特許第6187583号(P6187583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187583
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/64 20060101AFI20170821BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H03H9/64 Z
   H03H9/25 Z
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-511272(P2015-511272)
(86)(22)【出願日】2014年4月9日
(86)【国際出願番号】JP2014060246
(87)【国際公開番号】WO2014168161
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-83078(P2013-83078)
(32)【優先日】2013年4月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 壮央
【審査官】 石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/145049(WO,A1)
【文献】 特開2009−290606(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/089746(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/008435(WO,A1)
【文献】 特開2011−010278(JP,A)
【文献】 特開2004−080233(JP,A)
【文献】 特開2008−118192(JP,A)
【文献】 特開2008−245310(JP,A)
【文献】 特開2010−041141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/02− 9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1外部接続端子と、
第2外部接続端子と、
前記第1外部接続端子と前記第2外部接続端子との間に接続されたフィルタ部と、
前記第1外部接続端子もしくは前記第2外部接続端子の少なくとも一方と前記フィルタ部との間に接続された整合素子と、
を備えた高周波モジュールであって、
前記フィルタ部は、
前記第1外部接続端子に接続する第1端子と、
前記第2外部接続端子に接続する第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間に直列接続された複数のフィルタ素子と、
前記複数のフィルタ素子の一方端のフィルタ素子と前記第1端子とを接続する一方端の接続部、前記複数のフィルタ素子の他方端のフィルタ素子と前記第2端子とを接続する他方端の接続部、隣り合うフィルタ素子間を接続する中間の接続部と、
を備え、
前記接続部の少なくとも一つと前記整合素子とが誘導性結合もしくは容量性結合されており、
前記第1外部接続端子と前記第2外部接続端子との間に、前記フィルタ部を伝搬経路とする主伝送経路と、
前記誘導性結合もしくは前記容量性結合によって形成され、前記誘導性結合もしくは前記容量性結合によって、伝搬される高周波信号の振幅および位相が調整される副伝搬経路と、を有する、
周波モジュール。
【請求項2】
互いに前記誘導性結合もしくは前記容量性結合する前記接続部と前記整合素子は、
前記フィルタ部の通過帯域外のインピーダンスが変化するように前記誘導性結合もしくは前記容量性結合されている、請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
互いに前記誘導性結合もしくは前記容量性結合する前記接続部と前記整合素子は、
前記フィルタ部の通過帯域外の減衰極周波数が変化するように前記誘導性結合もしくは前記容量性結合されている、請求項2に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
前記整合素子は、前記第1外部接続端子と前記第1端子との間に直列接続されるか、もしくは、前記第2外部接続端子と前記第2端子との間に直列接続される、シリーズ接続型の整合素子である、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項5】
前記整合素子は、前記第1外部接続端子と前記第1端子とを接続する接続ラインとグランドとの間に接続されるか、もしくは、前記第2外部接続端子と前記第2端子とを接続する接続ラインとグランドの間に接続される、シャント接続型の整合素子である、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項6】
前記接続部は線状導体パターンからなる、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項7】
前記接続部の少なくとも1つおよび前記整合素子のみが誘導性結合または容量性結合している、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項8】
第3端子と、第2のフィルタ部とを備え、
前記第2のフィルタ部は、前記第1端子および該第1端子に接続するフィルタ素子を接続する接続ラインと、前記第3端子との間に接続されている、
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項9】
前記フィルタ部を構成するIDT電極および前記接続部が第1主面に形成された平板状のフィルタ基板と、
該フィルタ基板の前記第1主面に対して間隔を空けて対向する平板状のカバー層と、
前記第1主面から突出し、前記平板状のカバー層を貫通する形状の接続電極と、
前記整合素子が実装または形成された積層基板と、を備え、
前記フィルタ基板は、前記第1主面側が前記積層基板の実装面に向くように配置され、
前記フィルタ基板は、前記接続電極を介して前記積層基板に接続されている、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項10】
前記整合素子は、前記積層基板の実装面に実装される実装型素子であり、
前記整合素子と前記接続部とは、互いに電磁界結合する位置に配置されている、
請求項9に記載の高周波モジュール。
【請求項11】
前記整合素子は、
直方体形状の筐体と、
該筐体内に形成され、平面視して略長方形の外周形を有するスパイラル導体と、
を備え、
前記整合素子は、前記筐体の長辺が前記フィルタ基板の前記第1主面における第1辺に平行になるように、配置されている、
請求項10に記載の高周波モジュール。
【請求項12】
前記整合素子は、
前記積層基板の実装面または内部に形成された導体パターンからなり、
該導体パターンと前記接続部は、平面視して少なくとも一部が重なっている、
請求項9に記載の高周波モジュール。
【請求項13】
前記フィルタ部を構成するIDT電極および前記接続部が第1主面に形成された平板状のフィルタ基板と、
該フィルタ基板の前記第1主面側に配置され、該フィルタ基板を前記第1主面側で実装した平板状のフィルタ実装用基板と、を備え、
前記整合素子は、前記フィルタ実装用基板に形成されている、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項14】
前記整合素子に誘導性結合もしくは容量性結合する前記接続部と前記整合素子との間には、前記接続部および前記整合素子と異なる電極は、配置されていない、
