(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷蔵保存には専用の保冷庫が必要でありコストがかかること、ハロゲン基を有するエポキシ化合物は、ハロゲン由来の耐光性の悪化を招くことから、改善が求められていた。さらには、温度変化に対しても安定して保存可能であることが求められていた。
上記従来における問題に鑑み、本発明は、エピスルフィド化合物等の重合性化合物を安定して安価で保管し、さらには温度変化に対しても安定して保管可能であり、かつ耐光性が良い光学材料が得られる光学材料用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような状況に鑑み鋭意研究を重ねた結果、以下の本発明により上記課題を解決することができることを見出した。即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 下記式(1)で表されるエピスルフィド化合物である。
【化1】
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を示す。)
<2> 上記<1>に記載のエピスルフィド化合物と該化合物以外の重合性化合物とを含む光学材料用組成物である。
<3> 前記エピスルフィド化合物の含有量が0.001〜5.0質量%である、上記<2>に記載の光学材料用組成物である。
<4> 前記重合性化合物を95.0〜99.999質量%含む上記<2>または<3>に記載の光学材料用組成物である。
<5> 前記重合性化合物として下記式(2)で表される化合物を含む上記<2>〜<4>のいずれかに記載の光学材料用組成物である。
【化2】
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を示す。)
<6> 前記式(2)で表される化合物を40〜99.999質量%含む上記<5>に記載の光学材料用組成物である。
<7> 上記<2>〜<6>のいずれかに記載の光学材料用組成物と、該光学材料用組成物の総量に対して0.0001質量%〜10質量%の重合触媒とを含む重合硬化性組成物である。
<8> 上記<2>〜<6>のいずれかに記載の光学材料用組成物または上記<7>に記載の重合硬化性組成物を硬化した光学材料である。
<9> 上記<8>に記載の光学材料を含む光学レンズである。
<10> 上記<2>〜<6>のいずれかに記載の光学材料用組成物の総量に対して、重合触媒を0.0001質量%〜10質量%添加し、重合硬化する工程を含む、光学材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、高屈折率を有する光学材料を製造する際、エピスルフィド化合物等の重合性化合物を安定して安価で保管し、さらには温度変化に対しても安定して保管可能であり、かつ耐光性が良い光学材料が得られる光学材料用組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、前記式(1)で表される化合物、及び前記式(1)で表される化合物と前記式(1)で表される化合物以外の重合性化合物とを含む光学材料用組成物である。前記式(1)で表される化合物以外の重合性化合物としては、エピスルフィド化合物、ビニル化合物、メタクリル化合物、アクリル化合物、アリル化合物が挙げられるが、好ましくはエピスルフィド化合物であり、より好ましくは前記式(2)で表される化合物である。
本発明の光学材料用組成物中の前記式(1)で表される化合物の割合は、0.001〜5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005〜3.0質量%、特に好ましくは0.01〜1.0質量%である。前記式(1)で表される化合物が0.001質量%を下回ると十分な効果が得られない場合があり、5.0質量%を超えると耐熱性が低下する場合がある。
また、本発明の光学材料用組成物中の重合性化合物の割合は、95.0〜99.999質量%であることが好ましく、より好ましくは97.0〜99.995質量%であり、特に好ましくは99.0〜99.99質量%である。重合性化合物として前記式(2)で表される化合物を用いる場合、光学材料用組成物中の前記式(2)で表される化合物の割合は、40〜99.999質量%であることが好ましく、より好ましくは50〜99.995質量%であり、特に好ましくは60〜99.99質量%である。
以下、前記式(1)で表される化合物、および前記式(2)で表される化合物について詳細に説明する。
【0008】
本発明は、前記式(1)で表される化合物であり、また式(1)で表される化合物は本発明の光学材料用組成物に使用される。式(1)中、好ましくは、mは0〜2の整数、nは0または1の整数であり、より好ましくはmが0でnが1、またはnが0の化合物であり、最も好ましくはnが0の化合物である。式(1)で表される化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
【0009】
以下、本発明の式(1)で表される化合物の製造方法について説明するが、製造方法は特に限定されない。
本発明の式(1)で表される化合物の製造方法としては、公知の手法で得られる式(2)で表される化合物に対し、酢酸を反応させることで得ることができる。以下、式(2)で表される化合物から式(1)で表される化合物の製造方法について記載する。
