(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書において引用した全ての文献、特許、および特許出願は、その全体が参照により本明細書に援用されるものとする。
【0031】
冠詞「a」および「an」は、本明細書では、その冠詞の文法上の目的語が1つまたは2つ以上(すなわち少なくとも1つ)であることを指すのに用いる。例として、「ポリマー樹脂(a polymer resin)」は、1つのポリマー樹脂または2つ以上のポリマー樹脂を意味する。本明細書で挙げられた範囲はいずれも包含的なものである。本明細書全体を通じて使用される「実質的」および「約」という用語は、多少の変動があることを示したり説明したりするのに用いる。例えば、±5%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.2%以下、±0.1%以下、±0.05%以下を指す場合がある。
【0032】
本明細書全体を通じて「一実施形態」または「ある実施形態」と言った場合、その実施形態に関連して説明したある特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。すなわち、本明細書全体を通じて様々な箇所に「一実施形態において」または「ある実施形態において」との語句が使用されているが、必ずしも全てが同一の実施形態を指しているわけではない。さらにこれらの特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、いずれかの好適な方法で組み合わせてもよい。
【0033】
本開示によれば、優れた耐熱性、優れた加工性、および弾性や伸度に関わる優れた機械的特性、ならびに好適な硬化性を有するベンゾオキサジン樹脂組成物を得ることができる。さらに本開示によれば、ベンゾオキサジン樹脂の脆性を軽減するために大量の添加剤を使用する必要がないため、タック性やドレープ性に優れる等、取り扱い性に優れたプリプレグを得ることができる。さらに、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物を用いると、ベンゾオキサジン樹脂組成物を硬化することによって優れた引張強度および圧縮強度を有する繊維強化複合材料を得ることができ、この繊維強化複合材料は、強化繊維と組み合わせて用いると優れた機械的特性を発現する。
【0034】
以下、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物、プリプレグ、および繊維強化複合材料について詳細に説明する。
【0035】
本発明者らは、炭素繊維強化複合材料における引張強度および圧縮強度が発現するメカニズムについて鋭意研究を行った。その結果、(A)式(I)の構造を少なくとも2つ有する多官能ベンゾオキサジン樹脂と、(B)グリシジル基を3個以上有する多官能エポキシ樹脂と、(C)スルホン酸エステルと、(D)重量平均分子量が30,000g/mol以下でありポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドより選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂とを含む樹脂によって、これまで互いに相容れないものであった引張強度と圧縮強度の両方を高いレベルで実現するのに最適な構造が得られることを見出した。
【0036】
上述のとおり、別の実施形態は、少なくとも(A’)ベンゾオキサジン樹脂、(B’)エポキシ樹脂、および(C’)重合触媒を含むベンゾオキサジン樹脂組成物であって、ベンゾオキサジン樹脂の70〜100重量パーセントが式Iの構造を少なくとも2つ含み、硬化後に相互侵入網目構造を有するベンゾオキサジン樹脂組成物に関する。場合により、示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分にて測定した際のベンゾオキサジン樹脂の反応の発熱ピークTaとエポキシ樹脂の反応の発熱ピークTbの差は、30℃以下である。場合により、示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分にて測定した際の反応開始温度は、90℃〜180℃の範囲である。場合により、ベンゾオキサジン樹脂組成物の硬化樹脂試料の動的粘弾性評価に基づくゴム状平坦弾性率G’は、3MPa≦G’≦10MPaの関係を満たす。場合により、エポキシ樹脂の50〜100重量パーセントは、40℃で液状でありグリシジル官能基を3個以上有する液状エポキシ樹脂からなる。場合により、ベンゾオキサジン樹脂組成物中におけるベンゾオキサジン樹脂のベンゾオキサジン官能基とエポキシ樹脂のグリシジル基の比は、0.7〜1.0の範囲である。場合により、重合触媒は、ベンゾオキサジン樹脂の開環重合とエポキシ樹脂の重合の両方に触媒作用を及ぼすようになっている。場合により、重合触媒は、プロトン酸エステル、ハロゲン化ホウ素錯体、芳香族スルホニウム塩、およびこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種である。場合により、ベンゾオキサジン樹脂組成物は、第1の熱可塑性樹脂からなる構成要素をさらに含む。場合により、ベンゾオキサジン樹脂組成物は、薄膜、粒子、繊維、またはこれらを組み合わせた形態の第2の熱可塑性樹脂からなる構成要素をさらに含む。場合により、ベンゾオキサジン樹脂組成物は、繊維強化複合材料を得るために複数の強化繊維に含浸させる樹脂組成物の形態である。場合により、少なくとも1つの第1の熱可塑性樹脂は、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、およびこれらの組合せからなる群より選択される。ある実施形態は、上記ベンゾオキサジン樹脂組成物を含浸させた複数の強化繊維を含むプリプレグに関する。場合により、プリプレグは硬化させている。ある実施形態は、上記プリプレグを含む繊維強化複合材料に関する。ある実施形態は、上記硬化させたベンゾオキサジン樹脂組成物を含む硬化樹脂材料に関する。ある実施形態は、強化繊維および上記硬化樹脂材料を含む繊維強化複合材料に関する。ある実施形態は、航空機の構造部材、ロケットモーターケース、人工衛星、ドライブシャフト、板ばね、風車の羽根、圧力容器、フライホイール、屋根材料、ケーブル、鉄筋、スポーツ用品、またはそれらの組合せを含む繊維強化複合材料成分に関する。ある実施形態は、上記ベンゾオキサジン樹脂組成物を強化繊維に含浸させて含浸強化繊維を形成することを含む繊維強化複合材料の製造方法に関する。場合により、前記方法は、含浸強化繊維を硬化することを含む場合がある。
【0037】
本開示の発明者らは、ベンゾオキサジン樹脂組成物の反応、および強度を発現するメカニズムに関して鋭意研究を行った。その結果、式(I)の構造を有するベンゾオキサジン樹脂(A’)、エポキシ樹脂(B’)、および重合触媒(C’)を含む樹脂は、硬化後にベンゾオキサジン樹脂組成物中に相互侵入網目構造を有することにより、繊維強化複合材料中の強化繊維と組み合わせて用いた場合でも、優れた弾性および伸度をもたらす一方、優れた機械的特性も発現することを見出した。本明細書で用いる「相互侵入網目構造」とは、(A’)の重合により形成された網目構造(a)が(B’)の重合により形成された網目構造(b)の上に重ね合わされ、これら2つの網目構造が互いに絡み合った構造を示す。網目構造(a)と網目構造(b)とは、部分的に結合した部分を有し得る。部分的に結合していることにより、網目構造(a)と網目構造(b)とが広範囲に分離することが抑えられ、絡み合い構造が形成されやすくなる。また、熱可塑性線状ポリマー(c)が加えられ、この線状ポリマー(c)が網目構造(a)と網目構造(b)とを含む相互侵入網目構造(a−b)と絡み合った、半相互侵入網目構造が形成される場合もある。少なくとも、高靭性熱可塑性樹脂成分を加えると、ベンゾオキサジン樹脂組成物の靭性の向上に寄与するだけでなく、ベンゾオキサジン樹脂組成物の粘度調整が容易になり、プリプレグを製造する際に好適なタック性およびドレープ性が得られる。本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物においては、示差走査熱量計(以下、「DSC」ともいう)により測定した発熱ピーク温度差は、TaとTbの差(Taはベンゾオキサジン樹脂(A’)の反応の発熱ピーク、Tbはエポキシ樹脂(B’)の反応の発熱ピーク)が30℃の範囲内であることが好ましい。TaとTbの差が大き過ぎると、(A’)の重合反応と(B’)の重合反応の時間差が過度に大きくなり、最初に起こる重合によって反応性が低い方の樹脂の重合が制限されたり妨げられたりする。あるいは、硬化樹脂構造が相互侵入網目構造とならず、AのポリマーとBのポリマーとが広範囲に分離して、高強度が維持されないことがある。TaとTbの温度差は小さいことが好ましく、TaとTbの差が10℃の範囲内の場合は熱ピークを1つだけと見なす場合もある。本開示におけるDSCにより測定した発熱ピーク温度TaおよびTbは、昇温速度10℃/分の条件下で測定した値である。
【0038】
本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物は、DSCにより測定した反応開始温度(発熱開始温度)が90〜180℃の範囲内であることが好ましい。反応開始温度(発熱開始温度)が低過ぎると、保存性やプリプレグ製造の際の粘度安定性(ポットライフ)が損なわれる。一方、反応開始温度が高過ぎると、ベンゾオキサジン樹脂組成物を硬化させるために高温や長時間が必要となる。(A’)または(B’)の重合反応が過度に高い温度で起こった場合、連鎖移動反応や分解反応等の副反応の速度が上昇し、良好な機械的特性を発現するのに望ましい樹脂構造が得られない場合がある。反応開始温度が約90℃〜約180℃の範囲である本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物は、約150℃〜約200℃において急速に硬化が進み、プリプレグ製造の際の粘度安定性(ポットライフ)に優れる。したがって本組成物は、繊維強化複合材料用の樹脂組成物として望ましい。本開示におけるDSCにより測定した反応開始温度とは、昇温速度10℃/分の条件下で測定した値である。
