(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、携帯電話機を代表とする携帯用電子機器では、軽量、高容量、サイクル寿命の長さなどの理由から、殆どの場合にリチウムイオン二次電池が用いられている。しかしながら、リチウムイオン二次電池は、高容量のために過充電または外部接続端子間の短絡などの状態では、膨張、発熱、発火の危険性が高い。そのため危険状態を回避するため、リチウムイオン二次電池には、二次電池監視装置が装着される。二次電池監視装置は、例えば、二次電池における過電圧(過充電電圧、過放電電圧)や過電流(過放電電流、過充電電流)等を検出し、これらの検出結果に応じて放電制御用スイッチならびに充電制御用スイッチのオン・オフを制御する。
【0006】
図17(a)は、本発明の前提として検討した電池パックにおいて、その主要部の構成例を示す概略図であり、
図17(b)は、
図17(a)におけるドライバ回路の構成例を示す回路図である。
図17(a)に示す電池パックは、二次電池BATと、BATの充放電電流を制御する二次電池監視装置BATCTL'を備える。BATCTL'は、放電制御用スイッチFETdおよび充電制御用スイッチFETcと、これらのスイッチのオン・オフをBATの状態に応じて制御するスイッチ制御部SWCTL'を備える。BATCTL'の正極端子PPと負極端子PNの間には、BATに充電を行う充電器CGRや、あるいはBATによって駆動される負荷回路LDが結合される。
【0007】
放電制御用スイッチFETdおよび充電制御用スイッチFETcは、例えば電界効果トランジスタ等によって構成され、二次電池BATの電流経路上にソース・ドレイン間が直列に結合される。スイッチ制御部SWCTL'は、過電流保護機能を担う過電流判定ブロックIJGEBK'と、FETd,FETcのゲートをそれぞれ駆動するドライバ回路DRVd,DRVcと、IJGEBK'の判定結果に応じてDRVd,DRVcの入力信号を生成する制御論理回路LOGを備えている。
【0008】
スイッチ制御部SWCTL'は、通常動作時には、FETd,FETcを共にオンに制御し、充電および放電を共に可能な状態に設定する。この際に、SWCTL'は、二次電池BATに流れる電流Ibatを直列接続されたFETd,FETcのオン抵抗を利用して検出ならびに電圧変換し、当該電流検出電圧Vidtの大きさを過電流判定ブロックIJGEBK'を用いて監視する。IJGEBK'内の比較回路CMPdは、Vidtとして生じた正の電圧が所定の過電流判定電圧Vref1を超えた際に制御論理回路LOGに向けて検出信号を出力する。したがって、BATの放電電流(Ibat)が過剰となった場合には、その旨がCMPdを介して検出され、例えばLOGおよびドライバ回路DRVdを介してFETdがオフに制御される。その結果、BATの放電経路が遮断され、FETcとFETdのボディーダイオードD1を介した充電経路のみが形成される。
【0009】
一方、過電流判定ブロックIJGEBK'内の比較回路CMPcは、検出電圧Vidtとして生じた負の電圧を反転アンプ回路AMPRで極性変換することで生成した正の電圧が所定の過電流判定電圧Vref2を超えた際に制御論理回路LOGに検出信号を出力する。したがって、二次電池BATの充電電流(Ibat)が過剰となった場合には、その旨がCMPcを介して検出され、例えばLOGおよびドライバ回路DRVcを介してFETcがオフに制御される。その結果、BATの充電経路が遮断され、FETdとFETcのボディーダイオードD2を介した放電経路のみが形成される。このようにしてBATに対する過電流の保護が図られる。なお、ドライバ回路DRVc,DRVdは、
図17(b)に示すように、例えばBATの出力を電源電圧VCCとするCMOSインバータ回路等によって構成される。
【0010】
しかしながら、このような構成例では、ドライバ回路DRVc,DRVdの出力電圧が二次電池の出力電圧(電源電圧VCC)に依存して変化し、その結果、放電制御用スイッチFETdおよび充電制御用スイッチFETcのオン抵抗が変化するため、信頼性の高い過電流の検出が困難となる恐れがある。
図18(a)、
図18(b)は、
図17の構成例における問題点の一例を示す説明図である。
図18(a)に示すように、FETd,FETcのオン抵抗(Ron)は、ゲート・ソース間電圧VGS(すなわち電源電圧VCC)が大きくなるほど曲線的に低下する。一方、過電流判定ブロックIJGEBK'内の比較回路CMPd(CMPcも同様)は、電流検出電圧Vidt(=Ibat×Ron)を、電源電圧VCCに依らず一定となる過電流判定電圧Vref1を基準に判定し、Vidt(=Ibat×Ron)≧Vref1の際に過電流と判定する。
【0011】
その結果、実動作上で過電流と判定される電流Ibatの値(言い換えれば実動作上のIbatのしきい値(許容値)であり、これを本明細書では過電流判定電流Iovと呼ぶ)は、
図18(a)および
図18(b)に示すように、電源電圧VCCに対する依存性をもつことになる。具体的には、Iovは、「Iov×Ron=Vref1(一定)」の関係から、VCCの増大に伴いオン抵抗(Ron)が低下するとそれを相殺する分だけ上昇する。そうすると、例えば、Iovが大きい方にばらついた場合等で、二次電池BATの損傷等が生じる恐れがある。なお、Ronは、より厳密には温度依存性を持つため、
