特許第6187654号(P6187654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187654
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ダンパ開閉装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20170821BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20170821BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B60H1/34 631
   B60H1/34 651B
   F24F13/14 A
   F24F13/10 C
【請求項の数】12
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-162281(P2016-162281)
(22)【出願日】2016年8月22日
(62)【分割の表示】特願2013-94458(P2013-94458)の分割
【原出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2016-196298(P2016-196298A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2016年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-32316(P2013-32316)
(32)【優先日】2013年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】坂井 宏
(72)【発明者】
【氏名】浅野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】小倉 光雄
(72)【発明者】
【氏名】柴田 実
(72)【発明者】
【氏名】高井 一
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−184713(JP,U)
【文献】 国際公開第2008/017124(WO,A1)
【文献】 実開昭56−102214(JP,U)
【文献】 国際公開第2008/107070(WO,A1)
【文献】 特開2004−243946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/10
F24F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、
該外筒の内側に配置されて該外筒に対して、回動を含む移動が自在に支持される筒と、
前記内筒の内部に設けられ流路断面が円形の流体通路と、
前記流体通路に開閉自在に配置された複数のダンパからなるダンパ群とを備えるダンパ開閉装置であって、
複数の前記ダンパは、前記流体通路の周方向に配列さ、内周縁部を互いに対向させて前記流体通路に配置されており、前記各ダンパの前記内周縁部は前記流体通路の上流側に配置され、前記各ダンパの外周縁部は前記流体通路の下流側に配置され、
前記各ダンパは、前記内筒に揺動自在に支持されており、
前記内筒を周方向に等間隔に分割する位置に複数の軸受部を配置し、周方向に隣合う一対の前記軸受部に周方向両端が軸支されて当該一対の軸受部を直線状に繋ぐ弦を揺動中心軸として前記各ダンパを揺動させ、
前記外筒に対する前記内筒の回転に連動して前記各ダンパを前記内筒に対して揺動させることで、前記流体通路の軸方向に対する前記各ダンパの傾斜角度を制御して、前記ダンパの上流側の開口面積と前記ダンパの下流側の開口面積を変える角度制御手段を備え、
前記角度制御手段は、前記ダンパの下流側の開口面積を前記ダンパの上流側の開口面積よりも大きくする拡散吹付位置に前記ダンパを配置させ得るように構成されていることを特徴とするダンパ開閉装置。
【請求項2】
前記角度制御手段は、前記ダンパの下流側の開口面積を前記ダンパの上流側の開口面積よりも小さくする集中吹付位置に前記ダンパを配置させ得るように構成されている請求項1に記載のダンパ開閉装置。
【請求項3】
外筒と、
該外筒の内側に配置されて該外筒に対して、回動を含む移動が自在に支持される内筒と、
前記内筒の内部に設けられ流路断面が円形の流体通路と、
前記流体通路に開閉自在に配置された複数のダンパからなるダンパ群と、を備えるダンパ開閉装置であって、
複数の前記ダンパは、前記流体通路の周方向に配列さ、内周縁部を互いに対向させて前記流体通路に配置されており、前記各ダンパの前記内周縁部は前記流体通路の上流側に配置され、前記各ダンパの外周縁部は前記流体通路の下流側に配置され、
前記各ダンパは、前記内筒に揺動自在に支持されており、
前記内筒を周方向に等間隔に分割する位置に複数の軸受部を配置し、周方向に隣合う一対の前記軸受部に周方向両端が軸支されて当該一対の軸受部を直線状に繋ぐ弦を揺動中心軸として前記各ダンパを揺動させ、
前記外筒に対する前記内筒の回転に連動して前記各ダンパを前記内筒に対して揺動させることで、前記流体通路の軸方向に対する前記各ダンパの傾斜角度を制御して、前記ダンパの上流側の開口面積と前記ダンパの下流側の開口面積を変える角度制御手段を備え、
前記角度制御手段は、前記ダンパの下流側の開口面積を前記ダンパの上流側の開口面積よりも小さくする集中吹付位置に前記ダンパを配置させ得るように構成されていることを特徴とするダンパ開閉装置。
【請求項4】
前記各ダンパは、前記内筒の各一対の前記軸受部に軸支された一対の支持部をもち、前記各ダンパの前記外周縁部は一対の前記支持部の間であって前記支持部よりも径方向外側に形成され、前記各ダンパの前記内周縁部は、一対の該支持部の間であって前記支持部よりも径方向内側に形成されている請求項1〜のいずれか記載のダンパ開閉装置。
【請求項5】
前記角度制御手段は、前記ダンパの外側面に突設させた突起部と、前記外筒の内周面に形成され前記内筒の回動に連動して前記突起部を前記軸方向に移動させるガイド溝とを有する請求項1〜4のいずれかに記載のダンパ開閉装置。
【請求項6】
前記角度制御手段は、前記ダンパの外側面に突設させたピニオンと、前記外筒の内周面に形成され前記ピニオンに噛合するラックとを有する請求項1〜4のいずれかに記載のダンパ開閉装置。
【請求項7】
更に、前記外筒、前記内筒及び前記ダンパ群からなる本体部を一体的に回転自在に収容する筒状のリテーナと、前記リテーナに固定され前記リテーナの軸中心に位置して前記本体部を回動自在に支持する連結支持部とを備える請求項1〜のいずれか記載のダンパ開閉装置。
【請求項8】
前記内筒に固定され、前記内筒の軸中心に位置して前記連結支持部に回動自在に支持される本体支持部を備える請求項7に記載のダンパ開閉装置。
【請求項9】
前記連結支持部は、前記リテーナから径方向内側に延びる第1リブに連結されることで前記リテーナに固定されており、前記本体支持部は、前記内筒から径方向内側に延びる第2リブに連結されることで前記内筒に固定されている請求項8に記載のダンパ開閉装置。
【請求項10】
前記連結支持部及び前記本体支持部の一方は、先端にボール部をもち、前記連結支持部及び前記本体支持部の他方は、前記ボール部を回動自在に摺動させる摺動部をもつ請求項8又は9に記載のダンパ開閉装置。
【請求項11】
前記角度制御手段は、前記各ダンパを、隣合う前記ダンパの前記内周縁部同士が互いに接し且つ前記各ダンパの前記外周縁部がそれぞれ前記内筒の内周面に接して前記流体通路を閉止する閉位置に配置させ得るように構成されている請求項1〜10のいずれかに記載のダンパ開閉装置。
【請求項12】
外筒と、
該外筒の内側に配置されて該外筒に対して、回動を含む移動が自在に支持される内筒と、
前記内筒の内部に設けられ流路断面が円形の流体通路と、
前記流体通路に開閉自在に配置された複数のダンパからなるダンパ群と、を備えるダンパ開閉装置であって、
複数の前記ダンパは、前記流体通路の周方向に配列され、内周縁部を互いに対向させて前記流体通路に配置されており、前記各ダンパの前記内周縁部は前記流体通路の下流側に配置され、前記各ダンパの外周縁部は前記流体通路の上流側に配置され、
前記各ダンパは、前記内筒に揺動自在に支持されており、
前記内筒を周方向に等間隔に分割する位置に複数の軸受部を配置し、周方向に隣合う一対の前記軸受部に周方向両端が軸支されて当該一対の軸受部を直線状に繋ぐ弦を揺動中心軸として前記各ダンパを揺動させ、
