【文献】
MORLANG, A. et al.,Bimetallic Pt/Pd diesel oxidation catalysts Structual characterization and catalytic behaviour,Applied Catalysis B: Environmental,Elsevier,2005年 4月19日,Vol.60, No.3-4,p.191-199,DOI:10.1016/j.apcatb.2005.03.007
【文献】
JIANG, K. et al.,Ab initio study of effects of substitutional additives on the phase stability of γ-alumina,Journal of Physics: Condensed Matter,2010年11月26日,Vol.22, No.50, 505502,p.1-8,DOI:10.1088/0953-8984/22/50/505502
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0018】
本発明の排ガス浄化触媒は、アルミナ及びイットリアからなる担体と、該担体に担持された白金及びパラジウムとを備え、前記担体における前記イットリアの含有量が2〜15質量%であり、前記白金と前記パラジウムとの含有比率が、質量比([白金]:[パラジウム])で1:1〜10:1の範囲にあり、前記白金と前記パラジウムとの少なくとも一部が固溶しており、かつ、前記白金、前記パラジウム及び/又はその固溶体に起因するCuKα線を用いたX線回折法における81.2°〜82.1°の間の(311)面由来の回折線ピークが81.5°以上である、ことを特徴とするものである。
【0019】
(担体)
本発明の排ガス浄化触媒における担体としては、アルミナ(Al
2O
3)及びイットリア(Y
2O
3)からなり、前記担体における前記イットリアの含有量が2〜15質量%であることが必要である。このようなイットリアの含有量が、前記下限未満では、貴金属としての白金、パラジウム及び/又はその合金粒子を高分散状態にすることができなくなり、他方、前記上限を超えると、貴金属をメタル状態にすることが困難となる。なお、このようなイットリアの含有量は、高分散とメタル化の両立という観点から、3〜14質量%であることがより好ましく、3.5〜12質量%であることが特に好ましい。
【0020】
ここで、「アルミナ及びイットリアからなる」とは、前記担体がアルミナ及びイットリアのみから構成されるもの、或いは、主としてアルミナ及びイットリアからなり本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含み構成されるものであることを意味する。他の成分としては、この種の用途の担体として用いられる他の金属酸化物や添加剤等を用いることができる。後者の場合、担体におけるアルミナ及びイットリアの含有量は、担体の全質量100質量%に対して50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。このような担体におけるアルミナ及びイットリアの含有量が前記下限未満では、本発明の効果が十分に得られない傾向にある。
【0021】
なお、このような担体におけるアルミナ(Al
2O
3)としては、ベーマイト型、擬ベーマイト型、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型及びα型からなる群から選択される少なくとも一種のアルミナとすることができるが、耐熱性の観点から、α−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナを用いることが好ましく、活性の高いγ−アルミナやθ−アルミナを用いることが特に好ましい。
【0022】
また、このような担体に含有する他の成分として用いる金属酸化物としては、排ガス浄化触媒の担体に用いることが可能な金属酸化物であればよく、特に制限されず、例えば、担体の熱安定性や触媒活性の観点から、例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)等の希土類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属の酸化物、これらの金属の酸化物の混合物、これらの金属の酸化物の固溶体、これらの金属の複合酸化物を適宜用いることができる。
【0023】
更に、このような本発明の排ガス浄化触媒の担体としては、その形状は特に制限されないが、リング状、球状、円柱状、粒子状、ペレット状等、従来公知の形状のものを用いることができる。なお、Pt及びPdを分散性の高い状態で多く含有することができるという観点から、粒子状のものを用いることが好ましい。このような担体が粒子状のものである場合には、前記担体の平均粒子径は0.5〜10μmであることが好ましい。
