(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の移動体通信機においては、基地局へ送信する無線周波数(RF:Radio Frequency)信号の電力を増幅するために電力増幅モジュール(パワーアンプモジュール)が用いられる。このような電力増幅モジュールは、RF信号を増幅する電力増幅器と、該電力増幅器を構成するトランジスタにバイアス電流を供給するためのバイアス回路とを含む。
【0003】
図10は、エミッタフォロワ型のバイアス回路を用いた電力増幅モジュールの構成例を示す図である(例えば、特許文献1)。バイアス回路1000は、電力増幅器1010を構成するバイポーラトランジスタT100にバイアス電流を供給するためのものであり、エミッタフォロワ型の構成となっている。そして、バイアス回路1000を構成するバイポーラトランジスタT110のコレクタには、バッテリ電圧V
BATが印加される。
【0004】
このような構成において、バイポーラトランジスタT100,T110を、例えば、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)とすると、各バイポーラトランジスタのベース・エミッタ間電圧V
BEは1.3V程度であるため、バイポーラトランジスタT110を駆動するためには、バッテリ電圧V
BATは2.8V程度必要である。そのため、バッテリ電圧V
BATの最低電圧は、例えば、2.9V程度とされることが一般的である。
【0005】
ところで、近年、携帯電話等の移動体通信機においては、通話時間や通信時間を向上させるために、バッテリ電圧V
BATの最低電圧を、例えば、2.5V程度まで低くすることが求められている。しかしながら、上述のようなエミッタフォロワ型のバイアス回路1000を用いる構成においては、バッテリ電圧V
BATは2.8V程度必要であるため、このような要求に対応することができない。
【0006】
そこで、より低いバッテリ電圧V
BATでバイアス回路を動作可能とするための構成として、バイアス回路にFETを用いる構成が提案されている。
図11は、バイアス回路にFETを用いた電力増幅モジュールの構成例を示す図である(例えば、特許文献2)。
図11に示すように、電力増幅器1010のバイポーラトランジスタT100にバイアス電流を供給するバイアス回路1100には、FET(F100)が用いられている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態である電力増幅モジュール130を含む送信ユニット100の構成例を示す図である。送信ユニット100は、例えば、携帯電話等の移動体通信機において、音声やデータなどの各種信号を基地局へ送信するために用いられる。なお、移動体通信機は基地局から信号を受信するための受信ユニットも備えるが、ここでは説明を省略する。
【0014】
図1に示すように、送信ユニット100は、変調部110、送信電力制御部120、電力増幅モジュール130、フロントエンド部140、及びアンテナ150を含んで構成される。
【0015】
変調部110は、HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)やLTE(Long Term Evolution)等の変調方式に基づいて入力信号を変調し、無線送信を行うためのRF信号を生成する。RF信号の周波数は、例えば、数百MHzから数GHz程度である。
【0016】
送信電力制御部120は、送信電力制御信号に基づいて、RF信号の電力を調整して出
力する。送信電力制御信号は、例えば、基地局から送信される適応電力制御(APC:Adaptive Power Control)信号に基づいて生成される。例えば、基地局は、移動体通信機からの信号を測定することにより、移動体通信機における送信電力を適切なレベルに調整するためのコマンドとして、APC信号を移動体通信機に送信することができる。
【0017】
電力増幅モジュール130は、送信電力制御部120から出力されるRF信号(RF
IN)の電力を、基地局に送信するために必要なレベルまで増幅し、増幅信号(RF
OUT)を出力する。
【0018】
