(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る共振回路1の回路図である。
【0017】
共振回路1は入出力端子IO1,IO2を備えている。入出力端子IO1,IO2の間には、入出力端子IO1側から順に、共振子11、インダクタLs1及び可変キャパシタCs1が直列接続されている。インダクタLs1は、本発明に係る第1インダクタに相当し、可変キャパシタCs1は、本発明に係る第1可変キャパシタに相当する。
【0018】
共振子11は、インピーダンス特性に共振点(共振周波数)及び反共振点(反共振周波数)を有する素子である。具体的には、共振子11は圧電共振子であり、例えばSAW(Surface Acoustic Wave)デバイスで構成されている。そして、本実施形態に係る共振子11は、中心周波数が800MHz、特性インピーダンスが50Ωである。なお、共振子11は、BAW(Bulk Acoustic Wave)デバイス(バルク弾性波共振子)であってもよい。
【0019】
共振子11には、インダクタLp1が並列に接続されている。より詳細には、インダクタLp1の一端は入
出力端子IO1に接続され、他端は共振器11とインダクタLs1との接続点に接続されている。インダクタLp1は、本発明に係る第2インダクタに相当する。
【0020】
直列接続された共振子11及びインダクタLs1には、可変キャパシタCp1が並列に接続されている。可変キャパシタCp1は、本発明に係る第2可変キャパシタに相当する。
【0021】
なお、可変キャパシタCs1,Cp1として用いることができる可変容量素子としては、例えば、可変容量ダイオード、MEMS(Micro Electro Mechanical System)型可変容量素子、BST((Ba,Sr)TiO3)の強誘電体層を用いた可変容量コンデンサなどが挙げられる。
【0022】
本実施形態では、共振子11にインダクタLp1を並列に接続している(以下、本実施形態では第1並列回路と言う)。この構成により、共振子11の反共振周波数を優先的に高周波側に調整できる。さらに、本実施形態では、第1並列回路にインダクタLs1を直列接続している(本実施形態では第1直列回路と言う)。この構成により、第1並列回路の共振周波数を優先的に低周波側に調整できる。
【0023】
また、本実施形態では、第1直列回路に対して、可変キャパシタCp1を並列に接続している(以下、本実施形態では第2並列回路と言う)。この構成により、第1直列回路の反共振周波数を優先的に低周波側に調整できる。さらに、本実施形態では、第2並列回路に対して可変キャパシタCs1を直列接続している。この構成により、第2並列回路の共振周波数を優先的に高周波側に調整できる。なお、共振回路1の共振周波数及び反共振周波数それぞれのインピーダンス値は、可変キャパシタCp1,Cs1それぞれのキャパシタンスを変化させることで調整できる。
【0024】
以下に、実施形態1に係る共振回路1の共振周波数及び反共振周波数の調整方法について説明する。
図1に示す共振回路1では、共振子11に対し、インダクタLp1、インダクタLs1、可変キャパシタCp1、可変キャパシタCs1の順に接続され、共振子11の共振周波数及び反共振周波数が調整される。
【0025】
図2は、共振子11に各素子を順に接続していったときのインピーダンス特性を示す図である。
図2の横軸は周波数[MHz]、縦軸はインピーダンス[Ω]を表している。
【0026】
図2示す波形(1)は、入出力端子IO1,IO2間に共振子11のみを接続したときのインピーダンス特性を示す。この共振子11の共振周波数は約775MHzであり、反共振周波数は約825MHzである。
【0027】
波形(2)は、共振子11に、10nHのインダクタLp1を並列接続した第1並列回路のインピーダンス特性を示す。共振子11にインダクタを並列接続することで、共振子11の反共振周波数は高くなる。この第1並列回路では、共振周波数は約775MHzであり、反共振周波数は約955MHzである。すなわち、波形(2)は、波形(1)と比べて、共振周波数が変わらず、反共振周波数が高い。また、本実施形態では、インピーダンス値の変動が小さい状態で、反共振周波数を高周波側へ調整できる。
【0028】
