特許第6187536号(P6187536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6187536はんだバンプ製造方法および下地形成用ペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187536
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】はんだバンプ製造方法および下地形成用ペースト
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   H01L21/92 603B
   H01L21/92 603D
   H01L21/92 604E
   H01L21/92 604M
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-99294(P2015-99294)
(22)【出願日】2015年5月14日
(62)【分割の表示】特願2011-137793(P2011-137793)の分割
【原出願日】2011年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-164223(P2015-164223A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】巽 康司
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭58−21430(JP,B2)
【文献】 特開平10−163270(JP,A)
【文献】 特開2006−165336(JP,A)
【文献】 特開2015−23129(JP,A)
【文献】 特開2015−220396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/60−21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ上に形成された金属製のバンプ下地パッド上に、下地はんだ粉末およびはんだ用フラックスを所定のフラックス比率混合してなる下地形成用ペーストを所定厚さで塗布し、リフローしてはんだ下地層を形成し、
前記はんだ下地層上に、前記下地はんだ粉末と同種のはんだ粉末および前記はんだ用フラックスを混合してなり、前記下地形成用ペーストの前記フラックス比率よりも前記はんだ用フラックスの割合が少ないフラックス比率バンプ形成用ペーストを所定量供給し、リフローして略球状のはんだバンプを形成するはんだバンプ製造方法であり、
前記下地形成用ペーストの前記下地はんだ粉末は、PbおよびSnを含むPb−Sn合金からなり、
前記下地形成用ペーストの前記フラックス比率が32mass%以上53mass%以下であることを特徴とするはんだバンプ製造方法。
【請求項2】
ウエハ上に形成された金属製のバンプ下地パッド上に、下地はんだ粉末およびはんだ用フラックスを所定のフラックス比率で混合してなる下地形成用ペーストを所定厚さで塗布し、リフローしてはんだ下地層を形成し、
前記はんだ下地層上に、前記下地はんだ粉末と同種のはんだ粉末および前記はんだ用フラックスを混合してなり、前記下地形成用ペーストの前記フラックス比率よりも前記はんだ用フラックスの割合が少ないフラックス比率でバンプ形成用ペーストを所定量供給し、リフローして略球状のはんだバンプを形成するはんだバンプ製造方法であり、
前記下地形成用ペーストの前記下地はんだ粉末は、Snを主成分として含むPbフリーのSn基はんだであり、
前記下地形成用ペーストの前記フラックス比率が35mass%以上55mass%以下であることを特徴とするはんだバンプ製造方法。
【請求項3】
前記ウエハ上にマスクを形成し、
このマスクに、前記バンプ下地パッドを内部に有しこのバンプ下地パッドとの間に隙間を有する開口部を形成することにより、この開口部の内周面、前記ウエハの表面および前記バンプ下地パッドに囲まれた充填空間を形成し、
この充填空間に前記下地形成用ペーストを充填することにより所定量の前記下地形成用ペーストを供給し、
この下地形成用ペーストをリフローして前記はんだ下地層を形成した後に、
前記充填空間の前記はんだ下地層の上に前記バンプ形成用ペーストを充填することにより、所定量の前記バンプ形成用ペーストを供給することを特徴とする請求項1または2に記載のはんだバンプ製造方法。
【請求項4】
