特許第6187455号(P6187455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187455
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】樹脂組成物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20170821BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20170821BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170821BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01L23/30 R
   C08L101/00
   C08K3/00
【請求項の数】14
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2014-507386(P2014-507386)
(86)(22)【出願日】2013年3月14日
(86)【国際出願番号】JP2013001695
(87)【国際公開番号】WO2013145608
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年1月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-77658(P2012-77658)
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】作道 慶一
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−252314(JP,A)
【文献】 特開2003−221224(JP,A)
【文献】 特開2008−214428(JP,A)
【文献】 特開平10−292094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
C08K 3/00
C08L 101/00
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂(B)および無機充填材(C)を有し、基板上に設置された半導体素子を封止するとともに、前記基板と前記半導体素子との間の隙間に充填される封止用の樹脂組成物であって、
前記無機充填材(C)に含まれる粒子の体積基準粒度分布の大粒径側からの累積頻度が5%となるところの粒径をRmax(μm)とし、
前記無機充填材(C)に含まれる粒子の体積基準粒度分布の最大のピークの径をR(μm)とした場合、
R<Rmaxであり、
1μm≦R≦24μmであり、
R/Rmax≧0.45であり、
前記無機充填材(C)に含まれる粒子の体積基準粒度分布において、前記R(μm)の粒径の粒子の頻度は、4%以上10%以下である樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物において、
前記無機充填材(C)に含まれる粒子の体積基準粒度分布の小粒径側からの累積頻度が50%となるところの粒径をd50(μm)とした場合、
R/d50が1.1以上、15以下である樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂組成物において、
ANSI/ASTM D 3123−72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で射出した際のスパイラルフロー長さが70cm以上であり、
以下の条件で計測した圧力Aが6MPa以下である樹脂組成物。
(条件)
金型温度175℃、注入速度177cm/秒の条件にて、前記金型に形成された幅13mm、高さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に、当該樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、樹脂組成物の流動時における最低圧力を圧力Aとする。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかに記載の樹脂組成物において、
0.8×R〜1.2×R(μm)の粒径を有する粒子が、前記無機充填材(C)全体の体積の10〜60%である樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに記載の樹脂組成物において、
前記無機充填材(C)の含有量は、前記樹脂組成物全体の50〜93質量%である樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載の樹脂組成物において、
前記粒子は、粒子の原料を篩で分級して得られたものである樹脂組成物。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に設置された半導体素子と、
前記半導体素子を被覆して封止するとともに、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填された請求項1乃至6のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物とを有する半導体装置。
【請求項8】
硬化性樹脂(B)および無機充填材を有し、基板上に設置された半導体素子を封止するとともに、その封止の際に、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填される樹脂組成物であって、
前記無機充填材に含まれる第1の粒子(C1)と、前記硬化性樹脂(B)とを混合して得られたものであり、
前記第1の粒子(C1)は、最大粒径がR1max[μm]であり、
前記第1の粒子(C1)のモード径をR1mode[μm]としたとき、4.5μm≦R1mode≦24μmなる関係を満足するとともに、R1mode/R1max≧0.45なる関係を満足し、
モード径R1modeに相当する粒径を有する前記第1の粒子(C1)の頻度は、前記無機充填材全体の体積の3.5%以上15%以下であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項9】
前記R1max[μm]は、24[μm]であり、
R1mode≦20μmである請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
R1mode/R1max≦0.9なる関係を満足する請求項またはに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
0.8R1mode〜1.2R1modeの粒径を有する第1の粒子(C1)が、前記無機充填材全体の体積の10〜60%となるように添加された請求項8乃至10のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記無機充填材の含有量は、前記樹脂組成物全体の50〜93質量%である請求項8乃至11のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項13】
ゲルタイムが35〜80秒である請求項8乃至12のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項14】
基板と、
前記基板上に設置された半導体素子と、
前記半導体素子を封止するとともに、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填される請求項8乃至13のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物とを有することを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物および半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化および軽薄短小化の要求に伴い、これらの電子機器に使用される半導体パッケージも、従来にも増して、小型化かつ多ピン化が進んできている。
【0003】
この半導体パッケージは、回路基板と、回路基板上に金属バンプを介して電気的に接続された半導体チップ(半導体素子)とを有しており、樹脂組成物で構成される封止材により、半導体チップが封止(被覆)されている。また、半導体チップを封止する際は、樹脂組成物が、回路基板と半導体チップとの間の隙間にも充填され、補強がなされる(例えば、特許文献1参照)。このような封止材(モールドアンダーフィル材)を設けることにより、信頼性の高い半導体パッケージが得られる。
【0004】
また、樹脂組成物は、硬化性樹脂および無機充填材等を有しており、前記封止材は、その樹脂組成物を例えばトランスファー成形等により成形して得られる。ここで、近年の半導体パッケージは、小型化・多ピン化に伴い、回路基板側と半導体チップ側とを接続する金属バンプのピッチが小さく、基板と半導体チップとの間の間隙距離が小さい。そのため、ボイドを引き起こすことなく、基板と半導体チップとの間に充填できるように、流動性および充填性に優れた樹脂組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−307645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた流動性および充填性を発揮することのできる樹脂組成物およびこの樹脂組成物を用いた信頼性の高い半導体装置の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
硬化性樹脂(B)および無機充填材(C)を有し、基板上に設置された半導体素子を封止するとともに、前記基板と前記半導体素子との間の隙間に充填される封止用の樹脂組成物であって、
前記無機充填材(C)に含まれる粒子の体積基準粒度分布の大粒径側からの累積頻度が5%となるところの粒径をRmax(μm)とし、
前記無機充填材(C)に含まれる粒子の体積基準粒度分布の最大のピークの径をR(μm)とした場合、
R<Rmaxであり、
1μm≦R≦24μmであり、
R/Rmax≧0.45であり、
前記無機充填材(C)に含まれる粒子の体積基準粒度分布において、前記R(μm)の粒径の粒子の頻度は、4%以上10%以下である樹脂組成物が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、
硬化性樹脂(B)および無機充填材を有し、基板上に設置された半導体素子を封止するとともに、その封止の際に、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填される樹脂組成物であって、
前記無機充填材に含まれる第1の粒子(C1)と、前記硬化性樹脂(B)とを混合して得られたものであり、
前記第1の粒子(C1)は、最大粒径がR1max[μm]であり、
前記第1の粒子(C1)のモード径をR1mode[μm]としたとき、4.5μm≦R1mode≦24μmなる関係を満足するとともに、R1mode/R1max≧0.45なる関係を満足し、
モード径R1modeに相当する粒径を有する前記第1の粒子(C1)の頻度は、前記無機充填材全体の体積の3.5%以上15%以下であることを特徴とする樹脂組成物も提供できる。
