時には発熱し、NH
3を離脱するときには吸熱する。そして、吸着材にNH
3の吸着、脱離を効率よく行うには、吸着材と外気とを熱交換するなどして吸着材の温度を一定に保つことが望ましい。上記特許文献1に記載の化学蓄熱装置においては、吸着材が吸着器の内壁面に十分に密着していないと、吸着器の内部における吸着材と吸着器の外部における外気との熱交換を効率良く行うことができない。また、上記特許文献1に記載の化学蓄熱装置においては、吸着器の内部にNH
3の通り道が少ないと、吸着材全体にNH
3を速やかに行き渡らせることができず、吸着材にNH
3を好適に吸着させることができない。
【0005】
本発明は、吸着材と外気との熱交換の効率を高めると共に、吸着材に好適に反応媒体を吸着させることができる化学蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る化学蓄熱装置は、反応媒体と化学反応して熱を発生させる反応材を有する反応器と、反応器と接続され、反応媒体を吸着する吸着器と、を備え、吸着器は、容器と、容器の内部に収容された吸着材構造体と、を有し、吸着材構造体は、反応媒体の吸着による保持及び脱離が可能な少なくとも二つの固体状の吸着材と、二つの吸着材をそれぞれ容器の内壁面に押し付けて、二つの吸着材の間に反応媒体を流通させるための反応媒体流路を形成する押圧部材と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る化学蓄熱装置では、容器の内部に収容された吸着材構造体が、少なくとも二つの固体状の吸着材及び押圧部材を有する。二つの吸着材は、押圧部材によりそれぞれ容器の内壁面に押し付けられるので、吸着材を容器に十分に密着させることができ、吸着材と外気との熱交換の効率を高めることができる。さらに、押圧部材により、二つの吸着材の間に反応媒体を流通させるための反応媒体流路が形成されるので、この反応媒体流路を反応媒体が流通することにより、反応媒体が容器の内部全体に行き渡るまでの時間を短縮することができ、吸着材に好適に反応媒体を吸着させることができる。以上より、吸着材と外気との熱交換の効率を高めると共に、吸着材に好適に反応媒体を吸着させることができる。
【0008】
本発明に係る化学蓄熱装置において、押圧部材は、二つの吸着材をそれぞれ容器の内壁面に押し付けない非押圧状態から、二つの吸着材をそれぞれ容器の内壁面に押し付ける押圧状態へと変化させるための部材であり、二つの吸着材は、押圧部材が非押圧状態であるときに、容器の内部に収容されてもよい。この場合、押圧部材が二つの吸着材をそれぞれ容器の内壁面に押し付ける押圧状態へと変化させる前に、すなわち二つの吸着材がそれぞれ容器の内壁面に押し付けられない非押圧状態であるときに、二つの吸着材が容器の内部に収容される。よって、二つの吸着材を容器の内部に収容し易くすることができる。
【0009】
本発明に係る化学蓄熱装置において、押圧部材は、断面楕円形状を有すると共に、二つの吸着材の間に押圧部材の軸心周りに回転可能に配置されていてもよい。この場合、押圧部材が軸心周りに回転されることで、押圧部材の短径方向で押圧部材が二つの吸着材と接するように二つの吸着材に挟まれた状態から、押圧部材の長径方向で押圧部材が二つの吸着材と接するように二つの吸着材に挟まれた状態へ、押圧部材の方向を変化させて固定することができる。これにより、二つの吸着材を引き離すように容器の内壁面へ押し付けて容器に十分に密着させることができると共に、二つの吸着材の間を押し広げて二つの吸着材の間に反応媒体流路を形成することができる。
【0010】
押圧部材は、二つの吸着材が収容された状態の容器の内部に挿入されることで、二つの吸着材をそれぞれ容器の内壁面に押し付けて、二つの吸着材の間に反応媒体流路を形成してもよい。この場合、二つの吸着材が収容された状態の容器の内部に押圧部材が挿入されることで、吸着材の位置をずらして二つの吸着材を容器の内壁面へ押し付けて容器に十分に密着させることができるので、吸着材と外気との熱交換の効率を高めることができる。さらに、吸着材の位置をずらして二つの吸着材の間に反応媒体流路を形成することができるので、この反応媒体流路を反応媒体が流通することにより、反応媒体が容器の内部全体に行き渡るまでの時間を短縮することができ、吸着材に好適に反応媒体を吸着させることができる。
【0011】
