(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
いわゆるヘッドスペース法を用いたオートサンプラでは、分析対象となる試料が予め封入された試料容器が加熱されることにより、試料容器内に試料ガスが生成され、当該試料ガスが採取されて分析部に導入される。この種のオートサンプラでは、例えば複数の試料容器が試料容器保持部により保持され、各試料容器が加熱部に順次送り出されて加熱される(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【0003】
試料容器は、一定の搬送位置から加熱部に送り出される。加熱部には温度センサが備えられており、当該温度センサを用いて加熱部が一定の温度(例えば225℃程度)に制御される。これにより、試料容器内の液体又は固体の試料が気化し、試料容器内の上部空間(ヘッドスペース)が試料ガスで満たされた状態となる。この状態で、試料容器内にニードルを挿入することにより、当該ニードルを介して試料ガスを採取することができる。
【0004】
加熱部で加熱されて試料ガスが採取された後の試料容器は、元の搬送位置に送り返される。元の搬送位置に送り返された試料容器は、その位置で所定の冷却時間が経過するまで保持され、その後に搬送位置の試料容器が別の試料容器に切り替えられる。このような動作を繰り返し行うことにより、複数の試料容器を加熱部に順次送り出して、各試料容器から分析部に試料ガスを導入することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来のオートサンプラでは、加熱部で加熱されて試料ガスが採取された後の試料容器が、搬送位置で所定の冷却時間が経過するまで保持されるため、その後に搬送位置の試料容器が切り替えられた場合に、作業者が試料容器に触れて火傷するのを防止することができる。しかしながら、上記冷却時間が経過するまでは、次の試料容器を搬送位置から加熱部に送り出して分析を行うことができないため、上記冷却時間は可能な限り短いことが好ましい。
【0007】
上記冷却時間は、例えば加熱部に備えられた温度センサを用いて設定される。具体的には、室温を所定温度と想定し、温度センサにより検知される加熱部の温度に基づいて、試料容器が加熱部から搬送位置に送り返された後に所定の目標温度(例えば65℃)に到達するまでの時間が算出される。
【0008】
上記のような冷却時間の算出は、室温を実際よりも高い温度(例えば40℃)に想定して行われる。これにより、算出された冷却時間が不十分になるのを防止することができる。しかしながら、実際の室温が想定された温度よりも低いため、算出された冷却時間が経過するよりも前に試料容器が目標温度に到達し、冷却時間が必要以上に長くなるという問題がある。このような問題は、実際の室温と想定された室温との差が大きい場合に、特に顕著となる。
【0009】
一方で、試料容器の温度を直接検知すれば、上記のような冷却時間を算出することなく、試料容器が目標温度まで冷却されたことを検知することが可能である。しかしながら、試料容器の温度を直接検知するような温度センサは、通常のオートサンプラには備えられていないため、温度センサを別途設ける必要がありコストがかかる。また、試料容器は移動するため、温度センサを試料容器に直接接触させて温度を検知するような機構は複雑となる。さらに、そのような温度センサを仮に設けたとしても、試料容器の温度を精度よく検知することは難しい。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、冷却時間が必要以上に長くなるのを防止することができるオートサンプラ及びこれを備えた分析装置を提供することを目的とする。また、本発明は、簡単な構成を用いて低コストで冷却時間を算出することができるオートサンプラ及びこれを備えた分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るオートサンプラは、試料容器保持部と、加熱部と、試料ガス採取部と、搬送機構と、切替機構と、第1温度センサと、第2温度センサと、冷却時間算出処理部とを備える。前記試料容器保持部は、試料が収容された試料容器を複数保持する。前記加熱部は、前記試料容器保持部から送り出される試料容器を加熱する。前記試料ガス採取部は、前記加熱部において加熱されることにより試料容器内に生成された試料ガスを、当該試料容器内から採取する。前記搬送機構は、前記試料容器保持部に保持されている試料容器を所定の搬送位置から前記加熱部に送り出すとともに、前記試料ガス採取部により試料ガスが採取された後の前記試料容器を前記搬送位置に送り返す。前記切替機構は、前記搬送機構により送り返された試料容器を所定の冷却時間が経過した後に前記搬送位置から退避させて、前記試料容器保持部により保持されている別の試料容器を前記搬送位置に移動させる。前記第1温度センサは、前記加熱部の温度を検知する。第2温度センサは、室温を検知する。前記冷却時間算出処理部は、前記第1温度センサにより検知される前記加熱部の温度、及び、前記第2温度センサにより検知される室温に基づいて、前記冷却時間を算出する。
