(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切換部は、マグネティックコンタクタ、リレースイッチ、ツェナーダイオード及び自己消弧型半導体素子のいずれか1つ又は複数の組み合わせから構成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪第1実施形態≫
図1〜
図4を参照して、第1実施形態の燃料電池システム1について詳細に説明する。図中において、実線は、電気(電流、電力)の流れを示しており、破線(SOFC10の内部)と一点鎖線(SOFC10の外部)は、例えばガスや水等の流体の流れを示している。
【0015】
図1Aに示すように、燃料電池システム1は、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)10と、DC/AC変換部20と、分流回路30と、系統電力網40と、燃焼器50と、排熱回収循環系60とを有している。
【0016】
SOFC10は、複数のセルを積層または集合体として構成したセルスタックを有している。各セルは空気極と燃料極で電解質を挟んだ基本構成を有しており、各セルの間にはセパレータが介在している。セルスタックの各セルは電気的に直列に接続されている。SOFC10は、空気極で生成された酸化物イオンが電解質を透過して燃料極に移動し、燃料極で酸化物イオンが水素又は一酸化炭素と反応することにより電気エネルギーを発生する発電メカニズムである。なお、詳細は第3、第4実施形態で後述するが、SOFC10のセルスタックの各セルを電気的に直列に接続するか並列に接続するかは切換可能である。
【0017】
SOFC10は、燃料ガス流路(アノードガス流路)12と、酸化剤ガス流路(カソードガス流路)14とを有している。燃料ガス流路12には燃料ガス供給器(図示略)から燃料ガスが供給され、酸化剤ガス流路14には酸化剤ガス供給器(図示略)から酸化剤ガスが供給される。燃料ガス流路12に供給された燃料ガスと酸化剤ガス流路14に供給された酸化剤ガスとが電気化学反応を起こすことにより、直流電流が発生する。電気化学反応を起こさなかった燃料ガスと酸化剤ガスは、排出ガスとして、SOFC10から排出される。SOFC10から排出された燃料ガスの一部は、リサイクルガス流路16を介して、燃料ガス流路12に還流される。
【0018】
DC/AC変換部20は、SOFC10が発生(発電)した直流電流を交流電流に変換する。
【0019】
分流回路30は、SOFC10からDC/AC変換部20への直流電流の伝送路DLに接続可能に(伝送路DLに跨って)設けられている。分流回路30は、伝送路DLへの接続状態では、SOFC10が発生した直流電流の一部を伝送路DLから引き抜く(分流して消費することで伝送路DLから逃がす)。このため、伝送路DLのうち、分流回路30からDC/AC変換部20に流れる直流電流は、SOFC10から分流回路30に流れる直流電流より小さくなる。一方、分流回路30は、伝送路DLへの非接続状態では、SOFC10が発生した直流電流をそのまま通過させる。このため、伝送路DLのうち、分流回路30からDC/AC変換部20に流れる直流電流は、SOFC10から分流回路30に流れる直流電流と同じ大きさとなる。分流回路30の構成及び動作については後に詳細に説明する。
【0020】
SOFC10の発電電力はDC/AC変換部20(分流回路30の伝送路DLへの接続状態では分流回路30及びDC/AC変換部20)を通り、系統連系リレー25を介して、系統電力網40に接続されている。SOFC10の発電電力は、系統連系リレー25がオン状態のとき、系統電力網40と連系状態となり、系統連系リレー25がオフ状態のとき、解列状態となり、SOFC10は自立運転を行う。
【0021】
連系運転時には、SOFC10の発電電力が系統に給電され、自立運転時には、定格最大電力よりも小さい負荷で発電電力が装置内で消費される。
【0022】
図1Bに示すように、DC/AC変換部20と系統連系リレー25の間の電力伝送路からは、系統電力網40(系統連系リレー25)がSOFC10との連系状態から解列状態に切り換わったときのSOFC10で発電した電力の一部である余剰電力を伝送する余剰電力伝送路Lを設けてもよい。この余剰電力伝送路Lは、排熱回収循環系60の排熱回収循環ライン(図示略)に設けられたヒータ(図示略)に接続されていてもよい。
