特許第6187749号(P6187749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187749
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 5/321 20150101AFI20170821BHJP
   H01Q 9/42 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01Q5/321
   H01Q9/42
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-119168(P2013-119168)
(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公開番号】特開2014-236496(P2014-236496A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】行本 真介
(72)【発明者】
【氏名】岸 泰成
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 嶺
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−114667(JP,A)
【文献】 米国特許第06853341(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/00− 5/55
H01Q 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板本体と、前記基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成された第1エレメント第2エレメント及び第3エレメントとを備え、
前記第1エレメントが、基端側に給電点が接続されると共に前記基板本体のいずれかの一辺に向けて延在する第1延在部と、前記第1延在部の先端に基端側が接続され前記第1延在部に直交する方向に延在する第2延在部と、前記第2延在部の先端に基端が接続され前記第1延在部に沿って前記第1延在部の基端側に向けて延在する第3延在部と、前記第3延在部の先端から前記第2延在部に沿って前記第2延在部の基端側に向けて延在する第4延在部と、前記第4延在部の先端に基端が接続され前記第1延在部に沿って延在し他端側がグランドに接続される第5延在部とを有し、
前記第2エレメントが、前記第2延在部の基端から前記一辺に向けて延在する第6延在部と、前記第6延在部の先端に基端が接続され前記第2延在部に沿って前記第2延在部の先端側に向けて延在する第7延在部とを有し
前記第3エレメントが、前記第6延在部及び前記第1延在部の少なくとも一方に基端が接続され前記第7延在部側とは逆方向に延在する第10延在部と、前記第10延在部の先端から前記第6延在部に沿って延在する第11延在部とを有し、
前記第10延在部が、前記第6延在部の先端側に基端が接続され、
前記第11延在部が、前記第6延在部の基端側に向けて延在し先端が開放端となっていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
絶縁性の基板本体と、前記基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成された第1エレメント第2エレメント及び第3エレメントとを備え、
前記第1エレメントが、基端側に給電点が接続されると共に前記基板本体のいずれかの一辺に向けて延在する第1延在部と、前記第1延在部の先端に基端側が接続され前記第1延在部に直交する方向に延在する第2延在部と、前記第2延在部の先端に基端が接続され前記第1延在部に沿って前記第1延在部の基端側に向けて延在する第3延在部と、前記第3延在部の先端から前記第2延在部に沿って前記第2延在部の基端側に向けて延在する第4延在部と、前記第4延在部の先端に基端が接続され前記第1延在部に沿って延在し他端側がグランドに接続される第5延在部とを有し、
前記第2エレメントが、前記第2延在部の基端から前記一辺に向けて延在する第6延在部と、前記第6延在部の先端に基端が接続され前記第2延在部に沿って前記第2延在部の先端側に向けて延在する第7延在部とを有し
前記第3エレメントが、前記第6延在部及び前記第1延在部の少なくとも一方に基端が接続され前記第7延在部側とは逆方向に延在する第10延在部と、前記第10延在部の先端から前記第6延在部に沿って延在する第11延在部とを有し、
前記第10延在部が、前記第1延在部に基端が接続され、
