特許第6187582号(P6187582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187582
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20170821BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-509876(P2015-509876)
(86)(22)【出願日】2014年2月21日
(86)【国際出願番号】JP2014000917
(87)【国際公開番号】WO2014162652
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2015年9月4日
(31)【優先権主張番号】特願2013-76313(P2013-76313)
(32)【優先日】2013年4月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】金子 公寿
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−139897(JP,A)
【文献】 特開平07−312491(JP,A)
【文献】 特開2004−282804(JP,A)
【文献】 特開2012−120381(JP,A)
【文献】 特開2010−035347(JP,A)
【文献】 特開2000−232792(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/031147(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/162652(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パワーモジュールと、
この半導体パワーモジュールに面接合された冷却体と、
前記半導体パワーモジュールを駆動するための回路部品が実装され、前記半導体パワーモジュールに対して上部方向に積層された複数の実装基板と、
前記半導体パワーモジュール及び前記複数の実装基板を密閉して収納している筐体と、
この筐体の内部で前記半導体パワーモジュール及び前記複数の実装基板の外周を囲って配置した風向部と、を備え、
当該風向部は、前記半導体パワーモジュール側に前記筐体の内部空間と連通する吸気口を設け、前記半導体パワーモジュールから最も離間している第1の実装基板側に前記筐体の内部空間と連通する排気口を設け、前記吸気口から前記筐体内部の空気を取り入れ、前記排気口から前記風向部の内部の空気が前記筐体に排出されるように、前記半導体パワーモジュール側から前記第1の実装基板側に向かう空気の自然対流を発生させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記風向部は、前記半導体パワーモジュール及び前記複数の実装基板の長辺、或いは短辺に沿って配置され、前記第1の実装基板側まで立ち上がる風向板を備え、この風向板に複数の前記吸気口が形成されていることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記風向部は、前記半導体パワーモジュール及び前記複数の実装基板の長辺に沿って配置され、前記第1の実装基板側まで立ち上がる一対の長尺側風向板を備え、これら長尺側風向板の前記長辺に沿う方向に複数の前記吸気口が形成されていることを特徴とする請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記風向部は、前記半導体パワーモジュール及び前記複数の実装基板の短辺に沿って配置され、前記第1の実装基板側まで立ち上がる一対の短尺側風向板を備え、これら短尺側風向板の前記短辺に沿う方向に複数の前記吸気口が形成されていることを特徴とする請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記風向部は、前記第1の実装基板側に近接して配置した天井風向板を備え、この天井風向板の長手方向に複数の排気口が形成されていることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置
【請求項6】
前記長尺側風向板に水平風向板を設け、この水平風向板は、上下に隣接する一対の実装基板の間に、それら実装基板の短辺側の途中まで延在するように配置されていることを特徴とする請求項3記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記風向部は、前記半導体パワーモジュールに一体に固定する固定部を備えていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記一対の長尺側風向板は、前記複数の実装基板を前記半導体パワーモジュールとの間に間隔を保って支持するとともに前記複数の実装基板の熱を冷却体に伝熱する伝熱支持部材であることを特徴とする請求項3,4,6の何れか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換用の半導体スイッチング素子を内蔵した半導体パワーモジュールと、この半導体パワーモジュールに対して所定の間隔をあけて積層した複数の実装基板とを備えた電力変換装置に係り、半導体パワーモジュール及び複数の実装基板の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電力変換装置は、筐体内部に、半導体スイッチング素子としてのIGBTなどの電力変換用のパワー半導体やパワー半導体を駆動する駆動基板、冷却ファンなどが収納されており、冷却ファンの回転駆動により、筐体に設けた通風口から外気を取り入れて筐体内部に強制対流を発生させる。このように、冷却ファンによる空気の強制対流により、電力変換時の電気的損失により発熱したパワー半導体や駆動基板を冷却する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−33910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1の電力変換装置は、通風口から外気を取り入れるので、粉塵、湿気が筐体内部に入り込み、冷却特性が低下し、或いは内部部品が腐食するおそれがある。