【0024】
また、このような担体の比表面積としては、特に制限されないが、5〜300m
2/gであることが好ましく、10〜200m
2/gであることがより好ましい。前記比表面積が、前記下限未満では、Pt及びPdの分散性が低下し触媒性能(低温でのCO及びHCに対する酸化活性)が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担体が700℃以下の低温でも容易に粒成長するようになり、該担体の上に担持された貴金属の粒成長を促進するため、触媒性能が低下する傾向にある。なお、このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。なお、このようなBET比表面積は、市販の装置を利用して求めることができる。
【0025】
更に、このような担体の製造方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。更に、このような担体としては、市販のものを用いてもよい。
【0026】
(白金及びパラジウム)
次に、本発明の排ガス浄化触媒においては、前記担体に白金(Pt)及びパラジウム(Pd)が担持されている。このような白金(Pt)の担持量は、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。このような白金の担持量が、前記下限未満では低温でのCO及びHCに対する十分に高い酸化活性が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、白金のシンタリングが起こりやすく、白金の分散度が低下して貴金属の有効利用及びコスト面で不利になる傾向にある。また、このような白金の担持量としては、触媒性能とコストの観点から、0.5〜6質量部であることがより好ましい。なお、このように担体に担持されている白金の粒子径(平均粒子径)としては、1〜100nm(より好ましくは2〜50nm)であることが好ましい。このような白金の粒子径が、前記下限未満では、メタル状態になりにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性サイトの量が著しく減少する傾向にある。
【0027】
また、パラジウム(Pd)の担持量は、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましい。このようなパラジウムの担持量が、前記下限未満では、低温でのCO及びHCに対する高い酸化活性が十分に得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貴金属の有効利用及びコスト面で不利になる傾向にある。また、このようなパラジウムの担持量としては、触媒性能とコストの観点から、0.1〜6質量部であることがより好ましい。なお、このようなパラジウムは、酸化物として担持されていてもよい。なお、このように担体に担持されているパラジウムの粒子径(平均粒子径)としては、1〜100nm(より好ましくは2〜50nm)であることが好ましい。このような粒子径が、前記下限未満では、活性サイトの特性(活性サイト数当たりの活性)が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性サイトの量が著しく減少する傾向にある。
【0028】
更に、前記担体に担持されている前記パラジウムの担持状態は特に制限されないが、前記パラジウムが前記白金のより近傍に担持されていることが好ましい。白金のより近傍にパラジウムを担持させることにより、高活性な白金とパラジウムとの合金が高効率に形成され、また、白金とパラジウムとの合金は粒成長しにくい傾向にある。
【0029】
このような本発明の排ガス浄化触媒においては、前記白金と前記パラジウムとの含有比率が、質量比([白金]:[パラジウム])で1:1〜10:1の範囲であることが必要である。白金の含有比率が前記下限未満では(すなわち、パラジウムの含有比率が前記上限を超えると)、低温でのCO及びHCに対する高い酸化活性が十分に得られなくなり、他方、白金の含有比率が前記上限を超えると(すなわち、パラジウムの含有比率が前記下限未満では)、活性や粒成長抑制に優れる白金とパラジウムとの合金の形成が困難となる。なお、このような白金と前記パラジウムとの含有比率は、白金とパラジウムとの合金の形成という観点から、2:1〜8:1の範囲であることが好ましく、2:1〜4:1の範囲であることがより好ましい。
【0030】
