【実施例】
【0044】
以下、本発明の一態様を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
〔実施例1及び2〕(定電位パルス電解)
実施例1及び2では、LiCl、KCl、及びNaFからなる溶融塩にSi源としてNa
2SiF
6を添加して得られた溶融塩電解浴のサイクリックボルタンメトリー測定を行い、次いで、上記融塩電解浴と金属板の一例としてのAg板とを用い、定電位パルス電解により、シリコンめっき金属板の一例であるシリコンめっきAg板を製造した。
【0046】
実施例1では、定電位パルス電解の条件を、ON時間が1秒であり、OFF時間が0.1秒であり、デューティ比が0.91であり、周波数が0.91Hzである条件とした。
実施例2では、定電位パルス電解の条件を、ON時間が0.1秒であり、OFF時間が0.1秒であり、デューティ比が0.5であり、周波数が5Hzである条件とした。
以下、詳細を説明する。
【0047】
<溶融塩電解浴のサイクリックボルタンメトリー測定>
Arを導入した電気炉内に収容された2電極式のセル内で、LiCl:KCl:NaF=56:41:3(mol%)の組成の溶融塩にSi源としてNa
2SiF
6を0.5モル%添加することにより、溶融塩電解浴を調製した。得られた溶融塩電解浴の温度を、773Kに調整した。
773Kの温度に調整された上記溶融塩電解浴に、作用極としてのグラッシーカーボン(G.C.)と、対極としてのカーボンロッドと、参照極としてのSiと、を浸漬し、上記溶融塩電解浴のサイクリックボルタンメトリー測定を行った。
【0048】
図1は、本実施例1及び2において、サイクリックボルタンメトリー測定によって得られたG.C.上のサイクリックボルタモグラムである。
図1に示すように、電位(Potential,E)をカソード側にスキャンしていくと(
図1中、左向きの矢印参照)、−0.04V vs. Si QRE付近からカソード電流(即ち、還元電流)が増加し、−0.15〜−0.2V vs. Si QRE付近に下向きの還元ピークが現れ、その後再度増加した。スキャンの向きを反転させた際(即ち、アノード側にスキャンした際)、カソード電流は−0.1V vs. Si QRE付近まで流れ、その後、アノード電流(即ち、酸化電流)が流れた(
図1中、上向きの矢印参照)。このように、Si擬似参照電極に対して0Vから大きく離れていない電位で還元電流及び酸化電流のピークが観察されたため、この電流はそれぞれSiの電析及び溶解に対応するものと考えられる。この結果から、Si(IV)の還元によるSiの電析は−0.15〜−0.2V vs.Si QREで速いこと、および、−0.1V vs. Si QRE付近において還元電流、酸化電流ともにほとんど流れないことがわかった。
この結果に基づき、実施例1及び2では、後述するように、定電位パルス電解の条件を、電析電位が−0.15V vs. Si QREであり、電析休止電位が−0.1V vs. Si QREである条件に決定した。
【0049】
<定電位パルス電解によるシリコンめっきAg板の製造>
Arを導入した電気炉内に収容された2電極式のセル内で、上記サイクリックボルタンメトリー測定において調製した溶融塩電解浴と同様の溶融塩電解浴を調製した。得られた溶融塩電解浴の温度を、773Kに調整した。
773Kの温度に調整された上記溶融塩電解浴に、作用極(陰極)としてのAg板(3cm
2)と、対極としてのカーボンロッドと、を浸漬し、定電位パルス電解を行った。
【0050】
実施例1では、定電位パルス電解の条件を、電析電位が−0.15Vであり、電析休止電位が−0.1Vであり、1パルス当たりの電析ON時間が1秒であり、1パルス当たりの電析OFF時間が0.1秒であり、デューティ比が0.91であり、周波数が0.91Hzであり、全電気量が−16Ccm
−2(理論膜厚5μm)である条件とした。
実施例2では、定電位パルス電解の条件を、電析電位が−0.15Vであり、電析休止電位が−0.1Vであり、1パルス当たりの電析ON時間が0.1秒であり、1パルス当たりの電析OFF時間が0.1秒であり、デューティ比が0.5であり、周波数が5Hzであり、全電気量が−16Ccm