前記はんだ下地層の厚さは、形成される前記はんだバンプの最終高さの50%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のはんだバンプ製造方法。
【請求項5】
前記下地形成用ペーストの前記はんだ用フラックスは、溶剤である液体成分に対して、固形成分の重量比が1.5〜2.5であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のはんだバンプ製造方法。
【請求項6】
ウエハ上にはんだバンプを形成するための下地形成用ペーストであって、
下地はんだ粉末およびはんだ用フラックス混合してなるとともに、
前記下地はんだ粉末は、PbおよびSnを含むPb−Sn合金からなり、
フラックス比率が32mass%以上53mass%以下であることを特徴とする下地形成用ペースト。
【請求項7】
ウエハ上にはんだバンプを形成するための下地形成用ペーストであって、
下地はんだ粉末およびはんだ用フラックスを混合してなるとともに、
前記下地はんだ粉末は、Snを主成分として含むPbフリーのSn基はんだであり、
フラックス比率が35mass%以上55mass%以下であることを特徴とする下地形成用ペースト。
【請求項8】
前記はんだ用フラックスは、溶剤である液体成分に対して、固形成分の重量比が1.5〜2.5であることを特徴とする請求項6または7に記載の下地形成用ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板とウエハとの電気的な導通に用いるはんだバンプ製造方法およびこのバンプを形成するための下地形成用ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型軽量化を目的として、高密度実装の開発が進められている。中でも、フリップチップ実装(以下「FC実装」)は、回路基板上に複数のシリコンチップを配置できるため、理想的な高密度実装が可能となる。FC実装においては、バンプと称される突起電極を介して、ウエハとインターポーザーと呼ばれるプリント基板、さらにはインターポーザーとマザーボード基板とが接合される。
【0003】
このFC実装におけるはんだバンプは、メッキ法、ステンシルマスク法・ドライフィルム法などの印刷法、ボールマウント法、蒸着法などによって形成される。印刷法は、量産性やコスト面に優れており、ウエハ上に形成されたバンプ形成用パッド(Under Bump Metal,以下「UBM」)に対してはんだペーストを印刷供給し、リフローすることによりはんだバンプを形成する。
【0004】
一般的に、はんだバンプを形成する前には、下地であるUBMに付着したレジスト残渣や表面酸化膜を除去する工程が導入される。この工程は、プラズマ処理などによるUBM表面のクリーニング工程であり、はんだペーストなどがリフロー時にがUBMに濡れやすくするための処理である。
【0005】
従来、はんだペーストに含まれている多量の溶剤がリフロー時にガス化するため、ボイドが発生しやすい。これに対して、特許文献1には、フラックス起因のガスの発生が抑制され、バンプ内にボイドの発生が少ないハンダペーストが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−165336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
UBMの表面のクリーニングが不十分であると、UBMに対するはんだペーストの濡れが不十分となり、その後の洗浄工程でバンプがなくなるミッシングバンプなどの原因になる。また、はんだペースト印刷前にUBMの表面をクリーニングしても、リフロー時に溶融したはんだバンプ内のUBM表面近傍にガスが残留して、リフロー後のバンプ中にボイド(空隙)として残った場合、バンプ高さのばらつき要因、接合強度の低下など、接合信頼性を低下させるおそれがある。
【0008】
また、レジストフィルムを用いた印刷工法においても、益々、UBMの微小化、UBM状に形成されるバンプも微細化、微小化が進んでおり、ボイドがたとえばバンプサイズの30%以上であると、基板に実装した後の信頼性試験において、熱ひずみや衝撃によりボイドが起点となってクラックが進行するなど、長期信頼性が得られないなど、益々、その影響度が深刻となる。
【0009】