【0009】
さらには、本発明によれば、
基板と、
前記基板上に設置された半導体素子と、
前記半導体素子を封止するとともに、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填される上述したいずれかの樹脂組成物の硬化物とを有する半導体装置も提供できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体素子を封止する際の流動性および硬化性に優れた樹脂組成物を提供することができる。これにより、樹脂組成物によって半導体素子を封止する際の樹脂組成物の成形性が向上する。また、半導体素子と基板との間に樹脂組成物を確実に充填することができ、ボイドの発生が抑制されるため、製品(本発明の半導体装置)の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0012】
図1】第1の粒子の粒度分布を示すグラフである。
図2】メジアン径を説明するためのグラフである。
図3】半導体パッケージの断面図である。
図4】粉砕装置の一例を摸式的に示す側面図である。
図5図4に示す粉砕装置の粉砕部の内部を摸式的に示す平面図である。
図6図4に示す粉砕装置の粉砕部のチャンバを示す断面図である。
図7】(a)、(b)は、樹脂組成物に含まれる粒子の体積基準粒度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の樹脂組成物および半導体装置の好適な実施形態について説明する。
図1は、第1の粒子の粒度分布を示すグラフ、図2は、メジアン径を説明するためのグラフ、図3は、半導体パッケージの断面図、図4は、粉砕装置の一例を摸式的に示す側面図、図5は、図4に示す粉砕装置の粉砕部の内部を摸式的に示す平面図、図6は、図4に示す粉砕装置の粉砕部のチャンバを示す断面図である。
図7(a)および図7(b)は、樹脂組成物に含まれる粒子全体の粒度分布を示す図である。
【0014】
1.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物(A)は、硬化性樹脂(B)と、無機充填材(C)とを有し、さらに必要に応じて、硬化促進剤(D)と、カップリング剤(E)等とを有している。硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂等が挙げられ、硬化促進剤としてフェノール樹脂系硬化剤を用いたエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0015】
[硬化性樹脂(B)]
硬化性樹脂(B)としては、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、エポキシ樹脂(B1)と、硬化剤としてフェノール樹脂系硬化剤(B2)とを併用することが好ましい。樹脂組成物全体に占める硬化性樹脂の割合は、たとえば、3〜45質量%である。なかでも、樹脂組成物全体に占める硬化性樹脂の割合は、5質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。
【0016】
エポキシ樹脂(B1)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラキノン構造を有するエポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。そして、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。ただし、エポキシ樹脂は、これらに限定されない。これらのエポキシ樹脂は、得られる樹脂組成物の耐湿信頼性の観点から、イオン性不純物であるNaイオンやClイオンを極力含まないことが好ましい。また、樹脂組成物の硬化性の観点から、エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量は、100g/eq以上、500g/eq以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の樹脂組成物中のエポキシ樹脂(B1)の配合割合の下限値は、樹脂組成物(A)の全質量に対して、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは7質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有する。また、樹脂組成物中のエポキシ樹脂(B1)の上限値は、樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な耐半田性等の信頼性が得ることができる。
【0018】
フェノール樹脂系硬化剤(B2)としては、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂などの変性フェノール樹脂;フェニレン骨格又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール化合物、さらには前記ビスフェノール化合物をノボラック化したものなどが挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらのうち、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものが好ましい。
【0019】
樹脂組成物(A)中のフェノール樹脂系硬化剤(B2)の配合割合の下限値については、特に限定されないが、樹脂組成物(A)の全質量に対して、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、フェノール樹脂系硬化剤(B2)の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、樹脂組成物(A)中に、25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、良好な耐半田性等の信頼性を得ることができる。
【0020】
なお、フェノール樹脂系硬化剤(B2)とエポキシ樹脂(B1)とは、全エポキシ樹脂(B1)のエポキシ基数(EP)と、全フェノール樹脂系硬化剤(B2)のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が、0.8以上、1.3以下となるように配合することが好ましい。当量比が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物(A)を成形する際、十分な硬化特性を得ることができる。
【0021】
[硬化促進剤(D)]
硬化促進剤(D)としては、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂(B1)、硬化剤としてフェノール樹脂系硬化剤(B2)を使用する場合、エポキシ樹脂(B1)のエポキシ基とフェノール性水酸基を2個以上含む化合物のフェノール性水酸基との反応を促進するものであればよく、一般の半導体封止用のエポキシ樹脂組成物に使用されているものを利用することができる。
【0022】
具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物などのリン原子含有硬化促進剤;ベンジルジメチルアミンなどの3級アミン、1、8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、2−メチルイミダゾールなどのアミジン類、さらには前記3級アミンやアミジンの4級塩などの窒素原子含有硬化促進剤が挙げられ、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。なかでも、リン原子含有硬化促進剤が好ましい硬化性を得ることができる。
【0023】
また、流動性と硬化性とのバランスの観点から、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物がより好ましい。流動性という点を重視する場合には、テトラ置換ホスホニウム化合物が特に好ましく、また樹脂組成物の硬化物熱時低弾性率という点を重視する場合には、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましく、また潜伏的硬化性という点を重視する場合には、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。
【0024】
樹脂組成物(A)で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィンなどの1級ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどの2級ホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの3級ホスフィンが挙げられる。これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。
【0025】
樹脂組成物(A)で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(1)で表される化合物などが挙げられる。
【0026】
【化1】
ただし、上記一般式(1)において、Pは、リン原子を表す。R3、R4、R5およびR6は、芳香族基又はアルキル基を表す。Aは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは、1〜3の数、zは、0〜3の数であり、かつx=yである。
【0027】
一般式(1)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(1)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(1)で表される化合物において、リン原子に結合するR3、R4、R5及びR6がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。本発明における前記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどの単環式フェノール類、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、アントラキノールなどの縮合多環式フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類、フェニルフェノール、ビフェノールなどの多環式フェノール類などが例示される。これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。
【0028】
樹脂組成物(A)で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば下記一般式(2)で表される化合物などが挙げられる。
【0029】
【化2】
【0030】
ただし、上記一般式(2)において、X1は、炭素数1〜3のアルキル基、Y1は、ヒドロキシル基を表す。iは、0〜5の整数であり、jは、0〜4の整数である。
【0031】
一般式(2)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、3級ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0032】
