【実施例】
【0057】
<合成例1>デカノイルプロリンの合成
プロリン(味の素社製)34.54gを100gの水に溶解後、デカノイルクロライド(東京化成社製)52.01gと25%水酸化ナトリウム水溶液をpHを12に調整しながら加えた。75%硫酸を加えて中和し、水層を除去後、さらに水と酢酸エチルを加え、水層を除去した。酢酸エチルを減圧留去し、デカノイルプロリンを68.12g得た。
【0058】
<合成例2>デカノイルプロリンナトリウム塩の調製
合成例1で得られたデカノイルプロリンを、適当な量の水と懸濁後、水酸化ナトリウムでpHを7まで中和し、濃縮乾燥することによりデカノイルプロリンナトリウム塩を得た。
【0059】
<合成例3>ラウロイルプロリンの合成
プロリンとラウロイルクロライド(東京化成製)を用い、合成例1と同様の方法でラウロイルプロリンを合成した。
【0060】
<合成例4>ラウロイルプロリンナトリウム塩の合成
合成例3で得られたラウロイルプロリンを用い、合成例2と同様の方法でラウロイルプロリンナトリウム塩を合成した。
【0061】
<保湿剤の評価>
保湿剤の吸湿性、水分保持性を検討するため、以下の実験を行った。
合成例2で得られたデカノイルプロリンナトリウム、ベタイン(旭化成社製「アミノコート」)、乳酸ナトリウム(和光社製)、ピロリドンカルボン酸ナトリウム(味の素社製「アジデュウ」NL−50)、グリセリン(花王社製「濃グリセリン」)、およびソルビトール(花王社製)をそれぞれ真空乾燥後、そのサンプルの水分量をカールフィッシャー水分計により測定し、水分量を求め、水分量以外の重量を算出した([1])。その後、65%RH、25℃の条件で14日間吸湿させ、重量を測定した([2])。その後、35%RH、25℃の条件で14日間乾燥させ、重量を測定した([3])。
[吸湿性]
A(%)=([2]−[1])/[1] ×100を算出し、以下の基準で評価した。
◎:Aの値が15%以上
○:Aの値が12%以上15%未満
△:Aの値が10%以上12%未満
×:Aの値が10%未満
[水分保持性]
R(%)=[3]/[2]×100を算出し、以下の基準で評価した。
◎:Rの値が80%以上
○:Rの値が60%以上80%未満
△:Rの値が40%以上60%未満
×:Rの値が40%未満
【0062】
【表1】
【0063】
表1で示すように、実施例1は他の保湿剤と比較して水分保持性に優れていることが明らかとなり、吸湿性および水分保持性の両方を有する保湿剤として使用できることが明らかとなった。
【0064】
<組成物の評価>
表2に記載の組成物において、着色/着色抑制効果、着臭/着臭抑制効果、抗菌性、保湿性、分解安定性、および塗布感について評価を行った。その結果を以下に示す。
【0065】
[着色]
表2に記載の組成物を調製し、それぞれの組成物において70℃で14日間の加速試験条件で保存し、10mmのセルを用い、430nmの波長で透過率を測定した。着色を下記の評価基準で判定した。
◎:透過率が93%以上
○:透過率が85%以上93%未満
△:透過率が75%以上85%未満
×:透過率が75%未満
【0066】
[着色抑制効果]
表2に記載の組成物、および表2に記載の組成物からB成分(またはB’成分)を除いた組成物を調製しそれぞれの組成物において70℃で14日間の加速試験条件で保存し、10mmのセルを用い、430nmの波長で透過率を測定し、B成分の着色抑制効果を下記の評価基準で判定した。
◎:B成分(またはB’成分)を含有しない組成物と比較して、透過率が40%以上改善されたもの。
○:B成分(またはB’成分)を含有しない組成物と比較して、透過率が25%以上40%未満改善されたもの。
△:B成分(またはB’成分)を含有しない組成物と比較して、透過率が10%以上25%未満改善されたもの。
×:B成分(またはB’成分)を含有しない組成物と比較して、透過率が10%未満しか改善されない、もしくは全く改善が見られないもの。