前記第11延在部が、前記第6延在部の先端側に向けて延在し先端が開放端となっていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
絶縁性の基板本体と、前記基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成された第1エレメント第2エレメント及び第3エレメントとを備え、
前記第1エレメントが、基端側に給電点が接続されると共に前記基板本体のいずれかの一辺に向けて延在する第1延在部と、前記第1延在部の先端に基端側が接続され前記第1延在部に直交する方向に延在する第2延在部と、前記第2延在部の先端に基端が接続され前記第1延在部に沿って前記第1延在部の基端側に向けて延在する第3延在部と、前記第3延在部の先端から前記第2延在部に沿って前記第2延在部の基端側に向けて延在する第4延在部と、前記第4延在部の先端に基端が接続され前記第1延在部に沿って延在し他端側がグランドに接続される第5延在部とを有し、
前記第2エレメントが、前記第2延在部の基端から前記一辺に向けて延在する第6延在部と、前記第6延在部の先端に基端が接続され前記第2延在部に沿って前記第2延在部の先端側に向けて延在する第7延在部とを有し
前記第3エレメントが、前記第6延在部及び前記第1延在部の少なくとも一方に基端が接続され前記第7延在部側とは逆方向に延在する第10延在部と、前記第10延在部の先端から前記第6延在部に沿って延在する第11延在部とを有し、
前記第10延在部が、前記第6延在部の先端側に基端が接続されたものと、前記第1延在部に基端が接続されたものとの一対設けられ、
前記第11延在部が、一対の前記第10延在部の一方に基端が接続され他方に先端が接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記第2エレメントが、前記第6延在部と前記第7延在部とを接続する第8延在部と第9延在部とを有し、
前記第8延在部が、前記第6延在部の先端に基端が接続され前記第2延在部に沿って前記第2延在部の先端側に向けて延在し、
前記第9延在部が、前記第8延在部の先端に基端が接続され前記第6延在部に沿って前記第6延在部の基端側に向けて延在し先端が前記第7延在部の基端に接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記第7延在部の途中に誘電体アンテナのアンテナ素子が接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記第7延在部に第1受動素子が接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記第10延在部に第2受動素子が接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数共振化が可能なアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信機器において、アンテナの共振周波数を複共振化するためには、放射電極と誘電体ブロックとを備えたアンテナや、スイッチ,制御電圧源を用いたアンテナ装置が提案されている。
例えば、誘電体ブロックによる従来技術としては、特許文献1では、放射電極を樹脂成型体に形成し、さらに誘電体ブロックを接着剤で一体化することで高効率を得る複合アンテナが提案されている。
【0003】
また、スイッチ,制御電圧源を用いた従来技術としては、特許文献2では、第1の放射電極と、第2の放射電極と、第1の放射電極の途中部と第2の放射電極の基端部との間に介設され、第2の放射電極を第1の放射電極と電気的に接続又は切断させるためのスイッチと、を備えるアンテナ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−81000号公報
【特許文献2】特開2010−166287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術においても、以下の課題が残されている。
すなわち、特許文献1に記載のような誘電体ブロックによる技術では、放射電極を励振する誘電体ブロックを使用しており、機器毎に誘電体ブロック、放射電極パターン等の設計が必要になり、その設計条件によってアンテナ性能が劣化したり、不安定要素が増加する不都合がある。また、放射電極が樹脂成型体の表面に形成されているため、樹脂成型体上に放射電極パターンを設計する必要があり、実装する通信機器やその用途に応じて、アンテナ設計、金型設計が必要になり、大幅なコストの増大を招いてしまう。さらに、誘電体ブロックと樹脂成型体とを接着剤で一体化するので、接着剤のQ値以外にも接着条件(接着剤の厚み、接着面積等)により、アンテナ性能が劣化したり、不安定要素が増加する不都合がある。