式(2)で表される化合物と酢酸、もしくは無水酢酸を反応させて式(1)で表される化合物を得る。好ましくは酢酸である。酢酸もしくは無水酢酸は、式(2)で表される化合物と同モル数、すなわち理論量を使用するが、反応速度、純度を重視するのであれば理論量〜理論量の20倍モルを使用する。好ましくは理論量の1.5倍モル〜理論量の10倍モルであり、より好ましくは理論量の2倍モル〜理論量の10倍モルである。また、溶媒を用いることが好ましい。溶媒は、酢酸もしくは無水酢酸と、式(1)で表される化合物、及び式(2)で表される化合物を溶解するのであれば特に制限はないが、具体例としてジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のヒドロキシエーテル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。好ましくはエーテル類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類であり、より好ましくは芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類である。これら溶媒は単独でも混合して用いてもかまわない。
反応温度は、反応が進行するのであれば特に制限はないが、通常は10℃〜50℃で実施する。10℃未満の場合、反応速度が低下し反応が十分に進行せず、50℃を超える場合、ポリマーの生成が顕著となる。
反応時間は、反応が進行するのであれば特に制限はないが、通常は10分〜50時間、好ましくは30分〜30時間、より好ましくは30分〜20時間で実施する。10分未満の場合、反応が十分に進行せず、50時間を超える場合、ポリマーの生成が顕著となる。
反応圧力は、反応が進行するのであれば加圧下でも減圧下でも特に制限はないが、通常は常圧で行う。
【0010】
本発明の光学材料用組成物には、重合性化合物として前記式(2)で表わされる化合物を好ましく用いることができる。式(2)で表される化合物の具体例としては、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタンなどのエピスルフィド類が挙げられる。式(2)で表される化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
中でも好ましい化合物は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド(式(2)でn=0)、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド(式(2)でm=0、n=1)であり、最も好ましい化合物は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド(式(2)でn=0)である。
【0011】
本発明の光学材料用組成物は、得られる樹脂の加熱時の色調を改善するためポリチオール化合物を重合性化合物として含んでも良い。ポリチオール化合物の含有量は、光学材料用組成物の合計を100質量%とした場合、通常は1〜25質量%であり、好ましくは2〜25質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。ポリチオール化合物の含有量が1質量%を下回るとレンズ成型時に黄変する場合があり、25質量%を超えると耐熱性が低下する場合がある。本発明で使用するポリチオール化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
その具体例としては、メタンジチオール、メタントリチオール、1,2−ジメルカプトエタン、1,2−ジメルカプトプロパン、1,3−ジメルカプトプロパン、2,2−ジメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、1,6−ジメルカプトヘキサン、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、1,2−ビス(2−メルカプトエチルオキシ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、1,2,3−トリメルカプトプロパン、2−メルカプトメチル−1,3−ジメルカプトプロパン、2−メルカプトメチル−1,4−ジメルカプトブタン、2−(2−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジメルカプトプロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、2,4−ジメルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,1,1−トリス(メルカプトメチル)プロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、1,2−ジメルカプトシクロヘキサン、1,3−ジメルカプトシクロヘキサン、1,4−ジメルカプトシクロヘキサン、1,3−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1−チアン、2,5−ジメルカプトエチル−1−チアン、2,5−ジメルカプトメチルチオフェン、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、2,2’−ジメルカプトビフェニル、4、4’−ジメルカプトビフェニル、ビス(4−メルカプトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−メルカプトフェニル)プロパン、ビス(4−メルカプトフェニル)エーテル、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトフェニル)スルホン、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−メルカプトメチルフェニル)プロパン、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)エーテル、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3,4−チオフェンジチオール、1、1、3、3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを挙げることができる。