【0012】
このような構成によれば、加熱部の温度及び実際の室温に基づいて、搬送位置における試料容器の冷却時間が算出される。したがって、室温を所定温度に想定して冷却時間を算出するような構成とは異なり、算出された冷却時間が経過するよりも前に試料容器が目標温度に到達するのを防止することができる。これにより、冷却時間が必要以上に長くなるのを防止することができる。
【0013】
また、加熱部の温度を検知する第1温度センサ、及び、室温を検知する第2温度センサを用いて、冷却時間を算出することができるため、温度センサを試料容器に直接接触させて温度を検知するような複雑な機構を設ける必要がない。さらに、このような第1温度センサ及び第2温度センサは、オートサンプラに備えられているのが一般的であるため、温度センサを別途設ける必要がない。したがって、簡単な構成を用いて低コストで冷却時間を算出することができる。
【0014】
前記オートサンプラは、室温が予め定められた基準温度である場合の前記加熱部の温度と前記冷却時間との関係を基準データとして記憶する基準データ記憶部をさらに備えていてもよい。この場合、前記冷却時間算出処理部は、前記第1温度センサにより検知される前記加熱部の温度、前記第2温度センサにより検知される室温と前記基準温度との差、及び、前記基準データに基づいて、前記冷却時間を算出してもよい。
【0015】
このような構成によれば、加熱部の温度及び基準データだけでなく、実際の室温と基準温度との差も用いることにより、冷却時間をより精度よく算出することができる。したがって、冷却時間が必要以上に長くなるのを効果的に防止することができる。
【0016】
本発明に係る分析装置は、前記オートサンプラと、前記オートサンプラにより試料容器内から採取された試料ガスを分析する分析部とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、算出された冷却時間が経過するよりも前に試料容器が目標温度に到達するのを防止することができるため、冷却時間が必要以上に長くなるのを防止することができる。また、本発明によれば、温度センサを試料容器に直接接触させて温度を検知するような複雑な機構を設ける必要がないため、簡単な構成を用いて低コストで冷却時間を算出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るオートサンプラ1を備えた分析装置の構成例を示す概略図であり、オートサンプラ1の構成を断面図で示している。この分析装置は、例えばカラム(図示せず)に試料ガスを導入することにより分析を行うガスクロマトグラフであり、オートサンプラ1及び分析部2を備えている。
【0020】
オートサンプラ1には、試料容器保持部11、加熱部12及び試料ガス採取部13などが備えられている。分析対象となる固体又は液体の試料は、例えばバイアル瓶からなる試料容器3に収容されており、複数の試料容器3が試料容器保持部11により保持される。試料容器保持部11は、例えば上下方向に延びる回転軸111を中心に回転可能なサンプルトレイにより構成されている。
【0021】
試料容器保持部11には、回転軸111を中心として、周方向に一定の間隔で複数の収容部112が形成されている。各収容部112は、上下方向に延びる開口により構成されており、各収容部112に対して上方から試料容器3が収容される。なお、
図1では、複数の収容部112のうちの2つが見えているが、実際には3つ以上の収容部112が周方向に並べて形成されている。
【0022】
回転軸111にはモータ14が取り付けられており、当該モータ14を駆動させることにより、試料容器保持部11を回転させて試料容器3を移動させることができる。試料容器3は、所定の搬送位置Pから加熱部12に送り出される。すなわち、試料容器保持部11を回転させて、任意の収容部112を搬送位置Pに移動させることにより、当該収容部112に収容されている試料容器3を搬送位置Pから送り出すことができる。
【0023】
試料容器保持部11における各収容部112の底面は開放されており、試料容器保持部11の下方に対向する底面板15により各収容部112の底面が構成されている。底面板15における搬送位置Pに対応する部分は、水平方向にスライド可能な開閉部151を構成している。当該開閉部151をスライドさせて搬送位置Pにおける収容部112の底面を開放することにより、当該収容部112内の試料容器3を下方に送り出すことができる。