また、特許文献2に記載のようなスイッチ,制御電圧源を用いたアンテナ装置の場合、スイッチで共振周波数を切り替えを行うために、制御電圧源の構成やリアクタンス回路等が必要であり、アンテナ構成が機器毎に複雑化し、設計の自由度が無く、容易なアンテナ調整が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、複共振化した各共振周波数のフレキシブルな調整が可能で、用途や機器毎に応じたアンテナ性能を安価かつ容易に確保できると共に小型化や薄型化が可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るアンテナ装置は、絶縁性の基板本体と、前記基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成された第1エレメント及び第2エレメントとを備え、前記第1エレメントが、基端側に給電点が接続されると共に前記基板本体のいずれかの一辺に向けて延在する第1延在部と、前記第1延在部の先端に基端側が接続され前記第1延在部に直交する方向に延在する第2延在部と、前記第2延在部の先端に基端が接続され前記第1延在部に沿って前記第1延在部の基端側に向けて延在する第3延在部と、前記第3延在部の先端から前記第2延在部に沿って前記第2延在部の基端側に向けて延在する第4延在部と、前記第4延在部の先端に基端が接続され前記第1延在部に沿って延在し先端側がグランドに接続される第5延在部とを有し、前記第2エレメントが、前記第2延在部の基端から前記一辺に向けて延在する第6延在部と、前記第6延在部の先端に基端が接続され前記第2延在部に沿って前記第2延在部の先端側に向けて延在する第7延在部とを有していることを特徴とする。
【0008】
このアンテナ装置では、基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成された上記の第1エレメント及び第2エレメントを備えているので、各エレメント間やグランドとの間の各浮遊容量とを効果的に利用することで、複共振化させることができる。
特に、第1エレメントが、上記の第2延在部と第3延在部と第4延在部とを有しているので、第1エレメントが折り返して延在することで第7延在部との間の浮遊容量が大きくなると共に折り返し部分内でも浮遊容量を発生させることができる。したがって、折り返しによって第1エレメントが長くなることと、折り返しで得られた浮遊容量とによって、共振周波数を得ることができる。また、高いインピーダンスとなる第2エレメントの先端(第7延在部の先端)に対しても、折り返し部分で効果的に浮遊容量を発生させることができる。
【0009】
第2の発明に係るアンテナ装置は、第1の発明において、前記第2エレメントが、前記第6延在部と前記第7延在部とを接続する第8延在部と第9延在部とを有し、前記第8延在部が、前記第6延在部の先端に基端が接続され前記第2延在部に沿って前記第2延在部の先端側に向けて延在し、前記第9延在部が、前記第8延在部の先端に基端が接続され前記第6延在部に沿って前記第6延在部の基端側に向けて延在し先端が前記第7延在部の基端に接続されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第2エレメントが、上記の第8延在部と第9延在部とを有しているので、折り返し部分となる第6延在部と第9延在部との間に浮遊容量が発生し、並列共振が発生することで、第2エレメントのインピーダンスを高くすることができる。
【0010】
第3の発明に係るアンテナ装置は、第1又は第2の発明において、前記基板本体の表面に金属箔でパターン形成された第3エレメントを備え、前記第3エレメントが、前記第6延在部及び前記第1延在部の少なくとも一方に基端が接続され前記第7延在部側とは逆方向に延在する第10延在部と、前記第10延在部の先端から前記第6延在部に沿って延在する第11延在部とを有していることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第3エレメントが、上記の第10延在部と第11延在部とを有しているので、主に第1エレメントと第2エレメントとで得られる2つの共振周波数とは別の共振周波数を第3エレメントにより得ることができる。
【0011】
第4の発明に係るアンテナ装置は、第3の発明において、前記第10延在部が、前記第6延在部の先端側に基端が接続され、前記第11延在部が、前記第6延在部の基端側に向けて延在し先端が開放端となっていることを特徴とする。
第5の発明に係るアンテナ装置は、第3の発明において、前記第10延在部が、前記第1延在部に基端が接続され、前記第11延在部が、前記第6延在部の先端側に向けて延在し先端が開放端となっていることを特徴とする。