前記外筒に対する前記内筒の回転に連動して前記各ダンパを前記内筒に対して揺動させることで、前記流体通路の軸方向に対する前記各ダンパの傾斜角度を制御して、前記ダンパの上流側の開口面積と前記ダンパの下流側の開口面積を変える角度制御手段を備えるダンパ開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体通路を流通する流体の流量を調整するダンパ開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダンパ開閉装置としては、特許文献1に開示されたものがある。図27は、特許文献1のダンパ開閉装置の分解斜視図に対応する図面である。図27に示すように、ダンパ開閉装置は、内側に流体通路925を有するハウジング912と、流体通路925内に進退可能に支持され、ラック部944及び操作部946を備えた操作体914と、ルーバ918と、を備えている。ルーバ918は、ラック部944に噛合するピニオン部957を設け、互いに放射状にハウジング912に回動自在に支持される。
【0003】
この構成では、操作部948を用いて操作体914を進退させることにより、ピニオン部957を設けたルーバ軸部952を中心として、ルーバ918が回動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−168511号公報
【特許文献2】特開2002−137628号公報
【特許文献3】特開平7−180900号公報
【特許文献4】実開平5−27545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、ラック部944及び操作部946が、流体通路925の軸中心に集中している。更に、操作体914を囲むように、流体通路925の中心部に、案内体915及び整流部927が配設されている。このため、流体通路を流通する流体の圧力損失が大きく、十分な風量を吹き出すことが困難であった。
【0006】
また、特許文献2〜4においても、操作部を流体通路の中心に配置して、操作部を操作することで、ルーバを開閉する構成が開示されている。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、流体通路を流通する流体の圧力損失を低くすることができるダンパ開閉装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のダンパ開閉装置は、外筒と、
該外筒の内側に配置されて該外筒に対して、回動を含む移動が自在に支持される筒と、
前記内筒の内部に設けられ流路断面が円形の流体通路と、
前記流体通路に開閉自在に配置された複数のダンパからなるダンパ群とを備えるダンパ開閉装置であって、
複数の前記ダンパは、前記流体通路の周方向に配列さ、内周縁部を互いに対向させて前記流体通路に配置されており、前記各ダンパの前記内周縁部は前記流体通路の上流側に配置され、前記各ダンパの外周縁部は前記流体通路の下流側に配置され、
前記各ダンパは、前記内筒に揺動自在に支持されており、
前記内筒を周方向に等間隔に分割する位置に複数の軸受部を配置し、周方向に隣合う一対の前記軸受部に周方向両端が軸支されて当該一対の軸受部を直線状に繋ぐ弦を揺動中心軸として前記各ダンパを揺動させ、
前記外筒に対する前記内筒の回転に連動して前記各ダンパを前記内筒に対して揺動させることで、前記流体通路の軸方向に対する前記各ダンパの傾斜角度を制御して、前記ダンパの上流側の開口面積と前記ダンパの下流側の開口面積を変える角度制御手段を備え、
前記角度制御手段は、前記ダンパの下流側の開口面積を前記ダンパの上流側の開口面積よりも大きくする拡散吹付位置に前記ダンパを配置させ得るように構成されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成では、内筒の移動に連動してダンパが傾斜角度を変えて、流体通路を開閉する。このため、流体通路の中心に操作部などの部材を配置させる必要がない。ダンパが開位置に位置するときに、流体通路の中央部の流体が吹き抜けやすくなり、流体通路での流体の圧力損失を低くすることができる。
【0010】
上記構成においては、内筒を周方向に等間隔に分割する位置に複数の軸受部を配置し、各軸受部を直線状に繋ぐ弦を揺動中心軸として前記各ダンパを揺動させるため、簡素な構成のダンパで円滑に、流体通路全体を開閉させることができる。
流体通路の上流側にダンパの内周縁部を配置し、流体通路の下流側にダンパの外周縁部を配置している。ダンパが閉位置にあるときに、ダンパの内周縁部が外周縁部よりも流体通路の上流側に配置される。このため、流体通路の下流側の吹出し口からダンパが視認されにくく、ダンパ開閉装置の外観がよくなる。
前記内筒は、前記外筒に対して周方向に回動し、前記角度制御手段は、前記内筒の回動に連動させて前記ダンパの前記傾斜角度を調整する。外筒に対して内筒を回動させることでダンパの傾斜角度を変えて、流体通路の開閉を行うことができる。
ダンパは、ダンパの下流側の開口面積を、ダンパの上流側の開口面積よりも大きくする拡散吹付位置をもつ。流体が流体通路の上流側から下流側に流通する際に、流体は、ダンパの上流側の開口からダンパの下流側の開口に向けて拡散する。このため、流体通路の吹出し口から拡散風を吹出すことができる。
【0014】
(2)前記角度制御手段は、前記ダンパの下流側の開口面積を前記ダンパの上流側の開口面積よりも小さくする集中吹付位置に前記ダンパを配置させ得るように構成されていることが好ましい。
【0015】
流体が流体通路の上流側から下流側に流通する際に、流体は、ダンパの上流側の開口からダンパの下流側の開口に向けて集中する。このため、流体通路の吹出し口から集中風を吹き出すことができる。
【0016】
(3)本発明のダンパ開閉装置は、外筒と、
該外筒の内側に配置されて該外筒に対して、回動を含む移動が自在に支持される内筒と、
前記内筒の内部に設けられ流路断面が円形の流体通路と、
前記流体通路に開閉自在に配置された複数のダンパからなるダンパ群と、を備えるダンパ開閉装置であって、
複数の前記ダンパは、前記流体通路の周方向に配列さ、内周縁部を互いに対向させて前記流体通路に配置されており、前記各ダンパの前記内周縁部は前記流体通路の上流側に配置され、前記各ダンパの外周縁部は前記流体通路の下流側に配置され、
前記各ダンパは、前記内筒に揺動自在に支持されており、
前記内筒を周方向に等間隔に分割する位置に複数の軸受部を配置し、周方向に隣合う一対の前記軸受部に周方向両端が軸支されて当該一対の軸受部を直線状に繋ぐ弦を揺動中心軸として前記各ダンパを揺動させ、
前記外筒に対する前記内筒の回転に連動して前記各ダンパを前記内筒に対して揺動させることで、前記流体通路の軸方向に対する前記各ダンパの傾斜角度を制御して、前記ダンパの上流側の開口面積と前記ダンパの下流側の開口面積を変える角度制御手段を備え、
前記角度制御手段は、前記ダンパの下流側の開口面積を前記ダンパの上流側の開口面積よりも小さくする集中吹付位置に前記ダンパを配置させ得るように構成されていることを特徴とする。
上記構成では、内筒の移動に連動してダンパが傾斜角度を変えて、流体通路を開閉する。このため、流体通路の中心に操作部などの部材を配置させる必要がない。ダンパが開位置に位置するときに、流体通路の中央部の流体が吹き抜けやすくなり、流体通路での流体の圧力損失を低くすることができる。
上記構成においては、内筒を周方向に等間隔に分割する位置に複数の軸受部を配置し、各軸受部を直線状に繋ぐ弦を揺動中心軸として前記各ダンパを揺動させるため、簡素な構成のダンパで円滑に、流体通路全体を開閉させることができる。
流体通路の上流側にダンパの内周縁部を配置し、流体通路の下流側にダンパの外周縁部を配置している。ダンパが閉位置にあるときに、ダンパの内周縁部が外周縁部よりも流体通路の上流側に配置される。このため、流体通路の下流側の吹出し口からダンパが視認されにくく、ダンパ開閉装置の外観がよくなる。
前記内筒は、前記外筒に対して周方向に回動し、前記角度制御手段は、前記内筒の回動に連動させて前記ダンパの前記傾斜角度を調整する。外筒に対して内筒を回動させることでダンパの傾斜角度を変えて、流体通路の開閉を行うことができる。
前記ダンパは、前記ダンパの下流側の開口面積を、前記ダンパの上流側の開口面積よりも小さくする集中吹付位置をもつ。流体が流体通路の上流側から下流側に流通する際に、流体は、ダンパの上流側の開口からダンパの下流側の開口に向けて集中する。このため、流体通路の吹出し口から集中風を吹き出すことができる。
【0018】
4)前記各ダンパは、前記内筒の各一対の前記軸受部に軸支された一対の支持部をもち、前記各ダンパの前記外周縁部は一対の前記支持部の間であって前記支持部よりも径方向外側に形成され、前記各ダンパの前記内周縁部は、一対の該支持部の間であって前記支持部よりも径方向内側に形成されていることが好ましい。
【0019】
この場合には、ダンパが内筒に揺動自在に支持され、ダンパの揺動により流体通路を自在に開閉することができる。
【0022】