さらに、このようなはんだバンプを用いたFC実装においては、接合したウエハとインターポーザーとの間にアンダーフィルと呼ばれる樹脂を流し込むことにより、熱膨張差等による応力集中を緩和し、破損の防止が図られる場合がある。アンダーフィルを充填するためには、はんだバンプの高さを所定以上に形成する必要があり、たとえば直径が70μm程度であるUBMに対して70μm〜80μmの高さのはんだバンプをウエハ側に形成することが求められる。このようにアスペクト比の高い微細なはんだバンプを形成する場合に、フラックスから生じたガスやフラックスとはんだ粉末及びフラックスとUBM表面の反応で生じた還元水などのガスが溶融バンプ中から脱しにくく、ボイドが発生しやすいおそれがある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、フリップチップ実装において用いられるはんだバンプのボイドを低減し、健全なバンプを形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ウエハ上に形成された金属製のバンプ下地パッド上に、下地はんだ粉末およびはんだ用フラックスを所定のフラックス比率で混合してなる下地形成用ペーストを所定厚さで塗布し、リフローしてはんだ下地層を形成し、前記はんだ下地層上に、前記下地はんだ粉末と同種のはんだ粉末および前記はんだ用フラックスを混合してなり、前記下地形成用ペーストの前記フラックス比率よりも前記はんだ用フラックスの割合が少ないバンプ形成用ペーストを所定量供給し、リフローして略球状のはんだバンプを形成するはんだバンプ製造方法である。
【0012】
このはんだバンプ製造方法によれば、まず、はんだ含有量が少なくフラックスが多い下地形成用ペーストをUBM上に供給し、リフローする。このとき、UBM表面の清浄度がフラックスにより向上し、溶融したはんだがUBMによく濡れ拡がる。もともとはんだは少なく、かつ、よく濡れ拡がるため、UBM上にはんだ下地層が薄く形成される。また、薄いはんだ層であるため、大きなボイドの発生もない。次いで、このはんだ下地層の上に、同種のはんだ粉末を含むバンプ形成用ペーストを供給し、リフローすることによりはんだバンプを形成する。したがって、大きなボイドのないバンプを形成でき、バンプ高さの均一性も向上し、ミッシングバンプの発生も大幅に低減できる。
【0013】
このはんだバンプ製造方法において、前記ウエハ上にマスクを形成し、このマスクに、前記バンプ下地パッドを内部に有しこのバンプ下地パッドとの間に隙間を有する開口部を形成することにより、この開口部の内周面、前記ウエハの表面および前記バンプ下地パッドに囲まれた充填空間を形成し、この充填空間に前記下地形成用ペーストを充填することにより所定量の前記下地形成用ペーストを供給し、この下地形成用ペーストをリフローして前記はんだ下地層を形成した後に、前記充填空間に前記バンプ形成用ペーストを充填することにより所定量の前記バンプ形成用ペーストを供給することが好ましい。
【0014】
このはんだバンプ製造方法によれば、所定の体積を有する充填空間にペーストを充填することによりはんだを供給するので、ペーストにおけるはんだの含有割合を調整しておくことによりリフロー後に残るはんだ量を設定でき、所望の大きさのはんだバンプを形成することができる。
【0015】
充填空間にバンプ形成用ペーストを充填してリフローすると、溶融状態のはんだはバンプ下地パッド(UBM)上で表面張力により球状に凝集しようとする。充填空間における開口部に対して、全面に下地パッドを設けると、つまり、下地パッドとマスク開口部の内周面との間に隙間がない場合は、溶融状態のはんだが充填スペースよりも大きな球状に凝集しようとし、マスク側壁に接触し、下地パッドのUBMから離れてしまい、ミッシングバンプが発生してしまう。つまり、アスペクト比の高い充填スペースを設けても、はんだがUBMから離れてしまうため、アスペクト比の高いはんだバンプを形成するのは難しい。一方、下地パッドであるUBMとマスク開口部の内周面との間に隙間を有するようにマスクの開口部を形成して充填スペースを設けることにより、広い充填スペースの中ではんだが球状に凝集できるので、UBM上にアスペクト比の高い略球状のはんだバンプを形成することができる。
【0016】
また、このはんだバンプ製造方法において、前記下地形成用ペーストの前記下地はんだ粉末は、PbおよびSnを含むPb−Sn合金からなり、前記下地形成用ペーストの前記フラックス比率が32mass%以上53mass%以下である。なお、一般的なはんだバンプ形成用ペーストは、平均粒径0.1〜60μmのはんだ粉末と、ロジン、活性剤、チキソ剤および溶媒よりなるフラックスとを混合、混練して形成され、ペーストにおけるはんだ粉末の含有割合が85〜95mass%、粘度が60Pa・s以上250Pa・s未満であることが好ましく、上記のように設定することにより、大きさや形状が適切なバンプを形成することができる。
