特許第6187504号(P6187504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187504
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】作業車輌の原動部
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/12 20060101AFI20170821BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20170821BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20170821BHJP
   F01P 7/08 20060101ALI20170821BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   F01P11/12 F
   B60K11/04 D
   F01P11/10 D
   F01P7/08 C
   F01P11/10 J
   A01D41/12 E
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-37036(P2015-37036)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-160755(P2016-160755A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】五島 一実
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】岩本 浩
(72)【発明者】
【氏名】釘宮 啓
(72)【発明者】
【氏名】土居原 純二
(72)【発明者】
【氏名】廣田 幹司
(72)【発明者】
【氏名】貝梅 光樹
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−100025(JP,U)
【文献】 実開平02−115023(JP,U)
【文献】 実開平03−005928(JP,U)
【文献】 実開平03−032122(JP,U)
【文献】 実公平07−016028(JP,Y2)
【文献】 実開昭61−155633(JP,U)
【文献】 特開平09−039586(JP,A)
【文献】 特開2010−195368(JP,A)
【文献】 米国特許第3309847(US,A)
【文献】 米国特許第3155473(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/10、12
F01P 7/08
A01D 41/12
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)と塵埃を濾過する濾過体(8B)の間にラジエータ(9)を設け、該ラジエータとエンジン(E)間には、エンジン(E)から駆動力の伝達を受けて回転する冷却ファン(10)を配置した作業車輌の原動部において、前記エンジン(E)から冷却ファン(10)への駆動力の伝達を接続および遮断するクラッチ(C)を設け、前記濾過体(8B)の内側から外側へ送風する送風装置(17)を、前記ラジエータ(9)と濾過体(8B)の間に形成された空間部(11)に進入自在に設け、前記送風装置(17)が前記空間部(11)に進入した時点から、設定時間遅れて前記クラッチ(C)が遮断されて冷却ファン(10)が停止すると共に前記送風装置(17)からの送風が開始されるように連繋し、前記送風装置(17)が前記空間部(11)に進入した状態で、前記濾過体(8B)を迂回して冷却ファン(10)へ外気を導入する迂回経路(12)を設けたことを特徴とする作業車輌の原動部。
【請求項2】
前記迂回経路(12)には、前記冷却ファン(10)の回転で発生する負圧によって開放される弁体(13)を備えた請求項1に記載の作業車輌の原動部。
【請求項3】
前記送風装置(17)が前記空間部(11)に進入した状態で、該送風装置(17)の外気吸入口(18c)が機体外部に連通するダクト(15)に接続される構成とした請求項1または請求項2に記載の作業車輌の原動部。
【請求項4】
前記ダクト(15)には閉塞方向に付勢された開閉弁(15b)を備え、前記送風装置(17)が前記空間部(11)に進入するときに、該送風装置(17)側の部材によって前記開閉弁(15b)が押し開かれる構成とした請求項3に記載の作業車輌の原動部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータの外側に設置された濾過体に付着する藁屑、塵埃を除去し、エンジンのオーバーヒートを防止する作業車輌の原動部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイン等の作業車輌には水冷式エンジンが使用されている。エンジンにより温度上昇した冷却水は、ラジエータを循環することにより冷却された後、再びエンジンを循環する。