また、本発明の排ガス浄化触媒においては、前記白金と前記パラジウムとの少なくとも一部が固溶していることが必要である。白金及びパラジウムがこのような固溶状態にあることにより、COやHC等との反応の活性サイトの特性(活性サイト数当たりの活性)が向上する。このような固溶体は、例えば、白金とパラジウムとを担持した触媒を700℃以上で熱処理することにより生成することができる。また、このような固溶体の存在は、白金及びパラジウムの粒子径を測定する際のX線回析測定と同様にして白金、パラジウム及び/又はその固溶体の結晶の(311)面に由来するピークを測定して、格子定数を求めることにより確認することができる。更に、このように固溶体に対してX線回析測定を行った場合、前記格子定数の変化からVegard則に基づいて固溶している白金及びパラジウムの量を求めることも可能である。このようにして求められる白金とパラジウムの固溶体の量としては、白金及びパラジウムの全量を基準として10〜90質量%であることが好ましい。このような固溶体の量が、前記下限未満及び前記上限を超えるいずれの場合においても、COやHC等との反応の活性サイトの特性(活性サイト数当たりの活性)を十分に向上させることができなくなる傾向にある。なお、このような固溶体の粒子径(平均粒子径)としては、前記と同様の理由で、1〜100nm(より好ましくは2〜50nm)であることが好ましい。
【0031】
更に、このような本発明の排ガス浄化触媒においては、前記白金、前記パラジウム及び/又はその固溶体に起因するCuKα線を用いたX線回折法における81.2°〜82.1°の間の(311)面由来の回折線ピークが81.5°以上であることが必要である。このような回折線ピークが、81.5°以上であることにより、白金とパラジウムとの固溶体が十分に形成していることを示している。なお、白金とパラジウムとの固溶体が十分に形成していない場合には、回折線ピークが81.5°未満となる。
【0032】
また、本発明の排ガス浄化触媒においては、前記担体が、二酸化炭素昇温脱離測定による担体1g当たりの二酸化炭素の脱離量を基準として求められる塩基点量が40〜120μmol−CO
2/gの担体であり、かつ、アンモニア昇温脱離測定による担体1g当たりのアンモニアの脱離量を基準として求められる酸点量が150μmol−NH
3/g以上の担体であることが好ましい。このような塩基点量が前記下限未満では、貴金属が高分散しにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貴金属がメタル状になりにくい傾向にある。なお、貴金属の分散性とメタル化の観点から、前記担体の塩基点量が60〜100μmol−CO
2/gであることが好ましい。また、このような担体の酸点量が前記下限未満では、貴金属がメタル状態になりにくい傾向にある。なお、貴金属分散性とメタル化との両立の観点から、前記担体の酸点量が150〜250μmol−NH
3/gであることが好ましい。
【0033】
前記塩基点量の測定方法としては、以下の二酸化炭素(CO
2)昇温脱離測定を採用できる。すなわち、先ず、600℃程度において、O
2とN
2とからなるガス(又は、O
2とHeとからなるガス等)を触媒担体に対して供給し、次いで、温度を100℃程度まで下げ、CO
2とN
2とからなるガス(又は、CO
2とHeとからなるガス等)を前記触媒担体に対して供給し、前記担体にCO
2を吸着させる。次いで、昇温速度を10℃/分程度として600℃程度になるまで昇温しながら前記担体にN
2ガス(又は、Heからなるガス等)を供給し、前記担体からCO
2を脱離させ、その量を測定する。このようなガス濃度の測定には、市販の触媒評価装置(ベスト測器社製「CATA−5000」、堀場製作所社製「MEXA−4300FT」、等)を用いることができる。そして、このようにして測定された触媒担体1g当たりのCO
2の脱離量を本発明における塩基点量とする。
【0034】
また、前記酸点量の測定方法としては、以下のアンモニア(NH
3)昇温脱離測定を採用できる。すなわち、先ず、600℃程度において、O
2とN
2とからなるガス(又は、O
2とHeとからなるガス等)を触媒担体に対して供給し、次いで、温度を100℃程度まで下げ、NH
3とN
2とからなるガス(又は、NH
3とHeとからなるガス等)を前記触媒担体に対して供給し、前記担体にNH
3を吸着させる。次いで、昇温速度を10℃/分程度として600℃程度になるまで昇温しながら前記担体にN
2ガス(又は、Heからなるガス等)を供給し、前記担体からNH
3を脱離させ、その量を測定する。このようなガス濃度の測定には、市販の触媒評価装置(ベスト測器社製「CATA−5000」、堀場製作所社製「MEXA−4300FT」、等)を用いることができる。そして、このようにして測定された触媒担体1g当たりのNH
3の脱離量を本発明における酸点量とする。
【0035】