図18(b)に示すように、Iovも、より厳密には温度依存性を持つことになる。ただし、実際上は、この温度依存性に伴うばらつきよりもVCCに伴うばらつきの方が格段に大きくなる。
【0012】
このような過電流判定電流Iovのばらつきを低減するため、特許文献1〜特許文献3に示されるような技術を用いることが考えられる。特許文献1の技術は、オン抵抗(Ron)自体の電源電圧VCC依存性を低減する方式であり、特許文献2および特許文献3の技術は、過電流判定電圧(Vref)側に、電流検出電圧Vidt側と同様のVCC依存性を持たせる方式である。しかしながら、特許文献1の技術を用いて、変動するVCCを降圧して一定のゲート・ソース間電圧VGSを生成する場合、VGSを低め(例えばVCCの下限値)に設定することで広い範囲でVCC依存性を解消できるが、その反面、全体的なオン抵抗(Ron)の増大に伴い電力損失が生じる恐れがある。逆に、VGSを高めに設定すると、電力損失は低減できるが、その反面、当該設定電圧よりもVCCが低い場合にVCC依存性が生じ得る。
【0013】
また、特許文献2や特許文献3の技術を用いる場合、過電流判定電圧(Vref)の調整に伴う容易性や自由度が十分に得られない恐れや、回路面積のオーバヘッドが過剰となる恐れがある。なお、特許文献4では、電源電圧VCCの依存性に関する観点は特になく、単純に、ゲート・ソース間電圧VGSをそのままオフセット電圧として電流検出電圧Vidtに加算するような回路が示されている。
【0014】
本発明は、このようなことを鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、信頼性の高い過電流検出を実現可能な二次電池監視装置およびそれを備えた電池パックを提供することにある。本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態の概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
本実施の形態による二次電池監視装置は、二次電池に流れる過電流を充電制御用および放電制御用のFETのオン抵抗を介して生じる電流検出電圧を利用して検出する際に、比較回路の一方に一定電圧を印加し、当該比較回路の他方に、当該電流検出電圧に補正電圧を加算した電圧を印加することで過電流の検出を行うものとなっている。当該補正電圧は、電源電圧の増大に対して正の傾きを持つ電圧に定められる。
【0017】
また、本実施の形態による二次電池監視装置は、二次電池に流れる過電流を充電制御用および放電制御用のFETのオン抵抗を介して生じる電流検出電圧を利用して検出する際に、比較回路の一方に一定電圧に対して補正電圧を加算した電圧を印加し、当該比較回路の他方に当該電流検出電圧を印加することで過電流の検出を行うものとなっている。当該補正電圧は、電源電圧の増大に対して負の傾きを持つ電圧に定められる。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すると、二次電池監視装置およびそれを備えた電池パックにおいて、信頼性の高い過電流検出が実現可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0022】
また、実施の形態の各機能ブロックを構成する回路素子は、特に制限されないが、公知のCMOS(相補型MOSトランジスタ)等の集積回路技術によって、単結晶シリコンのような半導体基板上に形成される。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
(実施の形態1)
《電池パックの全体構成および動作》
図1は、本発明の実施の形態1による電池パックにおいて、その主要部の構成例を示す概略図である。
図1に示す電池パックは、二次電池(バッテリ)BATと、フューズFSと、BATの充電制御又は放電制御を行う二次電池監視装置BATCTLを備える。BATは、代表的にはリチウムイオン二次電池である。フューズFSは、BATに大電流が流れた際に当該電流経路を遮断することでBATの保護を図る。BATCTLは、BATを接続するための正極端子BPおよび負極端子BNと、BATに充電を行う充電器CGRやBATによって駆動される負荷回路LDを接続するための正極端子PPおよび負極端子PNを備える。BPにはBATによる電源電圧VCCが供給され、BNにはBATによる接地電源電圧GNDが供給される。PP,PN間にCGR又はLDが接続された場合、このBPとPPの間、ならびにBNとPNの間にそれぞれ電流経路が形成される。
【0025】