第6の発明に係るアンテナ装置は、第3の発明において、前記第10延在部が、前記第6延在部の先端側に基端が接続されたものと、前記第1延在部に基端が接続されたものとの一対設けられ、前記第11延在部が、一対の前記第10延在部の一方に基端が接続され他方に先端が接続されていることを特徴とする。
【0012】
第7の発明に係るアンテナ装置は、第1から第6の発明のいずれかにおいて、前記第7延在部の途中に誘電体アンテナのアンテナ素子が接続されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子によってエレメント長の短縮化及び高インピーダンス化と、浮遊容量の増大とが可能になり、複共振化の調整が容易になると共に小型化とアンテナ特性の向上とを図ることができる。
また、基板本体の平面内で設計が可能であり、従来の誘電体ブロックや樹脂成型体等を使用する場合に比べて薄型化が可能であると共に、誘電体アンテナであるアンテナ素子の選択によって、小型化および高性能化が可能になる。また、金型、設計変更等によるコストが必要なく、低コストを実現することができる。
【0013】
第8の発明に係るアンテナ装置は、第1から第7の発明のいずれかにおいて、前記第7延在部に第1受動素子が接続されていることを特徴とする。
第9の発明に係るアンテナ装置は、第3の発明において、前記第10延在部に第2受動素子が接続されていることを特徴とする。
すなわち、これらのアンテナ装置では、各受動素子の選択によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた複共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。このように、アンテナ構成上、各共振周波数をフレキシブルに調整できるため、共振周波数の入れ替えが可能になり、用途や機器に応じて受動素子等による調整箇所を変更可能になっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明のアンテナ装置によれば、基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成された上記の第1エレメント及び第2エレメントを備えているので、各エレメント間やグランドとの間の各浮遊容量とを効果的に利用することで、少なくとも2つ以上の共振周波数による複共振化させることができる。
特に、第1エレメントが、上記の第2延在部と第3延在部と第4延在部とを有しているので、折り返しによって第1エレメントが長くなることと、折り返しで得られた浮遊容量とによって、共振周波数を得ることができる。
また、エレメントに接続するアンテナ素子や受動素子の選択によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた複共振化が可能になると共に、小型化および高性能化が可能になる。
したがって、本発明のアンテナ装置は、多様な用途や機器に対応した複共振化が容易に可能になると共に、省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るアンテナ装置の第1実施形態において、各エレメントの位置関係を示す平面図である。
図2】第1実施形態において、各共振周波数に寄与する主な領域を示す配線図である。
図3】第1実施形態において、アンテナ装置で生じる浮遊容量を示す配線図である。
図4】第1実施形態において、回路基板のインピーダンス調整回路を示す回路図である。
図5】第1実施形態において、アンテナ素子を示す斜視図(a)、平面図(b)、正面図(c)および底面図(d)である。
図6】第1実施形態において、3共振化した際のVSWR特性(電圧定在波比)を示すグラフである。
図7】本発明に係るアンテナ装置の第2実施形態において、各エレメントの位置関係を示す配線図である。
図8】本発明に係るアンテナ装置の第3実施形態において、各エレメントの位置関係を示す配線図である。
図9】本発明に係るアンテナ装置の第4実施形態において、各エレメントの位置関係を示す配線図である。
図10】発明に係るアンテナ装置の実施例において、アンテナ装置の放射パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るアンテナ装置の第1実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態におけるアンテナ装置1は、図1及び図2に示すように、絶縁性の基板本体2と、基板本体2の表面にそれぞれ銅箔等の金属箔でパターン形成された第1エレメント3、第2エレメント4及び第3エレメント5とを備えている。