また、定期的な冷却ファンの保守が必要であり、メンテナンスコストの面で問題がある。
そこで、本発明は、粉塵、湿気などの影響を防止することができ、保守点検を不要としてメンテナンスコストを低減することができる電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電力変換装置は、半導体パワーモジュールと、この半導体パワーモジュールに面接合された冷却体と、前記半導体パワーモジュールを駆動するための回路部品が実装され、前記半導体パワーモジュールに対して上部方向に積層された複数の実装基板と、前記半導体パワーモジュール及び前記複数の実装基板を密閉して収納している筐体と、この筐体の内部で前記半導体パワーモジュール及び前記複数の実装基板の外周を囲って配置した風向部と、を備え、当該風向部は、前記半導体パワーモジュール側に前記筐体の内部空間と連通する吸気口を設け、前記半導体パワーモジュールから最も離間している第1の実装基板側に前記筐体の内部空間と連通する排気口を設け、前記吸気口から前記筐体内部の空気を取り入れ、前記排気口から前記風向部の内部の空気が前記筐体に排出されように、前記半導体パワーモジュール側から前記第1の実装基板側に向かう空気の自然対流を発生させるようにした。
【0006】
この発明の一態様に係る電力変換装置によると、風向部の内部で発生する空気の自然対流により複数の実装基板に搭載した発熱する回路部品を冷却しているので、冷却ファンなどの装置を使用して強制的に冷却空気を発生する従来装置と比較して、保守点検が不要となり、メンテナンスコストを大幅に低減することができる。
また、密閉空間である筐体の空気が風向部の内部を循環するので、半導体パワーモジュール及び複数の実装基板に対する粉塵、湿気などの悪影響を防止することができる。
また、本発明の一態様に係る電力変換装置は、前記風向部が、前記半導体パワーモジュール及び前記複数の実装基板の長辺、或いは短辺に沿って配置され、前記第1の実装基板側まで立ち上がる風向板を備え、この風向板に複数の前記吸気口が形成されている。
【0007】
また、本発明の一態様に係る電力変換装置は、前記風向部が、前記半導体パワーモジュール及び前記複数の実装基板の長辺に沿って配置され、前記第1の実装基板側まで立ち上がる一対の長尺側風向板を備え、これら長尺側風向板の前記長辺に沿う方向に複数の前記吸気口が形成されている。
また、本発明の一態様に係る電力変換装置は、前記風向部が、前記半導体パワーモジュール及び前記複数の実装基板の短辺に沿って配置され、前記第1の実装基板側まで立ち上がる一対の短尺側風向板を備え、これら短尺側風向板の前記短辺に沿う方向に複数の前記吸気口が形成されている。
【0008】
また、本発明の一態様に係る電力変換装置は、前記風向部が、前記第1の実装基板側に近接して配置した天井風向板を備え、この天井風向板の長手方向に複数の排気口が形成されている。
これらの発明の一態様に係る電力変換装置によると、半導体パワーモジュール及び複数の実装基板の長辺側に流量を多くした自然対流の空気が流れるので、冷却効率を高めることができる。
また、本発明の一態様に係る電力変換装置は、前記長尺側風向板に水平風向板を設け、この水平風向板は、上下に隣接する一対の実装基板の間に、それら実装基板の短辺側の途中まで延在するように配置されている。
この発明の一態様に係る電力変換装置によると、所定の実装基板の発熱する回路部品に、冷却空気を直接接触させることができるので、さらに冷却効率を高めることができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る電力変換装置は、前記風向部が、前記半導体パワーモジュールに一体に固定する固定部を備えている。
この発明の一態様に係る電力変換装置によると、風向部が固定部を介して半導体パワーモジュールに一体化されていることで、電力変換装置の組み立て工数を減少させることができる。
さらに、本発明の一態様に係る電力変換装置は、前記一対の長尺側風向板は、前記複数の実装基板を前記半導体パワーモジュールとの間に間隔を保って支持するとともに前記複数の実装基板の熱を冷却体に伝熱する伝熱支持部材である。
この発明の一態様に係る電力変換装置によると、伝熱支持部材は、実装基板の熱を冷却体に伝熱する機能と、空気の自然対流を発生させる機能を備えているので、さらに冷却効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電力変換装置によれば、風向部の内部で発生する空気の自然対流により複数の実装基板に搭載した発熱する回路部品を冷却しているので、冷却ファンなどの装置を使用して強制的に冷却空気を発生する従来装置と比較して、保守点検が不要となり、メンテナンスコストを大幅に低減することができるとともに、密閉空間である筐体の空気が風向部の内部を循環するので、半導体パワーモジュール及び複数の実装基板に対する粉塵、湿気などの悪影響を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る第1実施形態の電力変換装置を示す短尺方向から見た断面図である。