これらのなかで好ましい具体例は、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、4、8−ジメルカプトメチル−1、11−ジメルカプト−3、6、9−トリチアウンデカン、4、7−ジメルカプトメチル−1、11−ジメルカプト−3、6、9−トリチアウンデカン、5、7−ジメルカプトメチル−1、11−ジメルカプト−3、6、9−トリチアウンデカン、1、1、3、3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート)、トリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネートであり、より好ましくは、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,5−ビス(2−メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートであり、特に好ましい化合物は、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタンである。
【0012】
本発明の光学材料用組成物は、得られる樹脂の強度を改善するためポリイソシアネート化合物を重合性化合物として含んでも良い。ポリイソシアネート化合物の含有量は、光学材料用組成物の合計を100質量%とした場合、通常は1〜25質量%であり、好ましくは2〜25質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。ポリイソシアネート化合物の含有量が1質量%を下回ると強度が低下する場合があり、25質量%を超えると色調が低下する場合がある。本発明で使用するポリイソシアネート化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
その具体例としては、ジエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,6−ビス(イソシアネートメチル)デカヒドロナフタレン、リジントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、3−(2’−イソシアネートシクロヘキシル)プロピルイソシアネート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,2’−ビス(4−イソシアネートフェニル)プロパン、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビス(ジイソシアネートトリル)フェニルメタン、4,4’,4’’−トリイソシアネート−2,5−ジメトキシフェニルアミン、3,3’−ジメトキシベンジジン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートビフェニル、4,4’−ジイソシアネート−3,3’−ジメチルビフェニル、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,1’−メチレンビス(4−イソシアネートベンゼン)、1,1’−メチレンビス(3−メチル−4−イソシアネートベンゼン)、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(2−イソシアネート−2−プロピル)ベンゼン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)ナフタレン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)テトラヒドロジシクロペンタジエン、ビス(イソシアネートメチル)ジシクロペンタジエン、ビス(イソシアネートメチル)テトラヒドロチオフェン、ビス(イソシアネートメチル)ノルボルネン、ビス(イソシアネートメチル)アダマンタン、チオジエチルジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、ビス〔(4−イソシアネートメチル)フェニル〕スルフィド、2,5−ジイソシアネート−1,4−ジチアン、2,5−ジイソシアネートメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジイソシアネートメチルチオフェン、ジチオジエチルジイソシアネート、ジチオジプロピルジイソシアネートを挙げることができる。
【0013】
しかしながら、本発明で使用することができるポリイソシアネート化合物はこれらに限定されるわけではなく、また、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用してもかまわない。