【0018】
上記第1エレメント3は、基端側に給電点FPが接続されると共に基板本体2のいずれかの一辺(本実施形態では、図1の符号2a)に向けて延在する第1延在部E1と、第1延在部E1の先端に基端側が接続され第1延在部E1に直交する方向に延在する第2延在部E2と、第2延在部E2の先端に基端が接続され第1延在部E1に沿って第1延在部E1の基端側に向けて延在する第3延在部E3と、第3延在部E3の先端から第2延在部E2に沿って第2延在部E2の基端側に向けて延在する第4延在部E4と、第4延在部E4の先端に基端が接続され第1延在部E1に沿って延在し他端側がグランドGNDに接続される第5延在部E5とを有している。
【0019】
上記第2エレメント4は、第2延在部E2の基端から前記一辺2aに向けて延在する第6延在部E6と、第6延在部E6の先端に基端が接続され第2延在部E2に沿って第2延在部E2の先端側に向けて延在する第7延在部E7と、第6延在部E6と第7延在部E7とを接続する第8延在部E8と第9延在部E9とを有している。
上記第8延在部E8は、第6延在部E6の先端に基端が接続され第2延在部E2に沿って第2延在部E2の先端側に向けて延在している。
また、上記第9延在部E9は、第8延在部E8の先端に基端が接続され、第6延在部E6に沿って第6延在部E6の基端側に向けて延在していると共に先端が第7延在部E7の基端に接続されている。
すなわち、第7延在部E7は、第8延在部E8と第9延在部E9とを介して第6延在部の先端に接続されている。なお、第8延在部E8と第9延在部E9とを介して接続することが好ましいが、第7延在部E7と第6延在部E6とを直接接続しても構わない。
【0020】
上記第3エレメント5は、第6延在部E6の先端側に基端が接続され第7延在部E7側とは逆方向に延在する第10延在部E10と、第10延在部E10の先端から第6延在部E6に沿って延在する第11延在部E11とを有している。
本実施形態の第11延在部E11は、第6延在部E6の基端側に向けて延在し先端が開放端となっている。
【0021】
上記第7延在部E7の途中には、誘電体アンテナのアンテナ素子ATが接続されている。
また、第7延在部E7には、アンテナ素子ATよりも基端側の途中に第1受動素子P1が接続されている。さらに、第10延在部E10には、第2受動素子P2が接続されている。
【0022】
第1延在部E1は、基板本体2とは別に設けられた回路基板2Bに接続配線11aで接続され、回路基板2Bのインピーダンス調整回路12を介して給電点FPに接続されている。
また、第5延在部E5は、基端が上記回路基板2Bに接続配線11bで接続され、回路基板2Bの受動素子P11を介してグランドGNDに接続されている。すなわち、第5延在部E5は、グランドGNDと接続されたグランドパターンである。
【0023】
上記回路基板2B上には、図4に示すように、接続配線11aから給電点FPに接続する配線の途中と、接続配線11bからグランドGNDに接続する配線の途中とに設けられたインピーダンス調整回路12として、受動素子P12a〜P12cと受動素子P11とが実装されている。すなわち、接続配線11bとグランドGNDとの間に接続された受動素子P11と、接続配線11aと給電点FPとの間の配線に直列に接続された受動素子P12aと、接続配線11aと給電点FPとの間の配線(受動素子P12aの両側)とグランドGNDとの間に並列に接続された2つの受動素子P12b,P12cとが回路基板2B上に実装されている。
【0024】
上記基板本体2及び回路基板2Bは、一般的なプリント基板であって、本実施形態では、ガラスエポキシ樹脂等からなるプリント基板を採用している。なお、接続配線11a,11bは、ピンプローブ、板状の金属によるバネ接点又はFPC等で形成されている。
上記給電点FPは、回路基板2BのグランドGNDに設けられた高周波回路(図示略)の給電点に接続される。なお、図2図3及び以降の配線図では、インピーダンス調整回路12及び回路基板2Bを省略して給電点FP及びグランドGNDだけを図示している。
上記各受動素子は、例えばインダクタ、コンデンサ、抵抗又はジャンパー線が採用される。
【0025】
上記アンテナ素子ATは、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子であって、例えば図5に示すように、セラミックス等の誘電体121の表面にAg等の導体パターン122が形成されたチップアンテナである。
このアンテナ素子ATは、共振周波数等の設定に応じて、その長さ、幅、導体パターン等が異なる素子を選択しても構わない。また、所望の周波数によっては、アンテナ素子ATに使用している誘電体121を、磁性体、若しくは誘電体と磁性体とを混合した複合材料としても構わない。