図2】本発明に係る第1実施形態の電力変換装置を示す長尺方向から見た断面図である。
図3】本発明に係る第1実施形態の電力変換装置の内部で発生する空気の自然対流を示す図である。
図4】本発明に係る第2実施形態の電力変換装置を示す短尺方向から見た断面図である。
図5】本発明に係る第3実施形態の電力変換装置を示す短尺方向から見た断面図である。
図6】本発明に係る第3実施形態の電力変換装置の内部で発生する空気の自然対流を示す図である。
図7】本発明に係る第4実施形態の電力変換装置を示す短尺方向から見た断面図である。
図8】本発明に係る第4実施形態の伝熱支持部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
以下、車両の走行用モータを駆動するモータ駆動回路に適用した本発明に係る電力変換装置の第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
図1は、外観直方体形状の電力変換装置を短尺方向から見た断面図、図2は、電力変換装置1を長尺方向から見た断面図である。
本実施形態の電力変換装置1は、アルミニウム合金などの金属からなる筐体2を備え、筐体2は、水冷ジャケットの構成を有する冷却体3を挟んで上下に分割された下部筐体2A及び上部筐体2Bを有している。
【0013】
冷却体3は、例えば熱伝導率の高いアルミニウム、アルミニウム合金を直方体形状に射出成形したものである。この冷却体3の長尺方向の一端側には、下部筐体2Aに保持されたフィルムコンデンサ4の絶縁被覆された正負の電極4aを上下に挿通する挿通孔3eが形成されている。
そして、この冷却体3には冷却水路3aが形成されており、冷却水路3aの一端が図示しない冷却水供給源に接続され、冷却水路3aの他端から冷却水が外部に排出されるようになっている。
下部筐体2Aは、有底角筒体で構成され、開放上部が冷却体3で覆われており、内部に平滑用のフィルムコンデンサ4が収納されている。一方、上部筐体2Bは、上端及び下端に開放された角筒体2aと、この角筒体2aの上端を閉塞する蓋体2bとを備えている。角筒体2aの下端は冷却体3で閉塞されている。角筒体2aの下端と冷却体3との間には、図示しないが、液状シール剤の塗布やゴム製パッキンの挟み込みなどのシール材が介在されている。
【0014】
図1に示すように、電力変換装置1は、電力変換用の例えばインバータ回路を構成する半導体スイッチング素子として、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を内蔵した半導体パワーモジュール11を備えている。
半導体パワーモジュール11は、扁平な直方体状の絶縁性のケース体12内にIGBTを内蔵しており、ケース体12の下面に金属製の放熱部材13が形成されている。ケース体12及び放熱部材13には、平面視で四隅に固定部材としての挿通孔15が形成されており、挿通孔15に挿通した固定ねじ14を冷却体3の上面に形成したねじ孔に螺合することで、冷却体3の上面に半導体パワーモジュール11が固定されている。
【0015】
ケース体12の上面の4箇所には、所定高さの基板固定部16が突出形成されている。
基板固定部16の上端には、半導体パワーモジュール11に内蔵されたIGBTを駆動する駆動回路等が実装された駆動回路基板21が固定されている。
駆動回路基板21の上方には、駆動回路基板21との対向方向に所定間隔を保って電源回路基板22が固定されている。電源回路基板22は、半導体パワーモジュール11に内蔵されたIGBTに電源を供給する発熱回路部品を含む電源回路等が実装されている。
さらに、電源回路基板22の上方には、電源回路基板22との対向方向に所定間隔を保って制御回路基板23が固定されている。制御回路基板23は、半導体パワーモジュール11に内蔵されたIGBTを制御する相対的に発熱量の大きい、又は発熱密度の大きい発熱回路部品を含む制御回路等が実装されている。
【0016】
そして、駆動回路基板21は、基板固定部16に対向する位置に形成した挿通孔内に継ぎねじ24の雄ねじ部を挿通し、この雄ねじ部を基板固定部16の上面に形成した雌ねじ部に螺合することにより固定されている。
また、電源回路基板22は、継ぎねじ24の上端に形成した雌ねじ部に対向する位置に形成した挿通孔内に継ぎねじ25の雄ねじ部を挿通し、この雄ねじ部を継ぎねじ24の雌ねじ部に螺合することにより固定されている。
さらに、制御回路基板23は、継ぎねじ25の上端に形成した雌ねじ部に対向する位置に形成した挿通孔内に固定ねじ26を挿通し、この固定ねじ26を継ぎねじ25の雌ねじ部に螺合することにより固定されている。
このように、各基板21,22,23は、基板固定部16、継ぎねじ24,25を介して半導体パワーモジュール11の上方に、長辺側及び短辺側を一致させた状態で所定間隔をあけて積層されている。
【0017】
半導体パワーモジュール11、駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23は、風向部30により周囲が覆われている。
風向部30は、下面が開口した有蓋箱形状の部材であり、半導体パワーモジュール11及び各基板21,22,23の長辺に沿って立ち上がる長尺側風向板30a,30bと、半導体パワーモジュール11及び各基板21,22,23の短辺に沿って立ち上がる短尺側風向板30c,30dと、長尺側風向板30a,30b及び短尺側風向板30c,30dの上部を閉塞して形成した天井風向板30eと、長尺側風向板30a,30b及び短尺側風向板30c,30dの下部から外方に突出している四角枠状のフランジ30fとを備えている。
【0018】
