特許第6187713号(P6187713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187713
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20170821BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20170821BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D113:00
   B62D119:00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-573415(P2016-573415)
(86)(22)【出願日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】JP2016053343
(87)【国際公開番号】WO2016125854
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2017年6月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-19922(P2015-19922)
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】椿 貴弘
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/119359(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/122997(WO,A1)
【文献】 特開平10−258756(JP,A)
【文献】 特開2012−096568(JP,A)
【文献】 特許第3845188(JP,B2)
【文献】 特開平11−286280(JP,A)
【文献】 特開平11−321686(JP,A)
【文献】 特開2013−237316(JP,A)
【文献】 特開2006−248419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 113/00
B62D 119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ電流指令値に基づいてモータを駆動して操舵系をアシスト制御すると共に、自動操舵制御と手動操舵制御を行う機能を有する電動パワーステアリング装置において、
手入力が無い状態でのハンドル慣性、トーションバー特性、モータ角度による力学的な関係式から推定されるトーションバートルクの時系列応答であるハンドル角を所定の演算周期毎に演算して操舵トルク演算値を求め、前記操舵トルク演算値と前記トーションバートルクのコラム角に対応する操舵トルク検出値との適合度合を所定の設定周期毎に判定し、
前記適合度合を、前記演算周期内の計測時間の経過、前記設定周期及び前記設定周期の開始時点の関係と、前記操舵トルク演算値及び前記操舵トルク検出値の差の絶対値の積算値とスレッショルドの関係とで行って、前記自動操舵制御中における手入力の有無を判定する機能を具備したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記計測時間の経過が前記設定周期以上で、かつ前記積算値が前記スレッショルド以上のときに手入力「有り」と判定するようになっている請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記手入力「有り」が判定されたときに、前記自動操舵制御を中止するようになっている請求項5に記載の電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動操舵制御機能(駐車支援モード、レーンキープモード等)及び手動操舵制御機能を有する電動パワーステアリング装置に関し、特にハンドル及びトーションバーの特性による力学的若しくは物理的な関係式に基づき、自動操舵制御中の運転者の手入力の有無を精度高く判定し、手入力が発生した場合には、安全に通常のアシスト制御(手動操舵制御)へシフトできるようにした電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリング機構にモータの回転力で操舵補助力(アシスト力)を付与する電動パワーステアリング装置は、モータの駆動力を減速機を介してギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に操舵補助力を付与するようになっている。かかる従来の電動パワーステアリング装置(EPS)は、操舵補助力のトルクを正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、操舵補助指令値(電流指令値)とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のデューティの調整で行っている。
【0003】
電動パワーステアリング装置の一般的な構成を図1に示して説明すると、ハンドル(ステアリングホイール)1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、コラム軸2にはトーションバーが介挿されており、トーションバーの捩れ角によりハンドル1の操舵角θを検出する舵角センサ14、操舵トルクThを検出するトルクセンサ10が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介してコラム軸2に連結されている。電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)30には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Velとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の操舵補助指令値の演算を行い、操舵補助指令値に補償等を施した電圧制御値Vrefによってモータ20に供給する電流を制御する。なお、車速VelはCAN(Controller Area Network)等から受信することも可能である。