【0039】
本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物を硬化することにより得られる樹脂シートは、後述する動的粘弾性評価方法に基づくゴム状平坦弾性率G’が3MPa≦G’≦10MPaの範囲であることが好ましい。
【0040】
ゴム状平坦弾性率は硬化材料中の架橋密度を反映するものであり、ゴム状平坦弾性率が低下するにつれて架橋密度も低下する。また、ゴム状平坦弾性率G’が上昇すればするほど、(A’)により発生したフェノール性ヒドロキシル基と(B’)のグリシジル基との反応が進み過ぎてしまい、単一網目構造となってしまう。その結果、十分な靭性および伸度が発現されない。ゴム状平坦弾性率G’が3MPa≦G’≦10MPaの範囲であるベンゾオキサジン樹脂組成物は、高レベルの耐熱性および機械的特性を有する一方で、繊維強化複合材料として使用した際に優れた機械的特性を発現する。本開示における動的粘弾性の具体的な評価方法は、実施例に記載する。
【0042】
式(I)中、R1は、炭素数1〜12の直鎖アルキル基、炭素数3〜8の環状アルキル基、フェニル基、または炭素数1〜12の直鎖アルキル基もしくはハロゲンで置換されたフェニル基を示し、芳香環の酸素原子が結合した炭素原子に対してオルト位およびパラ位にある炭素原子の少なくとも1つには水素が結合している。
【0043】
上記一般式で表される構造単位(I)において、R1の非限定的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、o−t−ブチルフェニル基、m−t−ブチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、o−クロロフェニル基、およびo−ブロモフェニル基が挙げられる。これらの基の中で、好適な取り扱い性に寄与する観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、またはo−メチルフェニル基を使用することが好ましい。
【0044】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【0045】
(A)成分および(A’)成分のベンゾオキサジン樹脂は、モノマー単独からなっていてもよいし、複数の分子が重合したオリゴマーの形態であってもよい。また、構造の異なるベンゾオキサジン樹脂を一緒に用いてもよい。ベンゾオキサジン環は、開環重合の結果フェノール樹脂と同様の骨格が生成されることにより、優れた難燃性を有する。さらにその密な構造により、優れた動的特性、および高弾性に関わる優れた機械的特性、ならびに低吸湿性が得られる。
【0046】
(A)および(A’)のベンゾオキサジン樹脂は、四国化成工業(株)、小西化学工業(株)、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社等のいくつかの供給元より入手可能である。このうち四国化成工業(株)は、ビスフェノールA−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールAメチルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、およびビスフェノールFアニリン型ベンゾオキサジン樹脂を提供している。市販の原料を使用する代わりに、必要に応じて、フェノール化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、チオジフェノール等)とアルデヒドとアリールアミンとの間で反応を起こさせることによりベンゾオキサジン樹脂を調製することもできる。詳しい調製方法は、米国特許第5,543,516号、同第4,607,091号(シュライバー社(Schreiber))、同第5,021,484号(シュライバー社)、および同第5,200,452号(シュライバー社)に記載されている。
【0047】
(A’)の少なくとも70〜100重量%が式Iの構造を少なくとも2つ有する多官能ベンゾオキサジン樹脂であれば、硬化樹脂に好適な架橋密度が得られるが、この条件は優れた耐熱性および優れた機械的特性を得るためにも好ましい。
【0048】
別の実施形態においては、(B’)は、40℃で液状であり得、グリシジル基を3個以上有し、ベンゾオキサジン樹脂組成物の粘度を制御し、硬化後に耐熱性をもたらし、主に硬化反応の際のアニオン重合またはカチオン重合によって(A’)のベンゾオキサジンと相互侵入網目構造を形成するエポキシ樹脂である。いずれの実施形態においても、1分子当たり2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂であれば、いずれのエポキシ樹脂を用いてもよい。中でも、ベンゾオキサジン樹脂組成物の粘度の制御のしやすさの観点から、40℃で液状のエポキシ樹脂が好ましい。本明細書で用いる「液状」との語については、比重が7以上である1cm
3の球状金属片を温度が同じである測定対象の熱硬化性樹脂の上に置いた時に、球状金属片が重力によってただちに沈む場合、この熱硬化性樹脂を液状と定義する。比重が7以上である金属片としては、例えば、鉄(鋼鉄)、鋳鉄、銅等が挙げられる。
【0049】
40℃で液状でありグリシジル基を3個以上有する本明細書中の実施形態の多官能エポキシ樹脂(B)は、1分子当たり3個以上のエポキシ基を有する化合物である。官能基を3個以上有するエポキシ樹脂(B)としては、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
(B)において、官能基の数は、高耐熱性と低粘度を両立させる観点から3〜7が好ましく、3〜4がより好ましい。官能基の数が多過ぎると、硬化したマトリックス樹脂が脆くなってしまい、耐衝撃性が損なわれるおそれがある。
【0051】
本明細書中の実施形態で使用する(B)としては、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミンジフェニルスルホン型、ジアミノジフェニルエーテル型、アミノフェノール型、メタキシレンジアミン型、およびイソシアヌレート型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ならびにフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。このうち、物性、粘度、および(D)成分との相溶性のバランスの観点から、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルエーテル型、およびアミノフェノール型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0052】
(A)成分と(B)成分の比率に関しては、(A)成分のベンゾオキサジン環当量(ベンゾオキサジン環から発生する活性水素当量)の(B)成分のエポキシ樹脂の活性水素当量に対する比(A)/(B)が、0.7〜1.0の範囲であることが好ましい。この範囲内であれば、製造工程に好適な粘度が得られる一方、プリプレグにおける好適な感圧接着性(タック性)および変形性(ドレープ性)が得られる。さらに、ベンゾオキサジン樹脂組成物において低吸湿性および高弾性が維持されるため、複合材料として使用した際に高温湿潤環境において優れた機械的特性が発揮される。
【0053】
(B’)成分の配合量が少な過ぎると、ベンゾオキサジン樹脂組成物の粘度が上昇してしまい、製造加工性、さらに場合によっては、プリプレグ形成の際の粘度(タック性)および変形性(ドレープ性)が損なわれる。一方、(B’)成分の配合量が多過ぎると、ベンゾオキサジン化合物の特性である低吸湿性や高弾性といった特性が失われる。その結果、高温湿潤環境において複合材料として使用した際の機械的特性が損なわれ易くなる。この理由により、(A’)成分と(B’)成分の比率に関しては、(A’)成分のベンゾオキサジン環当量(ベンゾオキサジン環から発生する活性水素当量)の(B’)成分のエポキシ樹脂の活性水素当量に対する比(A’)/(B’)が、0.5〜1.2または0.75〜1.0の範囲であることが好ましい。少なくとも、(A’)/(B’)比が0.5〜1.2の範囲であるベンゾオキサジン樹脂組成物は、好適な加工性、ならびにプリプレグにおける好適な感圧接着性(タック性)および変形性(ドレープ性)を有する。さらに、ベンゾオキサジン樹脂組成物において低吸湿性および高弾性が維持されるため、複合材料として使用した際に高温湿潤環境において優れた機械的特性が発揮される。
【0054】
エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルキシレンジアミン、グリシジルアニリン、およびグリシジルo−トルイジン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オキサゾリドン環を含むイソシアネート変性エポキシ樹脂;ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂;ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;ならびに脂環式エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0055】
エポキシ樹脂(B’)は、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含有することが好ましい。グリシジルアミン型エポキシ樹脂の配合量は、エポキシ樹脂(B’)全体に対して40〜100重量%であることが好ましい。ベンゾオキサジン樹脂組成物の粘度を調節して硬化後に耐熱性を付与するためには、40℃で液状であるグリシジル基を3個以上有する多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂が、これらの化合物の中では特に好ましい。例としては、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、ジアミノジフェニルエーテル型、アミノフェノール型、メタキシレンジアミン型、およびイソシアヌレート型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、またはフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を挙げることができる。これらの化合物のうち、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルエーテル型、およびアミノフェノール型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂が、物性と好適な粘度のバランスの観点から特に好ましい。
