特許第6187606号(P6187606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187606
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】プリント基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20170821BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H05K1/02 P
   H05K1/02 N
   H05K3/46 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-562757(P2015-562757)
(86)(22)【出願日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】JP2015050041
(87)【国際公開番号】WO2015122203
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-24130(P2014-24130)
(32)【優先日】2014年2月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】石渡 祐
(72)【発明者】
【氏名】東 貴博
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/111314(WO,A1)
【文献】 特表2013−539218(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0038639(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/077676(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/127196(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0104678(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/062562(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/105193(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/111313(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/013496(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/029213(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/00−3/46
H01Q1/38,15/14,17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板に形成されたグランド導体膜と、
前記グランド導体膜と容量結合する浮遊導体膜と、
前記浮遊導体膜に接続された放射素子と、
前記放射素子から放射される電磁波を遮蔽する遮蔽膜と
を有するプリント基板。
【請求項2】
前記浮遊導体膜は、前記グランド導体膜と同一の導体層に配置されている請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記放射素子は、前記浮遊導体膜とは異なる導体層に配置された導体パターンを含む請求項2に記載のプリント基板。
【請求項4】
前記遮蔽膜は、前記導体パターンから厚さ方向に間隔を隔てて配置されている請求項3に記載のプリント基板。
【請求項5】
前記遮蔽膜は導電材料で形成されており、前記グランド導体膜に接続されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプリント基板。
【請求項6】
前記遮蔽膜は磁性材料で形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板内で発生したノイズを低減することが可能なプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波ノイズ電流がコネクタを経由してケーブルへ伝搬することを防止するフィルタが、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたフィルタにおいては、プリント基板のコネクタ周辺部に高インピーダンスを示す領域が形成されている。高インピーダンスを示す領域は、所定の周波数帯で電磁波の伝搬を阻止するバンドギャップを持つ電磁バンドギャップ構造を有する。複数の周波数帯で高インピーダンスを示す表面構造が、特許文献2に開示されている。
【0003】
高インピーダンスを示す領域は、第1の導体層に周期的に配置された複数の導体小片と、第2の導体層に配置されたグランド導体膜と、複数の導体小片をグランド導体膜に接続する導体柱とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−105575号公報