【0026】
上記第1エレメント3と第2エレメント4と第3エレメント5とは、互いの間の浮遊容量と、グランドGNDとの間の浮遊容量とを発生可能に、互いに間隔を空けて延在している。
すなわち、図3に示すように、第4延在部E4とグランドGNDとの間の浮遊容量Caと、第7延在部E7とグランドGNDとの間の浮遊容量Cbと、アンテナ素子ATとグランドGNDとの間の浮遊容量Ccと、第2延在部E2と第4延在部E4との間の浮遊容量Cdと、第7延在部E7と第2延在部E2との間の浮遊容量Ceと、第6延在部E6と第9延在部E9との間の浮遊容量Cfと、第6延在部E6と第11延在部E11との間の浮遊容量Cgと、第11延在部E11とグランドGNDとの間の浮遊容量Chとが発生可能である。
【0027】
次に、本実施形態のアンテナ装置における各共振周波数について、図を参照して説明する。
【0028】
本実施形態のアンテナ装置1では、図5に示すように、周波数の低い方から、第1の共振周波数f1、第2の共振周波数f2及び第3の共振周波数f3の順に3つの周波数帯に複共振化される。
上記第1の共振周波数f1は、第2エレメント4と第1エレメント3とアンテナ素子ATと第1受動素子P1と浮遊容量とで決定される。また、上記第2の共振周波数f2は、第3エレメント5と第1エレメント3と第2受動素子P2と浮遊容量とで決定される。さらに、上記第3の共振周波数f3は、第1エレメント3と浮遊容量とで決定される。
【0029】
以下、これら共振周波数について、より詳しく説明する。
「第1の共振周波数f1について」
上記第1の共振周波数f1の周波数は、第2エレメント4と第1エレメント3とアンテナ素子ATと第1受動素子P1と浮遊容量Ca,Cb,Cc,Cd,Ce,Cfとにより設定および調整することができる。
また、第1の共振周波数f1のインピーダンス調整は、浮遊容量Ca,Cb,Cc,Cd,Ce,Cfの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第1受動素子P1の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
なお、第1の共振周波数f1における最終的なインピーダンス調整は、受動素子P11と受動素子P12cとの選択によりグランドGND側に流れる高周波電流の流れをコントロールすることで、フレキシブルに行うことが可能である。
このように第1の共振周波数f1は、主に図2中の一点鎖線A1の部分で調整される。
【0030】
「第2の共振周波数f2について」
上記第2の共振周波数f2の周波数は、第3エレメント5と第1エレメント3と第2受動素子P2と浮遊容量Ca,Cd,Ce,Cf,Cg,Chとにより設定および調整することができる。
また、第2の共振周波数f2のインピーダンス調整は、浮遊容量Ca,Cd,Ce,Cf,Cg,Chの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第2受動素子P2の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
なお、第2の共振周波数f2における最終的なインピーダンス調整は、受動素子P11と受動素子P12a,P12bとの選択によりグランドGND側に流れる高周波電流の流れをコントロールすることで、フレキシブルに行うことが可能である。
このように第2の共振周波数f2は、主に図2中の二点鎖線A2の部分で調整される。
【0031】
「第3の共振周波数f3について」
上記第3の共振周波数f3の周波数は、第1エレメント3と浮遊容量Ca,Cd,Ceとにより設定および調整することができる。
また、第3の共振周波数f3のインピーダンス調整は、浮遊容量Ca,Cd,Ceの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、受動素子P12aの選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
なお、第3の共振周波数f3における最終的なインピーダンス調整は、受動素子P11の選択によりグランドGND側に流れる高周波電流の流れをコントロールすることで、フレキシブルに行うことが可能である。
このように第3の共振周波数f3は、主に図2中の破線A3の部分で調整される。
【0032】
このように本実施形態のアンテナ装置1では、基板本体2の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成された上記の第1エレメント3、第2エレメント4及び第3エレメント5を備えているので、各エレメント間やグランドGNDとの間の各浮遊容量とを効果的に利用することで、複共振化させることができる。