樹脂組成物(A)で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(3)で表される化合物などが挙げられる。
【0033】
【化3】
(ただし、上記一般式(3)において、Pは、リン原子を表す。R7、R8およびR9は、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R10、R11およびR12は、水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R10とR11が結合して環状構造となっていてもよい。)
【0034】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィンなどの芳香環に無置換又はアルキル基、アルコキシル基などの置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基などの置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0035】
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0036】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機3級ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0037】
一般式(3)で表される化合物において、リン原子に結合するR7、R8およびR9がフェニル基であり、かつR10、R11およびR12が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低く維持できる点で好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(4)で表される化合物などが挙げられる。
【0039】
【化4】
【0040】
ただし、上記一般式(4)において、Pは、リン原子を表し、Siは、珪素原子を表す。R13、R14、R15およびR16は、それぞれ、芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中X2は、基Y2およびY3と結合する有機基である。式中X3は、基Y4およびY5と結合する有機基である。Y2およびY3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y2およびY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y4およびY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X2およびX3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、Y2、Y3、Y4およびY5は、互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は、芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。
【0041】
一般式(4)において、R13、R14、R15およびR16としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基などの置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0042】
また、一般式(4)において、X2は、Y2およびY3と結合する有機基である。同様に、X3は、基Y4およびY5と結合する有機基である。Y2およびY3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y2およびY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様に、Y4およびY5は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y4およびY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基X2およびX3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y2、Y3、Y4およびY5は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
このような一般式(4)中の−Y2−X2−Y3−、及び−Y4−X3−Y5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、好ましくはカルボキシシル基および/または水酸基を2個以上有する有機酸が例示されるが、より好ましくは芳香環を構成する2個以上の炭素に各々カルボキシル基または水酸基を有する芳香族化合物、さらに好ましくは芳香環を構成する隣接する少なくとも2個の炭素に水酸基を有する芳香族化合物が例示される。
【0044】
プロトン供与体の具体例としては、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2'−ビフェノール、1,1'−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール及びグリセリンなどが挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0045】
また、一般式(4)中のZ1は、芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基などの脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びビフェニル基などの芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基及びビニル基などの反応性置換基などが挙げられ、これらのなかから選択することができる。これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が一般式(4)の熱安定性が向上するという点で、より好ましい。
【0046】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシランなどのシラン化合物、2,3−ジヒドロキシナフタレンなどのプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイドなどのテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0047】
樹脂組成物(A)に用いることができる硬化促進剤(D)の配合割合は、全樹脂組成物(A)中0.1質量%以上、1質量%以下であることが好ましい。硬化促進剤(D)の配合量が上記範囲内であると、充分な硬化性、流動性を得ることができる。
【0048】
[カップリング剤(E)]
カップリング剤(E)としては、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシランなどのシラン化合物等が挙げられ、エポキシ樹脂(B1)等と無機充填材(C)との間で反応または作用し、エポキシ樹脂(B1)等と無機充填材(C)の界面強度を向上させるものであればよい。
【0049】
エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。
【0050】
また、アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−(トリメトキシシリルプロピル)−1,3−ベンゼンジメタナンなどが挙げられる。アミノシランの1級アミノ部位をケトン又はアルデヒドを反応させて保護した潜在性アミノシランカップリング剤として用いてもよい。また、ウレイドシランとしては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。また、メルカプトシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのほか、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのような熱分解することによってメルカプトシランカップリング剤と同様の機能を発現するシランカップリング剤などが挙げられる。また、これらのシランカップリング剤は、予め加水分解反応させたものを配合してもよい。これらのシランカップリング剤は、1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0051】
樹脂組成物(A)に用いることができるカップリング剤(E)の配合割合の下限値としては、樹脂組成物(A)中0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは、0.05質量%以上、特に好ましくは、0.1質量%以上である。カップリング剤(E)の配合割合の下限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂と無機充填材との界面強度が低下することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、カップリング剤の上限値としては、全樹脂組成物中1.0質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。カップリング剤の配合割合の上限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂(B1)と無機充填材(C)との界面強度が低下することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、カップリング剤(E)の配合割合が上記範囲内であれば、樹脂組成物(A)の硬化物の吸水性が増大することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0052】
[無機充填材(C)]
樹脂組成物が無機充填材(C)を含むことにより、樹脂組成物と半導体素子との熱膨張係数差を小さくすることができ、より信頼性の高い半導体装置(本発明の半導体装置)を得ることができる。
【0053】
なお、以下、モード径、メジアン径等の粒度分布の評価は、(株)島津製作所製レーザー回折散乱式粒度分布計SALD−7000を使用して測定した。
【0054】
無機充填材(C)の構成材料としては、特に限定されず、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等が挙げられ、これらのうちいずれか1種以上を使用できる。これらの中でも、無機充填材(C)としては、汎用性に優れている観点から、溶融シリカを用いることが好ましい。また、無機充填材(C)は、球状であるのが好ましく、さらには球状シリカであることが好ましい。これにより、樹脂組成物の流動性が向上する。
【0055】
このような無機充填材(C)として、第1の粒子(C1)を使用でき、この第1の粒子(C1)と、前述した硬化性樹脂とを含む樹脂組成物(A)を得ることができる。なお、後述するが、無機充填材(C)は、第1の粒子(C1)に加えて、第3の粒子(C3)を含んでいてもよい。