【0056】
(B)および(B’)の市販品としては、ELM434(住友化学(株))、アラルダイト(登録商標)MY720、アラルダイト(登録商標)MY721、アラルダイト(登録商標)MY9512、およびアラルダイト(登録商標)MY9663(ハンツマン・アドバンスト・ケミカルズ社)、ならびにエポトート(登録商標)YH−434(東都化成(株))等の、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0057】
市販のメタキシレンジアミン型エポキシ樹脂の一例としては、TETRAD−X(三菱ガス化学(株))がある。
【0058】
市販の1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂の一例としては、TETRAD−C(三菱ガス化学(株))がある。
【0059】
市販のイソシアヌレート型エポキシ樹脂の一例としては、TEPIC−P(日産化学工業(株))がある。
【0060】
市販のアミノフェノール型エポキシ樹脂としては、ELM120、ELM100(住友化学(株))、jER(登録商標)630(三菱化学)、アラルダイト(登録商標)MY0510(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社)、アラルダイト(登録商標)MY0600(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社)、およびアラルダイト(登録商標)MY0610(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社)等が挙げられる。
【0061】
市販のフェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、アラルダイト(登録商標)EPN1139(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社)等が挙げられる。
【0062】
また本明細書中の実施形態には、(B)以外のエポキシ樹脂、およびエポキシ樹脂と熱硬化性樹脂の共重合体も含まれる。エポキシ樹脂との共重合に使用される熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、およびポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂組成物や化合物は単独で用いてもよいし、好適な混合物として用いてもよい。少なくとも(B)以外のエポキシ樹脂を配合することにより、樹脂の流動性と硬化後の耐熱性を両立した材料が得られる。
【0063】
(B)以外のエポキシ樹脂として使用されるエポキシ樹脂のうち、好ましい二官能性エポキシ樹脂は、前駆体としてフェノールを有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。このようなエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、およびレゾルシノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、ベンゾオキサジン樹脂組成物のレオロジーを調整するためには、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、オルトクレゾールノボラック型、またはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の、40℃で固体の多官能エポキシ樹脂を少量配合することが望ましい。
【0064】
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、およびレゾルシノール型エポキシ樹脂は粘度が低いため、他のエポキシ樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。
【0065】
また、固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂に比べると架橋密度が低い構造のため、耐熱性が低い。しかしながら、高靭性の構造が得られるため、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、または液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂と組み合わせて用いられる。
【0066】
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂からは、低吸湿性および高耐熱性の硬化樹脂が得られる。さらに、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、およびジフェニルフルオレン型エポキシ樹脂を使用すると、低吸湿性の硬化樹脂が得られるため望ましい。ウレタン変性エポキシ樹脂およびイソシアヌレート変性エポキシ樹脂からは、高破壊靭性および高伸度の硬化樹脂が得られる。
【0067】
市販のビスフェノールA型(ノボラック型)エポキシ樹脂としては、エポン(登録商標)825(三菱化学)、エピクロン(登録商標)850(DIC(株))、エポトート(登録商標)YD−128(東都化成(株))、ならびにDER−331およびDER−332(ダウ・ケミカル・カンパニー)等が挙げられる。
【0068】
市販のビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、jER(登録商標)806、jER(登録商標)807、およびjER(登録商標)1750(三菱化学)、エピクロン(登録商標)830(DIC(株))、ならびにエポトート(登録商標)YD−170(東都化成(株))等が挙げられる。
【0069】
市販のレゾルシノール型エポキシ樹脂としては、デナコール(登録商標)EX−201(ナガセケムテックス(株))等が挙げられる。
【0070】
市販のグリシジルアニリン型エポキシ樹脂としては、GANおよびGOT(日本化薬(株))等が挙げられる。
【0071】
市販のビフェニル型エポキシ樹脂としては、NC−3000(日本化薬(株))等が挙げられる。
【0072】
市販のウレタン変性エポキシ樹脂としては、AER4152(旭化成(株)エポキシ)等が挙げられる。
【0073】
市販のヒダントイン型エポキシ樹脂としては、Y238(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社)等が挙げられる。
【0074】
市販のトリス−ヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、Tactix742(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社)等が挙げられる。
【0075】
市販のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂としては、jER(登録商標)1031S(三菱化学)等が挙げられる。
【0076】
市販のオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EOCN−1020(日本化薬(株))およびエピクロン(登録商標)N−660(DIC(株))等が挙げられる。
【0077】
市販のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、エピクロン(登録商標)HP7200(DIC(株))等が挙げられる。
【0078】
重合触媒(C’)は、TaとTbのパラメータが満たされる限りは、スルホン酸エステル等の、エポキシ樹脂カチオン重合触媒またはアニオン重合触媒より選択されるいずれの種類の化合物であってもよい。化合物は単独で用いてもよいし、複数の化合物を組み合わせて用いてもよい。重合触媒(C’)は、ベンゾオキサジン(A’)の開環重合とエポキシ樹脂(B’)の重合の両方を促進する。(A’)成分、ならびに(B’)成分のエポキシ樹脂と開環後に存在する(A’)成分のベンゾオキサジン樹脂のフェノール性ヒドロキシル基との反応によって必要に応じて相互侵入網目構造が形成されて樹脂が優れた機械的特性を有するためには、ベンゾオキサジン樹脂および/またはTaとTbのパラメータが満たされることが望ましい。
【0079】
カチオン重合系用の重合触媒としては、ルイス酸およびブレンステッド酸、金属ハロゲン化物、ならびに有機金属試薬等が挙げられる。アニオン重合系用のポリマー触媒としては、イミダゾール誘導体、第三級アミン、およびホスフィン等が挙げられる。
【0080】
これらの触媒のうち、ルイス酸錯体またはブレンステッド酸塩を使用することが好ましい。これらの重合触媒は、室温(25℃)およびプリプレグ製造工程(約50℃〜約90℃)において安定性に優れ、樹脂に対して低硬化温度での急速硬化性を付与し、反応開始温度(発熱開始温度)を約90℃〜約180℃の範囲内に調整し易くなるため、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物にとって好適である。
【0081】
ルイス酸錯体およびブレンステッド酸塩としては、プロトン酸エステル、ハロゲン化ホウ素錯体、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ピリジニウム塩、および芳香族ヨードニウム塩等が挙げられる。
【0082】