二つの吸着材は、断面三角形状を有すると共に、容器の内部において互いの斜面がスペーサを介して対向するように配置されており、押圧部材は、スペーサに対する吸着材の位置をずらすように二つの吸着材が収容された状態の容器の内部に挿入されることで、二つの吸着材をそれぞれ容器の内壁面に押し付けて、二つの吸着材の間に反応媒体流路を形成してもよい。この場合、二つの吸着材が収容された状態の容器の内部に、スペーサに対する吸着材の位置をずらすように押圧部材が挿入されることで、二つの吸着材は押圧部材によりそれぞれ容器の内壁面に押し付けられるので、吸着材を容器に十分に密着させることができ、吸着材と外気との熱交換の効率を高めることができる。さらに、押圧部材により、二つの吸着材の間に反応媒体を流通させるための反応媒体流路が形成されるので、この反応媒体流路を反応媒体が流通することにより、反応媒体が容器の内部全体に行き渡るまでの時間を短縮することができ、吸着材に好適に反応媒体を吸着させることができる。
【0012】
押圧部材は、二つの吸着材の間に配置された弾性を有する部材であってもよい。この場合、押圧部材の弾性力によって、二つの吸着材をそれぞれ容器の内壁面に簡単かつ好適に押し付けることができる共に、反応媒体流路を適切に形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吸着材と外気との熱交換の効率を高めると共に、吸着材に好適に反応媒体を吸着させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る化学蓄熱装置を備えた排気浄化システムを示す概略構成図である。同図において、排気浄化システム1は、車両のディーゼルエンジン2(以下、単にエンジン2という)の排気系に設けられ、エンジン2から排出される排気ガス中に含まれる有害物質(環境汚染物質)を浄化するシステムである。
【0017】
排気浄化システム1は、エンジン2と接続された排気通路である排気管3の途中に上流側から下流側に向けて順に配置された熱交換器4、酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)5、ディーゼル排気微粒子除去フィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)6、選択還元触媒(SCR:SelectiveCatalytic Reduction)7、及び酸化触媒(ASC:Ammonia Slip Catalyst)8を備えている。
【0018】
熱交換器4は、エンジン2からの排気ガスと後述する反応器11との間で熱の伝達を行う機器であり、ハニカム構造をなしている。なお、熱交換器4はハニカム構造に限らず、周知の熱交換構造を利用可能である。酸化触媒5は、排気ガス中に含まれるHC及びCO等を酸化して浄化する触媒である。DPF6は、排気ガス中に含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集して取り除くフィルタである。SCR7は、尿素またはアンモニア(NH
3)によって、排気ガス中に含まれるNOxを還元して浄化する触媒である。酸化触媒8は、SCR7をすり抜けてSCR7の下流側に流れたNH
3を酸化する触媒である。
【0019】
また、排気浄化システム1は、化学蓄熱装置10を備えている。化学蓄熱装置10は、通常は排気ガスの熱(排熱)を蓄えておき、必要なときに排熱を使用することにより、エネルギーレスで熱交換器4を加熱する装置である。化学蓄熱装置10は、熱交換器4の周囲に配置された反応器11と、この反応器11と接続された吸着器12と、を備えている。
【0020】
反応器11は、気体の反応媒体であるNH
3と化学反応して熱を発生すると共に排熱を受けてNH
3を脱離させる反応材13を含んでいる。反応材13としては、ハロゲン化物のMXaという組成を持つ材料が用いられる。ここで、Mは、Mg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の遷移金属である。Xは、Cl、Br、I等である。aは、2〜3である。なお、反応器11は、ステンレス鋼、金属ビーズ、SiCビーズ、Siビーズ、カーボンビーズ、アルミナビーズ等の高熱伝導体を含んでいてもよい。
【0021】
吸着器12は、NH
3の物理吸着による保持及び脱離が可能な吸着材14を内蔵している。吸着材14としては、活性炭、カーボンブラック、メソポーラスカーボン、ナノカーボン及びゼオライト等が用いられる。吸着器12は、NH
3を吸着材14に物理吸着させることで、NH
3を貯蔵する。なお、吸着材14は、成形体化されている。
【0022】
