(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する水性コーティング剤から形成されるコーティング層と、ゴム基材とを備える、ゴム積層体であって、ここで、水性ポリウレタン樹脂分散体は、ポリカーボネートポリオール由来の単位を有するポリウレタン樹脂を含み、固形分基準で、5〜43重量%の脂環構造の含有割合を有し、かつブロック化剤が結合したイソシアナト基を有する、ゴム積層体。
水性ポリウレタン樹脂分散体が、固形分基準かつイソシアナト基換算で、0.1〜3.0重量%のブロック化剤が結合したイソシアナト基を有する、請求項1記載のゴム積層体。
ポリウレタン樹脂が、固形分基準で、7〜18重量%のウレタン結合の含有割合とウレア結合の含有割合の合計値を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載のゴム積層体。
水性ポリウレタン樹脂分散体が、(a)ポリイソシアネート化合物、(b)数平均分子量が400〜4000であるポリカーボネートポリオール、(c)酸性基含有ポリオール化合物、(d)イソシアナト基のブロック化剤、任意の(e)その他のポリオール化合物、を反応させて得られる(A)ポリウレタンプレポリマーと、前記ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基との反応性を有する(B)鎖延長剤とを反応させて得られるポリウレタン樹脂が、水系媒体中に分散されたものである、請求項1〜8のいずれか1項記載のゴム積層体。
ゴム基材又はプライマー組成物で処理されたゴム基材の表面に、水性コーティング剤を適用した後、加熱して形成されたコーティング層を備える、請求項1〜11のいずれか1項記載のゴム積層体。
未加硫ゴムからなる基材又はプライマー組成物で処理された未加硫ゴムからなる基材の表面に、水性コーティング剤を適用した後、加熱して形成されたコーティング層及び加硫されたゴム基材を備える、請求項1〜11のいずれか1項記載のゴム積層体。
ゴム基材の表面又はプライマーで処理されたゴム基材の表面に、水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する水性コーティング剤(ここで、水性ポリウレタン樹脂分散体は、ポリカーボネートポリオール由来の単位を有するポリウレタン樹脂を含み、固形分基準で、5〜43重量%の脂環構造の含有割合を有し、かつブロック化剤が結合したイソシアナト基を有する)を適用した後、加熱して、コーティング層を形成する、ゴム積層体の製造方法。
未加硫ゴムからなる基材又はプライマー組成物で処理された未加硫ゴムからなる基材の表面に、水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する水性コーティング剤(ここで、水性ポリウレタン樹脂分散体は、ポリカーボネートポリオール由来の単位を有するポリウレタン樹脂を含み、固形分基準で、5〜43重量%の脂環構造の含有割合を有し、かつブロック化剤が結合したイソシアナト基を有する)を適用した後、加熱して、コーティング層及び加硫されたゴム基材を同時に形成する、ゴム積層体の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の目的は、水性コーティング剤にシランカップリング剤等の添加剤を添加しなくても、水性コーティング剤からゴム表面との十分な密着性を有するコーティング層が形成され、これを備えたゴム積層体を提供することではあるが、シランカップリング剤等の添加剤を用いることを除外するものではない。
【0010】
[コーティング層]
本発明におけるコーティング層は、水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する水性コーティング剤から形成される。ここで、水性ポリウレタン樹脂分散体は、ポリカーボネートポリオール由来の単位を有するポリウレタン樹脂を含み、固形分基準で43重量%以下の脂環構造の含有割合を有し、かつブロック化剤が結合したイソシアナト基を有する。脂環構造の含有割合は、固形分基準で、天然ゴムへの密着性の点から、好ましくは5〜43重量%であり、より好ましくは7〜40重量%であり、さらに好ましくは7〜35重量%である。また、ブロック化剤が結合したイソシアナト基の含有割合は、固形分基準かつイソシアナト基換算で、天然ゴムへの密着性の点から、好ましくは0.1〜3.0重量%であり、より好ましくは0.4〜2.5重量%であり、さらに好ましくは0.6〜2.0重量%である。なお、本発明において、脂環構造には、シクロヘキサン残基(シクロヘキサンから2個の水素原子を除いたもの)やシクロペンタン残基(シクロペンタンから2個の水素原子を除いたもの)が相当するとして、含有割合の計算を行なうこととする。
【0011】
本発明において水性ポリウレタン樹脂分散体は、(a)ポリイソシアネート化合物、(b)数平均分子量が400〜4000であるポリカーボネートポリオール化合物、(c)酸性基含有ポリオール化合物、及び(d)イソシアナト基のブロック化剤を少なくとも反応させて得られるポリウレタン樹脂が、水系媒体に分散されたものであることができる。
【0012】
また、本発明において水性ポリウレタン樹脂分散体は、(a)ポリイソシアネート化合物、(b)数平均分子量が400〜4000であるポリカーボネートポリオール、(c)酸性基含有ポリオール化合物、(d)イソシアナト基のブロック化剤、及び任意の(e)その他のポリオール化合物を反応させて(A)ポリウレタンプレポリマーを得て、この(A)ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基との反応性を有する(B)鎖延長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂が、水系媒体中に分散されたものであってもよい。
【0013】
水性ポリウレタン樹脂分散体において、ブロック化剤が結合したイソシアナト基は、ブロック化剤が結合したイソシアネート化合物を配合することによって導入することもできる。例えば、ブロック化剤が結合したイソシアナト基を有しないポリウレタン樹脂の水性分散体に、ブロック化剤が結合したイソシアネート化合物を配合してもよい。
【0014】
<(a)ポリイソシアネート化合物>
本発明において(a)ポリイソシアネート化合物(以下、(a)ともいう)としては、特に限定されず、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0015】
芳香族ポリイソシアネートとしては、具体的には、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等が挙げられる。
【0016】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、具体的には、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。
【0017】
脂環式ポリイソシアネートとしては、具体的には、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−ジクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、2,6−ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0018】
上記のポリイソシアネートは、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0019】
ポリイソシアネートの1分子当たりのイソシアナト基は通常2個であるが、本発明におけるポリウレタン樹脂がゲル化をしない範囲で、トリフェニルメタントリイソシアネートのようなイソシアナト基を3個以上有するポリイソシアネートも使用することができる。
【0020】
ポリイソシアネートの中でも、ゴムとの密着性が高いという観点から、脂環構造を有する脂環式ポリイソシアネートが好ましく、反応の制御が行いやすいという点から、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及び4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)からなる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0021】
<(b)数平均分子量が400〜4000であるポリカーボネートポリオール>
本発明において(b)数平均分子量が400〜4000であるポリカーボネートポリオール(以下、(b)ともいう)としては、数平均分子量が400〜4000にあり、かつポリカーボネートポリオールであること以外は特に限定されず、好ましくはポリカーボネートジオール、ポリカーボネートトリオール及びポリカーボネートテトラオールからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはポリカーボネートジオールである。
【0022】
(b)の数平均分子量は、500〜3500であることが好ましく、800〜3000であることがより好ましく、800〜2000であることが特に好ましい。
本発明において、数平均分子量は、以下の方法で導き出した値である。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、室温下、テトラヒドロフラン溶媒を溶離液として用い、分子量が既知の標準ポリスチレン試料を用いて得られた検量線を作成し、同様の方法を用いてGPCで測定したポリカーボネートポリオールのリテンションタイムを検量線に当てはめて数平均分子量を導き出す。
【0023】
ポリカーボネートポリオールの製造方法としては、特に限定されず、ポリオールモノマーとホスゲンとを用いて製造する方法や、ポリオールモノマーと炭酸エステルとを用いて製造する方法等の公知の製造方法が挙げられる。中でも、ポリオールモノマーと炭酸エステルとを用いて製造する方法は、塩素系化合物や塩素イオン等が混入することがないため好ましい。
【0024】
ポリカーボネートポリオールの原料となるポリオールモノマーとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等や、1,3−ブタンジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2−エチルヘキサン−1,6−ジオール、2−メチル−1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール;1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール;1,4−ベンゼンジメタノール等の芳香族ジオール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能ポリオール等が挙げられる。ポリオールモノマーは、1種のみを用いてポリカーボネートポリオールとすることもできるし、複数種を併用してポリカーボネートポリオールとすることもできる。