【0003】
コンバインは、穀稈の刈取、脱穀、選別、排藁処理を行う過程で、前部の刈取装置からは、立毛穀稈の切断や搬送によって藁屑や塵埃が発生し、後部からは、脱穀処理や脱穀後の排稈切断処理によって発生した藁屑、塵埃等を排出するので、コンバインの機体周囲には多量の藁屑や塵埃が巻き上げられる。この巻き上げられた藁屑等がエンジンルームのカバーに装着された濾過体に付着し、これらの濾過体が目詰まった場合、濾過体の外側から内側に十分な外気を吸入することができなくなり、ラジエータの冷却効率が低下し、場合によってはエンジンがオーバヒートする恐れがある。
【0004】
上記問題を解決するため、特許文献1には、テンション操作体を移動することによりラジエータの内側に設けたファンの回転方向を正転方向と逆転方向に切換え、このファンによる送風方向を吸入方向と吹き出し方向に切り換えて、ラジエータの冷却とエンジンルームのカバーの濾過体に付着した藁屑、塵埃等の除去を行なう構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001―263063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された構成では、ファンの翼の断面形状からして、ファンの正転時における外気のエンジンルーム内への吸入量に比べて、ファンの逆転時における内気の吹き出し量が少ないため、エンジンルームのカバーに装着された濾過体に付着した藁屑、塵埃等を十分除去することができず、除去できない藁屑、塵埃等により濾過体が目詰まりを起こし、ラジエータの冷却効率が低下し、その結果、エンジンがオーバーヒートするという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、かかる問題点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
【0009】
請求項1に記載の発明は、エンジン(E)と塵埃を濾過する濾過体(8B)の間にラジエータ(9)を設け、該ラジエータとエンジン(E)間には、エンジン(E)から駆動力の伝達を受けて回転する冷却ファン(10)を配置した作業車輌の原動部において、前記エンジン(E)から冷却ファン(10)への駆動力の伝達を接続および遮断するクラッチ(C)を設け、前記濾過体(8B)の内側から外側へ送風する送風装置(17)を、前記ラジエータ(9)と濾過体(8B)の間に形成された空間部(11)に進入自在に設け、前記送風装置(17)が前記空間部(11)に進入した時点から、設定時間遅れて前記クラッチ(C)が遮断されて冷却ファン(10)が停止すると共に前記送風装置(17)からの送風が開始されるように連繋し、前記送風装置(17)が前記空間部(11)に進入した状態で、前記濾過体(8B)を迂回して冷却ファン(10)へ外気を導入する迂回経路(12)を設けたことを特徴とする作業車輌の原動部としたものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記迂回経路(12)には、前記冷却ファン(10)の回転で発生する負圧によって開放される弁体(13)を備えた請求項1に記載の作業車輌の原動部としたものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記送風装置(17)が前記空間部(11)に進入した状態で、該送風装置(17)の外気吸入口(18c)が機体外部に連通するダクト(15)に接続される構成とした請求項1または請求項2に記載の作業車輌の原動部としたものである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記ダクト(15)には閉塞方向に付勢された開閉弁(15b)を備え、前記送風装置(17)が前記空間部(11)に進入するときに、該送風装置(17)側の部材によって前記開閉弁(15b)が押し開かれる構成とした請求項3に記載の作業車輌の原動部としたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、送風装置(17)がラジエータ(9)と濾過体(8B)の間の空間部(11)に進入した時点から、設定時間遅れてクラッチ(C)が遮断されて冷却ファン(10)が停止すると共に、送風装置(17)からの送風が開始されて、濾過体(8B)の内側から外側へ送風されることにより、濾過体(8B)に付着していた藁屑等の塵埃を除去し、濾過体(8B)の目詰まりを少なくして冷却ファン(10)による外気の吸入効率を高め、エンジン(E)の出力低下やオーバーヒートを防止することができる。