反応器11及び吸着器12は、導入管15を介して接続されている。導入管15には、反応器11と吸着器12との間の流路を開閉させる開閉弁である電磁弁16が設けられている。電磁弁16は、コントローラ(不図示)により制御される。
【0023】
このような化学蓄熱装置10において、エンジン2からの排気ガスの温度が低いときは、電磁弁16が開くことで、吸着器12から反応器11にNH
3が導入管15を介して供給され、反応器11の反応材13(例えばMgBr
2)とNH
3とが化学反応して化学吸着(配位結合)し、反応材13から熱が発生する。つまり、下記の反応式(A)における左辺から右辺への反応(発熱反応)が起こる。そして、反応器11で発生した熱によって熱交換器4が加熱されると共に、熱交換器4を介して排気ガスが加熱される。
MgBr
2+xNH
3 ⇔ Mg(NH
3)xBr
2+熱 …(A)
【0024】
一方、エンジン2からの排気ガスの温度が高くなると、排熱が反応器11の反応材13に与えられることで、反応材13とNH
3とが分離する。つまり、上記の反応式(A)における右辺から左辺への反応(再生反応)が起こる。そして、反応材13から脱離したNH
3は、導入管15を介して吸着器12に戻り、吸着器12の吸着材14に物理吸着(回収)される。
【0025】
続いて、
図2〜
図4を参照して、本実施形態に係る化学蓄熱装置10が備える吸着器12の構成について詳細に説明する。
図2は、
図1に示す吸着器12を示す概略断面図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4は、第1実施形態に係る化学蓄熱装置が備える吸着器において、プレート容器に収容された吸着材構造体を示す概略断面図である。
【0026】
図2及び
図3に示すように、吸着器12は、吸着材収容部である複数のプレート容器20と、プレート容器20の内部に収容された吸着材構造体26と、各プレート容器20を支持する一対の支持部材21と、各プレート容器20の一端側に設けられるヘッダ部25と、を有している。
【0027】
各プレート容器20は、平板により直方体状に形成され、互いに対向する一対の支持部材21の間に延在している。各プレート容器20の一端側は、吸着材14を挿入するために開放されている。プレート容器20は、各支持部材21が延びている方向に複数段(本実施形態においては、三段)並設されている。各プレート容器20は、隣り合う二つの伝熱フィン22の間に配置されている。各プレート容器20の外壁面20aには、伝熱フィン22が固定されている。
【0028】
一方の支持部材21には、各プレート容器20に吸着材構造体26を収容するための複数の貫通孔21aが形成されている。吸着材構造体26は、支持部材21の貫通孔21aを介し、各プレート容器20の一端側から各プレート容器20の内部へ挿入される。これにより、吸着材構造体26は、各プレート容器20の一端側から各プレート容器20の内部に収容される。吸着材構造体26は、図示するようにそれぞれ一つの長い状態で各プレート容器20の内部に挿入されてもよく、短い状態に切断された状態で小分けに各プレート容器20の内部に挿入されてもよい。
【0029】
図3及び
図4に示すように、吸着材構造体26は、上記二つの固体状の吸着材14と、二つの断面楕円形状の押圧部材30と、を有している。吸着材構造体26が各プレート容器20の内部に収容された状態で、各吸着材14は、押圧部材30を介して互いに対向するように配置されており、押圧部材30は、各吸着材14によって挟まれている。本実施形態において、二つの固体状の吸着材14は、例えば粉末状の活性炭が固められて形成される成形体である。また、各吸着材14は、断面矩形状を呈している。なお、押圧部材30は一つ又は三つ以上であってもよい。本実施形態において、押圧部材30は、二つの吸着材14をそれぞれプレート容器20の内壁面20bに押し付けない非押圧状態から、二つの吸着材14をそれぞれプレート容器20の内壁面20bに押し付ける押圧状態へと変化させるための部材である。
【0030】
図4の(a)に示すように、プレート容器20の内部には、二つの吸着材14が断面楕円形状の押圧部材30を間に二つ挟んだ状態で挿入される。このような状態でプレート容器20の内部に各吸着材14及び押圧部材30が挿入されることで、プレート容器20の内部に各吸着材14及び押圧部材30が収容される。このとき、各押圧部材30の短径方向は、各吸着材14の対向方向である。各押圧部材30は、各押圧部材30の短径方向で各吸着材14と接触する位置で固定されている。すなわち、押圧部材30によって、二つの吸着材14は、それぞれプレート容器20の内壁面20bに押し付けられない非押圧状態となっている。