【0025】
本発明において、コーティング層の弾性率の点から、(b)としては、脂環構造を有するポリカーボネートポリオールが好ましい。特に主鎖に脂環構造を含有するポリカーボネートポリオールを用いることにより、弾性率を向上させることができ、静摩擦係数を下げにくいニトリルゴム(NBR)に対しても静摩擦係数を下げることができる。本発明において、(b)の脂環構造の含有割合は、5〜40重量%であることが好ましく、5〜25重量%であることがより好ましく、5〜20重量%であることが特に好ましい。また、(b)として脂環構造を含有するポリカーボネートポリオールと脂環構造を含有しないポリカーボネートポリオールとを併用することもできる。さらに、ゴム基材との密着性の点から、(b)として、脂環構造を含有しないポリカーボネートポリオールを使用することができ、この場合、脂環構造を有する(a)ポリイソシアネート化合物と組み合わせることが好ましい。なお、本発明において、脂環構造の含有割合とは、ポリカーボネートポリオールの重量平均分子量中のシクロヘキサン残基(シクロヘキサンから2個の水素原子を除いたもの)やシクロペンタン残基(シクロペンタンから2個の水素原子を除いたもの)の重量%をいう。
【0026】
脂環構造を含有するポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールモノマーが脂環式ジオールを含むポリカーボネートジオールであり、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を有するポリカーボネートジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位及び1,6−ヘキサンジオール単位を有するポリカーボネートジオールが挙げられる。また、脂環構造を含有しないポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールモノマーが脂肪族ジオールであるポリカーボネートジオールであり、1,6−ヘキサンジオール単位を有するポリカーボネートジオール、1,5−ペンタンジオール単位及び1,6−ヘキサンジオール単位を有するポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0027】
本発明において、重量平均分子量は、上記数平均分子量と同様に、分子量が既知の標準ポリスチレン試料を用いて導き出した値である。
【0028】
<(c)酸性基含有ポリオール化合物>
本発明において(c)酸性基含有ポリオール化合物(以下、(c)ともいう)としては、1分子中に2個以上の水酸基と1個以上の酸性基を有する化合物であれば、特に限定されず、1分子中に2個の水酸基と1個の酸性基を有する化合物が好ましい。
酸性基としては、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基、フェノール性水酸基等の酸性を示す官能基が挙げられ、中でもカルボキシル基が好ましい。
(c)としては、具体的には、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6−ジヒドロキシ−2−トルエンスルホン酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。中でも、入手の容易さの観点から、2,2−ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0029】
<(d)イソシアナト基のブロック化剤>
本発明において(d)イソシアナト基のブロック化剤(以下、(d)ともいう)としては、特に限定されず、80〜180℃でイソシアナト基から解離するものを使用することができる。80〜180℃でイソシアナト基から解離するブロック化剤としては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等のマロン酸ジエステル系化合物;1,2−ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール系化合物;1,2,4−トリアゾール、メチルエチルケトオキシム等のオキシム系化合物;ジイソプロピルアミン、カプロラクタム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。中でも、解離温度の観点から、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物及びマロン酸ジエステル系化合物から選ばれる1種以上が好ましく、3,5−ジメチルピラゾール及びメチルエチルケトオキシムからなる選ばれる1種以上が好ましく、保存安定性の観点から3,5−ジメチルピラゾールが特に好ましい。
【0030】
<(e)その他のポリオール化合物>
本発明において、(e)その他のポリオール化合物(以下、(e)ともいう)は、任意成分であり、必須成分ではない。
本発明において、(e)は、特に限定されず、例えば、ポリエステルポリオール、数平均分子量が400〜4000以外のポリカーボネートポリオール、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール、多官能ポリオール等が挙げられる。
【0031】
<(A)ポリウレタンプレポリマー>
本発明において、(A)ポリウレタンプレポリマー(以下、(A)ともいう)は、(a)〜(e)を反応させて得られたものである。
(A)ポリウレタンプレポリマーの製造方法は、特に限定されず、例えば、以下のような方法が挙げられる。
一つ目は、ウレタン化触媒存在下又は不存在下で、(a)ポリイソシアネート化合物と、(b)ポリオール化合物と、(c)酸性基含有ポリオール化合物とをウレタン化触媒の存在下又は不存在下で反応させてウレタン化し、その後ブロック化触媒の存在下又は不存在下で(d)ブロック化剤を反応させて、末端イソシアナト基の一部がブロック化された(A)ポリウレタンプレポリマーを合成する方法である。
二つ目は、ブロック化触媒存在下又は不存在下で、(a)ポリイソシアネート化合物と、(d)ブロック化剤とを反応させて、一部をブロック化したポリイソシアネート化合物を合成し、これにウレタン化触媒存在下又は不存在下で(b)ポリオール化合物と、(c)酸性基含有ポリオール化合物とを反応させてウレタン化し、(A)ポリウレタンプレポリマーを合成する方法である。
【0032】
<ウレタン化触媒>
本発明において、ウレタン化触媒としては、特に限定されず、例えば、スズ系触媒(トリメチルスズラウレート、ジブチルスズジラウレート等)や鉛系触媒(オクチル酸鉛等)等の金属と有機及び無機酸の塩、及び有機金属誘導体、アミン系触媒(トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等)、ジアザビシクロウンデセン系触媒等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、ジブチルスズジラウレートが好ましい。
本発明において、ブロック化触媒としては、特に限定されず、例えば、ジブチルスズジラウレートやナトリウムメトキシド等のアルカリ触媒が挙げられる。
【0033】
<中和剤>
(A)ポリウレタンプレポリマーの酸性基は中和することができ、中和は、中和剤を用いて行うことができる。中和剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類、アンモニア等が挙げられる。中でも、有機アミン類が好ましく、より好ましくは3級アミンであり、最も好ましくはトリエチルアミンである。これらは、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0034】
<(B)鎖延長剤>
鎖延長剤としては、イソシアナト基と反応性を有する化合物が挙げられる。例えば、エチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−ヘキサメチレンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、アジポイルヒドラジド、ヒドラジン、2,5−ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール化合物、ポリエチレングリコールに代表されるポリアルキレングリコール類、水等が挙げられ、中でも、1級ジアミン化合物が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0035】
(B)鎖延長剤の量は、適宜、選択することができる。下記の第2の製造方法により、水性ポリウレタン樹脂分散体を製造する場合、水以外の鎖延長剤中のイソシアナト基と反応性を有する基と、プレポリマー中のイソシアナト基とが、モル比で、2:1以下となる量で使用することができる。モル比は、1:1〜0.8:1であることがより好ましい。
【0036】
<水系媒体>
本発明において、ポリウレタン樹脂は水系媒体中に分散されている。水系媒体としては、水や水と親水性有機溶媒との混合媒体等が挙げられる。
水としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水等が挙げられるが、入手の容易さや塩の影響で粒子が不安定になることを考慮して、好ましくはイオン交換水が挙げられる。
親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級1価アルコール;エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;N−メチルモルホリン、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等の非プロトン性の親水性有機溶媒等が挙げられる。
水系媒体中の親水性有機溶媒の量としては、0〜20重量%が好ましく、0〜15重量%がより好ましく、0〜10重量%が特に好ましい。
【0037】
<水性ポリウレタン樹脂分散体>
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法は、特に限定されず、例えば、以下のような製造方法が挙げられる。
第1の製造方法は、原料を全て混合し、反応させて、水系媒体中に分散させることにより水性ポリウレタン樹脂分散体を得る、いわゆるワンショット法である。