【0019】
下地形成用ペーストのフラックス比率が32mass%以上であることが好ましいのは、下地形成用ペーストに含まれるはんだ量を少なくして、UBMに形成するはんだ下地層を薄くすることにより、ボイドの発生を抑えることができるためである。一方、はんだ量が少なすぎると、UBMの上面全体にわたってはんだ下地層を形成するのが困難となるので、下地形成用ペーストのフラックス比率の上限を53mass%とするのが好ましい。
【0020】
前記下地はんだ粉末および前記はんだ粉末が鉛フリーのSn基はんだからなる場合は、前記下地形成用ペーストのフラックス比率が35mass%以上55mass%以下であることが好ましい。これは、上述のPb−Sn合金のはんだ粉末を用いる場合と同様の理由によるが、はんだ粉末の比重の違いにより、好ましいフラックス比率の範囲が異なっている。
【0021】
また、このはんだバンプ製造方法において、前記はんだ下地層の厚さは、形成される前記はんだバンプの最終高さの50%以下であることが好ましい。この場合、50%を超えると、それだけUBM上に厚いはんだ層ができ、それだけ大きなボイドが形成できることになる為である。
【0022】
また、このはんだバンプ製造方法において、前記下地形成用ペーストの粘度が60Pa・s以上150Pa・s以下であることが好ましい。下地形成用ペーストの粘度が60Pa・sよりも低すぎると、保管中にペースト中のフラックスとはんだ粉末とが分離し、UBMに供給されるはんだ量が不均一になるおそれがある。一方、下地形成用ペーストの粘度が150Pa・sを超えると、ペースト印刷時の充填スペースへの充填性が悪くなり、UBMに供給されるはんだ量が不均一になるおそれがあるためである。
【0023】
また、このはんだバンプ製造方法において、前記下地形成用ペーストの前記下地はんだ粉末は、PbおよびSnを含むPb−Sn合金からなり、Snの含有割合が55mass%以上65mass%以下であり、残部がPbであることが好ましい。この場合、Snの含有量が55mass%より少なかったり、65mass%より多いと、共晶組成から大きくずれてしまい、はんだの液相線が高くなることで、固液共存領域が大きくなり、リフロー時のはんだ溶融性や流動性が悪くなり、バンプ形成時のボイドが多くなったり、濡れが悪いことでミッシングバンプが多く発生してしまう。
【0024】
また、このはんだバンプ製造方法において、前記下地形成用ペーストの前記下地はんだ粉末は、Snを主成分として含むPbフリーのSn基はんだであり、Snの含有割合が95mass%以上100mass%以下、残部がAg,Cu,Bi,Sb,InおよびZnからなる群より選ばれた1種または2種以上の金属であることが好ましい。この場合、Snの含有量が95mass%より少なかったり、100mass%より多いと、Sn−AgはんだやSn−Cuはんだなどの共晶組成から大きくずれてしまい、はんだの液相線が高くなることで固液共存領域が大きくなり、リフロー時のはんだ溶融性や流動性が悪くなり、バンプ形成時のボイドが多くなったり、濡れが悪いことでミッシングバンプが多く発生してしまう。また、表面張力を下げたり、濡れを向上させたりすることを目的とした添加元素の効果が得られなくなり、濡れの向上などの効果が得られなくなる。
【0025】
また、このはんだバンプ製造方法において、前記下地形成用ペーストの前記下地はんだ粉末は、平均粒径が0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。この場合、平均粒径が0.1μmより小さいと粉末の表面積が大きく、粉末の酸化程度が高くなることにより、リフロー時の粉末凝集性が著しく低下し、UBM上への濡れが悪く、均一にはんだ層が形成されない。30μmより大きい粉末はペースト化後に粉末沈降によるフラックスとの分離が顕著になるおそれがある。
【0026】
また、このはんだバンプ製造方法において、前記下地形成用ペーストの前記はんだ用フラックスは、溶剤である液体成分に対して、ロジン、活性剤、チキソ剤などの固形成分の重量比が1.5〜2.5であることが好ましい。この場合、下地形成用ペーストのフラックス構成成分におけるロジンやチキソ剤が多いので、リフロー後にフラックスが残留して固形成分がマスク側壁に付着する。この残留フラックスにより、バンプ形成用ペーストをリフローした際の溶融はんだがマスク側壁に付着しにくくなり、これによって開口部のアスペクト比が高くなり、形成されるはんだバンプのアスペクト比を高くすることができる。なお、一般的なはんだバンプ形成用ペーストは、固形成分の重量比が0.65〜1.5である。