【0067】
[着臭]
表2に記載の組成物を調製しそれぞれの組成物において70℃で14日間促進試験条件で保存し、専門パネラー5人により着臭を下記の評価基準で判定した。
◎: においが全くしない
○: においがほとんどしない
△: においがわずかにする
×: においがかなりする
【0068】
[着臭抑制効果]
表2に記載の組成物、および表2に記載の組成物からB成分(またはB’成分)を除いた組成物、を調製しそれぞれの組成物において70℃で14日間促進試験条件で保存し、専門パネラー5人によりB成分の着臭抑制効果を下記の評価基準で判定した。
5:B成分(またはB’成分)を含有しない組成物と比較して、においがまったくしない
4:B成分(またはB’成分)を含有しない組成物と比較して、においがわずかにする
3:B成分(またはB’成分)を含有しない組成物と比較して、においが少しする
2:B成分(またはB’成分)を含有しない組成物と比較して、においがかなりする
1:B成分(またはB’成分)を含有しない組成物と比較して、においがする
5人の評価の平均値が4.0以上5.0未満の場合を◎、3.0以上4.0未満の場合を○、2.0以上3.0未満の場合を△、2.0未満の場合を×とした。
【0069】
[防腐性]
表2に記載の組成物を調製しそれぞれの組成物を用いてクロコウジカビに対する保存効力試験を行った。判定基準を以下に示す。
◎:14日後に菌が死滅した。
○:28日後に菌が死滅した。
×:28日後においても菌が死滅しなかった。
【0070】
[保湿性]
表2の成分を含有するクリームを調製し、5人の専門パネラーが皮膚に塗布後のしっとり感を下記の評価基準により評価を行った。
クリームは、スクワラン(8.8重量%)、ホホバ油(5.0重量%)、ステアリン酸グリセリル(2.9重量%)をあらかじめ85℃で加熱溶解させた。これとは別に、パルミチン酸スクロース(0.4重量%)、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム(0.1重量%)、クエン酸バッファー適量(pH6.0になるように添加)、表2に記載の組成物(0.5重量%)、水(残余)をそれぞれ85℃で加熱溶解後させ、両者を徐々に混合し、室温まで冷却することで調製した。なお、上記のかっこ内の重量%はクリーム全重量に対する濃度を示している。
4点:非常にしっとり感がある。
3点:かなりしっとり感がある。
2点:しっとり感がある。
1点:あまりしっとり感がない。
0点:しっとり感が全く感じられない
専門パネラーの平均点が3.5点以上を◎、2.5点以上3.5点未満を○、1.5点以上2.5点未満を△、1.5点未満を×とした。
【0071】
【表2】
【0072】
表2の結果より、本発明のA成分とB成分を含有する組成物は、保湿性に加え、防腐性に優れ、着色および着臭のない組成物であることがわかる。尚、参考例1および2からわかるように、デカノイルプロリンNaを含む組成物は、保湿性に優れていた。
【0073】
次の表で示される化粧水を調製した。
【0074】
【表3】
【0075】
表3の化粧水は、実施例2、3と同様に保湿性に加え、防腐性に優れ、着色および着臭のない組成物であった。特に実施例4および実施例5の化粧水は一層優れていた。
【0076】
[分解安定性]
合成例2の化合物(デカノイルプロリンNa)30.0重量%水溶液に、エチドロネートを0.1重量%となるように添加したものと添加しないものを調製し、70℃で22日間加速試験を行い、それぞれの組成物における、合成例2の化合物の分解率をHPLC(島津製作所社製20A)を用いて測定した。
エチドロネートを添加した場合、デカノイルプロリンNaの分解率は0.8%であるのに対し、未添加の場合、デカノイルプロリンNaの分解率は2.4%であった。これより、エチドロネートを添加することにより、アシルプロリンの分解を防ぐことが明らかとなった。