【0014】
この際、送風装置(17)が空間部(11)に進入してから冷却ファン(10)が停止するまでの間、冷却ファン(10)の回転による負圧が発生するが、濾過体(8B)を迂回する迂回回路(12)から冷却ファン(10)へ外気が導入されるので、エンジン(E)のオーバーヒートを少なくすることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明の効果に加えて、濾過体(8B)を迂回して冷却ファン(10)へ外気を導入する迂回経路(12)に、冷却ファン(10)の回転で発生する負圧によって開放される弁体(13)を備えているので、冷却ファン(10)が停止すると負圧の発生が小さくなって弁体(13)が閉まり、この迂回回路(12)からの塵埃の侵入を防止することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、上記請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加えて、送風装置(17)が空間部(11)に進入した状態で、この送風装置(17)の外気吸入口(18c)が機体外部に連通するダクト(15)に接続されるので、送風装置(17)からの送風量を確保でき、濾過体(8B)に付着した塵埃の除去能力を高めることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、上記請求項3に記載の発明の効果に加えて、送風装置(17)が空間部(11)に進入していない状態では、開閉弁(15b)によってダクト(15)を閉じ、冷却ファン(10)の回転で生じる負圧によって、ダクト(15)から塵埃が吸入されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】コンバインの右側面図である。
図2】コンバインの平面図である。
図3】通常作業状態における原動部の説明用背面図である。
図4】通常作業状態における原動部の側面図である。
図5】塵埃除去状態における原動部の説明用背面図である。
図6】塵埃除去状態における原動部の側面図である。
図7】濾過体を取り外した状態の原動部の側面図である。
図8】送風装置の側面図である。
図9】送風装置の背面図である。
図10】送風装置を昇降案内するレールの背面図である。
図11】送風装置およびダクトを断面して示す説明図である。
図12】ダクトの断面図である。
図13】ダクトの側面図である。
図14】自動制御用のブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。なお、理解を容易にするために、操縦席に搭乗した操縦者から見て、前方を前側、後方を後側、右手側を右側、左手側を左側として便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
(コンバインの構成)
図1,2に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下方に、左右一対のクローラからなる走行装置2を設け、機体フレーム1の上部左側には、脱穀・選別を行う脱穀装置3を設け、脱穀装置3の前側には、圃場の穀桿を収穫する刈取装置4を設けて構成している。脱穀装置3で脱穀・選別された穀粒は、脱穀装置3の右側に設けられたグレンタンク5に貯留され、貯留された穀粒は、排出筒7によって外部に排出される。
(原動部の構成)
機体フレーム1の上部右側には、操作者が搭乗する操作部を備えた操縦席6が設けられ、操縦席6の下側には、エンジンEを搭載するエンジンルーム8が設けられている。また、エンジンルーム8の右側には、エンジンルーム8の保守・点検時に開放できるカバー8Aが装着されており、カバー8Aの下部には、目抜き鉄板等から形成された濾過体8Bが取付けられている。カバー8Aの上部は、目抜きの無い鉄板8Dで形成される。
【0020】
図3図5に示すように、エンジンルーム8の内側には、エンジンEが設けられている。
【0021】
エンジンEの右側(外側)には、所定の間隔を隔ててエンジンEに供給される冷却水を冷却するラジエータ9が設けられている。尚、このラジエータ9には、冷却水の温度を検出する水温センサ9aが備えられている。
【0022】
エンジンEとラジエータ9の間には、エンジンEの駆動力で回転し、濾過体8Bの外側から内側へ外気を吸入するラジエータファン(冷却ファン)10が配置されている。
【0023】