ここでは、無機充填材(C)に含まれる第1の粒子(C1)について説明する。第1の粒子(C1)は、無機充填材(C)((C1)は(C)の成分である)がR<Rmaxの関係を満たし、1μm≦R≦24μm、R/Rmax≧0.45なる関係を満たすように選択することが好ましい(R、Rmaxについては後述する)。たとえば、第1の粒子(C1)の最大粒径R1maxとしては、後述する第1の粒子(C1)のモード径R1modeよりも大きく、3μm以上48μm以下、より好ましくは4.5μm以上32μm以下であり、モード径が20μm以下の場合、モード径R1modeよりも大きく、かつ3〜24μm、なかでも、4.5〜24μmであるのが好ましい。
なかでも、モード径が20μm以下の場合、第1の粒子(C1)の最大粒径R1maxは、24μmであることが好ましい。
ただし、無機充填材(C)に含まれる粒子が第1の粒子(C1)のみの場合には、無機充填材(C)のRmaxと第1の粒子(C1)の最大粒径とは一致し、無機充填材(C)のRと第1の粒子(C1)のモード径R1modeとは一致する。
このような範囲を満足することにより、樹脂組成物(A)を微小な隙間(例えば、後述する回路基板110と半導体チップ120との間の30μm程度以下の隙間)により確実に充填することができる。なお、第1の粒子(C1)の最大粒径が上記下限値未満であると、樹脂組成物(A)中の無機充填材(C)の含有量等によっては、樹脂組成物(A)の流動性が悪化するおそれがある。
なお、第1の粒子(C1)の最大粒径とは、第1の粒子(C1)の体積基準粒度分布の大粒径側からの累積頻度が5%となるところの粒径、すなわちd95をいう。また、第1の粒子(C1)について篩分けを行なうと、最大粒径に対応する目開きでの篩でメッシュON(篩残量)が1%以下となる。
【0056】
樹脂組成物(A)では、第1の粒子(C1)のモード径をR1modeとしたとき、1μm≦R1mode≦24μmなる関係を満足することが好ましく、特には、4.5μm≦R1mode≦24μmとなることが好ましい。
また、樹脂組成物(A)では、第1の粒子(C1)の最大粒径をR1maxとしたとき、R1mode/R1max≧0.45なる関係を満足している。これら2つの関係を共に満足することにより、樹脂組成物(A)は、流動性および充填性に優れたものとなる。
【0057】
なお、「モード径」とは、第1の粒子(C1)中、出現比率(体積基準)が最も高い粒子径をいう。具体的には、図1に第1の粒子(C1)の粒度分布の一例を示すが、図1に示す粒度分布を有する第1の粒子(C1)では、最も頻度(%)の高い粒径である12μmがモード径R1modeに相当する。
【0058】
図1に示すように、第1の粒子(C1)は、高い比率でモード径近傍の粒径をもつ粒子である。そのため、モード径を1〜24[μm]、好ましくは、4.5〜24[μm]とすることにより、第1の粒子(C1)を高い比率で粒径が1〜24[μm]、好ましくは、4.5〜24[μm]程度の粒子とすることができる。したがって、微小な隙間に充填させるために、粒径の上限を微小な隙間以下としているので、一定値以上の粒径を除去した従来の充填材における流動性低下の課題を本発明においては解消できると同時に、流動性に優れる樹脂組成物(A)が得られる。
【0059】
なお、第1の粒子(C1)のモード径R1modeとしては、1μm≦R1mode≦24μmなる関係を満足すればよいが、3μm以上であることが好ましく、なかでも、4.5μm以上であることが好ましい。さらには、5μm以上、とくには、8μm以上であることが好ましい。一方で、R1modeは、20μm以下であることが好ましい。また、R1modeは17μm以下であってもよい。より具体的には、4.5μm≦R1mode≦24μmであることが好ましい。また、5μm≦R1mode≦20μmなる関係を満足するのがより好ましい。さらには、8μm≦R1mode≦17μmであってもよい。これにより、上記効果がより顕著となる。
なかでも、第1の粒子の最大粒径が24μmである場合には、R1modeは、好ましくは14μm以下、より好ましくは17μm以下、更に好ましくは20μm以下である。
【0060】
モード径R1modeに相当する粒径を有する第1の粒子(C1)の頻度は、特に限定されないが、体積基準にて、無機充填材(C)全体の3.5%以上、15%以下であるのが好ましく、4%以上10%以下であるのがより好ましく、4.5%以上、9%以下であるのがさらに好ましい。さらには、5%以上、より好ましくは6%以上である。これにより、第1の粒子(C1)を高い比率でモード径R1modeまたはモード径R1modeに近い粒径を有する粒子で占めることができる。そのため、モード径R1modeから導き出される性質(充填性および流動性)をより確実に樹脂組成物(A)に付与することができる。すなわち、所望の特性を有する樹脂組成物(A)を得ることができる。また、樹脂組成物(A)の生産性、歩留まりが向上する。
【0061】
ここで、従来から、粒径を「平均粒径」で規定した発明が多く開示されているが、この「平均粒径」とは、一般的にはメジアン径(d50)を意味している。このメジアン径(d50)は、図2に示すように、多数の粒子を含む粉体(E)をある粒径から当該粒径より大きい側と小さい側との2つに分けたとき、大きい側と小さい側が質量または体積において等量となる径を言う。そのため、例えば、「平均粒径が16μmの粒子」と言っても、粒径が16μm付近の粒子の粉体(E)全体に対する頻度は不明である。仮に、粒径が16μm付近の粒子の粉体(E)全体に対する頻度が低い場合には、粒径が16μm付近の粒子が樹脂組成物に与える物理的特性は支配的でなく、よって「平均粒径」から推測可能な物理的特性を付与することができない場合ある。
【0062】
一方、本発明では、前述した「モード径」を用いて粒径を規定しているため、「平均粒径」を用いた場合の上記問題が生じず、「モード径」から推測可能な以下の物理的特性をより確実に樹脂組成物(A)に付与することができる。すなわち、基板と半導体チップとの間の間隙が極めて小さいフリップチップ型半導体装置において、前記間隙の制約から最大粒径の小粒径化が必要となり、この最大粒径の小粒径化は流動性の低下を引き起こす。つまり、間隙が極めて小さいフリップチップ型半導体装置に用いる最大粒径の小粒径化と流動性の向上の両立を図ることが重要になる。本発明ではこの課題を解決するために、最大粒径以下で、且つ最大粒径に近い粒子の割合を高めるべく、従来の平均粒径ではなく、モード径と最大粒径の関係性に着目したものである。また基板と半導体チップとの間の間隙が極めて小さいフリップチップ型半導体装置の成形時において、樹脂組成物と、基板または半導体チップの界面の流動抵抗に起因する、基板と半導体チップとの間への充填性の困難さ(つまり単なる流動性ではなく、樹脂組成物と基板または半導体チップとの界面の流動抵抗の課題)を克服し得ることも本発明の特徴である。
【0063】
無機充填材(C)全体に対する0.8R1mode〜1.2R1modeの粒径を有する第1の粒子(C1)の頻度としては、特に限定されないが、体積基準にて、10〜60%であるのが好ましく、12〜50%であるのがより好ましく、15〜45%がさらに好ましい。このような範囲を満足することにより、無機充填材(C)のより大半をモード径R1modeまたはモード径R1modeに近い粒径を有する第1の粒子(C1)で占めることができる。そのため、モード径R1modeから導き出される物理的特性(充填性および流動性)をより確実に樹脂組成物(A)に付与することができる。すなわち、所望の物理的特性(流動性および充填性)を有する樹脂組成物(A)を得ることができる。
【0064】
また、上記範囲を満足することにより、無機充填材(C)中に、モード径R1modeよりも相対的に小さい粒径の第1の粒子(C1)を適度に存在させることができる。そのため、このような小さい第1の粒子(C1)を、モード径R1mode付近の粒径の第1の粒子(C1)同士の間に入り込ませることができる。すなわち、樹脂組成物(A)中に無機充填材(C)を最密的に分散させることができ、これにより、樹脂組成物(A)の流動性および充填性が向上する。
【0065】
モード径R1modeに対して比較的小さな粒径の第1の粒子(C1)、具体的には、0.5R1mode以下の粒径を有する第1の粒子(C1)の無機充填材(C)全体に対する頻度は、特に限定されないが、体積基準にて、5〜10%程度であるのが好ましい。これにより、樹脂組成物(A)の流動性の低下を抑制しつつ、樹脂組成物(A)の充填性を向上させることができる。
【0066】
前述のように、第1の粒子(C1)は、R1mode/R1max≧0.45なる関係を満足していればよいが、R1mode/R1max≧0.55を満足するのがより好ましい。上記式は、1に近いほどモード径R1modeが最大粒径R1maxに近いことを意味する。そのため、R1mode/R1maxを上記関係とすることにより、第1の粒子(C1)の大半を最大粒径R1maxに比較的近い粒径の粒子とすることができる。そのため、樹脂組成物の流動性を向上させることができる。
【0067】
なお、R1mode/R1maxの上限値としては、特に限定されないが、R1mode/R1max≦0.9なる関係を満足するのが好ましく、R1mode/R1max≦0.8なる関係を満足するのがより好ましい。R1mode/R1maxが1に近づき過ぎると、モード径R1modeよりも大きい第1の粒子(C1)の頻度が低下するため、その分、モード径R1modeまたはモード径R1modeに近い粒径の第1の粒子(C1)の頻度が低下するおそれがある。
【0068】
このような第1の粒子(C1)としては、各種分級法により分級されたものを用いることができるが、篩を用いた分級法により分級されたものを第1の粒子(C1)として用いることが好ましい。
【0069】
以上、無機充填材(C)について説明したが、第1の粒子(C1)のうちの一部または全部は、表面にカップリング剤を付着させる表面処理が施されていてもよい。このような表面処理を施すことにより、硬化性樹脂(B)と第1の粒子(C1)とがなじみ易くなり、樹脂組成物(A)中の第1の粒子(C1)などの充填材の分散性が向上する。これにより、上述した効果を発揮することができるとともに、後述するように、樹脂組成物の生産性が向上する。
【0070】
このような無機充填材(C)の含有量は、樹脂組成物(A)全体の50〜93質量%であるのが好ましく、さらには、60〜93質量%であることが好ましく、60〜90質量%であるのがより好ましい。これにより、流動性および充填性に優れるとともに、熱膨張率の低い樹脂組成物(A)が得られる。なお、無機充填材(C)の含有量が上記下限値未満であると、樹脂組成物(A)中の樹脂成分(硬化性樹脂(B)および硬化剤(D)等)の量が多くなり、樹脂組成物(A)が吸湿し易くなってしまう。その結果、吸湿信頼性に劣り、耐半田リフロークラック性等が低下するおそれがある。反対に、無機充填材(C)の含有量が上記上限値を超えると、樹脂組成物(A)の流動性が低下するおそれがある。
【0071】
また、無機充填材(C)は、必要に応じて、さらに、第3の粒子(C3)を有していてもよい。第3の粒子(C3)は、第1の粒子(C1)と同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。第1の粒子および第3の粒子を用意し無機充填材(C)とすることができる。