【0077】
[塗布感]
下記の表4で示すような組成でクリームを調製し、5人の専門パネラーが皮膚に塗布の際の厚みを2点比較法にて評価した。
その結果、実施例8のほうが参考例3より塗布感の評価が高かった。
【0078】
【表4】
【0079】
上記の試験により、エチドロネートおよび炭素原子数6〜24のアルコールを配合することにより塗布感が向上することが明らかとなった。
【0080】
<配合例1 可溶化系化粧水の調製>
下記に示す配合の化粧水を作成した。
【0081】
<配合例2 洗顔フォームの調製>
下記に示す配合の洗顔フォームを作成した。
【0082】
<配合例3 W/Oファンデーションクリーム>
下記に示す配合のファンデーションクリームを作成した。
調製方法:成分A及び成分Bをそれぞれ70℃に加温し、成分Aを撹拌しながら成分Bを徐々に加え乳化した。50℃まで冷却後、成分Cを添加し、室温までさらに冷却した。
【0083】
<配合例4 下地クリーム>
下記に示す配合の下地クリームを作成した。
調製方法:成分A及び成分Bをそれぞれ60℃に加温し、成分Aを撹拌しながら成分Bを徐々に添加した。次に冷却し成分Cを50℃で添加し、30℃まで冷却した。
【0084】
<配合例5 エモリエントスキンローション>
下記に示す配合のエモリエントクリームを作成した。
調製方法:成分A及び成分Bをそれぞれ70℃に加温し、成分Bを撹拌しながら成分Aを徐々に加えた。次に成分Cを40℃で加え冷却して調製した。
【0085】
<配合例6 W/Oエモリエントクリーム>
下記に示す配合のW/Oエモリエントクリームを作成した。
調製方法:成分A及び成分Bをそれぞれ60℃に加温し、成分Bを撹拌しながら成分Aを徐々に加え、冷却して調製した。
【0086】
<配合例7 W/Oエモリエント乳液>
下記に示す配合のW/Oエモリエント乳液を作成した。
調製方法:成分A及び成分Bをそれぞれ室温にて溶解し、成分Aを撹拌しながら成分Bを徐々に加えて調製した。
【0087】
<配合例8 O/Wモイスチャークリーム>
下記に示す配合のO/Wモイスチャークリームを作成した。
調製方法:成分A及び成分Bをそれぞれ70℃に加温し、成分Aを撹拌しながら成分Bを徐々に加え、その後冷却して調製した。
【0088】
<配合例9 O/Wモイスチャー乳液>
下記に示す配合のO/Wモイスチャー乳液を作成した。
調製方法:成分A、成分B及び成分Cをそれぞれ70℃に加温し、成分Bを撹拌しながら成分A及び成分Cを徐々に加え、冷却して調製した。
【0089】
<配合例10 マッサージクリーム>
下記に示す配合のマッサージクリームを作成した。
調製方法:成分A及び成分Bをそれぞれ70℃に加温し、成分Bを撹拌しながら成分Aを徐々に加え、冷却して調製した。
【0090】
<配合例11 UVクリーム>
下記に示す配合のUVクリームを作成した。
調製方法:成分A及び成分Bをそれぞれ70℃に加温し、成分Aを撹拌しながら成分Bを徐々に加え、冷却して調製した。
【0091】
<配合例12 UVローション>
下記に示す配合のUVローションを作成した。
調製方法:成分A及び成分Bを室温で撹拌溶解し、成分Aを撹拌しながら成分B及び成分Cを徐々に加えた。
【0092】
<配合例13 口紅>
下記に示す配合の口紅を作成した。
調製方法:成分Aを加熱溶解し、混合した成分Bを加えてロールミルで練り均一に分散させた。さらに、成分C及び成分Dを加え脱泡した後に型に流し込み急冷しスティック状とした。
【0093】
<配合例14 ヘアコンディショナー>
下記に示す配合のヘアコンディショナーを作成した。
調製方法:成分A及び成分Bをそれぞれ80℃に加温し、成分Bを撹拌しながら成分Aを徐々に添加し、室温まで冷却した。
【0094】
<配合例15 ヘアクリーム>
下記に示す配合のヘアクリームを作成した。