【発明の効果】
【0027】
本発明のはんだバンプ製造方法によれば、フリップチップ実装に用いられるはんだバンプにおけるボイドやミッシングバンプの発生を抑えて、アスペクト比が高く健全なバンプを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係るはんだバンプ製造方法において、所望量の下地形成用ペーストおよびバンプ形成用ペーストを所望位置に供給するためのマスク形成工程を示す図である。
図2】本発明に係るはんだバンプ製造方法において、UBM上に下地層を形成する工程を示す図である。
図3】本発明に係るはんだバンプ製造方法において、下地層上にバンプを形成する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るはんだバンプ製造方法について説明する。本発明のはんだバンプ製造方法は、ウエハ10上に形成された金属製のバンプ下地パッド(UBM)12上(図1(a)参照)に、下地はんだ粉末およびはんだ用フラックスを所定のフラックス比率で混合してなる下地形成用ペーストP1を所定厚さで塗布し、リフローしてはんだ下地層20を形成し(図2参照)、次いでこのはんだ下地層20上に、下地はんだ粉末と同種のはんだ粉末およびはんだ用フラックスを混合してなり、下地形成用ペーストP1のフラックス比率よりもはんだ用フラックスの割合が少ないバンプ形成用ペーストP2を所定量供給し、リフローして略球状のはんだバンプ21を形成する(図3参照)。
【0030】
ウエハ10は、図1に示すように、表面に施された配線パターン11上のはんだバンプ位置にUBM12が形成されている。このウエハ10表面において、UBM12が形成されていない部分は、パッシベーション膜13で被覆されている。
【0031】
まず、ウエハ10の所望の部分に下地形成用ペーストP1やバンプ形成用ペーストP2を供給するために、ウエハ10上に、レジスト層を有するドライフィルム14Aを設ける(図1(a))。このドライフィルム14Aに、はんだペーストが印刷充填される微小な開口部14aを形成して、マスク14を形成する。開口部14aは、UBM12との間に隙間を有し、この開口部14aの内周面、ウエハ10の表面およびUBM12に囲まれた充填空間Sが形成される。
【0032】
具体的には、たとえば、まずウエハ10表面にポジ型感光性のドライフィルム14Aを配置し(図1(b))、このドライフィルム14A上に所望のパターンのみに光が通過するように形成されたフォトマスク(図示せず)を載せ、ドライフィルム14Aを露光する。次いで、フォトマスクを外し、ドライフィルム14Aの露光部をエッチング液等で除去することにより、所望のパターン位置に開口部14aが形成され(図1(c))、マスク14が形成される。この開口部14aは、UBM12が露出する位置に形成される。
【0033】
この開口部14aを有するマスク14が表面に形成されたウエハ10において、UBM12上にはんだ下地層20を形成する。具体的には、下地はんだ粉末およびはんだ用フラックスを所定のフラックス比率で混合してなる下地形成用ペーストP1を開口部14a内(充填空間S)に充填し(図2(a))、そのままリフローすることによりはんだを溶融させるとともにフラックスを除去し、はんだ下地層20を形成する(図2(b))。このはんだ下地層20の厚さは、形成されるはんだバンプ21の最終高さの50%以下である。
【0034】
下地形成用ペーストP1は、フラックス比率が80vol%以上90vol%以下である。つまり、通常のバンプ形成用ペーストよりもはんだ粉末の含有量が少ないことにより、リフロー後に残る体積が小さく、UBM12上に薄いはんだ下地層20を形成することができる。また、下地形成用ペーストP1は、粘度が60Pa・s以上150Pa・s以下であり、形成されるはんだ下地層20の厚さは形成されるはんだバンプ21の最終高さの50%以下である。はんだ下地層20を薄く形成することにより、下地形成用ペーストP1のリフロー時に発生したガスを脱出させやすく、大きなボイドが発生し得ないので、はんだ下地層20をUBM12に対して強固に付着形成することができる。
【0035】
下地はんだ粉末が溶融および凝集する際に、それまで混在していたフラックス成分が速やかにはんだと置換されないと、内部に閉じ込められたフラックスが加熱されて気化し、膨大な体積に膨張してボイドとなる。これに対して、この下地形成用ペーストP1は、フラックス比率が比較的高く、粘度が低いため、下地はんだ粉末とはんだ用フラックスとが速やかに置換されるので、はんだ下地層20の形成時におけるボイドの発生を抑えることができる。