【0023】
余剰電力伝送路Lには、リレースイッチLSが設けられている。リレースイッチLSがオン状態のとき、余剰電力伝送路Lを介して排熱回収循環系60に余剰電力が伝送可能となり、リレースイッチLSがオフ状態のとき、余剰電力伝送路Lが遮断されて排熱回収循環系60に余剰電力が伝送不能となる。
【0024】
系統連系リレー25とリレースイッチLSは、例えば、一方がオン状態のときに他方がオフ状態となるように制御される。勿論、系統連系リレー25とリレースイッチLSの双方がオン状態またはオフ状態となる時間帯があるように制御されてもよい。
図1Bでは、系統連系リレー25とリレースイッチLSの双方がオフ状態の場合を描いている。
【0025】
図示は省略しているが、DC/AC変換部20と系統連系リレー25の間の電力伝送路からは、上述した余剰電力伝送路Lとは別の電力伝送路を分岐させてもよい。この別の電力伝送路は、DC/AC変換部20や、図示していないポンプ、ブロワ、ラジエータなどの燃料電池システム1に搭載された機器に接続し、電力伝送路を介して、系統電力網40との連系/解列状態に係らず、SOFC10または系統電力網30のいずれかから電力を供給されて駆動できるようにしてもよい。
【0026】
燃焼器50は、SOFC10から排出された排出ガスを燃焼させることで、当該排出ガス中に残留している燃料成分を除去する。
【0027】
排熱回収循環系60は、燃焼器50からの燃焼ガス(排出ガス)の熱を回収する。排熱回収循環系60は、排熱回収のための熱媒体としての水(温水)が循環される排熱回収循環ライン(図示略)を有している。この排熱回収循環ラインには、排熱回収熱交換器、温水熱交換器、ヒータ、ラジエータ、ポンプ等の各種の反応器(いずれも図示略)が設けられている。排熱回収循環系60による排熱回収後のガスは、燃料電池システム1の外部に排気される。
【0028】
図2は、分流回路30の内部構成を示すブロック図である。
図2は、分流回路30とSOFC10、DC/AC変換部20及び系統電力網40との位置関係が
図1A、
図1Bと異なっているが、これは作図の便宜上の理由によるものである(
図1A、
図1Bと
図2は等価である)。
【0029】
分流回路30は、放電抵抗31と、リレースイッチ(切換部)32と、開閉制御部(切換部)33とを有している。放電抵抗31とリレースイッチ32は、アース34に接地されている。
【0030】
放電抵抗31は、SOFC10が発生した直流電流の一部を伝送路DLから引き抜く(分流して消費することで伝送路DLから逃がす)。放電抵抗31の抵抗値は、SOFC10の起動時(無負荷時)の開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)が、SOFC10のIV特性より算出される高電圧(例えば直流で750V〜950V程度)となることを回避できるような負荷電流値に基づいて算出及び設定される。
【0031】
リレースイッチ32は、開閉制御部33による開閉制御に従って、放電抵抗31(分流回路30)を伝送路DLへの接続状態と非接続状態に切り換える。すなわち、リレースイッチ32が閉状態のときに放電抵抗31と伝送路DLが接続状態となり、リレースイッチ32が開状態のときに放電抵抗31と伝送路DLが非接続状態となる(
図2は後者の場合を描いている)。
【0032】
開閉制御部33は、リレースイッチ32の開閉制御を実行する。
【0033】
開閉制御部33は、SOFC10の起動時までに(遅くてもSOFC10に燃料ガスと酸化剤ガスを供給開始する前に)、リレースイッチ32を閉状態として、放電抵抗31を伝送路DLへの接続状態とする。
【0034】
あるいは、開閉制御部33は、SOFC10の起動時のOCVが所定の閾値電圧に到達したときに、リレースイッチ32を開状態から閉状態に切り換えて、放電抵抗31を伝送路DLへの非接続状態から接続状態に切り換えてもよい。「所定の閾値電圧」は、SOFC10のIV特性より算出される高電圧よりも低い値(例えば600V)に設定される。
【0035】