調製方法:成分A及び成分Bをそれぞれ70℃に加温し、成分Aを撹拌しながら成分Bを徐々に添加し、室温まで冷却した。
【0095】
<配合例16 クレンジングオイル>
下記に示す配合のクレンジングオイルを作成した。
調製方法:成分A及び成分Bを室温で溶解し、成分Aを撹拌しながら成分Bを徐々に添加した。
【0096】
<配合例17 ウォッシャブルクレンジングオイル>
下記に示す配合のウォッシャブルクレンジングオイルを作成した。
調製方法:成分A及び成分Bを60℃に加熱し、成分Aを撹拌しながら成分Bを徐々に添加した。
【0097】
<配合例18 クレンジングジェル>
下記に示す配合のクレンジングジェルを作成した。
調製方法:成分A及び成分Bを室温にて撹拌溶解し、成分Bに成分Cを添加した。これを撹拌しながら成分Aに添加した。
【0098】
<配合例19 ヘアシャンプー>
下記に示す配合のヘアシャンプーを作成した。
調製方法:成分Aを80℃で撹拌溶解後冷却し、成分Bを加えて調製した。
【0099】
なお、使用したサンプル、試薬は以下の通りである。
エチドロネート:エチドロン酸として配合:1−ヒドロキシエタン―1,1−ジホスホン酸(東京化成社製)
ベタイン:アミノコート(旭化成社製)
乳酸ナトリウム:乳酸ナトリウム(和光純薬社製)
ピロリドンカルボン酸ナトリウム:「アジデュウ」NL−50(味の素社製)
グリセリン:濃グリセリン(花王社製)
ソルビトール:ソルビトール(花王社製)
スクワラン:スクワラン(マルハ社製)
ホホバ油:精製ホホバ油(香栄興業社製)
ステアリン酸グリセリル:ニッコールGMS−BV2(日光ケミカルズ社製)
パルミチン酸スクロース:サーフホープSE COSME C−1615(三菱化学フーズ社製)
ステアロイルグルタミン酸ナトリウム:「アミソフト」HS−11P(味の素社製)
アセチルプロリン:アセチルプロリン(渡辺化学工業社製)
アセチルグルタミン酸:N−アセチル―L−グルタミン酸(東京化成社製)
EDTA:EDTA−2Na(和光純薬工業社製)
ヒアルロン酸Na:FCH−120(フードケミファ社製)
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル):「エルデュウ」PS−203(味の素社製)
オクタン酸セチル:CEH(高級アルコール工業社製)
PPG−8セテス―20:ニッコールPBC−44(日光ケミカルズ社製)
PPG−6デシルテトラデセス―30:ニッコールPEN−4630(日光ケミカルズ社製)
DPG:DPG−RF(ADEKA社製)
BG:1,3−BG UK(ダイセル化学社製)
ココイルグリシンNa:「アミライト」GCK−12K(味の素社製)
ラウラミドプロピルベタイン:ソフタゾリンLPB(川研ファインケミカル社製)
カプリン酸グリセリル:サンソフトNo.760(太陽化学社製)
ヒドロキシプロピルデンプンリン酸:STRUCTURE XL(アクゾノーベル社製)
PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン:KF−6028(信越化学工業社製)
クオタニウム−18ヘクトライト:ルーセンタイトSAN(コープケミカル社製)
PEG−10ジメチコン:KF−6017(信越化学工業社製)
イソステアリン酸PEG−15グリセリル:EMALEX GWIS−155(日本エマルジョン社製)
水添レシチン:NIKKOL レシノールS−10(日光ケミカルズ社製)
(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー:KSP−100(信越化学工業社製)
(ジメチコン/(PEG−10/15))クロスポリマー:KSG−210(信越化学工業社製)
オレス−6:EMALEX 506(日本エマルション社製)
セテス−7:EMALEX 107(日本エマルション社製)
メチルグルセス−10:マクビオブライドMG−10E(日油社製)