【0031】
押圧部材30は、一対の支持部材21の間でプレート容器20が延びる方向に向かって延在している。押圧部材30は、軸心周りに回転可能に配置されている。具体的に、押圧部材30における一端(プレート容器20の開放側の一端)にはネジ穴が形成されており(不図示)、操作者がネジ穴にドライバ等を差し込んで回すことによって、押圧部材30が軸心周りに回転される。
図4の(b)に示すように、プレート容器20の内部に各吸着材14及び押圧部材30が収容された状態で、各押圧部材30の長径方向が各吸着材14の対向方向となるように回転される。そして、各押圧部材30は、各押圧部材30の長径方向で各吸着材14と接触する位置で固定される。これにより、押圧部材30によって、二つの吸着材14は、それぞれプレート容器20の内壁面20bに押し付けられた押圧状態となる。
【0032】
図4の(a)に示されるような押圧部材30の短径方向で各吸着材14に挟まれた状態(非押圧状態)から、
図4の(b)に示されるような押圧部材30の長径方向で各吸着材14に挟まれた状態(押圧状態)になることで、互いに対向する各吸着材14の離間距離は、押圧部材30の短軸に等しい距離から押圧部材30の長軸に等しい距離へと変化する。これにより、プレート容器20の内部において、各吸着材14は、中央側から外側へ向かって押し付けられてプレート容器20の内壁面20bに密着する。
【0033】
また、プレート容器20の内部において各吸着材14が中央側から外側へ向かって押圧部材30によって押し付けられることにより、各吸着材14が互いに引き離され、各吸着材14の間における空間が押し広げられる。これにより、各吸着材14の間にNH
3が流通するNH
3流路60が形成される。
【0034】
プレート容器20は、外壁面20aに固定された伝熱フィン22との間で熱交換を行う。伝熱フィン22は、プレート容器20の外部における外気と接触することにより、外気との間で熱交換を行う。これにより、プレート容器20は、伝熱フィン22を介して外気との間で熱交換を行う。
【0035】
ヘッダ部25は、例えばステンレス鋼により形成されている。ヘッダ部25は、一方の支持部材21に固定されている。ヘッダ部25の内部は、支持部材21の貫通孔21aを介してプレート容器20の内部と連通されている。ヘッダ部25は、導入管15と接続されている。プレート容器20内の吸着材14に保持されたNH
3は、ヘッダ部25から導入管15へと流れ、反応器11へと供給される。また、反応材13から脱離したNH
3は、導入管15からヘッダ部25へと流れ、吸着器12に戻り、吸着器12の吸着材14に物理吸着(回収)される。
【0036】
以上、本実施形態に係る化学蓄熱装置10では、プレート容器20の内部に収容された吸着材構造体26が、少なくとも二つの固体状の吸着材14及び押圧部材30を有する。二つの吸着材14は、押圧部材30によりそれぞれプレート容器20の内壁面20bに押し付けられるので、吸着材14をプレート容器20に十分に密着させることができ、吸着材14と外気との熱交換の効率を高めることができる。さらに、押圧部材30により、二つの吸着材14の間にNH
3流路が形成されるので、このNH
3流路をNH
3が流通することにより、プレート容器20の内部全体に行き渡るまでの時間を短縮することができ、吸着材14に好適にNH
3を吸着させることができる。以上より、吸着材14と外気との熱交換の効率を高めると共に、吸着材14に好適にNH
3を吸着させることができる。
【0037】
また、本実施形態に係る化学蓄熱装置10によれば、押圧部材30が二つの吸着材14をそれぞれプレート容器20の内壁面20bに押し付ける押圧状態へと変化させる前に、すなわち二つの吸着材14がそれぞれプレート容器20の内壁面20bに押し付けられない非押圧状態であるときに、二つの吸着材14がプレート容器20の内部に収容される。よって、二つの吸着材14をプレート容器20の内部に収容し易くすることができる。
【0038】
さらに、本実施形態に係る化学蓄熱装置10によれば、断面楕円形状の押圧部材30が軸心周りに回転されることで、押圧部材30の短径方向で押圧部材30が二つの吸着材14と接するように二つの吸着材14に挟まれた状態から、押圧部材30の長径方向で押圧部材30が二つの吸着材14と接するように二つの吸着材14に挟まれた状態へ、押圧部材30の方向を変化させて固定することができる。これにより、二つの吸着材14を引き離すようにプレート容器20の内壁面20bへ押し付けてプレート容器20に十分に密着させることができると共に、二つの吸着材14の間を押し広げて二つの吸着材14の間にNH