フロントエンド部140は、増幅信号に対するフィルタリングや、基地局から受信する受信信号とのスイッチングなどを行う。フロントエンド部140から出力される増幅信号は、アンテナ150を介して基地局に送信される。
【0019】
図2は、電力増幅モジュール130の一例である電力増幅モジュール130Aの構成のを示すブロック図である。
図2に示すように、電力増幅モジュール130Aは、電力増幅器200A,200B、バイアス回路210A,210B、バイアス制御回路220、整合回路(MN:Matching Network)230A〜230C、及びインダクタL1,L2を含む。
【0020】
電力増幅器200A,200Bは、それぞれ、入力されるRF信号を増幅し、増幅信号を出力する。電力増幅モジュール130Aにおいては、電力増幅器200Aが初段(ドライブ段)の増幅器、電力増幅器200Bが後段(パワー段)の増幅器となっている。なお、
図2に示す構成では、電力増幅器を2段の構成としたが、電力増幅器は1段であってもよいし、3段以上であってもよい。
【0021】
バイアス回路210A,210Bは、それぞれ、バイアス制御回路220から供給されるバイアス制御電圧V
BIASに基づいて、電力増幅器200A,200Bにバイアス電流を供給する。
【0022】
バイアス制御回路220は、バイアス電流を制御するためのバイアス制御電圧V
BIASをバイアス回路210A,210Bに出力する。バイアス制御回路220は、電力増幅器200A,200Bのゲインを変更するために、バイアス制御電圧V
BIASの出力レベルを調整することができる。
【0023】
整合回路230A〜230Cは、それぞれ、前後の回路間のインピーダンスを整合させるものであり、例えば、キャパシタやインダクタを用いて構成することができる。
【0024】
図3は、電力増幅器200A及びバイアス回路210Aの構成の一例を示す図である。なお、
図2に示す、電力増幅器200B及びバイアス回路210Bの構成は、電力増幅器200A,バイアス回路210Aと同様の構成であるため説明を省略する。
【0025】
図3に示すように、電力増幅器200Aは、バイポーラトランジスタT1(第1のバイポーラトランジスタ)を含む。バイポーラトランジスタT1は、例えばHBTである。バイポーラトランジスタT1は、コレクタにインダクタL1を介して電源電圧V
CCが印加され、エミッタが接地され、ベースに整合回路230Aを介してRF信号(RF
IN1)が入力される。また、バイポーラトランジスタT1のベースには、バイアス回路210Aからバイアス電流I
BIASが供給される。そして、バイポーラトランジスタT1のコレクタから、RF信号(RF
IN1)の増幅信号(RF
OUT1)が出力される。
【0026】
バイアス回路210Aの一例であるバイアス回路210A−1は、電流源300、バイポーラトランジスタT2、抵抗R1,R2、FET(F1,F2)、及びキャパシタC1を含む。
【0027】
電流源300は、バッテリ電圧V
BATを電源電圧として用いて、バイアス制御電圧V
BIASに応じた制御電流I
CTRLを生成する。
【0028】
バイポーラトランジスタT2(第2のバイポーラトランジスタ)は、コレクタが電流源300の出力端と接続され、エミッタが接地される。バイポーラトランジスタT2のコレクタには、電流源300から出力される制御電流I
CTRLの一部である電流I
1(第1の電流)が入力される。バイポーラトランジスタT2は、バイポーラトランジスタT1と同様に、例えばHBTである。なお、バイポーラトランジスタT2は、バイポーラトランジスタT1より小さいサイズとすることができる。なお、ここでいうバイポーラトランジスタのサイズは、トランジスタのフィンガー数による占有面積である。
【0029】
直列接続された抵抗R1(第1の抵抗)及び抵抗R2(第2の抵抗)は、電流源300の出力端と接続され、電流源300から出力される制御電流I
CTRLのうちの一部である電流I
2(第2の電流)が入力される。抵抗R1,R2は、電流I
2に応じた制御電圧V
CTRLを生成する制御電圧生成回路を構成する。
【0030】
FET(F1)(第1のFET)は、ドレインにバッテリ電圧V
BATが電源電圧として供給され、ソースがバイポーラトランジスタT1のベースと接続され、ゲートに制御電圧V