そして、フランジ30fが固定ねじ31を介して冷却体3の上面に固定されることで、風向部30の長尺側風向板30a,30b、短尺側風向板30c,30d及び天井風向板30eが、半導体パワーモジュール11及び駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23の周囲を囲っている。
ここで、風向部30の天井風向板30eは、制御回路基板23に近接して配置されている。
また、図2に示すように、この風向部30の長尺側風向板30bには、フランジ30fに近接する位置(冷却体3に寄った位置)に、長尺方向に所定間隔をあけて円形状の複数の吸気口32が形成されている。なお、図示しないが、長尺側風向板30aのフランジ30fに近接する位置にも、長尺方向に所定間隔をあけて複数の吸気口32が形成されている。
また、この風向部30の短尺側風向板30c,30dbにも、冷却体3に寄った位置に、短尺方向に所定間隔をあけて円形状の複数の吸気口32が形成されている。
さらに、天井風向板30eの短尺方向の中央部にも、長尺方向に所定間隔をあけて円形状の複数の排気口33が形成されている。
【0019】
また、図2に示すように、半導体パワーモジュール11の長尺方向の一端側に設けた正負の直流入力端子に11aに外部コネクタ50の一端が接続され、この外部コネクタ50の他端に冷却体3を貫通するフィルムコンデンサ4の正負の電極4aが固定ねじ51で連結されている。また、直流入力端子11aに外部のコンバータ(不図示)に接続する接続コード52の先端に固定された圧着端子53が固定されている。
さらに、半導体パワーモジュール11の長尺方向の他端側に設けた3相交流出力端子11bにブスバー55が固定ねじ56でそれぞれ接続され、このブスバー55の途中に電流センサ57が配置されている。そして、外部の3相電動モータ(不図示)に接続したモータ接続ケーブル58の先端に固定した圧着端子59がブスバー55の他端に固定ねじ60を介して接続されている。
【0020】
この状態で、外部のコンバータ(不図示)から直流電力を供給するとともに、電源回路基板22に実装された電源回路、制御回路基板23に実装された制御回路を動作状態とし、制御回路から例えばパルス幅変調信号でなるゲート信号を駆動回路基板21に実装された駆動回路を介して半導体パワーモジュール11に供給する。これによって、半導体パワーモジュール11に内蔵されたIGBTが制御されて、直流電力を交流電力に変換する。変換した交流電力は3相交流出力端子11bからブスバー55を介してモータ接続ケーブル58に供給され、上記3相電動モータを駆動制御することができる。
このとき、半導体パワーモジュール11は、内蔵されたIGBTから発熱するが、この発熱は半導体パワーモジュール11に形成された放熱部材13が冷却体3に直接接触されているので、冷却体3の冷却水路3aに供給されている冷却水によって冷却される。
なお、本発明に係る筐体が上部筐体2Bに対応し、本発明に係る半導体パワーモジュールから最も離間している第1の実装基板が、制御回路基板に対応している。
【0021】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
電源回路基板22及び制御回路基板23に実装されている電源回路及び制御回路には発熱回路部品が含まれており、外部のコンバータから直流電力が供給されると、電源回路基板22及び制御回路基板23の発熱回路部品が発熱する。
風向部30の内部は、冷却体3の上面に固定されている半導体パワーモジュール11の周囲の下部空間の空気が冷たく、電源回路基板22及び制御回路基板23が配置されている上部空間の空気が暖かくなる。このように、風向部30内部の下部空間と上部空間の空気の温度差に伴う密度差によって空気に浮力が生じ、図3参照に示すように、上下方向に立ち上がる長尺側風向板30a,30b及び短尺側風向板30c,30dに沿って、風向部30の内部には、上方に向かう空気の自然対流が発生する。
【0022】
風向部30の内部で自然対流が発生した空気は、電源回路基板22及び制御回路基板23を冷却しつつ天井風向板30eに向かって流れ、天井風向板30e及び制御回路基板23の間の狭い流路を通過することで流速が早くなり、天井風向板30eに設けた複数の排気口33から風向部30の外部(上部筐体2B)に流れ出る。そして、長尺側風向板30a,30b及び短尺側風向板30c,30dの冷却体3に寄った位置に設けた複数の吸気口32から冷たい空気が風向部30の内部に流れ込む。このように、電源回路基板22及び制御回路基板23の発熱回路部品が発熱すると、風向部30の内部で空気の自然対流が発生して発熱部品を冷却する。
【0023】
したがって、本実施形態は、風向部30の内部で発生する空気の自然対流により発熱部(電源回路基板22及び制御回路基板23の発熱回路部品)を冷却しているので、冷却ファンなどの装置を使用して強制的に冷却空気を発生する従来装置と比較して、保守点検が不要となり、メンテナンスコストを大幅に低減することができる。
また、密閉空間である上部筐体2Bの空気が風向部30の内部を循環するので、半導体パワーモジュール11及び駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23の粉塵、湿気などによる悪影響を防止することができる。
【0024】
また、長尺側風向板30a,30bの下部(冷却体3側)の長手方向に沿って複数の吸気口32が形成され、天井風向板30eの幅方向中央に長手方向に沿って複数の排気口33が形成されており、半導体パワーモジュール11及び駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23の長辺側に、流量を多くした自然対流の空気が流れるので、冷却効率を高めることができる。