3流路60を形成することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る化学蓄熱装置の構成について説明する。第2実施形態に係る化学蓄熱装置は、第1実施形態に係る化学蓄熱装置10と同様、反応器11と、吸着器12と、導入管15と、を備える。第2実施形態に係る化学蓄熱装置においては、吸着材14及び押圧部材が一体的にプレート容器20に挿入されるのではなく、吸着材14が収容された状態のプレート容器20に押圧部材が後から挿入される点で、第1実施形態に係る化学蓄熱装置10とは異なる。具体的な構成として、第2実施形態に係る化学蓄熱装置では、吸着材構造体26が、断面楕円形状の押圧部材30の代わりに断面矩形形状の押圧部材を有している。また、第2実施形態に係る化学蓄熱装置では、吸着材14に切欠き部が形成されている。以下、詳細に説明する。
【0040】
図5は、第2実施形態に係る化学蓄熱装置が備える吸着器12において、プレート容器20に収容された吸着材構造体26を示す概略断面図であり、
図4に対応する図である。
図5に示すように、本実施形態において、吸着材構造体26は、二つの固体状の吸着材14と、押圧部材40と、を有している。
図5の(a)に示すように、本実施形態において、プレート容器20の内部には、切欠き部14aが二つずつ形成された二つの吸着材14が挿入及び収容される。プレート容器20の内部に各吸着材14が収容された状態で、各吸着材14の各切欠き部14aは、互いに向かい合っている。このとき、押圧部材40は、プレート容器20の内部に収容されていない。すなわち、二つの吸着材14は、それぞれプレート容器20に押し付けられない非押圧状態となっている。
【0041】
図5の(b)に示すように、各吸着材14が収容された状態のプレート容器20の内部に、断面矩形形状の押圧部材40が挿入される。押圧部材40は、一対の支持部材21の間でプレート容器20が延びる方向に向かって延在している。押圧部材40は、切欠き部14aの位置でプレート容器20の一端から挿入され、プレート容器20の内部へ押し込まれる。これにより、一方の吸着材14の位置が、プレート容器20の内部において中央側から外側へ向かってずらされて、プレート容器20の内壁面20bに押し付けられる。これにより、押圧部材40によって、二つの吸着材14は、それぞれプレート容器20に押し付けられた押圧状態となる。各吸着材14は、プレート容器20の内壁面20bと密着する。
【0042】
また、一方の吸着材14の位置が、プレート容器20の内部において中央側から外側へ向かってずらされることにより、各吸着材14が互いに引き離され、各吸着材14の間における空間が押し広げられる。これにより、各吸着材14の間にNH
3が流通するNH
3流路60が形成される。
【0043】
以上、本実施形態に係る化学蓄熱装置にあっても、二つの吸着材14が収容された状態のプレート容器20の内部に押圧部材40が挿入されることで、一方の吸着材14の位置をずらして二つの吸着材14をプレート容器20の内壁面20bへ押し付けてプレート容器20に十分に密着させることができるので、吸着材14と外気との熱交換の効率を高めることができる。さらに、一方の吸着材14の位置をずらして二つの吸着材14の間にNH
3流路60を形成することができるので、このNH
3流路60をNH
3が流通することにより、NH
3がプレート容器20の内部全体に行き渡るまでの時間を短縮することができ、吸着材14に好適に反応媒体を吸着させることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る化学蓄熱装置にあっても、二つの吸着材14がそれぞれプレート容器20の内壁面20bに押し付けられない非押圧状態であるときに、二つの吸着材14がプレート容器20の内部に収容される。よって、二つの吸着材14をプレート容器20の内部に収容し易くすることができる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る化学蓄熱装置の構成について説明する。第3実施形態に係る化学蓄熱装置は、第1実施形態に係る化学蓄熱装置10と同様、反応器11と、吸着器12と、導入管15と、を備える。第3実施形態に係る化学蓄熱装置においては、各吸着材14及び押圧部材が一体的にプレート容器20に挿入されるのではなく、吸着材14が収容された状態のプレート容器20に押圧部材が後から挿入される点で、第1実施形態に係る化学蓄熱装置10とは異なる。具体的な構成として、第3実施形態に係る化学蓄熱装置では、吸着材構造体26が、断面楕円形状の押圧部材30の代わりに断面円形状の押圧部材を有している。また、第3実施形態に係る化学蓄熱装置では、吸着材14の形状が断面矩形状ではなく断面三角形状であり、各吸着材14の間にスペーサが設けられている。以下、詳細に説明する。