波形(3)は、第1並列回路に、10nHのインダクタLs1を直列接続した第1直列回路のインピーダンス特性を示す。第1並列回路にインダクタLs1を直列接続することで、第1並列回路の共振周波数は低くなる。この第1直列回路では、共振周波数は約730MHzであり、反共振周波数は約955MHzである。すなわち、波形(3)は、波形(2)と比べて、反共振周波数が変わらず、共振周波数が低い。
【0029】
波形(4)は、第1直列回路に可変キャパシタCp1を並列接続した第2並列回路のインピーダンス特性を示す。波形(3)は、可変キャパシタCp1を5pFとした場合の波形である。第1直列回路に可変キャパシタCp1を並列接続することで、第1の直列回路の反共振周波数を低くなる。第2並列回路では、共振周波数は約730MHzであり、反共振周波数は約777MHzである。すなわち、波形(4)は、波形(3)と比べて、共振周波数が変わらず、反共振周波数が約178MHz低い。そして、可変キャパシタCp1の容量値を変えることで、反共振周波数をどれだけ低くするかを調整できる。
【0030】
波形(5)は、第2並列回路に可変キャパシタCs1を直列接続した回路、すなわち、実施形態1に係る共振回路1のインピーダンス特性を示す。波形(5)は、可変キャパシタCs1を5pFとした場合の波形である。第2並列回路にキャパシタを直列接続することで、第2並列回路の共振周波数は高くなる。共振回路1では、共振周波数は約751MHzであり、反共振周波数は約777MHzである。すなわち、波形(5)は、波形(4)と比べて、反共振周波数が変わらず、共振周波数が約19MHz高い。そして、可変キャパシタCs1の容量値を変えることで、反共振周波数をどれだけ低くするかを調整できる。
【0031】
この波形(5)を波形(1)と比べると、共振周波数及び反共振周波数の両方が低くなっている。すなわち、共振回路1は、共振子11の共振周波数及び反共振周波数の両方を可変できる。この結果、共振回路1は、通過特性、及び減衰特性を調整できる。
【0032】
また、本実施形態では、共振子11に対し、インダクタLp1,Ls1を接続して、共振周波数及び反共振周波数の間隔を広げてから、
図2の矢印に示すように、可変キャパシタCp1,Cs1を接続し、その容量値を調整することで、上記広げられた共振周波数及び反共振周波数の間隔内で共振回路1が所望の共振周波数及び反共振周波数となるように設定している。
【0033】
仮に共振子11の共振周波数が固定された状態、すなわち、インダクタLs1が共振子11に接続されていない状態で、反共振周波数のみを動かした場合、反共振周波数は、共振子11の共振周波数775MHzより低くなることはない。本実施形態では、インダクタLs1を接続して共振子11の共振周波数を低くすることで、反共振周波数は、共振子11の共振周波数775MHzよりも低い770MHzに調整できる。
【0034】
また、インダクタLp1を共振子11に接続することで、反共振周波数の可変幅を大きくできる。具体的には、インダクタLp1を接続しない共振子11では、約825MHzから約777MHzの範囲でしか調整できないのに対し、インダクタLp1を接続した共振回路1では、反共振周波数は、約955MHzから約777MHzの範囲で調整できる。
【0035】
このように、共振子11のみでは実現できない共振周波数及び反共振周波数を実現でき、共振回路1として共振周波数及び反共振周波数をより広い周波数帯域で実現できる。
【0036】
また、共振子11の共振周波数及び反共振周波数の間隔を一度広げることにより、可変キャパシタCp1,Cs1による共振周波数及び反共振周波数の可変幅を広げることができる。
【0037】
このように、本実施形態では、共振子単体、又は従来構成よりも確実により多くの通信信号に適した共振回路1を構成できる。なお、本実施形態に係る共振回路1は、反共振周波数を大きく変化させることができるため、通過帯域の中心周波数または帯域幅を変化させたり、あるいは、減衰特性を大きく変化させたりする可変フィルタに有効である。
【0038】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係る共振回路2の回路図である。
【0039】
共振回路2の入出力端子IO1,IO2の間には、入出力端子IO1側から順に、共振子12、インダクタLs2及び可変キャパシタCs2が直列接続されている。インダクタLs2は、本発明に係る第1インダクタに相当し、可変キャパシタCs2は、本発明に係る第1可変キャパシタに相当する。