プロトン酸としては、トルエンスルホン酸エステルおよびベンゼンスルホン酸エステル等が挙げられる。
【0083】
トルエンスルホン酸エステルの具体例としては、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸n−プロピル、p−トルエンスルホン酸シクロヘキシル、ジ−p−トルエンスルホン酸1,3−プロパンジイル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールビス(トルエンスルホネート)、およびp−トルエンスルホン酸4,(4−((フェニルスルホニル)オキシ)フェノキシ)フェニル等が挙げられる。また、ベンゼンスルホン酸エステルの具体例としては、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸n−プロピル、ベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、ジベンゼンスルホン酸1,3−プロパンジイル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールビス(ベンゼンスルホネート)、およびベンゼンスルホン酸4−(4−((フェニルスルホニル)オキシ)フェノキシ)フェニル等が挙げられる。これらのトルエンスルホン酸エステルおよびベンゼンスルホン酸エステルは、シグマアルドリッチ社や東京化成工業(株)等の試薬メーカーより入手可能である。
【0085】
ハロゲン化ホウ素錯体としては、三フッ化ホウ素−ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素−モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素−トリエタノールアミン錯体(以上、ステラケミファ(株))、および三塩化ホウ素−オクチルアミン錯体(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社)等が挙げられる。
【0086】
芳香族スルホニウム塩としては、六フッ化アンチモン系スルホニウム塩であるSAN−AID(登録商標)SI−L85、SAN−AID SI−L145、SAN−AID SI−L160、SAN−AID SI−H15、SAN−AID SI−H20、SAN−AID SI−H25、SAN−AID SI−H40、SAN−AID SI−H50、SAN−AID SI−60L、SAN−AID SI−80L、SAN−AID SI−100L、SAN−AID SI−80、SAN−AID SI−100、およびSAN−AID SI−150(三新化学工業(株))、ならびに六フッ化リン系スルホニウム塩であるSAN−AID SI−110、SAN−AID SI−110L、およびSAN−AID SI−180L(三新化学工業(株))等が挙げられる。
【0087】
芳香族ジアゾニウム塩としては、Americure(アメリカン・キャン社)およびウルトラセット(ADEKA(株))等が挙げられる。また、ヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルシン酸塩、ビス(4−クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシン酸塩、ビス(4−ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシン酸塩、フェニル(4−メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシン酸塩、UV−9310C(東芝シリコーン)、Photoinitiator2074(ローヌ・プーラン社)、UVEシリーズ製品(ゼネラルエレクトリック社)、およびFCシリーズ製品(3M)等が挙げられる。
【0088】
芳香族ピリジニウム塩としては、特開04−327574号公報、特開05−222122号公報、および特開05−262813号公報に記載されている、N−ベンジル−4−ベンゾイルピリジニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、N−シンナミル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、およびN−(3−メチル−2−ブテニル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩等が挙げられる。
【0089】
芳香族ヨードニウム塩としては、Rhodorsil PI2074(ローディア社)等が挙げられる。
【0090】
これらの化合物の中で、プロトン酸エステル、ハロゲン化ホウ素錯体、および芳香族スルホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種を用いることにより、ベンゾオキサジン樹脂組成物は約150℃〜約180℃にて急速に硬化し、室温(25℃)やプリプレグ製造工程中(約50℃〜約90℃)において優れた安定性を示す。
【0092】
本明細書中の実施形態における(C)は、(B)成分のエポキシ樹脂と開環後に存在する(A)成分のベンゾオキサジン樹脂のフェノール性ヒドロキシル基との反応のみならず、(A)成分のベンゾオキサジン樹脂のベンゾオキサジン環の開環反応も促進するスルホン酸エステルである。すなわち、(C)を配合することによって、本明細書中の実施形態のベンゾオキサジン樹脂組成物は従来の組成物と比べて短時間で硬化が始まる。一方、(C)は室温ではエステル化した状態であるため反応促進効果が少なく、したがって本明細書中の実施形態の樹脂組成物は室温(25℃)やプリプレグ製造工程中(約90℃)において優れた安定性を示す。
【0093】
室温における安定性の観点から、トルエンスルホン酸エステルおよびベンゼンスルホン酸エステルが好ましい。
【0094】
トルエンスルホン酸エステルおよびベンゼンスルホン酸エステルの具体例としては、上記と同様の化合物が挙げられる。
【0095】
(C)のスルホン酸エステルは、ベンゾオキサジン樹脂組成物全体を100重量部として0.5〜5重量部用いることが好ましい。具体的には、この範囲内であれば、150〜200℃でのベンゾオキサジン樹脂組成物の反応促進効果、室温での優れた保存性、およびプリプレグ製造工程中における優れた粘度安定性(ポットライフ)が得られる。また、Tg等のベンゾオキサジン樹脂組成物の樹脂特性に対する悪影響もなく、炭素繊維強化複合材料として使用した際の引張強度が予期外に上昇する。さらに、配合量は(A)成分の反応性を考慮して適宜調節すればよく、(A)成分の反応性が高い場合は、ベンゾオキサジン樹脂組成物全体を100重量部として(C)を0.5〜2重量部配合すればよく、一方(A)成分の反応性が低い場合は、ベンゾオキサジン樹脂組成物全体を100重量部として(C)を2〜5重量部配合すればよい。
【0096】
本明細書中の実施形態における(D)の熱可塑性樹脂は、ベンゾオキサジン樹脂組成物の靭性を高めるとともに、複合材料に使用した際の組成物の引張強度、90°強度、および層間靭性等の機械的特性を高める。またこの成分は、プリプレグを製造する際に好適なタック性およびドレープ性を付与するために必要である。
【0097】
(D)としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、およびポリエーテルイミド等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、ポリマーアロイとして組み合わせて用いてもよい。(B)成分との相溶性の観点からポリエーテルスルホンが特に好ましい。
【0098】
(D)の分子量は、重量平均分子量で30,000mol/g以下が好ましい。より好ましくは、重量平均分子量が7000〜30,000mol/gである。7000未満であると、物性の向上効果はわずかなものとなり、ベンゾオキサジン樹脂組成物の耐熱性が損なわれる。30,000より大きいと、ベンゾオキサジン樹脂組成物との相溶性が不十分となり、ベンゾオキサジン樹脂組成物や炭素繊維強化複合材料において物性は全く向上しない。また溶解させた時に、少量加えただけでも粘度が高くなり過ぎ、プリプレグを製造する際にタック性およびドレープ性が悪化する。重量平均分子量が7000〜30,000mol/gの(D)を用いた場合、ベンゾオキサジン樹脂組成物との相溶性を高める効果、およびベンゾオキサジン樹脂組成物の耐熱性を損なうことなく物性を高める効果が得られる。さらに、プリプレグを製造する際に好適なタック性およびドレープ性が得られる。
【0099】
本明細書中の実施形態でいう平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」)で求めた数平均分子量を示す。数平均分子量の測定方法としては、Shodex80M(登録商標)[カラム](昭和電工(株)製)を2本とShodex802(登録商標)[カラム](昭和電工(株)製)を1本用い、0.3μLの試料を注入し、流速1mL/分で測定した試料の保持時間をポリスチレンからなる校正試料の保持時間を用いて分子量に変換する方法等が挙げられる。液体クロマトグラフィーにおいて複数のピークが観察される場合、液体クロマトグラフィーにより目的の成分を予め分離した後、各成分をGPCにかけ、その後分子量に変換する。
【0100】
(D)の熱可塑性樹脂ポリマーについては、末端の50mol%以上がヒドロキシル基またはアミノ基であることが好ましい。これらの末端官能基が(A)および(B)と反応した結果、(A)および(B)からなる樹脂との親和性が高まり、均一な相溶が起こる。均一な相溶が起こらなかったとしても、(A)および(B)からなる樹脂相と(D)の熱可塑性樹脂との間で強い界面接着が起こり、ベンゾオキサジン樹脂組成物を製造する際に劇的に物性が向上する。これらの点を考慮すると、(D)の熱可塑性樹脂のポリマー末端の大部分がヒドロキシフェニル基またはアミノ基であることが好ましく、全ポリマー末端の50mol%以上がヒドロキシフェニル基またはアミノ基であることが好ましい。
【0101】