さらに、風向部30の内部で熱交換を行った温度の高い空気は、天井風向板30e及び制御回路基板23の間の狭い流路を通過することで流速を高めて天井風向板30eの排気口33から上部筐体2Bに排出され、長尺側風向板30a,30b及び短尺側風向板30c,30dに設けた吸気口32から温度の低い空気が入り込みやすいので、さらに、風向部30の内部の冷却効率を高めることができる。
【0025】
[第2実施形態]
次に、図4に示すものは、本発明に係る第2実施形態を示し、電力変換装置1を短尺方向から見た断面図である。なお、図1から図3で示した構成と同一構成部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態の風向部34も、第1実施形態と同様に下面が開口した有蓋箱形状の部材である。
本実施形態の風向部34は、長方形状の天井風向板34aと、この天井風向板34aの長辺側縁部に一体形成され、互いに平行に立ち上がる一対の長尺側風向板34b,34cと、長尺側風向板34b,34bの開放縁部から内側に突出している固定板34d,34eと、一対の長尺側風向板34b,34c及び天井風向板34aにより長手方向から開口している二つの開口部を着脱自在に閉塞する一対の短尺側風向板34f(図4では一方の短尺側風向板34fしか示していない)とを備えている。
【0026】
一対の長尺側風向板34b,34cの固定板34d,34eに近接する側には、長尺方向に所定間隔をあけて円形状の複数の吸気口35が形成されている。また、一対の短尺側風向板34fの冷却体3に近接する側にも、短尺方向に所定間隔をあけて円形状の複数の吸気口35が形成されている。
さらに、天井風向板34aの短尺方向の中央部にも、長尺方向に所定間隔をあけて円形状の複数の排気口36が形成されている。
本実施形態は、基板固定部16、継ぎねじ24,25を介して半導体パワーモジュール11、電源回路基板22及び制御回路基板23が一体に配置された後に、風向部34の一対の長尺側風向板34b,34cの下部で半導体パワーモジュール11のケース体12の側部を囲み、ケース体12の下部に固定板34d,34を固定することで、半導体パワーモジュール11に一対の長尺側風向板34b,34c及び天井風向板34aが一体化されている。
【0027】
そして、挿通孔15に挿通した固定ねじ14を、冷却体3の上面に形成したねじ孔に螺合して冷却体3の上面に半導体パワーモジュール11を固定した後、一対の短尺側風向板34fを一対の長尺側風向板34b,34c及び天井風向板34aに固定することで、半導体パワーモジュール11、駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23の周囲を囲む有蓋箱形状の風向部34が形成される。
なお、本発明に係る固定部が、一対の長尺側風向板34b,34cの固定板34d,34eに対応している。
本実施形態によると、風向部34の内部で自然対流が発生した空気が、発熱している電源回路基板22及び制御回路基板23を冷却しつつ天井風向板34aに向かって流れ、天井風向板34a及び制御回路基板23の間の狭い流路を通過することで流速が早くなり、天井風向板34aに設けた複数の排気口36から風向部34の外部(上部筐体2B)に流れ出る。そして、長尺側風向板34b,34c及び一対の短尺側風向板34fの冷却体3に寄った位置に設けた複数の吸気口35から冷たい空気が風向部34の内部に流れ込む。
【0028】
したがって、本実施形態は、第1実施形態と同様に、保守点検が不要となり、メンテナンスコストを大幅に低減することができるとともに、半導体パワーモジュール11及び駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23の粉塵、湿気などによる悪影響を防止することができる。
また、本実施形態は、長尺側風向板34b,34cの下部(冷却体3側)の長手方向に沿って複数の吸気口35が形成され、天井風向板34aの幅方向中央に長手方向に沿って複数の排気口36が形成されており、半導体パワーモジュール11及び駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23の長辺側に流量を多くした自然対流の空気が流れるので、冷却効率を高めることができる。
【0029】
また、風向部34の内部で熱交換を行った温度の高い空気は、天井風向板34a及び制御回路基板23の間の狭い流路を通過することで流速を高めて天井風向板34aの排気口36から上部筐体2Bに排出され、吸気口35から温度の低い空気が入り込みやすいので、風向部34の内部の冷却効率をさらに高めることができる。
そして、本実施形態は、風向部34を構成する一対の長尺側風向板34b,34c及び天井風向板34aが、半導体パワーモジュール11に一体化されているので、電力変換装置1の組み立て工数を減少させることができる。
【0030】
[第3実施形態]
次に、図5及び図6に示すものは、本発明に係る第3実施形態を示し、電力変換装置1を短尺方向から見た断面図である。本実施形態も、図1から図3で示した構成と同一構成部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態の風向部37は、半導体パワーモジュール11の一方の長辺側部に固定されている第1風向板38と、半導体パワーモジュール11の他方の長辺側部に固定された第2風向板39とを備えている。