第2の製造方法は、(a)ポリイソシアネート化合物、(b)ポリカーボネートポリオール化合物、(c)酸性基含有ポリオール化合物、(d)ブロック化剤及び任意の(e)その他のポリオールを反応させて(A)ポリウレタンプレポリマーを製造し、プレポリマーの酸性基を中和した後、水系媒体中に分散させ、(B)鎖延長剤を反応させることにより水性ポリウレタン樹脂分散体を得る、いわゆるプレポリマー法である。本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法としては、分散性の観点から、第2の製造方法が好ましい。
【0038】
具体的には、本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、下記工程を含む方法により得ることができる。
(1)(a)ポリイソシアネート化合物、(b)ポリカーボネートポリオール化合物、(c)酸性基含有ポリオール化合物、任意の(e)その他のポリオール化合物を反応させた後、イソシアナト基に(d)ブロック化剤を結合させ、(A)ポリウレタンプレポリマーを得る工程;
(3)(A)ポリウレタンプレポリマーの酸性基を中和剤で中和する工程;並びに
(4)酸性基が中和された(A)ポリウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させる工程
(5)(A)ポリウレタンプレポリマーと(B)鎖延長剤とを反応させて、水性ポリウレタン樹脂分散体を得る工程。
工程(4)及び(5)は、同時に行ってもよい。また、プレポリマーを水以外の溶媒に分散した後、さらに水と混合し、次いで溶媒を留去して、所望の水性ポリウレタン樹脂分散体を得ることもできる。この場合、水が鎖延長剤としても機能する。
【0039】
(A)ポリウレタンプレポリマーと(B)鎖延長剤との反応は、有機溶媒中で行うことができる。この場合、酸性基を中和した(A)ポリウレタンプレポリマー又は酸性基を中和していない(A)ポリウレタンプレポリマーと、鎖延長剤とを有機溶媒に溶かして反応させる。その後、適宜撹拌等しながら、水系媒体を加え、減圧下で有機溶媒を除去することにより、ポリウレタン樹脂が水系媒体中に分散した水性ポリウレタン樹脂分散体を得ることができる。
【0040】
有機溶媒としては、イソシアナト基と実質的に非反応性であって、かつ親水性(水混和性)の有機溶媒であれば、特に限定されず、例えば、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類、エステル類、テトラヒドロフラン、N−メチルモルホリン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N―エチルピロリドン等のアミド類、アルコール類が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0041】
また、(A)ポリウレタンプレポリマーと(B)鎖延長剤との反応は、触媒の存在下で行うことができる。触媒は、特に限定されず、スズ系触媒(トリメチルスズラウレート、ジブチルスズジラウレート等)や鉛系触媒(オクチル酸鉛等)等の金属と有機及び無機酸の塩、並びに有機金属誘導体、アミン系触媒(トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等)、ジアザビシクロウンデセン系触媒等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、ジブチルスズジラウレートが好ましい。
【0042】
上記のようにして、ポリカーボネートポリオール由来の単位を有するポリウレタン樹脂を含み、固形分基準で43重量%以下の脂環構造の含有割合を有し、かつブロック化剤が結合したイソシアナト基を有する水性ポリウレタン樹脂分散体を調製し、これを水性コーティング剤に使用することができる。製膜性の点から、水性コーティング剤中、水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分濃度は、15〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは、20〜35重量%である。
【0043】
水性ポリウレタン樹脂分散体中の脂環構造の含有割合は、固形分基準で43重量%以下である。43重量%以下であれば、天然ゴムへの密着性を発現できる。好ましくは、水性ポリウレタン樹脂分散体において、ポリウレタン樹脂の脂環構造の含有割合が、5〜43重量%であり、より好ましくは7〜40重量%であり、さらに好ましくは7〜35重量%であり、特に好ましくは20〜35重量%である。
【0044】
水性ポリウレタン樹脂分散体中のブロック化剤でブロック化されているイソシアナト基の含有割合は、固形分基準かつイソシアナト基換算で好ましくは0.1〜3.0重量%であり、0.4〜2.5重量%がより好ましく、0.6〜2.0重量%が特に好ましい。特にブロック化されているイソシアナト基の含有割合が0.4〜2.5重量%であると、天然ゴムへの密着性が良好である。
【0045】
水性ポリウレタン樹脂分散体は、複数種のブロック化剤でブロック化されているイソシアナト基を含有するポリウレタン樹脂の水性分散体を混合して、脂環構造の含有割合、ブロック化剤でブロック化されているイソシアナト基の含有割合等を調整してもよい。
【0046】
さらに、水性ポリウレタン樹脂分散体において、ブロック化剤が結合したイソシアナト基は、ブロック化剤が結合したイソシアネート化合物を配合することによって導入することもできる。例えば、ブロック化剤が結合したイソシアナト基を有しないポリウレタン樹脂の水性分散体に、ブロック化剤が結合したイソシアネート化合物を配合してもよい。ブロック化剤が結合したイソシアネート化合物としては、水分散型ポリイソシアネートが挙げられ、ポリエチレンオキシド鎖によって親水性が付与されたポリイソシアネートをアニオン性分散剤又はノニオン性分散剤で水に分散させたもの等が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート;これらのジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体等のポリイソシアネートの誘導体(変性物)等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのポリイソシアネートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。水分散型ブロックポリイソシアネートは、水分散型ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化剤でブロックさせたものである。ブロック化剤としては、例えば、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、ε−カプロラクタム、ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、1,2,4−トリアゾール、ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチルピラゾール、イミダゾール等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのブロック化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのブロック化剤中、160℃以下の温度、好ましくは150℃以下の温度で開裂するものが望ましい。好適なブロック化剤としては、例えば、ブタノンオキシム、シクロへキサノンオキシム、3,5−ジメチルピラゾール等が挙げられる。これらの中では、3,5−ジメチルピラゾールがより好ましい。水分散型ブロックポリイソシアネートは、例えば、三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートWB−720、タケネートWB−730、タケネートWB−920等;住化バイエルウレタン(株)製、商品名:バイヒジュールBL116、バイヒジュールBL5140、バイヒジュールBL5235、バイヒジュールTPLS2186、デスモジュールVPLS2310等として商業的に容易に入手することができる。ブロック化剤が結合したイソシアネート化合物を配合する場合、天然ゴムへの密着性の点から、好ましくは、固形分基準で0.1〜30重量%であり、1〜10重量%がより好ましい。
【0047】
ブロック化剤が結合したイソシアナト基を有するポリウレタン樹脂を含む水性ポリウレタン樹脂分散体を使用することが好ましく、ポリウレタン樹脂のブロック化剤が結合したイソシアナト基の含有割合が、固形分基準かつイソシアナト基換算で0.1〜3.0重量%であることが好ましく、0.3〜2.5重量%がより好ましく、0.5〜2.0重量%が特に好ましい。
【0048】
水性ポリウレタン樹脂分散体において、ポリウレタン樹脂のウレタン結合とウレア結合の含有割合の合計は、固形分基準で7〜18重量%であることが好ましい。ウレタン結合とウレア結合の含有割合の合計がこの範囲であると、塗膜にタックがなく、ゴムへの密着性も良好である。ウレタン結合とウレア結合の含有割合の合計は、好ましくは7〜15重量%であり、より好ましくは8〜14重量%である。
【0049】
水性ポリウレタン樹脂分散体において、ポリウレタン樹脂のカーボネート結合の含有割合は、固形分基準で15〜40重量%であることが好ましい。カーボネート結合の含有割合がこの範囲であると、天然ゴムへの密着性が良好である。カーボネート結合の含有割合は、好ましくは15〜35重量%であり、より好ましくは18〜30重量%である。
【0050】
水性ポリウレタン樹脂分散体の酸価は、固形分基準で10〜40mgKOH/gであることが好ましい。酸価がこの範囲であると、樹脂の水への分散性が良好である。酸価は、好ましくは14〜30mgKOH/gであり、より好ましくは15〜26mgKOH/gである。
【0051】
水性ポリウレタン樹脂分散体において、ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、15,000〜80,000が好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、塗膜のべたつきがなく、ゴムへの密着性も良好である。重量平均分子量は、好ましくは20,000〜70,000であり、より好ましくは25,000〜60,000である。
【0052】
<その他の添加剤>
本発明の水性コーティング剤には、水性ポリウレタン樹脂分散体に加えて、種々の添加剤を添加することもできる。添加剤としては、架橋剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、防かび剤、防錆剤、つや消し剤、難燃剤、揺変剤、滑剤(例えばシリコーンオイル)、帯電防止剤(例えばカーボンブラック)、導電性添加剤、減粘剤、増粘剤、希釈剤、顔料、染料、香料、紫外線吸収剤、光安定剤(例えばヒンダードアミン系光安定剤(HALS))、酸化防止剤、有機充填剤(例えば樹脂ビーズ)、無機充填材(例えば無機粒子)、pH調整剤、融合助剤、レオロジー変性剤、界面活性剤、凍結融解添加剤、湿潤剤、ウェットエッジ助剤等が挙げられる。