エンジンEの出力軸の先端部とラジエータファン10の回転中心部との間に電磁クラッチ(クラッチ)Cを備えており、エンジンEの出力軸から電磁クラッチCを介してラジエータファン10に駆動力が伝達されるように構成されている。
【0024】
即ち、この電磁クラッチCが接続されると、エンジンEの駆動力によってラジエータファン10が回転駆動され、電磁クラッチCが遮断されると、エンジンEの駆動力はラジエータファン10に伝達されなくなり、このラジエータファン10は停止または自由回転状態となる。
【0025】
尚、図示を省略しているが、このラジエータファン10の外周は、シュラウドで取り囲まれている。
【0026】
図3図5に示すように、上述の濾過体8Bは、ラジエータ9の右側方(外側方)に間隔をおいて配置され、このラジエータ9と濾過体8Bの間に空間部11が形成されている。
【0027】
この空間部11において、ラジエータ9の右側下部には、エンジンルーム8の底壁を切り欠いて開口させ、濾過体8Bを迂回してラジエータファン10へ外気を導入する迂回経路12が形成されている。
【0028】
この迂回経路12を形成する開口部には、ラジエータファン10の回転で発生する負圧によって開放される弁体13を設けている。
【0029】
この弁体13は、トルク・スプリング14によって常時閉鎖方向へ付勢されており、ラジエータファン10の回転で発生する負圧によって、押し開かれるように構成されている。
【0030】
また、この弁体13よりも濾過体8B寄りの部位には、背面視で直角三角形状のダクト15がエンジンルーム8の底壁上に設置されている。
【0031】
図12図13に示すように、このダクト15は、その底面に機体外部(機体下方)へ連通する矩形状の下側開口部15aを形成し、その斜面には、開閉弁15bを備えた矩形状の上側開口部15cが形成されている。
【0032】
上記の開閉弁15bは、ダクト15の内側において、上辺部を上下回動自在に軸支され、トルク・スプリング15dによって常時閉鎖方向へ付勢されている。
【0033】
図3図5に示すように、エンジンルーム8の上壁には昇降駆動用電動モータ16が設置され、この昇降駆動用電動モータ16で回転駆動される螺子軸16aが、濾過体8Bの内側面に沿う姿勢で垂下させて設けられている。
【0034】
この螺子軸16aの回転によって昇降する送風装置17が、上述の空間部11に進入した下降位置と、空間部11から退避した上昇位置とに亘り、昇降自在に設けられている。
【0035】
図7図11に示すように、この送風装置17のファンケース17sは、矩形の底壁17aの四辺から拡開姿勢に設けられた四つの台形状の側壁17bによって、受け皿状に形成され、底壁17aの中央部に送風ファン18の回転軸18aを配置し、底壁17aにおける回転軸18aと反対側の面に、回転軸18aを駆動する送風ファン用電動モータ18bを取り付けて構成している。
【0036】
上記の四つの側壁17bのうち、下側の側壁17bには矩形の外気吸入口18cが形成され、この側壁17bの下面には、外気吸入口18cに連通する角筒体18dの上端部が固定されている。この角筒体18dは、ファンケース17sから垂下姿勢に設けられている。
【0037】
また、上記の四つの側壁17bのうち、前後の側壁17bの外側端縁には、機体前後方向に向く舌片18eが一体形成されている。
【0038】
図10に示すように、エンジンルーム8の外側端部における前後2位置に、溝を有した断面コ字形状のレール19が上下方向に設置されており、上述のファンケース17sの舌片18eをレール19の溝19aに挿し込み、ファンケース17sの昇降を案内するように構成されている。
【0039】
図3図5図7に示すように、ファンケース17sの底壁17aにおける送風ファン用電動モータ18bに対して前側に偏倚した部位に、上述の螺子軸16aに螺合する雌螺子部材20が取り付けられている。
【0040】
以上の構成により、図3に示す通常の作業状態では、送風装置17が空間部11から上昇退避し、ファンケース17sの四辺の外側端縁部が、カバー8Aの上部の目抜きの無い鉄板8Dに対向する。
【0041】
この状態では、ダクト15の斜面に形成された上側開口部15cは、開閉弁15bによって閉ざされている。
【0042】
一方、図5に示すように、送風ファン用電動モータ18bによって螺子軸16aが回転し、送風装置17が下降して空間部11に進入すると、ファンケース17sが濾過体8Bに対向し、ファンケース17sの四辺の外側端縁部によって濾過体8Bの濾過面8Cが内側から覆われる。これによって、濾過体8Bの濾過面8Cを通過して吸入される外気の流れが遮断される。
【0043】
この状態では、図5図11に示すように、ファンケース17sから垂下姿勢に設けられた角筒体18dが、ダクト15の斜面に形成された上側開口部15cから、トルク・スプリング15dによる付勢力に抗して開閉弁15bを押し下げながら(押し開きながら)ダクト15内に挿入されて接続される。これによって、外気吸入口18cが機体外部に連通され、このダクト15の底面に形成された下側開口部15aから、送風ファン18へ外気が吸入される。