ここで、第3の粒子(C3)は、第1の粒子(C1)とは異なる粒径分布を有するものであり、第3の粒子のモード径は、第1の粒子のモード径よりも小さい。
【0072】
無機充填材(C)が第3の粒子(C3)を含んでいる場合、第3の粒子(C3)の平均粒径(メジアン径(d50))は、0.1μm以上、3μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上、2μm以下であるのがより好ましい。また、第3の粒子(C3)の比表面積は、3.0m/g以上、10.0m/g以下であるのが好ましく、3.5m/g以上、8m/g以下であるのがより好ましい。
第3の粒子(C3)の含有量は、無機充填材(C)全体の5質量%以上、40質量%以下であるのが好ましい。なかでも、第3の粒子(C3)の含有量は、無機充填材(C)全体の5質量%以上、30質量%以下であることが好ましい。
この場合には、第1の粒子(C1)の含有量は、無機充填材(C)全体の60質量%以上、95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上95質量%以下であることが特に好ましい。
無機充填材(C)がこのような第3の粒子を含有することで、樹脂組成物の流動性をさらに向上させることができる。
【0073】
次に、無機充填材(C)全体について説明する。
無機充填材(C)は、粒子からなる粉体で構成され、粒子のみからなることが好ましい。
そして、無機充填材(C)に含まれる粒子全体(樹脂組成物に含まれる粒子全体)の体積基準粒度分布の大粒径側からの累積頻度が5%となるところの粒径をRmax(μm)とし、
前記無機充填材に含まれる粒子全体の体積基準粒度分布の最大のピークの径をR(μm)とした場合、
R<Rmaxであり、
1μm≦R≦24μmであり、
R/Rmax≧0.45となる。
無機充填材(C)は、前述した第1の粒子のみを含んでいてもよく、また、第1の粒子にくわえて、第3の粒子を含んでいてもよい。上述した条件を満たすように、前述した第1の粒子、必要に応じて第3の粒子を選択すればよい。
【0074】
ここで、Rmax(μm)は、いわゆるd95を意味し、体積基準粒度分布において粒子径の小さい方から累積して95質量%となる点の粒径である。
また、無機充填材(C)を構成する粒子について篩分けを行なうと、最大粒径Rmaxに対応する目開きでの篩でメッシュON(篩残量)が1%以下となる。
R(μm)は、図7(a)、(b)に示すように、前記無機充填材に含まれる粒子の体積基準粒度分布における最大のピークとなる位置の粒径である。本実施形態においては、無機充填材に含まれる粒子全体の体積基準粒度分布の大粒径側からの一つ目のピークの径がRとなる。
図7(a)は、無機充填材中の粒子が第1の粒子のみからなる場合の粒子全体の体積基準粒度分布の例であり、図7(b)は、無機充填材中の粒子が第1の粒子および第3の粒子からなる場合の、粒子全体の体積基準粒度分布の例である。
Rを24μm以下とすることで、樹脂組成物(A)を微小な隙間(例えば、後述する回路基板110と半導体チップ120との間の30μm程度以下の隙間)により確実に充填することができる。また、Rを、1μm以上とすることで、樹脂組成物(A)の流動性を良好なものとすることができる。
そして、無機充填材に含まれる粒子は、
1μm≦R≦24μmであり、
R/Rmax≧0.45となる関係を満たしている。これら2つの関係を共に満足することにより、樹脂組成物(A)は、流動性および充填性に優れたものとなる。
【0075】
Rmaxは、1μm≦R≦24μmなる関係である場合に、Rよりも大きく、R/Rmax≧0.45であればよい。なかでも、Rmaxは、3μm以上48μm以下であることが好ましく、より好ましくは4.5μm以上32μm以下である。Rが20μm以下の場合、Rよりも大きく、かつ3〜24μmであることが好ましく、なかでも、4.5〜24μmであるのが好ましい。
このような範囲を満足することにより、樹脂組成物(A)を微小な隙間(例えば、後述する回路基板110と半導体チップ120との間の30μm程度以下の隙間)により確実に充填することができる。
【0076】
Rを1〜24[μm]とすることにより、粒子を高い比率で粒径が1〜24[μm]程度の粒子とすることができる。したがって、微小な隙間に充填させるために、粒径の上限を微小な隙間以下とすることで、一定値以上の粒径を除去した従来の充填材における流動性低下の課題を本発明においては解消できると同時に、流動性に優れる樹脂組成物(A)が得られる。
Rは、1μm≦R≦24μmなる関係を満足すればよいが、3μm以上であることが好ましく、なかでも、4.5μm以上であることが好ましい。さらには、5μm以上、とくには、8μm以上であることが好ましい。一方で、Rは、20μm以下であることが好ましい。また、Rは17μm以下であってもよい。より具体的には、4.5μm≦R≦24μmであることが好ましい。また、5μm≦R≦20μmなる関係を満足するのがより好ましい。さらには、8μm≦R≦17μmであってもよい。これにより、上記効果がより顕著となる。
なかでも、粒子のRmaxが24μmである場合には、Rは、好ましくは14μm以下、より好ましくは17μm以下、更に好ましくは20μm以下である。
【0077】
前記無機充填材に含まれる粒子全体の体積基準粒度分布において、前記R(μm)の粒径の粒子の頻度は、3.5%以上、15%以下であることが好ましく、4%以上10%以下であるのがより好ましく、4.5%以上、9%以下であるのがさらに好ましい。さらには、5%以上、より好ましくは6%以上である。これにより、RまたはRに近い粒径を有する粒子の割合を高くすることができる。そのため、流動性の高い樹脂組成物(A)を得ることができる。
また、R/Rmaxは、0.45以上であればよいが、0.55以上であることが好ましく、粒子の大半をRmaxに比較的近い粒径の粒子とすることができる。そのため、樹脂組成物の流動性を向上させることができる。
R/Rmaxの上限値は、特に限定されないが、0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることが特に好ましい。R/Rmaxが1に近づき過ぎると、Rよりも大きい粒子の頻度が低下するため、その分、Rまたはモード径Rに近い粒径の粒子の頻度が低下するおそれがある。
【0078】
さらに、無機充填材に含まれる粒子の体積基準粒度分布の小粒径側からの累積頻度が50%となるところの粒径をd50(μm)とした場合、Rは、d50よりも大きく、R/d50が1.1〜15であることが好ましく、さらには、1.1〜10、なかでも1.1〜5であることが好ましい。d50(μm)は、体積基準粒度分布において粒子径の小さい方から累積して50質量%となる点の粒径である。
本実施形態では、RをRmaxに近づけており、これにより、Rと、d50との差が開くこととなる。R/d50を1.1以上とすることで、樹脂組成物の流動性が向上する。
また、R/d50を15以下とすることで、Rとd50との差が大きく開いてしまうことを抑制し、R(μm)およびR(μm)に近い粒径の粒子の量を一定程度確保することができる。
【0079】
また、無機充填材(C)全体に対する0.8×R(μm)以上1.2×R(μm)以下の粒径を有する粒子の頻度としては、特に限定されないが、体積基準にて、10〜60%であるのが好ましく、12〜50%であるのがより好ましく、15〜45%がさらに好ましい。このような範囲を満足することにより、無機充填材(C)のより大半をR(μm)またはR(μm)に近い粒径を有する粒子で占めることができる。そのため、R(μm)から導き出される物理的特性(充填性および流動性)をより確実に樹脂組成物(A)に付与することができる。すなわち、所望の物理的特性(流動性および充填性)を有する樹脂組成物(A)を得ることができる。
また、Rに対して比較的小さな粒径の粒子、具体的には、0.5R以下の粒径を有する粒子の無機充填材(C)全体に対する頻度は、特に限定されないが、体積基準にて、5〜50%程度であるのが好ましい。これにより、樹脂組成物(A)の流動性の低下を抑制しつつ、樹脂組成物(A)の充填性を向上させることができる。
なお、無機充填材は、本願の無機充填材(C)のみからなることが好ましいが、本願の効果を損なわない範囲で無機充填材(C)以外の無機充填材が含まれていても構わない。
【0080】
以上、樹脂組成物(A)の組成について詳しく説明した。このような樹脂組成物(A)のゲルタイムは、特に限定されないが、35〜80秒であるのが好ましく、40〜50秒であるのがより好ましい。樹脂組成物(A)のゲルタイムを上記数値とすることにより、硬化時間に余裕ができ、樹脂組成物(A)を比較的ゆっくりと隙間に充填していくことができるため、ボイドの発生を効果的に防止することができる。また、ゲルタイムの長時間化に伴う生産性の低下を抑制することができる。
【0081】
さらには、樹脂組成物(A)は、ANSI/ASTM D 3123−72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で射出した際のスパイラルフロー長さが70cm以上であることが好ましい。なかでも、前記スパイラルフローの長さは、80cm以上であることが好ましい。なお、前記スパイラルフローの長さの上限値は特に限定されないが、たとえば、100cmである。
【0082】
また、樹脂組成物(A)は、以下の条件で計測した圧力Aが6MPa以下であることが好ましい。なかでも、圧力Aは5MPa以下であることが好ましい。また、圧力Aは、2MPa以上であることが好ましい。
(条件)
金型温度175℃、注入速度177cm/秒の条件にて、前記金型に形成された幅13mm、高さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に、当該樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、樹脂組成物の流動時における最低圧力を圧力Aとする。
【0083】
以上のようなスパイラルフローと、圧力Aの特性を有する樹脂組成物(A)は、流動性が高く、半導体素子を封止できるとともに、半導体素子と基板との間の狭い隙間にも確実に充填させることができる。
【0084】
また、樹脂組成物(A)で封止する基板と半導体素子との間の隙間をG(μm)とした場合、R/Gが0.05以上、0.7以下であることが好ましい。なかでも、0.1以上、0.65以下であることが好ましい。更に好ましくは0.14〜0.6である。
このようにすることで、基板と半導体素子との間の狭い隙間に樹脂組成物(A)を確実に充填させることができる。
【0085】
2.樹脂組成物の製造方法
次いで、樹脂組成物(A)の製造方法の一例について説明する。なお、樹脂組成物(A)の製造方法は、下記に説明する方法に限定されない。
【0086】
[分級]
上述したような所定の体積基準粒度分布を有する無機充填材を得る方法としては、以下のような方法があげられる。無機充填材に含まれる粒子の原料粒子を用意する。この原料粒子は、前述した体積基準粒度分布とはなっていない。この原料粒子を篩、サイクロン(空気分級)等で分級することで、前述したような所定の体積基準粒度分布を有する無機充填材を得ることができる。特に篩を使用した場合、本願の粒度分布を有する無機充填材を得られやすく好ましい。
【0087】
[粉砕(第1の粉砕)]