【0040】
共振子12及びインダクタLs2の直列回路(以下、本実施形態では第1直列回路と言う)には、インダクタLp2が並列に接続されている。より詳細には、インダクタLp2の一端は入
出力端子IO1に接続され、他端はインダクタLs2と可変キャパシタCs2との接続点に接続されている。インダクタLp2は、本発明に係る第2インダクタに相当する。
【0041】
直列接続された第1直列回路及び可変キャパシタCs2には、可変キャパシタCp2が並列に接続されている。可変キャパシタCp2は、本発明に係る第2可変キャパシタに相当する。
【0042】
なお、共振子12、インダクタLs2,Lp2、及び可変キャパシタCs2,Cp2はそれぞれ、実施形態1に係る共振子11、インダクタLs1,Lp1、及び可変キャパシタCs1,Cp1と同じ素子である。
【0043】
本実施形態では、共振子12にインダクタLs2を直列に接続している。この構成により、共振子12の共振周波数を優先的に低周波側に調整できる。さらに、本実施形態では、第1直列回路にインダクタLp2を並列接続している(本実施形態では第1並列回路と言う)。この構成により、第1直列回路の反共振周波数を優先的に高周波側に調整できる。
【0044】
また、本実施形態では、第1並列回路に対して、可変キャパシタCs2を直列に接続している(以下、本実施形態では第2直列回路と言う)。この構成により、第1並列回路の共振周波数を優先的に高周波側に調整できる。さらに、本実施形態では、第2直列回路に対して可変キャパシタCp2を並列接続している。この構成により、第2直列回路の反共振周波数を優先的に低周波側に調整できる。
【0045】
以下に、実施形態2に係る共振回路2の共振周波数及び反共振周波数の調整方法について説明する。
図3に示す共振回路2は、共振子12に対し、インダクタLs2、インダクタLp2、可変キャパシタCs2、可変キャパシタCp2の順に接続していき、共振周波数及び反共振周波数が調整(可変)される。
【0046】
図4は、共振子12に各素子を順に接続していったときのインピーダンス特性を示す図である。
図4の横軸は周波数[MHz]、縦軸はインピーダンス[Ω]を表している。
【0047】
図4示す波形(1)は、入出力端子IO1,IO2間に共振子12のみを接続した回路のインピーダンス特性を示す。この共振子12は、実施形態1に係る共振子11と同様、共振周波数は約775MHzであり、反共振周波数は約825MHzである。
【0048】
波形(2)は、共振子12に、10nHのインダクタLs2を直列接続した第1直列回路のインピーダンス特性を示す。この第1直列回路では、共振周波数は約660MHzであり、反共振周波数は約825MHzである。すなわち、波形(2)は、波形(1)と比べて、共振周波数が低く、反共振周波数が変わらない。この実施形態では、実施形態1と比べて、インピーダンス値の変動が小さい状態で、共振周波数を大きく低周波側に可変できる。
【0049】
波形(3)は、第1直列回路に、10nHのインダクタLp2を並列接続した第1並列回路のインピーダンス特性を示す。この第1並列回路では、共振周波数は約660MHzであり、反共振周波数は約860MHzである。すなわち、波形(3)は、波形(2)と比べて、共振周波数が変わらず、反共振周波数が高い。
【0050】
波形(4)は、第1並列回路に可変キャパシタCs2を直列接続した第2直列回路のインピーダンス特性を示す。波形(4)は、可変キャパシタCs2を5pFとした場合の波形である。第2直列回路では、共振周波数は約826MHzであり、反共振周波数は約860MHzである。すなわち、波形(4)は、波形(3)と比べて、共振周波数が約166MHz高く、反共振周波数が変わらない。また、本実施形態では、共振周波数は、実施形態1と比べて、インピーダンス値の変動が小さい状態で、調整できる。
【0051】
波形(5)は、第2直列回路に可変キャパシタCp2を並列接続した回路、すなわち、実施形態2に係る共振回路2のインピーダンス特性を示す。波形(5)は、可変キャパシタCs2を5pFとした場合の波形である。共振回路2では、共振周波数は約826MHzであり、反共振周波数は約840MHzである。すなわち、波形(5)は、波形(4)と比べて、共振周波数が変わらず、反共振周波数が約20MHz低い。
【0052】