−2(理論膜厚5μm)である条件とした。
【0051】
実施例1及び2とも、定電位パルス電解により、Ag板上に電析物が形成された。その後、水洗により、Ag板上に残存する溶融塩及びSi源を除去し、次いで十分に乾燥させることにより、電析物付きAg板を得た。
実施例1及び2とも、電析物の付着量から算出された電析物の平均厚さは4.4μmであった。
【0052】
<電析物のXRD測定>
上記で得られた電析物付きAg板について、X線回折(XRD)測定を行った。
【0053】
図2は、実施例1及び2における電析物付きAg板、即ち、定電位パルス電解によって電析物が形成されたAg板のXRD測定結果である。
図2中、「0.91Hz」は、実施例1の結果であり、「5Hz」は、実施例2の結果である。
図2からわかるとおり、実施例1及び2とも、得られた電析物は金属Siの回折パターンと一致し、金属Siであることが確認された。
【0054】
<電析物のICP−AES分析>
上記で得られた電析物付きAg板における電析物をフッ化水素酸に溶解させ、得られた溶液をICP発光分光分析法(ICP−AES)によって分析した。
その結果、実施例1及び2の電析物は、いずれも、Si純度が99質量%であるシリコン層であることが確認された。
【0055】
この結果により、実施例1及び2とも、電析物付きAg板として、Ag板上に電析物としてシリコン層が形成された構造を有するシリコンめっきAgが得られたことが確認された。
【0056】
<SEM表面観察>
電析物付きAg板(シリコンめっきAg板)の電析物側の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。
その結果、実施例1及び2とも、こぶ状の電析形態が見られ、周波数の違いによる電析物の表面形態の違いには大きな差は見られなかった。
【0057】
<SEM断面観察>
電析物付きAg板(シリコンめっきAg板)の電析物の断面を、SEMによって観察した。
【0058】
図3Aは、実施例1において定電位パルス電解(ON時間1秒、OFF時間0.1秒、0.91Hz)によって形成された電析物の断面のSEM写真である。
図3Bは、実施例2において定電位パルス電解(ON時間0.1秒、OFF時間0.1秒、5Hz)によって形成された電析物の断面のSEM写真である。
【0059】
図3A及び
図3Bに示すように、実施例1及び2とも、Ag板上に、デンドライト状の電析物が形成されていることが確認された。
特に、
図3Aに示すように、実施例1では、Ag板上に、シリコンの連続層が1層形成された後に、デンドライト状の電析物が形成されていた。
【0060】
〔実施例101〜103、比較例101〕(定電流パルス電解)
<定電流パルス電解によるシリコンめっき銅箔の製造>
実施例101〜103では、金属板の一例として銅箔を用い、定電流パルス電解により、シリコンめっき金属板の一例であるシリコンめっき銅箔を製造した。
比較例101では、常時、定電流オン状態とする、定電流パルス電解ではない定電流電解により、比較用のシリコンめっき銅箔を製造した。
以下、詳細を説明する。
【0061】
Arを導入した電気炉内に収容された2電極式のセル内で、LiCl:KCl:NaF=56:41:3(mol%)の組成の溶融塩にSi源としてNa
2SiF
6を0.5モル%添加することにより、溶融塩電解浴を調製した。得られた溶融塩電解浴の温度を、773Kに調整した。
773Kの温度に調整された上記溶融塩電解浴に、陰極としての銅板(詳細には、厚さ10μm、大きさ3cm
2の銅箔;以下、単に「銅箔」ともいう)と対極としてのカーボンロッドとを浸漬し、表1に示す条件の定電流電解を行った。
表1に示すように、実施例101〜103の定電流電解は、定電流オン(ON)状態と電流オフ(OFF)状態とを繰り返す定電流パルス電解とした。実施例101〜103において、電流オフ(OFF)状態における電流値は0A/dm
2とした(後述する実施例104〜114も同様である)。
これに対し、比較例101の定電流電解は、電流オフ状態を設けず、常時、定電流オン状態とする、定電流パルス電解ではない定電流電解とした。