【0004】
なお、舵角センサ14は必須のものではなく、配設されていなくても良く、また、モータ20に連結されたレゾルバ等の回転センサから操舵角を取得することも可能である。
【0005】
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40が接続されており、車速VelはCAN40から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能である。
【0006】
コントロールユニット30は主としてCPU(MPUやMCU等も含む)で構成されるが、そのCPU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと図2のようになる。
【0007】
図2を参照してコントロールユニット30を説明すると、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTh及び車速センサ12で検出された(若しくはCAN40からの)車速Velは、電流指令値Iref1を演算するトルク制御部31に入力される。トルク制御部31は、入力された操舵トルクTh及び車速Velに基づいてアシストマップ等を用いて、モータ20に供給する電流の制御目標値である電流指令値Iref1を演算する。電流指令値Iref1は加算部32Aを経て電流制限部33に入力され、最大電流を制限された電流指令値Irefmが減算部32Bにフィードバック入力され、モータ電流値Imとの偏差I(=Irefm−Im)が演算され、その偏差Iが操舵動作の特性改善のためのPI制御等の電流制御部35に入力される。電流制御部35で特性改善された電圧制御値VrefがPWM制御部36に入力され、更にインバータ37を介してモータ20がPWM駆動される。モータ20の電流値Imはモータ電流検出器38で検出され、減算部32Bにフィードバックされる。インバータ37は、半導体スイッチング素子としてのFETのブリッジ回路で構成されている。
【0008】
モータ20にはレゾルバ等の回転センサ21が連結されており、回転センサ21からモータ回転角度θが出力される。
【0009】
また、加算部32Aには補償信号生成部34からの補償信号CMが加算されており、補償信号CMの加算によって操舵システム系の特性補償を行い、収れん性や慣性特性等を改善するようになっている。補償信号生成部34は、セルフアライニングトルク(SAT)343と慣性342を加算部344で加算し、その加算結果に更に収れん性341を加算部345で加算し、加算部345の加算結果を補償信号CMとしている。
【0010】
このような電動パワーステアリング装置において、近年駐車支援機能(パーキングアシスト)やレーンキープ機能などの自動操舵制御機能を搭載し、自動操舵制御と手動操舵制御とを切替える車両が出現して来ており、駐車支援機能を搭載した車両にあっては、カメラ(画像)や距離センサなどのデータを基に目標操舵角を設定し、目標操舵角に実操舵角を追従させる自動操舵制御が行われる。
【0011】
また、従来周知の自動操舵制御機能を有する電動パワーステアリング装置では、予め記憶した車両の移動距離と転舵角との関係に基づいてモータを制御することにより、バック駐車や縦列駐車を自動で行うようになっている。
【0012】
図3は従来の自動操舵制御機能を有する車両の制御系の構成例を示しており、少なくとも操舵トルクを入力して電流指令値Itrefを演算するトルク制御部110と、車両側のECUから目標操舵角等を入力して電流指令値Isrefを演算する自動操舵制御部120と、車両側のECUからの切替信号SWによって電流指令値Itref又はIsrefを切替えて電流指令値Irefとして出力する切替部130とを具備している。電流指令値Irefは電流制御/駆動部140に入力され、電流制御/駆動部140はPI制御等を施したPWM信号によりモータ20をPWM駆動する。
【0013】
このような自動操舵制御機能を有する車両において、従来自動操舵制御中に運転者がハンドルを操作し、その操舵トルクが予め設定した所定値を越えたと判断されると自動操舵制御が中止されるようになっている。
【0014】
しかしながら、操舵トルク検出手段の出力を所定値と比較するだけで判断を行うと、操舵トルク検出手段のノイズにより、或いはタイヤが小石を踏んだような場合や、モータによる自動操舵が行われた場合のハンドルの慣性トルクにより、操舵トルク検出手段の出力が一時的に所定値を越えることがあり、その度に自動操舵制御が中止されてしまう問題がある。このような不都合を回避するために所定値を高めに設定すると、自動操舵と手動操舵とが干渉しあって運転者に違和感を与えるだけでなく、自動操舵制御中に運転者がハンドルを操作しても自動操舵制御が直ちに中止されなくなる可能性がある。
【0015】
そこで、所定値以上の操舵トルクが所定時間以上に亘って検出されたときに、手動操舵が行われたと判断して自動操舵制御を中止することが考えられる。この場合、運転者が緩やかな手動操舵を行って操舵トルクが所定値を僅かに越えたときは、運転者に違和感を与えることなく所定時間が経過して自動操舵制御が中止される。しかしながら、運転者が急激な手動操舵を行って操舵トルクが所定値を大きく越えたときは、この状態が所定時間経過するまで自動操舵制御が中止されないため、ハンドルが重くなって運転者に違和感を与えることがある。