例えば図4に示す粉砕装置により、硬化性樹脂(B)の粉末材料および無機充填材(C)の粉末材料を含む原材料を所定の粒度分布となるように粉砕(微粉砕)する。この粉砕工程では、主に、無機充填材(C)以外の原材料が粉砕される。なお、原材料に無機充填材(C)が含まれることにより、粉砕装置の壁面へ原材料が付着するのを抑えることができ、また、比重が重く、容易には溶融しない無機充填材(C)とその他の成分が衝突することで容易かつ確実に、原材料を微細に粉砕することができる。
【0088】
粉砕装置としては、例えば、連続式回転ボールミル、気流式粉砕機(気流式の粉砕装置)等を用いることができるが、気流式粉砕機を用いることが好ましい。本実施形態では、後述する気流式の粉砕装置1を用いる。
【0089】
なお、無機充填材(C)の全部または一部について、表面処理を施してもよい。この表面処理としては、例えば、無機充填材(C)の表面にカップリング剤等を付着させる。無機充填材(C)の表面にカップリング剤を付着させることにより、硬化性樹脂(B)と無機充填材(C)とがなじみ易くなり、硬化性樹脂(B)と無機充填材(C)との混合性が向上し、樹脂組成物(A)中での無機充填材(C)の分散が容易になる。
なお、この粉砕工程および粉砕装置1については、後に詳述する。
【0090】
[混練]
次に、混練装置により、前記粉砕後の原材料を混練する。この混練装置としては、例えば、1軸型混練押出機、2軸型混練押出機等の押出混練機や、ミキシングロール等のロール式混練機を用いることができるが、2軸型混練押出機を用いることが好ましい。本実施形態では、1軸型混練押出機、2軸型混練押出機を用いる事例にて説明する。
【0091】
[脱気]
次に、必要に応じて脱気装置により、前記混練された樹脂組成物に対し脱気を行う。
[シート化]
【0092】
次に、シート化装置により、前記脱気した塊状の樹脂組成物をシート状に成形し、シート状の樹脂組成物を得る。このシート化装置としては、例えば、シーティングロール等を用いることができる。
【0093】
[冷却]
次に、冷却装置により、前記シート状の樹脂組成物を冷却する。これにより、樹脂組成物の粉砕を容易かつ確実に行うことができる。
【0094】
[粉砕(第2の粉砕)]
次に、粉砕装置により、シート状の樹脂組成物を所定の粒度分布となるように粉砕し、粉末状の樹脂組成物を得る。この粉砕装置としては、例えば、ハンマーミル、石臼式磨砕機、ロールクラッシャー等を用いることができる。
【0095】
なお、顆粒状または粉末状の樹脂組成物(A)を得る方法としては、上記のシート化工程、冷却工程、粉砕工程を経ずに、例えば、混練装置の出口に小径を有するダイスを設置して、ダイスから吐出される溶融状態の樹脂組成物を、カッター等で所定の長さに切断することにより顆粒状または粉末状の樹脂組成物(A)を得るホットカット法に代表される造粒法を用いることもできる。この場合、ホットカット法等の造粒法により顆粒状または粉末状の樹脂組成物を得た後、樹脂組成物の温度があまり下がらないうちに脱気を行うことが好ましい。
【0096】
[タブレット化]
次に、タブレット状の成形体を製造する場合には成形体製造装置(打錠装置)により、前記粉末状(以下特に断らない場合顆粒状も粉末状の概念に含む)の樹脂組成物を圧縮成形し、成形体(圧縮体)である樹脂組成物を得ることができる。
【0097】
なお、樹脂組成物の製造方法においては、前記タブレット化工程を省略し、粉末状の樹脂組成物を完成体としてもよい。
【0098】
3.半導体パッケージ
図3に示すように、上述した本発明の樹脂組成物は、例えば、半導体パッケージ(半導体装置)100における半導体チップ(ICチップ)120の封止に用いられる。樹脂組成物で半導体チップ120を封止するには、樹脂組成物を例えばトランスファー成形等により成形し、封止材(封止部)140として半導体チップ120を封止する方法が挙げられる。
【0099】
すなわち、半導体パッケージ100は、回路基板(基板)110(図では後述する封止材140と同じ寸法で記載しているが、寸法は適宜調整可能である)と、回路基板110上に金属バンプ(接続部)130を介して電気的に接続された半導体チップ120とを有しており、樹脂組成物で構成される封止材140により、半導体チップ120が封止されている。また、半導体チップ120を封止する際は、樹脂組成物が回路基板110と半導体チップ120との間の隙間(ギャップ)Gにも充填され、その樹脂組成物で構成される封止材140により補強がなされる。
【0100】
ここで、樹脂組成物をトランスファー成形により成形して半導体チップ120を封止する際は、複数の半導体チップ120をまとめて封止するモールドアレイパッケージ(MAP)と呼ばれる方法を用いることが好ましい。この場合は、半導体チップ120を行列状に並べて樹脂組成物(A)で封止した後、個々に切り分ける。このような方法で複数の半導体チップ120をまとめて封止する場合は、半導体チップ120を1個ずつ封止する場合に比べて、樹脂組成物の流動性がさらに良好である必要がある。なお、半導体チップ120を1個ずつ封止してもよい。
【0101】
なお、樹脂組成物は、半導体チップ120と回路基板110との間の間隙距離(ギャップ長)Gが15〜100μm、かつバンプ間隔が30〜300μmのフリップチップ型半導体装置の場合に好適に用いることができ、さらにはGが15〜40μm、かつバンプ間隔が30〜100μmのフリップチップ型半導体装置の場合に、より好適に用いることができる。
【0102】
まず、粉砕装置1について説明する。なお、当該粉砕装置1は、一例であり、これに限定されるものではない。例えば、各寸法は、一例であり、他の寸法にしてもよい。
【0103】
図4に示す粉砕装置1は、樹脂組成物を製造する際の粉砕工程で使用される粉砕装置である。図4図6に示すように、粉砕装置1は、気流により、複数種の粉末材料を含む原材料を粉砕する気流式の粉砕装置であり、原材料を粉砕する粉砕部2と、冷却装置3と、高圧空気発生装置4と、粉砕された原材料を貯留する貯留部5とを備えている。
【0104】
粉砕部2は、円筒状(筒状)をなす部位を有するチャンバ6を備えており、このチャンバ6内において、原材料を粉砕するように構成されている。なお、粉砕の際は、チャンバ6において、空気(気体)の旋回流が生じている。
【0105】
チャンバ6の寸法は、特に限定されないが、チャンバ6の内径の平均値は、10〜50cm程度であることが好ましく、15〜30cm程度であることがより好ましい。なお、チャンバ6の内径は、図示の構成では上下方向に沿って一定であるが、これに限らず、上下方向に沿って変化していてもよい。
【0106】
チャンバ6の底部61には、粉砕された原材料を排出する出口62が形成されている。この出口62は、底部61の中央部に位置している。また、出口62の形状は、特に限定されないが、図示の構成では、円形をなしている。また、出口62の寸法は、特に限定されないが、その直径が3〜30cm程度であることが好ましく、7〜15cm程度であることがより好ましい。
【0107】
また、チャンバ6の底部61には、一端が出口62に連通し、他端が貯留部5に連通する管路(管体)64が設けられている。
【0108】
また、底部61の出口62の近傍には、その出口62の周囲を囲う壁部63が形成されている。この壁部63により、粉砕の際、原材料が不本意に出口62から排出してしまうことを防止することができる。
【0109】
壁部63は、筒状をなしており、図示の構成では、壁部63の内径は、上下方向に沿って一定であり、外径は、上側から下側に向かって漸増している。すなわち、壁部63の高さ(上下方向の長さ)は、外周側から内周側に向かって漸増している。また、壁部63は、側面視で、凹状に湾曲している。これにより、粉砕された原材料は、出口62に円滑に向かって移動することができる。
【0110】
また、チャンバ6の上部の出口62(管路64)に対応する位置には、突起部65が形成されている。この突起部65の先端(下端)は、図示の構成では、壁部63の上端(出口62)よりも上側に位置しているが、これに限らず、突起部65の先端が壁部63の上端よりも下側に位置していてもよく、また、突起部65の先端と壁部63の上端との上下方向の位置が一致していてもよい。
【0111】
なお、壁部63および突起部65の寸法は、それぞれ、特に限定されないが、壁部63の上端(出口62)から突起部65の先端(下端)までの長さLは、−10〜10mm程度であることが好ましく、−5〜1mm程度であることがより好ましい。
【0112】
前記長さLの符号の「−」は、突起部65の先端が壁部63の上端よりも下側に位置することを意味し、「+」は、突起部65の先端が壁部63の上端よりも上側に位置することを意味する。
【0113】
また、チャンバ6の側部(側面)には、後述する高圧空気発生装置4から送出された空気(気体)をそのチャンバ6内に噴出する複数のノズル(第1のノズル)71が設置されている。各ノズル71は、チャンバ6の周方向に沿って配置されている。隣り合う2つのノズル71の間の間隔(角度間隔)は、等しくてもよく、また、異なっていてもよいが、等しく設定されていることが好ましい。また、ノズル71は、平面視で、チャンバ6の半径(ノズル71の先端を通る半径)の方向に対して傾斜するように設置されている。なお、ノズル71の数は、特に限定されないが、5〜8程度であることが好ましい。
【0114】
前記各ノズル71および高圧空気発生装置4により、チャンバ6内に空気(気体)の旋回流を生じさせる旋回流生成手段の主要部が構成される。
【0115】
また、チャンバ6の側部には、高圧空気発生装置4から送出された空気により、原材料をそのチャンバ6内に噴出(導入)するノズル(第2のノズル)72が設置されている。ノズル72がチャンバ6の側部に設置されていることにより、そのノズル72からチャンバ6内に噴出した原材料は、瞬時に、空気の旋回流に乗り、旋回を開始することができる。
【0116】
チャンバ6の側部におけるノズル72の位置は、特に限定されないが、図示の構成では、隣り合う2つのノズル71の間に配置されている。また、ノズル72の上下方向の位置は、ノズル71と同じでもよく、また、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。また、ノズル72は、平面視で、チャンバ6の半径(ノズル72の先端を通る半径)の方向に対して傾斜するように設置されている。
【0117】
例えば、各ノズル71とノズル72とを含めたすべてのノズルは、等間隔(等角度間隔)に配置されている構成とすることができる。この場合は、ノズル72の隣に位置する2つのノズル71の間の間隔は、その他の隣り合う2つのノズル71の間の間隔の2倍になる。また、各ノズル71が等間隔(等角度間隔)に設置され、ノズル72が隣り合う2つのノズル71の中間位置に配置されている構成とすることもできる。粉砕効率という観点では、各ノズル71が等間隔(等角度間隔)に設置され、ノズル72が隣り合う2つのノズル71の中間位置に配置されている構成とすることが好ましい。
【0118】
また、ノズル72の上部には、ノズル72内に連通し、原材料を供給する筒状の供給部(供給手段)73が設置されている。供給部73の上側の端部(上端部)は、その内径が下側から上側に向かって漸増するテーパ状をなしている。また、供給部73の上端の開口(上端開口)は、供給口を構成しており、チャンバ6内の空気の旋回流の中心からずれた位置に配置されている。この供給部73から供給された原材料は、ノズル72からチャンバ6内に供給される。
【0119】