実施例101〜103及び比較例101では、いずれも、定電流オン状態の時間(ON時間)の合計が600秒となる時間、定電流電解を行った。
上記定電流電解により、銅箔上に電析物が形成された。その後、水洗により、銅箔上に残存する溶融塩及びSi源を除去し、次いで十分に乾燥させることにより、電析物付き銅箔を得た。
【0062】
図4は、実施例101〜103における、定電流パルス電解の定電流パルスON時及びOFF時のパルス波形の模式図である。
図4に示すパルス波形におけるON時は、パルス幅としての通電時間を意味し、表1中の定電流パルスON条件のON時間(s)に対応する。
図4に示すパルス波形におけるOFF時は、表1中の定電流パルスOFF条件のOFF時間(s)に対応する。
【0063】
<電析物の分析>
上記で得られた電析物付き銅箔における電析物をフッ化水素酸に溶解させ、得られた溶液をICP−AESによって分析した。
その結果、実施例101〜103の電析物は、いずれも、Si純度が99質量%以上であり、不純物として1質量%未満のClを含有するシリコン層であることが確認された。
また、比較例101の電析物は、Si純度が98質量%であり、不純物として2質量%のClを含有するシリコン層であることが確認された。
【0064】
以上の結果により、電析物付き銅箔として、銅箔上に電析物としてシリコン層が形成された構造を有するシリコンめっき銅箔が得られたことが確認された。
【0065】
<表面観察>
シリコンめっき銅箔の電析物(シリコン層)側の表面を、SEMによって観察し、SEMによる表面写真を撮影した。
【0066】
図5〜7は、それぞれ、実施例101〜103のシリコンめっき銅箔のSEMによる表面写真である。
図5及び6に示すように、実施例101及び102では、所々、下地の銅箔が見え、銅箔の表面の70%以下が、デンドライト状のSi結晶粒からなる電析物(即ち、デンドライト状シリコン層)によって被覆されていた。
また、
図7に示すように、実施例103では、銅箔の表面の全体がSi結晶粒からなる電析物によって被覆されていた。
【0067】
図8は、比較例101のシリコンめっき銅箔のSEMによる表面写真である。
図8に示すように、比較例101でも、一応、銅箔の表面が電析物(Si結晶粒)によって被覆されていた。しかし、比較例101の電析物は、下地の銅箔との密着性が悪く、溶融塩及びSi源を除去するための水洗により、電析物のほとんどが剥がれた。
【0068】
<シリコン層の層厚測定>
シリコン層の層厚測定に際し、シリコンめっき銅箔の樹脂埋め込み試料を作製し、断面研磨をおこなった。試料のシリコンめっき銅箔の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察し、SEMによる断面写真を撮影した(図示は省略する)。
得られた断面写真に基づき、シリコン層の層厚(μm)を測定した。
ここで、シリコン層の層厚は、銅箔の表面からの電析物(即ち、シリコン層)の最大高さとした。
結果を表1に示す。
【0069】
<シリコン層と銅箔との密着性の評価>
シリコンめっき銅箔のシリコン層(電析物)に対し、カッター(NTカッター A−300)により、銅箔に達する、2mm角、100個の碁盤目(クロスカット)を形成した。形成された碁盤目にセロハンテープ(ニチバン セロテープ(登録商標)CT−18 幅25mm)を貼り付け、次いで銅箔に対して垂直な方向に瞬間的に引き剥がした。引き剥がしたセロハンテープを目視で観察し、下記基準に従って、シリコン層と銅箔との密着性を評価した。
結果を表1に示す。
【0070】
−シリコン層と銅箔との密着性の評価基準−
A: 引き剥がしたセロハンテープにシリコン層の付着が認められず、シリコン層と銅箔との密着性に優れていた。
B: 引き剥がしたセロハンテープにシリコン層の付着が認められ、シリコン層と銅箔との密着性が悪かった。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、定電流パルス電解によって形成された実施例101〜103のシリコン層は、常時定電流をオン状態とする定電流電解によって形成された比較例101のシリコン層と比較して、層厚が厚く、且つ、銅箔との密着性に優れていた。