開閉制御部33は、DC/AC変換部20に流れ込む直流電流が所定の閾値電流に到達したときに、リレースイッチ32を閉状態から開状態に切り換えて、放電抵抗31を伝送路DLへの接続状態から非接続状態に切り換える。ここで、「所定の閾値電流」は、放電抵抗31が伝送路DLから引き抜く直流電流の値に設定することができる。すなわち、開閉制御部33は、DC/AC変換部20に流れ込む直流電流と放電抵抗31が伝送路DLから引き抜く直流電流が同一となったときに、リレースイッチ32を閉状態から開状態に切り換えて、放電抵抗31を伝送路DLへの接続状態から非接続状態に切り換える。「所定の閾値電流」は、例えば、定格運転時の出力電流に対して10%の値に設定することができる。
【0036】
図3のタイミングチャート及び
図4のフローチャートを参照して、燃料電池システム1の起動時から定格運転開始までの動作について説明する。
図3のタイミングチャートにおいて、実線はSOFC10に掛かる電圧を示し、破線は分流回路30を省略した場合にSOFC10に掛かる電圧を示し、一点鎖線は放電抵抗31に流れる電流を示し、二点鎖線は発電負荷(例えば各種の補機)に流れる電流を示している。
【0037】
ステップST1では、SOFC10の起動前(SOFC10に燃料ガスと酸化剤ガスを供給開始する前)の段階で、開閉制御部33がリレースイッチ32を閉状態として、放電抵抗31を伝送路DLへの接続状態とする。
【0038】
ステップST2では、燃料ガスと酸化剤ガスをSOFC10に送り込むための空気ブロア(図示略)がオンされる。ステップST3では、燃料ガスと酸化剤ガスを加熱するための空気加熱機構(図示略)がオンされる。ステップST4では、SOFC10の温度が所定値以上であるか否かが判定される。SOFC10の温度が所定値以上であれば(ステップST4:Yes)、ステップST5に進む。SOFC10の温度が所定値未満であれば(ステップST4:No)、SOFC10の温度が所定値以上になるのを待つ。
【0039】
ステップST5では、SOFC10への燃料ガスと酸化剤ガスの供給が開始され、SOFC10のOCVが立ち上がり始める(
図3参照)。この時点で既に、リレースイッチ32が閉状態であり、放電抵抗31(分流回路30)と伝送路DLが接続状態となっている。このため、放電抵抗31を利用して、SOFC10が発電した直流電流の一部が伝送路DLから引き抜かれる(
図3の一点鎖線を参照)。その結果、SOFC10のOCVを、分流回路30を省略した場合よりも抑制することができる(
図3の実線と破線を参照)。
【0040】
ステップST6では、SOFC10のOCVが所定の閾値電圧以上であるか否かが判定される。SOFC10のOCVが所定の閾値電圧以上であれば(ステップST6:Yes)、ステップST7に進む。SOFC10のOCVが所定の閾値電圧未満であれば(ステップST6:No)、SOFC10のOCVが所定の閾値電圧以上になるのを待つ。
【0041】
ステップST7では、SOFC10への燃料ガスと酸化剤ガスの供給量が所定値以上であるか否かが判定される。SOFC10への燃料ガスと酸化剤ガスの供給量が所定値以上であれば(ステップST7:Yes)、ステップST8に進む。SOFC10への燃料ガスと酸化剤ガスの供給量が所定値未満であれば(ステップST7:No)、SOFC10への燃料ガスと酸化剤ガスの供給量が所定値以上となるのを待つ。
【0042】
ステップST8では、SOFC10の発電電力が発電負荷(例えば各種の補機)に投入開始される。これにより、発電負荷に流れる電流が上昇を開始する(
図3の二点鎖線を参照)。この時点では、リレースイッチ32が閉状態であり、放電抵抗31が、SOFC10が発電した直流電流の一部を伝送路DLから引き抜いている(
図3中の一点鎖線と二点鎖線が時間的に重なっている)。
【0043】
ステップST9では、DC/AC変換部20に流れ込む直流電流が所定の閾値電流以上であるか否か(あるいはDC/AC変換部20に流れ込む直流電流と放電抵抗31が伝送路DLから引き抜く直流電流が同一であるか否か)が判定される。DC/AC変換部20に流れ込む直流電流が所定の閾値電流以上であれば(ステップST9:Yes)、ステップST10に進む。DC/AC変換部20に流れ込む直流電流が所定の閾値電流未満であれば(ステップST9:No)、DC/AC変換部20に流れ込む直流電流が所定の閾値電流以上となるのを待つ。
【0044】
ステップST10では、開閉制御部33が、リレースイッチ32を閉状態から開状態に切り換えて、放電抵抗31(分流回路30)を伝送路DLへの接続状態から非接続状態に切り換える。この時点では、SOFC10の発電電力が発電負荷に投入されているので、SOFC10の電圧が不用意に高くなりすぎることはなく、定格電圧に向かって徐々に収束していく。