【特許文献2】米国特許第6483481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術により、プリント基板に接続されたコネクタのグランドに流れるコモンモード電流を抑制することが可能である。ところが、プリント基板上の一部の回路で発生したノイズが、同一基板上の他の回路に伝搬することを抑制することは困難である。このため、ノイズが基板全体に広がりやすい。ノイズが基板内に広がることで、二次的な放射が発生してしまうことがある。
【0006】
本発明の目的は、ノイズの低減を図ることが可能なプリント基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
絶縁性基板に形成されたグランド導体膜と、
前記グランド導体膜と容量結合する浮遊導体膜と、
前記浮遊導体膜に接続された放射素子と、
前記放射素子から放射される電磁波を遮蔽する遮蔽膜と
を有するプリント基板が提供される。
【0008】
グランド導体膜に生じたノイズが浮遊導体膜に伝搬し、放射素子から電磁波として放射される。放射された電磁波は、遮蔽膜によって遮蔽される。グランド導体膜に生じたノイズが電磁エネルギとして放射され、消費されることにより、ノイズの低減を図ることができる。
【0009】
前記浮遊導体膜を、前記グランド導体膜と同一の導体層に配置してもよい。前記放射素子は、前記浮遊導体膜とは異なる導体層に配置してもよい。前記遮蔽膜は、前記導体パターンから厚さ方向に間隔を隔てて配置してもよい。前記遮蔽膜を導電材料で形成し、前記グランド導体膜に接続してもよい。前記遮蔽膜を磁性材料で形成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
グランド導体膜に生じたノイズが浮遊導体膜に伝搬し、放射素子から電磁波として放射される。放射された電磁波は、遮蔽膜によって遮蔽される。グランド導体膜に生じたノイズが電磁エネルギとして放射され、消費されることにより、ノイズの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1Aは、実施例1によるプリント基板の断面図であり、図1Bは、グランド導体膜、浮遊導体膜、放射素子、及び遮蔽膜の斜視図である。
図2図2は、グランド導体膜、浮遊導体膜、放射素子、及び遮蔽膜の等価回路図である。
図3図3Aは、実施例2によるプリント基板の断面図であり、図3Bは、放射素子及びその近傍の構成要素の斜視図である。
図4図4Aは、実施例3によるプリント基板のグランド導体膜、浮遊導体膜、放射素子、及び遮蔽膜の斜視図であり、図4Bは、実施例3の変形例によるプリント基板のグランド導体膜、浮遊導体膜、放射素子、及び遮蔽膜の斜視図である。
図5図5Aは、実施例4によるプリント基板の断面図であり、図5Bは、放射素子、及びその近傍の構成要素の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施例1]
図1Aに、実施例1によるプリント基板の断面図を示す。実施例1によるプリント基板は、例えばビルドアップ工法により作製することができる。
【0013】
絶縁性基板10内に、複数の導体層、例えば第1の導体層31、第2の導体層32等が配置されている。第1の導体層31に、グランド導体膜11及び浮遊導体膜12が含まれる。浮遊導体膜12は、グランド導体膜11と容量結合している。第2の導体層32に、電源導体膜13及び放射素子17が含まれる。グランド導体膜11にグランド電位が与えられ、電源導体膜13に電源電圧が印加される。放射素子17は、層間接続部材15により浮遊導体膜12に接続されている。
【0014】
放射素子17から、絶縁性基板10の厚さ方向に間隔を隔てて遮蔽膜14が配置されている。図1Aに示した例では、絶縁性基板10の素子実装面とは反対側の背面に、遮蔽膜14が形成されている。遮蔽膜14を、絶縁性基板10の内部の導体層に含めてもよい。遮蔽膜14は、銅等の導電材料で形成され、層間接続部材16によりグランド導体膜11に接続されている。
【0015】
絶縁性基板10の素子実装面に集積回路素子21が実装されている。集積回路素子21は、素子実装面に配置された複数のパッド20に接続されている。一部のパッド20は、層間接続部材18により電源導体膜13に接続されており、他の一部のパッド20は、層間接続部材19によりグランド導体膜11に接続されている。
【0016】
図1Bに、グランド導体膜11、浮遊導体膜12、放射素子17、及び遮蔽膜14の斜視図を示す。グランド導体膜11に開口25が形成されている。この開口25内に、開口25の縁から離れて浮遊導体膜12が配置されている。浮遊導体膜12と放射素子17とが、層間接続部材15により相互に接続されている。遮蔽膜14が層間接続部材16によりグランド導体膜11に接続されている。放射素子17は、例えば正方形、長方形等の平面形状を有する導体パターンで構成されており、パッチアンテナとして動作する。
【0017】
図2に、グランド導体膜11、浮遊導体膜12、放射素子17、及び遮蔽膜14の等価回路図を示す。グランド導体膜11が、キャパシタ23を介して浮遊導体膜12に接続されている。キャパシタ23は、図1Bに示したグランド導体膜11の開口25の縁と、浮遊導体膜12との間の間隙に起因して生じる静電容量に基づく。
【0018】
