【実施例】
【0037】
実施例では、条件が異なる空気入りタイヤについて、燃費指数、騒音性能、操縦安定性に関するタイヤ性能試験が行われた。
【0038】
これらの性能試験では、各テストタイヤに適合する上述したサイズのリムを組付け、各々に230[kPa]の内圧を充填して行われた。
【0039】
これより、テストタイヤについて行われた性能試験の試験方法について説明する。
【0040】
(燃費指数)
テストタイヤを排気量1800ccの小型前輪駆動車に装着し、全長2kmのテストコースを時速100km/hにて50周走行した。従来例の燃料消費率を100としたときの燃費改善率を測定した。指数が大きいほど燃費が良いことを表している。
【0041】
(操縦安定性)
テストタイヤを標準リムにリム組みして乗用車(排気量1800cc)に装着し、1周2kmのテストコースをレーンチェンジしながら3周走行したときのフィーリングを3人の専門ドライバーにより評価した。評価結果は、比較例1のフィーリング評価点の平均値を100としたときの、各テストタイヤの評価点の平均値を指数で表示した。この指数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを示す。
【0042】
(騒音性能)
JASO C−606に規定されている方法に準じて、テストタイヤを乗用車(排気量1800cc)に装着し、乾燥路面において速度60km/hで走行し、その走行路から7.5m離れた位置において騒音レベル[dB]を測定した。評価結果は従来例の測定値を基準値とし、この基準値との差を示した。つまり、テストタイヤの評価結果がマイナス(−)の値である場合は、当該テストタイヤの騒音レベルが基準値よりも減少しており、ひいては、そのテストタイヤの騒音性能が優れていることが示される。
【0043】
(排水性能)
テストタイヤを乗用車(排気量1800cc)に装着し、直線ハイドロプレーニング試験を行い、ハイドロプレーニングが発生した速度を計測して評価した。この直線ハイドロプレーニング試験は、水深10mmのプールを、速度を上げながら進入し、そのときの空気入りタイヤのスリップ率を測定する。このときのスリップ率が10%となったときをハイドロプレーニング発生速度とする。この試験では従来レイでの計測結果を100として他の例の計測結果を指数化した。本実施例では、指数の値が大きいほどハイドロプレーニング性能、ひいては排水性能が優れていることを示す。
【0044】
これより、各テストタイヤ及びその性能試験結果について説明する。
【0045】
(従来例)
従来例に係る空気入りタイヤは、タイヤサイズが205/55R16であり、その「SW/OD」の値が0.32であり、すなわち式<1>を満たさない。従来例に係る空気入りタイヤのトレッド部には、
図3に示されているトレッドパターンが設けられている。
【0046】
(実施例1〜14)
実施例1〜14に係る空気入りタイヤは、タイヤサイズがそれぞれ異なり、「SW/OD」が0.30〜0.21の範囲の値を取り、すなわち式<1>を満たす。実施例1〜14に係る空気入りタイヤのトレッド部10には、
図3に示されているトレッドパターンを基礎として各タイヤサイズに適合するように変更されたトレッドパターンが設けられている。
【0047】
従来例及び実施例1〜14に係る空気入りタイヤについて、燃費指数に関する性能試験が行われた。表3には、各テストタイヤの寸法に関する数値と、性能試験結果とが示されている。
【0048】
【表3】
【0049】
表3の性能試験結果によれば、式<1>を満たす実施例1〜14に係るテストタイヤは、従来例よりも燃費指数において優れている。この性能試験結果により、試験されたタイヤサイズのうちでは、タイヤサイズ165/55R20(実施例11)であれば、タイヤサイズ205/55R16に対して燃費が十分に改善されることが確認された。したがって、以後のトレッドパターンに関する試験については、このタイヤサイズが使用される。
【0050】
(実施例15〜17、比較例1〜3)