CTRLが供給される。FET(F2)(第2のFET)は、ドレインにバッテリ電圧V
BATが電源電圧として供給され、ソースがバイポーラトランジスタT2のベースと接続され、ゲートに制御電圧V
CTRLが供給される。なお、FET(F1,F2)は、デプレッション型FETとすることができる。また、FET(F2)は、FET(F1)より小さいサイズとすることができる。なお、ここでいうFETのサイズは、ゲート幅とゲート長の占有面積である。
【0031】
キャパシタC1は、一端が電流源300の出力端と接続され、他端が接地されている。
【0032】
このような構成のバイアス回路210A−1において、FET(F1)のソースからバイアス電流I
BIASがバイポーラトランジスタT1のベースに供給される。以下、バイアス回路210A−1の動作について説明する。
【0033】
電流源300からの制御電流I
CTRLによって、FET(F1,F2)が動作し、バイポーラトランジスタT2が動作する。FET(F2)の動作によって
図3に示すQ点の電位(バイポーラトランジスタT2のベース電位)が上昇すると、バイポーラトランジスタT2に流れる電流I
1が増加する。電流I
1が増加すると、抵抗R1,R2に流れる電流I
2が減少する。電流I
2が減少すると、制御電圧V
CTRLが低下する。制御電圧V
CTRLが低下すると、FET(F2)に流れる電流I
3が減少し、バイポーラトランジスタT2に流れる電流I
1が減少する。電流I1が減少すると、抵抗R1,R2に流れる電流I
2が増加する。電流I
2が増加すると、制御電圧V
CTRLが上昇する。制御電圧V
CTRLが上昇すると、FET(F2)に流れる電流I
3が増加し、バイポーラトランジスタT2に流れる電流I
1が増加する。
【0034】
このように、バイアス回路210A−1においては、閉ループ動作が行われ、制御電圧V
CTRLは、ある点に落ち着くこととなる。そして、FET(F1)のソースから、この制御電圧V
CTRLに応じたバイアス電流I
BIASが出力される。従って、バイアス電流I
BIASは、バイアス制御電圧V
BIASに応じた電流となる。
【0035】
この閉ループにおいて、FET(F1)のゲートに供給される制御電圧V
CTRLは、バイポーラトランジスタT2及びFET(F2)の温度特性に応じて変化する。従って、バイポーラトランジスタT1に供給されるバイアス電流I
BIASも、バイポーラトランジスタT2及びFET(F2)の温度特性に応じて変化する。ここで、バイポーラトランジスタT1の温度特性とバイポーラトランジスタT2の温度特性は同等である。また、FET(F1)の温度特性とFET(F2)の温度特性とは同等である。従って、バイポーラトランジスタT2及びFET(F2)の温度特性に応じたバイアス電流I
BIASの変化は、バイポーラトランジスタT1及びFET(F1)の温度特性にも応じたものとなる。これにより、温度変化による電力増幅モジュール130のゲイン変動を抑制することが可能となる。
【0036】
また、バイアス回路210A−1には、バイポーラトランジスタT1のベースに接続されるトランジスタとしてFET(F1)が用いられているため、バッテリ電圧V
BATが2.5V程度であっても動作可能である。さらに、FET(F1)をデプレッション型FETとすることにより、バッテリ電圧V
BATが2.0V程度であってもバイアス回路210A−1を動作させることが可能となる。
【0037】
図3では、電力増幅器200A及びバイアス回路210Aについて説明したが、電力増幅器200B及びバイアス回路210Bについても同様である。従って、電力増幅モジュール130Aは、バッテリ電圧V
BATが2.5V程度(もしくは2.0V程度)低電圧での駆動が可能であるとともに、温度特性を改善することができる。
【0038】
ところで、
図3に示したバイアス回路210A−1に用いられるFET(F1,F2)の閾値電圧V
THには、ばらつきが存在する。このばらつきにより、FET(F1)からバイポーラトランジスタT1のベースに出力されるバイアス電流I
BIASが変動し、電力増幅モジュール130Aのゲインも変動することが考えられる。
【0039】
図4は、
図3に示すバイアス回路210A−1における、FET(F1,F2)の閾値電圧V