二次電池監視装置BATCTLは、ここでは負極端子BNとPNの間の電流経路上に直列に挿入される放電制御用スイッチFETdおよび充電制御用スイッチFETcと、これらのスイッチのオン・オフをBATの状態に応じて制御するスイッチ制御部SWCTL1を備える。放電制御用スイッチFETdおよび充電制御用スイッチFETcは、例えばnチャネル型の電界効果トランジスタ等によって構成され、BNとPNの間の電流経路上にソース・ドレイン間が直列に結合される。ここでは、FETdは、ソースがBN(接地電源電圧GND)に結合され、ドレインがFETcのドレインに結合される。FETcのソースは負極端子PNに結合される。FETd,FETcは、それぞれ、ソース・ドレイン間と並列に、ソース側をアノード、ドレイン側をカソードとするボディーダイオードD1,D2を備える。特に限定はされないが、SWCTL1とスイッチ(FETd,FETc)は、それぞれ別の半導体チップによって形成され、同一の半導体パッケージ内または同一の配線基板上に搭載される。
【0026】
スイッチ制御部SWCTL1は、過電流保護機能を担う過電流判定ブロックIJGEBK1と、FETd,FETcのゲートをそれぞれ駆動するドライバ回路DRVd,DRVcと、IJGEBK1の判定結果に応じてDRVd,DRVcの入力信号を生成する制御論理回路LOGを備える。SWCTL1は、負極端子BNから供給される接地電源電圧GNDを基準として正極端子BPから抵抗Rvccを介して供給される電源電圧VCCを用いて動作する。ここで、IJGEBK1は、比較回路CMPdおよび過電流判定電圧Vref1に加えて電圧補正回路VCTLを備えている点が特徴となっている。
【0027】
電圧補正回路VCTLは、詳細は後述するが、電流検出電圧Vidtおよび過電流判定電圧Vref1を受け、両者を比較回路CMPdの2入力にそれぞれ伝送すると共に、この伝送の際に、そのいずれか一方に所定の補正電圧を加える回路となっている。Vidtは、抵抗Ridtを介して充電制御用スイッチFETcのソースに結合される電流検出端子IDTに生成される電圧であり、ほぼFETcのソース電圧となる。CMPdは、2入力の一方(ここでは正極ノード(+)側)に入力される電圧を、2入力の他方(ここでは負極ノード(−)側)に印加される電圧を基準として大小判定する。なお、抵抗Rvcc,Ridtは、例えば、外部ノイズ(静電破壊)等からSWCTL1を保護するために設けられ、比較的高い抵抗値を持つ。
【0028】
通常動作時において、スイッチ制御部SWCTL1内のドライバ回路DRVdは、放電制御端子DCHならびに放電制御信号DCHoutを介して放電制御用スイッチFETdをオンに制御し、ドライバ回路DRVcは、充電制御端子CHGならびに充電制御信号CHGoutを介して充電制御用スイッチFETcをオンに制御する。この際に、SWCTL1内の過電流判定ブロックIJGEBK1は、二次電池BATに流れる電流Ibatを監視する。具体的には、IbatをFETd,FETcのオン抵抗を利用して電圧に変換し、当該電圧を前述した電流検出電圧Vidtとして受けることで監視を行う。
【0029】
制御論理回路LOGは、比較回路CMPdによって「正極ノード(+)側電圧≧負極ノード(−)側電圧」の状態が検出された際に、ドライバ回路DRVdに制御信号を出力する。DRVdは、これを受けて、放電制御用スイッチFETdをオンからオフに遷移させる。これによって、二次電池BATの放電経路が遮断され、FETcとFETdのボディーダイオードD1を介した充電経路のみが形成される。なお、
図1では、過放電電流保護回路の構成例が代表的に示されているが、実際には、加えて
図17(a)に示したような過充電電流保護回路を備えてもよい。この場合、例えば、
図17(a)における反転アンプ回路AMPRの出力および過電流判定電圧Vref2を入力とし、比較回路CMPcに出力を行う電圧補正回路VCTLが加わることになる。以降においても同様に、各実施の形態では、説明を簡略化するため過放電電流保護回路を代表例として説明を行うが、これらは過充電電流保護回路に対しても適用可能である。
【0030】
《電圧補正回路の概要》
図2(a)および
図2(b)は、
図1のスイッチ制御部において、その電圧補正回路の概略的な構成例および動作例を示す説明図である。
図18(a)で述べたように、過電流を検出する際には、過電流判定電流Iovが、放電制御用スイッチFETdおよび充電制御用スイッチFETcのオン抵抗(Ron)で生じる電源電圧VCC(=ゲート−ソース間電圧VGS)依存性に応じて変化することが問題となる。一方、
図2(a)に示すように、比較回路CMPdの正極ノード(+)の電圧を補正後電圧VP、負極ノード(−)の電圧を補正後電圧VNとした場合、Iovは、「Iov=VN/Ron」によって定まる。したがって、IovをVCCに依らず一定とするためには、「VN=Iov(一定)×Ron」(なお、Iov(一定)×Ron=Vidt)の条件を満たすようにVNを制御すればよい。これを実現するため、
図2(a)では、電圧補正回路VCTL1が、過電流判定電圧Vref1(一定)に対してVCCに依存する所定の過電流補正電圧Viovを付加することでVNを電流検出電圧Vidtに一致させる制御を行っている。
【0031】
また、
図2(a)の代わりに、
図2(b)に示すような方式を用いても、過電流判定電流Iovを電源電圧VCCに依らず一定とすることができる。