実施例15〜17及び比較例1〜3に係る空気入りタイヤは、タイヤサイズが165/55R20であり、溝面積比率GRが8〜27%の範囲で振り分けられたテストタイヤである。ここで、実施例15〜17は式<1>〜<4>の関係の全てを満たしているが、比較例1〜3は式<2>の関係を満たさない。
【0051】
実施例15に係る空気入りタイヤのトレッド部には、
図2に示されているトレッドパターンが設けられている。その他、以降の実施例(16〜27)及び比較例(1〜4)に係る空気入りタイヤのトレッド部には、
図2のトレッドパターンを基礎として、各テストタイヤに設定されている溝面積比率GRなどの各寸法パラメータに適合するように変更されたトレッドパターンが設けられている。ここで一例として、実施例17に係る空気入りタイヤのトレッド部に配されたトレッドパターンを
図4に示す。実施例16〜27及び比較例1〜4に係る空気入りタイヤでは、
図4に示されたトレッドパターンのように、
図2のトレッドパターンを基礎として、周方向溝12及び幅方向溝16の溝面積や、周方向溝12の数及びタイヤ幅方向位置などを変更することによって、各テストタイヤの各寸法パラメータに適合させている。
【0052】
(実施例18〜21、比較例4)
実施例18〜21及び比較例4に係る空気入りタイヤは、タイヤサイズが165/55R20であり、「GSR/GCR」が0.8〜2.2の範囲で振り分けられたテストタイヤである。上述のように、実施例18〜21及び比較例4に係る空気入りタイヤのトレッド部には、
図2を基礎として変更されたトレッドパターンが設けられている。ここで、実施例18〜21は式<1>〜<3>の関係を満たしている。さらに、実施例18〜20は式<4>の関係を満たすが、実施例21は式<4>の関係を満たさない。
【0053】
従来例、実施例15〜21及び比較例1〜4に係る空気入りタイヤについて、燃費指数、騒音性能、操縦安定性及び排水性能に関する性能試験が行われた。表4には、各テストタイヤの寸法に関する数値と、性能試験結果とが示されている。
【0054】
【表4】
【0055】
表4の性能試験結果によれば、式<1>〜式<3>の関係を満たす実施例15〜21に係るテストタイヤは、燃費指数で従来例を上回る上に、騒音性能についても従来例を上回る。つまり、これらテストタイヤは、転がり抵抗を低減しつつ、車外音も同時に低減させることができる。なお、比較例2に係るテストタイヤは、燃費指数及び騒音性能について従来例を上回るものの、排水性能では従来例を大きく下回る。式<2>の関係を満たさない、比較例2に係るテストタイヤのトレッド部に配された溝が少ないからである。それに対して、実施例15〜17に係るテストタイヤは、従来例に対してほぼ同じ又は従来例を上回る排水性能を有しており好ましい。
【0056】
さらに、表4の性能試験結果によれば、式<1>〜<4>の関係を満たす実施例15〜20に係るテストタイヤは、燃費指数で従来例を上回る上に、騒音性能及び操縦安定性の両方の性能において従来例を上回る。なお、実施例21は、操縦安定性において従来例を下回る。この結果は、実施例21に係る空気入りタイヤのトレッド部のショルダー領域ASにより多くの溝を配したことによるものと思われる。
【0057】
(実施例22〜25)
実施例22〜25に係る空気入りタイヤは、タイヤサイズが165/55R20である。上述のように、実施例22〜25に係る空気入りタイヤのトレッド部には、
図2を基礎として変更されたトレッドパターンが設けられている。ここで、実施例23〜25はさらに式<5>の関係を満たすが、実施例22は式<5>の関係を満たさない。また、実施例22〜24はさらに溝面積比率GCR1が20%以下であるが、実施例25は溝面積比率GCR1が20%以上である。
【0058】
従来例及び実施例22〜25に係る空気入りタイヤについて、燃費指数及び騒音性能に関する性能試験が行われた。表5には、各テストタイヤの寸法に関する数値及び条件と、性能試験結果とが示されている。なお、以下の表5及び表6の「GCR1,GCR2比較」の項目において、「GCR1>」は溝面積比率GCR1が溝面積比率GCR2よりも大きいことを示し、「GCR2>」は溝面積比率GCR2が溝面積比率GCR1よりも大きいことを示している。つまり、「GCR2>」と表示されたテストタイヤは、式<5>を満たすことを意味している。