(5)前記角度制御手段は、前記ダンパの外側面に突設させた突起部と、前記外筒の内周面に形成され前記内筒の回動に連動して前記突起部を前記軸方向に移動させるガイド溝とを有することが好ましい。
【0023】
内筒が外筒に対して回動すると、外筒に形成したガイド溝に沿ってダンパの突起部が流体通路の軸方向に移動する。これにより、軸方向に対するダンパの傾斜角度が変わり、流体通路を開閉させることができる。
【0024】
ここで、ガイド溝は、螺旋形状に形成されていることが好ましい。外筒の内筒に対する相対的な回動を、内筒に支持されたダンパの軸方向の移動に変化させることができる。
【0025】
各ダンパの外側面には、複数の突起部が突設しており、外筒の内周面であって複数の該突起部に対向する位置に複数のガイド溝が形成されていることが好ましい。この場合には、各ガイド溝の長さが短くても、いずれかの突起部がガイド溝にガイドされることで、突起部の全体の移動距離を増やすことができる。
【0026】
)前記角度制御手段は、前記ダンパの外側面に突設させたピニオンと、前記外筒の内周面に形成され前記ピニオンに噛合するラックとを有することが好ましい。
【0027】
外筒の内周面に形成したラックと、ダンパの外側面に突設させたピニオンとが互いに噛合することで、内筒に対する外筒の相対移動量に応じてダンパの傾斜角度を正確に変化させることができる。
【0028】
)更に、前記外筒、前記内筒及び前記ダンパ群からなる本体部を一体的に回転自在に収容する筒状のリテーナと、前記リテーナに固定され前記リテーナの軸中心に位置して前記本体部を回動自在に支持する連結支持部とを備えることが好ましい。
上記構成によれば、ダンパ開閉装置の本体部は、リテーナに対して連結支持部を中心に自在に回動することができる。リテーナの回動により、ダンパ群をリテーナに対して回動させることができる。
【0029】
)前記内筒に固定され、前記内筒の軸中心に位置して前記連結支持部に回動自在に支持される本体支持部を備えることが好ましい。内筒には、ダンパが揺動可能に支持されている。このため、連結支持部に回動自在に本体支持部を支持することにより内筒がリテーナに対して回動される。内筒の回動により、ダンパ群をリテーナに対して回動させることができる。
【0030】
)前記連結支持部は、前記リテーナから径方向内側に延びる第1リブに連結されることで前記リテーナに固定されており、前記本体支持部は、前記内筒から径方向内側に延びる第2リブに連結されることで前記内筒に固定されていることが好ましい。
連結支持部及び本体支持部は、内筒の内部に形成された流体通路に位置する。連結支持部は、リテーナとの間を第1リブで連結し、本体支持部は内筒との間を第2リブで連結する。これにより、流体通路の径方向断面の開口領域を広くすることができ、流体の圧力損失を防止することができる。
【0032】
10)前記連結支持部及び前記本体支持部の一方は、先端にボール部をもち、前記連結支持部及び前記本体支持部の他方は、前記ボール部を回動自在に摺動させる摺動部をもつことが好ましい。ボール部に対して摺動部を摺動させることにより、リテーナに対して内筒が回動する。内筒に保持されているダンパ群、及び内筒を保持している外筒を、全方位自在に且つ円滑に回動傾動させることができる。
(11)前記角度制御手段は、前記各ダンパを、隣合う前記ダンパの前記内周縁部同士が互いに接し且つ前記各ダンパの前記外周縁部がそれぞれ前記内筒の内周面に接して前記流体通路を閉止する閉位置に配置させ得るように構成されていることが好ましい。
(12)本発明のダンパ開閉装置は、外筒と、
該外筒の内側に配置されて該外筒に対して、回動を含む移動が自在に支持される内筒と、
前記内筒の内部に設けられ流路断面が円形の流体通路と、
前記流体通路に開閉自在に配置された複数のダンパからなるダンパ群と、を備えるダンパ開閉装置であって、
複数の前記ダンパは、前記流体通路の周方向に配列され、内周縁部を互いに対向させて前記流体通路に配置されており、前記各ダンパの前記内周縁部は前記流体通路の下流側に配置され、前記各ダンパの外周縁部は前記流体通路の上流側に配置され、
前記各ダンパは、前記内筒に揺動自在に支持されており、
前記内筒を周方向に等間隔に分割する位置に複数の軸受部を配置し、周方向に隣合う一対の前記軸受部に周方向両端が軸支されて当該一対の軸受部を直線状に繋ぐ弦を揺動中心軸として前記各ダンパを揺動させ、
前記外筒に対する前記内筒の回転に連動して前記各ダンパを前記内筒に対して揺動させることで、前記流体通路の軸方向に対する前記各ダンパの傾斜角度を制御して、前記ダンパの上流側の開口面積と前記ダンパの下流側の開口面積を変える角度制御手段を備える。
【発明の効果】
【0033】
本発明のダンパ開閉装置によれば、ダンパを内筒に揺動自在に支持し、内筒を外筒に対して移動させることで、その移動に連動してダンパの傾斜角度を変えて流体通路を開閉している。このため、流体通路を流通する流体の圧力損失を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施形態1の自動車のインストルメントパネルの吹出し口周辺の平面図である。
図2図1のA−A矢視断面図である。
図3図1のB−B矢視断面図である。
図4】実施形態1のダンパ開閉装置の分解斜視図である。
図5】実施形態1のダンパを支持した内筒、及び外筒の斜視図である。
図6】実施形態1のダンパの突起部と外筒との位置関係を示す説明図である。
図7】ダンパの揺動中心を示すための流体通路の断面説明図である。
図8図8の上図は、ダンパが全開位置にあるときのダンパ開閉装置の平面図であり、図8の中図は、図8の上図のC−C矢視断面図であり、図8の下図は、図8の上図のC−C矢視断面斜視図である。
図9図9の上図は、ダンパが集中吹付け位置にあるときのダンパ開閉装置の平面図であり、図9の中図は、図9の上図のC−C矢視断面図であり、図9の下図は、図9の上図のC−C矢視断面斜視図である。
図10図10の上図は、ダンパが拡散吹付け位置にあるときのダンパ開閉装置の平面図であり、図10の中図は、図10の上図のC−C矢視断面図であり、図10の下図は、図10の上図のC−C矢視断面斜視図である。
図11図11の上図は、ダンパが閉位置にあるときのダンパ開閉装置の平面図であり、図11の中図は、図11の上図のC−C矢視断面図であり、図11の下図は、図11の上図のD−D矢視断面斜視図である。
図12】実施形態1の流体通路の開口面積を示すためのダンパ開閉装置の径方向断面図であり、左上図、右上図、左下図、右下図の順に、ダンパが全開位置、集中吹付け位置、拡散吹付け位置、閉位置にあるときの状態を示す。
図13】実施形態2のダンパ開閉装置の平面図である。
図14】実施形態2のダンパ開閉装置の分解斜視図である。
図15】実施形態3のダンパを支持した内筒、及び外筒の斜視図である。
図16】実施形態3のダンパ開閉装置の断面図である。
図17】実施形態4のダンパ開閉装置の第1リテーナ部材、本体部、第2リテーナ部材の斜視図である。
図18】実施形態4のダンパ開閉装置の本体部の分解斜視図である。
図19】実施形態4のダンパ開閉装置の断面図である。
図20】連結支持部の断面図である。
図21】実施形態4のダンパ開閉装置の本体部の斜視図である。
図22】内筒及び外筒の断面図である。
図23図23の左図は、外筒の斜視図であり、図23の中図は操作部及びダンパ群を組み付けた内筒の斜視図であり、図23の右図はダンパの斜視図である。
図24図23の中図のX−X矢視断面図である。
図25】ダンパが閉位置にあるときの図24のY−Y矢視断面図である。
図26図26は各種第2リブの断面図であって、図26(a)は、細長い四角形をなし斜面をもつ第2リブであり、図26(b)は三角形状の断面をもつ第2のリブであり、図26(c)はダンパ本体の直線部に段部を形成した場合を示し、図26(d)は菱形形状の断面をもつ第2リブを示す。
図27】従来例のダンパ開閉装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(実施形態1)
本実施形態1に係るダンパ開閉装置について図面を用いて説明する。
【0036】
図1は、自動車のインストルメントパネル8の吹出し口80周辺の平面図である。図1に示すように、本実施形態1のダンパ開閉装置10は、自動車のインストルメントパネル8の吹出し口80に設けられている。ダンパ開閉装置10は、外筒1と、内筒2と、複数のダンパ3で構成されたダンパ群30と、操作部5とからなる本体部25、及び本体部25を内部に回動可能に保持するリテーナ6を備えている。
【0037】
図2は、図1のA−A矢視断面図であり、図3は、図1のB−B矢視断面図である。図4は、ダンパ開閉装置10の分解斜視図である。図2に示すように、インストルメントパネル8には、空調空気の吹出し口80が開口している。吹出し口80周縁には、リテーナ6が固定されている。リテーナ6の内面側には、シム61が配設されている。シム61の上流側端部は、リテーナ6に形成された係合溝62に係合されている。シム61の下流側は、リテーナ6の内面との間に微小空間60を形成している。シム61の下流側端部は、リテーナ6の下流側端部から径方向内側に屈曲されて形成された係合爪63の外側面に係合されている。これにより、シム61はその下流側を微小空間60側に弾性変形可能にリテーナ6に固定されている。