【0024】
加熱部12は、試料容器保持部11の下方に設けられている。加熱部12には、オーブン121と、当該オーブン121内に設けられたターンテーブル122とが備えられている。オーブン121は、その壁面に断熱材を有する箱状の部材であり、その内部にヒータ(図示せず)が備えられている。
【0025】
オーブン121の上面における搬送位置Pに対向する部分には、搬送位置Pから下方に送り出される試料容器3を通過させてオーブン121内に導くための開口123が形成されている。当該開口123は、水平方向にスライド可能な開閉部124により覆われている。搬送位置Pからオーブン121内に試料容器3を送り込む際、及び、オーブン121内から搬送位置Pに試料容器3を送り返す際には、開閉部124がスライドすることにより開口123が開放される。
【0026】
ターンテーブル122は、例えば上下方向に延びる回転軸125を中心に回転可能に保持されている。ターンテーブル122には、回転軸125を中心として、周方向に一定の間隔で複数の収容部126が形成されている。各収容部126は開口により構成されており、
図1に破線で示すように、上下方向に沿って試料容器3を挿通した状態で保持することができる。回転軸125にはモータ16が取り付けられており、当該モータ16を駆動させることにより、ターンテーブル122を回転させてオーブン121内で試料容器3を移動させることができる。
【0027】
ターンテーブル122の下方には、搬送位置Pと加熱部12との間で試料容器3を搬送するための搬送機構17が設けられている。搬送機構17には、例えばロッド171及びモータ172が備えられている。ロッド171は、搬送位置Pの下方において上下方向に延びるように配置されており、モータ172の駆動により上下方向に昇降可能となっている。
【0028】
ターンテーブル122における各収容部126の下方には、搬送機構17のロッド171を挿通させるための挿通孔127が形成されている。したがって、任意の収容部126を搬送位置Pの下方に配置した状態で、当該収容部126に対応する挿通孔127にロッド171を挿通させることにより、搬送位置Pにある試料容器3をロッド171の先端で支持することができる。この状態でモータ172を駆動してロッド171を下降させれば、試料容器保持部11に保持されている試料容器3を搬送位置Pから加熱部12に送り出すことができる。
【0029】
試料容器保持部11から送り出された試料容器3は、加熱部12において加熱される。これにより、試料容器3内の試料が気化し、試料容器3内の上部空間(ヘッドスペース)が試料ガスで満たされた状態となる。この試料容器3内の試料ガスは、試料ガス採取部13により採取される。試料ガス採取部13は、オーブン121の上面に設けられており、ターンテーブル122の下方には、試料容器3を試料ガス採取部13に接続するための接続機構18が設けられている。
【0030】
接続機構18には、例えばロッド181及びモータ182が備えられている。ロッド181は、試料ガス採取部13の下方において上下方向に延びるように配置されており、モータ182の駆動により上下方向に昇降可能となっている。内部に試料ガスが生成された試料容器3は、ターンテーブル122が回転されることにより試料ガス採取部13の下方へと移動する。この状態で、収容部126の下方に形成された挿通孔127を介して接続機構18のロッド181を上昇させることにより、当該収容部126内の試料容器3をロッド181で持ち上げて試料ガス採取部13に接続することができる。
【0031】
試料ガス採取部13には、例えばニードル(図示せず)が備えられており、試料容器3が試料ガス採取部13に接続されることにより、試料容器3内にニードルが挿入される。ニードルを介して試料容器3内から採取された試料ガスは、分析部2に導入され、当該分析部2に備えられたカラム(図示せず)を通過する過程で分離される。このようにして分離された試料成分を検出器(図示せず)で検出することにより、採取された試料ガスの分析が行われる。
【0032】
加熱部12で加熱されて試料ガスが採取された後の試料容器3は、ターンテーブル122が回転されることにより搬送位置Pの下方へと移動する。この状態で、収容部126の下方に形成された挿通孔127を介して搬送機構17のロッド171を上昇させることにより、当該収容部126内の試料容器3をロッド171で持ち上げて搬送位置Pに送り返すことができる。
【0033】