図2(b)では、電圧補正回路VCTL2が、電流検出電圧Vidtに対して前述した過電流補正電圧Viovを付加することで比較回路CMPdの正極ノード(+)側の補正後電圧VPを過電流判定電圧Vref1に一致させる制御を行っている。ただし、この場合、Viovを付加する際の極性が反対の関係となる。すなわち、CMPdの負極ノード(−)側に|Viov|を加算することは、CMPdの正極ノード(+)側から|Viov|を減算することと等価であり、CMPdの負極ノード(−)側から|Viov|を減算することは、CMPdの正極ノード(+)側に|Viov|を加算することと等価である。
【0032】
図3(a)は、
図2(a)および
図2(b)における電流検出電圧の別の特性例を示す説明図であり、
図3(b)は、
図3(a)の電流検出電圧の特性例に対応する過電流判定電流の特性例を示す説明図である。例えば前述した
図2(a)では、比較回路CMPdの負極ノード(−)の補正後電圧VNを電流検出電圧Vidtに一致させるため、過電流補正電圧Viovを電源電圧VCCに応じて曲線的に制御したが、このような制御を行うためには複雑な回路ならびに回路パラメータの調整が必要となる恐れがある。そこで、
図3(a)に示すように、当該曲線特性(Vidt)を直線近似(一次近似)特性(Vidt')に近似した上で、それを前提として、対応する補正後電圧VN(過電流検出電圧Viov)の特性を定めることが望ましい。これによって、回路面積のオーバヘッドが低減され、また回路パラメータの調整が容易化される。
【0033】
ここで、
図3(a)に示すように、曲線特性(Vidt)を直線近似(一次近似)特性(Vidt')に近似する際には、可能な限り2個の特性間の誤差(ΔV)が小さい方が望ましい。この誤差(ΔV)は、
図3(b)(過電流判定電流Iovの電源電圧VCC依存性)における特性SP1(今回特性)に示すように、特性SP2(電源電圧VCC依存性がゼロとなる理想特性)との間の誤差(ΔI)として現れる。ただし、
図18(a)で説明した従来特性となる特性SP3と比べると誤差は大幅に小さくなる。
図3(a)において、曲線特性(Vidt)と直線近似特性(Vidt')の誤差(ΔV)を最小とするためには、例えば、VCCの動作範囲(変動幅)の区間で所謂最小二乗法等を用いて変化の中心点と傾き(=Vidt'/VCC)を定めればよい。
【0034】
ただし、曲線特性(Vidt)の形状は、オン抵抗(Ron)特性(すなわち使用するスイッチ(FETd,FETc)の種類等)や過電流判定電流Iovの設定値(すなわちどの程度の電流値を過電流として判定させるか)によって変動する。したがって、これらの各種条件に応じて高い自由度で直線近似特性(Vidt')を定め、それに対応する補正後電圧VNの特性を得るためには、Vidt'に対応する過電流補正電圧Viovの傾きならびに変化の中心点をそれぞれ独立に制御できる電圧補正回路VCTLを設けることが望ましい。なお、ここでは、
図2(a)の場合を例として説明したが、
図2(b)の場合も同様である。そこで、
図2(a)および
図2(b)のような構成例に対して
図3のような直線近似(一次近似)を用いると、前述した傾きと変化の中心点の独立制御が容易に実現可能になる。
【0035】
図4(a)は、
図2(a)に
図3を適用する場合において、その補正後電圧の特性の概略的な調整方法の一例を示す模式図であり、
図4(b)は、
図2(b)に
図3を適用する場合において、その補正後電圧の特性の概略的な調整方法の一例を示す模式図である。
図4(a)の上図は、各種信号の電圧特性を示したものであり、
図4(a)の下図は、過電流補正電圧に着目した電圧特性を示したものである。同様に、
図4(b)の上図は、各種信号の電圧特性を示したものであり、
図4(b)の下図は、過電流補正電圧に着目した電圧特性を示したものである。
【0036】
図4(a)の上図において、まず、
図3(a)で述べたようにして目標とする直線近似特性(Vidt')を定める。Vidt'は、オン抵抗(Ron)と、過電流判定電流Iovの設定値(どの程度の電流値を過電流として判定させるか)によって傾きと変化の中心点が変化する。次いで、当該直線近似特性(Vidt')上に変化の中心点(例えば、Vidt'上でVCCの変動範囲の中間点に対応する位置等)を定め、例えば、この変化の中心点上に過電流判定電圧Vref1を設定する。そして、このVref1をVidt'に一致させるため、Vref1に付加するべき過電流補正電圧Viovの特性を定める。このViovの特性は、
図4(a)の下図に示すように、Vidt'の負の傾きと同じ値の負の傾きを持ち、Vref1上の変化の中心点でVref1と交わるような特性となる。
【0037】
図4(b)の上図においても同様に、目標とする直線近似特性(Vidt')が定まると、当該Vidt'上に変化の中心点を定め、例えば、この変化の中心点上に過電流判定電圧Vref1を設定する。そして、このVidt'をVref1に一致させるため、Vidt'に付加するべき過電流補正電圧Viovの特性を定める。このViovの特性は、
図4(b)の下図に示すように、
図4(b)の上図におけるVidt'の傾きと同じ絶対値で、符号が反転した正の傾きを持ち、Vidt'上の変化の中心点でVidt'と交わるような特性となる。
図4(a)および
図4(b)において、Viovの電源電圧VCCに対する傾き特性は、直線近似を用いているため、例えばVCCの抵抗分圧回路等を利用して容易に設定することができる。また、Viovの変化の中心点は、