【0016】
かかる問題を解決する装置として、例えば特許第3845188号公報(特許文献1)が提案されている。特許文献1の装置では、運転者がハンドルに加える操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、移動軌跡設定手段により設定された移動軌跡に基づいてモータの駆動を制御すると共に、予め設定された所定値以上の操舵トルクが所定時間以上に亘って検出されたときに、移動軌跡に基づくモータ制御を中止するモータ制御手段とを備えており、所定値を複数種類設定し、各所定値に対応して所定時間を変更するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第3845188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献1の装置では、操舵トルクに対してスレッショルドを設け、操舵トルクがスレッショルドを超えるか否かで手入力への切替を行っており、操舵系の実際の力学的モデルに基づいていないので、精度高く手入力の検出若しくは判定ができないと共に、手入力から判定までの間に遅れが発生してしまう問題がある。
【0019】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、自動操舵制御機能を有する車両において、自動操舵制御中の手入力の判定(検出)を力学的な関係式に基づく正確で精度の高い手法で行い、運転者や同乗者が不快感を覚えないような操舵性能を有する電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、モータ電流指令値に基づいてモータを駆動して操舵系をアシスト制御すると共に、自動操舵制御と手動操舵制御を行う機能を有する電動パワーステアリング装置に関し、本発明の上記目的は、ハンドル及びトーションバーの特性による力学的な関係式に基づき、トーションバートルクの時系列応答を演算し、前記演算された操舵トルク演算値と前記トーションバートルクの検出値の適合度合を判定し、前記適合度合によって前記自動操舵制御中における手入力の有無を判定する機能を具備することにより達成される。
【0021】
本発明の上記目的は、前記トーションバートルクの時系列応答がハンドル角であり、前記トーションバートルクの検出値がコラム角であることにより、或いは前記ハンドル角が前記操舵トルク演算値に対応し、前記コラム角が操舵トルク検出値に対応することにより、或いは前記適合度合を、演算周期内の計測時間の経過、設定周期及び設定周期の開始時点の関係と、前記操舵トルク演算値及び前記操舵トルク検出値の差の積算値とスレッショルドの関係とで行うようになっていることにより、或いは前記計測時間の経過が前記設定周期以上で、かつ前記積算値が前記スレッショルド以上のときに手入力「有り」と判定するようになっていることにより、或いは前記手入力「有り」が判定されたときに、前記自動操舵制御を中止するようになっていることにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電動パワーステアリング装置によれば、ハンドル及びトーションバーの特性による力学的な関係式に基づき、トーションバートルクの時系列応答を演算し、演算結果の値とトーションバートルクの検出値の適合度合を判定し、適合度合によって自動操舵制御中における手入力を判定している。そのため、正確で精度の高い手入力の判定(検出)を行うことができ、運転者や同乗者に不快感を与えないような操舵性能を達成することができる。
【0023】
また、手入力の判定を、トーションバートルクの時系列応答の積算値に基づいて行っているので、ノイズにより、或いはタイヤが小石を踏んだような場合や、ハンドルの慣性トルクなどにより、検出値が一時的に大きくなった場合に直ぐに自動操舵制御を中止するような不具合が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】電動パワーステアリング装置の概要を示す構成図である。
図2】電動パワーステアリング装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
図3】自動操舵制御機能を有する車両の制御系の概略構成例を示すブロック図である。
図4】本発明の原理を説明するためのハンドル及びトーションバーの力学関係の図である。
図5】本発明の構成例を示すブロック図である。
図6】本発明の動作例を示すタイミングチャートである。
図7】本発明の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
駐車支援やレーンキープなどの自動操舵制御機能と、通常のアシスト制御である手動操舵制御機能とを具備する車両において、自動操舵制御中に運転者からの手入力が発生した場合には、安全かつ円滑に通常のアシスト制御へシフトする必要がある。また、駐車支援やレーンキープなどの自動操舵制御モードに入る際に、運転者の手入力の有無を確認する必要がある。
【0026】
そのため、本発明では、手入力の無い状態を想定した、ハンドル慣性とトーションバー特性、モータ角度(コラム角)による力学的若しくは物理的な関係式から推定されるトーションバートルクの時系列応答の操舵トルク演算値と、実際のトーションバートルクの時系列応答の検出値との適合度合を判定し、適合度合の判定結果に従って手入力の有無を判定する。適合度合の判定は、時間経過の計測と演算値及び検出値の差の積算(積分)とによって行われ、計測時間が所定時間以上経過し、かつ差の積算値が所定スレッショルド以上であるか否かで手入力の有無の判定を行い、手入力「有り」と判定したときに自動操舵制御を中止し、自動操舵制御から通常のアシスト制御へシフト(切替)させる。