ヒドロキシル基またはアミノ基である末端の割合は、NMR法または滴定法により測定することができる。ポリエーテルスルホンでNMR法を使用した場合、具体的には、重DMSO溶媒中、400MHz、100スキャンでの高分解能
1H−NMRを使用して、7.7ppmのクロロ置換芳香族炭素(
1HCl)に隣接するプロトンおよび6.9ppmのヒドロキシル置換芳香族炭素(
1HOH)に隣接するプロトンを観察する。
1H−NMR表面積比は(これらの水素の)モル数を反映しているため、末端官能基組成(mol%)は下記式により算出することができる。
【0102】
末端ヒドロキシル基組成(mol%)=[
1HOHピーク表面積]/([
1HOHピーク表面積])+([
1HClピーク表面積])×100。
【0103】
本明細書中の実施形態の(D)のポリエーテルスルホンについては、製造方法に特に制限はなく、特公昭42−7799号公報、特公昭45−21318号公報、特開昭48−19700号公報等に記載の方法で製造することができる。これらの文献において[ポリエーテルスルホン]は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン等の二価のフェノール化合物と4,4’ジクロロジフェニルスルホン等の二価のジハロゲノジフェニル化合物とを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、または炭酸カリウム等のアルカリ金属化合物の存在下、N−メチルピロリドン、DMF、DMSO、またはスルホラン等の非プロトン性極性溶媒中にて重縮合させることにより得ることができる。生産性の観点からは、(D)が平均粒径2〜200μmの粉末である態様が、ベンゾオキサジン樹脂組成物を調製する際の(D)の混練時間が短縮できるため好ましい。
【0104】
本明細書中の実施形態における(D)の具体例としては、Virantage(登録商標)VW10700RP、Virantage VW30500RP(ソルベイスペシャルティーポリマーズジャパン社)、および特開2004−506789号公報に記載のポリエーテルスルホンとポリエーテルエーテルスルホンの共重合オリゴマー等が挙げられる。
【0105】
ベンゾオキサジン樹脂組成物中に均一に混合または溶解できる範囲であれば、(D)以外の熱可塑性樹脂を加えてもよい。かかる熱可塑性樹脂としては、一般的には、主鎖に炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合、およびカルボニル結合からなる群より選択される結合が含まれる熱可塑性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は部分的に架橋していてもよく、また結晶質でも非晶質でもよい。具体例としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリル、およびポリベンゾイミダゾール等が挙げられる。これらの例は、強化繊維とベンゾオキサジン樹脂組成物の間の接着力を高めるため、また分子量の選択や配合量の調整に基づいて粘度を調整しやすくなるため、好ましい。
【0106】
(D)は、(A)と(B)の合計100重量部に対して2〜20重量部の範囲で配合することが好ましい。この場合、ベンゾオキサジン樹脂組成物の靭性が向上する。そのため、複合材料を製造する際に引張強度、ならびに90°強度および層間靭性等の動的特性が向上する。また、好適な樹脂粘度を容易に得ることができるため、プリプレグを製造する際に好適なタック性およびドレープ性を付与することができる。
【0107】
本開示においては、ベンゾオキサジン樹脂組成物の機械的特性や加工性が損なわれない範囲において、熱可塑性樹脂(D’)を混合または溶解させてもよい。かかる熱可塑性樹脂としては、一般的には、主鎖に炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合、およびカルボニル結合からなる群より選択される結合が含まれる熱可塑性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は部分的に架橋していてもよく、また結晶質でも非晶質でもよい。特に、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリル、およびポリベンゾイミダゾールからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を、上記ベンゾオキサジン樹脂組成物に含まれる成分(A’)および(B’)のいずれかに混合または溶解させることが好ましい。
【0108】
この成分(D’)により、靭性および伸度等の、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物の機械的特性が向上し、組成物の粘度調整が容易になり、プリプレグ製造の際に好適なタック性やドレープ性が得られる。また、炭素繊維強化複合材料を成形する際の樹脂組成物の流れを好適な範囲に調節することができるため、最終成形品の外観上の製品価値が向上する等の効果が得られる。
【0109】
成分(D’)のガラス転移温度(Tg)は、好適な耐熱性が得られるように150℃以上であり、170℃以上が好ましい。配合する成分(D’)のガラス転移温度が150℃未満であると、得られた成形体が使用中に熱変形を起こしやすくなる。さらに、カチオン性高分子化合物との反応を可能にするためには、成分(D’)の末端官能基がヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基、または酸無水物等であることが好ましい。高耐熱性や高耐溶剤性を得る観点から、またはベンゾオキサジン樹脂組成物に対する親和性(溶解性、接着性を含む)の観点から、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、またはポリフェニレンスルフィドを使用することが好ましい。具体例としては、ポリエーテルスルホン製品であるスミカエクセル(登録商標)PES3600P、スミカエクセル(登録商標)PES5003P、スミカエクセル(登録商標)PES5200P、スミカエクセル(登録商標)PES7600P(住友化学(株));ウルトラゾーン(登録商標)E2020P SR、ウルトラゾーン(登録商標)E2021SR(BASF);Virantage(登録商標)VW10200RP、Virantage(登録商標)VW10300RP、Virantage(登録商標)VW10700RP、Virantage VW30500RP(ソルベイスペシャルティーポリマーズ社);特表2004−506789号公報に記載のポリエーテルスルホンとポリエーテルエーテルスルホンの共重合オリゴマー等が挙げられる。さらなる例としては、特表2004−506789号公報に記載のポリエーテルスルホンとポリエーテルエーテルスルホンの共重合オリゴマー、ポリエーテルイミド製品であるUltem1000、Ultem1010、Ultem1040(SABICイノベーティブプラスチック社)等が挙げられる。「オリゴマー」という用語は、およそ10〜100単位といった有限な数のモノマーが結合した比較的低分子量のポリマーを示す。
【0110】
本明細書中の実施形態における(E)成分は、芳香族アミン、単官能フェノール、多官能フェノール、およびポリフェノール化合物からなる群より選択されるエポキシ樹脂硬化剤等の少なくとも1種のさらなる硬化剤であってもよい。これらの化合物は、(B)のエポキシ樹脂と反応し得る活性水素を有する。これらの化合物の活性水素は、(B)のエポキシ樹脂と反応して機械的特性と耐熱性の両方を改善し得る。(E)成分が、ベンゾオキサジン樹脂組成物100重量部に対して0〜5重量部以下含まれていると、プリプレグを形成する際にタック性やドレープ性等の好適な取り扱い性を得ることができる。
【0111】
本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物には、プリプレグ製造工程中に樹脂組成物中に溶解することなくプリプレグ中に存在する熱可塑性樹脂(F)を配合することが望ましい。この熱可塑性樹脂は、薄膜、粒子、繊維、またはこれらを組み合わせた形態であってもよい。結果として、繊維強化複合材料を製造する際にマトリックス樹脂の靭性および耐衝撃性が向上する。
【0112】
熱可塑性樹脂(F)の形状は、薄膜、粒子、繊維、またはこれらの少なくとも2種の形状の組合せ等の種々の形態であってもよい。薄膜の場合、米国特許第4,604,319号に記載のようにプリプレグの表面を完全に被覆すると表面タック性が失われてしまうが、薄膜に貫通孔を形成すること、多孔質の薄膜を使用すること、薄膜テープを配置すること、米国特許第5,985,431号のように薄膜を細かく切った薄片を配置すること等により表面タック性は保持できる。
【0113】
熱可塑性樹脂(F)は、プリプレグのタック性やドレープ性に優れるため、繊維で用いることが好ましい。この場合、繊維の繊維長や配置に制限はない。繊維は、繊維を細かく切った房、短繊維、平行に並んだフィラメント、または米国特許第5,985,431号に記載の織物もしくは編物であってもよい。
【0114】
熱可塑性樹脂(F)が粒子の場合、粒子は米国特許第5,985,431号に記載のように球状、非球状、または多孔質の粒子であってもよい。
【0115】
上記薄膜、繊維、または粒子は単独で用いてもよいし、繊維または粒子を含む薄膜や、粒子と繊維の混合物のように組み合わせて用いてもよい。
【0116】
また粒子は、エポキシ樹脂またはビスマレイミド樹脂と米国特許第5985431号に記載のような半相互侵入網目構造を有する熱可塑性樹脂とからなる熱可塑性樹脂(F)であってもよい。この組合せは、粒子自体が耐溶剤性に優れているため、複合材料全体としての耐溶剤性を維持するのに優れている。
【0117】
本開示で用いる熱可塑性樹脂粒子(G)の材料は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリル、およびポリベンゾイミダゾールからなる群より選択される。
【0118】