【0038】
図2図3に示すように、シム61の内面は、球面形状を呈しており、ダンパ開閉装置10の本体部25を方向自在に回動するように保持している。ダンパ開閉装置10の外筒1は、上流側に配置された第1部材11と、第1部材11よりも吹出し口80に近い下流側に配置された第2部材12とから構成されている。
【0039】
図4に示すように、第1部材11の下流側周縁部11bの3箇所に、係合突起15が突出され、第2部材12の上流側周縁部12aの3箇所に係合凹部16が形成されている。係合突起15は係合凹部16に係合されている。これにより、第1部材11と第2部材12とが互いに一体的に固定されている。第1部材11と第2部材12とは、円筒形状であって、これらの内部空間は互いに同一中心軸をもつ。
【0040】
第1部材11の外周面と第2部材12の外周面は、連続して球面を形成して、球面形状の内面に方向自在に回動傾動可能に保持されている。図2に示すように、第1部材11の外周面には、突部11dが形成されている。突部11dは、シム61の周方向の一部を切り欠いた窓部からリテーナ6に突出させている。突部11dは、リテーナ6に形成されたガイド部64に沿って移動することで、ダンパ開閉装置10の本体部25を方向自在に支持している。突部11dは、ガイド部64の両端に設けられた係合溝62と係合爪63とで移動が規制されることで、リテーナ6の軸方向に対するダンパ開閉装置10の本体部25の傾きが規制される。
【0041】
図5は、ダンパ3を支持した内筒2、及び外筒1の斜視図である。図6は、ダンパ3の半円部35と外筒1との位置関係を示す説明図である。図5図6に示すように、外筒1の第1部材11の内周面には、第1、第2ガイド溝13、14が凹設されている。第1、第2ガイド溝13、14は、いずれも互いに平行な螺旋形状であり、周方向右側に対して下流側に向かって傾斜している。2つの第1、第2ガイド溝13、14を1組としたとき、第1部材11の内周面には周方向に等間隔に3組の第1、第2ガイド溝13、14が形成されている。
【0042】
第1ガイド溝13は、第2ガイド溝14よりも上流側に位置している。第1ガイド溝13の上流側端部13aは、第1部材11の上流側周縁部11aに位置している。第1ガイド溝13の下流側端部13bは、第1部材11の内周面の中間部分に位置している。第2ガイド溝14の上流側端部14aは、第1部材11の内周面の中間部分に位置しており、第2ガイド溝14の下流側端部14bは、第1部材11の下流側周縁部11bに位置している。第1ガイド溝13の下流側部分は、第2ガイド溝14の上流側部分と周方向で互いに重なっている。
【0043】
図4に示すように、内筒2は、外筒1と同一軸線をもつ円筒形状を呈している。内筒2の軸方向の中央部分には、径方向外側に突出するフランジ部22が形成されている。フランジ部22は、第1部材11の下流側部分で径方向内側に分枝したリング状の保持片17と、第2部材12の内周面の上流側部分で周方向に突設された複数のリブ18との間で挟持されている。フランジ部22がこのように第1部材11と第2部材12との間で挟持されることで、内筒2は、外筒1に対して周方向に回動自在に保持される。
【0044】
内筒2には、径方向内側に三角形状に突出する凸部21が形成されている。凸部21は、内筒2の周方向に120°間隔で3箇所に形成されている。各凸部21は、頂部を挟んで互いに連結する一対の斜面21aを有する。各斜面21aには、それぞれ軸受部21bとしての孔が形成されている。
【0045】
内筒2のフランジ部22における凸部21近傍には、径方向外側に突出する幅広部23が形成されている。幅広部23は、外筒1の第1部材11の下流側端部11bに突出した複数の係合突起15のうちの互いに隣合う係合突起15の間で回動自在である。隣り合う係合突起15は、幅広部23の回動軌跡の両端に位置して、幅広部23の端部に当接したとき幅広部23の回動を規制する。幅広部23が隣り合う係合突起15の間で回動することで、内筒2の外筒1に対する回動可能角度を規定している。本実施形態では、外筒1に対する内筒2の回動可能角度は65°である。
【0046】
内筒2の上流側部分には、スリット24が形成されている。スリット24は内筒2の軸方向に延びており、その一端は上流側周縁部に開口し、その他端は内筒2の軸方向の略中央部分に位置している。スリット24は、内筒2の周方向に120°間隔で3箇所に形成されている。スリット24は、内筒2の周方向で互いに隣合う2つの凸部21の間に形成されている。
【0047】
操作部5は、流体通路7の軸線方向に延びる略三角枠状の薄板から構成されていて、内部には流体の流通が可能な空間50が形成されている。三角枠形状の操作部5の各頂点は、内筒2の下流側の内周面に一体に固定されている。
【0048】
ダンパ群30は、内筒2の内部に形成された流体通路7に配置されている。ダンパ群30は、3つのダンパ3から構成されている。各ダンパ3は、内筒2に対して揺動可能に支持されている。ダンパ3は、内筒2に対して揺動することにより流体通路7の軸方向に対する傾斜角度が調整される。
【0049】
3つのダンパ3は、互いに同じ構造をもつ。各ダンパ3は、略扇形状を呈するダンパ本体31と、ダンパ本体31の周方向両端に設けられた一対の支持部32と、ダンパ本体31の外側面に設けられた第1、第2突起部33,34とを有する。支持部32は、ダンパ本体31から内側に折り返された折り返し部32aと、折り返し部32aの外側面に突出する軸部32bとを有する。軸部32bは、内筒2の凸部21の斜面21aに形成した軸受部21bに回動自在に嵌合されている。軸部32bが軸受部21bに回動自在に嵌合されることで、ダンパ3は内筒2に対して揺動自在に保持される。
【0050】
図7は、ダンパの揺動中心位置を示すための説明図である。図7に示すように、内筒2を周方向に等間隔に分割する位置に複数の軸受部21bを配置している。隣合う各軸受部21bを直線状に繋ぐ弦20を回動中心軸として、各ダンパ3は内筒2に対して揺動される。ダンパ3は、内筒2に対して揺動することで、流体通路7の軸方向に対する傾斜角度が変更され、流体通路7を流通する空調空気の量が調整される。
【0051】
図4に示すように、ダンパ本体31は、軸方向に対して所定角度に揺動自在に配置されている。ダンパ本体31の内側面は流体通路7の径方向内側を向き、ダンパ本体31の外側面は流体通路7の径方向外側を向いている。そして、ダンパ本体31の全体形状は、軸方向の両端から軸方向の中央部に向かって、径方向外側に緩やかに湾曲している。
【0052】
ダンパ本体31は、一対の支持部32の間であって支持部32よりも外側に形成された外周縁部31aと、一対の支持部32の間であって支持部32よりも内側に形成された内側縁部31bとで囲まれている。
【0053】
ダンパ本体31の外周縁部31aは、円弧形状を呈している。ダンパ本体31の外周縁部31aは、ダンパ3の下流側に位置していて、内筒2の内周面に対面している。後述の図11の下図に示すように、ダンパ3が閉位置にあるとき、ダンパ本体31の外周縁部31aは、内筒2の内周面に傾斜して接するため、内筒2の内周面よりも緩やかな円弧を描いている。流体通路7の軸方向に対するダンパ本体31の傾斜角度が変化することで、ダンパ本体31の外周縁部31aは、内筒2との間を開閉する。
【0054】
図4図5に示すように、ダンパ本体31の内周縁部31bは、ダンパ3の上流側に位置していて、他のダンパ3のダンパ本体31の内周縁部31bと互いに対向している。ダンパ本体31の内周縁部31bは、両端部の各支持部32から直線状に延びる一対の直線部31cと、一対の直線部31cが互いに交わる頂部31dとから構成されている。流体通路7の軸方向に対するダンパ本体31の傾斜角度が変化することで、隣り合う他のダンパ3との間を開閉する。ここで、傾斜角度とは、図2、及び後述の図8に示すように、本体31の外周縁部31aの中心部31fと、ダンパ本体31の内周縁部31bの中心部である頂部31dとを繋ぐ直線L1が、流体通路7の中心軸線L2との間に形成する角度である。
【0055】
ダンパ本体31の外側面には、略半円板形状をなす半円部35が突出している。半円部35の円弧状の縁部35aの両端は、流体通路7の軸方向の上流側及び下流側に配置されている。半円部35の縁部35aには、第1突起部33と第2突起部34が、半円部35の径方向外側に向かって突設している。第1突起部33は、第2突起部34よりも流体通路7の軸方向の上流側に位置している。
【0056】