【0059】
【表5】
【0060】
表5の性能試験結果によれば、式<5>の関係を満たしかつ溝面積比率GCR1が20%以下である、実施例23及び実施例24に係る空気入りタイヤは、騒音性能において、実施例22及び実施例25を上回っている。つまり、車外音がさらに低減されている。
【0061】
(実施例26、実施例27)
実施例26及び実施例27に係る空気入りタイヤは、タイヤサイズが165/55R20である。上述のように、実施例26及び実施例27に係る空気入りタイヤのトレッド部には、
図2を基礎として変更されたトレッドパターンが設けられている。ここで、実施例26はさらに式<6>の関係を満たすが、実施例27は式<6>の関係を満たさない。
【0062】
従来例、実施例26及び実施例27に係る空気入りタイヤについて、燃費指数及び騒音性能に関する性能試験が行われた。表6には、各テストタイヤの寸法に関する数値及び条件と、性能試験結果とが示されている。
【0063】
【表6】
【0064】
表6の性能試験結果によれば、式<6>の関係を満たす実施例26は、騒音性能において、従来例及び式<6>の関係を満たさない実施例27よりも上回る。つまり、車外音がさらに低減されている。
【0065】
以上の表3〜6に示されたタイヤ試験結果により、本発明に係る空気入りタイヤは、転がり抵抗を低減しつつ、車外音も同時に低減できることが確認された。
【0066】
本発明は、以下のように規定される。
【0067】
(1) トレッド部に溝が設けられている空気入りタイヤであって、
前記空気入りタイヤの総幅SWと外径ODとの比であるSW/ODが、
SW/OD ≦ 0.3
を満たし、
前記トレッド部の接地領域において、接地面積に対する溝面積比率をGRとし、接地幅をWとし、タイヤ赤道線を中心として接地幅Wの50%の幅を有する領域をセンター領域ACとし、前記センター領域ACでの溝面積比率をGCRとし、前記センター領域ACよりもタイヤ幅方向外側の接地領域をショルダー領域ASとし、前記ショルダー領域ASでの溝面積比率をGSRとした場合に、
前記トレッド部の接地領域は、
10[%] ≦ GR ≦ 25[%]
GCR ≦ GSR
を満たして形成されている、
空気入りタイヤ。
【0068】
(2) 前記GCRと前記GSRの関係が、
1.0 ≦ GSR/GCR ≦ 2.0
を満たす、
(1)に記載の空気入りタイヤ。
【0069】
(3) タイヤ赤道線を中心として接地幅Wの25%に相当する幅を有する領域を領域AC1とし、前記領域AC1における溝面積比率をGCR1とし、前記センター領域ACのうちの前記領域AC1よりも幅方向外側に含まれる領域を領域AC2とし、前記領域AC2における溝面積比率をGCR2としたときに、
GCR1 < GCR2
を満たす、
(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤ。
【0070】
(4) 前記溝面積比率GCR1が20%以下である、
(3)に記載の空気入りタイヤ。
【0071】
(5) タイヤ周方向に延びる周方向溝が、前記トレッド部に1本以上設けられ、
前記センター領域ACにおける前記周方向溝の溝面積比率をAとすると、前記溝面積比率GCRに対する比が、
0 ≦ A/GCR ≦ 1.0
を満たす、
(1)〜(4)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0072】
(6) 前記ショルダー領域ASに少なくとも一部が含まれると共に前記周方向溝によって区画された陸部のうちのタイヤ幅方向の最も外側に位置する陸部に、幅方向溝が設けられ、
前記幅方向溝のタイヤ幅方向の内側終端又は外側終端のうちいずれか一方は、前記陸部内で終端する、
(1)〜(5)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。