請求項9乃至請求項13のいずれかに記載の高周波モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のフィルタ素子を備えた高周波モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信機能を備える携帯機器等では、所望周波数の高周波信号のみを通過し、当該所望周波数以外の高周波信号を減衰させるために、フィルタ回路を備えている。
【0003】
例えば、特許文献1には、SAWフィルタを複数備えたフィルタ回路が記載されている。具体的に、特許文献1のフィルタ回路は、入力端子と出力端子との間に、複数のSAWフィルタが直列接続されている。直列接続された各SAWフィルタを接続する接続ラインとグランドとの間にも、それぞれSAWフィルタが接続されている。
【0004】
特許文献1に記載のフィルタ回路は、通過帯域外の減衰特性を改善するために、インダクタもしくはインダクタとキャパシタの直列回路(補正回路と称する)を、SAWフィルタの直列回路に対して並列接続している。この際、SAWフィルタ群からなる回路部を伝搬する通過帯域外の高周波信号(抑圧対象信号)と、補正回路を伝搬する抑圧対象信号が、振幅が一致し位相が逆転するように、補正回路を調整する。これにより、抑圧対象信号は、SAWフィルタ群からなる回路部と補正回路との接続点で相殺され、出力端子からは出力されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−109818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の構成では、主たるフィルタ機能を有するSAWフィルタ群からなる回路部とは別に、減衰特性を改善するためだけに、インダクタもしくはインダクタとキャパシタの直列回路からなる補正回路を設けなければならない。
【0007】
したがって、フィルタ回路の構成要素が多くなり、フィルタ回路が大型化してしまい、小型化が要求される現在の携帯端末等には不向きである。
【0008】
本発明の目的は、通過帯域外の減衰特性が優れた小型のフィルタ回路を有する高周波モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、第1外部接続端子と、第2外部接続端子と、第1外部接続端子と第2外部接続端子との間に接続されたフィルタ部と、第1外部接続端子もしくは第2外部接続端子の少なくとも一方とフィルタ部との間に接続された整合素子と、を備えた高周波モジュールに関するものであり、次の特徴を有する。
【0010】
フィルタ部は、第1外部接続端子に接続する第1端子と、第2外部接続端子に接続する第2端子と、第1端子と第2端子との間に直列接続された複数のフィルタ素子とを備える。複数のフィルタ素子における一方端のフィルタ素子と第1端子とを接続する一方端の接続部、複数のフィルタ素子における他方端のフィルタ素子と第2端子とを接続する他方端の接続部、隣り合うフィルタ素子間を接続する中間の接続部の少なくとも一つと整合素子とは、誘導性結合もしくは容量性結合されている。
【0011】
この構成では、高周波信号が複数のフィルタ素子を伝搬する主伝搬経路とは別に、接続部と整合素子によって生じる誘導性結合または容量性結合の経路を介する副伝搬経路が形成される。副伝搬経路は、誘導性結合または容量性結合の結合度によって主伝搬経路とは異なる振幅特性および位相特性となり、副伝搬経路の振幅特性および位相特性を調整することで、高周波モジュールとしての伝送特性を調整することができる。これにより、別途インダクタやキャパシタを設けなくても、高周波モジュールの伝送特性を調整し、例えば減衰特性を改善できる。
【0012】
また、この発明の高周波モジュールは、次の構成であることが好ましい。互いに誘導性結合もしくは容量性結合する接続部と整合素子は、フィルタ部の通過帯域外のインピーダンスが変化するように誘導性結合もしくは容量性結合されている。
【0013】
この構成に示すように、結合態様や結合度を適宜調整することで、通過帯域の特性を変化させることなく、通過帯以外の特性すなわち減衰特性を変化させることができる。
【0014】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であることが好ましい。互いに誘導性結合もしくは容量性結合する接続部と整合素子は、フィルタ部の通過帯域外の減衰極周波数が変化するように誘導性結合もしくは容量性結合されている。
【0015】
この構成では、減衰特性の調整態様として、減衰極周波数が調整される。
【0016】
また、この発明の高周波モジュールでは、整合素子は、第1外部接続端子と第1端子との間に直列接続されるか、もしくは、第2外部接続端子と第2端子との間に直列接続される、シリーズ接続型の整合素子であってもよい。
【0017】
また、この発明の高周波モジュールでは、整合素子は、第1外部接続端子と第1端子とを接続する接続ラインとグランドとの間に接続されるか、もしくは、第2外部接続端子と第2端子とを接続する接続ラインとグランドの間に接続される、シャント接続型の整合素子であってもよい。
【0018】
これらの構成では、整合素子の具体的な接続態様を示している。これらの接続態様を適宜決定することで、フィルタ部と外部とのインピーダンス整合を適切に行いながら、上述の減衰特性の調整も適切に行える。
【0019】
また、この発明の高周波モジュールでは、接続部は線状導体パターンからなることが好ましい。
【0020】
この構成では、接続部を簡素な構造で実現でき、フィルタ部及び高周波モジュールを小型に形成することができる。
【0021】
また、この発明の高周波モジュールでは、第3端子と、第2のフィルタ部とを備え、第2のフィルタ部が、第1端子およびフィルタ素子を接続する接続ラインと第3端子との間に接続されていてもよい。
【0022】
この構成では、第1端子を共通端子とし、第2端子及び第3端子を個別端子とする合成分波器を実現できる。
【0023】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であってもよい。高周波モジュールは、フィルタ部を構成するIDT電極および接続部が第1主面に形成された平板状のフィルタ基板と、該フィルタ基板の第1主面に対して間隔を空けて対向する平板状のカバー層と、第1主面から突出し、カバー層を貫通する形状の接続電極と、整合素子が実装または形成された積層基板と、を備える。フィルタ基板は、第1主面側が積層基板の実装面に向くように配置されている。フィルタ基板は、接続電極を介して積層基板に接続されている。
【0024】
この構成では、WLP(Wafer Level Package)からなるフィルタ部と積層基板とで高周波モジュールを実現できる。これにより、高周波モジュールを小型化できる。
【0025】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であってもよい。整合素子は、積層基板の実装面に実装される実装型素子である。接続部は、フィルタ基板の第1主面における第1辺の近傍に配置されている。実装型素子は、フィルタ基板の第1辺の近傍に実装されている。
【0026】
この構成では、整合素子が実装型素子の場合におけるWLPを用いた高周波モジュールの具体的な構成例を示している。この構成により、整合素子と接続部との結合を確実に実現できる。
【0027】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であることが好ましい。整合素子は、直方体形状の筐体と、該筐体内に形成され平面視して略長方形の外周形を有するスパイラル導体と、を備える。整合素子は、筐体の長辺がフィルタ基板の第1辺に平行になるように、配置されている。