この波形(5)を波形(1)と比べると、共振周波数及び反共振周波数の両方が低くなっている。すなわち、共振回路2は、共振子12の共振周波数及び反共振周波数の両方を可変できる。この結果、共振回路2は、通過特性、及び減衰特性の両方を調整できる。
【0053】
また、本実施形態では、共振子12に対し、インダクタLp2,Ls2を接続して、共振周波数及び反共振周波数の間隔を広げてから、
図4の矢印に示すように、可変キャパシタCp2,Cs2を接続して共振周波数及び反共振周波数の間隔を狭めている。このため、実施形態1と同様に、共振子12のみでは実現できない共振周波数及び反共振周波数を実現でき、共振回路として実現できる共振周波数及び反共振周波数を多様化できる。
【0054】
また、共振子12の共振周波数及び反共振周波数の間隔を一度広げることにより、可変キャパシタCp2,Cs2による共振周波数及び反共振周波数の可変幅を広げることができる。
【0055】
このように、本実施形態では、共振子単体、又は従来構成よりも確実により多くの通信信号に適した共振回路2を構成できる。なお、本実施形態に係る共振回路2は、実施形態1と比べて、共振周波数を大きく変化させることができる。通過帯域の中心周波数または帯域幅を変化させたり、あるいは、減衰特性を大きく変化させたりする可変フィルタに有効である。
【0056】
(実施形態3)
図5は、実施形態3に係る共振回路3の回路図である。
【0057】
共振回路3の入出力端子IO1,IO2の間には、入出力端子IO1側から順に、共振子13、インダクタLs3及び可変キャパシタCs3が直列接続されている。インダクタLs3は、本発明に係る第1インダクタに相当し、可変キャパシタCs3は、本発明に係る第1可変キャパシタに相当する。
【0058】
共振子13には、インダクタLp2が並列に接続されている(以下、本実施形態では第1並列回路と言う)。より詳細には、インダクタLp3の一端は入
出力端子IO1に接続され、他端は共振子13とインダクタLs3との接続点に接続されている。インダクタLp3は、本発明に係る第2インダクタに相当する。
【0059】
直列接続された、第1並列回路、インダクタLs3及び可変キャパシタCs3には、可変キャパシタCp3が並列に接続されている。可変キャパシタCp3は、本発明に係る第2可変キャパシタに相当する。
【0060】
本実施形態では、共振子13にインダクタLp3を並列に接続している。この構成により、共振子13の反共振周波数を優先的に高周波側に調整できる。さらに、本実施形態では、第1並列回路にインダクタLs3を直列接続している(以下、本実施形態では第1直列回路と言う)。この構成により、第1並列回路の共振周波数を優先的に
低周波側に調整できる。
【0061】
また、本実施形態では、第1直列回路に対して、可変キャパシタCs3を直列に接続している(以下、本実施形態では第2直列回路と言う)。この構成により、第1直列回路の共振周波数を優先的に高周波側に調整できる。さらに、本実施形態では、第2直列回路に対して可変キャパシタCp3を並列接続している。この構成により、第2直列回路の反共振周波数を優先的に低周波側に調整できる。
【0062】
以下に、実施形態3に係る共振回路3の共振周波数及び反共振周波数の調整方法について説明する。
図5に示す共振回路3は、共振子13に対し、インダクタLp3、インダクタLs3、可変キャパシタCs3、可変キャパシタCp3の順に接続していき、共振周波数及び反共振周波数が調整(可変)される。
【0063】
図6は、共振子13に各素子を順に接続していったときのインピーダンス特性を示す図である。
図6の横軸は周波数[MHz]、縦軸はインピーダンス[Ω]を表している。
【0064】
図6示す波形(1)は、入出力端子IO1,IO2間に共振子13のみを接続した回路のインピーダンス特性を示す。この共振子13は、実施形態1に係る共振子11と同様、共振周波数は約775MHzであり、反共振周波数は約825MHzである。
【0065】
波形(2)は、共振子
13に、10nHのインダクタLp3を並列接続した第1並列回路のインピーダンス特性を示す。この第1並列回路では、共振周波数は約775MHzであり、反共振周波数は約955MHzである。すなわち、波形(2)は、波形(1)と比べて、共振周波数が変わらず、反共振周波数が高い。
【0066】