これらのなかで好ましい具体例は、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアネートメチル)ノルボルネン、および2,5−ジイソシアネートメチル−1,4−ジチアンであり、より好ましい化合物は、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジイソシアネートであり、特に好ましい化合物は、イソホロンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンである。
【0014】
さらに、ポリイソシアネート化合物のNCO基に対するポリチオール化合物中のSH基の割合、即ち[ポリチオール化合物のSH基数/ポリイソシアネート化合物のNCO基数](SH基/NCO基)は、好ましくは1.0〜2.5であり、より好ましくは1.25〜2.25であり、特に好ましくは1.5〜2.0である。上記割合が1.0を下回るとレンズ成型時に黄色く着色する場合があり、2.5を上回ると耐熱性が低下する場合がある。
【0015】
本発明の光学材料用組成物は、得られる樹脂の屈折率を向上するため硫黄を重合性化合物として含んでも良い。硫黄の含有量は、光学材料用組成物の合計を100質量%とした場合、通常は0.1〜15質量%であり、好ましくは0.2〜10質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%である。
本発明で用いる硫黄の形状はいかなる形状でもかまわない。具体的には、硫黄は、微粉硫黄、コロイド硫黄、沈降硫黄、結晶硫黄、昇華硫黄等であるが、好ましくは、粒子の細かい微粉硫黄である。
本発明に用いる硫黄の製法はいかなる製法でもかまわない。硫黄の製法は、天然硫黄鉱からの昇華精製法、地下に埋蔵する硫黄の溶融法による採掘、石油や天然ガスの脱硫工程などから得られる硫化水素等を原料とする回収法等があるが、いずれの製法でもかまわない。
本発明に用いる硫黄の粒径は10メッシュより小さいこと、即ち硫黄が10メッシュより細かい微粉であることが好ましい。硫黄の粒径が10メッシュより大きい場合、硫黄が完全に溶解しにくい。このため、第1工程で好ましくない反応等が起き、不具合が生じる場合がある。硫黄の粒径は、30メッシュより小さいことがより好ましく、60メッシュより小さいことが最も好ましい。
本発明に用いる硫黄の純度は、好ましくは98%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.5%以上であり、最も好ましくは99.9%以上である。硫黄の純度が98%以上であると、98%未満である場合に比べて、得られる光学材料の色調がより改善する。
【0016】
本発明の光学材料用組成物を重合硬化して光学材料を得るに際して、重合触媒を添加することが好ましい。本発明の組成物は、光学材料用組成物と重合触媒とを含む重合硬化性組成物であり得る。重合触媒としてはアミン、ホスフィン、またはオニウム塩が用いられるが、特にオニウム塩、中でも第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級スルホニウム塩、及び第2級ヨードニウム塩が好ましく、中でも光学材料用組成物との相溶性の良好な第4級アンモニウム塩および第4級ホスホニウム塩がより好ましく、第4級ホスホニウム塩がさらに好ましい。より好ましい重合触媒としては、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、1−n−ドデシルピリジニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の第4級ホスホニウム塩が挙げられる。これらの中で、さらに好ましい重合触媒は、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドである。
重合触媒の添加量は、組成物の成分、混合比および重合硬化方法によって変化するため一概には決められないが、通常は光学材料用組成物の合計100質量%(重合触媒を含まない量)に対して、0.0001質量%〜10質量%、好ましくは0.001質量%〜5質量%、より好ましくは0.01質量%〜1質量%、最も好ましくは0.01質量%〜0.5質量%である。重合触媒の添加量が10質量%より多いと急速に重合する場合がある。また、重合触媒の添加量が0.0001質量%より少ないと光学材料用組成物が十分に硬化せず耐熱性が不良となる場合がある。
【0017】
また、本発明の製造方法で光学材料を製造する際、光学材料用組成物に紫外線吸収剤、ブルーイング剤、顔料等の添加剤を加え、得られる光学材料の実用性をより向上せしめることはもちろん可能である。
紫外線吸収剤の好ましい例としてはベンゾトリアゾール系化合物であり、特に好ましい化合物は、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3、5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールである。
これら紫外線吸収剤の添加量は、通常、光学材料用組成物の合計100質量%に対してそれぞれ0.01〜5質量%である。
【0018】
光学材料用組成物を重合硬化させる際に、ポットライフの延長や重合発熱の分散化などを目的として、必要に応じて重合調整剤を添加することができる。重合調整剤は、長期周期律表における第13〜16族のハロゲン化物を挙げることができる。これらのうち好ましいものは、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモンのハロゲン化物であり、より好ましいものはアルキル基を有するゲルマニウム、スズ、アンチモンの塩化物である。さらに好ましい化合物は、ジブチルスズジクロライド、ブチルスズトリクロライド、ジオクチルスズジクロライド、オクチルスズトリクロライド、ジブチルジクロロゲルマニウム、ブチルトリクロロゲルマニウム、ジフェニルジクロロゲルマニウム、フェニルトリクロロゲルマニウム、トリフェニルアンチモンジクロライドであり、最も好ましい化合物は、ジブチルスズジクロライドである。重合調整剤は単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。