【0028】
この構成では、整合素子と接続部との結合を得やすく、所望とする結合量への調整も容易になる。
【0029】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であってもよい。整合素子は、積層基板の実装面または内部に形成された導体パターンからなり、該導体パターンと接続部は、平面視して少なくとも一部が重なっている。
【0030】
この構成では、整合素子が積層基板に形成された導体パターンからなる場合におけるWLPを用いた高周波モジュールの具体的な構成例を示している。この構成により、整合素子と接続部との結合を確実に実現できる。また、整合素子が実装型回路素子として積層基板に実装される態様ではないので、当該整合素子を実装するための平面的スペースが必要なく、高周波モジュールの平面形状を小さくすることができる。
【0031】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であってもよい。高周波モジュールは、フィルタ部を構成するIDT電極および接続部が第1主面に形成された平板状のフィルタ基板と、該フィルタ基板の第1主面側に配置され該フィルタ基板第1主面側実装た平板状のフィルタ実装用基板と、を備える。整合素子は、フィルタ実装用基板に形成されている。
【0032】
この構成では、高周波モジュールをCSP(Chip Sized Package)で実現する場合を示している。
【発明の効果】
【0033】
この発明によれば、優れた通過帯域外の減衰特性を備えた小型のフィルタ回路を有する高周波モジュールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態に係る高周波モジュールの第1回路例を示す回路ブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る高周波モジュールの第2回路例を示す回路ブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る高周波モジュールの第3回路例を示す回路ブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る高周波モジュールの第4回路例を示す回路ブロック図である。
図5図1から図4に示す高周波モジュールの整合素子の具体例を示す回路図である。
図6】整合素子と接続導体の結合度を変化させた時の高周波モジュールの帯域通過特性の変化を示すグラフである。
図7】デュプレクサ構成からなる高周波モジュールの等価回路図である。
図8】整合素子と接続導体の結合度を変化させた時の高周波モジュールの第2外部接続端子と第3外部接続端子との間のアイソレーションの変化を示すグラフである。
図9】高周波モジュールの第1の構造の主要構造を示す側面概念図である。
図10】高周波モジュールの第1の構造の主要構造を示す平面概念図である。
図11】高周波モジュールの第2の構造の主要構造を示す側面概念図である。
図12】高周波モジュールの第3の構造の主要構造を示す側面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態に係る高周波モジュールについて、図を参照して説明する。図1は本発明の実施形態に係る高周波モジュールの第1回路例を示す回路ブロック図である。図2は本発明の実施形態に係る高周波モジュールの第2回路例を示す回路ブロック図である。図3は本発明の実施形態に係る高周波モジュールの第3回路例を示す回路ブロック図である。図4は本発明の実施形態に係る高周波モジュールの第4回路例を示す回路ブロック図である。図5(A)、図5(B)、図5(C)、図5(D)は第1外部接続端子側の整合素子の具体例を示す回路図である。図5(E)、図5(F)、図5(G)、図5(H)は第2外部接続端子側の整合素子の具体例を示す回路図である。
【0036】
まず、図1から図4のそれぞれ示す高周波モジュール11,12,13,14に対して共通な回路構成について説明する。
【0037】
高周波モジュール11,12,13,14は、第1外部接続端子P1、第2外部接続端子P2、フィルタ部20を備える。フィルタ部20は、第1外部接続端子P1と第2外部接続端子P2との間に接続されている。
【0038】
フィルタ部20は、第1端子P21、第2端子P22を備える。第1端子P21は、後述するシリーズ接続型の整合素子もしくはシャント接続型の整合素子を介して第1外部接続端子P1に接続される。第2端子P22は、後述するシリーズ接続型の整合素子もしくはシャント接続型の整合素子を介して第2外部接続端子P2に接続される。
【0039】
フィルタ部20は、複数のSAW共振子201,202,203,204,205,206,207,208(以下、複数のSAW共振子をまとめて説明する場合には単純に複数のSAW共振子201−208と称する)を備える。これらSAW共振子が、本発明の「フィルタ素子」に相当する。
【0040】
複数のSAW共振子201−208は、それぞれに共振周波数を有し、それぞれ個別に帯域通過特性を有する帯域通過フィルタ(BPF)として機能する。複数のSAW共振子201−208は、第1端子P21と第2端子P22との間に直列接続されている。
【0041】
より具体的には、SAW共振子201の一方端は、接続導体301を介して第1端子P21に接続されている。SAW共振子201の他方端は、SAW共振子202の一方端に接続されている。
【0042】
SAW共振子202の他方端は、接続導体302を介してSAW共振子203の一方端に接続されている。SAW共振子203の他方端は、SAW共振子204の一方端に接続されている。
【0043】
SAW共振子204の他方端は、接続導体303を介してSAW共振子205の一方端に接続されている。SAW共振子205の他方端は、SAW共振子206の一方端に接続されている。
【0044】
SAW共振子206の他方端は、接続導体304を介してSAW共振子207の一方端に接続されている。SAW共振子207の他方端は、SAW共振子208の一方端に接続されている。
【0045】
SAW共振子208の他方端は、接続導体305を介して第2端子P22に接続されている。
【0046】
なお、ここでは、SAW共振子201,202間、SAW共振子203,204間、SAW共振子205,206間、SAW共振子207,208間の接続を、特に接続導体と称していないが、所定の長さの伝送路をもって接続する場合には、接続導体として見なすことができる。そして、これら接続導体が、本発明の「接続部」に相当する。
【0047】
フィルタ部20は、これらSAW共振子201−208の帯域通過特性および減衰特性を組み合わせることで、フィルタ部20としての所望の帯域通過特性および通過帯域外の減衰特性を実現している。
【0048】
このような高周波モジュール11,12,13,14の共通回路構成に対して、各高周波モジュールは、具体的に次に示すような回路構成からなる。
【0049】
(第1回路例)
図1に示す高周波モジュール11は、シリーズ接続型の整合素子41,42を備える。なお、整合素子41,42の一方は、省略することができる。
【0050】
整合素子41は、フィルタ部20の第1端子P21と第1外部接続端子P1との間に接続されている。整合素子41は、具体的には、図5(A)に示す第1端子P21と第1外部接続端子P1との間に直列接続されたインダクタ41Lであったり、図5(B)に示す第1端子P21と第1外部接続端子P1との間に直列接続されたキャパシタ41Cである。整合素子41の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第1外部接続端子P1側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0051】