貯留部5は、貯留部5内の空気(気体)を排出する空気抜き部51を有している。この空気抜き部51は、図示の構成では、貯留部5の上部に設けられている。また、空気抜き部51には、空気(気体)を通過させ、原材料を通過させないフィルタが設けられている。そのフィルタとしては、例えば、濾布等を用いることができる。
【0120】
高圧空気発生装置4は、管路81を介して冷却装置3に接続され、冷却装置3は、途中で複数に分岐する管路82を介して前記粉砕部2の各ノズル71およびノズル72に接続されている。
【0121】
高圧空気発生装置4は、空気(気体)を圧縮して高圧の空気(圧縮空気)を送出する)装置であり、送出する空気の流量や圧力を調整し得るよう構成されている。また、高圧空気発生装置4は、送出する空気を乾燥させ、その湿度を低下させる機能を有し、送出する空気の湿度を調整し得るよう構成されている。この高圧空気発生装置4により、前記空気は、ノズル71および72から噴出される前(チャンバ6内に供給される前)に乾燥する。したがって、高圧空気発生装置4は、圧力調整手段および湿度調整手段の機能を有している。
【0122】
冷却装置3は、高圧空気発生装置4から送出された空気をノズル71および72から噴出される前(チャンバ6内に供給される前)に冷却する装置であり、その空気の温度を調整し得るよう構成されている。したがって、冷却装置3は、温度調整手段の機能を有している。この冷却装置3としては、例えば、水冷液体冷媒式の装置、気体冷媒式の装置等を用いることができる。
【0123】
以下、参考の形態を付記する。
<付記>
(1)硬化性樹脂および無機充填材を有し、基板上に設置された半導体素子を封止するとともに、その封止の際に、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填される樹脂組成物であって、
前記無機充填材は、最大粒径がR1max[μm]の第1の粒子を有し、
前記第1の粒子のモード径をR1mode[μm]としたとき、4.5≦R1mode≦24なる関係を満足するとともに、R1mode/R1max≧0.45なる関係を満足することを特徴とする樹脂組成物。
(2)硬化性樹脂および無機充填材を有し、基板上に設置された半導体素子を封止するとともに、その封止の際に、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填される樹脂組成物であって、
前記無機充填材は、最大粒径がR1max[μm]の第1の粒子と、粒径がR1max[μm]を超える第2の粒子とを有し、
前記第2の粒子は、前記無機充填材全体の体積の1%以下(ただし0を除く)であり、
前記第1の粒子のモード径をR1mode[μm]としたとき、4.5≦R1mode≦24なる関係を満足するとともに、R1mode/R1max≧0.45なる関係を満足することを特徴とする樹脂組成物。
(3)前記R1max[μm]は、24[μm]である(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
(4)R1mode/R1max≦0.9なる関係を満足する(1)ないし(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5)0.8R1mode〜1.2R1modeの粒径を有する第1の粒子は、前記無機充填材全体の体積の40〜80%である(1)ないし(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(6)前記無機充填材の含有量は、前記樹脂組成物全体の50〜93質量%である(1)ないし(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(7)ゲルタイムが35〜80秒である(1)ないし(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(8)前記無機充填材として、前記第1の粒子と前記第2の粒子とを含む材料から、前記第1の粒子を篩によって分級することにより、前記第2の粒子を前記無機充填材全体の体積の1%以下としたものを用いる(1)ないし(7)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(9)基板と、
前記基板上に設置された半導体素子と、
前記半導体素子を封止するとともに、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填される(1)ないし(8)のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物とを有することを特徴とする半導体装置。
以下、参考形態のさらなる例を付記する。
(i) 硬化性樹脂(B)および無機充填材(C)を有し、基板上に設置された半導体素子を封止するとともに、前記基板と前記半導体素子との間の隙間に充填される封止用の樹脂組成物であって、
前記無機充填材(C)に含まれる粒子の体積基準粒度分布の大粒径側からの累積頻度が5%となるところの粒径をRmax(μm)とし、前記無機充填材(C)に含まれる粒子の体積基準粒度分布の最大のピークの径をR(μm)とした場合、
R<Rmaxであり、
1μm≦R≦24μmであり、
R/Rmax≧0.45である樹脂組成物。
(ii) (i)に記載の樹脂組成物において、前記無機充填材(C)に含まれる粒子の体積基準粒度分布の小粒径側からの累積頻度が50%となるところの粒径をd50(μm)とした場合、
R/d50が1.1以上、15以下である樹脂組成物。
(iii) (i)または(ii)に記載の樹脂組成物において、前記無機充填材(C)に含まれる粒子の体積基準粒度分布において、前記R(μm)の粒径の粒子の頻度は、4%以上である樹脂組成物。
(iv) (i)乃至(iii)のいずれかに記載の樹脂組成物において、
ANSI/ASTM D 3123−72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で射出した際のスパイラルフロー長さが70cm以上であり、
以下の条件で計測した圧力Aが6MPa以下である樹脂組成物。
(条件)
金型温度175℃、注入速度177cm/秒の条件にて、前記金型に形成された幅13mm、高さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に、当該樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、樹脂組成物の流動時における最低圧力を圧力Aとする。
(v) (i)乃至(iv)のいずれかに記載の樹脂組成物において、前記基板と前記半導体素子との間の隙間をG(μm)とした場合、
R/Gが0.05以上、0.7以下である樹脂組成物。
(vi) (i)乃至(v)のいずれかに記載の樹脂組成物において、0.8×R〜1.2×R(μm)の粒径を有する粒子が、前記無機充填材(C)全体の体積の10〜60%である樹脂組成物。
(vii) (i)乃至(vi)のいずれかに記載の樹脂組成物において、前記無機充填材(C)の含有量は、前記樹脂組成物全体の50〜93質量%である樹脂組成物。
(viii) (i)乃至(vii)のいずれかに記載の樹脂組成物において、前記粒子は、粒子の原料を篩で分級して得られたものである樹脂組成物。
(ix) 基板と、
前記基板上に設置された半導体素子と、
前記半導体素子を被覆して封止するとともに、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填された(i)乃至(viii)のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物とを有する半導体装置。
(x) 硬化性樹脂(B)および無機充填材を有し、基板上に設置された半導体素子を封止するとともに、その封止の際に、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填される樹脂組成物であって、
前記無機充填材に含まれる第1の粒子(C1)と、前記硬化性樹脂(B)とを混合して得られたものであり、
前記第1の粒子(C1)は、最大粒径がR1max[μm]であり、
前記第1の粒子(C1)のモード径をR1mode[μm]としたとき、4.5μm≦R1mode≦24μmなる関係を満足するとともに、R1mode/R1max≧0.45なる関係を満足することを特徴とする樹脂組成物。
(xi) 前記R1max[μm]は、24[μm]であり、R1mode≦20μmである(x)に記載の樹脂組成物。
(xii) R1mode/R1max≦0.9なる関係を満足する(x)または(xi)に記載の樹脂組成物。
(xiii) 0.8R1mode〜1.2R1modeの粒径を有する第1の粒子(C1)が、前記無機充填材全体の体積の10〜60%となるように、添加された(x)乃至(xii)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(xiv) 前記無機充填材の含有量は、前記樹脂組成物全体の50〜93質量%である(x)乃至(xiii)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(xv) ゲルタイムが35〜80秒である(x)乃至(xiv)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(xvi) 基板と、
前記基板上に設置された半導体素子と、
前記半導体素子を封止するとともに、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填される(x)乃至(xv)のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物とを有することを特徴とする半導体装置。
【実施例】
【0124】
(実施例1)
<原材料>
以下配合量は表1に示す。また、粒子全体の特性については表2に示す。なお、モード径、メジアン径等の粒度分布の評価は(株)島津製作所製レーザー回折散乱式粒度分布計SALD−7000を使用して測定した。他の実施例、比較例においても同様である。
【0125】
[第1の粒子(メインシリカ1)]
・モード径16μm、最大粒径24μm(モード径/最大粒径=0.67)のシリカ粒子
【0126】
[硬化性樹脂]
・日本化薬(株)製NC−3000(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、エポキシ当量276g/eq、軟化点57℃)
【0127】
[硬化剤]
・日本化薬(株)製GPH−65(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、水酸基当量196g/eq、軟化点65℃)
【0128】
[カップリング剤]
・チッソ(株)製GPS−M(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
・チッソ(株)製S810(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)
【0129】
[硬化促進剤]
・硬化促進剤1(下記式(5)で表される硬化促進剤)
【0130】
【化5】
【0131】
[イオン捕捉剤]
・協和化学工業(株)製DHT−4H(ハイドロタルサイト)
【0132】
[離型剤]
・クラリアントジャパン(株)製WE−4M(モンタン酸エステルワックス)
