【実施例】
【0044】
表1に示すように、含有するはんだ粉末の平均粒径や成分、はんだ用フラックスの成分比、フラックス比率、ペースト粘度などを変えて作製した下地形成用ペーストおよびバンプ形成用ペーストを用いてサンプル1〜7のはんだバンプを形成し、発生したボイドや形成されたバンプの高さなどを比較した(表2)。
【0045】
(サンプル1)
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が2.3であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率45mass%で混合し混練することにより、粘度が62Pa・sの下地形成用ペーストを作製した。
【0046】
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率10mass%で混合し混練することにより、粘度は90Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。
【0047】
(サンプル2)
粒径が5〜15μm(平均粒径11μm)のSn−3mass%Ag−0.5mass%Cuからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.8であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率40mass%で混合し混練することにより、粘度が65Pa・sの下地形成用ペーストを作製した。
【0048】
粒径が5〜15μm(平均粒径11μm)のSn−3mass%Ag−0.5mass%Cuからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率11mass%で混合し混練することにより、粘度が100Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。
【0049】
(サンプル3)
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率10mass%で混合し混練することにより、粘度が90Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。このサンプル3では、下地形成用ペーストは使用せず、下地層を形成せずにはんだバンプを形成した。
【0050】
(サンプル4)
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が2.3であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率20mass%で混合し混練することにより、粘度が120Pa・sの下地形成用ペーストを作製した。
【0051】
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率10mass%で混合し混練することにより、粘度が90Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。
【0052】
(サンプル5)
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率45mass%で混合し混練することにより、粘度が40Pa・sの下地形成用ペーストを作製した。
【0053】
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率10mass%で混合し混練することにより、粘度が90Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。
【0054】
(サンプル6)
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率70mass%で混合し混練することにより、粘度が30Pa・sの下地形成用ペーストを作製した。
【0055】
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率10mass%で混合し混練することにより、粘度が90Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。
【0056】
(サンプル7)
粒径が5〜15μm(平均粒径11μm)のSn−3mass%Ag−0.5mass%Cuからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率11mass%で混合し混練することにより、粘度が100Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。このサンプル7では、下地形成用ペーストは使用せず、UBM上にはんだ下地層を形成せずにはんだバンプを形成した。
【0057】
【表1】
【0058】
(比較試験)
前述のサンプル1〜7について、冷蔵3カ月経過時の下地形成用ペーストにおけるはんだ用フラックスとはんだ粉末との分離の有無、総バンプ500個において発生したボイドの大きさ(バンプ直径に対するボイド径の比率)別の個数、形成されたバンプの最終高さを確認した。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
バンプは、開口径120μm、厚み75μmでパターン形成されたレジストを備えるウエハ上に、シリコン/Al/NiV/Cuにより形成されたUBMに対して形成した。UBM径は100μmである。そして、形成したバンプ内について、内部に発生したボイドを透過型X線により観察し、最終バンプ高さを3次元測定器により測定した。大きなボイドが数多く発生したバンプは不良であるので、Maxボイド径が30%以上である場合、換言すると、バンプ径に対して30%以上のボイドが1個でも発生していればNGと判断した。なお、Maxボイド径は25%以下であることがより好ましい。
【0061】
この比較試験の結果、以下のことを確認できた。
(1)はんだ下地層の有無による影響
サンプル1およびサンプル3では、同じバンプ形成用ペーストを用いてバンプを形成した。しかしながら、はんだ下地層を形成したサンプル1では30%を超える大きさのボイドが生じなかったのに対し、はんだ下地層を形成しなかったサンプル3では30%を超える大きさのボイドが生じたため、NGとなった。
【0062】
また、同じバンプ形成用ペーストを用いてバンプを形成したサンプル2とサンプル7とを比較したところ、はんだ下地層を形成したサンプル2では30%を超える大きさのボイドが生じなかったのに対し、はんだ下地層を形成しなかったサンプル7では、30%を超える大きさのボイドが生じたため、NGとなった。これらの比較から、はんだ下地層を形成することによって、大きなボイドの発生を抑えることができることが確認できた。
【0063】
(2)下地形成用ペーストの粘度によるボイド発生に対する影響
サンプル1およびサンプル4では、同じバンプ形成用ペーストを用いたが、下地形成用ペーストにおける粘度が異なる。サンプル1,4のうち、ペースト粘度が高い下地形成用ペーストを用いたサンプル4では、30%を超える大きさのボイドは生じず、一定のボイド抑制効果は得られているが、25%を超えるボイドが生じていた。これに対し、ペースト粘度が低い下地形成用ペーストを用いたサンプル1では、25%を超えるボイドは発生せず、一層高いボイド抑制効果を確認できた。このことから、下地形成用ペーストの粘度の上限を定めることが好ましいと確認できた。
【0064】
(3)下地形成用ペーストの粘度によるはんだ粉末分離に対する影響
サンプル5では、サンプル1,4と同じバンプ形成用ペーストと、サンプル1よりも粘度の低い下地形成用ペーストとを用いてバンプを形成したところ、大きなボイドの発生は抑えられた。しかしながら、冷蔵3カ月経過時に下地形成用ペーストに分離が発生していた。つまり、粘度が低い下地形成用ペーストを用いる場合は、長期保存しない、あるいは使用前に十分攪拌するなどの対策を施し、下地形成用ペーストに分離が生じていない状態とする必要はあるものの、大きなボイドのない良好なバンプを形成できることが確認できた。
【0065】
(4)下地形成用ペーストのフラックス比率によるボイド発生に対する影響
サンプル5よりもフラックス比率が高い下地形成用ペーストを用いたサンプル6では、冷蔵3カ月経過時に分離が発生した。また、サンプル6では、30%を超える大きさのボイドは生じず、一定のボイド抑制効果は得られてはいるが、25%を超えるボイドが生じていた。つまり、下地形成用ペーストのフラックス比率が高すぎると、はんだ粉末が分離するおそれがあるとともに、ボイド抑制効果が低下する。これは、粘度が低すぎたためにUBM上に適切なはんだ下地層が形成されなかったためと考えられる。このことから、下地形成用ペーストの粘度の下限を定めることが好ましいと確認できた。
【0066】
(5)フラックス中の固体成分比による最終バンプ高さに対する影響
下地形成用ペーストのフラックスにおける液体成分に対する固体成分の比率が高いサンプル1,2,4では、最終バンプ高さが80μm以上となった。これに対して、下地形成用ペーストのフラックスにおける液体成分に対する固体成分の比率が低いサンプル5,6では、最終バンプ高さが74〜76μmとなった。このことから、下地形成用ペーストのフラックス中の固体成分を多くすることにより、アスペクト比の高いバンプが形成されことを確認できた。