【0046】
図6は、第3実施形態に係る化学蓄熱装置が備える吸着器12において、プレート容器20に収容された吸着材構造体26を示す概略断面図であり、
図4に対応する図である。
図6の(a)に示すように、本実施形態において、プレート容器20の内部には、断面三角形状の二つの吸着材14が断面矩形形状のスペーサ50と共に挿入及び収容される。プレート容器20の内部に各吸着材14及びスペーサ50が収容された状態で、各吸着材14は、互いの斜面14bがスペーサ50を介して対向するように配置されており、スペーサ50は、各吸着材14によって挟まれている。一方の吸着材14は、他方の吸着材14よりも小さい。他方の吸着材14の位置は固定される。このとき、押圧部材52は、プレート容器20の内部に収容されていない。すなわち、二つの吸着材14は、それぞれプレート容器20に押し付けられない非押圧状態となっている。
【0047】
図6の(b)に示すように、各吸着材14及びスペーサ50が収容された状態のプレート容器20の内部における一方の吸着材14とプレート容器20の内側面との間の空間に、断面円形状(円柱状)の押圧部材52が挿入される。押圧部材52は、一対の支持部材21の間でプレート容器20が延びる方向に向かって延在している。プレート容器20の内部に押圧部材52が挿入されることにより、スペーサ50に対する一方の吸着材14の位置がずらされて、プレート容器20の内壁面20bに押し付けられる。これにより、押圧部材52によって、二つの吸着材14は、それぞれプレート容器20に押し付けられた押圧状態となる。各吸着材14は、プレート容器20の内壁面20bに密着する。
【0048】
また、スペーサ50に対する一方の吸着材14の位置がずらされることにより、各吸着材14が互いに引き離され、各吸着材14の間における空間が押し広げられる。これにより、各吸着材14の間にNH
3が流通するNH
3流路60が形成される。
【0049】
以上、本実施形態に係る化学蓄熱装置にあっても、二つの吸着材14が収容された状態のプレート容器20の内部に、スペーサ50に対する吸着材14の位置をずらすように押圧部材52が挿入されることで、二つの吸着材14は、押圧部材52によりそれぞれプレート容器20の内壁面20bに押し付けられるので、吸着材14をプレート容器20に十分に密着させることができ、吸着材14と外気との熱交換の効率を高めることができる。さらに、押圧部材52により、二つの吸着材14の間にNH
3を流通させるためのNH
3流路60が形成されるので、このNH
3流路60をNH
3が流通することにより、NH
3がプレート容器20の内部全体に行き渡るまでの時間を短縮することができ、吸着材14に好適にNH
3を吸着させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る化学蓄熱装置にあっても、二つの吸着材14がそれぞれプレート容器20の内壁面20bに押し付けられない非押圧状態であるときに、二つの吸着材14がプレート容器20の内部に収容される。よって、二つの吸着材14をプレート容器20の内部に収容し易くすることができる。
【0051】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る化学蓄熱装置の構成について説明する。第4実施形態に係る化学蓄熱装置は、第1実施形態に係る化学蓄熱装置10と同様、反応器11と、吸着器12と、導入管15と、を備える。第4実施形態に係る化学蓄熱装置では、吸着材構造体26が、断面楕円形状の押圧部材30の代わりに押圧部材として機能する多孔体を有している点で、第1実施形態に係る化学蓄熱装置10とは異なる。以下、詳細に説明する。
【0052】
図7は、第4実施形態に係る化学蓄熱装置が備える吸着器を組み立てる様子を示す概略断面図である。
図7に示すように、吸着材構造体26は、二つの吸着材14と、多孔体27と、を有している。多孔体27は、各吸着材14によって挟まれた状態で、各プレート容器20の一端側から支持部材21の貫通孔21aを介して各プレート容器20の内部へ挿入される。