図5に示すように、ダンパ3の半円部35は、内筒2のスリット24を貫挿されている。図6に示すように、ダンパ3の半円部35に突設された第1、第2突起部33,34は、それぞれ外筒1の第1、第2ガイド溝13、14に嵌合されている。第1、第2突起部33,34は、それぞれ第1、第2ガイド溝13、14の中を移動することができる。内筒2に対して外筒1を相対回転移動させると、内筒2に保持されたダンパ3の第1、第2突起部33,34は、それぞれ外筒1の第1、第2ガイド溝13、14に沿って移動する。
【0057】
図4図6に示すように、第1、第2ガイド溝13、14は、互いに略平行に延びる螺旋形状を呈している。外筒1の周方向の回転移動により第1、第2ガイド溝13、14の中を第1、第2突起部33,34が移動すると、第1、第2突起部33,34の軸方向の位置が変わる。ダンパ3の軸部32bに対する第1、第2突起部33,34の軸方向の位置が変わるため、ダンパ3が軸部32bを中心にして揺動する。第1、第2突起部33,34が上流側に移動されると、ダンパ本体31の内周縁部31bは径方向外側に移動され、ダンパ本体31の外周縁部31aは径方向内側に移動される。第1、第2突起部33,34が下流側に移動されると、ダンパ本体31の内周縁部31bは径方向内側に移動され、ダンパ本体31の外周縁部31aは径方向外側に移動される。このように、第1、第2ガイド溝13、14は、内筒2の回動に連動して第1、第2突起部33,34を軸方向に移動させる。第1、第2突起部33,34、第1、第2ガイド溝13、14は、外筒1に対する内筒2の移動に連動させて、ダンパ3の傾斜角度を制御する角度制御手段を構成している。
【0058】
図6に示すように、内筒2が外筒1に対する回転許容角度の中間に位置しているときには、第1、第2突起部33,34は、第1、第2ガイド溝13、14に嵌合されている。内筒2が外筒1に対する回転許容角度の両端に位置しているときには、第1、第2突起部33,34の一方が、第1、第2ガイド溝13、14の一方から脱離し、第1、第2突起部33,34の他方のみが、第1、第2ガイド溝13、14の他方に嵌合することで、外筒1に対する半円部35の位置を制御している。2つの第1,第2突起部33,34と2つの第1、第2ガイド溝13,14とを用いることにより、各ガイド溝の長さが短くても、突起部のガイド可能な長さを大きくすることができる。
【0059】
ダンパ開閉装置の作動を説明する。図8は、ダンパ3が全開位置にあるときのダンパ開閉装置を示し、図9は、ダンパ3が集中吹付け位置にあるときのダンパ開閉装置を示し、図10は、ダンパ3が拡散吹付け位置にあるときのダンパ開閉装置を示し、図11は、ダンパ3が閉位置にあるときのダンパ開閉装置を示す。図8図11において、それぞれ上図は、ダンパ開閉装置の平面図であり、中図は、上図のC−C矢視断面図であり、下図は、上図のC―C矢視断面斜視図である。ただし、図11の下図は、上図のD−D矢視断面斜視図である。図12は、流体通路7の開口面積を示すためのダンパ開閉装置の径方向断面図であり、左上図、右上図、左下図、右下図の順に、ダンパ3が全開位置、集中吹付け位置、拡散吹付け位置、閉位置にあるときの状態を示す。図12の中のドット部分は、ダンパ開閉装置を軸線方向に投影したときの開口領域を示す。
【0060】
図8に示すように、操作部5が基本位置Iに設定されているとき、ダンパ本体31が、流体通路7の軸方向と略平行に向く。ダンパ本体31の外周縁部31aは、内筒2の内周面から離間し、ダンパ本体31の内周縁部31bは、他のダンパ3のダンパ本体31の内周縁部31bから離間する。ダンパ本体31の外周縁部31aは、内周縁部31bと同程度に、流体通路7の中心軸線から離間する。外周縁部31aの下端部である中心部31fは、内周縁部31bの上端部である頂部31dに対して、流体通路7の径方向の位置を同程度としている。このとき、図12の左上図に示すように、流体通路7を軸方向から投影したとき流体通路7の上流側から下流側まで貫通して開口している開口領域71の開口面積が最大となり、ダンパ3は全開位置に位置される。空調空気70は、流体通路7の軸線方向の下流側に流れ、吹出し口80から軸線方向とほぼ平行に吹出す。
【0061】
図9に示すように、操作部5を基本位置Iから図9紙面上で左周り方向に25°離れた第2位置IIに回転させる。操作部5を固定している内筒2、及び内筒2に保持されているダンパ3の第1、第2突起部33,34は、外筒1に対して左周り方向に25°回転される。ダンパ3の半円部35は、図6の位置Aから位置Bに移動される。半円部35から突出している第1、第2突起部33,34は、外筒1の第1、第2ガイド溝13、14にガイドされて、左周り方向で且つ上流側に移動する。図9に示すように、ダンパ本体31の上流側の内周縁部31bを径方向外側に開き、下流側の外周縁部31aを径方向内側に移動される。外周縁部31aは、内周縁部31bよりも径方向内側に移動される。ダンパ3の下流側に配置した外周縁部31aの下端部である中心部31fを、ダンパ3の上流側に配置した内周縁部31bの上端部である頂部31dよりも、径方向内側に位置させる。このとき、図12の右上図に示すように、流体通路7の開口領域71の開口面積は全開位置にあるときよりも狭くなる。空調空気70は、下流側に向けて流体通路7の中心軸線近傍に集中して、集中風が吹出し口80から放出される。
【0062】
図10に示すように、操作部5を基本位置Iから図10紙面上で右周り方向に10〜30°程度離れた第3位置IIIに回転させる。操作部5の回転により、内筒2及び第1、第2突起部33,34は、外筒1に対して右周り方向に10〜30°程度回転される。ダンパ3の半円部35は、図6の位置Aから位置Cに移動される。第1、第2突起部33,34は、外筒1の第1、第2ガイド溝13、14にガイドされて、右周り方向で且つ下流側に移動する。図10に示すように、ダンパ本体31の上流側の内周縁部31bは径方向内側に移動され、下流側の外周縁部31aは径方向外側に広がる。外周縁部31aは、内周縁部31bよりも径方向外側に移動される。ダンパ3の下流側に配置した外周縁部31aの下端部である中心部31fを、ダンパ3の上流側に配置した内周縁部31bの上端部である頂部31dよりも、径方向外側に位置させる。このとき、図12の左下図に示すように、流体通路7の開口領域71の開口面積は全開位置にあるときよりも狭くなる。空調空気70は、下流側に向けて流体通路7の径方向外側に拡散して、拡散風が吹出し口80から放出される。
【0063】
図11に示すように、操作部5を基本位置Iから図11紙面上で右周り方向に40°程度離れた第4位置IVに回転させる。操作部5の回転により、内筒2及び第1、第2突起部33,34は、外筒1に対して右周り方向に40°程度回転される。図6の位置Aから位置Dに移動される。第1、第2突起部33,34は、外筒1の第1、第2ガイド溝13、14にガイドされて、右周り方向で且つ下流側に移動する。図11に示すように、ダンパ本体31の上流側の内周縁部31bは径方向内側に移動され、3つのダンパ3の内周縁部31bは互いに接する。3つのダンパ3の内周縁部31bの頂点31dが、流体通路7の中心軸線上で集まり、隣合うダンパ3の直線部31c同士が接する。頂点31dを中心として3つのダンパ3が放射状に配置され、流体通路7を塞ぐ。ダンパ本体31の下流側の外周縁部31aは径方向外側に広がり、内筒2の内周面に接する。このとき、図12の右下図に示すように、流体通路7の開口領域の面積はゼロである。空調空気70の吹出しは停止される。
【0064】
本実施形態においては、外筒1に対して内筒2を移動させることにより、内筒2の移動に連動してダンパ3が傾斜角度を変えて、流体通路7を開閉する。このため、操作部5を流体通路7の中心に配置させる必要がない。ダンパ3が全開位置に位置するときに、流体通路7の中央部の流体が吹き抜けやすくなり、流体通路7を流通する空調空気70の圧力損失を低くすることができる。
【0065】
ダンパ3が全開位置にあるときに、各ダンパ本体31の内周縁部31bを他のダンパ本体31の内周縁部31bから離間させる。また、各ダンパ本体31の外周縁部31aを内筒2の内周面から離間させている。これにより、流体通路7を軸方向から投影したときの開口領域の面積が最大としている。このため、空調空気70の流通量を多くすることができる。
【0066】
ダンパ3が閉位置にあるときには、ダンパ群30の各ダンパ3の内周縁部31b同士が近接して流体通路7を塞ぐ。また、各ダンパ3の外周縁部31aは、内筒2の内周面に近接して各ダンパ3と内筒2の内周面との間を塞ぐ。このため、流体通路7の全体が塞がれて、空調空気の流通を停止させることができる。
【0067】
ダンパ3が閉位置にあるときに、ダンパ本体31の内周縁部31bが流体通路7の上流側に配置される。このため、流体通路7の下流側の吹出し口80からダンパ本体31が視認されにくい。ダンパ開閉装置10の外観がよくなる。