【0053】
摩擦の点から、無機粒子及び樹脂ビーズの1種以上を添加することが好ましい。これらは、樹脂を100重量%とした場合、90重量%以下で配合することができ、好ましくは0.1〜50重量%である。無機粒子としては、シリカ微粒子や顔料が挙げられる。シリカ微粒子としては、特に限定はなく、粉末状のシリカ、コロイダルシリカ等の公知のシリカ微粒子を使用することができる。市販の粉末状のシリカ微粒子としては、例えば、エボニックデグサ製エースマットTS100、OK607、日本アエロジル(株)製アエロジル50、200、旭硝子(株)製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製E220A、E220、富士シリシア(株)製SYLYSIA470、日本板硝子(株)製SGフレ−ク等を挙げることができる。
顔料としては、有機顔料及び無機顔料が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。有機顔料としては、例えば、ベンジジン、ハンザイエロー等のアゾ顔料、アゾメチン顔料、メチン顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イミノイソインドリン顔料、イミノイソインドリノン顔料、キナクリドンレッドやキナクリドンバイオレット等のキナクリドン顔料、フラバントロン顔料、インダントロン顔料、アントラピリミジン顔料、カルバゾール顔料、モノアリーライドイエロー、ジアリーライドイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ、キノフタロン顔料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの有機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、三酸化アンチモン、亜鉛華、リトポン、鉛白、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化鉄、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黄鉛、モリブデン赤、フェロシアン化第二鉄(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、クロム酸鉛等をはじめ、雲母(マイカ)、クレー、アルミニウム粉末、タルク、ケイ酸アルミニウム等の扁平形状を有する顔料、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム等の体質顔料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの無機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
樹脂ビーズとしては、ポリスチレン類、ポリアミド類、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン類、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリアクリル酸類、ポリアクリル酸エステル類、ポリアクリロニトリル類及びエポキシ樹脂の1種又は2種以上の混合物である有機ポリマーから形成される。ポリスチレン類としては、例えばポリスチレンホモポリマー、ポリブタジエンゴム又はスチレンブタジエンゴムとポリスチレンとをブレンド又はグラフトした衝撃強度改良ポリスチレン、ABS共重合ポリマーが挙げられ、ポリアミド類としては、例えばナイロン6、ナイロン66ポリマーが挙げられ、ポリオレフィン類としては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられ、ポリエステル類としては、例えばポリエチレンテレフタレートが挙げられ、ポリアクリル酸類としては、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びこれらの共重合体、さらにはこれらとポリアクリル酸エステル類との共重合体等が挙げられ、ポリアクリル酸エステル類としては、例えばポリメチルメタクリル酸、ポリエチルメタクリル酸等が挙げられ、ポリアクリロニトリル類としては、ポリアクリロニトロル、アクリロニトリルとメタクリロニトリル、アクリル酸メチル等との共重合体等が挙げられる。低価格性の面からは、特にポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、ポリアミドが好ましく、ポリウレタンがより好ましい。樹脂ビーズの形状は、球状、円盤状、破断面や突起を有する形状、その他の不定形状のいずれであってもよく、一定形状で製造の容易さから、球形が好ましい。
【0055】
濡れ性の点から、界面活性剤を添加することが好ましい。これらは、樹脂を100重量%とした場合、5重量%以下で配合することができ、好ましくは0.05〜3重量%である。界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤が挙げられ、ポリシロキサン系化合物等が好ましく用いられ、例えば、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。好ましくはビックケミー・ジャパン株式会社より、シリコン系添加剤BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348等が利用可能である。
【0056】
架橋剤としては、カルボジイミド、メラミン、エポキシ、オキサゾリン等が使用できる。架橋剤の添加量としては、固形分に対して、0.3〜15重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましい。これらの好ましい添加量とすることにより、コーティング層表面のタック性を抑制しながら、基材との密着性を向上させることができる。
【0057】
また、その他の樹脂のエマルジョンやディスパージョンを添加することもできる。その他の樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、カルボキシ変性スチレン−ブタジエンラテックス、エチレン−酢酸ビニル樹脂又はその部分鹸化物や全鹸化物等が挙げられる。
【0058】
また、その他の樹脂は、1種以上の親水性基を有することが好ましい。親水性基としては、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基等が挙げられる。
【0059】
その他の樹脂は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0060】
ポリエステル樹脂は、通常、酸成分とアルコ−ル成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を使用することができる。
ポリエステル樹脂の水酸基価は、10〜300mgKOH/g程度が好ましく、50〜250mgKOH/g程度がより好ましく、80〜180mgKOH/g程度が更に好ましい。ポリエステル樹脂の酸価は、1〜200mgKOH/g程度が好ましく、15〜100mgKOH/g程度がより好ましく、25〜60mgKOH/g程度が更に好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、500〜500,000が好ましく、1,000〜300,000がより好ましく、1,500〜200,000が更に好ましい。
【0061】
アクリル樹脂としては、水酸基含有アクリル樹脂が好ましい。水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとを、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の既知の方法によって共重合させることにより製造できる。
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;これらのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0062】
水酸基含有アクリル樹脂は、アニオン性官能基を有することが好ましい。アニオン性官能基を有する水酸基含有アクリル樹脂については、例えば、重合性不飽和モノマーの1種として、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性官能基を有する重合性不飽和モノマーを用いることにより製造できる。
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、水性ポリウレタン樹脂分散体の貯蔵安定性や得られるコーティング層の耐水性等の観点から、1〜200mgKOH/g程度が好ましく、2〜100mgKOH/g程度がより好ましく、3〜60mgKOH/g程度が更に好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂がカルボキシル基等の酸基を有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂の酸価は、得られるコーティング層の耐水性等の観点から、1〜200mgKOH/g程度が好ましく、2〜150mgKOH/g程度がより好ましく、5〜100mgKOH/g程度が更に好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、1,000〜200,000が好ましく、2,000〜100,000がより好ましく、更に好ましくは3,000〜50,000の範囲内であることが好適である。
【0063】
ポリエーテル樹脂としては、エーテル結合を有する重合体又は共重合体が挙げられ、例えばポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、ポリオキシブチレン系ポリエーテル、ビスフェノールA又はビスフェノールF等の芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテル等が挙げられる。
【0064】
ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノール化合物から製造された重合体が挙げられ、例えばビスフェノールA・ポリカーボネート等が挙げられる。
【0065】