【0045】
ステップST11では、SOFC10の発電電力が定格最大電力に収束した定常運転であるか否かが判定される。定常運転であれば(ステップST11:Yes)、処理を終了し、定常運転でなければ(ステップST11:No)、定常運転となるのを待つ。
【0046】
図3のタイミングチャートに示すように、第1実施形態では、SOFC10の起動前の段階で、開閉制御部33がリレースイッチ32を閉状態として、放電抵抗31を伝送路DLへの接続状態とする。このため、SOFC10の起動と同時に、放電抵抗31が、SOFC10が発電した直流電流の一部を伝送路DLから引き抜き始める(分流して消費することで伝送路DLから逃がし始める)(
図3の一点鎖線を参照)。これにより、SOFC10のOCVを、分流回路30を省略した場合よりも抑制することができる(
図3の実線と破線を参照)。
【0047】
≪第2実施形態≫
図5は、第2実施形態の分流回路30’の内部構成を示すブロック図である。第2実施形態の分流回路30’は、第1実施形態の分流回路30の構成において、切換部としてのリレースイッチ32及び開閉制御部33を省略して、その代わりにツェナーダイオード(定電圧ダイオード)35を設けたものである。
【0048】
ツェナーダイオード35は、SOFC10のOCVが所定の閾値電圧未満であるときは、放電抵抗31(分流回路30’)を伝送路DLへの非接続状態とし、SOFC10のOCVが所定の閾値電圧以上であるときは、放電抵抗31(分流回路30’)を伝送路DLへの接続状態とするような素子特性を有している。「所定の閾値電圧」は、ツェナーダイオード35のアバランシェ降伏電圧と同一の値か、それより若干量だけ小さい値に設定されている。
【0049】
図6のタイミングチャート及び
図7のフローチャートを参照して、第2実施形態の燃料電池システム1の起動時から定格運転開始までの動作について説明する。
図6のタイミングチャートにおいて、実線はSOFC10に掛かる電圧を示し、破線は分流回路30’を省略した場合にSOFC10に掛かる電圧を示し、一点鎖線は放電抵抗31に流れる電流を示し、二点鎖線は発電負荷(例えば各種の補機)に流れる電流を示している。
【0050】
第2実施形態の
図7のフローチャートは、第1実施形態の
図4のフローチャートと基本的に同一であるが、以下の点において相違している。
(1)SOFC10の起動前の段階でリレースイッチ32を閉状態として放電抵抗31を伝送路DLへの接続状態とするステップST1が省略されている。つまり、SOFC10の起動時には、リレースイッチ32が開状態であり放電抵抗31が伝送路DLへの非接続状態である。
(2)SOFC10の起動時のOCVが所定の閾値電圧以上であるとき(ステップST6:Yes)、ステップST6’において、ツェナーダイオード35の素子特性により、放電抵抗31(分流回路30’)が伝送路DLへの非接続状態から接続状態に切り換えられる。
(3)DC/AC変換部20に流れ込む直流電流が所定の閾値電流以上であるとき(ステップST9:Yes)、ステップST10’において、ツェナーダイオード35の素子特性により、放電抵抗31(分流回路30’)が伝送路DLへの接続状態から非接続状態に切り換えられる。
【0051】
図6のタイミングチャートに示すように、第2実施形態では、SOFC10の起動時のOCVが所定の閾値電圧に到達したときに、ツェナーダイオード35がアバランシェ降伏を起こすことで、放電抵抗31(分流回路30’)が伝送路DLへの非接続状態から接続状態に切り換えられる。その結果、放電抵抗31が、SOFC10が発電した直流電流の一部を伝送路DLから引き抜く(分流して消費することで伝送路DLから逃がす)(
図6の一点鎖線を参照)。これにより、SOFC10のOCVを、分流回路30’を省略した場合よりも抑制することができる(
図6の実線と破線を参照)。
【0052】
≪第3実施形態≫
図8は、第3実施形態のSOFC10のセルスタック及び各セルの直並列切換機構の構成を示す概念図である。SOFC10は、第1セル10−1と第2セル10−2を積層して構成されたセルスタックを有している。
図8では、第1セル10−1と第2セル10−2を電源部として機能的に描いている。第1セル10−1と第2セル10−2がそれぞれ25kWを出力可能な場合、SOFC10が50kWを出力可能である。
【0053】