【0036】
また、この下地形成用ペーストP1は、はんだフラックスにおける液体成分に対する固体成分の比率が1.5以上2.5以下である。固体成分とは、ロジン、活性剤、チキソ剤などであって、はんだ下地層20を形成するリフロー後にマスク14の開口部14aの内面に付着して残留し(図示略)、溶融状態のはんだが開口部14aの内面に付着することを防止する。
【0037】
また、この下地形成用ペーストP1に含まれる下地はんだ粉末は、PbおよびSnを含むPb−Sn合金からなり、Snの含有割合が55mass%以上65mass%以下であり、残部がPbであり、平均粒径が0.1μm以上30μm以下である。下地はんだ粉末がこのような組成およびサイズであることにより、ペースト保管中も粉末とフラックスとの分離がなく、UBMへの濡れ拡がりも良好となる。
【0038】
なお、この下地形成用ペーストP1に含まれる下地はんだ粉末は、Snを主成分として含むPbフリーのSn基はんだであり、Snの含有割合が95mass%以上100mass%以下、残部がAg,Cu,Bi,Sb,InおよびZnからなる群より選ばれた1種または2種以上の金属であってもよい。この場合、UBMへの濡れ拡がりも良好となる。
【0039】
このはんだ下地層20を形成した際、UBM12の外側のパッシベーション膜13上に、微細な粒状にはんだが残留する場合がある。このようにはんだが残留しているようであれば、十分な量のはんだが供給され、はんだ下地層20がUBM12の全面に形成されていると判断できる。なお、はんだはパッシベーション膜13に対して固着しておらず、バンプ形成用ペーストP2を供給した後のリフロー時に集められて、はんだバンプ21に取り込まれる。
【0040】
次いで、下地はんだ粉末と同種のはんだ粉末およびはんだ用フラックスを混合してなり下地形成用ペーストP1のフラックス比率よりもはんだ用フラックスの割合が少ないバンプ形成用ペーストP2を、はんだ下地層20およびUBM12に対してさらに供給し、リフローしてはんだバンプ21を形成する。具体的には、充填空間S内にバンプ形成用ペーストP2を充填し(図3(a))、そのままリフローすることにより、バンプ形成用ペーストP2のはんだ粉末とともにはんだ下地層20を溶融させ、はんだ用フラックスを除去する(図3(b))。その後、ウエハ10表面からマスク14を除去し(図3(c))、ウエハ10のUBM12上にはんだバンプ21を形成する。
【0041】
バンプ形成用ペーストP2を充填空間S内に充填後にリフローするとき、UBM12上には既にはんだ下地層20が形成されており、またこのはんだ下地層20にはボイドがほとんど形成されていない。このため、リフローによりバンプ形成用ペーストP2が溶融されると、溶融したはんだ下地層20とともにUBM12上にはんだが凝集する。これにより、ボイドがないはんだバンプ21がウエハ10のUBM12上に形成される。
【0042】
また、はんだ下地層20が形成された後の開口部14aは、その内面に下地形成用ペーストP1の固体成分が付着している。このため、バンプ形成用ペーストP2を塗布した後のリフロー時に、溶融状態のはんだが開口部14aの内面に付着しにくく、溶融状態のはんだが開口部14aの壁面に付着して横長に広がることが防止される。つまり、下地形成用ペーストP1の固体成分を多くすることにより、形成されるバンプ21のアスペクト比を高くすることができる。
【0043】
以上説明したように、本発明のはんだバンプ製造方法によれば、ボイドのない薄いはんだ下地層20をUBM12上に形成し、その上にバンプ形成用ペーストP2を供給してリフローするので、内部に残留する大きなボイドがなく、フリップチップ実装の接合信頼性の高いバンプ21を得ることができる。
【実施例】
【0044】
表1に示すように、含有するはんだ粉末の平均粒径や成分、はんだ用フラックスの成分比、フラックス比率、ペースト粘度などを変えて作製した下地形成用ペーストおよびバンプ形成用ペーストを用いてサンプル1〜7のはんだバンプを形成し、発生したボイドや形成されたバンプの高さなどを比較した(表2)。
【0045】
(サンプル1)
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が2.3であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率45mass%で混合し混練することにより、粘度が62Pa・sの下地形成用ペーストを作製した。