ポリウレタン樹脂としては、アクリル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等の各種ポリオール成分とポリイソシアネートとの反応によって得られるウレタン結合を有する樹脂が挙げられる。
【0066】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール化合物とエピクロルヒドリンの反応によって得られる樹脂等が挙げられる。ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFが挙げられる。
【0067】
アルキド樹脂としては、フタル酸、テレフタル酸、コハク酸等の多塩基酸と多価アルコールに、更に油脂・油脂脂肪酸(大豆油、アマニ油、ヤシ油、ステアリン酸等)、天然樹脂(ロジン、コハク等)等の変性剤を反応させて得られたアルキド樹脂が挙げられる。
【0068】
ポリオレフィン樹脂としては、オレフィン系モノマーを適宜他のモノマーと通常の重合法に従って重合又は共重合することにより得られるポリオレフィン樹脂を、乳化剤を用いて水分散するか、あるいはオレフィン系モノマーを適宜他のモノマーと共に乳化重合することにより得られる樹脂が挙げられる。また、場合により、前記のポリオレフィン樹脂が塩素化されたいわゆる塩素化ポリオレフィン変性樹脂を用いてもよい。
【0069】
オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ドデセン等のα−オレフィン;ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、スチレン類、等の共役ジエン又は非共役ジエン等が挙げられ、これらのモノマーは、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0070】
オレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等が挙げられ、これらのモノマーは、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0071】
カルボキシ変性スチレン−ブタジエンラテックスとは、スチレン、ブタジエンモノマーを主成分とし、これに(メタ)アクリル酸やフマール酸等のカルボキシル基を有するビニルモノマーを数%含有するモノマー組成物を共重合することによって得られる合成ラテックスである。
【0072】
水性コーティング剤は、水性ポリウレタン樹脂分散体に、任意の添加剤を配合することによって調製することができる。
【0073】
本発明のゴム積層体は、上記の水性コーティング剤から形成されるコーティング層とゴム基材とを備えている。コーティング層は、ゴム基材の少なくとも一部に積層されていればよい。例えば、ゴム基材の片面又は両面に積層されていることができ、これらの面の全面積を覆っていても、一部を覆っていてもよい。
【0074】
ゴム基材を構成するゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)等が挙げられ、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)及び天然ゴム(NR)から選ばれる1種以上であることが好ましく、より好ましくはクロロプレンゴム(CR)及び天然ゴム(NR)から選ばれる1種以上である。
【0075】
コーティング層を設けるゴム基材は、どのような形状のものでもよく、シート状基材、棒状基材等が挙げられる。具体的には、ゴムローラ、自動車のタイヤ、ウェザーストリップやワイバープレード、靴、サンダル、ゴム長靴、ゴム手袋、機械や建築物の防振部材等が挙げられる。ゴム基材は、老化防止剤、加硫促進剤、紫外線吸収剤、滑剤等の種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0076】
ゴム基材は、未加硫ゴム、途中まで加硫した一次加硫ゴム、目的の架橋密度まで加硫した加硫ゴムのいずれでもよい。ゴム基材として、未加硫ゴムや一次加硫ゴムを用いる場合は、水性コーティング剤を塗布した後、加熱することにより、コーティング層の形成と同時に加硫や二次加硫を行ってもよい。
【0077】
ゴム基材の成形方法は、特に限定されず、プレス成形や射出成形、押出成形等の種々の方法を用いて成形することができる。
【0078】
本発明のゴム積層体は、ゴム基材の表面に、上記の水性コーティング剤を適用した後、加熱してコーティング層を形成することにより製造することができる。
【0079】
ゴム基材の表面には、シリコーン変性(メタ)アクリル系エマルジョンや塩素化ポリオレフィン等を含むプライマー組成物で処理されていてもよく、このような処理をされた表面に水性コーティング剤を適用して、コーティング層を形成することにより、ゴム基材とコーティング層との間にプライマー層を備えたゴム積層体を製造することができる。
【0080】
基材として未加硫ゴムを用いる場合、その表面に、上記の水性コーティング剤を適用した後、加熱して、コーティング層を形成するのと同時に加硫させることもできる。表面は、プライマー組成物で処理されていてもよい。
【0081】
水性コーティング剤を適用する表面としては、特に限定されないが、脱脂された表面であることが好ましい。脱脂の方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0082】
水性コーティング剤の適用方法としては、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディッピング、ロールコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティング等の公知の方法を用いることができる。
【0083】
水性コーティング剤を適用した後、加熱してコーティング層を形成することができる。加熱工程は、乾燥工程を兼ねることができる。あるいは、加熱に先立ち、乾燥工程を別途設けてもよく、常温乾燥法や減圧乾燥法を採用することができる。
【0084】
加熱は、40〜250℃で行なうことができ、好ましくは80〜200℃である。加熱時間は、適宜、選択することができ、例えば、1〜60分とすることができる。加熱により、水性コーティング剤中のイソシアナト基に結合したブロック化剤が外れ、架橋反応を進行させて、硬度に優れたコーティング層を得ることができる。加熱工程は、乾燥工程を兼ねることができる。あるいは、加熱に先立ち、乾燥工程を別途設けてもよく、常温乾燥法や減圧乾燥法を採用することができる。
【0085】
また、未加硫ゴム成形体にコーティング剤を塗布し、コーティング剤の乾燥後又は乾燥と同時にゴム成形体を加硫させて、ゴム積層体を得ることもできる。
さらに、一次加硫を行ったゴム成形体にコーティング剤を塗布し、コーティング剤の乾燥後又は乾燥と同時にゴム成形体を二次加硫させて、ゴム積層体を得ることもできる。
【0086】
通常、一次加硫は、二次加硫よりも低い温度又は短い時間で行われる。一次加硫の温度は特に制限されないが、150℃以下等の比較的低い温度で行われることが好ましい。また、一次加硫の時間も特に制限されないが、1〜30分間が好ましい。
一次加硫の方法としては、射出成形法により成形した後に型内で加熱加硫する方法や、押出成形法により成形した後に加熱炉中で加熱加硫する方法や、熱プレス法により成形した後に型内で加熱加硫する方法等が挙げられる。
【0087】
コーティング層の厚さは、特に限定されず、1〜300μmとすることができ、好ましくは2〜100μmであり、より好ましくは3〜40μmである。
【実施例】
【0088】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
なお、物性の測定は、以下の通り行った。
(1)水酸基価:JIS K 1557のB法に準拠して測定した。
(2)遊離イソシアナト基含有割合:ウレタン化反応終了後の反応混合物を0.5gサンプリングして、0.1モル/L(リットル)のジブチルアミン−テトラヒドロフラン(THF)溶液10mLとTHF20mLの混合溶液に加えて、0.1モル/Lの塩酸で未消費のジブチルアミンを滴定した。この滴定値とブランク実験との差より反応混合物中に残存するイソシアナト基のモル濃度を算出した。モル濃度をイソシアナト基の重量分率に換算して遊離イソシアナト基含有割合とした。なお、滴定に使用した指示薬はブロモフェノールブルーである。
(3)ウレタン結合の固形分基準の含有割合、ウレア結合の固形分基準の含有割合:水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合からウレタン結合及びウレア結合のモル濃度(モル/g)を算出し、重量分率に換算したものを表記した。重量分率は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とする。水性ポリウレタン樹脂分散体0.3gを厚さ0.2mmでガラス基板上に塗布し、140℃で4時間加熱乾燥した後に残った重量を測定し、これを乾燥前の重量で割ったものを固形分濃度とした。水性ポリウレタン樹脂分散体の全重量と固形分濃度の積を固形分重量として、前記重量分率を算出した。
(4)カーボネート結合の固形分基準の含有割合:水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合からカーボネート結合のモル濃度(モル/g)を算出し重量分率に換算したものを表記した。重量分率は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とし、前記ウレタン結合の固形分基準の含有割合と同様の方法で算出した。
(5)脂環構造の固形分基準の含有割合:水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合から算出した脂環構造の重量分率を表記した。重量分率は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とし、前記ウレタン結合の固形分基準の含有割合と同様の方法で算出した。
(6)酸価:水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合からカルボキシル基のモル濃度(モル/g)を算出し、サンプル1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの重量(mgKOH/g)に換算したものを表記した。サンプル重量は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とし、前記ウレタン結合の固形分基準の含有割合と同様の方法で算出した。
(7)水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂の重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したものであり、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から求めた換算値を記した。