なお、本発明の排ガス浄化触媒の形態としては、特に制限されないが、例えば、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態にすることができ、更に、粉末状のものをそのまま所望の箇所に配置する形態とすることもできる。このような形態の排ガス浄化触媒を製造する方法としては、特に制限されないが、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、触媒をペレット状に成型してペレット形状の排ガス浄化触媒を得る方法や、触媒を触媒基材にコートすることにより、触媒基材にコート(固定)した形態の排ガス浄化触媒を得る方法等を適宜採用してもよい。なお、このような触媒基材としては、特に制限されないが、例えば、得られる排ガス浄化触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用される。また、このような触媒基材の材質も、特に制限されないが、例えば、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。更に、本発明の排ガス浄化触媒は、他の触媒と組み合わせて利用してもよい。このような他の触媒としては、特に制限されないが、公知の触媒(例えば、酸化触媒、NOx還元触媒、NOx吸蔵還元型(NSR触媒)、等)を適宜用いてもよい。
【0036】
[排ガス浄化触媒の製造方法]
次に、本発明のガス浄化触媒の製造方法を説明する。本発明の排ガス浄化触媒の製造方法は、アルミナ粒子にイットリウム塩溶液を用いてアルミナ及びイットリアからなる担体を得る工程(担体準備工程)と、前記担体に白金塩とパラジウム塩の溶液を用いて白金及びパラジウムを担持せしめる工程(活性金属担持工程)と、前記白金及びパラジウムが担持された担体を700〜1000℃の範囲内の温度で焼成せしめることにより前記本発明の排ガス浄化触媒を得る工程(焼成工程)とを含むことを特徴とする方法である。このような方法により、低温でのCO及びHCに対する十分に高い酸化活性を有する本発明の排ガス浄化触媒を製造することができる。
【0037】
(担体準備工程)
本発明の排ガス浄化触媒の製造方法においては、まず、アルミナ粒子にイットリウム塩溶液を用いてアルミナ及びイットリアからなる担体を得る(担体準備工程)。
【0038】
このような本発明の製造方法にかかる担体準備工程において用いるアルミナ粒子としては、特に制限されないが、例えば、公知のアルミナの製造方法を適宜採用して得られるアルミナや、市販のアルミナを用いることができる。このようなアルミナの製造方法としては、例えば、硝酸アルミニウム溶液にアンモニア水を添加して中和して得られる沈殿物を500〜1200℃程度で0.5〜10時間程度焼成した後、乾式粉砕してアルミナを得る方法が挙げられる。
【0039】
また、このようなアルミナ粒子の粒子径としては、平均粒子径が0.5〜100μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。前記アルミナ粒子の平均粒子径が、前記下限未満では、担体の粒成長が起こりやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貴金属が高分散に担持されない傾向にある。
また、このようなアルミナ粒子の比表面積としては、5〜300m
2/gであることが好ましく、10〜200m
2/gであることがより好ましい。前記比表面積が、前記下限未満では、活性金属の分散度が低下して十分な活性を得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担体の粒成長が起こりやすい傾向にある。
【0040】
次に、このような本発明の製造方法にかかる担体準備工程において用いるイットリウム塩溶液としては、特に制限されないが、例えば、イットリウム(Y)の硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物(弗化物、塩化物等)、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、等のイットリウム塩又はその錯体の溶液が挙げられ、中でも、担体への均一な担持の観点から、硝酸塩やクエン酸錯体の溶液が好ましい。また、溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水(好ましくはイオン交換水及び蒸留水等の純水)等の溶媒が挙げられる。なお、このようなイットリウム塩溶液の濃度としては、特に制限されないが、イットリウム(Y)イオンとして0.01〜1.0mol/Lであることが好ましい。
【0041】
更に、このような前記アルミナ粒子に前記イットリウム塩溶液を用いてアルミナ及びイットリアからなる担体を得る方法としては、特に制限されないが、例えば、前記イットリウム塩溶液に前記アルミナ粒子を含浸せしめる方法、前記イットリウム塩溶液を前記アルミナ粒子に吸着担持せしめる方法等、公知の方法を適宜採用できる。また、このように前記アルミナ粒子に前記イットリウム塩溶液を接触せしめる際においては、前記アルミナ粒子に対する前記イットリウム塩溶液中のイットリウム元素の担持量が、金属換算([水溶液中のイットリウム元素のモル数]/[アルミナ粒子の質量])で0.02〜0.25mol/gとなることが好ましく、0.03〜0.20mol/gとなることがより好ましい。前記イットリウム元素の担持量が、前記下限未満では、貴金属の分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貴金属のメタル化が困難になる傾向にある。