【0068】
ダンパ3が全開位置にあるときに、操作部5が流体通路7の開口領域71に位置することになり、流体は操作部5を通って下流側に吹き出す。このため、操作部5によって風向きを整流することができる。また、操作部5は、風通りの集中しやすい流体通路7の中心部を避けて配置されている。このため、圧力損失を防ぐことができる。
【0069】
(実施形態2)
図13図14に示すように、操作部5の中央には、3本の整流フィン51が放射状に配設されている。また、各ダンパ3のダンパ本体31の内側面からは、円弧状のフィン部38が流体通路7の中心軸方向に向かって突出している。操作部5の整流フィン51とダンパ3のフィン部38とは、下流側の吹出し口80からみたときに、周方向に交互に等間隔に配置されている。整流フィン51及びフィン部38は、薄板状であり、軸方向に沿って配置されている。流体通路7を流通する空調空気70は、整流フィン51及びフィン部38によって整流されて、吹出し口80から噴出される。このため、空調空気の整流効果が高い。
【0070】
(実施形態3)
実施形態3では、図15図16に示すように、ダンパ本体31の外側面に半円部35が突出している。半円部35の外周縁には、はすば歯車からなるピニオン39が形成されている。半円部35は、内筒2に形成されたスリット24に嵌挿されている。外筒1の内周面には、その周方向全体にわたって連続して、内歯車からなるラック19が形成されている。ダンパ3のピニオン39は、外筒1のラック19に噛合している。操作部5の操作により内筒2が回転すると、ダンパ3のピニオン39は、ラック19の歯溝に沿って、軸方向に移動される。ダンパ3は、ピニオン39の軸方向の移動により支持部32を揺動中心にして揺動し、流体通路7を開閉する。ピニオン39とラック19は、ダンパ3の傾斜角度を制御する角度制御手段を構成している。操作部5、内筒2、外筒1、及びダンパ3の動きは、実施形態1と同様である。
【0071】
本実施形態では、ダンパ3の傾斜角度は、はすば歯車と外筒1の内歯車の噛合により調整される。このため、外筒1の相対移動量に応じてダンパ3の傾斜角度を正確に変化させることができる。
【0072】
実施形態1〜3では、ダンパ3のダンパ本体31は、全体が緩やかに湾曲した形状を呈している。これはダンパ3の剛性を高めるためである。ダンパ本体31の形状はこれに限定されず、例えば、全体が平坦な板形状を呈していても良い。
【0073】
また、ダンパ群30は、3つのダンパから構成されたが、ダンパは2つ以上であれば、いくつでもよい。ダンパ本体31の内周縁部31bは上流側に、外周縁部31aは下流側に配置されているが、内周縁部31bは下流側に、外周縁部31aは上流側に配置されていてもよい。
【0074】
実施形態1〜3では、内筒2を外筒1に対して周方向に移動可能としているが、内筒2を外筒1に対して軸方向に移動可能とし、角度制御手段により、軸方向の内筒2の移動に連動してダンパ3の開閉量を調整してもよい。
【0075】
実施形態1〜3では、内筒2に操作部5を一体に固定しているが、操作部5はなくてもよい。内筒2を直接操作することで内筒2を外筒1に対して移動させてもよい。
【0076】
実施形態1,2では、半円部35から突出させた第1、第2突起部33、34を外筒1の第1、第2ガイド溝13、14に嵌合させるために、内筒2には、半円部35を挿通させるスリット24を形成している。しかし、ダンパ3の第1、第2突起部33、34の位置に内筒2が配置されていなければ、内筒2にスリットを形成することなく、第1、第2突起部33、34を外筒1の第1、第2ガイド溝13、14に嵌合させることができる。
【0077】
実施形態3においても、ダンパ3の半円部のピニオン39を、外筒1のラック19に噛合させることができれば、内筒2にスリットを形成しなくてもよい。
【0078】
実施形態1〜3においては、ダンパ開閉装置10は、空調空気の流通量を調整する空調用レジスタとして用いているが、その他の流体の流通量を調整するために用いることも可能である。
【0079】
(実施形態4)
実施形態4は、図17図18に示すように、車両のインストルメントパネルの空調空気の吹き出し口に取り付けられるダンパ開閉装置10である。ダンパ開閉装置10は、図17図19に示すように、外筒1、内筒2及びダンパ群30からなる本体部25を一体的に回転傾動自在に収容する筒状のリテーナ6と、リテーナ6に固定されリテーナ6の軸中心に位置して本体部25を回動傾動自在に支持する連結支持部41とを有する。
【0080】
図17に示すように、リテーナ6は、上流側に配置された第1リテーナ部材65と、第1リテーナ部材65の下流側に配置された第2リテーナ部材66とからなる。第1リテーナ部材65の下流側周縁部は、第2リテーナ部材66の上流側周縁部に外嵌されている。第1リテーナ部材65の下流側周縁部から突出した係合部65cが、第2リテーナ部材66の外周面から突出する突部66cを嵌合することで、第1、第2リテーナ部材65,66を一体化して、リテーナ6を形成している。
【0081】
第1リテーナ部材65の上流部65aは円筒形状を呈しており、下流部65bは上流部65aよりも拡径されている。図19に示すように、第2リテーナ部材66の下流部66bは、インストルメントパネル8の吹出し口80を囲む周縁部81を内嵌している。図17に示すように、第2リテーナ部材66の外周面から突出するフランジ部66dは、図略のインストルメントパネル8の図略の係合部に係合されている。図19に示すように、第1リテーナ部材65の下流部65bの内周面と第2リテーナ部材66の上流部66aの内周面とインストルメントパネル8の吹出し口80の周縁部81は、互いに連続する球面を形成している。
【0082】
図17図19に示すように、連結支持部41は、第1リテーナ部材65の上流部65aに突設されて軸中心に位置している。連結支持部41は、ボール部42aをもつピン42と、ピン42を嵌合させる保持穴43aをもつ支持部43とを有する。ピン42のボール部42aは、球面をもち、ピン42の先端に設けられている。
【0083】
図20に示すように、ピン42の下部は、2つに分枝した挿入部42bをもつ。挿入部42bは、先端が鉤形状に径方向外側に張り出している。挿入部42bを保持穴43aに挿入したときに、ピン42の先端の鉤形状部42cが保持穴43a先端の周縁に係止することで、ピン42がピン支持部43に固定される。図17に示すように、ピン支持部43は、3方向に放射状に延びる第1リブ44と一体に連結されている。第1リブ44が第1リテーナ部材65の上流部65aに一体に固定されることで、ピン支持部43はリテーナ6の中心軸上に保持されている。
【0084】
図17図18に示すように、リテーナ6の内部には、ダンパ開閉装置10の本体部25を一体に収容している。本体部25は、外筒1、内筒2、ダンパ群30、操作部5から構成される。
【0085】
図18に示すように、外筒1は、第1部材11と、第1部材11よりも下流側であって吹出し口80の近くに配置された第2部材12とから構成されている。第1部材11の下流側周縁部11bの3箇所に、係合突起11cが突出され、第2部材12の上流側周縁部12aの3箇所に係合凹部12cが形成されている。係合突起11cは係合凹部12cに係合されている。これにより、第1部材11と第2部材12とが互いに一体的に固定されている。第1部材11と第2部材12とは、円筒形状であって、これらの内部空間は互いに同一中心軸をもつ。
【0086】
図19に示すように、第1部材11と第2部材12の外周面は、リテーナ6の内周面と若干の間隔を隔てて互いに対向している。第1部材11と第2部材12の外周面は、リテーナ6の内周面の球面形状と相応する球面形状を呈している。第1部材11の外周面には、突部11dが突設されている。突部11dは、リテーナ6の内周面との隙間を管理するための当て座である。
【0087】
図18に示すように、外筒1の内周面には、螺旋形状のガイド溝13dが凹設されている。ガイド溝13dは、外筒1の内周面に周方向の3カ所に配置されている。図21に示すように、ガイド溝13dの上流部、下流部は、それぞれ外筒1の第1部材11、第2部材12に配置されている。
【0088】
内筒2は、外筒1と同一軸線をもつ円筒形状を呈している。図22に示すように、内筒2の上流側端部は径方向内側に突設された座部29をもち、内筒2のこの座部29と下流端部とが、それぞれ外筒1の第1部材11及び第2部材12の内周面に形成した段部11f、12fに回動自在に係止されることで、外筒1に対して内筒2が回動自在に保持されている。
【0089】
図18図21に示すように、内筒2には、径方向内側に三角形状に突出する凸部21が形成されている。凸部21は、内筒2の周方向に120°間隔で3箇所に形成されている。各凸部21は、頂部を挟んで互いに連結する一対の斜面21aを有する。各斜面21aには、それぞれ軸受部21bとしての孔が形成されている。