(8)水性ポリウレタン樹脂分散体中の固形分基準のブロック化剤が結合したイソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算):ブロック化剤の仕込みモル量をイソシアナト基の重量に換算し、水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分重量で割った割合を表記した。水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分重量は前記ウレタン結合の固形分基準の含有割合と同様の方法で算出した。
(9)コーティング層の密着性は、次のようにして評価した。実施例・比較例の水性ポリウレタン樹脂分散体 100gにACEMATT TS100(乾式シリカ、メジアン径10μm、エボニック製) 1.5g、BYK−345(界面活性剤(ポリエーテル変性シロキサン)、ビックケミー製) 0.1gを添加し、水性コーティング剤とした。各ゴムシートの表面を、アセトンをしみこませた脱脂綿で拭いて脱脂した後、調製した水性コーティング剤をバーコーターで塗布し、加硫ゴムと未加硫ゴム(加硫前)は150℃で20分間加熱乾燥し、一次加硫後二次加硫前のゴム(加硫途中)は150℃で5分間の加硫後、水性コーティング剤を塗布し、150℃で20分間加熱乾燥し、得られたコーティング層(乾燥コーティング層の厚さ6μm)を用いて碁盤目剥離試験を行った。コーティング層に20mm×20mmの面積に縦横2mm間隔で切り目を入れ、粘着テープを貼った後、剥がしたときにゴムシートの表面に残っているマスの数を目視で数えて評価した。100個中15個が残っていた場合を15/100と記載した。
(10)各ゴムシートの表面を、アセトンをしみこませた脱脂綿で拭いて脱脂した後、水性コーティング剤をバーコーターで塗布し、150℃で20分間加熱乾燥し、48時間放置後に「HEIDON トライボギア 3Dミューズ TYPE:37」(新東科学社製)を用いて室温で静摩擦係数を測定した。
【0089】
[実施例1]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(1)の製造〕
攪拌機、還流冷却管及び温度計を挿入した反応容器に、ETERNACOLL(登録商標) UH−200(宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2000;水酸基価56.1mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)272g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)18.5g及びN−メチルピロリドン(NMP)176gを窒素気流下で仕込んだ。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を125g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を0.33g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。その後3,5−ジメチルピラゾール(DMPZ)10.4gを注入し、同温度で1.5時間攪拌を続けて、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含量は1.78重量%であった。反応混合物にトリエチルアミン13.9gを添加・混合したものの中から564gを抜き出して、強攪拌下のもと水870gの中に加えた。次いで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液36.5gを加えて鎖延長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体(1)を得た。水性ポリウレタン樹脂分散体(1)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0090】
[実施例2]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(3)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL UM90(1/3)(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量894;水酸基価125.5mgKOH/g;1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,6−ヘキサンジオール(モル比で1:3)と炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)210g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)31.6g及びN−メチルピロリドン(NMP)149gを窒素気流下で仕込んだ。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を208g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を0.34g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。その後メチルエチルケトンオキシム(MEKO)15.9gを注入し、同温度で1.5時間攪拌を続けて、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含量は3.01重量%であった。反応混合物にトリエチルアミン24.0gを添加・混合したものの中から603gを抜き出して、強攪拌下のもと水835gの中に加えた。次いで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液65.1gを加えて鎖延長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体(2)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(2)の固形分基準のウレタン結合の含有割合は11.7重量%、固形分基準のウレア結合の含有割合は5.1重量%、固形分基準のカーボネート結合の含有割合は15.2重量%、固形分基準のブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)は1.6重量%、酸価は27.9mgKOH/g、重量平均分子量は28×10
3、固形分基準の脂環構造の含有割合は33.7重量%であった。
実施例1で得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(1)80gと、上記水性ポリウレタン樹脂分散体(2)20gをディスパーサーにて混合して、水性ポリウレタン樹脂分散体(3)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(3)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0091】
[実施例3]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(5)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL(登録商標) UC−100(宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量1000;水酸基価112.2mgKOH/g;1,4−シクロヘキサンジメタノールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)153g、ポリテトラメチレングリコールエーテル27g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)22.4g及びN−エチルピロリドン(NEP)116gを窒素気流下で仕込んだ。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を144g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を0.3g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含量は3.93重量%であった。反応混合物にトリエチルアミン16.8gを添加・混合したものの中から436gを抜き出して、強攪拌下のもと水750gの中に加えた。次いで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液34.5gを加えて鎖延長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体(4)を得た。得られた水性コーティング剤の固形分基準のウレタン結合の含有割合は10.6重量%、固形分基準のウレア結合の含有割合は6.5重量%、固形分基準のカーボネート結合の含有割合は14.9重量%、固形分基準のブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)は0.0重量%、酸価は25mgKOH/g、重量平均分子量は200×10
3、固形分基準の脂環構造の含有割合は44.8重量%であった。
実施例1で得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(1)80gと、上記水性ポリウレタン樹脂分散体(4)20gをディスパーサーにて混合して、水性ポリウレタン樹脂分散体(5)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(5)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0092】