【0042】
(活性金属担持工程)
次に、本発明の排ガス浄化触媒の製造方法においては、前記担体準備工程において得られた担体に、白金塩とパラジウム塩の溶液を用いて白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を担持せしめる(活性金属担持工程)。
【0043】
このような本発明の製造方法にかかる活性金属担持工程において用いる白金塩とパラジウム塩の溶液としては、特に制限されないが、例えば、白金塩としては、白金(Pt)の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、ジニトロジアンミン塩等又はそれらの錯体が挙げられ、中でも、担持されやすさと高分散性の観点から、ジニトロジアンミン塩が好ましい。また、パラジウム塩としては、特に制限されないが、例えば、パラジウム(Pd)の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、ジニトロジアンミン塩等又はそれらの錯体の溶液が挙げられ、中でも、担持されやすさと高分散性の観点から、硝酸塩やジニトロジアンミン塩が好ましい。また、溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水(好ましくはイオン交換水及び蒸留水等の純水)等のイオン状に溶解せしめることが可能な溶媒が挙げられる。なお、このような白金塩とパラジウム塩の溶液の濃度としては、特に制限されないが、白金又はパラジウムのイオンとして0.0002〜0.04mol/Lであることが好ましい。
【0044】
また、このような前記担体に前記白金塩とパラジウム塩の溶液を用いて白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を担持せしめる方法としては、特に制限されないが、例えば、前記白金塩とパラジウム塩の溶液に前記担体を含浸せしめる方法、前記白金塩とパラジウム塩の溶液を前記担体に吸着担持せしめる方法等、公知の方法を適宜採用できる。また、このように前記担体に前記白金塩とパラジウム塩の溶液を担持せしめる際においては、前記アルミナ粒子に対する前記白金塩とパラジウム塩の溶液中の白金元素及びパラジウム元素の担持量が、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.1〜20質量部となることが好ましく、0.5〜12質量部となることがより好ましい。前記白金元素及びパラジウム元素の担持量が、前記下限未満では、低温でのCO及びHCに対する高い酸化活性が十分に得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貴金属の有効利用及びコスト面で不利になる傾向にある。なお、このような担持量としては、触媒性能とコストの観点から、前記白金元素の担持量が、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜6質量部であることがより好ましい。また、このような担持量としては、触媒性能とコストの観点から、前記パラジウム元素の担持量が、金属換算で、前記担体100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜6質量部であることがより好ましい。
【0045】
(焼成工程)
次いで、本発明の排ガス浄化触媒の製造方法においては、前記活性金属担持工程において得られた白金及びパラジウムが担持された担体(活性金属担持担体)を、700〜1000℃の範囲内の温度で焼成せしめることにより前記本発明の排ガス浄化触媒を得る(焼成工程)。
【0046】
このような本発明の排ガス浄化触媒の製造方法にかかる焼成工程においては、白金及びパラジウムが担持された担体(活性金属担持担体)を700〜1000℃の範囲内の温度で焼成せしめること必要である。前記焼成温度が、前記下限未満では、排ガス浄化触媒に担持された白金及びパラジウムの固溶体が生成しないため低温からCO及びHCに対する十分に高い酸化活性を発揮することができず、他方、前記上限を超えると、固溶体の高分散担持が困難となる。なお、このような焼成温度は、固溶体形成と分散性という観点から、750〜900℃の範囲内の温度であることが好ましく、750〜850℃の範囲内の温度であることがより好ましい。また、焼成(加熱)時間としては、前記焼成温度により異なるものであるため一概には言えないが、3〜20時間であることが好ましく、4〜15時間であることがより好ましい。更に、このような焼成工程における雰囲気としては、特に制限されないが、大気中或いは窒素(N