【0090】
内筒2の上流側部分には、スリット24が形成されている。スリット24は、内筒2の軸方向に延びており、その一端は上流側周縁部に開口し、その他端は内筒2の軸方向の略下流側部分に位置して閉止している。スリット24は、内筒2の周方向に120°間隔で3箇所に形成されている。スリット24は、内筒2の周方向で2つの凸部21の間に形成されている。
【0091】
内筒2の三角形状に突出する3つの凸部21の頂部には、被覆リブ46が一体に連結されている。被覆リブ46は、内筒2の軸中心に向かって径方向内側に延びている。三本の被覆リブ46の交わる軸中心に、本体支持部45が配設されている。図19に示すように、本体支持部45は、上流側が凹設されていて、その凹設部に摺動部47を設けている。
【0092】
図19に示すように、摺動部47は、シム48を介して、リテーナ6に固定された連結支持部41のピン42のボール部42aを支持している。ボール部42aは、摺動部47により支持されることで、リテーナ6に対して、内筒2を一体的に全方位に回動可能とさせる。内筒2がリテーナ6に対して回動することで、内筒2を保持する外筒1、内筒2に支持されているダンパ群30を一体的に、全方位に回動可能とさせる。
【0093】
図21図18に示すように、操作部5は、流体通路7の軸線方向に延びる略三角枠状の薄板51と、薄板51に連結された円弧部52とからなる。円弧部52の中心は、三角枠形状の薄板51の中心と共通する。三角枠形状の薄板51の各頂点は、内筒2の下流側の内周面に一体に固定されている。内筒2と操作部5との間、薄板51と円筒部52との間、及び円筒部52の内部は、流体の流通が可能な空間50が形成されている。円弧部52の径方向内側の空間50には、内筒2に固定された円形状の本体支持部45、及び被覆リブ46が露出している。
【0094】
図21に示すように、ダンパ群30は、内筒2の内部に形成された流体通路7に配置されている。ダンパ群30は、3つのダンパ3から構成されている。各ダンパ3は、内筒2に対して揺動可能に支持されている。ダンパ3は、内筒2に対して揺動することにより流体通路7の軸方向に対する傾斜角度が調整される。
【0095】
図23に示すように、3つのダンパ3は、互いに同じ構造をもつ。各ダンパ3は、略扇形状を呈するダンパ本体31と、ダンパ本体31の周方向両端に設けられた一対の支持部32と、ダンパ本体31の外側面に設けられた突起部36とを有する。支持部32は、ダンパ本体31から内側に折り返された折り返し部32aと、折り返し部32aの外側面に突出する軸部32bとを有する。軸部32bは、内筒2の凸部21の斜面21aに形成した軸受部21bに回動自在に嵌合されている。軸部32bが軸受部21bに回動自在に嵌合されることで、ダンパ3は内筒2に対して揺動自在に保持される。
【0096】
内筒2を周方向に等間隔に分割する位置には、複数の軸受部21bが配置されている。隣合う各軸受部21bを直線状に繋ぐ弦20を回動中心軸として、各ダンパ3は内筒2に対して揺動される(図7参照)。ダンパ3は、内筒2に対して揺動することで、流体通路7の軸方向に対する傾斜角度が変更され、流体通路7を流通する空調空気の量が調整される。
【0097】
図18図23に示すように、ダンパ本体31は、軸方向に対して所定角度に揺動自在に配置されている。ダンパ本体31の内周縁部31bは流体通路7の径方向内側を向き、ダンパ本体31の外周縁部31aは流体通路7の径方向外側を向いている。そして、ダンパ本体31の全体形状は平坦である。
【0098】
ダンパ本体31は、一対の支持部32の間であって支持部32よりも外側に形成された外周縁部31aと、一対の支持部32の間であって支持部32よりも内側に形成された内側縁部31bとで囲まれている。
【0099】
ダンパ本体31の外周縁部31aは、緩やかな円弧形状を呈している。ダンパ本体31の外周縁部31aは、ダンパ3の上流側に位置していて、内筒2の内周面に対面している。図24に示すように、ダンパ3が閉位置にあるとき、ダンパ本体31の外周縁部31aは、内筒2の内周面に傾斜して接するため,内筒2の内周面よりも緩やかな円弧を描いている。流体通路7の軸方向に対するダンパ本体31の傾斜角度が変化することで、ダンパ本体31の外周縁部31aは、内筒2との間を開閉する。
【0100】
図19に示すように、傾斜角度とは、ダンパ本体31の外周縁部31aの中心部31fと、ダンパ本体31の内周縁部31bの中心部である頂部31dとを繋ぐ直線L1が、流体通路7との中心軸線L2との間に形成する角度である。
【0101】
図23に示すように、ダンパ本体31の内周縁部31bは、ダンパ3の下流側に位置していて、他のダンパ3のダンパ本体31の内周縁部31bと互いに対向している。ダンパ本体31の内周縁部31bは、両端部の各支持部32から直線状に延びる一対の直線部31cと、一対の直線部31cの間に形成された頂部31dとから構成されている。
【0102】
ダンパ本体31の外側面には、略半円板形状をなす半円部35が突出している。半円部35の円弧状の縁部35aの両端は、流体通路7の軸方向の上流側及び下流側に配置されている。半円部35の縁部35aの中央部には、突起部36が半円部35の径方向外側に向かって突設している。
【0103】
ダンパ3の半円部35は、内筒2のスリット24を貫挿されている。ダンパ3の半円部35に突設された突起部36は、外筒1のガイド溝13dに嵌合されている。突起部36は、ガイド溝13dの中を移動することができる。内筒2に対して外筒1を相対回転移動させると、内筒2に保持されたダンパ3の突起部36は、外筒1のガイド溝13dに沿って移動する。
【0104】
ガイド溝13dは、螺旋形状を呈している。操作部5の操作により内筒2を周方向に回動させると、外筒1が内筒2に対して相対的に回動移動される。外筒1の周方向の回転移動によりガイド溝13dの中を突起部36が移動すると、突起部36の軸方向の位置が変わる。ダンパ3の軸部32bに対する突起部36の軸方向の位置が変わるため、ダンパ3が軸部32bを中心にして揺動する。突起部36が上流側に移動されると、ダンパ本体31の内周縁部31bは径方向外側に移動され、ダンパ本体31の外周縁部31aは径方向内側に移動される。突起部36が下流側に移動されると、ダンパ本体31の内周縁部31bは径方向内側に移動され、ダンパ本体31の外周縁部31aは径方向外側に移動される。このように、ガイド溝13dは、内筒2の回動に連動して突起部36を軸方向に移動させる。突起部36及びガイド溝13dは、外筒1に対する内筒2の移動に連動させて、ダンパ3の傾斜角度を制御する角度制御手段を構成している。
【0105】
図21図23に示すように、突起部36がガイド溝13dの上流側端部13aに位置しているときには、ダンパ群30を構成する3つの各ダンパ3は、それぞれダンパ本体31を内筒2の軸方向と平行に配置される。このときのダンパ3の傾斜角度は0°である。
【0106】
操作部5を操作することにより内筒2を図23紙面上で右方向に回動させると、突起部36が、ガイド溝13dの上流側端部13aから、ガイド溝13dの下流側に移動される。これにともない、内筒2が外筒1に対して回動しながらダンパ3の傾斜角度が徐々に大きくなり、ダンパ3の内周縁部31bが径方向内側に移動される。突起部36がガイド溝13dの下流側端部13bに移動されると、そこで突起部36が停止され、それ以上の内筒2の回動が停止される。
【0107】
図24に示すように、このときダンパ3の内周縁部31bは、直線部31cで互いに接して、流体通路7を閉止する。ダンパ3の外周縁部31aは内筒2の内周面との間を閉止する。ダンパ本体31の頂部31dは、凹状に窪んでいるため、3つのダンパ本体31が閉止したときに、円形状の隙間59があく。しかし、この隙間59は、本体支持部45に覆われているため、流体通路7での流体の流れは閉止される。
【0108】
ここで、図24に示すように、ダンパ3が閉止したときには、各ダンパ3のダンパ本体31の直線部31cは互いに接して閉止される。3つのダンパ3の内周縁部31bの間に形成された境界線Aは、内筒2の軸中心を中心とする放射形状を呈している。閉止したダンパ本体31の直線部31cの配置された位置には、被覆リブ46が位置している。被覆リブ46は、ダンパ3間の境界線Aに沿った放射形状を呈している。閉止したダンパ本体31の直線部31cの上流側は、被覆リブ46で被覆される。流体通路7の上流側から流通してきた空調空気70は、被覆リブ46を避けて、被覆リブ46の両側面に沿って流れる。被覆リブ46の先端まで流通した空調空気70は、閉止したダンパ本体31に衝突してダンパ本体31に沿って径方向外側に流れる。ダンパ本体31の直線部31cと被覆リブ46との間の隙間に存在する空気79は、径方向外側に流れる空調空気70の流れに吸い寄せられ、空調空気70とともに径方向外側に流通する。このため、ダンパ本体31の直線部31cの間の隙間から空気が漏れ出ることなく、空気が下流側に流れることを確実に防止できる。