【0046】
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率10mass%で混合し混練することにより、粘度は90Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。
【0047】
(サンプル2)
粒径が5〜15μm(平均粒径11μm)のSn−3mass%Ag−0.5mass%Cuからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.8であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率40mass%で混合し混練することにより、粘度が65Pa・sの下地形成用ペーストを作製した。
【0048】
粒径が5〜15μm(平均粒径11μm)のSn−3mass%Ag−0.5mass%Cuからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率11mass%で混合し混練することにより、粘度が100Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。
【0049】
(サンプル3)
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率10mass%で混合し混練することにより、粘度が90Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。このサンプル3では、下地形成用ペーストは使用せず、下地層を形成せずにはんだバンプを形成した。
【0050】
(サンプル4)
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が2.3であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率20mass%で混合し混練することにより、粘度が120Pa・sの下地形成用ペーストを作製した。
【0051】
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率10mass%で混合し混練することにより、粘度が90Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。
【0052】
(サンプル5)
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率45mass%で混合し混練することにより、粘度が40Pa・sの下地形成用ペーストを作製した。
【0053】
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率10mass%で混合し混練することにより、粘度が90Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。
【0054】
(サンプル6)
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率70mass%で混合し混練することにより、粘度が30Pa・sの下地形成用ペーストを作製した。
【0055】
粒径が10〜32μm(平均粒径23μm)のPb−63mass%Snからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率10mass%で混合し混練することにより、粘度が90Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。
【0056】
(サンプル7)
粒径が5〜15μm(平均粒径11μm)のSn−3mass%Ag−0.5mass%Cuからなるはんだ粉末と、液体成分(溶剤)に対する固体成分(ロジン、活性剤、有機酸および増粘剤)が1.2であるはんだ用フラックスとを、フラックス比率11mass%で混合し混練することにより、粘度が100Pa・sのバンプ形成用ペーストを作製した。このサンプル7では、下地形成用ペーストは使用せず、UBM上にはんだ下地層を形成せずにはんだバンプを形成した。
【0057】
【表1】
【0058】
(比較試験)
前述のサンプル1〜7について、冷蔵3カ月経過時の下地形成用ペーストにおけるはんだ用フラックスとはんだ粉末との分離の有無、総バンプ500個において発生したボイドの大きさ(バンプ直径に対するボイド径の比率)別の個数、形成されたバンプの最終高さを確認した。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