特に、第1エレメント3が、上記の第2延在部E2と第3延在部E3と第4延在部E4とを有しているので、第1エレメント3が折り返して延在することで第7延在部E7との間の浮遊容量が大きくなると共に折り返し部分内でも浮遊容量を発生させることができる。したがって、折り返しによって第1エレメント3が長くなることと、折り返しで得られた浮遊容量とによって、共振周波数を得ることができる。また、高いインピーダンスとなる第2エレメント4の先端(第7延在部E7の先端)に対しても、折り返し部分で効果的に浮遊容量を発生させることができる。
【0033】
また、第2エレメント4が、上記の第8延在部E8と第9延在部E9とを有しているので、折り返し部分となる第6延在部E6と第9延在部E9との間に浮遊容量が発生し、並列共振が発生することで、第2エレメント4のインピーダンスを高くすることができる。
【0034】
また、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子ATによってエレメント長の短縮化及び高インピーダンス化と、浮遊容量の増大とが可能になり、複共振化の調整が容易になると共に小型化とアンテナ特性の向上とを図ることができる。
また、基板本体2の平面内で設計が可能であり、従来の誘電体ブロックや樹脂成型体等を使用する場合に比べて薄型化が可能であると共に、誘電体アンテナであるアンテナ素子ATの選択によって、小型化および高性能化が可能になる。また、金型、設計変更等によるコストが必要なく、低コストを実現することができる。
【0035】
また、アンテナ素子ATおよび各受動素子の選択によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた複共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。このように、アンテナ構成上、各共振周波数をフレキシブルに調整できるため、共振周波数の入れ替えが可能になり、用途や機器に応じて受動素子等による調整箇所を変更可能になっている。
【0036】
次に、本発明に係るアンテナ装置の第2から第4実施形態について、図7から図9を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0037】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、第3エレメント5が設けられているのに対し、第2実施形態のアンテナ装置21は、図7に示すように、第3エレメント5が無く、第1エレメント3及び第2エレメント4だけでアンテナエレメントが構成されている点である。
したがって、第2実施形態のアンテナ装置21では、第3エレメント5で得られる共振周波数が無く、第1エレメント3と第2エレメント4とで得られる2つの共振周波数が得られる。
【0038】
第3実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、第10延在部E10が、第6延在部E6の先端側に基端が接続され、第11延在部E11が、第6延在部E6の基端側に向けて延在し先端が開放端となっているのに対し、第3実施形態のアンテナ装置31は、図8に示すように、第3エレメント35において、第10延在部E10Bが、第1延在部E1の途中に基端が接続され、第11延在部E11が、第6延在部E6の先端側に向けて延在し先端が開放端となっている点である。
すなわち、第3実施形態では、第3エレメント35が第1実施形態とは逆向きの開放端を有している。
【0039】
また、第4実施形態と第1実施形態との異なる点は、第11延在部E11の先端が開放端になっているのに対し、第4実施形態のアンテナ装置41では、図9に示すように、第11延在部E11の両端が第10延在部E10A及び第10延在部E10Bを介して第6延在部E6及び第1延在部E1に接続され、第3エレメント45が閉じている点である。
【0040】
すなわち、第4実施形態のアンテナ装置41では、第10延在部が、第6延在部E6の先端側に基端が接続された第10延在部E10Aと、第1延在部E1に基端が接続された第10延在部E10Bとの一対設けられ、第11延在部E11が、一対の第10延在部E10A,E10Bの一方に基端が接続され他方に先端が接続されている、したがって、第4実施形態では、第3エレメント45がループ状となっており、開放端を有していない。なお、第10延在部E10Aには、第2受動素子P2aが接続されており、第10延在部E10Bには、第2受動素子P2bが接続されている。
【0041】