(上記構成による作用効果)
送風装置17がラジエータ9と濾過体8Bの間の空間部11に進入した時点から、設定時間遅れてクラッチCを遮断してラジエータファン10の回転を停止させ、送風装置17によって濾過体8Bの内側から外側へ送風することによって、濾過体8Bに付着していた藁屑等の塵埃を除去し、濾過体8Bの目詰まりを少なくしてラジエータファン10による外気の吸入効率を高め、エンジンEの出力低下やオーバーヒートを防止することができる。
【0044】
この際、送風装置17が空間部11に進入してからラジエータファン10が停止するまでの間、ラジエータファン10の回転による負圧が発生するが、濾過体8Bを迂回する迂回回路12からラジエータファン10へ外気が導入されるので、エンジンEのオーバーヒートを少なくすることができる。
【0045】
また、送風装置17がラジエータ9と濾過体8Bの間に形成された空間部11に進入した時点から、設定時間遅れてクラッチCが遮断されてラジエータファン10が停止するので、外気の吸入による濾過体8Bへの塵埃の吸着が少なくなり、また、送風装置17による濾過体8Bの内側から外側への送風効率が高まり、濾過体8Bの目詰まりをより少なくして、エンジンEの出力低下やオーバーヒートを防止することができる。
【0046】
また、送風装置17に有したファンケース17sの外側端縁部によって、濾過体8Bの濾過面8Cが内側から覆われるので、ラジエータファン10の回転停止が遅れたとしても、これによる濾過体8Bからの外気の吸入を、送風装置17のファンケース17s自体で遮断することができ、別の遮断部材を設ける必要がなく、安価に提供することができる。
【0047】
また、送風装置17がラジエータ9と濾過体8Bの間に形成された空間部11に進入した時点から、設定時間遅れて電磁クラッチCが遮断されるため、ラジエータファン10の回転が継続する時間が存在するが、迂回経路12によって、濾過体8Bを迂回してラジエータファン10へ外気が導入されるので、エンジンEの冷却状態を適度に維持しながら、送風装置17によって濾過体8Bの塵埃を除去でき、エンジンEの出力低下やオーバーヒートを防止することができる。
【0048】
また、濾過体8Bを迂回してラジエータファン10へ外気を導入する迂回経路12に、ラジエータファン10の回転で発生する負圧によって開放される弁体13を備えているので、送風装置17が空間部11に進入していない状態では、ラジエータファン10による負圧の発生が小さくなって弁体13が閉まり、この迂回回路12からの塵埃の侵入を防止することができる。
【0049】
また、送風装置17が空間部11に進入した状態で、この送風装置17の外気吸入口18cが機体外部に連通するダクト15に接続されるので、送風装置17からの送風量を確保でき、濾過体8Bに付着した塵埃の除去能力を高めることができる。
【0050】
また、送風装置17が空間部11に進入していない状態では、開閉弁15bによってダクト15を閉じ、ラジエータファン10の回転で生じる負圧によって、ダクト15から塵埃が吸入されることを防止できる。
(自動制御回路の構成)
図14に示すように、コントローラ21には入力側インターフェイス21aと出力側インターフェイス21bを有し、入力側インターフェイス21aに対して、自動制御を有効/無効に切り替える自動制御入り切りスイッチ21cと、ファンケース17sが下降端位置に達したこと(ダクト15の傾斜面に接したこと)を検出する下降端位置検出スイッチ21dと、ファンケース17sが上昇端位置に達したことを検出する上昇端位置検出スイッチ21eと、ラジエータ9の水温を検出する水温センサ9aと、エンジンEの出力回転速度を検出する出力回転センサ21fと、作業車両の車速を検出する車速センサ21gと、走行装置2を駆動する左右の車軸の回転速度を検出する左の車軸回転センサ21hおよび右の車軸回転センサ21iと、エンジンEの出力回転を刈取装置4へ伝達する刈取クラッチの接続状態を検出する刈取クラッチセンサ21jと、刈取クラッチを接続操作する刈取クラッチレバーの接続操作を検出する刈取クラッチレバーセンサ21kと、エンジンEの出力回転を排出筒7内の螺旋へ伝達する排出クラッチの接続状態を検出する排出クラッチセンサ21lと、排出クラッチを接続操作する排出クラッチレバーの接続操作を検出する排出クラッチレバーセンサ21mと、機体に対する刈取装置4の昇降位置を検出するポテンショメータ式の刈高さセンサ21nと、ダクト15に備えた開閉弁15bが押し開かれたことを検出する開閉弁センサ21oと、刈取装置4に導入される刈取対象穀稈の有無を検出する穀稈センサ21pと、機体の旋回操作を検出する旋回操作検出センサ21qと、エンジンEの燃料消費量を検出する燃料消費量センサ21rを接続する。