SOFC10は、直並列切換機構として、直流電流の伝送路DLから二股に分岐した後に再び合流する第1伝送路DL1及び第2伝送路DL2、並びに、第1伝送路DL1及び第2伝送路DL2の中間部同士を接続する第3伝送路DL3を有している。第1伝送路DL1に第1セル10−1が設けられ、第2伝送路DL2に第2セル10−2が設けられている。第3伝送路DL3は、第1伝送路DL1の第1セル10−1より上流側の部分と、第2伝送路DL2の第2セル10−2より下流側の部分とを接続している。第1伝送路DL1の第3伝送路DL3との接続部より上流側には第1スイッチSW1が設けられ、第2伝送路DL2の第3伝送路DL3との接続部より下流側には第2スイッチSW2が設けられている。第3伝送路DL3の中間部には第3スイッチSW3が設けられている。SOFC10には、第1スイッチSW1〜第3スイッチSW3の開閉状態を切り換える開閉制御部(図示略)が設けられている。
【0054】
図9Aに示すように、開閉制御部により、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2を閉状態とし、第3スイッチSW3を開状態としたとき、第1セル10−1と第2セル10−2が電気的に並列に接続される。
【0055】
図9Bに示すように、開閉制御部により、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2を開状態とし、第3スイッチSW3を閉状態としたとき、第1セル10−1と第2セル10−2が電気的に直列に接続される。
【0056】
図10のタイミングチャート及び
図11のフローチャートを参照して、第3実施形態の燃料電池システム1の起動時から定格運転開始までの動作について説明する。
図10のタイミングチャートにおいて、実線はSOFC10に掛かる電圧を示し、破線は第3実施形態の制御を行わなかった場合にSOFC10に掛かる電圧を示している。第3実施形態の制御は、第1、第2実施形態の制御と合わせて実行することもできるし、第1、第2実施形態の制御と独立して実行することもできる。前者の場合、第1、第2実施形態の分流回路30(放電抵抗31)による伝送路DLからの直流電流の引き抜き制御と、第3実施形態の直並列切換機構による第1セル10−1と第2セル10−2の直並列切換制御とが並行して実行される。
【0057】
ステップST1”では、開閉制御部(図示略)が、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2を閉状態とし、第3スイッチSW3を開状態とすることで、第1セル10−1と第2セル10−2が電気的に並列に接続される(
図9A参照)。
【0058】
ステップST2”では、燃料ガスと酸化剤ガスをSOFC10に送り込むための空気ブロア(図示略)がオンされる。ステップST3”では、燃料ガスと酸化剤ガスを加熱するための空気加熱機構(図示略)がオンされる。ステップST4”では、SOFC10の温度が所定値以上であるか否かが判定される。SOFC10の温度が所定値以上であれば(ステップST4”:Yes)、ステップST5”に進む。SOFC10の温度が所定値未満であれば(ステップST4”:No)、SOFC10の温度が所定値以上になるのを待つ。
【0059】
ステップST5”では、SOFC10への燃料ガスと酸化剤ガスの供給が開始され、SOFC10のOCVが立ち上がり始める(
図10参照)。このとき、第1セル10−1と第2セル10−2が電気的に並列に接続されているので、SOFC10のOCVを、本実施形態の制御を行わなかった場合よりも抑制することができる(
図10の実線と破線を参照)。
【0060】
ステップST6”では、SOFC10のOCVが第1の閾値電圧以上であるか否かが判定される。SOFC10のOCVが第1の閾値電圧以上であれば(ステップST6”:Yes)、ステップST7”に進む。SOFC10のOCVが第1の閾値電圧未満であれば(ステップST6”:No)、SOFC10のOCVが第1の閾値電圧以上となるのを待つ。「第1の閾値電圧」は、例えば400Vに設定することができる。
【0061】
ステップST7”では、SOFC10が発電した直流電流の一部を、DC/AC変換部20と放電抵抗31の少なくとも一方により引き抜く(小負荷引き抜き)。これにより、SOFC10のOCVが第1の閾値電圧から徐々に下がり始める(
図10参照)。
【0062】