重合調整剤の添加量は、光学材料用組成物の総計100質量%に対して、0.0001〜5.0質量%であり、好ましくは0.0005〜3.0質量%であり、より好ましくは0.001〜2.0質量%である。重合調整剤の添加量が0.0001質量%よりも少ない場合、得られる光学材料において充分なポットライフが確保できず、重合調整剤の添加量が5.0質量%よりも多い場合は、光学材料用組成物が充分に硬化せず、得られる光学材料の耐熱性が低下する場合がある。
【0019】
このようにして得られた光学材料用組成物または重合硬化性組成物はモールド等の型に注型し、重合させて光学材料とする。
本発明の組成物の注型に際し、0.1〜5μm程度の孔径のフィルター等で不純物を濾過し除去することは、本発明の光学材料の品質を高める上からも好ましい。
本発明の組成物の重合は通常、以下のようにして行われる。即ち、硬化時間は通常1〜100時間であり、硬化温度は通常−10℃〜140℃である。重合は所定の重合温度で所定時間保持する工程、0.1℃〜100℃/hの昇温を行う工程、0.1℃〜100℃/hの降温を行う工程によって、又はこれらの工程を組み合わせて行う。
また、硬化終了後、得られた光学材料を50〜150℃の温度で10分〜5時間程度アニール処理を行うことは、本発明の光学材料の歪を除くために好ましい処理である。さらに得られた光学材料に対して、必要に応じて染色、ハードコート、耐衝撃性コート、反射防止、防曇性付与等の表面処理を行ってもよい。
本発明の光学材料は光学レンズとして好適に用いることができる。本発明の組成物を用いて製造される光学レンズは、安定性、色相、耐光性、透明性に優れるため、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ、極めて有用である。必要に応じて、非球面レンズの形で用いることが好ましい。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせによって球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の内容を、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.保存安定性
窒素雰囲気下60℃で1週間光学材料用組成物中の主成分のエピスルフィド化合物の純度変化をGPC分析(昭和電工株式会社製カラムGPC K−801を使用して島津製作所RID−10Aで検出した)で追跡し、純度低下が5%未満をA、5%以上10%未満をB、10%以上をCとした。A、Bが合格レベルである。
2.温度変化安定性
窒素雰囲気下−10℃で20時間保管、その後4時間かけて30℃とし30℃で20時間保管、その後4時間かけて−10℃にする操作を10回繰り返した。その後エピスルフィド化合物10gに特級アセトン(99.5%以上、関東化学品)40gを加え、十分攪拌後10分静置し、この溶液の濁度を東京電色製 T-2600DAを用い測定した。濁度が1.0ppm未満をA、1.0ppm以上3.0ppm未満をB、3.0ppm以上5.0ppm未満をC、5.0ppm以上をDとした。A、B、Cが合格レベルである。
3.耐光性評価(色調測定)
(1)初期値の測定
実施例記載の方法で3.0mm厚の平板を作製し、カラーテクノシステム社製色彩計JS−555を用い、YI値を測定した。この値をpとする。
(2)光による色調変化の測定
初期値を測定後、カーボンアーク燃焼光に60時間照射し、その後YI値を測定した。この値をqとする。
(q−p)/pの値を算出し、この値が1.0未満をA、1.0以上2.0未満をB、2.0以上をCとした。A、Bが合格レベルである。
4.歪み
実施例記載の方法で−4Dのレンズを作製し、レンズメーター(東芝製歪検査器SVP−10−II)を用いて歪みを評価した。歪みがないものをA、歪があるものをBとした。Aが合格レベルである。
【0021】
実施例1
上記式(2)で表される化合物としてビス(β−エピチオプロピル)スルフィド(以下、「化合物a」)100g、トルエン200mlに酢酸150gを加え、40℃で10時間反応させた。反応終了後水を加えて洗浄し、得られた有機層をさらに3回水洗し、溶媒を留去、その後カラムで精製し、上記式(1)で表される化合物として下記式で表される化合物(以下、「化合物b」)を12g得た。
【化3】
1H−NMR(CDCl
3):1.5ppm(1H)、2.0ppm(3H)、2.2ppm(2H)、2.5ppm(1H)、2.7−2.8ppm(4H)、3.4ppm(1H)、4.3ppm(2H)
13C−NMR(CDCl
3):17ppm、25ppm、33ppm、37ppm(2H)、44ppm、74ppm、171ppm
【0022】
実施例2
上記式(2)で表される化合物としてビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド(以下、「化合物c」)100g、トルエン200mlに酢酸150を加え、40℃で10時間反応させた。反応終了後水を加えて洗浄し、得られた有機層をさらに3回水洗し、溶媒を留去、その後カラムで精製し、上記式(1)で表される化合物として下記式で表される化合物(以下、「化合物d」)を10g得た。