整合素子42は、フィルタ部20の第2端子P22と第2外部接続端子P2との間に接続されている。整合素子42は、具体的には、図5(E)に示す第2端子P22と第2外部接続端子P2との間に直列接続されたインダクタ42Lであったり、図5(F)に示す第2端子P22と第2外部接続端子P2との間に直列接続されたキャパシタ42Cである。整合素子42の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第2外部接続端子P2側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0052】
さらに、整合素子41,42の少なくとも一方は、図1の点線矢印に示すように、フィルタ部20の接続導体301,302,303,304,305の少なくとも一つに対して、誘導性結合または容量性結合している。この際、整合素子と接続導体は、少なくとも一つのSAW共振子を介した位置にある整合素子と接続導体同士で結合している。
【0053】
より具体的には、整合素子41は、接続導体302,303,304,305の少なくとも一つと結合している。例えば、整合素子41がインダクタ41Lであれば、インダクタ41Lは、接続導体302,303,304,305の少なくとも一つと誘導性結合または容量性結合している。整合素子41がキャパシタ41Cであれば、キャパシタ41Cは、接続導体302,303,304,305の少なくとも一つと容量性結合している。
【0054】
整合素子42は、接続導体301,302,303,304の少なくとも一つと結合している。整合素子42がインダクタ42Lであれば、インダクタ42Lは、接続導体301,302,303,304の少なくとも一つと誘導性結合または容量性結合している。整合素子42がキャパシタ42Cであれば、キャパシタ42Cは、接続導体301,302,303,304の少なくとも一つと容量性結合している。
【0055】
このような構成とすることで、結合する接続導体と整合素子は、高周波的に接続される。例えば、整合素子41がインダクタ41Lであり、インダクタ41Lと接続導体304とが誘導性結合した場合、インダクタ41L(整合素子41)と接続導体304との間に相互インダクタンスMを有する誘導性結合回路が構成される。これにより、高周波信号は、第1外部接続端子P1と第2外部接続端子P2との間で、フィルタ部20を伝搬経路とする主伝搬経路のみで伝搬されるだけではなく、高周波信号の一部がインダクタ41L(整合素子41)、誘導性結合回路および接続導体304を伝搬経路とする副伝搬経路にも伝搬される。
【0056】
これにより、高周波モジュール11としては、主伝搬経路の伝送特性と副伝搬経路の伝送特性とが合成された合成伝送特性となる。
【0057】
ここで、結合する整合素子と接続導体との結合態様および結合度を調整することで、副伝搬経路を伝搬する高周波信号の振幅および位相を調整することができる。言い換えれば、副伝搬経路の伝送特性を調整することができる。伝送特性とは、例えば減衰特性(振幅特性)や位相特性である。
【0058】
さらに、この結合態様および結合度を調整することで、高周波モジュール11として通過させたい高周波信号(所望の高周波信号)の周波数帯域の伝送特性に殆ど影響を与えることなく、通過帯域外の減衰特性にのみ副伝搬経路を設置したことによる影響を与えることができる。
【0059】
そして、このように副伝搬経路の伝送特性を調整することで、高周波モジュール11としての伝送特性を調整できる。例えば、後述するように、通過帯域外の減衰特性を調整することができる。
【0060】
この際、従来構成のような高周波フィルタの伝送特性を調整するためのインダクタやキャパシタを別途必要としないので、所望の減衰特性を有する高周波フィルタを簡素な構成で実現できる。これにより、高周波フィルタを小型に形成することができる。
【0061】
さらに、上述の結合による相互誘導成分によって、インダクタ41L(整合素子21)の実効的なインダクタンス値を大きくさせることもできる。したがって、インダクタ41Lの線路長をより短くすることも可能である。
【0062】
(第2回路例)
図2に示す高周波モジュール12は、シャント接続型の整合素子43,44を備える。なお、整合素子43,44の一方は、省略することができる。
【0063】
整合素子43は、フィルタ部20の第1端子P21と第1外部接続端子P1とを接続する接続ライン401とグランドとの間に接続されている。整合素子43は、具体的には、図5(C)に示す第1端子P21と第1外部接続端子P1とを接続する接続ライン401とグランドとの間に接続されたインダクタ43Lであったり、図5(D)に示す第1端子P21と第1外部接続端子P1とを接続する接続ライン401とグランドとの間に接続されたキャパシタ43Cである。整合素子43の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第1外部接続端子P1側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0064】
整合素子44は、フィルタ部20の第2端子P22と第2外部接続端子P2とを接続する接続ライン402とグランドとの間に接続されている。整合素子44は、具体的には、図5(G)に示す第2端子P22と第2外部接続端子P2とを接続する接続ライン402とグランドとの間に接続されたインダクタ44Lであったり、図5(H)に示す第2端子P22と第2外部接続端子P2とを接続する接続ライン402とグランドとの間に接続されたキャパシタ44Cである。整合素子44の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第2外部接続端子P2側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0065】
さらに、整合素子43,44の少なくとも一方は、図2の点線矢印に示すように、フィルタ部20の接続導体301,302,303,304,305の少なくとも一つに対して、誘導性結合または容量性結合している。この際、整合素子と接続導体は、少なくとも一つのSAW共振子を介した位置にある整合素子と接続導体同士で結合している。
【0066】
より具体的には、整合素子43は、接続導体302,303,304,305の少なくとも一つと結合している。整合素子43がインダクタ43Lであれば、インダクタ43Lは、接続導体302,303,304,305の少なくとも一つと誘導性結合または容量性結合している。整合素子43がキャパシタ43Cであれば、キャパシタ43Cは、接続導体302,303,304,305の少なくとも一つと容量性結合している。
【0067】
整合素子44は、接続導体301,302,303,304の少なくとも一つと結合している。整合素子44がインダクタ44Lであれば、インダクタ44Lは、接続導体301,302,303,304の少なくとも一つと誘導性結合または容量性結合している。整合素子44がキャパシタ44Cであれば、キャパシタ44Cは、接続導体301,302,303,304の少なくとも一つと容量性結合している。
【0068】