【0051】
出力側インターフェイス21bには、昇降駆動用電動モータ16を正逆転させる上昇駆動側リレー21sおよび下降駆動側リレー21tと、送風ファン用電動モータ18bを回転させるファン回転リレー21uと、電磁クラッチCを接続する。
(基本の自動制御)
以上の制御回路により、自動制御入り切りスイッチ21cを入り操作すると、自動制御機能が有効な状態に切り替わり、基本の制御が開始される。
【0052】
この状態で、メインキースイッチ21vを操作してエンジンEを始動すると、コントローラ21によって上昇端位置検出スイッチ21eの検出状態がチェックされ、上昇端位置検出スイッチ21eがONしていない場合には、コントローラ21から出力インターフェイス21bを介して上昇駆動側リレー21sに出力がなされ、昇降駆動用電動モータ16に電力が供給されて螺子軸16aが正転駆動され、送風装置17のファンケース17sが上昇する。この螺子軸16aの正転駆動は、上昇端位置検出スイッチ21eがONするまで継続された後、停止する。これにより、送風装置17は、ラジエータ9と濾過体8Bの間の空間部11から上昇して退避する。この状態では、ファン回転リレー21uへの出力はなされず、送風ファン用電動モータ18bは回転しない。
【0053】
そして、コントローラ21内のクロック回路によって第1設定時間(約20秒間)の経過が判定されると、コントローラ21から出力側インターフェイス21bを介して下降駆動側リレー21tへ出力がなされ、昇降駆動用電動モータ16に逆方向の電力が供給されて螺子軸16aが逆転駆動され、送風装置17のファンケース17sが下降する。この螺子軸16aの逆転駆動は、下降端位置検出スイッチ21dがONするまで継続された後、停止する。これにより、送風装置17は、ラジエータ9と濾過体8Bの間の空間部11に下降して進入する。そして、下降端位置検出スイッチ21dがONすることによって、コントローラ21から出力インターフェイス21bを介して電磁クラッチCとファン回転リレー21uに出力がなされ、電磁クラッチCが遮断されてラジエータファン10の回転が停止すると共に、送風ファン用電動モータ18bが駆動し、送風ファン18が回転する。この電磁クラッチCへの出力は、下降端位置検出スイッチ21dがONしてから1〜2秒の時間遅れをもって出力される。また、このファン回転リレー21uへの出力は第2設定時間(約5秒間)だけ継続された後、停止し、上昇駆動側リレー21sへの出力によって、送風装置17は上昇端位置まで上昇退避する。
【0054】
この際、下降端位置検出スイッチ21dがOFFすると、コントローラ21から出力インターフェイス21bを介して電磁クラッチCとファン回転リレー21uに逆方向の出力がなされ、電磁クラッチCが接続されてラジエータファン10が回転を開始すると共に、送風ファン用電動モータ18bが停止して、送風ファン18の回転が停止する。
【0055】
このようにして、基本の制御では、送風装置17の昇降と、送風ファン18の駆動および停止が設定時間ごとに繰り返し行われる。
【0056】
尚、上述の第1設定時間と第2設定時間により、送風装置17が上昇端位置にある時間のほうが、送風装置17が下降端位置にある時間よりも長く設定される。
(刈取クラッチとの連繋制御)
また、上述の基本の制御が行われている状態において、刈取クラッチセンサ21jによって刈取クラッチの接続が検出された場合、または、刈取クラッチレバーセンサ21kによって刈取クラッチレバーの接続操作が検出された場合には、送風装置17の下降および送風ファン18の駆動が、基本の制御よりも優先して行われる。これにより、刈取クラッチを接続して刈取作業を開始するときに、予め濾過体8Bに吸着された塵埃を吹き飛ばしてから、刈取作業が開始されるため、エンジンEの冷却効率を高め、エンジンEの出力低下やオーバーヒートを防止することができる。尚、この場合にも、第2設定時間が経過すると、上昇駆動側リレー21sへの出力によって、送風装置17は上昇端位置まで上昇退避する。
(排出クラッチとの連繋制御)
また、排出クラッチセンサ21lによって排出クラッチの接続状態が検出された場合、または排出クラッチレバーセンサ21mによって排出クラッチレバーが接続操作されたことが検出された場合には、送風装置17の下降および送風ファン18の駆動が、基本の制御よりも優先して行われる。これにより、排出クラッチを接続してグレンタンク5内の穀粒の排出作業を行なうときに、濾過体8Bに吸着された塵埃が吹き飛ばされるため、エンジンEの冷却効率を高め、エンジンEの出力低下やオーバーヒートを防止することができる。尚、この場合にも、第2設定時間が経過すると、上昇駆動側リレー21sへの出力によって、送風装置17は上昇端位置まで上昇退避する。この場合、第2設定時間を上述の時間よりも長く設定するとよい。