【0133】
[難燃剤]
・住友化学(株)製CL−303(水酸化アルミニウム)
【0134】
[着色剤]
・三菱化学(株)製MA−600(カーボンブラック)
【0135】
<樹脂組成物の製造>
前述した図4に示す粉砕装置1を用いて前記原材料を粉砕した。
【0136】
チャンバ内に供給する空気の圧力:0.7MPa
チャンバ内に供給する空気の温度:3℃
チャンバ内に供給する空気の湿度:9%RH
【0137】
次に、2軸型混練押出機を用い、下記の条件で、前記粉砕後の原材料を混練した。
加熱温度:110℃
混練時間:7分
【0138】
次に、前記混練された混練物に対し、脱気し、冷却後、粉砕機で粉砕して、粉末状の樹脂組成物を得た。なお、以下の評価において必要に応じてタブレット打錠機により、前記粉末状の樹脂組成物を圧縮成形し、タブレット状の樹脂組成物を得た。
【0139】
(実施例2)
無機充填材の材料を下記および表1のように変更した以外は、前記実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0140】
[メインシリカ1(第1の粒子)]
・モード径16μm、最大粒径24μm(モード径/最大粒径=0.67)のシリカ粒子
【0141】
[第3の粒子]
・アドマテックス(株)製SO−25H(平均粒径0.5μm)
【0142】
(実施例3)
無機充填材の材料を下記および表1のように変更した以外は、前記実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0143】
[メインシリカ2(第1の粒子)]
・モード径11μm、最大粒径24μm(モード径/最大粒径=0.46)のシリカ粒子
【0144】
(実施例4)
無機充填材の材料を下記、および表1のように変更した以外は、前記実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0145】
[メインシリカ3(第1の粒子)]
・モード径10μm、最大粒径18μm(モード径/最大粒径=0.56)のシリカ粒子
【0146】
[第3の粒子]
・アドマテックス(株)製SO−25H(平均粒径0.5μm)
【0147】
(実施例5)
原材料を下記、および表1のように変更した以外は、前記実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0148】
<原材料>
[メインシリカ2(第1の粒子)]
・モード径11μm、最大粒径24μm(モード径/最大粒径=0.46)のシリカ粒子
【0149】
[第3の粒子]
・アドマテックス(株)製SO−25H(平均粒径0.5μm)
【0150】
[硬化性樹脂]
・三菱化学(株)製YL−6810(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/eq、融点47℃)
【0151】
[硬化剤]
・日本化薬(株)製GPH−65(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、水酸基当量196g/eq、軟化点65℃)
【0152】
[カップリング剤]
・チッソ(株)製GPS−M(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
・チッソ(株)製S810(γ−メルカプトトリプロピルメトキシシラン)
【0153】
[硬化促進剤]
・硬化促進剤2(下記式(6)で表される硬化促進剤)
【0154】
【化6】
【0155】
[イオン捕捉剤]
・協和化学工業(株)製DHT−4H
【0156】
[離型剤]
・クラリアントジャパン(株)製WE−4M(モンタン酸エステルワックス)
【0157】
[難燃剤]
・住友化学(株)製CL−303(水酸化アルミニウム)
【0158】
[着色剤]
・三菱化学(株)製MA−600(カーボンブラック):0.30質量部
【0159】
(実施例6)
原材料を下記、および表1のように変更した以外は、前記実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0160】
<原材料>
[メインシリカ4(第1の粒子)]
・モード径5μm、最大粒径10μm(モード径/最大粒径=0.5)のシリカ粒子
【0161】
[第3の粒子]
・アドマテックス(株)製SO−25H(平均粒径0.5μm)
【0162】
[硬化性樹脂]
・日本化薬(株)製NC−3000(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、エポキシ当量276g/eq、軟化点57℃)
・三菱化学(株)製YL−6810(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/eq、融点47℃)
【0163】
[硬化剤]
・日本化薬(株)製GPH−65(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、水酸基当量196g/eq、軟化点65℃)
・三井化学(株)製XLC−4L(フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、水酸基当量165g/eq、軟化点65℃)
【0164】
(比較例1)
無機充填材を下記、および表1のように変更した以外は、前記実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0165】
[メインシリカ5(第1の粒子)]
・モード径10μm、最大粒径24μm(モード径/最大粒径=0.42)のシリカ粒子
【0166】
(比較例2)
無機充填材を下記、および表1のように変更した以外は、前記実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0167】
[メインシリカ5(第1の粒子)]
・モード径10μm、最大粒径24μm(モード径/最大粒径=0.42)のシリカ粒子
【0168】
[第3の粒子]
・アドマテックス(株)製SO−25H(平均粒径0.5μm)
【0169】
(比較例3)
無機充填材を下記、および表1のように変更した以外は、前記実施例5と同様にして樹脂組成物を得た。
【0170】
[メインシリカ6(第1の粒子)]
・モード径9μm、最大粒径24μm(モード径/最大粒径=0.38)のシリカ粒子
【0171】
(比較例4)
無機充填材を下記、および表1のように変更した以外は、前記実施例6と同様にして樹脂組成物を得た。
【0172】
[メインシリカ7(第1の粒子)]
・モード径4μm、最大粒径10μm(モード径/最大粒径=0.4)のシリカ粒子
【0173】
[第3の粒子]
・アドマテックス(株)製SO−25H(平均粒径0.5μm)
【0174】
[評価]
実施例1〜6、比較例1〜4に対し、それぞれ、下記のようにして樹脂組成物の各評価を行った。その結果は、下記表1に示す通りである。
【0175】
(スパイラルフロー)
【0176】
低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製KTS−15)を用いて、ANSI/ASTM D 3123−72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件にて樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。
【0177】
(ゲルタイム(硬化性))
175℃に制御された熱板上に、樹脂組成物を載せ、スパチュラで約1回/秒のストロークで練る。樹脂組成物が熱により溶解してから硬化するまでの時間を測定し、ゲルタイムとした。ゲルタイムは、数値が小さい方が、硬化が速いことを示す。
【0178】
(高化式フロー粘度)
島津製作所(株)製のフローテスタCFT−500Cを用いて、温度175℃、荷重40kgf(ピストン面積1cm)、ダイ穴直径0.50mm、ダイ長さ1.00mmの試験条件で溶解した樹脂組成物のみかけの粘度ηを測定した。このみかけの粘度ηは、次の計算式より算出した。なお、Qは単位時間あたりに流れる樹脂組成物の流量である。また、高化式フロー粘度は、数値が小さい方が、低粘度であることを示す。
【0179】
η=(4πDP/128LQ)×10−3(Pa・秒)
η:みかけの粘度
D:ダイ穴直径(mm)
P:試験圧力(Pa)
L:ダイ長さ(mm)
Q:フローレート(cm/秒)
【0180】
(充填性)
フリップチップBGA(基板は厚さ0.36mmのビスマレイミド・トリアジン樹脂/ガラスクロス基板、パッケージサイズは16×16mm、チップサイズは10×10mm、基板とチップとの間隙は70μm、40μm、30μmの3つを使用、バンプ間隔は200μm)を、低圧トランスファー成形機(TOWA製、Yシリーズ)を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で、樹脂組成物により封止成形した。基板−チップ間の間隙における樹脂組成物の充填性を、超音波探傷機(日立建機My Scorpe)で観察した。
なお、表1の充填性の欄は、基板とチップとの間隙が70μmである場合、40μmである場合、30μmである場合の全てにおいて、基板とチップとの間に空隙がなく樹脂組成物が充填されている場合に、「良好」と判断した。基板とチップとの間隙が70μmである場合、40μmである場合、30μmである場合のいずれかにおいて、基板とチップとの間に樹脂組成物が充填されていない領域(空隙)があると検出された場合に、「未充填」と判断した。
【0181】
(矩形圧(粘度))
低圧トランスファー成形機(NEC(株)製40tマニュアルプレス)を用いて、金型温度175℃、注入速度177cm/秒の条件にて、幅13mm、厚さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に、樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、樹脂組成物の流動時における最低圧力を測定した。矩形圧は、溶融粘度のパラメータであり、数値が小さい方が、溶融粘度が低く良好である。矩形圧の値は、6MPa以下であれば問題はなく、5MPa以下であれば、良好な粘度を得ることができる。
【0182】
【表1】
【0183】
【表1】
【0184】
上記表1から明らかなように、実施例1〜6は、本発明の無機充填材を使用しているため、良好な流動性(スパイラルフロー)と充填性が得られた。特に、充填の難しい特異な流動挙動を示す30μm、40μmの狭ギャップの半導体装置における良好な充填性が特徴である。これに対し、比較例においては、基板とチップとの間隙が特に狭い40μm、30μmにおいて、最大粒径が基板とチップとの間隙より小さいケースであっても未充填が生じる現象が増大し、一般的な流動性のみならず、前述の特異な流動抵抗に起因する課題が解決できないものであることがわかった。すなわち、従来のメジアン径で設計する無機充填材の概念では半導体チップを封止する際、樹脂組成物が、回路基板と半導体チップとの間の隙間にも充填され、補強がなされる所謂モールドアンダーフィル材では良好な充填性が得られないことがわかった。
【0185】
この出願は、2012年3月29日に出願された日本特許出願特願2012−077658を基礎とする優先権を主張し、その開示をすべてここに取り込む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7