THのばらつきによるバイアス電流I
BIASの変動の一例を示すシミュレーション結果である。
図4において、横軸は、電流源300から出力される制御電流I
CTRL(A)、縦軸は、バイアス電流I
BIAS(mA)である。
図4に示す例では、閾値電圧V
THを基準から0.1V増減させた場合、バイアス電流I
BIASに10mA程度の変動が生じている。
【0040】
FET(F1,F2)の閾値電圧V
THのばらつきによる影響を低減させるために、バイアス回路210A−1におけるQ点から見た、上述した閉ループにおける一巡ループゲインGを大きくすることが考えられる。
【0041】
図3に示したバイアス回路210A−1における一巡ループゲインGは、バイポーラトランジスタT2のゲインをQ、バイポーラトランジスタT2のエミッタ抵抗をre、抵抗R1,R2の抵抗値をそれぞれR1,R2とすると、G=(Q/re)×(R1+R2)×{R2/(R1+R2)}=(Q/re)×R2である。従って、抵抗R2の抵抗値を大きくすれば一巡ループゲインGを大きくすることができる。しかしながら、抵抗R2の抵抗値を大きくすることは、チップサイズの増大に繋がってしまう。
【0042】
図5は、バイアス回路210Aにおける一巡ループゲインGを大きくするための構成例である。
図5に示すバイアス回路210A−2は、
図3に示すバイアス回路210A−1における抵抗R1の代わりにバイポーラトランジスタT3(第3のバイポーラトランジスタ)を含んでいる。その他の構成は
図3と同様であるため説明を省略する。バイポーラトランジスタT3は、コレクタにバッテリ電圧V
BATが供給され、エミッタが抵抗R2の一端と接続され、ベースが電流源300の出力端に接続されている。
【0043】
図5に示すバイアス回路210A−2では、電流源300からの制御電流I
CTRLの一部である電流I
2は、バイポーラトランジスタT3のベースに入力される。電流I
2を増幅した電流I
4がバイポーラトランジスタT3のエミッタから出力され、電流I
4が抵抗R2により制御電圧V
CTRLに変換される。即ち、バイポーラトランジスタT3及び抵抗R2は、電流I
2に応じた制御電圧V
CTRLを生成する制御電圧生成回路を構成する。
【0044】
図5に示すバイアス回路210A−2における一巡ループゲインGは、バイポーラトランジスタT3の電流増幅率をhFE
T3とすると、G=(Q/re)×R2×hFE
T3である。ここで、バイポーラトランジスタT3の電流増幅率hFE
T3は、例えば100程度の大きさである。従って、
図5に示すバイアス回路210A−2では、抵抗R2の抵抗値を大きくすることなく、バイポーラトランジスタT3の電流増幅率によって、一巡ループゲインGを大きくすることができる。これにより、FET(F1,F2)の閾値電圧V
THのばらつきによる電力増幅モジュール130Aのゲイン変動を抑制することが可能となる。
【0045】
図6は、
図5に示すバイアス回路210A−2における、FET(F1,F2)の閾値電圧V
THのばらつきによるバイアス電流I
BIASの変動の一例を示すシミュレーション結果である。
図6において、横軸は、電流源300から出力される制御電流I
CTRL(A)、縦軸は、バイアス電流I
BIAS(mA)である。
図6に示す例では、閾値電圧V
THを基準から0.1V増減させた場合におけるバイアス電流I
BIASの変動幅は1mAに満たない程度である。このように、シミュレーション結果からも、
図5に示す構成を採用することにより、FET(F1,F2)の閾値電圧V
THのばらつきによるバイアス電流I
BIASの変動を抑制可能であることがわかる。
【0046】
ところで、
図5に示したバイアス回路210A−2では、FET(F1,F2)の閾値電圧にペア性のばらつきが生じることがある。なお、FET(F1,F2)の閾値電圧のペア性のばらつきとは、同一モジュール内における、FET(F1)の閾値電圧V
TH1とFET(F2)の閾値電圧V
TH2との差である。
図7は、
図5に示すバイアス回路210A−2における、FET(F1,F2)の閾値電圧のペア性のばらつきに応じたバイアス電流I
BIASの変動の一例を示すシミュレーション結果である。