一実施形態においてはポリアミドを用いるが、ポリアミドのグループの中で、ナイロン12、ナイロン11、およびナイロン6/12共重合体は、熱硬化性樹脂に対して特に良好な接着強度が得られる。熱可塑性樹脂粒子(G)の形状は球状でも非球状でもよく、また粒子は多孔質であってもよいが、樹脂の流れ特性の悪化を抑える優れた弾性のため、また応力集中の起点がないので高い耐衝撃性が得られるため、球状粒子が好ましい。市販のポリアミド粒子としては、SP−500(東レ(株))、トレパール(登録商標)TN(東レ(株))、オルガソール(登録商標)1002D、オルガゾール(登録商標)2002、オルガゾール(登録商標)3202(アルケマ社)等が挙げられる。粒径の異なる粒子または異なる2種類以上の熱可塑性樹脂の粒子を用いてもよい。
【0119】
別の実施形態においては、上記種々の形態の熱可塑性樹脂(F)を、熱可塑性樹脂(F)の90重量%がプリプレグの表面から厚さ15%の深さまでの領域に位置するようにプリプレグに塗布する。このことは、プリプレグから得られる複合積層体の衝撃後圧縮強度を効果的に高めるために好ましい。
【0120】
粒子の平均粒径は5〜30μmが好ましい。この範囲の大きさの粒子が望ましいのは、この大きさであれば、ベンゾオキサジン樹脂を強化繊維層に注入する際に強化繊維層の内部に材料が浸入する時の繊維配向の乱れ、または強化繊維層の間の樹脂層中に非融解粒子が存在することによって生じる大きなうねりによる強化繊維層の乱れのために機械的特性が失われることが防げるからである。これらの粒子から得られる成形繊維強化複合材料中の強化繊維の樹脂中間層に関しては、耐衝撃性の観点から、樹脂層の平均厚さが5〜40μmとなるように平均粒径および配合量を選択することが好ましい。ただし、粒子の組成、粒径、および粒子の使用量は、ベンゾオキサジン樹脂組成物全体の粘度によって異なる。本明細書でいう樹脂層の厚さとは、ある強化繊維層と隣接する強化繊維層との間に存在する樹脂層の厚さである。厚さは、繊維強化複合材料の断面を観察し、ある強化繊維層の最も外側の繊維から隣の強化繊維層の最も外側の強化繊維までの距離を50箇所以上測定して平均することにより求める。またこれらの粒子は、プリプレグの強化繊維層の少なくとも片側の面に存在すればよく、両面が好ましい。
【0121】
また本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物には、カップリング剤、熱硬化性樹脂粒子、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなるコアシェル粒子、シリカゲル、カーボンブラック、粘土、カーボンナノチューブ、および金属粉末等の無機充填剤等を配合してもよい。シリカ充填剤としてはシリカナノ粒子等が挙げられる。シリカナノ粒子はエポキシ樹脂に予備分散させてもよく、Nano Resins社(ドイツ)から入手可能なNanopoxシリーズ、例えばNanopox XP0314、XP0516、XP0525、およびXP F360より選択することができる。
【0122】
ベンゾオキサジン樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性や弾性を大きく損なわずにベンゾオキサジン樹脂組成物の靭性を高めるためには、粒径0.3μm以下のコアシェル粒子が特に好ましい。コアシェル粒子の粒径は、以下のようにして測定する。ベンゾオキサジン樹脂組成物を180℃で4時間、次いで200℃で4時間加熱硬化させて厚さ2mmの硬化樹脂材料を得る。次に、得られた硬化物の一部を切り取り、コアシェル粒子を酸化オスミウムで染色処理し、薄い短冊状に切り出して透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて倍率40,000倍で観察する。無作為に選んだ10個のコア/シェル粒子の直径の平均を採用する。これらのコアシェル粒子をベンゾオキサジン樹脂組成物の構成要素とすることにより、硬化樹脂材料において優れた破壊靭性および高い曲げ弾性率が得られる。一方、粒径が0.3μmより大きいと、コア/シェルゴムの配合量が増えるにつれて硬化樹脂材料の曲げ弾性率が劇的に低下する場合がある。
【0123】
市販のコアシェルゴム粒子としては、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなるパラロイドEXL−2655(ダウ・ケミカル・カンパニー)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなるスタフィロイドAC−3355、TR2122(ガンツ化成(株))、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合体からなるパラロイドEXL−2611、EXL−3387(ダウ・ケミカル・カンパニー)、およびカネエースMX−416(カネカ(株))等が挙げられる。
【0124】
本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物の硬化材料に用いる「相互侵入網目構造」との記載は、(A’)の重合により形成された網目構造(a)が(B’)の重合により形成された網目構造(b)の上に重ね合わされ、これら2つの網目構造が互いに絡み合った構造を指す。また、熱可塑性樹脂からなる線状ポリマー(c)が加えられ、この線状ポリマー(c)が網目構造(a)と網目構造(b)とを含む相互侵入網目構造(a−b)と絡み合った、半相互侵入網目構造が形成される場合もある。これらの構造は、ベンゾオキサジン樹脂単独でもエポキシ樹脂単独でも得られない高い樹脂弾性、優れた靭性および伸度の発現のために必須の構造である。これらの構造は、透過型電子顕微鏡観察等により確認することができる。この時、観察はオスミウム等で適当に染色した後で行うことが好ましい。各網目構造の幅は、繊維層における十分な物性の発現の観察に基づき、網目構造の少なくとも1つのサイズが用いる繊維の平均直径よりも小さいことが好ましい。特に、複合材料において均一な物性が発現するためには、派生した網目構造のいずれか一方の幅が1μm以下であることが望ましい。
【0125】
本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物の混練方法に特に制限はない。通常のベンゾオキサジン樹脂組成物の調製に用いる方法を使用すればよい。例えば、ニーダー、プラネタリーミキサー、二軸押出機等を使用することができる。難燃剤や無機充填剤等の粒子成分を用いる場合、粒子の分散の観点から、ベンゾオキサジン樹脂組成物に配合する液状の樹脂成分中に、ホモミキサー、三本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、または超音波処理を用いて事前に粒子を分散させておくことが好ましい。また、粒子の予備分散またはマトリックス樹脂との混合の際に、必要に応じて加熱/冷却または加圧/減圧を用いてもよい。
【0126】
本開示に使用する強化繊維は用途に応じて選択されるいずれの種類の強化繊維でもよいが、複合材料の剛性の観点からは、引張弾性率が400GPa以下の炭素繊維を使用することが好ましい。強度の観点からは、高強度の複合材料が得られるため引張強度が4.4〜7.5GPaの炭素繊維が好ましい。耐衝撃性の観点からは引張歪みもまた重要な要素であり、引張歪みが1.7〜2.3%の高強度高歪み炭素繊維が好ましい。したがって最も好適な炭素繊維は、少なくとも230GPaの引張弾性率、少なくとも4.4GPaの引張強度、および少なくとも1.7%の引張歪みという特性を併せ持つことになる。
【0127】
市販の炭素繊維としては、トレカ(登録商標)M40J−12K、トレカ(登録商標)T800GC−24K、トレカ(登録商標)T800SC−24K、トレカ(登録商標)T810GC−24K、トレカ(登録商標)T700GC−24K、トレカ(登録商標)T300−3K、トレカ(登録商標)T700SC−12K(東レ(株))等が挙げられる。
【0128】
強化繊維の形状および配列に関しては、一方向に引き揃えた長繊維、連続した強化繊維の織物、不連続の短繊維等を適宜選択すればよいが、最適な機械的性能を有する軽量の繊維強化複合材料を得るためには、一方向に引き揃えた長繊維(繊維束)や織物等の連続繊維の形態の炭素繊維を使用することが好ましい。
【0129】
本明細書中の実施形態で使用する炭素繊維束は、フィラメント数が繊維束当たり2500〜50,000の範囲であってもよい。フィラメント数が2500未満であると、繊維の配列が変化しやすくなり、強度が失われやすい。一方、フィラメント数が50,000を超えると、プリプレグ製造の際や成形の際に樹脂の流入が起こりにくくなる。フィラメント数は2800〜36,000がより好ましい。
【0130】
本開示によるプリプレグは、強化繊維に本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物を含浸させることにより得られる。プリプレグ中の強化繊維の重量割合は40〜90重量パーセントであることが好ましく、50〜80重量パーセントがより好ましい。強化繊維の重量割合が低過ぎると、得られる複合材料の比強度および比弾性率が低くなり、繊維強化複合材料の優れた比強度および比弾性率に関する利点が損なわれるおそれがある。一方、強化繊維の重量割合が高過ぎると、樹脂組成物の含浸が不十分となり、得られる複合材料は多数の空隙および/または乾燥した繊維を有しやすく、機械的特性が劇的に低下するおそれがある。
【0131】
本開示のプリプレグは、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物をメチルエチルケトンまたはメタノール等の溶媒に溶解させて粘度を下げた後で強化繊維に注入する湿式法、ベンゾオキサジン樹脂組成物を加熱して粘度を下げた後で強化繊維に注入するホットメルト法等により得ることができる。
【0132】
湿式法とは、強化繊維をベンゾオキサジン樹脂組成物の溶液に浸漬した後に取り出し、その後溶媒をオーブン等を用いて留去してプリプレグを得る方法である。
【0133】
ホットメルト法とは、加熱によりベンゾオキサジン樹脂組成物の粘度を下げ、その後組成物を強化繊維内に直接注入する方法である。あるいは、ベンゾオキサジン樹脂組成物を離型紙等に塗布して樹脂フィルムを作製し、その後樹脂フィルムを強化繊維の片面または両面に重ね合わせた後、加熱および加圧によりベンゾオキサジン樹脂組成物を強化繊維内に転写して注入することによりプリプレグを得る。このホットメルト法は、プリプレグ中に残留する溶媒が実質的に皆無であるので好ましい。