(穀稈センサとの連繋制御)
また、刈取作業開始時に、穀稈センサ21pによって刈取対象穀稈の存在が検出された場合に、送風装置17の下降および送風ファン18の駆動が、基本の制御よりも優先して行われる。これにより、濾過体8Bに吸着された塵埃を吹き飛ばしてから刈取作業が開始されるため、エンジンEの冷却効率を高め、エンジンEの出力低下やオーバーヒートを防止することができる。尚、この場合にも、第2設定時間が経過すると、上昇駆動側リレー21sへの出力によって、送風装置17は上昇端位置まで上昇退避する。
(機体の旋回との連繋制御)
また、旋回操作検出センサ21qによって機体の旋回操作が検出された場合、または、左の車軸回転センサ21hによって検出される左の車軸の回転速度と右の車軸回転センサ21iによって検出される右の車軸の回転速度との差が設定回転速度よりも大きくなったことが判定された場合に、送風装置17の下降および送風ファン18の駆動が、基本の制御よりも優先して行われる。これにより、圃場の一辺を刈り終えて機体を旋回させる時に、濾過体8Bに吸着された塵埃を吹き飛ばしてから刈取作業を再開することになり、エンジンEの冷却効率が高まり、エンジンEの出力低下やオーバーヒートを防止することができる。尚、この場合にも、第2設定時間が経過すると、上昇駆動側リレー21sへの出力によって、送風装置17は上昇端位置まで上昇退避する。
(昇降速度の変速制御)
尚、上昇駆動側リレー21sおよび下降駆動側リレー21tへの出力をパルス出力とし、このパルス出力のデューティー比を変更することにより、昇降駆動用電動モータ16の出力回転速度を変速し、送風装置17の昇降速度を変更できるように構成してもよい。即ち、送風装置17の下降速度を上昇速度よりも高速に設定すれば、濾過体8Bが目詰まりを起こした際に、この塵埃を迅速に除去でき、エンジンEのオーバーヒート防止効果が高まる。また、送風装置17の上昇速度を下降速度よりも高速に設定すれば、ファンケース17sによる濾過体8Bから吸入されるべき外気の遮断状態を迅速に解除することができ、ラジエータファン10によるエンジンEの冷却効率が高まる。
(刈取さとの連繋制御)
また、刈高さセンサ21nによって刈取装置4が非作業高さまで上昇したことが検出されると、送風装置17の下降および送風ファン18の駆動が、基本の制御よりも優先して行われる。これにより、圃場の一辺を刈り終えて刈取装置4を非作業高さまで上昇させてから機体を旋回させる時に、濾過体8Bに吸着された塵埃を吹き飛ばし、この後に刈取作業を再開することになり、エンジンEの冷却効率が高まり、エンジンEの出力低下やオーバーヒートを防止することができる。尚、この場合にも、第2設定時間が経過すると、上昇駆動側リレー21sへの出力によって、送風装置17は上昇端位置まで上昇退避する。
(ラジエータ水温との連繋制御)
また、水温センサ9aによってラジエータ9の冷却水の温度が設定温度以上に上昇したことが検出された場合に、送風装置17の下降および送風ファン18の駆動が、基本の制御よりも優先して行われる。これにより、エンジンEに掛かる負荷の増大等によってラジエータ9の冷却水の温度が上昇した場合に、濾過体8Bに吸着された塵埃を吹き飛ばし、エンジンEの冷却効率を高め、エンジンEの出力低下やオーバーヒートを防止することができる。尚、この場合にも、第2設定時間が経過すると、上昇駆動側リレー21sへの出力によって、送風装置17は上昇端位置まで上昇退避する。
(エンジン負荷との連繋制御)
また、出力回転センサ21fによって検出されるエンジンEの出力回転速度と、燃料消費量検出センサ21rによって検出される燃料消費量との関係から、エンジンEに掛かっている負荷を算出し、この負荷が設定負荷以上に増大した場合に、送風装置17の下降および送風ファン18の駆動が、基本の制御よりも優先して行われる。これにより、エンジンEに掛かる負荷が増大した場合に、濾過体8Bに吸着された塵埃を吹き飛ばし、エンジンEの冷却効率を高め、エンジンEの出力低下やオーバーヒートを防止することができる。尚、この場合にも、第2設定時間が経過すると、上昇駆動側リレー21sへの出力によって、送風装置17は上昇端位置まで上昇退避する。
【符号の説明】
【0057】
8B 濾過体
9 ラジエータ
10 ラジエータファン(冷却ファン)
11 空間部
12 迂回経路
13 弁体
15 ダクト
15b 開閉弁
17 送風装置
18c 外気吸入口
C 電磁クラッチ(クラッチ)
E エンジン
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