[比較例1]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(6)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL(登録商標) UH−200(宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2011;水酸基価55.8mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)301g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)16.5g及びN−エチルピロリドン(NEP)135gを窒素気流下で仕込んだ。イソホロンジイソシアネート(IPDI)を92.0g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を0.31g加えて80℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。ウレタン化反応終了時の遊離NCO基含量は1.67重量%であった。反応混合物にトリエチルアミン12.4gを添加・混合したものの中から495gを抜き出して、強攪拌下のもと水745gの中に加えた。次いで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液29.4gを加えて鎖延長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体(6)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(6)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0093】
[比較例2]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(7)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL(登録商標) PH−200(宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2000;水酸基価56.1mgKOH/g;1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール(モル比で1:1)と炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)301g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)16.3g及びN−エチルピロリドン(NEP)132gを窒素気流下で仕込んだ。イソホロンジイソシアネート(IPDI)を90.0g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を0.30g加えて80℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。ウレタン化反応終了時の遊離NCO基含量は1.74重量%であった。反応混合物にトリエチルアミン12.0gを添加・混合したものの中から506gを抜き出して、強攪拌下のもと水758gの中に加えた。次いで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液31.3gを加えて鎖延長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体(7)を得た。得られた水性コーティング剤(水性ポリウレタン樹脂分散体(7))のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0094】
[実施例4]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(8)の製造〕
水性ポリウレタン樹脂分散体(6)100gとバイヒジュールBL5140(ブロック化ポリイソシアネート、住化バイエルウレタン社製)2gを混合して水性ポリウレタン樹脂分散体(6)と水性ブロック化ポリイソシアネートとからなる水性ポリウレタン樹脂分散体(8)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0095】
[比較例3]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(9)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL(登録商標) UM−90(3/1)(宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量916;水酸基価122.5mgKOH/g;1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,6−ヘキサンジオール(モル比で3:1)と炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)1500g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)220g及びN−メチルピロリドン(NMP)1350gを窒素気流下で仕込んだ。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を1450g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を2.6g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。ウレタン化反応終了時の遊離NCO基含量は3.97重量%であった。反応混合物にトリエチルアミン149gを添加・混合したものの中から4340gを抜き出して、強攪拌下のもと水6900g及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。次いで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体(9)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(9)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0096】
[比較例4]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(10)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL(登録商標) UM−90(1/3)(宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量894;水酸基価125.5mgKOH/g;1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,6−ヘキサンジオール(モル比で1:3)と炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)180g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)27.1g及びN−メチルピロリドン(NMP)163gを窒素気流下で仕込んだ。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を177g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を0.3g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。ウレタン化反応終了時の遊離NCO基含量は3.73重量%であった。反応混合物にトリエチルアミン20.7gを添加・混合したものの中から523gを抜き出して、強攪拌下のもと水915gの中に加えた。次いで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液73.2gを加えて鎖延長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体(10)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(10)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0097】
[実施例5]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(11)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL(登録商標) UH−200(宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2007;水酸基価55.9mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)128g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)8.88g及びN−メチルピロリドン(NMP)63.4gを窒素気流下で仕込んだ。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を58.6g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を0.18g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。その後3,5−ジメチルピラゾール(DMPZ)2.06gを注入し、同温度で1.5時間攪拌を続けて、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含量は2.38重量%であった。反応混合物にトリエチルアミン6.55gを添加・混合したものの中から232gを抜き出して、強攪拌下のもと水305gの中に加えた。次いで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液20.0gを加えて鎖延長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体(11)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(11)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0098】