波形(3)は、第1並列回路に、10nHのインダクタLs3を直列接続した第1直列回路のインピーダンス特性を示す。この第1直列回路では、共振周波数は約730MHzであり、反共振周波数は約955MHzである。すなわち、波形(3)は、波形(2)と比べて、共振周波数が低く、反共振周波数が同じである。
【0067】
波形(4)は、第1直列回路に可変キャパシタCs3を直列接続した第2直列回路のインピーダンス特性を示す。波形(4)は、可変キャパシタCs3を5pFとした場合の波形である。第2直列回路では、共振周波数は約772MHzであり、反共振周波数は約955MHzである。すなわち、波形(4)は、波形(3)と比べて、共振周波数が約42MHz高く、反共振周波数が変わらない。
【0068】
波形(5)は、第2直列回路に可変キャパシタCp3を並列接続した回路、すなわち、実施形態3に係る共振回路3のインピーダンス特性を示す。波形(5)は、可変キャパシタCp3を5pFとした場合の波形である。共振回路3では、共振周波数は約772MHzであり、反共振周波数は約805MHzである。すなわち、波形(5)は、波形(4)と比べて、共振周波数が変わらず、反共振周波数が約150MHz低い。
【0069】
本実施形態は実施形態1に係る共振回路1と比較して、第1可変キャパシタおよび第2可変キャパシタ間の接続関係が異なる。この結果、本実施形態に係る共振回路3では、反共振周波数が約777MHzとなる実施形態1の共振回路1と比べて、反共振周波数は高い。また、本実施形態に係る共振回路3では、共振周波数が約751MHzとなる実施形態1の共振回路1と比べて、共振周波数が高い。
【0070】
この波形(5)を波形(1)と比べると、共振周波数及び反共振周波数の両方が低くなっている。すなわち、共振回路3は、共振子13の共振周波数及び反共振周波数の両方を可変できる。この結果、共振回路3は、通過特性、及び減衰特性の両方を調整できる。
【0071】
また、本実施形態では、共振子13に対し、インダクタLp3,Ls3を接続して、共振周波数及び反共振周波数の間隔を広げてから、
図6の矢印に示すように、可変キャパシタCp3,Cs3を接続して共振周波数及び反共振周波数の間隔を狭めている。このため、実施形態1と同様に、共振子12のみでは実現できない共振周波数及び反共振周波数を実現でき、共振回路として実現できる共振周波数及び反共振周波数を多様化できる。
【0072】
また、共振子13の共振周波数及び反共振周波数の間隔を一度広げることにより、可変キャパシタCp3,Cs3による共振周波数及び反共振周波数の可変幅を広げることができる。
【0073】
このように、本実施形態では、共振子単体、又は従来構成よりも確実により多くの通信信号に適した共振回路3を構成できる。
【0074】
(実施形態4)
図7は、実施形態4に係る共振回路4の回路図である。
【0075】
共振回路4の入出力端子IO1,IO2の間には、入出力端子IO1側から順に、共振子14、インダクタLs4及び可変キャパシタCs4が直列接続されている。インダクタLs4は、本発明に係る第1インダクタに相当し、可変キャパシタCs4は、本発明に係る第1可変キャパシタに相当する。
【0076】
共振子14及びインダクタLs4の直列回路(以下、本実施形態では第1直列回路と言う)には、インダクタLp4が並列に接続されている。より詳細には、インダクタLp4の一端は入
出力端子IO1に接続され、他端はインダクタLs4と可変キャパシタCs4との接続点に接続されている。インダクタLp4は、本発明に係る第2インダクタに相当する。
【0077】
さらに、第1直列回路、及びインダクタLp4それぞれには、可変キャパシタCp4が並列に接続されている。可変キャパシタCp4は、本発明に係る第2可変キャパシタに相当する。
【0078】
本実施形態では、共振子14にインダクタLs4を直列に接続している。この構成により、共振子14の共振周波数を優先的に低周波側に調整できる。さらに、本実施形態では、第1直列回路にインダクタLp4を並列接続している(以下、本実施形態では、第1並列回路と言う)。この構成により、第1直列回路の反共振周波数を優先的に高周波側に調整できる。
【0079】
また、本実施形態では、第1並列回路及びインダクタLp4それぞれに対して、可変キャパシタCp4を並列に接続している(以下、本実施形態では第2並列回路と言う)。この構成により、第1並列回路の反共振周波数を優先的に低周波側に調整できる。さらに、本実施形態では、第2並列回路に対して可変キャパシタCs4を直列に接続している。この構成により、第2並列回路の共振周波数を優先的に高周波側に調整できる。