図4(a)の場合にはVref1の値と、Vref1とViovの交点の調整によって設定でき、
図4(b)の場合にはVref1の値と、Vidt'とViovの交点の調整によって設定できる。このように、
図2(a)および
図2(b)のような構成例に対して
図3のような直線近似(一次近似)を用いると、Viovの傾きと変化の中心点の独立制御が容易に実現可能になる。
【0038】
一方、特許文献2または特許文献3の技術は、
図2(a)および
図2(b)に示したような過電流判定電圧Vref1や
図3に示したような直線近似(一次近似)を用いずに、言うなれば、
図2(a)における比較回路CMPdの負極ノード(−)において電源電圧VCCに依存する電圧曲線を固定的に作り込むような方式を用いている。その結果、回路や回路パラメータの調整の複雑化や、設計の自由度の低下等が生じる恐れがある。
【0039】
例えば、特許文献2の技術は、スイッチ用トランジスタ(FETd,FETc)と同一特性のトランジスタを設け、両者を常に組み合わせて用いる必要があるため、実装設計上の自由度が低下する恐れ等がある。また、特許文献3の技術は、比較回路CMPdの負極ノード(−)の電圧曲線を複雑なトランジスタ回路で実現しているため、例えばスイッチ用トランジスタ(FETd,FETc)の種類が変わった場合等で、回路パラメータの調整の複雑化等を招く恐れがある。更に、特許文献3の技術は、回路面積の増大もある程度懸念される。そこで、
図2および
図3のような方式を用いると、スイッチ用トランジスタ(FETd,FETc)の特性等に応じて、過電流の検出条件(補正特性)を高い自由度で容易に設定することができ、信頼性の高い過電流検出が実現可能になる。
【0040】
《電圧補正回路の詳細》
図5(a)は、
図1のスイッチ制御部において、その電圧補正回路の詳細な構成例を示す回路図であり、
図5(b)は、
図5(a)における過電流補正電圧の特性例を示す説明図である。
図6(a)〜
図6(c)は、
図5(a)の電圧補正回路の動作例を示す説明図である。
図5(a)に示す電圧補正回路VCTL2aは、前述した
図2(b)の電圧補正回路VCTL2に
図3の直線近似(一次近似)を適用した構成例となっている。VCTL2aは、電源電圧VCCと接地電源電圧GNDの間を抵抗分圧する抵抗R1,R2と、その抵抗分圧ノードと電流検出端子IDTの間を抵抗分圧する抵抗R3,R4を備える。R1,R2の抵抗分圧ノードには電圧VCCRが生成され、R3,R4の抵抗分圧ノードには、過電流補正電圧Viovが生成され、当該抵抗分圧ノード(Viov)が比較回路CMPdの正極ノード(+)に結合される。CMPdの負極ノード(−)には固定値となる過電流判定電圧Vref1が印加される。
【0041】
このような構成例を用いると、
図6(a)に示すように、電源電圧VCCの増大に応じて抵抗R1,R2の分圧比に応じた正の傾きを持つ電圧VCCRが生成される。当該VCCRは、電流検出端子IDTにおける電流検出電圧Vidtを基準として、抵抗R3,R4の分圧比に応じて分圧される。その結果、
図6(b)に示すように、VCC(VCCR)が増大すると、R3からR4に流れ込む電流が増大し、Vidtを基準として正の傾きを持つ過電流補正電圧Viovが生成される。これにより、
図2(b)および
図4(b)で述べたように過電流判定電流IovのVCC依存性が低減され、
図5(c)に示すようなIovの特性が得られる。
【0042】
図4の動作をより詳細に述べると次のようになる。まず、電圧VCCRは、電流検出端子IDTがほぼ開放とみなせるため式(1)で定められ、過電流補正電圧Viovは式(2)で定められる。式(2)に式(1)を代入すると式(3)が得られる。
【0043】
VCCR=(R2/(R1+R2))×VCC (1)
Viov=(VCCR−Vidt)×(R4/(R3+R4))+Vidt (2)
【0045】
図5(b)は、式(3)によって得られる過電流補正電圧Viovの特性を図示したものである。
図5(b)から判るように、
図5(a)の電圧補正回路VCTL2aを用いると、Viovの正の傾きは、抵抗R1〜R4の値によって設定できる。また、
図4(b)で述べた「変化の中心点」(すなわち、Vidt'(実際にはVidt)とViovの交点)は、
図5(b)から判るように、抵抗R3,R4の値によって設定できる。すなわち、「変化の中心点」と「傾き」を、それぞれ独立に設定することが可能になる。これによって、スイッチ(FETd,FETc)のオン抵抗(Ron)の特性や過電流の判定条件(過電流判定電流Iovの値)等に応じたViovの特性を高い自由度で容易に設定することが可能になる。
【0046】
一方、電源電圧VCCの依存性を考慮したものではないが、例えば、特許文献4には、
図5において、抵抗分圧ノード(VCCR)にスイッチ(FETd,FETc)のゲート電圧ノードが直接接続されたような構成が示されている。この場合、仮にゲート電圧ノードの電圧値が電源電圧VCCであったとしても、
図5(a)、
図5(b)で述べたような高い自由度を持たせることは困難となる。すなわち、この場合、「変化の中心点」の設定と「傾き」の設定を、抵抗R3,R4のみを共通に用いて行う必要があり、それぞれ独立に設定することが困難となる。また、