【0073】
〔実施例104〜114〕
溶融塩電解浴における溶融塩の種類、溶融塩電解浴におけるSi源の種類、溶融塩に対するSi源のモル%、溶融塩電解浴の温度、及び定電流パルス電解の条件の組み合わせを、表2に示す組み合わせに変更したこと以外は実施例101と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に示すように、定電流パルス電解によって形成された実施例104〜114のシリコン層は、実施例101のシリコン層と同様に、銅箔との密着性に優れていた。
【0076】
また、実施例101、107、113及び114の層厚の結果より、Si源としてシリコン含有アルカリ金属塩を用いた場合(実施例101、113及び114)には、Si源としてシリコン含有アンモニウム塩を用いた場合(実施例107)と比較して、より厚いシリコン層を形成できることが確認された。
【0077】
以上、実施例1及び2として定電位パルス電解の例を示し、実施例101〜114として定電流パルス電解の例を示した。
定電位パルス電解と定電流パルス電解とを比較すると、定電流パルス電解は、定電位パルス電解と比較して、緻密で平滑なシリコン層をより形成し易い。その理由は、以下のように推測される。
即ち、上記実施例1及び2(定電位パルス電解)では、上述のとおり、サイクリックボルタンメトリー測定の結果より、定電位パルス電解の条件を、電析電位(ON時)が−0.15Vであり、電析休止電位(OFF時)が−0.1Vである条件に決定した。電析休止電位が−0.1Vとした理由は、電析も溶解もほとんど起こらないと考えられるためである。しかし、このOFF時の条件では、電流が完全に0になるとは言いきれず、微量の電析又溶解が生じる場合がある。このような擬似的なOFF時からON時に切り替わる瞬間、電析の核が適切に発生しない場合がありえる。このように、定電位パルスでは、OFF時においても電流を完全に0(ゼロ)とすることは難しい。
これに対し、定電流電位では、実施例101〜114に示したとおり、OFF時の電流を完全に0(ゼロ)とする。このため、OFF時からON時に切り替わる瞬間、電流が急激に立ち上がり、電析の核が適切に発生するために、緻密で平滑なシリコン層を形成し易いと考えられる。
以下、定電流パルス電解により、緻密で平滑なシリコン層を形成した例を、実施例115として示す。
【0078】
〔実施例115〕
実施例101において、陰極をAg板に変更し、定電流パルス電解のON条件の電流値を1.0A/dm
2に変更し、ON時間を0.9秒に変更し、OFF時間を0.1秒に変更し(即ち、周波数1Hz、デューティ比0.90に変更し)、全電気量を12.8Ccm
−2)に変更し、ON時間の合計を1280秒に変更したこと以外は実施例101と同様にして、シリコンめっきAg板を製造した。
図9に、シリコンめっきAg板の断面のSEM写真を示す。
図9に示されるように、実施例115では、定電流パルス電解により、Ag板(
図9中、「Ag」)上に、緻密で平滑なシリコン層(
図9中、「Si」)を形成できた。
【0079】
〔実施例201〕
次に、本開示の製造方法によって製造されるシリコンめっき金属板を、リチウムイオン二次電池用負極として使用した実施例を示す。
【0080】
<シリコンめっき銅箔(リチウムイオン二次電池用負極)の作製>
全電気量を32Ccm
−2に変更したこと以外は、実施例102と同様の条件で、シリコンめっき銅箔を作製した。得られたシリコンめっき銅箔を、以下において、リチウムイオン二次電池用負極として用いた。
この例では、シリコンめっき銅箔のデンドライト状シリコン層が、リチウムイオン二次電池用負極における負極活物質層として機能する。
【0081】
<リチウムイオン二次電池の作製>
負極として上記リチウムイオン二次電池用負極(シリコンめっき銅箔)を用い、正極として金属リチウムを用い、リチウムイオン二次電池の製造を行った。