【0080】
以下に、実施形態4に係る共振回路4の共振周波数及び反共振周波数の調整方法について説明する。
図7に示す共振回路4は、共振子14に対し、インダクタLs4、インダクタLp4、可変キャパシタCp4、可変キャパシタCs4の順に接続していき、共振周波数及び反共振周波数が調整(可変)される。
【0081】
図8は、共振子14に各素子を順に接続していったときのインピーダンス特性を示す図である。
図8の横軸は周波数[MHz]、縦軸はインピーダンス[Ω]を表している。
【0082】
図8示す波形(1)は、入出力端子IO1,IO2間に共振子14のみを接続した回路のインピーダンス特性を示す。この共振子14は、実施形態1に係る共振子11と同様、共振周波数は約775MHzであり、反共振周波数は約825MHzである。
【0083】
波形(2)は、共振子14に、10nHのインダクタLs4を直列接続した第1直列回路のインピーダンス特性を示す。この第1直列回路では、共振周波数は約655MHzであり、反共振周波数は約825MHzである。すなわち、波形(2)は、波形(1)と比べて、共振周波数が低く、反共振周波数が変わらない。この実施形態では、実施形態1と比べて、インピーダンス値の変動が小さい状態で、共振周波数を大きく低周波側に可変できる。
【0084】
波形(3)は、第1直列回路に、10nHのインダクタLp4を並列接続した第1並列回路のインピーダンス特性を示す。この第1並列回路では、共振周波数は約655MHzであり、反共振周波数は約860MHzである。すなわち、波形(3)は、波形(2)と比べて、共振周波数が変わらず、反共振周波数が高い。
【0085】
波形(4)は、第1並列回
路に可変キャパシタCp4を並列接続した第2並列回路のインピーダンス特性を示す。波形(4)は、可変キャパシタCp4を5pFとした場合の波形である。第2並列回路では、共振周波数は約655MHzであり、反共振周波数は約817MHzである。すなわち、波形(4)は、波形(3)と比べて、共振周波数が変わらず、反共振周波数が約43MHz低い。
【0086】
波形(5)は、第2並列回路に可変キャパシタCs4を直列接続した回路、すなわち、実施形態4に係る共振回路4のインピーダンス特性を示す。波形(5)は、可変キャパシタCs4を5pFとした場合の波形である。共振回路4では、共振周波数は約770MHzであり、反共振周波数は約825MHzである。すなわち、波形(5)は、波形(4)と比べて、共振周波数が約115MHz高く、反共振周波数が変わらない。
【0087】
本実施形態は実施形態2に係る共振回路2と比較して、第1可変キャパシタおよび第2可変キャパシタ間の接続関係が異なる。この結果、本実施形態に係る共振回路4では、反共振周波数が約840MHzとなる実施形態1の共振回路1と比べて、反共振周波数は低い。また、本実施形態に係る共振回路3では、共振周波数が約826MHzとなる実施形態2の共振回路2と比べて、共振周波数が低い。
【0088】
この波形(5)を波形(1)と比べると、共振周波数及び反共振周波数の両方が低くなっている。すなわち、共振回路4は、共振子14の共振周波数及び反共振周波数の両方を可変できる。この結果、共振回路4は、通過特性、及び減衰特性の両方を調整できる。
【0089】
また、本実施形態では、共振子14に対し、インダクタLp4,Ls4を接続して、共振周波数及び反共振周波数の間隔を広げてから、
図8の矢印に示すように、可変キャパシタCp4,Cs4を接続して共振周波数及び反共振周波数の間隔を狭めている。このため、実施形態1と同様に、共振子14のみでは実現できない共振周波数及び反共振周波数を実現でき、共振回路として実現できる共振周波数及び反共振周波数を多様化できる。
【0090】
また、共振子14の共振周波数及び反共振周波数の間隔を一度広げることにより、可変キャパシタCp4,Cs4による共振周波数及び反共振周波数の可変幅を広げることができる。
【0091】
このように、本実施形態では、共振子単体、又は従来構成よりも確実により多くの通信信号に適した共振回路4を構成できる。
【0092】
以上、実施形態1〜4の回路についてそれぞれ説明したが、同じ素子値の素子を用いても、素子の接続構成を異ならせることにより、異なった共振周波数、反共振周波数、及び可変幅を得ることができる。これにより、同じ素子を用いつつ、接続構成を変えることで、より多くの通信信号に適した共振回路を実現できる。