第1風向板38は、半導体パワーモジュール11、駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23の一方の長辺に沿って立ち上がる立上がり板38aと、立上がり板38aの下端から内側に突出している固定板38bと、立上がり板38aの上端から制御回路基板23の上面に近接して平行に延在している第1水平板38cと、第1水平板38cより下方位置で立上がり板38aから駆動回路基板21及び電源回路基板22の間の空間まで延在している第2水平板38dとを備えている。
【0031】
そして、立上がり板38aの固定板38bに近接する下部側に、長尺方向に所定間隔をあけて円形状の複数の吸気口40が形成されている。
第2風向板39は、半導体パワーモジュール11及び駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23の他方の長辺に沿って立ち上がる立上がり板39aと、立上がり板39aの下端から内側に突出している固定板39bと、立上がり板39aの上端から電源回路基板22及び制御回路基板23の間の空間まで延在している第3水平板39cとを備えている。
そして、立上がり板38aの固定板38bに近接する下部側に、長尺方向に所定間隔をあけて円形状の複数の吸気口40が形成されている。
【0032】
本実施形態では、基板固定部16、継ぎねじ24,25を介して半導体パワーモジュール11、駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23が一体に配置された後、ケース体12の下部に、第1風向板38の固定板38b及び第2風向板39の固定板39bを固定することで、半導体パワーモジュール11に第1風向板38及び第2風向板39が一体化されている。
また、第1風向板38及び第2風向板39で画成されている長手方向の端部の開口部(図5の表裏方向の開口部)は、図示しない閉塞部材で閉塞されている。
なお、本発明に係る固定部が、第1風向板38の固定板38b、第2風向板39の固定板39bに対応し、本発明に係る水平風向板が、第2水平板38d、第3水平板39cに対応している。
【0033】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
外部のコンバータから直流電力が供給されると、電源回路基板22及び制御回路基板23の発熱回路部品が発熱する。風向部37の内部は、冷却体3の上面に固定されている半導体パワーモジュール11の周囲の下部空間の空気が冷たく、電源回路基板22及び制御回路基板23が配置されている上部空間の空気が暖かくなり、風向部37の内部には、上方に向かう空気の自然対流が発生する。
図6に示すように、第1風向板38の第2水平板38dは駆動回路基板21及び電源回路基板22の間の空間に延在しているので、自然対流により上昇する第1風向板38側の空気は、駆動回路基板21の上面に沿って流れて冷却し、次いで電源回路基板22の下面に沿って流れて冷却していき、さらに立上がり板38aに沿って上昇していく。
【0034】
また、第2風向板39の第3水平板39cは、電源回路基板22及び制御回路基板23の間の空間に延在しているので、自然対流により上昇する第2風向板39側の空気は、電源回路基板22の上面に沿って流れて冷却していく。
そして、上昇した空気は第1水平板38c及び制御回路基板23の間の狭い流路を通過することで流速が早くなり、第1水平板38cの端部の排気口41から風向部37の外部に流れ出る。そして、第1風向板38及び第2風向板39の冷却体3に寄った位置に設けた複数の吸気口40から冷たい空気が風向部37の内部に流れ込む。このように、電源回路基板22及び制御回路基板23の発熱回路部品が発熱すると、風向部37の内部で空気の自然対流が発生し、駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23の上面及び下面に冷却空気な流れ込みながら発熱部品を冷却する。
【0035】
したがって、本実施形態は、風向部37で発生する空気の自然対流により発熱部(電源回路基板22及び制御回路基板23の発熱回路部品)を冷却しているので、冷却ファンなどの装置を使用して強制的に冷却空気を発生する従来装置と比較して、保守点検が不要となり、メンテナンスコストを大幅に低減することができる。
また、密閉空間である上部筐体2Bの空気が風向部37の内部を循環するので、半導体パワーモジュール11及び駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23の粉塵、湿気などによる悪影響を防止することができる。
【0036】
また、第1風向板38及び第2風向板39の長手方向に沿って複数の吸気口40が形成されており、半導体パワーモジュール11及び駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23の長辺側に、流量を多くした自然対流の空気が流れるので、冷却効率を高めることができる。
さらに、風向部37の内部で熱交換を行った温度の高い空気は、第1水平板38c及び制御回路基板23の間の狭い流路を通過することで流速を高めて排気口41から上部筐体2Bに排出され、吸気口40から温度の低い空気が入り込みやすいので、さらに、風向部37の内部の冷却効率を高めることができる。
【0037】
[第4実施形態]
次に、図7及び図8に示すものは、本発明に係る第4実施形態を示すものであり、図7は、電力変換装置1を短尺方向から見た断面図であり、図8は、本実施形態の電力変換装置1を構成する伝熱支持部材を示す側面図である。
本実施形態の電力変換装置1は、図7に示すように、半導体パワーモジュール11の短尺方向の一端側に設けた正負の直流入力端子に11aに外部コネクタ50の一端が接続され、この外部コネクタ50の他端に冷却体3を貫通するフィルムコンデンサ4の正負の電極4aが固定ねじ51で連結されている。また、直流入力端子11aに外部のコンバータ(不図示)に接続する接続コード52の先端に固定された圧着端子53が固定されている。