詳細には、上記負極と上記正極との間に市販のセパレータを挟んで積層体とし、この積層体におけるセパレータに電解液を注入した。次いで、コインセルかしめ機を用い、積層体を2032型のコインセル内に封入することにより、コイン電池型のリチウムイオン二次電池を作製した。
ここで、セパレータとしては、ポリプロピレン(PP)多孔質フィルムを用い、電解液としては、1mol/LのLiPF
6(EC:DEC=1:1vol%)を用いた。
【0082】
<リチウムイオン二次電池の充放電試験>
得られたリチウムイオン二次電池を用い、0V(vs Li
+/Li)まで充電した後、1.5V(vs Li
+/Li)まで放電させるサイクルを繰り返す充放電試験を、表3に示す条件にて行った。なお、この充放電試験は、25℃の恒温室で行った。
結果を表3及び
図10に示す。
【0083】
〔比較例201〕
市販のナノシリコン粒子(平均粒径30nm)とバインダ(PVDF;ポリフッ化ビニリデン)とを、ナノシリコン粒子とバインダとの比率が9:1の組成になるように、分散剤(N−メチル−2−ピロリドン、NMP)中で混合し、電極スラリーを作製した。次に、作製した上記電極スラリーを銅箔(10μm厚、大きさ2cm
2)に塗布し、120℃で分散剤を十分に乾燥させることにより、リチウムイオン二次電池用負極を得た。
得られたリチウムイオン二次電池用負極を用いたこと以外は実施例201と同様にして、リチウムイオン二次電池の作製及び充放電試験を行った。
結果を表3及び
図10に示す。
【0084】
〔比較例202〕
バインダとしてのPVDFをポリイミドに変更し、120℃での分散剤の乾燥後、更に240℃で12時間の乾燥を行ったこと以外は比較例201と同様の操作を行った。
結果を表3及び
図10に示す。
【0085】
図10は、実施例201、比較例201及び比較例202における充放電試験結果を示すグラフである。
図10において、符号A〜Cのグラフは、実施例201の充放電試験結果であり、符号Aが下記表3の「充放電速度 1C(1時間)」に対応し、符号Bが下記表3の「充放電速度 2C(30分)」に対応し、符号Cが下記表3の「充放電速度 0.2C(5時間)」に対応する。
また、
図10において、符号D及びEのグラフは、それぞれ比較例201及び202の充放電試験結果である。
【0086】
【表3】
【0087】
表3及び
図10の結果から分かるように、実施例201のリチウムイオン二次電池は、比較例201及び比較例202のリチウムイオン二次電池と比較して、初期の放電容量(Discharge capacity)が高い。また、実施例201のリチウムイオン二次電池は、比較例201及び比較例202のリチウムイオン二次電池と比較して、同一条件で充放電を行っても、変化が緩やかである。
これらのことから、実施例201のリチウムイオン二次電池用負極は、充放電に伴う体積膨張に起因する歪みに対して高い耐久性を有することがわかる。この理由は、実施例201のリチウムイオン二次電池用負極の負極活物質層を構成するSi結晶粒がデンドライト状の粒子形状を有することにより、リチウムの吸収に伴う体積膨張がデンドライトの主枝間及び/又は枝部分間で吸収されるためと考えられる。
このように、実施例201のリチウムイオン二次電池用負極では、飛躍的に高容量化及び長寿命化を達成できた。
【0088】
また、実施例201と、比較例201及び202と、の対比より、バインダがある量を超えると、容量の低下を招くことがわかる。
実施例201のリチウムイオン二次電池用負極では、バインダが含まれないため、高い容量が確保される。また、実施例201のリチウムイオン二次電池用負極は、バインダが含まれないにもかかわらず、高い耐久性を有する。
【0089】
以上、本開示の製造方法によって製造されるシリコンめっき金属板を、リチウムイオン二次電池用負極として使用した実施例について説明した。
本開示の製造方法によって製造されるシリコンめっき金属板は、リチウムイオン二次電池用負極以外の用途(例えばシリコン太陽電池)にも使用できる。
【0090】
日本出願2015−211331の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。