このような構成とすることで、結合する接続導体と整合素子は、高周波的に接続される。例えば、整合素子44がキャパシタ44Cであり、キャパシタ44Cと接続導体301とが容量性結合した場合、キャパシタ44C(整合素子44)と接続導体301との間に結合容量Cを有する容量性結合回路が構成される。これにより、高周波信号は、第1外部接続端子P1と第2外部接続端子P2との間で、フィルタ部20を伝搬経路とする主伝搬経路のみで伝搬されるだけではなく、高周波信号の一部が接続導体301、容量性結合回路およびキャパシタ44C(整合素子44)を伝搬経路とする副伝搬経路にも伝搬される。
【0069】
これにより、高周波モジュール12としては、主伝搬経路の伝送特性と副伝搬経路の伝送特性とが合成された合成伝送特性となる。
【0070】
このような構成の高周波モジュール12であっても、上述の高周波モジュール11と同様に、所望の減衰特性を、従来構成よりも簡素な構成で実現できる。
【0071】
(第3回路例)
図3に示す高周波モジュール13は、シリーズ接続型の整合素子41およびシャント接続型の整合素子44を備える。
【0072】
整合素子41は、フィルタ部20の第1端子P21と第1外部接続端子P1との間に接続されている。整合素子41は、具体的には、図5(A)に示す第1端子P21と第1外部接続端子P1との間に直列接続されたインダクタ41Lであったり、図5(B)に示す第1端子P21と第1外部接続端子P1との間に直列接続されたキャパシタ41Cである。整合素子41の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第1外部接続端子P1側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0073】
整合素子44は、フィルタ部20の第2端子P22と第2外部接続端子P2とを接続する接続ライン402とグランドとの間に接続されている。整合素子44は、具体的には、図5(G)に示す第2端子P22と第2外部接続端子P2とを接続する接続ライン402とグランドとの間に接続されたインダクタ44Lであったり、図5(H)に示す第2端子P22と第2外部接続端子P2とを接続する接続ライン402とグランドとの間に接続されたキャパシタ44Cである。整合素子44の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第2外部接続端子P2側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0074】
さらに、整合素子41,44の少なくとも一方は、図3の点線矢印に示すように、フィルタ部20の接続導体301,302,303,304,305の少なくとも一つに対して、誘導性結合または容量性結合している。この際、整合素子と接続導体は、少なくとも一つのSAW共振子を介した位置にある整合素子と接続導体同士で結合している。
【0075】
より具体的には、整合素子41は、接続導体302,303,304,305の少なくとも一つと結合している。整合素子41がインダクタ41Lであれば、インダクタ41Lは、接続導体302,303,304,305の少なくとも一つと誘導性結合または容量性結合している。整合素子41がキャパシタ41Cであれば、キャパシタ41Cは、接続導体302,303,304,305の少なくとも一つと容量性結合している。
【0076】
整合素子44は、接続導体301,302,303,304の少なくとも一つと結合している。整合素子44がインダクタ44Lであれば、インダクタ44Lは、接続導体301,302,303,304の少なくとも一つと誘導性結合または容量性結合している。整合素子44がキャパシタ44Cであれば、キャパシタ44Cは、接続導体301,302,303,304の少なくとも一つと容量性結合している。
【0077】
これにより、高周波モジュール13としては、フィルタ部20を介する主伝搬経路の伝送特性と、結合部を介する副伝搬経路の伝送特性とが合成された合成伝送特性となる。このような構成の高周波モジュール13であっても、上述の高周波モジュール11,12と同様に、所望の減衰特性を、従来構成よりも簡素な構成で実現できる。
【0078】
(第4回路例)
図4に示す高周波モジュール14は、シャント接続型の整合素子4およびシリーズ接続型の整合素子4を備える。
【0079】
整合素子42は、フィルタ部20の第2端子P22と第2外部接続端子P2との間に接続されている。整合素子42は、具体的には、図5(E)に示す第2端子P22と第2外部接続端子P2との間に直列接続されたインダクタ42Lであったり、図5(F)に示す第2端子P22と第2外部接続端子P2との間に直列接続されたキャパシタ42Cである。整合素子42の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第2外部接続端子P2側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0080】
整合素子43は、フィルタ部20の第1端子P21と第1外部接続端子P1とを接続する接続ライン401とグランドとの間に接続されている。整合素子43は、具体的には、図5(C)に示す第1端子P21と第1外部接続端子P1とを接続する接続ライン401とグランドとの間に接続されたインダクタ43Lであったり、図5(D)に示す第1端子P21と第1外部接続端子P1とを接続する接続ライン401とグランドとの間に接続されたキャパシタ43Cである。整合素子43の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第1外部接続端子P1側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0081】
さらに、整合素子42,43の少なくとも一方は、図4の点線矢印に示すように、フィルタ部20の接続導体301,302,303,304,305の少なくとも一つに対して、誘導性結合または容量性結合している。この際、整合素子と接続導体は、少なくとも一つのSAW共振子を介した位置にある整合素子と接続導体同士で結合している。
【0082】
より具体的には、整合素子42は、接続導体301,302,303,304の少なくとも一つと結合している。整合素子42がインダクタ42Lであれば、インダクタ42Lは、接続導体301,302,303,304の少なくとも一つと誘導性結合または容量性結合している。整合素子42がキャパシタ42Cであれば、キャパシタ42Cは、接続導体301,302,303,304の少なくとも一つと容量性結合している。
【0083】
整合素子43は、接続導体302,303,304,305の少なくとも一つと結合している。整合素子43がインダクタ43Lであれば、インダクタ43Lは、接続導体302,303,304,305の少なくとも一つと誘導性結合または容量性結合している。整合素子43がキャパシタ43Cであれば、キャパシタ43Cは、接続導体302,303,304,305の少なくとも一つと容量性結合している。
【0084】
これにより、高周波モジュール14としては、フィルタ部20を介する主伝搬経路の伝送特性と、結合部を介する副伝搬経路の伝送特性とが合成された合成伝送特性となる。このような構成の高周波モジュール14であっても、上述の高周波モジュール11,12,13と同様に、所望の減衰特性を、従来構成よりも簡素な構成で実現できる。
【0085】