搬送位置Pに送り返された試料容器3は、その後、所定の冷却時間が経過するまで搬送位置Pで保持される。そして、冷却時間が経過した後、モータ14が駆動されることにより、試料容器保持部11が回転して試料容器3が搬送位置Pから退避する。このとき、試料容器保持部11により保持されている別の試料容器3が搬送位置Pに移動し、その後に当該搬送位置Pから加熱部12へと送り出される。ここで、モータ14は、試料ガスが採取された後の試料容器3を搬送位置Pから退避させて、別の試料容器3を搬送位置Pに移動させる切替機構を構成している。
【0034】
オートサンプラ1のハウジング19には、まだ十分に冷却されていない試料容器3に作業者が触れるのを防止するためのカバー191が設けられている。当該カバー191は、搬送位置Pの上方に設けられており、搬送位置Pに試料容器3がある間は、作業者が試料容器3に容易に触れることができないようになっている。したがって、搬送位置Pにおいて試料容器3を十分に冷却した後、モータ14を駆動させて試料容器3を搬送位置Pから退避させることにより、作業者が火傷するのを防止することができる。
【0035】
以上のような動作を繰り返し行うことにより、試料容器保持部11に保持されている複数の試料容器3を加熱部12に順次送り出して、各試料容器3から分析部2に試料ガスを導入することができる。
【0036】
図2は、
図1のオートサンプラ1の電気的構成を示すブロック図である。オートサンプラ1の動作は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む制御部20により制御される。制御部20は、CPUがプログラムを実行することにより、移動処理部21、加熱処理部22及び冷却時間算出処理部23などとして機能する。
【0037】
移動処理部21は、モータ14,16,17,18を駆動させることにより、試料容器3を移動させるための処理を行う。この移動処理部21の処理により、試料容器3を搬送位置Pから加熱部12に送り出し、加熱部12において試料容器3内に生成された試料ガスを試料ガス採取部13で採取させた後、搬送位置Pに送り返すことができる。また、当該試料容器3を搬送位置Pから退避させて、別の試料容器3を搬送位置Pに移動させることができる。
【0038】
加熱処理部22は、オーブン121内に設けられたヒータ128の駆動を制御する。オーブン121内には、当該オーブン121内の温度を検知するためのオーブンセンサ31が設けられている。分析中は、加熱処理部22が、オーブンセンサ31により検知されるオーブン121内の温度に基づいてヒータ128の駆動を制御することにより、オーブン121内が一定の温度(例えば225℃程度)に保たれる。オーブン121内の温度は、任意の値に設定することができる。オーブンセンサ31は、加熱部12の温度を検知する第1温度センサを構成している。
【0039】
冷却時間算出処理部23は、上記冷却時間、すなわち加熱部12から試料容器保持部11に送り返された試料容器3を搬送位置Pで保持する時間を算出する処理を行う。冷却時間算出処理部23は、オーブンセンサ31により検知されるオーブン121内の温度、及び、室温センサ32により検知される室温に基づいて、冷却時間を算出する。室温センサ32は、例えばハウジング19の外部などのように加熱部12から離れた位置に設けられており、ヒータ128の駆動により影響を受けないオートサンプラ1の周辺の室温を検知する第2温度センサを構成している。
【0040】
本実施形態では、オーブンセンサ31及び室温センサ32により検知される温度に加えて、基準データ記憶部40に記憶されている基準データも用いて、冷却時間が算出される。当該基準データは、例えば室温が予め定められた基準温度である場合のオーブン121内の温度と冷却時間との関係を表すデータであり、室温を上記基準温度に維持した状態で予め測定を行うことにより得ることができる。基準データ記憶部40は、例えばハードディスク又はRAM(Random Access Memory)などにより構成されている。
【0041】
図3は、基準データ記憶部40に記憶されている基準データの具体例を示す図である。この例では、室温を基準温度(例えば40℃)に維持した状態で、加熱部12から搬送位置Pに送り返された試料容器3が目標温度(例えば65℃)に到達するまでの時間と、オーブン121内の温度との関係が、予め測定により得られた基準データとして基準データ記憶部40に記憶されている。
【0042】
実際の室温が基準温度と同一であれば、オーブン121内の温度に基づいて、
図3に示す基準データから冷却時間をそのまま得ることができる。しかし、基準温度は、最悪の条件、すなわち室温として想定される上限値に設定されているため、実際の室温は基準温度よりも低い値となる。例えば室温が30℃であった場合には、室温が基準温度よりも10℃低いため、オーブン121内の温度が同一であったとしても、試料容器3が目標温度に到達するまでの時間が