グランド導体膜11に生じたノイズ電流が、キャパシタ23を介して放射素子17に流れ、放射素子17から電磁波が放射される。放射素子17から放射された電磁波は、遮蔽膜14で遮蔽される。このように、グランド導体膜11に生じたノイズ電流が、放射素子17により電磁エネルギに変換される。放射素子17から放射された電磁エネルギは、遮蔽膜14により外部に放射されないため、最終的にはプリント基板内で消費される。その結果、プリント基板全体として、ノイズレベルの低減が図られる。
【0019】
一般的に、電磁的ノイズをグランド導体膜11に帰還させることにより、ノイズレベルの低減を図ることができる。ところが、グランド導体膜11の電位が安定していない場合、グランド導体膜11に帰還されたノイズが、プリント基板に実装されている種々の回路に悪影響を及ぼす場合がある。効果的なノイズ対策を行うには、ノイズエネルギそのものを消失させることが有効である。上述の実施例1では、ノイズエネルギが電磁エネルギとして放射されるため、グランド導体膜11の電位が安定していない場合であっても、ノイズレベルの低減を図ることが可能である。例えば、実施例1によるプリント基板を、携帯情報端末の基板として用いる場合に、ノイズ低減の顕著な効果が得られる。
【0020】
キャパシタ23の静電容量、放射素子17の形状及び寸法は、除去すべきノイズの周波数帯の電磁波を効率よく放射させることができるように決定することが好ましい。例えば、プリント基板に実装されている集積回路素子21の動作周波数に相当する電磁波を効率よく放射させることができるように、キャパシタ23の静電容量、放射素子17の形状及び寸法が決定される。これにより、ノイズの除去効果を高めることができる。
【0021】
[実施例2]
次に、図3A及び図3Bを参照して、実施例2によるプリント基板について説明する。以下、図1A図2に示した実施例1との相違点に着目して説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0022】
図3Aに、実施例2によるプリント基板の断面図を示し、図3Bに、放射素子17、及びその近傍の構成要素の斜視図を示す。実施例2では、平面視において放射素子17を取り囲むように、複数の導電性の遮蔽部材24が、相互に間隔を隔てて配置されている。遮蔽部材24は遮蔽膜14に接続されている。相互に隣り合う遮蔽部材24の間隔は、放射素子17から放射される電磁波の波長、すなわち低減すべきノイズの周波数に相当する波長に比べて十分狭い。このため、遮蔽部材24は電磁波を遮蔽する機能を有する。
【0023】
実施例1においては、放射素子17から、厚さ方向に間隔を隔てて遮蔽膜14が配置されていた。実施例2では、遮蔽膜14に加えて、放射素子17から、面内方向にも間隔を隔てて遮蔽部材24が配置されている。このため、放射素子17から放射される電磁波の遮蔽効果を高めることができる。
【0024】
[実施例3]
図4Aに、実施例3によるプリント基板のグランド導体膜11、浮遊導体膜12、放射素子17、及び遮蔽膜14の斜視図を示す。以下、図1A図2に示した実施例1との相違点に着目して説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0025】
実施例1では、図1Bに示したように放射素子17としてパッチアンテナが用いられた。実施例3では、放射素子17としてモノポールアンテナが用いられる。モノポールアンテナは、第2の導体層32(図1A)に配置された線状パターンで構成される。モノポールアンテナの電気長は、除去すべきノイズの周波数帯の電磁波を効率よく放射させることができるように設定されている。具体的には、モノポールアンテナの電気長は、除去すべきノイズの周波数帯の電磁波の波長の約1/4に設定されている。なお、放射素子17を、図4Bに示すように、スパイラル形状にしてもよい。
【0026】
実施例3においても、モノポールアンテナとして動作する放射素子から、ノイズ電流に起因する電磁波が放射される。これにより、プリント基板内のノイズレベルの低減を図ることができる。
【0027】
[実施例4]
次に、図5A及び図5Bを参照して、実施例4によるプリント基板について説明する。以下、図1A図2に示した実施例1との相違点に着目して説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0028】
図5Aに、実施例4によるプリント基板の断面図を示し、図5Bに、放射素子17、及びその近傍の構成要素の斜視図を示す。実施例1では、遮蔽膜14(図1A図1B)が、金属で形成されていたが、実施例4では、遮蔽膜14が磁性材料で形成されている。磁性材料の例として、フェライトが挙げられる。また、実施例4では、遮蔽膜14がグランド導体膜11に接続されていない。放射素子17から放射された電磁波が、フェライト等の遮蔽膜14に吸収される。
【0029】
実施例4においても、プリント基板内のノイズレベルの低減を図ることができる。さらに、プリント基板の外部への電磁波の放射を抑制することができる。
【0030】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0031】
10 絶縁性基板
11 グランド導体膜
12 浮遊導体膜
13 電源導体膜
14 遮蔽膜
15、16 層間接続部材
17 放射素子
18、19 層間接続部材
20 パッド
21 集積回路素子
23 キャパシタ
24 遮蔽部材
25 開口
31 第1の導体層
32 第2の導体層
図1
図2
図3
図4
図5