【0038】
また、半導体パワーモジュール11の短尺方向の他端側に設けた3相交流出力端子11bにブスバー55が固定ねじ56でそれぞれ接続され、このブスバー55の途中に電流センサ57が配置されている。そして、外部の3相電動モータ(不図示)に接続したモータ接続ケーブル58の先端に固定した圧着端子59がブスバー55の他端に固定ねじ60を介して接続されている。
本実施形態の電源回路基板22及び制御回路基板23は、伝熱支持部材42及び43によって筐体2を介することなく冷却体3への放熱経路を独自に形成するように支持されている。これら伝熱支持部材42及び43は、熱伝導率が高い金属例えばアルミニウム又はアルミニウム合金で形成されている。
【0039】
伝熱支持部材42は、平板状の伝熱支持板部42aと、上下に折り曲げ部を有する伝熱支持側板部42cとを備える。伝熱支持板部42aには、伝熱部材45を介して電源回路基板22が固定ねじによって固定されているとともに、電源回路基板22が固定されていない部位に複数の通気穴42a1が貫通して形成されている。伝熱部材45は、伸縮性を有する弾性体であり電源回路基板22と同じ外形寸法に構成されている。この伝熱部材45としては、シリコンゴムの内部に金属フィラーを介在させることにより絶縁性能を発揮しながら伝熱性を高めたものが適用されている。
【0040】
伝熱支持側板部42cは、冷却体3の上面に固定される底板部44と、この底板部44の長辺側の外周縁に一体に連結されて上方に延長し、半導体パワーモジュール11の長尺側に沿って延長している連結板部42dと、この連結板部42dの上端から同図右方に延長するように形成された上板部42eとを有する。
そして、伝熱支持側板部42cの上板部42eと伝熱支持板部42aとが、後述する風向板46とともに固定ねじ42bで固定されている。
また、伝熱支持部材43は、平板状の伝熱支持板部43aと、上下に折り曲げ部を有する伝熱支持側板部43cとを備える。伝熱支持板部43aには、伝熱部材47を介して制御回路基板23が固定ねじによって固定されているとともに、制御回路基板23が固定されていない部位に複数の通気穴43a1が貫通して形成されている。伝熱部材47は、伸縮性を有する弾性体であり制御回路基板23と同じ外形寸法に構成されている。この伝熱部材47としては、シリコンゴムの内部に金属フィラーを介在させることにより絶縁性能を発揮しながら伝熱性を高めたものが適用されている。
【0041】
伝熱支持側板部43cは、冷却体3の上面に固定される底板部44と、この底板部44の長辺側の外周縁に一体に連結されて上方に延長し、半導体パワーモジュール11の長尺側に沿って延長している連結板部43dと、この連結板部43dの上端から同図左方に延長するように形成された上板部43eとを有する。
そして、伝熱支持側板部43cの上板部43eと伝熱支持板部43aとが、風向板46とともに固定ねじ43bで固定されている。
風向板46は、制御回路基板23に近接して配置されている天井部46aと、伝熱支持部材42の伝熱支持板部42aに当接して固定ねじ42bにより固定される第1フランジ46bと、伝熱支持部材43の伝熱支持板部43aに当接して固定ねじ43bにより固定される第2フランジ46cとを備えている。そして、天井部46aの短尺方向の中央部に、長尺方向に所定間隔をあけて円形状の複数の排気口46dが形成されている。
【0042】
また、伝熱支持部材43の伝熱支持側板部43cにおける連結板部43dには、図8に示すように、半導体パワーモジュール11の3相交流出力端子11bに対応する位置に、ブスバー55を挿通する例えば円形の3つの挿通孔43iが形成されているとともに、隣接する挿通孔43i間に比較的幅広の伝熱路Lhが形成されている。
また、伝熱支持部材42の伝熱支持側板部42cにおける連結板部42dにも、同様に、半導体パワーモジュール11の正極及び負極端子11aに対向する位置にそれぞれ同様に形成された挿通孔42iが設けられている。
なお、伝熱支持部材42,43及び風向板46で画成されている長手方向の端部の開口部(図7の表裏方向の開口部)は、図示しない閉塞部材で閉塞されている。
【0043】
そして、本実施形態の電力変換装置1は、外部のコンバータ(不図示)から直流電力を供給するとともに、電源回路基板22に実装された電源回路、制御回路基板23に実装された制御回路を動作状態とし、制御回路から例えばパルス幅変調信号でなるゲート信号を駆動回路基板21に実装された駆動回路を介して半導体パワーモジュール11に供給する。これによって、半導体パワーモジュール11に内蔵されたIGBTが制御されて、直流電力を交流電力に変換する。変換した交流電力は3相交流出力端子11bからブスバー55を介してモータ接続ケーブル58に供給され、上記3相電動モータを駆動制御することができる。
このとき、半導体パワーモジュール11は、内蔵されたIGBTから発熱するが、この発熱は半導体パワーモジュール11に形成された放熱部材13が冷却体3に直接接触されているので、冷却体3の冷却水路3aに供給されている冷却水によって冷却される。
なお、本発明に係る伝熱支持部材が、伝熱支持部材42,43に対応している。
【0044】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態の電力変換装置1によると、パワーモジュール11に内蔵されたIGBTが発熱すると、パワーモジュール11の放熱部材13の下面中央部に設けた接液部17が冷却体3に設けた浸漬部5に入り込んで冷却液に浸漬されて直接冷却されるので、パワーモジュール11を効率良く冷却することができる。