図3の場合よりも短くなる。
【0043】
そこで、本実施形態では、オーブンセンサ31により検知されるオーブン121内の温度、室温センサ32により検知される室温と基準温度との差、及び、
図3に示す基準データに基づいて、冷却時間算出処理部23が冷却時間を算出するようになっている。具体的には、室温Cと基準温度Aとの差(A−C)を目標温度Bに加算することにより、換算された目標温度B´(=A−C+B)を算出し、目標温度B´から目標温度Bまで試料容器3を冷却するのに要する時間T1を基準データから取得する。そして、オーブン121内の温度と基準データとから得られる冷却時間T2に対して、上記時間T1を減算する演算を行うことにより、実際の室温Cにおける冷却時間T(=T2−T1)が算出される。
【0044】
例えば、上記のように室温Cが30℃であり、室温Cと基準温度Aとの差(A−C)が10℃である場合には、目標温度B(=65℃)から換算された目標温度B´の値が75℃となる。この換算された目標温度B´(=75℃)から、目標温度B(=65℃)まで試料容器3を冷却するのに要する時間T1を基準データから取得する。オーブン121内の温度が例えば200℃であれば、
図3に示すように、当該温度に基づいて基準データから得られる冷却時間T2に対して、上記時間T1を減算する演算を行うことにより、実際の室温Cにおける冷却時間T(=T2−T1)を算出することができる。
【0045】
このように、本実施形態では、オーブン121内の温度及び実際の室温Cに基づいて、搬送位置Pにおける試料容器3の冷却時間Tが算出される。したがって、室温を所定温度(例えば40℃)に想定して冷却時間Tを算出するような構成とは異なり、算出された冷却時間Tが経過するよりも前に試料容器3が目標温度Bに到達するのを防止することができる。これにより、冷却時間Tが必要以上に長くなるのを防止することができる。
【0046】
また、オーブンセンサ31及び室温センサ32を用いて、冷却時間Tを算出することができるため、温度センサを試料容器3に直接接触させて温度を検知するような複雑な機構を設ける必要がない。さらに、このようなオーブンセンサ31及び室温センサ32は、オートサンプラ1に備えられているのが一般的であるため、温度センサを別途設ける必要がない。したがって、簡単な構成を用いて低コストで冷却時間Tを算出することができる。
【0047】
特に、本実施形態では、オーブン121内の温度及び基準データだけでなく、実際の室温Cと基準温度Aとの差(A−C)も用いて、冷却時間算出処理部23が上述のような演算を行うことにより、冷却時間Tをより精度よく算出することができる。したがって、冷却時間Tが必要以上に長くなるのを効果的に防止することができる。
【0048】
以上の実施形態では、加熱部12が、試料容器保持部11の下方に設けられた構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、例えば試料容器保持部11の上方や側方などの他の位置に加熱部12が設けられていてもよい。
【0049】
また、試料容器保持部11から加熱部12に試料容器3が直接送り出されるような構成に限らず、搬送機構で試料容器3を一旦保持し、例えば水平方向に移動させた後、加熱部12に送り込むような構成であってもよい。この場合、搬送機構における所定の搬送位置から加熱部12に試料容器3が送り出され、試料ガス採取部13により試料ガスが採取された後の試料容器3が当該搬送位置に送り返されるような構成であってもよい。
【0050】
試料容器保持部11は、回転軸111を中心に回転することにより試料容器3を移動させるような構成に限らず、例えば試料容器3を水平方向にスライドさせるような構成など、他の任意の態様で試料容器3を移動させることができる。同様に、加熱部12において加熱された試料容器3は、ターンテーブル122の回転によって試料ガス採取部13側へと移動するような構成に限らず、例えば試料容器3を水平方向にスライドさせるような構成など、他の任意の態様で試料容器3を移動させることができる。
【0051】
試料ガス採取部13は、加熱部12のオーブン121に取り付けられた構成に限らず、加熱部12とは分離して設けられていてもよい。また、試料容器3が移動して試料ガス採取部13に接続され、当該試料容器3から試料ガスが採取されるような構成に限らず、例えば試料ガス採取部13のニードルが移動して試料容器3内に挿入され、当該試料容器3から試料ガスが採取されるような構成であってもよい。
【0052】
また、以上の実施形態では、分析装置がガスクロマトグラフである場合について説明したが、本発明に係るオートサンプラ1は、ガスクロマトグラフ以外の分析装置にも適用可能である。