【0027】
ここで、ハンドル角θ、トーションバー捩れ角Δθ、コラム角θの関係は図4に示され、ハンドル1の慣性をJ、トーションバーのバネ定数をk、トーションバーのダンパ定数をcとしたとき、手入力がない場合の一般的な力学の関係式は下記数1となる。
【0028】
【数1】
図4から、トーションバー捩れ角Δθはハンドル角θとコラム角θの差になるので、下記数2が成立する。
【0029】
【数2】
数1及び数2からハンドル角θを消去し、更に操舵トルク=kΔθ=y、コラム角θc=uとして、z変換を用いて式を整理する。z変換は種々あるが、例えば後退差分を適用すると下記数3となる。実際にはECU内部の演算で、検出したコラム角uに対する操舵トルクy、言い換えればコラム角θに対する操舵トルクを計算する。
【0030】
【数3】

本発明では、上記数3をECU内部で演算周期Cs毎に演算し、設定周期Ts毎に数3の演算結果y(演算による操舵トルク)と実際に検出した操舵トルクの適合度合をチェックし、手入力の有無を判定する。適合度合の指標は、例えば操舵トルク(検出値)と操舵トルク(演算値)の誤差の絶対値の積算値(積分値若しくは総和)で良い。適合度合のチェック結果が、設定したスレッショルド以上の場合に手入力「有り」と判定し、スレッショルド未満の場合に手入力「無し」と判定する。
【0031】
手入力「有り」が判定された場合には自動操舵制御を中止し、通常のアシスト制御(手動操舵制御)にシフト(切替)する。
【0032】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
図5は本発明の構成例を示しており、ハンドル角θ及びコラム角θを入力し、上記数1〜数3の演算による演算値と、手入力の有無を判定する手入力判定部100が設けられている。手入力判定部100が手入力「有り」を判定した場合、判定フラグMFを出力して自動操舵制御を中止し、切替部130を介してトルク制御部110からの電流指令値Itrefとし、通常のアシスト制御にシフトする。
【0034】
図6は、設定周期Ts毎に演算を行って比較判定を実施するタイミングを示しており、時点t1に手入力が開始され、その時点t1以降に操舵トルク(検出値)と操舵トルク(演算値)の差が大きくなっている。
【0035】
図7のフローチャートは本発明の動作例を示しており、先ず自動操舵制御中であるか否かを確認し(ステップS1)、自動操舵制御でない場合は終了となる。自動操舵制御である場合には先ず操舵トルクを検出し(ステップS2)、設定周期Tsの開始時点となっているか否かを判定する(ステップS3)。開始時点前であれば操舵トルクを演算し(ステップS6)、開始時点になった場合には前回の操舵トルク演算値を検出値にセットする(ステップS4)。
【0036】
その後、つまり上記ステップS4又はS6の後、操舵トルクと検出された操舵トルクの差(絶対値)を積算すると共に、時間の経過を計測し(ステップS5)、計測時間が設定周期Ts以上であるか否かを判定し(ステップS10)、計測時間が設定周期Ts以上である場合には、積算値が所定スレッショルド値S以上であるか否かを判定する(ステップS12)。積算値が所定スレッショルド値S以上である場合には、手入力の判定を「有り」と判定し(ステップS13)。積算値が所定スレッショルド値Sより小さい場合には、手入力の判定を「無し」と判定する(ステップS14)。
【0037】
手入力の判定を「有り」と判定した場合には、手入力「有り」の判定結果を示すフラグMFを出力すると共に(ステップS20)、切替部130によって自動操舵制御を中止すると共に、通常のアシスト制御に切替える(ステップS21)。その後、或いは上記ステップS12で手入力判定が「無し」と判定された場合には、計測時間と積算値をリセットして(ステップS30)、終了となる。
【0038】
また、上記ステップS10において、計測時間が設定周期Ts未満である場合には、手入力の判定は前回値を使用する(ステップS11)。
【0039】
なお、上述ではトーションバートルク(操舵トルク)の演算値とトーションバートルク(操舵トルク)の検出値の差の絶対値の積算値をスレッショルドと比較しているが、積分値であっても良い。また、上記絶対値に対し、2乗や、時間に感応したゲインを乗算した値の積算値であっても良い。
【0040】
また、コラム角は、コラム角を直接検出する角度センサでも良いし、モータ角度と減速比の関係から求めた角度でも良い。トーションバー捩れ角は、捩れ角を直接検出するトーションバートルクセンサでも良いし、ハンドル角とコラム角の偏差から求めたものでも良い。
【0041】
更に、手入力が無い状態のコラム角と捩れ角の力学的関係式に限らず、コラム角とハンドル角、トーションバー捩れ角とハンドル角の関係式に基づいた時系列応答(演算値若しくは推定値)を用いても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 ハンドル(ステアリングホイール)
2 コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)
10 トルクセンサ
12 車速センサ
13 バッテリ
20 モータ
21 モータ駆動部
100 手入力判定部
110 トルク系制御部
120 自動操舵制御部
130 切替部
140 電流制御/駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7