【0134】
このようにベンゾオキサジン樹脂組成物の注入によって得られるプリプレグは、テープや短冊の形態に切り取って使用することができる。具体的な幅は、プリプレグと一緒に複合部品を組み立てるのに用いる自動積層装置等に従って決定すればよい。
【0135】
本開示の繊維強化複合材料は、これらの方法で作製したプリプレグを2層以上積み重ねた後、得られた積層体を加熱加圧してベンゾオキサジン樹脂組成物の加熱と硬化を引き起こす方法等により得ることができる。
【0136】
加熱および加圧の方法としては、プレス成形、オートクレーブ成形、バッギング成形、ラッピングテープ成形、および内圧成形が挙げられる。成形スポーツ用品の製造には、ラッピングテープ成形および内圧成形が特に好ましい。
【0137】
ラッピングテープ成形法では、マンドレル等の芯にプリプレグを捲回して繊維強化複合材料の管を作製する。したがって、この方法はゴルフクラブシャフトや釣竿等の棒状の物品の製造に好適である。より具体的には、マンドレルにプリプレグを捲回した後、プリプレグの外側に熱可塑性樹脂フィルムからなるラッピングテープを捲回して固定し、プリプレグプレートに圧力を加える。次に、ベンゾオキサジン樹脂組成物をオーブンで加熱硬化させ、芯を抜き取って管状体を得る。
【0138】
内圧成形法では、熱可塑性樹脂製チューブ等の内圧付与体にプリプレグを捲回したプリフォームを金型にセットし、内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力を加えると同時に金型を熱することにより、管状体を成形する。内圧成形法は、ゴルフクラブシャフト、バット、テニスやバドミントンのラケット等の複雑な形状を成形する際に特に好ましい。
【0139】
本開示の繊維強化複合材料は、所定の形状の上記本開示のプリプレグを積み重ねた後、材料を加圧および加熱してエポキシ樹脂を硬化させる方法等により得ることができる。
【0140】
本開示の繊維強化複合材料は、上記ベンゾオキサジン樹脂組成物を用いるがプリプレグは使用しない方法により得ることもできる。
【0141】
このタイプの方法としては、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物を強化繊維に直接含浸させる方法、具体的にはハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法、樹脂射出成形法、および樹脂トランスファー成形法等が挙げられる。
【0142】
本開示の繊維強化複合材料は、航空機構造部材、風車の羽根、自動車外板、ICトレイ、ノートパソコンの筐体およびその他コンピューター部品、ならびにゴルフクラブシャフト、テニスラケット、およびその他スポーツ用品の製造に好ましく用いられる。
【実施例】
【0144】
下記実施例において、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物、ならびにそれを用いたプリプレグおよび繊維強化複合材料をさらに詳細に説明する。以下、本開示で使用する樹脂原料、プリプレグ、および繊維強化複合材料の製造方法、有孔圧縮強度の評価方法、ならびに引張強度の評価方法を説明する。特に断りのない限り、実施例におけるプリプレグの製造および評価は、室温(25℃±2℃)および50%相対湿度の雰囲気下で実施した。
【0145】
炭素繊維
【0146】
トレカ(登録商標)T800S−24K−10E(フィラメント数24,000、引張強度5.9GPa、引張弾性率294GPa、引張歪み2.0%の炭素繊維、Toray Carbon Fibers America社製)
【0147】
ベンゾオキサジン樹脂
【0148】
F−a(ビスフェノールF−アニリン型、四国化成工業(株)製)
【0149】
P−d(フェノール−ジアミノジフェニルメタン型、四国化成工業(株)製)
【0150】
P−a(フェノール−アニリン型、四国化成工業(株)製)
【0151】
アラルダイト(登録商標)MT35600(ビスフェノールA−アニリン型、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
【0152】
アラルダイト(登録商標)MT35800(フェノールフタレイン−アニリン型、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
【0153】
エポキシ樹脂
【0154】
アラルダイト(登録商標)MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
【0155】
アラルダイト(登録商標)MY0610(トリグリシジル−m−アミノフェノール、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
【0156】
下記の方法により合成される34TGDDE(テトラグリシジル−3,4’−ジアミノジフェニルエーテル)
【0157】
エピクロロヒドリン1221.2g(13.2mol)を、温度計、滴下漏斗、凝縮管、および攪拌機のついた四つ口フラスコ内に導入した。窒素パージしながら70℃に昇温し、エタノール1020gに溶解させた3,4’−ジアミノジフェニルエーテル222.2g(1.1mol)を4時間かけて滴下した。さらに6時間攪拌を行い、付加反応を完了させてN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル)−3,4’−ジアミノジフェニルエーテルを得た。次に、フラスコ内の温度を25℃に下げ、48%NaOH水溶液229g(2.75mol)を2時間かけて滴下し、さらに1時間攪拌を行った。
【0158】
環化反応が終了すると、エタノールを留去し、トルエン408gで抽出を行った後、5%塩化ナトリウム水溶液で2回洗浄した。減圧下で有機層からトルエンとエピクロロヒドリンを除去すると、398gの茶色がかった粘稠の液体が得られた(収率85.2%)。テトラグリシジル−3,4’−ジアミノジフェニルエーテル一次生成物の純度は84%(GC面積%)であった。
【0159】
エピクロン(登録商標)830(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、DIC(株)製)
【0160】
促進剤(スルホン酸エステル、重合触媒、および他の促進剤)
【0161】
p−トルエンスルホン酸メチル(シグマアルドリッチ社)
【0162】
p−トルエンスルホン酸エチル(シグマアルドリッチ社)
【0163】
p−トルエンスルホン酸プロピル(シグマアルドリッチ社)
【0164】
ベンゼンスルホン酸エチル(シグマアルドリッチ社)
【0165】
三フッ化ホウ素−ピペリジン(ステラケミファ(株))
【0166】
SAN−AID(登録商標)SI−150(三新化学工業(株))
【0167】
DT310(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社)
【0168】
CUREZOL 2E4MZ(2−エチル−4−メチルイミダゾール、エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社)
【0169】
熱可塑性樹脂
【0170】
VW10700RP(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量21,000g/mol、ソルベイスペシャルティーポリマーズジャパン社)
【0171】
VW30500RP(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量14,000g/mol、ソルベイスペシャルティーポリマーズジャパン社)
【0172】
特開2010−1446号公報の方法により製造した熱可塑性樹脂A(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量8300g/mol)
【0173】
PES5003P(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量47,300g/mol、住友化学(株))
【0174】
Ultem1000(ポリエーテルイミド、SABICイノベーティブプラスチック社)
【0175】
【0176】
アミン硬化剤
【0177】
セイカキュア(登録商標)S(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、和歌山精化工業(株))
【0178】
熱可塑性樹脂粒子
【0179】
トレパール(登録商標)TN(東レ(株))
【0180】
SP−500(東レ(株))
【0181】
オルガゾール(登録商標)1002D(アルケマ社)
【0182】
(1)(a)第1セットの樹脂組成物
【0183】
各実施例および比較例において、表1〜5に示す割合で原材料を混合した。実施例1では、(B)成分と(D)成分とを混合し、150℃に加熱して固形分を完全に溶解させ、その後を100℃に冷却し、(A)成分を混合して完全に溶解するまで攪拌した。溶解確認後、温度を70℃に下げ、(C)成分を含有する促進剤および/または(C)以外の硬化促進剤を加え、均一になるまで攪拌した。(E)または(G)を加える場合は、均一になるまで促進剤を攪拌した後で(E)または(G)を加え、均一になるまでさらに攪拌を行った。攪拌後、5℃に設定した冷蔵庫で急冷して樹脂組成物を得た。実施例2〜23および比較例1〜7についても、配合成分を表1に示すように変更したことを除き、同様の方法で樹脂組成物を調製した。
【0184】
(1)(b)第2セットの樹脂組成物
【0185】
各実施例および比較例において、表6〜8に示す割合で原材料を混合した。実施例は、本明細書に記載の相互侵入高分子網目を有するベンゾオキサジン樹脂組成物である。比較例は、相互侵入高分子網目を有しないベンゾオキサジン樹脂組成物である。実施例1では、(A’)成分と(B’)成分とを混合して120℃に加熱し、その後(A’)成分が完全に溶解するまで攪拌混合した。溶解確認後、温度を70℃に下げ、(C’)成分を加え、均一になるまで攪拌した。攪拌後、5℃に設定した冷蔵庫で急冷して樹脂組成物を得た。実施例24〜34および比較例8〜13についても、配合成分を表6に示すように変更したことを除き、同様の方法で樹脂組成物を調製した。