図7において、横軸は、電流源300から出力される制御電流I
CTRL(A)、縦軸は、バイアス電流I
BIAS(mA)である。
図7に示す例では、FET(F1,F2)の閾値電圧のペア性のばらつき(±10mV)により、バイアス電流I
BIASに、10〜20mA程度の変動が生じている。
【0047】
図8は、FET(F1,F2)の閾値電圧のペア性のばらつきによる影響を抑制するためのバイアス回路210Aの構成の一例を示す図である。
図8に示すバイアス回路210A−3は、
図5に示すFET(F2)を備えず、代わりに、抵抗R3を含んでいる。その他の構成は
図5と同様であるため説明を省略する。
図8に示すバイアス回路210A−3において、FET(F1)のソースは、バイポーラトランジスタT1のベースに接続されるとともに、抵抗R3の一端に接続されている。そして、抵抗R3の他端はバイポーラトランジスタT2のベースに接続されている。即ち、
図8に示すバイアス回路210A−3においては、FET(F1)が、閉ループによる制御電圧V
CTRLの生成用と、バイポーラトランジスタT1へのバイアス電流I
BIASの供給用とで兼用されている。
図8に示すバイアス回路210−3では、FETが1つしか用いられていないため、ペア性のばらつきは発生しない。
【0048】
図9は、
図8に示すバイアス回路210A−3における、FET(F1)の閾値電圧V
TH1のばらつきによるバイアス電流I
BIASの変動の一例を示すシミュレーション結果である。
図9において、横軸は、電流源300から出力される制御電流I
CTRL(A)、縦軸は、バイアス電流I
BIAS(mA)である。
図9に示す例では、閾値電圧V
TH1を基準から0.1V増減させた場合におけるバイアス電流I
BIASの変動幅は1mAに満たない程度である。このように、
図8に示す構成を採用することにより、FET(F1)の閾値電圧V
TH1のばらつきによるバイアス電流I
BIASの変動を抑制可能であることがわかる。
【0049】
即ち、
図8に示すバイアス回路210A−3では、FET(F1,F2)の閾値電圧のペア性のばらつきが発生せず、さらに、FET(F1)の閾値電圧V
TH1のばらつきによるバイアス電流I
BIASの変動を抑制することができる。従って、電力増幅モジュール130Aのゲイン変動を抑制することができる。
【0050】
ところで、バイアス回路210Aでは、例えば、製造ばらつき(ペア性のばらつき)により、バイポーラトランジスタT1,T2のベース・エミッタ間電圧やFET(F1,F2)の閾値電圧に差が生じると、制御電流I
CTRLがほぼゼロの状態でも、バイポーラトランジスタT1にリーク電流が流れることがある。
【0051】
図12は、リーク電流を抑制するための電力増幅モジュール130の構成の一例を示す図である。
図12に示す電力増幅モジュール130Bは、
図2に示す電力増幅モジュール130Aにおけるバイアス回路210A,210Bの代わりに、バイアス回路210A’,210B’を備えている。また、電力増幅モジュール130Bは、電源制御回路1300を備えている。電力増幅モジュール130Bにおける、その他の構成は、電力増幅モジュール130Aと同一であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
バイアス回路210A’,210B’は、レギュレート電圧V
REGが電源電圧として供給される点を除いて、電力増幅モジュール130Aのバイアス回路210A,210Bと同等である。詳細は後述する。
【0053】
電源制御回路1300は、バッテリ電圧V
BAT及び増幅制御信号CTRL
AMPに基づいて、レギュレート電圧V
REGを出力する。増幅制御信号CTRL
AMPは、電力増幅器200A,200BにおいてRF信号の増幅を行うかどうかを指示する信号である。
【0054】
増幅制御信号CTRL
AMPが、電力増幅器200A,200BにおいてRF信号の増幅を行うことを示している場合、電源制御回路1300は、バッテリ電圧V
BATをレギュレート電圧V
REGとして出力する。
【0055】
増幅制御信号CTRL
AMPが、電力増幅器200A,200BにおいてRF信号の増幅を行わないことを示している場合、電源制御回路1300は、レギュレート電圧V