【0109】
ここで、被覆リブ46の断面形状の態様について図26を用いて説明する。図26に示すように、被覆リブ46のダンパ本体31と対面している部分は、ダンパ本体31の直線部31c近傍の形状に沿った形状を呈しているとよい。例えば、図26(a)に示す被覆リブ46の断面形状は、内筒2の中心軸線に平行に延びる細長い四角形である。被覆リブ46のダンパ本体31と対面している部分は、ダンパ本体31の傾斜方向に沿った斜面46aを有する。
【0110】
図26(b)に示す被覆リブ46の断面形状は、三角形を呈している。被覆リブ46のダンパ本体31と対面している部分は、ダンパ本体31の傾斜方向に沿った斜面46bを形成している。図26(c)に示す被覆リブ46の断面形状は、内筒2の中心軸線に平行に延びる細長い四角形を呈している。ダンパ本体31の直線部31cは、被覆リブ46の形状に沿って凹状段部31gが形成されている。図26(d)に示す被覆リブ46の断面形状は、ダンパ本体31の傾斜方向に沿って延びる部分46cをもつ菱形である。図26には、種々の被覆リブ46の形状を列挙したが、被覆リブ46の形状はこれに限定されない。
【0111】
図26(a)の丸囲み部分に示すように、被覆リブ46のダンパ3に対向している対向面46eは、閉位置にあるダンパ3と平行であったり、又は非平行であったりするが、好ましくは平行であるとよい。被覆リブ46の対向面46eがダンパ3と平行である場合には、ダンパ3と被覆リブ46とが干渉する現象を回避できる。また、被覆リブ46の対向面46eと閉位置にあるダンパ3との間の間隔は、対向面46eの中心に向かって徐々に減少してもよいし、増加してもよく、或いは対向面46e全体でダンパ3との間の間隔を同じに維持していてもよい。
【0112】
被覆リブ46の対向面46eと、閉位置にあるダンパ3との間の平均間隔Dは、0mm以上2.0mm以下であることが好ましい。平均間隔Dが過小の場合には、ダンパの揺動時にダンパ3が被覆リブ46に干渉するおそれがあり、平均間隔Dが過大である場合には、被覆リブ46の対向面46eとダンパ3との間の隙間に空調空気70が流通して、ダンパ3間の隙間から空調空気70が下流側に漏れ出るおそれがある。
【0113】
被覆リブ46の対向面46eの幅Hは0.4mm以上1mm以下であることが好ましい。幅Hが過小の場合には、ダンパ3間を被覆する効果が薄れ、ダンパ3間の隙間から空調空気が漏れ出るおそれがある。幅Hが過大である場合には、揺動時にダンパ3が被覆リブ46に干渉するおそれがある。幅Hの寸法が大きいと、圧力損失が大きくなるおそれがある。
【0114】
本実施形態によれば、図24に示すように、流体通路7におけるダンパ3の上流側に、被覆リブ46を配設している。ダンパ3が閉位置にあるときに、被覆リブ46は、互いに隣合うダンパ3の内周縁部31bと他のダンパ3の内周縁部31bとの間の境界線Aに沿って、ダンパ3の内周縁部31bと隣合う他のダンパ3の内周縁部31bとを被覆する。このため、上流側から空調空気70が流通してきたときに、空調空気70は、被覆リブ46により遮られ、互いに隣合うダンパ3の内周縁部31bの間の境界線Aから下流側に漏れ出ることを確実に防止することができる。また、被覆リブ46は、細長いリブ形状を呈しているため、流体通路7を通過する空調空気70の流通を妨げず、圧力損失を低く抑えることができる。
【0115】
被覆リブ46は、各ダンパ3が閉位置にあるときに形成される放射形状の境界線Aと相応する放射状を呈している。このため、流体通路7に配設したすべてのダンパ3の内周縁部31bの間を被覆リブ46で被覆する。ゆえに、ダンパ3の内周縁部31bの間の隙間から空調空気70が漏れ出ることを確実に防止できる。
【0116】
被覆リブ46は、内筒2から径方向内側に延びている。各ダンパ3は、内筒2の各一対の軸受部21bに軸支された一対の支持部32をもつ。ダンパが筒体に揺動可能に安定に固定される。
【0117】
図23に示すように、内筒2を周方向に等間隔に分割する位置に複数の軸受部21bを配置し、各軸受部21bを直線状に繋ぐ弦20を回動中心軸として各ダンパ3が揺動する。ダンパ3が内筒2に揺動可能に安定に支持されるため、閉位置にあるダンパ3の内周縁部31bの間の隙間を少なくできる。ダンパ閉時に空調空気70の漏出を更に確実に防止することができる。
【0118】
流体通路7において、ダンパ3が閉位置にあるときに、ダンパ3の内周縁部31bは、ダンパ3の回動中心軸よりも下流側に配置されている。閉位置にあるダンパ3が、回動中心軸よりも下流側に配置されると、被覆リブ46は、開閉するダンパ3の移動軌跡以外の部分に配置することができる。このため、ダンパ3と被覆リブ46との干渉を防止でき、ダンパ4を円滑に開閉することができる。
【0119】
図18図19に示すように、更に、外筒1、内筒2及びダンパ群30からなる本体部25を一体的に回動自在に収容する筒状のリテーナ6と、内筒2から径方向内側に延びる被覆リブ46に連結された本体支持部45とを備えている。本体支持部45は、内筒2の軸中心に位置して本体部25をリテーナ6に対して回動自在に支持する。このため、リテーナ6に対して本体部25全体の傾斜角度を調整して、ダンパ群30を構成する全てのダンパ3の傾斜角度を一括して可変させることができる。ゆえに、吹出し口80から流出する空調空気70の向きを自在に調整することができる。また、被覆リブ46は、本体支持部45を内筒2に保持するための連結部材としての機能も持ち合わせている。このため、ダンパ開閉機構10の部品点数を増やすことなく、閉止時にダンパ3の下流側への流体の流出を防止できる。
【0120】
実施形態4では、リテーナ6に連結支持部41を固定していて、連結支持部41は、ボール部42aをもつピン42を有する。内筒2には本体支持部45が固定されていて、本体支持部45に形成した摺動部47は、弾性ゴム又はシリコンからなるシム48を介して、ピン42のボール部42aと方位自在に回動するようにピン42に支持されている。このため、本体支持部45を固定している内筒2、及び内筒2を保持している外筒1、及び内筒2に保持されているダンパ群30及び操作部5を本体部25として一体的に、方位自在に回動させることができる。
【0121】
摺動部47は、ピン42のボール部42aに対して円滑に回動するため、本体部25も円滑に且つ安定に回動することができる。
【0122】
また、連結支持部41及び本体支持部45は、いずれも流体通路7の中に配置されている。連結支持部41は第1リブ44を介してリテーナ6に固定されており、本体支持部45は被覆リブ46を介して内筒2に固定されている。第1リブ44及び被覆リブ46は、流体通路7で周方向の同じ位置に配置されており、しかも、いずれも流体通路7の軸方向に平行に細長く延びる形状を呈している。また、流体通路7の中心軸上には、連結支持部41及び本体支持部45が配置されているが、いずれも流体通路7の中で比較的小さい。このため、流体通路7の圧力損失を低く抑えることができる。
【0123】
また、流体通路70の下流側にダンパ本体31の内周側縁部31bを配置し、流体通路70の上流側にダンパ本体31の外周側縁部31aを配置している。連結支持部41は、ダンパ3よりも上流側に配置されている。このため、下流側の吹出し口80から手が挿入されたとき、揺動するダンパ3と内筒2との間に手が挟まれることを防止して、ダンパ3の開閉の妨げを防止できる。
【0124】
実施形態4では、連結支持部41が支持部43に立設されたピン42であるが、支持部43にピン42が一体に成形されていてもよい。また、リテーナ6に固定された連結支持部41はボール部42aを有するピン42を備え、内筒2に固定されている本体支持部45は摺動部47を備えているが、連結支持部41が摺動部47を備え、本体支持部45がボール部42aを有するピン42を備えていても良い。
【符号の説明】
【0125】
1:外筒、2:内筒、3:ダンパ、5:操作部、6:リテーナ6、7:流体通路、80:吹出し口、10:ダンパ開閉装置、11:第1部材、12:第2部材、13:第1ガイド溝、13d:ガイド溝、14:第2ガイド溝、19:ラック、20:弦、21:22:フランジ部、21b:軸受部、23:幅広部、24:スリット、25:本体部、30:ダンパ群、31:ダンパ本体、31a:外周縁部、31b:内周縁部、32:支持部、33:第1突起部、34:第2突起部、35:半円部、36:突起部、39:ピニオン、41:連結支持部、42:ピン、44:第1リブ、45:本体支持部,46:第2リブ、゛70:空調空気、80:吹出し口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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