このように第3実施形態及び第4実施形態でも、第3エレメント35,45によって共振周波数が得られ、第1実施形態と同様に3つの共振周波数による複共振化が可能である。
【実施例】
【0042】
次に、上記第1実施形態のアンテナ装置を実際に作製した実施例について、VSWR特性(電圧定在波比)を測定した結果と、各共振周波数での放射パターンについて測定した結果とを、図6及び図10を参照して説明する。
【0043】
なお、これらの測定においては、各受動素子は以下のものを用いた。
第1受動素子P1:L=2.2nHのインダクタ
第2受動素子P2:L=1.2nHのインダクタ
受動素子P11:L=10nHのインダクタ
受動素子P12a:L=1.8nHのインダクタ
受動素子P12b:C=0.3pFのコンデンサ
受動素子P12c:L=5.6nHのインダクタ
【0044】
この測定結果からわかるように、図6及び以下の表1に示すように、第1〜第3の共振周波数f1〜f3のいずれも良好な特性が得られている。
表1において、第1の共振周波数f1の周波数帯は800MHz、第2の共振周波数f2の周波数帯は1800MHz、第3の共振周波数f3の周波数帯は2100MHzである。なお、表1において、VSWR≦3の場合には、第2の共振周波数f2と第3の共振周波数f3との互いの周波数帯が1つになった広帯域化が実現されている。
【表1】
【0045】
次に、上記実施例のアンテナ装置について、第1の共振周波数f1、第2の共振周波数f2及び第3の共振周波数f3での放射パターンについて測定した結果を、図10に示す。
なお、第7延在部E7の基端から先端に向かう延在方向(アンテナ素子ATの延在方向)を−Y方向とし、第1延在部E1の基端から先端に向かう延在方向を−X方向とし、基板本体2表面に対する垂直方向をZ方向とした。この際のZX面に対する垂直偏波、水平偏波及び電力利得を測定した。
【0046】
この結果、ZX面における第1の共振周波数f1の平均電力利得は−4.3dBiであり、第2の共振周波数f2の平均電力利得は−2.4dBiであり、第3の共振周波数f3の平均電力利得は−4.3dBiであった。
【0047】
なお、本発明は上記各実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0048】
例えば、上記各実施形態では、インピーダンス調整回路やグランドを基板本体とは別の回路基板に設けて接続配線で接続しているが、インピーダンス調整回路やグランドも基板本体に形成しても構わない。
また、第7延在部にアンテナ素子を設けているが、第1エレメントの第2延在部や第4延在部又は第3エレメントの第11延在部にアンテナ素子を設けてエレメントの短縮化を行い、装置全体の小型化を図っても構わない。
【0049】
また、上述したようにアンテナ素子を接続してエレメントの一部とすることが好ましいが、アンテナ素子を接続せずに、銅箔等の金属箔のみで延在した第7延在部でも構わない。この際、高インピーダンス化するために、第7延在部の少なくとも一部を他の部分よりも幅狭の細いパターンにしたり、ジグザグに折り返しながら全体として一定方向に延在するミアンダパターンとしたりすることが好ましい。
さらに、基板サイズに余裕がある場合には、上記エレメントの一部を、線状若しくは板状の金属を折り返した形状のパターンに置き換えても構わない。また、同一の基板本体の表裏面に対してスルーホールを用いて、螺旋状などの形状に旋回させたパターンにしても構わない。
【0050】
また、第1エレメントでは、第2延在部から第5延在部によって一段の折り返し部分を形成しているが、さらに第5延在部とグランドとの間に同様の折り返し部分を追加して設けて複数段の折り返し部分を形成してジグザグに折り返されたミアンダパターンとしても構わない。これにより、第5延在部の前後で形成された2段の折り返し部分で、さらに多くの浮遊容量を発生させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1,21,31,41…アンテナ装置、2…基板本体、2a…基板本体の一辺、3…第1エレメント、4…第2エレメント、5…第3エレメント、AT…アンテナ素子、E1…第1延在部、E2…第2延在部、E3…第3延在部、E4…第4延在部、E5…第5延在部、E6…第6延在部、E7…第7延在部、E8…第8延在部、E9…第9延在部、E10,E10A,E10B…第10延在部、E11…第11延在部、GND…グランド、P1…第1受動素子、P2,P2a,P2b…第2受動素子、P11,P12a,P12b,P12c…インピーダンス調整回路の受動素子、FP…給電点
図1
図2
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図10