図5(a)の構成例は、特許文献2や特許文献3の技術と比較して、小さい回路面積で実現でき、この点からも有益となる。
【0047】
以上、本実施の形態1の二次電池監視装置又は電池パックを用いることで、代表的には、スイッチ(FETd,FETc)の特性等に対応して誤差が小さい過電流の検出を行うことができ、信頼性の高い過電流検出が実現可能になる。なお、
図5(a)、
図5(b)では、電流検出電圧Vidtを基準として正の傾きを持つ過電流補正電圧Viovを生成し、これをVidtに加算する回路方式を用いたが、回路方式は適宜変更することが可能である。例えば、Vidtを基準として負の傾きを持つ過電流補正電圧を生成し、これをVidtから減算する回路方式等を用いてもよい。
【0048】
(実施の形態2)
《電圧補正回路の詳細(変形例[1])》
図7は、本発明の実施の形態2による二次電池監視装置において、その電圧補正回路の詳細な構成例を示す回路図である。
図8(a)〜
図8(c)は、
図7の電圧補正回路の動作例を示す説明図である。
図7に示す電圧補正回路VCTL1aは、前述した
図2(a)の電圧補正回路VCTL1に
図3の直線近似(一次近似)を適用した構成例となっている。VCTL1aは、電源電圧VCCと接地電源電圧GNDの間を抵抗分圧する抵抗R1,R2と、その抵抗分圧ノードと比較回路CMPdの負極ノード(−)の間を抵抗分圧する抵抗R3,R4と、アンプ回路AMP1を備える。
【0049】
アンプ回路AMP1は、正極ノード(+)に基準電圧生成回路(代表的にはバンドギャップリファレンス回路)VRGENからの過電流判定電圧Vref1が入力され、負極ノード(−)に抵抗R3,R4の抵抗分圧ノードが結合され、出力ノードに比較回路CMPdの負極ノード(−)が結合される。抵抗R1,R2の抵抗分圧ノードには電圧VCCRが生成され、CMPdの負極ノード(−)には過電流補正電圧Viovが生成される。CMPdの正極ノード(+)には、電流検出端子IDTからの電流検出電圧Vidtが入力される。
【0050】
このような構成例を用いると、
図8(a)に示すように、電源電圧VCCの増大に応じて抵抗R1,R2の分圧比に応じた正の傾きを持つ電圧VCCRが生成される。一方、アンプ回路AMP1は、抵抗R3,R4の抵抗分圧ノードを過電流判定電圧Vref1に設定する。したがって、VCC(VCCR)の増大に伴いR3からR4に流れ込む電流I1が増大し、その結果、
図8(b)に示すように、Vref1を基準に負の傾きを持つ過電流補正電圧Viovが生成される。これにより、
図2(a)および
図4(a)で述べたように過電流判定電流IovのVCC依存性が低減され、
図8(c)に示すようなIovの特性が得られる。
【0051】
図7の動作をより詳細に述べると次のようになる。まず、電圧VCCRは、式(4)で定められ、抵抗R3に流れる電流I1は、式(5)で定められる。また、過電流補正電圧Viovは、式(6)で定められる。したがって、式(6)に式(4)および式(5)を反映させると、式(7)が得られる。
【0052】
VCCR=(R2/(R1+R2))×VCC (4)
I1=(VCCR−Vref1)/R3 (5)
Viov=Vref1−(I1×R4) (6)
【0054】
前述した
図5(b)(式(3))の場合と同様にして、式(7)から判るように、
図7の電圧補正回路VCTL1aを用いると、過電流補正電圧Viovの傾きは、抵抗R1〜R4の値によって設定できる。また、
図4(a)で述べた「変化の中心点」(すなわちVref1とViovの交点)は、抵抗R3,R4の値によって設定できる。すなわち、「変化の中心点」の設定と「傾き」の設定を、それぞれ独立に設定することが可能になる。これによって、スイッチ(FETd,FETc)のオン抵抗(Ron)の特性や過電流の判定条件(過電流判定電流Iovの値)等に応じたViovの特性を高い自由度で容易に設定することが可能になる。
【0055】
以上、本実施の形態2の二次電池監視装置を用いることで、代表的には、スイッチ(FETd,FETc)の特性等に対応して誤差が小さい過電流の検出を行うことができ、信頼性の高い過電流検出が実現可能になる。なお、
図7の構成例は、
図5(a)の構成例と比較すると、アンプ回路AMP1の分だけ回路面積が増大するため、この観点からは、
図5(a)の構成例が望ましい。また、
図7では、過電流判定電圧Vref1を基準として負の傾きを持つ過電流補正電圧Viovを生成し、これをVref1に加算する回路方式を用いたが、回路方式は適宜変更することが可能である。例えば、Vref1を基準として正の傾きを持つ過電流補正電圧を生成し、これをVref1から減算する回路方式等を用いてもよい。
【0056】
(実施の形態3)
《電池パックの全体構成および動作(変形例)》
図9は、本発明の実施の形態3による電池パックにおいて、その主要部の構成例を示す概略図である。
図9に示す電池パックは、
図1の電池パックと比較してスイッチ制御部SWCTL2内に電源電圧生成回路VGENが加わっている点が異なっている。これ以外の構成に関しては、