【0186】
(2)ポットライフ(粘度上昇率)測定
【0187】
ポットライフの評価は、一定温度におけるベンゾオキサジン樹脂組成物の粘度上昇率を基に行った。粘度上昇率が小さいほど、製造工程中においてベンゾオキサジン樹脂組成物またはプリプレグが熱的に安定なことを示す。ベンゾオキサジン樹脂組成物の粘度上昇率の測定は、動的粘弾性測定装置(ARES、ティー・エイ・インスツルメント社)により行った。直径40mmのパラレルプレートを用い、90℃の一定温度で3時間、測定周波数0.5Hz、プレート間隔1mmにて樹脂試料を測定した。初期複素粘度η
I*と3時間後に測定した複素粘度η
E*から粘度上昇率を得るために、下記式を用いた。
【0188】
粘度上昇率=η
E*/η
I*
【0189】
粘度上昇率1.5以下を○、1.5以上2.0未満を△、2.0以上を×で表した。これらの測定結果を表1〜3に示す。
【0190】
(3)ゲル化時間測定
【0191】
上記樹脂組成物から2cm
2の試料を用意し、粘弾性測定装置(APA2000、アルファテクノロジー社製)を用いてゲル化時間を測定することにより樹脂の硬化性を測定した。70℃から180℃まで2℃/分で昇温し、その後一定温度180℃にて240分間試料を保持した。測定を開始してからトルクが1N・mに達するまでに要した時間をゲル化時間とした。
【0192】
(4)プリプレグ
【0193】
得られたベンゾオキサジン樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて樹脂目付50g/m
2で離型紙に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、一方向に引き揃えた炭素繊維材料(目付190g/m
2)の両面に樹脂フィルムを積層し、120℃、1気圧で加熱加圧しながら炭素繊維内にベンゾオキサジン樹脂組成物を注入するためにヒートロールを用い、それによりプリプレグを作製した。
【0194】
(5)タック性測定
【0195】
上記(2)で作製したプリプレグのタック性を触覚的方法により測定した。プリプレグの表面から離型紙を引き剥がした後、プリプレグを指で触った。好適なタック性のものを○、やや強過ぎまたは弱過ぎのものを△、指から離れず取れないほどタック性が強いものや指に貼り付かずタック性の全くないものを×で表した。測定回数nは2回とし、結果が異なる場合は低いほうの結果を用いた。
【0196】
(6)繊維強化複合材料の0°引張強度の測定
【0197】
ASTM D3039−08に記載のように、一方向繊維強化複合材料の繊維方向はその軸方向と定義され、軸方向を0°とした場合、軸に垂直な方向が90°と定義される。
【0198】
一方向プリプレグプレートを所定の大きさにカットし、6枚のシートを一方向に重ね合わせ、真空バッギング処理し、オートクレーブ内にて180℃、圧力6kg/cm
2で表1〜8に記載の硬化時間硬化させて一方向強化材料(繊維強化複合材料)を得た。この一方向強化材料を幅12.7mm、長さ230mmにカットして、幅1.2mm、長さ50mmのガラス繊維強化プラスチックのタブを各端部に貼り付けて引張試験片を得た。この試験片を、インストロン型万能試験機を用いた測定温度−60℃の0°引張試験に付した。
【0199】
(7)湿熱条件下における繊維強化複合材料の有孔圧縮強度(OHC)
【0200】
一方向プリプレグを所定の大きさにカットした。16枚のシートを積層して(+45/0/−45/90°)
2Sの積層配列とした後、真空バッギングを行い、オートクレーブを用いて180℃、圧力6kg/cm
2で表1〜8に記載の硬化時間硬化させて擬似等方繊維強化複合材料を得た。この擬似等方強化材料を0°方向の長さが304.8mm、90°方向の長さが38.1mmの長方形に切り出し、中央部に直径6.35mmの円形の孔を開けて有孔プレートを作製することにより、有孔圧縮試験片を得た。この試験片を、インストロン型万能試験機を用いてASTM−D6484に規定の有孔圧縮試験に付し、70℃の温水に2週間浸漬して試験片を調整した後82℃で測定した。
【0201】
(8)繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)の測定
【0202】
一方向プリプレグを、(+45/0/−45/90°)
2Sの構成で擬似等方的に24枚積層し、オートクレーブ内にて180℃、圧力6kg/cm
2、昇温速度1.5℃/分で2時間成形して擬似等方繊維強化複合積層体を得た。長さ150mm、幅100mm(厚さ4.5mm)の試料を切り出し、SACMA SRM 2R−94に従って試料の中央部に6.7J/mmの落錘衝撃を与えた。衝撃後、インストロン型万能試験機を用いて圧縮強度を測定した。
【0203】
(9)曲げ弾性率および曲げたわみの測定
【0204】
上記(1)(b)で得た樹脂組成物を80℃に加熱し、2mm厚のテフロン(登録商標)製スペーサーにより厚さ2mmになるように設定したモールド中に注入した。一定温度180℃で240分間加熱した後、樹脂組成物を硬化させるために200℃で240分間加熱した。厚さ2mmの硬化樹脂プレートが得られた。次に、得られた硬化樹脂プレートから幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、この試料に対してスパン長32mmで3点曲げを行うことにより曲げを測定した。曲げ弾性率および曲げたわみは、JIS K7171(1994)に従って決定した。測定回数nは5回とし、平均値を算出した。
【0205】
(10)発熱開始温度および発熱ピーク温度の測定
【0206】
上記(1)(b)で調製した樹脂組成物を用い、ASTM D3418−82に従って示差走査熱量計(DSC)により発熱開始温度および発熱ピーク温度を測定した。表6〜8の実施例および比較例において、温度差Ta−Tbの絶対値が30℃以内の場合または単一ピークが観察された場合を「○」、温度差Ta−Tbが30℃以上の場合を「×」で表した。
【0207】
(11)ゴム状平坦弾性率G’の測定
【0208】
上記(1)(b)で調製した樹脂組成物から2cm
3の試料を調製し、粘弾性測定装置(APA2000、アルファテクノロジー社製)を用いてDMA法によりゴム状平坦弾性率G’を測定した。70℃から180℃まで2℃/分で昇温した。樹脂組成物を硬化させるために、試料を一定温度180℃で240分間、200℃で240分間保持した。硬化後、昇温速度5℃/分で40℃から300℃に加熱する第2の昇温を行い、周波数1Hzにて測定を行った。第2の昇温で得られたG’温度曲線において、ガラス転移領域の高温側にあるゴム状態に由来する平坦領域の値をゴム状平坦弾性率G’とする。G’の値が徐々に減少または増加してゴム状態に由来する平坦領域がはっきり見えない場合は、ガラス転移温度より50℃高い温度のG’をゴム状平坦弾性率G’とする。本明細書で用いる「ガラス転移温度」または「Tg」という用語は、G’温度曲線におけるガラス状態側の接線と転移領域の接線の交点の温度を指す。
【0209】
上記測定の結果を表1〜8に示す。
【0210】
実施例2および4〜6と比較例2〜4との比較から、(C)によって優れたCFRP特性および樹脂特性が得られることがわかった。
【0211】
実施例2と比較例5の比較から、(D)を使用することにより、繊維強化複合材料を製造する際の優れた引張強度が得られることがわかった。また、実施例7〜9と比較例6および7との比較から、(D)を使用することにより、プリプレグを製造する際の優れたタック性および繊維強化複合材料を製造する際の優れた引張強度が得られることがわかった。
【0212】
また実施例23〜26から、(G)を加えることにより、他の特性を損なうことなく優れた耐衝撃性が得られることがわかった。
【0213】
上記測定の結果を表6〜8に示す。比較例8〜10では促進剤を使用しなかったが、(A’)と(B’)の付加反応によって均一な網目構造が得られた。本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物を有する実施例と比較例8〜10との比較により、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物は、著しく高い樹脂弾性および樹脂たわみを有し、繊維強化複合材料として使用した際に高い引張強度と圧縮強度の両方を有することが明らかである。また、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物とTaとTbの差の絶対値が30℃以上である比較例11〜13との比較から、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物は、繊維強化材料として使用した際に著しく高い引張強度および圧縮強度を有することがわかった。
【0214】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0215】
比較例1〜3では重合触媒を使用しなかったが、(A)と(B)の付加反応によって均一な網目構造が得られた。本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物を有する実施例と比較例1〜3との比較により、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物は、著しく高い樹脂弾性および樹脂たわみを有し、繊維強化複合材料として使用した際に高い引張強度と圧縮強度の両方を有することが明らかである。また、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物とTaとTbの差の絶対値が30℃以上である比較例4〜6との比較から、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物は、繊維強化材料として使用した際に著しく高い引張強度および圧縮強度を有することがわかった。
【0216】