【0053】
多孔体27は、例えば気孔が多く開けられた金属ウール等の金属多孔体であり、弾性を有している。多孔体27は、プレート容器20の内部において、各吸着材14を中央側から外側へ向かって押し付ける。これにより、プレート容器20の内部において、各吸着材14は、伝熱フィン22が固定された外壁面20aの反対側の内壁面20bに密着する。すなわち、多孔体27は、プレート容器20の内壁面20bに吸着材14を押し付け、吸着材14をプレート容器20に密着させる押圧部材として機能する。また、多孔体27は、気孔が多く開けられていることにより、NH
3が流通するNH
3流路(反応媒体流路)として機能する。
【0054】
以上、本実施形態に係る化学蓄熱装置にあっても、二つの吸着材14は、多孔体27によりそれぞれプレート容器20の内壁面20bに押し付けられるので、吸着材14をプレート容器20に十分に密着させることができ、吸着材14と外気との熱交換の効率を高めることができる。さらに、多孔体27により、二つの吸着材14の間にNH
3流路が形成されるので、このNH
3流路をNH
3が流通することにより、プレート容器20の内部全体に行き渡るまでの時間を短縮することができ、吸着材14に好適にNH
3を吸着させることができる。以上より、吸着材14と外気との熱交換の効率を高めると共に、吸着材14に好適にNH
3を吸着させることができる。
【0055】
また、多孔体27は、二つの吸着材14の間に配置された弾性を有する部材であるので、多孔体27の弾性力によって、二つの吸着材14をそれぞれプレート容器20の内壁面20bに簡単かつ好適に押し付けることができると共に、NH
3流路を適切に形成することができる。
【0056】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0057】
例えば、吸着材構造体26は、多孔体27の代わりにバネを有してもよい。この場合、バネの弾性により、各吸着材14をプレート容器20の内部において中央側から外側に好適に押し付けることができる。また、バネの弾性により、各吸着材14の間を押し広げて、各吸着材14の間にNH
3流路を形成することができる。
【0058】
上記実施形態において、固体の吸着材14は粉末状の物質を固めて形成した成形体であるとしたが、これに限られない。例えば、固体の吸着材14は、粘性のある物質を固めて形成してもよい。
【0059】
上記実施形態において、プレート容器20の一端側にヘッダ部25を備えているとしたが、ヘッダ部25を備えずに、導入管15を分岐させて各プレート容器20へと直接接続してもよい。
【0060】
上記第2及び第3実施形態において、吸着材14が収容された状態のプレート容器20に押圧部材が後から挿入されることにより、一方の吸着材14の位置をずらすとしたが、一方の吸着材14だけでなく他方の吸着材14の位置も共にずらしてもよい。
【0061】
上記第3実施形態において、一方の吸着材14は、他方の吸着材14よりも小さいとしたが、これに限られず、例えば各吸着材14の大きさが同じであってもよい。また、他方の吸着材14の位置は固定されていなくてもよい。また、各吸着材14及びスペーサ50が収容された状態のプレート容器20の内部に挿入される押圧部材52は、複数であってもよい。
【0062】
反応器11に導入される反応媒体は、NH
3に限られず、例えばCO
2としても良い。この場合には、CO
2と化学反応させる反応材としては、MgO、CaO、BaО、Ca(OH)
2、Mg(OH)
2、Fe(OH)
2、Fe(OH)
3、FeO、Fe
2O
3、Fe
3O
4等を使用することができる。
【0063】
NH
3等の反応媒体を吸着材14に吸着する方法としては、物理吸着に限られず、化学吸着等であっても良い。
【0064】
反応器11は、熱交換器4が配置された位置における排気管3の周囲に配置されているとしたが、これに限られない。例えば、酸化触媒5が配置された位置における排気管3の周囲に配置されてもよい。この場合、酸化触媒5が、反応器11が配置された部分に対応する排気管3の内部に設けられた加熱対象物となる。即ち、反応器11は、熱交換器4を加熱するものに限られず、例えば排気管3の酸化触媒5等、エンジン2の排気系に設けられた他の部分を加熱するものにも適用可能である。また、反応器11は、加熱対象物の内部に配置されてもよい。また、反応器11は、排気管3における加熱対象物が存在しない部分を加熱するものにも適用可能である。