図1の場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。電源電圧生成回路VGENは、二次電池(バッテリ)BATからの電源電圧VCCを受けて、それを降圧した電源電圧VDDを生成する。VDDは、代表的には、ツェナーダイオードや降圧レギュレータ回路等である。当該VDDは、ドライバ回路DRVc,DRVdに電源電圧として供給される。
【0057】
図10(a)〜
図10(d)は、
図9のスイッチ制御部の概略的な動作例を示す説明図である。まず、
図10(a)に示すように、電源電圧生成回路VGENは、電源電圧VCCが所定の制限電圧Vclp1に達するまではVCCの増大に比例して増大する電源電圧VDDを生成するが、Vclp1に達した以降はVCCの増大に依らず所定の制限電圧Vclp2の電圧値を持つVDDを生成する。そうすると、ドライバ回路DRVc,DRVdとして
図17(b)のような構成例を用いた場合、
図10(b)の特性SP10に示すように、スイッチ(FETd,FETc)のオン抵抗(Ron)は、VCCがVclp1に達した以降はVCCの増大に依らず一定値となる。
【0058】
このようにスイッチ(FETd,FETc)のオン抵抗(Ron)が一定となった場合には、前述した過電流判定電流Iovの電源電圧VCC依存性も無くなる。前述した特許文献1には、このようにRonを一定にする方式が示されている。ただし、この場合、IovのVCC依存性を無くすためには、制限電圧Vclp1(それに応じたVclp2)を例えばVCCの変動範囲の最低値等に設定する必要があるため、実動作上、Ronが高い値で固定され、これに伴う電力損失が懸念される。そこで、本実施の形態3では、Vclp1(それに応じたVclp2)をある程度高い値(例えばVCCの変動範囲の中間値等)に設定し、これに伴いVCC<Vclp1の範囲で生じ得るIovのVCC依存性を、前述した実施の形態1または実施の形態2の方式で低減する。
【0059】
この場合、
図10(c)に示すように、過電流補正電圧Viovは、VCC<Vclp1の範囲では電源電圧VCCの増大に依存して負の傾き(
図4(a)の場合)又は正の傾き(
図4(b)の場合)を持つように制御され、VCC≧Vclp1(VDD=Vclp2)の範囲では一定となるように制御される。その結果、
図10(d)の特性SP12に示すように、過電流判定電流IovのVCC依存性が低減される。なお、この際には、
図10(c)に示すように、
図3(a)の場合と比較して、補正対象範囲(直線近似を行う範囲)を狭くすることができる。その結果、直線近似の誤差を
図3(a)の場合よりも小さくすることが可能となり、結果的に、実施の形態1または実施の形態2の場合よりもIovのVCC依存性を低減することができる。ただし、オン抵抗(Ron)に伴う電力損失の観点からは実施の形態1または実施の形態2の方式の方が望ましい。
【0060】
《電圧補正回路およびドライバ回路周りの詳細》
図11は、
図9のスイッチ制御部において、その電圧補正回路およびドライバ回路周りの詳細な構成例を示す回路図である。
図12(a)〜
図12(d)は、
図11の電圧補正回路の動作例を示す説明図である。
図11には、
図9で述べた電源電圧生成回路VGENおよびドライバ回路DRVd,DRVcに、
図5(a)に示した電圧補正回路VCTL2aを組み合わせた構成例が示されている。VGENからの電源電圧VDDは、DRVd,DRVcに対して電源電圧として供給されると共に、VCTL2a内の抵抗R1の一端に対しても
図5(a)に示した電源電圧VCCの代わりとして供給される。
【0061】
このような構成例を用いると、
図12(a)に示すように、電源電圧VDDは、電源電圧VCCの増大に比例して制限電圧Vclpに達するまでは増大し、Vclpに達した以降は、Vclpの電圧値に固定される。これに応じて、抵抗R1,R2の抵抗分圧ノードの電圧VCCRも、
図12(b)に示すように、VDD<Vclpの範囲内ではVCCの増大に比例してR1,R2の抵抗比に応じて増大し、VDD=Vclpの範囲では、Vclp×(R2/(R1+R2))に固定される。これに応じて、過電流補正電圧Viovは、
図12(c)に示すように、VDD<Vclpの範囲内では、VCCの増大に比例して、電流検出電圧Vidtを基準に正の傾きで上昇し、VDD=Vclpの範囲では一定値となる。その結果、
図12(d)に示すように、過電流判定電流IovのVCC依存性が低減される。
【0062】
《電圧補正回路およびドライバ回路周りの詳細(変形例)》
図13は、
図9のスイッチ制御部において、その電圧補正回路およびドライバ回路周りの他の詳細な構成例を示す回路図である。
図14(a)〜
図14(d)は、
図13の電圧補正回路の動作例を示す説明図である。
図13には、
図9で述べた電源電圧生成回路VGENおよびドライバ回路DRVd,DRVcに、
図7に示した電圧補正回路VCTL1aを組み合わせた構成例が示されている。VGENからの電源電圧VDDは、DRVd,DRVcに対して電源電圧として供給されると共に、VCTL1a内の抵抗R1の一端に対しても
図7に示した電源電圧VCCの代わりとして供給される。また、ここでは、VGENが抵抗R0とツェナーダイオードDzの直列回路からなるクランプ回路で構成され、R0とDzの接続ノード(Dzのカソード)から電源電圧VDDが生成される。