[比較例5]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(12)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL(登録商標) UM90(3/1)(宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量897;水酸基価125.1mgKOH/g;1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,6−ヘキサンジオール(モル比で3:1)と炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)211g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)31.8g及びN−メチルピロリドン(NMP)149gを窒素気流下で仕込んだ。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を207g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を0.36g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。その後メチルエチルケトンオキシム(MEKO)16.2gを注入し、同温度で1.5時間攪拌を続けて、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含量は2.79重量%であった。反応混合物にトリエチルアミン24.3gを添加・混合したものの中から570gを抜き出して、強攪拌下のもと水807gの中に加えた。次いで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液59.5gを加えて鎖延長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体(12)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(12)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0099】
[実施例6]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(13)の製造〕
水性ポリウレタン樹脂分散体(13)として、実施例2で得た水性ポリウレタン樹脂分散体(2)を用いた。水性ポリウレタン樹脂分散体(2)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0100】
[実施例7]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(14)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL UH−300(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2906;水酸基価38.6mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)330g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)21.6g及びN−メチルピロリドン(NMP)159gを窒素気流下で仕込んだ。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を125g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を0.35g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。その後3,5−ジメチルピラゾール(DMPZ)10.9gを注入し、同温度で1.5時間攪拌を続けて、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含量は1.85重量%であった。反応混合物にトリエチルアミン16.3gを添加・混合したものの中から600gを抜き出して、強攪拌下のもと水850gの中に加えた。次いで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液41.7gを加えて鎖延長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体(14)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(14)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0101】
[実施例8]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(15)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL UH−300(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2906;水酸基価38.6mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)330g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)20.3g及びN−メチルピロリドン(NMP)151gを窒素気流下で仕込んだ。イソホロンジイソシアネート(IPDI)を102g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を0.35g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。その後3,5−ジメチルピラゾール(DMPZ)6.76gを注入し、同温度で1.5時間攪拌を続けて、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含量は1.21重量%であった。反応混合物にトリエチルアミン15.3gを添加・混合したものの中から585gを抜き出して、強攪拌下のもと水830gの中に加えた。次いで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液26.7gを加えて鎖延長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体(15)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(15)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0102】
[実施例9]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(16)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL UH−100(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量1000;水酸基価112.2mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)250g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)21.0g及びN−メチルピロリドン(NMP)149gを窒素気流下で仕込んだ。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を176g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を0.35g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。その後3,5−ジメチルピラゾール(DMPZ)9.34gを注入し、同温度で1.5時間攪拌を続けて、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含量は2.92重量%であった。反応混合物にトリエチルアミン15.8gを添加・混合したものの中から590gを抜き出して、強攪拌下のもと水840gの中に加えた。次いで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液64.6gを加えて鎖延長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体(16)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(16)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、ブロック化イソシアナト基の含有割合(イソシアナト基換算)、酸価、重量平均分子量、及び脂環構造の含有割合を表1に記す。
【0103】
【表1】
【0104】
表1中、各略語は、下記のものを表す。
H12−MDI:4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)
IPDI:イソホロンジイソシアネート
UH−100:宇部興産製 ETERNACOLL UH−100
UC100:宇部興産製 ETERNACOLL UC100
UH−200:宇部興産製 ETERNACOLL UH−200
PH−200:宇部興産製 ETERNACOLL PH−200
UH−300:宇部興産製 ETERNACOLL UH−300
UM90(3/1):宇部興産製 ETERNACOLL UM90(3/1)
UM90(1/3):宇部興産製 ETERNACOLL UM90(1/3)
BI:住化バイエルウレタン社製 バイヒジュールBL5140
【0105】
各実施例及び比較例で得られた水性ポリウレタン樹脂分散体を用いて、(9)コーティング層の密着性の評価で記載したようにして、各水性コーティング剤を調製し、EPDM、NBR、CR、NRからなるゴムシートの表面を、アセトンをしみこませた脱脂綿で拭いて脱脂し、乾燥後のコーティング層が約6μmとなるように、各水性コーティング剤を、バーコーターを用いて塗布し、150℃で20分乾燥させ、ゴム積層体を得た。
得られたゴム積層体において、水性コーティング剤のコーティング層と、ゴムシートとの密着性を評価した。また、コーティング層表面の静摩擦係数を測定した。結果を併せて表2に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
表2中、各略語は、下記のものを表す。
NBR:ニトリルゴム(コーティング層なしの静摩擦係数:0.787)
CR:クロロプレンゴム(コーティング層なしの静摩擦係数:0.462)
NR:天然ゴム(コーティング層なしの静摩擦係数:0.439)
EPDM:エチレン−プロピレン−ジエンゴム(コーティング層なしの静摩擦係数:1.190以上)
【0108】
実施例1、4及び6において、コーティング層を設ける時期を変更して、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)と、天然ゴム(NR)との密着性を評価した。結果を表3に示す。条件は、上記の密着性評価方法に記載したとおりである。
【0109】
【表3】