【0093】
(実施形態5)
以下に、本発明に係る共振回路を備えた高周波フィルタについて説明する。
【0094】
図9は、実施形態5に係る高周波フィルタの回路図である。本実施形態に係る高周波フィルタ5は、実施形態1に係る共振回路1と実施形態2に係る共振回路2とを備えている。共振回路2は、入出力端子IO1,IO2との間の信号ラインに接続されている。共振回路1は、一端が出力端子IO2に接続され、他端がグランドに接続されている。
【0095】
図10は、
図9に示す高周波フィルタ5の通過帯域特性を示す図である。この例では、共振回路1の共振子11は、中心周波数が720MHz、特性インピーダンスが50Ωである。また、共振回路2の共振子12は、中心周波数が800MHz、特性インピーダンスが120Ωである。また、Ls1=5nH、Lp1=4nH、Ls2=9nH、Lp2=9nHである。
【0096】
図中の実線は、Cs1=5pF、Cp1=5pF、Cs2=12pF、Cp2=12pF、とした場合の挿入損失を示す波形である。図中の破線は、Cs1=1.7pF、Cp1=3pF、Cs2=6pF、Cp2=6pFとした場合の挿入損失を示す波形である。図中の一点鎖線は、Cs1=1.2pF、Cp1=2pF、Cs2=3.5pF、Cp2=2pFとした場合の挿入損失を示す波形である。
【0097】
図10から読み取れるように、実線では通過帯域Bf1が約700〜780MHzであり、破線では通過帯域Bf2が約800〜860MHzであり、一点鎖線では通過帯域Bf3が約890〜940MHzである。そして、これら特性は挿入損失がほぼ同じ(2dB程度)である。このように、高周波フィルタ5は、共振回路1,2を組み合わせて、可変キャパシタCp1,Cs1,Cp2,Cs2のキャパシタンスを調整させることで、損失をほぼ変えずに、通過帯域をシフトさせることができる。すなわち、挿入損失が低い、帯域可変のバンドパスフィルタを実現できる。
【0098】
(実施形態6)
以下に、本発明に係る共振回路を備えた高周波フィルタについて説明する。
【0099】
図11は、実施形態6に係る高周波フィルタの回路図である。本実施形態に係る高周波フィルタ6は、実施形態3に係る共振回路3と実施形態4に係る共振回路4とを備えている。共振回路4は、入出力端子IO1,IO2の間の信号ラインに接続されている。共振回路3は、一端が信号ラインに接続され、他端がグランドに接続されている。
【0100】
図12は、
図11に示す高周波フィルタ6の通過帯域特性を示す図である。この例では、共振回路3の共振子13は、中心周波数が670MHz、特性インピーダンスが50
Ωである。また、共振回路4の共振子14は、中心周波数が800MHz、特性インピーダンスが80Ωである。また、Ls3=5nH、Lp3=5nH、Ls4=5nH、Lp4=6nHである。
【0101】
図中の実線は、Cs3=10pF、Cp3=8pF、Cs4=12pF、Cp4=10pFとした場合の挿入損失を示す波形である。図中の破線は、Cs3=4.2pF、Cp3=7.0pF、Cs4=2.5pF、Cp4=4.0pFとした場合の挿入損失を示す波形である。図中の一点鎖線は、Cs3=2.7pF、Cp3=6.0pF、Cs4=1.5pF、Cp4=2.0pFとした場合の挿入損失を示す波形である。
【0102】
図12から読み取れるように、実線では通過帯域Bf1が約700〜760MHzであり、破線では通過帯域Bf2が約810〜860MHzであり、一点鎖線では通過帯域Bf3が約890〜940MHzである。そして、これら特性は挿入損失がほぼ同じ(2dB程度)である。このように、高周波フィルタ6は、共振回路3,4を組み合わせて、可変キャパシタCp1,Cs1,Cp2,Cs2のキャパシタンスを調整させることで、損失をほぼ変えずに、通過帯域をシフトさせることができる。すなわち、挿入損失が低い、帯域可変のバンドパスフィルタを実現できる。
【0103】
なお、実施形態5,6で説明したように、2つの共振回路を組み合わせて高周波フィルタを構成する場合には、組み合わせる共振回路を適宜選択することで、所望のフィルタ特性を実現しやすくなる。例えば、共振周波数の可変幅が広い共振回路を直列に接続し、反共振周波数の可変幅が広い共振回路を並列に接続すれば、通過帯域の可変幅が広いバンドパスフィルタを実現できる。