【0063】
図13の構成例は、
図14(a)〜
図14(d)に示すように、前述した
図12(a)〜
図12(d)とほぼ同様の動作となる。
図12(a)〜
図12(d)との違いは、制限電圧VclpがツェナーダイオードDzのツェナー電圧Vzに代わった点と、過電流補正電圧Viovの特性が、電源電圧VCCの増大に比例して、過電流判定電圧Vref1を基準に負の傾きで下降するように代わった点である。
【0064】
以上、本実施の形態3の二次電池監視装置又は電池パックを用いることで、代表的には、スイッチ(FETd,FETc)の特性等に対応して誤差が小さい過電流の検出を行うことができ、信頼性の高い過電流検出が実現可能になる。
【0065】
(実施の形態4)
図15は、本発明の実施の形態4による二次電池監視装置において、その電圧補正回路の詳細な構成例を示す回路図である。
図15に示す電圧補正回路VCTL2bは、前述した
図2(b)の電圧補正回路VCTL2に対応し、比較回路CMPdの負極ノード(−)に過電流判定電圧Vref1'が印加され、正極ノード(+)に過電流補正電圧Viovを付加する構成例となっている。
図15のVCTL2bは、電源電圧VCCを抵抗分圧する抵抗R1,R2と、当該抵抗分圧ノードの電圧をゲート・ソース間電圧VGS1として動作するNMOSトランジスタMN1と、MN1のソース・ドレイン間電流(Ids)を転写するカレントミラー回路CMと、抵抗R3を備える。R3は、一端が電流検出端子IDTに結合され、他端からCMによって転写された電流(Iidt)が供給される。このR3の他端は、CMPdの正極ノード(+)に結合されると共にViovの生成ノードとなる。
【0066】
図16(a)〜
図16(e)は、
図15の電圧補正回路の動作例を示す説明図である。
図16(a)に示すように、電源電圧VCCが増加すると、抵抗R1,R2の比率に応じてNMOSトランジスタMN1のゲート・ソース間電圧VGS1が増加する。これに応じて、MN1は、
図16(b)に示すように、VGS1の増大に応じてその二乗曲線で増大するソース・ドレイン間電流(Ids)を生成する。このIdsは、
図16(c)に示すように、カレントミラー回路CMのカレントミラー比(ここでは2個のPMOSトランジスタのトランジスタサイズ比)に応じて電流(Iidt)として転写される。Iidtは、抵抗R3によって電圧に変換され、
図16(d)に示すように、電流検出端子IDTにおける電流検出電圧Vidtに対して、VCCの増大に応じて正の傾きで増大する過電流補正電圧Viovが付加される。
【0067】
これによって、
図16(e)に示すように、
図2(b)や
図4(b)の場合と同様にして過電流判定電流Iovの電源電圧VCC依存性が低減される。ただし、ここでは、
図4(b)の場合のような直線近似(一次近似)を用いずに、曲線(二乗関数)的な過電流補正電圧Viovを生成している。スイッチ(FETc,FETd)のオン抵抗(Ron)は、
図3(a)等に示したように、実際には曲線(二次関数)的な特性となるため、これに対応する曲線(二次関数)的なViovを生成することで、
図3等のような直線近似を行う場合と比べてIovのVCC依存性を低減できる場合がある。また、NMOSトランジスタMN1を用いているため、
図18(b)で述べたような温度依存性もある程度低減できる。
【0068】
図15の構成例の動作をより詳細な説明すると次のようになる。まず、電圧VCCRは、式(8)で定められ、NMOSトランジスタMN1に流れる電流(Ids)は、MN1のゲート幅(W)/ゲート長(L)、電子の移動度μ、単位ゲート容量Coxおよびしきい値Vthを用いて式(9)で定められる。
【0069】
VCCR=(R2/(R1+R2))×VCC (8)
【0071】
また、カレントミラー回路CMの転写電流(Iidt)は、カレントミラー比(A/B)を用いて式(10)で定められる。したがって、過電流判定電圧Viovは、式(11)となる。式(11)に式(8)〜式(10)を反映させると、式(12)が得られる。
【0072】
Iidt=Ids×(A/B) (10)
Viov=Iidt×R3+Vidt (11)
【0074】
式(12)から判るように、過電流補正電圧Viovの特性は、抵抗R1,R2と、使用するNMOSトランジスタMN1の各種パラメータと、カレントミラー回路CMのカレントミラー比(A/B)と、抵抗R3によって調整できる。したがって、高い自由度で調整を行うことが可能である。ただし、前述した直線近似(一次近似)を用いる場合と比較すると、回路の複雑化や回路パラメータの調整が複雑化する恐れがある。また、回路面積も若干増大する恐れがある。このような観点からは、実施の形態1〜3のような直線近似を用いる方式を適用することが望ましい。
【0075】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0076】
例えば、前述した実施の形態では、二次電池BATの負極端子側の電流経路に充電制御用および放電制御用スイッチが挿入された構成例を示したが、例えば当該スイッチが正極端子側の電流経路に挿入される構成も考えられ、本実施の形態は、このような構成に対しても同様に適用可能である。