図6は、整合素子と接続導体の結合度を変化させた時の高周波モジュールの帯域通過特性の変化を示すグラフである。図6の横軸は周波数を示し、図6の縦軸は第1外部接続端子P1から第2外部接続端子P2へ伝搬する信号の減衰量を示す。図6に示す点線の特性は、実線の特性よりも誘導性結合が弱く容量性結合が強い場合を示す。図6に示す破線の特性は、実線の特性よりも誘導性結合が強く容量性結合が弱い場合を示す。なお、図6の特性は、フィルタ部20のSAW共振子202,203の接続位置とグランドとの間にSAW共振子を接続し、SAW共振子204,205の接続位置とグランドとの間にSAW共振子を接続し、SAW共振子206,207の接続位置とグランドとの間にSAW共振子を接続するラダー構造にした場合を示している。なお、本実施形態における高周波モジュールは、800MHz帯を通過帯域とする帯域通過フィルタである。
【0086】
図6に示すように、誘導性結合が強くなり容量性結合が弱くなるほど、通過帯域の高周波数側に現れる減衰極の周波数は高くなる。一方、誘導性結合が弱くなり容量性結合が強くなるほど、通過帯域の高周波数側に現れる減衰極の周波数は低くなる。なお、図6における減衰極の周波数とは、周波数軸のほぼ中央にあるピーク周波数のことである。
【0087】
また、誘導性結合および容量性結合を適宜設定することで、通過帯域の高周波数側の減衰特性を変化させることができる。例えば、容量性結合が強くなり誘導性結合が弱くなるほど、通過帯域付近での減衰量が小さいが、減衰極の周波数での減衰量を大きく取ることができる。また、容量性結合が弱くなり誘導性結合が強くなるほど、通過帯域付近での減衰量を、より大きく取ることができる。
【0088】
そして、図6に示すように、誘導性結合および容量性結合の強さに影響されることなく、通過帯域の周波数位置、周波数幅および挿入損失は殆ど変化しない。
【0089】
したがって、本実施形態の構成を用いて、結合態様および結合度を適宜調整することで、通過帯域の特性を変化させることなく、高周波数側の減衰特性を所望の特性に調整することができる。言いかえれば、所望の帯域通過特性と減衰特性を有する高周波モジュールを実現することができる。
【0090】
このような構成からなる高周波モジュールは、具体的な適用例として、図7に示すデュプレクサ構成に利用することができる。図7は、デュプレクサ構成からなる高周波モジュールの等価回路図である。
【0091】
高周波モジュール101は、フィルタ部21、第1外部接続端子P1、第2外部接続端子P2、および、フィルタ部21の第3端子P31,P32を兼用する第3外部接続端子を備える。具体的な適用例として、第1外部接続端子P1は、アンテナに接続される。第2外部接続端子P2は送信回路に接続される。第3外部接続端子(第3端子P31,P32)は受信回路に接続される。
【0092】
フィルタ21は、第1端子P21’、第2端子P22、第3端子P31,P32、第4端子P23、および第5端子P24を備える。
【0093】
第1端子P21’は、接続ライン401を介して第1外部接続端子P1に接続されている。接続ライン401とグランドとの間には、上述の整合素子に対応するインダクタ43Lが接続されている。第2端子P22は、接続ライン402を介して第2外部接続端子P2に接続されている。
【0094】
第1端子P21’と第2端子P22との間には、複数のSAW共振子201,202,203,204,205,206が直列接続されている。
【0095】
より具体的には、SAW共振子201の一方端は、接続導体301を介して第1端子P21’に接続されている。SAW共振子201の他方端は、SAW共振子202の一方端に接続されている。SAW共振子202の他方端は、接続導体302を介してSAW共振子203の一方端に接続されている。SAW共振子203の他方端は、SAW共振子204の一方端に接続されている。SAW共振子204の他方端は、接続導体303を介してSAW共振子205の一方端に接続されている。SAW共振子205の他方端は、SAW共振子206の一方端に接続されている。SAW共振子206の他方端は、接続導体304を介して第2端子P22に接続されている。
【0096】
また、SAW共振子202とSAW共振子203の接続点、言い換えれば接続導体302の所定位置には、SAW共振子211の一方端が接続され、当該SAW共振子211の他方端は、第4端子P23に接続されている。第4端子P23は、インダクタ50を介してグランドに接続されている。
【0097】
SAW共振子204とSAW共振子205の接続点、言い換えれば、接続導体303の所定位置は、SAW共振子212の一方端に接続されており、SAW共振子212の他方端は、第5端子P24に接続されている。SAW共振子206と第2端子P22との接続点、言い換えれば接続導体304の所定位置は、SAW共振子213の一方端に接続されており、SAW共振子213の他方端は第5端子P24に接続されている。第5端子P24は、インダクタ60を介してグランドに接続されている。
【0098】
この構成により、フィルタ部21は、第1端子P21’と第2端子P22との間に対して、これらSAW共振子201−20,211,212,213の帯域通過特性および減衰特性を組み合わせることで、フィルタ部21の第1、第2端子間としての所望の第1帯域通過特性および第1通過帯域外の第1減衰特性を実現している。
【0099】
第1端子P21’と第3端子P31,P32との間には、SAW共振子21と縦結合型SAW共振子231,232が直列接続されている。この構成により、フィルタ部21は、第1端子P21’と第3端子P31,P32との間に対して、これらSAW共振子221,231,232の帯域通過特性および減衰特性を組み合わせることで、フィルタ部21の第1、第3端子間としての所望の第2帯域通過特性および第2通過帯域外の第2減衰特性を実現している。第2通過帯域は、第1通過帯域とは異なる周波数帯域であり、第2通過帯域は、第1通過帯域外の減衰帯域範囲内となるように設定されている。
【0100】
これにより、フィルタ部21は、第1端子P21’を共通端子とし、第2端子P22および第3端子P31,P32をそれぞれ個別端子とするデュプレクサとして機能する。
【0101】
さらに、高周波モジュール101では、接続導体302,303,304のいずれかとインダクタ43Lとを、誘導性結合させる。そして、この結合度を調整することで、第1減衰特性を調整することができる。
【0102】
ここで、本実施形態の構成を用いれば、第2通過帯域に重ねるように、第1減衰特性における減衰量を大きく取る周波数帯域の帯域幅および減衰量を調整することができる。これは、インダクタ43Lに結合させる接続導体302,303,304の選択と、結合する接続導体とインダクタ43Lとの結合度を調整すれば可能である。
【0103】
図8は、整合素子と接続導体の結合度を変化させた時の高周波モジュールの第2外部接続端子と第3外部接続端子との間のアイソレーションの変化を示すグラフである。図8の横軸は周波数を示し、図8の縦軸はアイソレーション量を示す。図8ではアイソレーション量が低いほど、第2、第3端子間で強くアイソレーションされていることを示している。図8に示す点線の特性は、実線の特性よりも誘導性結合が弱く容量性結合が強い場合を示す。図8に示す破線の特性は、実線の特性よりも誘導性結合が強く容量性結合が弱い場合を示す。
【0104】
図8に示すように、誘導性結合および容量性結合を調整することにより、受信回路Rx(第3端子側)の通過帯域のアイソレーション量およびアイソレーション特性を調整することができる。また、図8に示すように、誘導性結合および容量性結合を調整しても、送信回路Tx(第2端子側)の通過帯域のアイソレーション量およびアイソレーション特性は殆ど変化しない。
【0105】
このように、高周波モジュール101の構成を用いることで、第2、第3端子間のアイソレーション特性を適切に調整することができる。すなわち、送信回路と受信回路との間のアイソレーション特性を最適化することができる。
【0106】