バンプは、開口径120μm、厚み75μmでパターン形成されたレジストを備えるウエハ上に、シリコン/Al/NiV/Cuにより形成されたUBMに対して形成した。UBM径は100μmである。そして、形成したバンプ内について、内部に発生したボイドを透過型X線により観察し、最終バンプ高さを3次元測定器により測定した。大きなボイドが数多く発生したバンプは不良であるので、Maxボイド径が30%以上である場合、換言すると、バンプ径に対して30%以上のボイドが1個でも発生していればNGと判断した。なお、Maxボイド径は25%以下であることがより好ましい。
【0061】
この比較試験の結果、以下のことを確認できた。
(1)はんだ下地層の有無による影響
サンプル1およびサンプル3では、同じバンプ形成用ペーストを用いてバンプを形成した。しかしながら、はんだ下地層を形成したサンプル1では30%を超える大きさのボイドが生じなかったのに対し、はんだ下地層を形成しなかったサンプル3では30%を超える大きさのボイドが生じたため、NGとなった。
【0062】
また、同じバンプ形成用ペーストを用いてバンプを形成したサンプル2とサンプル7とを比較したところ、はんだ下地層を形成したサンプル2では30%を超える大きさのボイドが生じなかったのに対し、はんだ下地層を形成しなかったサンプル7では、30%を超える大きさのボイドが生じたため、NGとなった。これらの比較から、はんだ下地層を形成することによって、大きなボイドの発生を抑えることができることが確認できた。
【0063】
(2)下地形成用ペーストの粘度によるボイド発生に対する影響
サンプル1およびサンプル4では、同じバンプ形成用ペーストを用いたが、下地形成用ペーストにおける粘度が異なる。サンプル1,4のうち、ペースト粘度が高い下地形成用ペーストを用いたサンプル4では、30%を超える大きさのボイドは生じず、一定のボイド抑制効果は得られているが、25%を超えるボイドが生じていた。これに対し、ペースト粘度が低い下地形成用ペーストを用いたサンプル1では、25%を超えるボイドは発生せず、一層高いボイド抑制効果を確認できた。このことから、下地形成用ペーストの粘度の上限を定めることが好ましいと確認できた。
【0064】
(3)下地形成用ペーストの粘度によるはんだ粉末分離に対する影響
サンプル5では、サンプル1,4と同じバンプ形成用ペーストと、サンプル1よりも粘度の低い下地形成用ペーストとを用いてバンプを形成したところ、大きなボイドの発生は抑えられた。しかしながら、冷蔵3カ月経過時に下地形成用ペーストに分離が発生していた。つまり、粘度が低い下地形成用ペーストを用いる場合は、長期保存しない、あるいは使用前に十分攪拌するなどの対策を施し、下地形成用ペーストに分離が生じていない状態とする必要はあるものの、大きなボイドのない良好なバンプを形成できることが確認できた。
【0065】
(4)下地形成用ペーストのフラックス比率によるボイド発生に対する影響
サンプル5よりもフラックス比率が高い下地形成用ペーストを用いたサンプル6では、冷蔵3カ月経過時に分離が発生した。また、サンプル6では、30%を超える大きさのボイドは生じず、一定のボイド抑制効果は得られてはいるが、25%を超えるボイドが生じていた。つまり、下地形成用ペーストのフラックス比率が高すぎると、はんだ粉末が分離するおそれがあるとともに、ボイド抑制効果が低下する。これは、粘度が低すぎたためにUBM上に適切なはんだ下地層が形成されなかったためと考えられる。このことから、下地形成用ペーストの粘度の下限を定めることが好ましいと確認できた。
【0066】
(5)フラックス中の固体成分比による最終バンプ高さに対する影響
下地形成用ペーストのフラックスにおける液体成分に対する固体成分の比率が高いサンプル1,2,4では、最終バンプ高さが80μm以上となった。これに対して、下地形成用ペーストのフラックスにおける液体成分に対する固体成分の比率が低いサンプル5,6では、最終バンプ高さが74〜76μmとなった。このことから、下地形成用ペーストのフラックス中の固体成分を多くすることにより、アスペクト比の高いバンプが形成されことを確認できた。
【符号の説明】
【0067】
10 ウエハ
11 配線パターン
12 バンプ下地パッド(UBM)
13 パッシベーション膜
14 マスク
14A ドライフィルム
14a 開口部
20 はんだ下地層
21 はんだバンプ
P1 下地形成用ペースト
P2 バンプ形成用ペースト
S 充填空間
図1
図2
図3