REGを低下させる。具体的には、例えば、電源制御回路1300は、レギュレート電圧V
REGをゼロレベルとする。なお、この場合、電源制御回路1300は、レギュレート電圧V
REGを、ゼロレベルではなく、バイポーラトランジスタT1が動作しないレベル(例えば2.0V未満)に低下させることとしてもよい。
【0056】
図13は、バイアス回路210A’の一例であるバイアス回路210A’−1の構成を示す図である。なお、バイアス回路210B’の構成は、バイアス回路210A’と同様の構成であるため説明を省略する。また、
図3に示すバイアス回路210A−1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
図13に示すように、バイアス回路210A’−1においては、FET(F1,F2)のドレインには、電源電圧として、レギュレート電圧V
REGが供給されている。前述したように、電力増幅器200AにおいてRF信号の増幅を行わない場合、レギュレート電圧V
REGは、例えばゼロレベルに低下される。従って、この場合、バイポーラトランジスタT1にリーク電流が流れることを抑制することができる。
【0058】
また、
図5及び
図8に示したバイアス回路210A−2,210A−3についても同様に、レギュレート電圧V
REGを電源電圧として供給する構成に変更することができる。具体的には、バイアス回路210A’の一例として、
図14及び
図15に示すバイアス回路210A’−2,210A’−3の構成を採用することができる。
【0059】
以上、本実施形態について説明した。本実施形態の電力増幅モジュール130によれば、バイアス電流I
BIAS生成用のトランジスタとしてFET(F1)を用いることにより、バッテリ電圧V
BATが2.5V程度であっても動作可能となる。さらに、FET(F1)のゲートに供給される制御電圧V
CTRLの制御を、バイポーラトランジスタT1と同等の温度特性を有するバイポーラトランジスタT2、及びFET(F1)と同等の温度特性を有するFET(F2)を用いて行うことにより、温度変化による電力増幅モジュール130のゲイン変動を抑制することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態によれば、
図5に示したように、制御電圧V
CTRLを生成するための回路としてバイポーラトランジスタT3を用いることにより、制御電圧V
CTRLを生成する閉ループのゲインを大きくし、FETの閾値電圧のばらつきによる影響を低減させることができる。これにより、電力増幅モジュール130のゲイン変動を抑制することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態によれば、
図3または
図5に示した構成において、制御電圧V
CTRLを生成するためのバイポーラトランジスタT2及びFET(F2)のサイズを、それぞれ、バイポーラトランジスタT1及びFET(F1)のサイズより小さくすることができる。これにより、制御電圧V
CTRLを生成する回路における消費電流を小さくすることが可能となる。
【0062】
また、本実施形態によれば、FET(F1,F2)をデプレッション型FETとすることにより、バッテリ電圧V
BATが2.0V程度であっても電力増幅モジュール130を動作させることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、
図8に示したように、1つのFET(F1)を、制御電圧V
CTRLの生成用とバイアス電流I
BIASの供給用とで兼用することにより、ペア性のばらつきによる電力増幅モジュール130のゲイン変動を抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、
図12〜
図15に示したように、電力増幅器200A,200BでRF信号の増幅を行わない場合は、バイアス回路210A’,210B’を構成するFETに供給される電源電圧を低下させることにより、バイポーラトランジスタT1にリーク電流が流れることを抑制することができる。
【0065】
なお、以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。