以上のような構成からなる高周波モジュールは、次に示すような構造によって実現することができる。なお、以下では、上述のデュプレクサ構成からなる高周波モジュール101を構造的に実現する例を示す。
【0107】
(第1の構造)
図9は、高周波モジュールの主要構造を示す側面概念図である。高周波モジュール101は、積層基板100、フィルタ基板200、カバー層290、側面カバー層291、実装型回路素子430を備える。
【0108】
積層基板100は、複数の誘電体層を積層してなる。積層基板100の表面100Sおよび内層には、所定パターンの電極が形成されており、高周波モジュール101のフィルタ部21を除く配線パターンやインダクタ50,60が形成されている。積層基板100の底面100Rには、外部接続用電極が形成されており、これら外部接続用電極により、上述の第1外部接続端子P1、第2外部接続端子P2、第3外部接続端子が形成される。
【0109】
フィルタ部21は、フィルタ基板200、カバー層290、側面カバー層291、接続電極293、および実装用電極294によって形成されている。
【0110】
フィルタ基板200は、平板状の圧電基板からなる。フィルタ基板200の第1主面には、フィルタ電極が形成されている。フィルタ電極は、例えば、所謂IDT電極からなる。このように、圧電基板の主面にIDT電極を形成することで、上述の各SAW共振子を実現することができる。また、フィルタ基板200の第1主面には、接続導体304を含む各接続導体を実現する電極パターンが形成されている。フィルタ基板200の第1主面側には、平板状のカバー層290が配置されている。カバー層290は、平板状の絶縁性材料からなり、平面視してフィルタ基板200と同じ形状からなる。また、カバー層290は、平面視して、フィルタ基板200と重なるように配置されており、フィルタ基板200の第1主面から所定距離の間隔を空けて配置されている。
【0111】
フィルタ基板200の第1主面とカバー層290との間には、側面カバー層291が配置されている側面カバー層291も絶縁性材料からなり、平面視して、フィルタ基板200およびカバー層290の全周に亘って、外周端から内側へ所定幅の範囲にのみ形成されている。すなわち、カバー層290は、中央に開口を有する枠状の構造である。
【0112】
このように、カバー層290と側面カバー層291が配置されることで、フィルタ基板200の第1主面のフィルタ電極が形成される領域は、フィルタ基板200、カバー層290、および側面カバー層291によって密閉空間292内に配置される。これにより、SAW共振子の共振特性を向上させることができ、フィルタとしての所望の特性を精確に実現することができる。
【0113】
接続電極293は、フィルタ基板200の第1主面に一方端が接し、他方端がカバー層290におけるフィルタ基板200側と反対側の面に露出する形状からなる。この際、接続電極293は、側面カバー層291およびカバー層290を貫通するように形成されている。接続電極293の一方端は、フィルタ基板200の第1主面に形成された電極パターンに接続されている。
【0114】
実装用電極294は、接続電極293の他方端に接続し、カバー層290におけるフィルタ基板200側と反対側の面から突出する形状で形成されている。この接続電極293と実装用電極294の組を複数設けることにより、上述のフィルタ部21の第1端子P21’、第2端子P22、第3端子P31,P32、第4端子P23、および第5端子P24が実現される。なお、接続電極293の他方端に半田やAu等を用いてバンプを形成し、当該バンプを介して実装用電極294と接続してもよい。
【0115】
以上のような構成とすることで、フィルタ部21は、所謂WLP(Wafer Level Package)の構造となり、フィルタ部21を小型に形成することができる。
【0116】
そして、このWLP構造のフィルタ部21は、積層基板100の天面(実装面)100Sに実装されている。これにより、フィルタ部21は、第1外部接続端子P1、第2外部接続端子P2、第3外部接続端子に接続される。
【0117】
インダクタ43Lは、実装型回路素子430によって実現される。具体的には、実装型回路素子430は、絶縁性材料からなる直方体形状の筐体を備え、当該筐体の内部に、インダクタ43Lとなるスパイラル電極が形成されている。スパイラル電極は、筐体の外周に沿って伸長し一部が分断された状の線状電極と層間接続電極によって実現される。各層の線状電極は、層間接続電極によって一本の線状電極になるように接続されている。スパイラル電極の両端は、筐体の対向する両端面に形成された外部接続電極に接続されている。
【0118】
このような構成からなる実装型回路素子430は、フィルタ部21と同様に、積層基板100の天面(実装面)100Sに実装されている。ここで、フィルタ部21の第1端子P21’と第1外部接続端子P1との接続ラインが積層基板100の天面100Sおよび内部に形成され、グランド電極が積層基板100の内部に形成されており、実装型回路素子430の実装用ランドに接続されている。これにより、インダクタ43Lがフィルタ部21の第1端子P21’と第1外部接続端子P1との接続ラインとグランドとの間に接続される構造を実現できる。
【0119】
そして、インダクタ43Lを実現する実装型回路素子430を、WLP構造のフィルタ部21に近接して配置することで、インダクタ43Lとフィルタ部21の所定の接続導体との間の誘導性結合を得ることができる。
【0120】
フィルタ部21を構成する電極パターンは、例えば図10に示すような構造になっている。図10は、高周波モジュールの主要構造を示す平面概念図である。具体的には、フィルタ基板200の第1主面には、SAW共振子201−206,211,212,213,221を構成するIDT電極、縦結合型SAW共振子231,232を構成するIDT電極、および、各接続導体を構成する電極パターンが形成されている。また、各端子P21’,P22,P23,P24を構成するランド電極も形成されている。これらIDT電極、接続導体を構成する電極パターン、およびランド電極は、図7に示す回路構成を実現するように、所定のパターン構成で形成されている。
【0121】
この際、接続導体304を構成する電極パターンは、フィルタ基板200の第1端辺の近傍に、該第1端辺に沿って伸長する形状で形成されている。
【0122】
そして、実装型回路素子430は、当該フィルタ基板200の第1端辺に近接する位置に実装されている。これにより、実装型回路素子430のスパイラル電極からなるインダクタ43Lと、線状の電極パターンからなる接続導体304とが近接するので、図10の太点線矢印に示すように、誘導性結合を生じさせることができる。このような構成とすることで、減衰特性調整用の素子を別途設けることなく、所望の減衰特性を有する高周波モジュール101を実現することができる。
【0123】
ここで、実装型回路素子430の配置位置を、図10の細破線矢印に示すように、積層基板100の天面100S上において変化させる。これにより、実装型回路素子430のスパイラル電極からなるインダクタ43Lと、線状の電極パターンからなる接続導体304との距離、および、対向して伸長する電極の長さを調整することができる。この構成により、インダクタ43Lと接続導体304との誘導性結合を調整することができ、減衰特性を調整することにより、所望とする減衰特性を精確に実現することができる。
【0124】
なお、図10では、実装型回路素子430の長手側面と、フィルタ基板200の第1端辺とが平行になるように配置した例を示した。しかしながら、実装型回路素子430の短手側面(外部接続電極が形成される端面)と、フィルタ基板200の第1端とが平行になるように配置してもよい。ただし、実装型回路素子430の長手側面と、フィルタ基板200の第1端辺とを平行に配置することで、より強い誘導性結合を、より簡単に実現することができる。