ステップST8”では、SOFC10のOCVが第1の閾値電圧より低い第2の閾値電圧以下であるか否かが判定される。SOFC10のOCVが第2の閾値電圧以下であれば(ステップST8”:Yes)、ステップST9”に進む。SOFC10のOCVが第2の閾値電圧より大きければ(ステップST8”:No)、SOFC10のOCVが第2の閾値電圧以下となるのを待つ。「第2の閾値電圧」は、例えば300Vに設定することができる。
【0063】
ステップST9”では、開閉制御部(図示略)が、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2を開状態とし、第3スイッチSW3を閉状態とすることで、第1セル10−1と第2セル10−2が電気的に直列に接続される(
図9B参照)。これにより、SOFC10のOCVが、高電圧低電流の低損失運転を可能にするべく上昇していく(
図10参照)。
【0064】
ステップST10”では、SOFC10の発電電力が発電負荷(例えば各種の補機)に投入開始される。
【0065】
ステップST11”では、SOFC10の発電電力が定格最大電力に収束した定常運転であるか否かが判定される。定常運転であれば(ステップST11”:Yes)、処理を終了し、定常運転でなければ(ステップST11”:No)、定常運転となるのを待つ。
【0066】
≪第4実施形態≫
図12は、第4実施形態のSOFC10のセルスタック及び各セルの直並列切換機構の構成を示す概念図である。この第4実施形態では、第1伝送路DL1〜第3伝送路DL3を跨ぐようにして、終端部コンデンサECを設けている。この終端部コンデンサECにより、直並列切換のために第1スイッチSW1〜第3スイッチSW3を開閉操作したときのサージ電圧を抑制することができる。
【0067】
以上説明した第1実施形態〜第4実施形態の燃料電池システム1によれば、SOFC10の高い発電効率を維持しつつ、SOFC10からの直流電流の伝送路DLに分流回路30を設けるだけ、及び/又は、SOFC10の第1セル10−1と第2セル10−2の直並列切替機構を設けるだけの簡単な構成かつ低コストで、SOFC10の起動時のOCVを抑制して安定的な運転を実現することができる。
【0068】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている構成要素の大きさや形状、機能などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0069】
上記第1、第2実施形態では、放電抵抗31を伝送路DLへの接続状態と非接続状態に切り換える「切換部」として、リレースイッチ32又はツェナーダイオード35を用いた場合を例示して説明したが、「切換部」の構成はこれらに限定されることはない。例えば、「切換部」として、マグネティックコンタクタや自己消弧型半導体素子などを用いてもよいし、これらの複数を組み合わせて使用してもよい(例えば上流側にリレースイッチを配置して下流側にツェナーダイオードを配置してもよい)。すなわち、放電抵抗31を伝送路DLへの接続状態と非接続状態に切り換える機能を有する限りにおいて、「切換部」の構成には自由度がある。
【0070】
上記第3、第4実施形態では、SOFC10が第1セル10−1と第2セル10−2を積層したセルスタックを有する場合を例示して説明したが、SOFC10のセルスタックを構成するセルの積層数はこれに限定されず、3つ以上のセルを積層したセルスタックとしてもよい。
【0071】
上記第1〜第4実施形態では、SOFC10と排熱回収循環系60の間に燃焼器50を設けているが、この燃焼器50を省略して、SOFC10から排出された排出ガスを直接的に排熱回収循環系60に導いてもよい。
【課題】高い発電効率を維持しつつ、簡単な構成かつ低コストで起動時の開回路電圧を抑制して安定的な運転を実現することができる燃料電池システム及び固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】分流回路(30)は、固体酸化物形燃料電池(10)からDC/AC変換部(20)への直流電流の伝送路に接続可能である。分流回路(30)は、固体酸化物形燃料電池(10)が発電した直流電流の一部を引き抜く放電抵抗(31)と、この放電抵抗(31)を伝送路への接続状態と非接続状態に切り換える切換部(32、33、35)とを有する。