【化4】
1H−NMR(CDCl
3):1.5ppm(1H)、2.0ppm(3H)、2.2ppm(2H)、2.5ppm(1H)、2.8−3.0ppm(4H)、3.4ppm(1H)、4.3ppm(2H)
13C−NMR(CDCl
3):17ppm、24ppm、32ppm、35ppm、40ppm、46ppm、74ppm、171ppm
【0023】
実施例3〜9
化合物a(式(2)の化合物)に化合物b(式(1)の化合物)を表1に示す量添加し、保存安定性、温度変化安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0024】
実施例10〜16
化合物c(式(2)の化合物)に化合物d(式(1)の化合物)を表1に示す量添加し、保存安定性、温度変化安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0025】
比較例1
化合物a(式(2)の化合物)のみの安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0026】
比較例2
化合物c(式(2)の化合物)のみの安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
表1の結果より、式(2)で表される化合物(化合物aまたはc)に式(1)で表される化合物(化合物bまたはd)を加えることによって、保存安定性に優れることがわかる。
【0028】
実施例17〜23
化合物a(式(2)の化合物)に化合物b(式(1)の化合物)を表2に示す量を混合した光学材料用組成物総量に対して、紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール1.0質量%、重合触媒としてテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド0.05質量%添加後、20℃でよく混合し均一とした。ついで1.3kPaの真空度で脱気を行い、2枚のガラス板とテープから構成されるモールド(3.0mm厚の平板用および−4Dのレンズ用)へ注入し、30℃で10時間保持し、100℃まで10時間かけて一定速度で昇温させ、最後に100℃で1時間保持し、重合硬化させた。放冷後、モールドから離型し、110℃で60分アニール処理して成型板(3.0mm厚の平板および−4Dのレンズ)を得た。平板について耐光性評価(色調測定)を行い、−4Dレンズの歪みの結果と共に表2に示す。
【0029】
比較例3
化合物a(式(2)の化合物)に紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール1.0質量%、重合触媒としてテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド0.05質量%添加後、20℃でよく混合し均一とした。ついで1.3kPaの真空度で脱気を行い、2枚のガラス板とテープから構成されるモールド(3.0mm厚の平板用および−4Dのレンズ用)へ注入し、30℃で10時間保持し、100℃まで10時間かけて一定速度で昇温させ、最後に100℃で1時間保持し、重合硬化させた。放冷後、モールドから離型し、110℃で60分アニール処理して成型板(3.0mm厚の平板および−4Dのレンズ)を得た。平板について耐光性評価(色調測定)を行い、−4Dレンズの歪みの結果と共に表2に示す。
【0030】
実施例24〜30
化合物c(式(2)の化合物)に化合物d(式(1)の化合物)を表2に示す量を混合した光学材料用組成物に対して、紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール1.0質量%、重合触媒としてN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン0.5質量%添加後、20℃でよく混合し均一とした。ついで1.3kPaの真空度で脱気を行い、2枚のガラス板とテープから構成されるモールド(3.0mm厚の平板用および−4Dのレンズ用)へ注入し、30℃で10時間保持し、100℃まで10時間かけて一定速度で昇温させ、最後に100℃で1時間保持し、重合硬化させた。放冷後、モールドから離型し、110℃で60分アニール処理して成型板(3.0mm厚の平板および−4Dのレンズ)を得た。平板について耐光性評価(色調測定)を行い、−4Dレンズの歪みの結果と共に表2に示す。
【0031】
比較例4
化合物c(式(2)の化合物)に紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール1.0質量%、重合触媒としてN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン0.5質量%添加後、20℃でよく混合し均一とした。ついで1.3kPaの真空度で脱気を行い、2枚のガラス板とテープから構成されるモールド(3.0mm厚の平板用および−4Dのレンズ用)へ注入し、30℃で10時間保持し、100℃まで10時間かけて一定速度で昇温させ、最後に100℃で1時間保持し、重合硬化させた。放冷後、モールドから離型し、110℃で60分アニール処理して成型板(3.0mm厚の平板および−4Dのレンズ)を得た。平板について耐光性評価(色調測定)を行い、−4Dレンズの歪みの結果と共に表2に示す。
【0032】
【表2】
表2の結果より、式(2)で表される化合物(化合物aまたはc)に式(1)で表される化合物(化合物bまたはd)を加えることによって、耐光性に優れることがわかる。