【0125】
また、図10では、スパイラル電極の中心軸が天面100Sに直交するように、実装型回路素子430を実装する例を示したが、スパイラル電極の中心軸が天面100Sに平行になるように、実装型回路素子430を実装してもよい。
【0126】
(第2の構造)
図11は、高周波モジュールの主要構造を示す側面概念図である。図11に示す高周波モジュール101Aは、インダクタ43Lが、実装型回路素子で実現されず、積層基板100内に形成された電極パターンによって実現される。フィルタ部21の構成は、図9図10に示した高周波モジュール101と同じであり、説明は省略する。
【0127】
積層基板100の内部には、スパイラル電極の電極パターンからなるインダクタ43Lが形成されている。スパイラル電極は、積層基板100を構成する複数の誘電体層に形成された一部が分断された状の線状電極と層間接続電極によって実現される。各誘電体層の線状電極は、層間接続電極によって積層方向に接続され、一本の線状電極になるように接続されている。この構成により、中心軸が積層方向に沿ったスパイラル電極を実現することができる。インダクタ43Lを構成するスパイラル電極の一方端は、ビア導体431Vを介して、フィルタ部21の第1端子P21’となる実装用電極294が実装されるランド電極に接続されている。ランド電極は、積層基板100の天面100Sに形成されている。インダクタ43Lを構成するスパイラル電極の他方端は、ビア導体432Vを介して、積層基板100内の底面100R近傍に形成された内部グランドパターンに接続されている。
【0128】
さらに、インダクタ43Lを構成するスパイラル電極は、平面視して、フィルタ部21の接続導体304を構成する電極パターンと少なくとも一部が重なり合うようにして形成されている。
【0129】
この構成により、積層基板100内のスパイラル電極からなるインダクタ43Lと、フィルタ基板200の第1主面に形成された線状の電極パターンからなる接続導体304との間で、図11の太破線矢印に示すように、誘導性結合を生じさせることができる。この際、インダクタ43Lを構成するスパイラル電極と、フィルタ部21の接続導体304を構成する電極パターンとの距離、および、当該スパイラル電極と電極パターンの重なる面積を変化させることで、インダクタ43Lと接続導体304との結合度を調整できる。これにより、上述の第1の構造と同様に、高周波モジュール101Aの減衰特性を調整することができ、所望とする減衰特性をより精確に実現することができる。
【0130】
また、本実施形態では、インダクタ43Lが実装型回路素子ではないので、当該実装型回路素子を実装するための領域を、積層基板100の天面100Sに設けなくてもよい。これにより、積層基板100を平面視した面積を小さくでき、高周波モジュール101Aの平面面積を小さくすることができる。
【0131】
(第3の構造)
図12は、高周波モジュールの主要構造を示す側面概念図である。図12に示す高周波モジュール101Bは、所謂CSP(Chip Sized Package)構造で実現されている。
【0132】
高周波モジュール101Bは、フィルタ基板200を備える。フィルタ基板200には、上述のようにフィルタ部21を実現するフィルタ電極、および接続導体304を含む各接続導体を構成する電極パターンが形成されている。
【0133】
高周波モジュール101Bは、さらにフィルタ実装用基板280を備える。フィルタ実装用基板280は、例えばアルミナ基板からなり、平面視した面積がフィルタ基板200よりも所定量大きい。
【0134】
フィルタ基板200は、第1主面がフィルタ実装用基板280側になるように、バンプ導体281によってフィルタ実装用基板280に実装されている。フィルタ実装用基板280におけるフィルタ基板200の実装面と反対側の面には、外部接続用バンプ導体282が形成されている。
【0135】
フィルタ実装用基板280には、高周波モジュール101B(回路構成としては高周波モジュール101)のフィルタ部21を除く回路パターンおよびインダクタ43Lが形成されている。
【0136】
フィルタ実装用基板280におけるフィルタ基板200が実装された面には、モールド樹脂283が塗布されている。これにより、フィルタ電極および接続導体を構成する電極パターンが外部環境に曝されることを防止でき、SAW共振子の共振特性を向上させることができ、フィルタとしての所望の特性を精確に実現することができる。
【0137】
ここで、フィルタ実装用基板280に形成されたインダクタ43Lを構成する電極パターンと、フィルタ基板200に形成された接続導体304を実現する電極パターンとが、平面視して少なくとも一部が重なるように配置する。これより、図12に示すように、インダクタ43Lを構成する電極パターンと接続導体304を実現する電極パターンとの間に、誘導性結合を生じさせることができる。特に、本実施形態の構成では、インダクタ43Lを構成する電極パターンと接続導体304を実現する電極パターンとの間隔(距離)を短くすることができるので、より強い誘導性結合を、容易に実現することができる。
【0138】
また、高周波モジュール101B全体がCSP構造であるので、高周波モジュール101Bを小型且つ薄型で実現することができる。
【0139】
なお、上述の各実現構造では、整合素子としてインダクタを用いる例を示したが、整合素子がキャパシタの場合についても、同様の構造で実現することができる。例えば、第1の構造であれば、実装型の積層コンデンサ素子を用いればよい。第2の構造であれば、積層基板100内の異なる層に互いに対向するように形成した複数の平板電極によって、キャパシタを実現すればよい。また、第3の構造であれば、フィルタ実装用基板280に形成した電極パターンによってキャパシタを実現すればよい。
【0140】
また、整合素子と結合する接続導体は、上述のように、少なくとも間に一つのSAW共振子を介するようにすればよいとしたが、間に介するSAW共振子が多いほど、減衰特性与える影響を大きくすることができる。例えば、第1の構造(図9参照)であれば、フィルタ基板200と実装型回路素子430との位置関係が同じであれば、間に介するSAW共振子が多い整合素子と接続導体とを結合させるほど、減衰特性に与える影響を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0141】
11,12,13,14,101,101A,101B:高周波モジュール、
20,21:フィルタ部、
201−208:SAW共振子、
301−305:接続導体、
41,42:(シリーズ接続型の)整合素子、
43,44:(シャント接続型の)整合素子、
41L,42L,43L,44L:インダクタ、
41C,42C,43C,44C:キャパシタ、
401,402:接続ライン、
P1:第1外部接続端子、
P2:第2外部接続端子、
P21,P21’:第1端子、
P22:第2端子、
P31,P32:第3端子、
P23:第4端子、
P24:第5端子、
100:積層基板、
100S:天面、
100R:底面、
200:フィルタ基板、
280:フィルタ実装用基板、
281:バンプ導体、
282:外部接続用バンプ導体、
283:モールド樹脂、
290:カバー層、
291:側面カバー層、
292:密閉空間、
293:接続電極、
294:実装用電極、
430:実装型回路素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12