また、伝熱支持用金属板42,43が、冷却体3の上面に直接面接合されているので、制御回路基板22及び電源回路基板23から伝熱支持用金属板32,33に伝達された熱は、冷却体3に放熱され、効率の良い放熱を行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では、風向板46に固定した伝熱支持用金属板42,43が、風向部47を構成し、自然対流を発生して発熱部を冷却する。
すなわち、電源回路基板22及び制御回路基板23の発熱回路部品が発熱すると、風向板46及び伝熱支持用金属板42,43で囲まれた内部(風向部47)は、冷却体3の上面に固定されている半導体パワーモジュール11の周囲の下部空間の空気が冷たく、電源回路基板22及び制御回路基板23が配置されている上部空間の空気が暖かくなる。このように、風向部47の内部の下部空間と上部空間の空気の温度差に伴う密度差によって空気に浮力が生じ、図7参照に示すように、上下方向に立ち上がる伝熱支持側板部42c,43cに沿い、伝熱支持板部42a、43aの通気穴42a1,43a1を通過する上方に向かう空気の自然対流が発生する。
【0046】
風向部47の内部で自然対流が発生した空気は、電源回路基板22及び制御回路基板23を冷却しつつ天井部46aに向かって流れ、天井部46a及び制御回路基板23の間の狭い流路を通過することで流速が早くなり、天井部46aに設けた複数の排気口46dから風向部47の外部(上部筐体2B)に流れ出る。そして、伝熱支持用金属板42,43に設けた複数の挿通孔42i,43iから冷たい空気が風向部47の内部に流れ込む。このように、電源回路基板22及び制御回路基板23の発熱回路部品が発熱すると、風向部47の内部で空気の自然対流が発生して発熱部品を冷却する。
このように、風向板46及び伝熱支持用金属板42,43で構成した風向部47の内部で発生する空気の自然対流により発熱部(電源回路基板22及び制御回路基板23の発熱回路部品)を冷却しているので、さらに冷却効果を高めることができる。
【0047】
また、密閉空間である上部筐体2Bの空気が風向部47の内部を循環するので、半導体パワーモジュール11及び駆動回路基板21、電源回路基板22及び制御回路基板23の粉塵、湿気などによる悪影響を防止することができる。
また、風向部30の内部で熱交換を行った温度の高い空気は、天井部46a及び制御回路基板23の間の狭い流路を通過することで流速を高めて天井部46aの排気口46dから上部筐体2Bに排出され、挿通孔42i,43aから温度の低い空気が入り込みやすいので、さらに、風向部47の内部の冷却効率を高めることができる。
さらに、伝熱支持部材42,43の連結板部42d,43dの外部コネクタ50,ブスバー55を挿通する挿通孔42i,43aを、風向部47の空気を取り込む吸気口として利用しているので、製造コストの低減化を図ることができる。
【0048】
なお、各実施形態で示した吸気口32、25,40は円形状で示したが、他の形状の開口部で形成しても良い。
また、上述した電力変換装置1では、平滑用のコンデンサとしてフィルムコンデンサ4を適用した場合について説明したが、これに限定されず、円柱状の電解コンデンサを適用するようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、本発明による電力変換装置を電気自動車に適用する場合について説明したが、これに限定されず、軌条を走行する鉄道車両にも本発明を適用することができ、任意の電気駆動車両に適用することができる。さらに電力変換装置としては電気駆動車両に限らず、他の産業機器における電動モータ等のアクチュエータを駆動する場合に本発明の電力変換装置を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明に係る電力変換装置は、粉塵、湿気などの影響を防止することができ、保守点検を不要としてメンテナンスコストを低減するのに有用である。
【符号の説明】
【0050】
1…電力変換装置、2…筐体、2A…下部筐体、2B…上部筐体、2a…角筒体、2b…蓋体、3…冷却体、3a…冷却水路、3e…挿通孔、4…フィルムコンデンサ、4a…電極、11…半導体パワーモジュール、11a…直流入力端子、11b…相交流出力端子、12…ケース体、13…放熱部材、14…固定ねじ、15…挿通孔、16…基板固定部、21…駆動回路基板、22…電源回路基板、23…制御回路基板、30…風向部、30a,30b…長尺側風向板、30c,30d…短尺側風向板、30e…天井風向板、30f…フランジ、32…吸気口、33…排気口、34…風向部、34a…天井風向板、34b,34c…長尺側風向板、34d,34e…固定板、34f…短尺側風向板、35…吸気口、36…排気口、37…風向部、38…第1風向板、38a…立上がり板、38b…固定板、38c…第1水平板、38d…第2水平板、39…第2風向板、39a…立上がり板、39b…固定板、39c…第3水平板、40…吸気口、41…排気口、42,43…伝熱支持部材、42a…伝熱支持板部、42b…固定ねじ、42c…伝熱支持側板部、42a1…底板部、42d…連結板部、42e…上板部、42i…挿通孔、43a…伝熱支持板、43b…固定ねじ、43c…伝熱支持側板部、43d…連結板部、43e…上板部、43i…挿通孔、44…底板部、45…伝熱部材、46…風向板、46a…天井部、46b…第1フランジ、46c…第2ブランジ、47…風向部、50…外部コネクタ、52…接続コード、53…圧着端子、55…ブスバー、57…電流センサ、58…モータ接続ケーブル、59…圧着端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8