2)等の不活性ガス中であることが好ましい。
【0047】
[排ガス浄化方法]
次に、本発明の排ガス浄化方法について説明する。本発明の排ガス浄化方法は、前記本発明の排ガス浄化触媒に内燃機関からの排ガスを接触せしめて排ガスを浄化することを特徴とする方法である。
【0048】
このよう本発明の排ガス浄化方法において、前記排ガス浄化触媒に排ガスを接触させる方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、内燃機関から排出されるガスが流通する排ガス管内に上記本発明にかかる排ガス浄化触媒を配置することにより、排ガス浄化触媒に対して内燃機関からの排ガスを接触させる方法を採用してもよい。
【0049】
なお、本発明の排ガス浄化方法において用いる前記本発明の排ガス浄化触媒は、低温でのCO及びHCに対する十分に高い酸化活性を有するものであるため、低温からCO及びHCに対する十分に高い酸化活性を発揮することが可能であり、このような前記本発明の排ガス浄化触媒に、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関からの排ガスを接触させることで、十分に排ガス中のCO及びHCを浄化することが可能となる。このような観点から、本発明の排ガス浄化方法は、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出されるような排ガス中のCO及びHCを浄化するための方法等として好適に採用することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
先ず、イットリウム塩溶液として、クエン酸(和光純薬工業製、特級)34.6g(0.18mol)をイオン交換水34gに溶解させた後、酢酸イットリウム四水和物(和光純薬工業製)20.3g(0.06mol)を加え、室温(25℃)において約6時間撹拌し、イットリウムクエン酸錯体水溶液を準備した。次に、得られたイットリウムクエン酸錯体水溶液を用いて、イットリウム0.05molに相当する量をアルミナ粉末(MI307、WRグレース社製)150gに担持せしめ、ロータリエバポレータで乾燥後、大気中、800℃の温度条件で5時間焼成することにより、イットリア表面修飾アルミナ担体を得た。
【0052】
次いで、得られたイットリア表面修飾アルミナ担体に、ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液(0.014mol/L)及び硝酸パラジウム水溶液(0.0063mol/L)を用いて、前記アルミナ粉末150gに対して白金の担持量が5.4g及びパラジウムの担持量が1.35gとなるように含浸させて担持せしめた後、大気中、550℃において2時間焼成し、続いて、大気中、750℃の温度条件で5時間焼成することにより、排ガス浄化触媒(粉末)を得た。
【0053】
(実施例2)
アルミナ粉末へのイットリウム担持量を、イットリウムクエン酸錯体水溶液を用いてイットリウム0.10molに相当する量とした以外は、実施例1と同様にしてイットリア表面修飾アルミナ担体を作製し、得られたイットリア表面修飾アルミナ担体を用いて実施例1と同様にして排ガス浄化触媒を得た。
【0054】
(
比較例4)
アルミナ粉末へのイットリウム担持量を、イットリウムクエン酸錯体水溶液を用いてイットリウム0.20molに相当する量とした以外は、実施例1と同様にしてイットリア表面修飾アルミナ担体を作製し、得られたイットリア表面修飾アルミナ担体を用いて実施例1と同様にして排ガス浄化触媒を得た。
【0055】
(比較例1)
アルミナ粉末(MI307、WRグレース社製)150gに、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液及び硝酸パラジウム溶液を用いて白金及びパラジウムの担持量が表1に示す量となるように白金及びパラジウムを担持せしめ、大気中、550℃において2時間焼成し、続いて、大気中、750℃の温度条件で5時間焼成することにより、比較用触媒を得た。
【0056】
(比較例2)
クエン酸(和光純薬工業製、特級)34.6g(0.18mol)をイオン交換水34gに溶解させた後、酢酸イットリウム四水和物(和光純薬工業製)20.3g(0.06mol)を加え、室温(25℃)において約6時間撹拌し、イットリウムクエン酸錯体水溶液を準備した。次に、得られたイットリウムクエン酸錯体水溶液を用いて、イットリウム0.10molに相当する量をアルミナ粉末(MI307、WRグレース社製)150gに担持し、ロータリエバポレータで乾燥後、大気中、800℃の温度条件で5時間焼成することにより、イットリア表面修飾アルミナ担体を得た。次いで、得られたイットリア表面修飾アルミナ担体に、ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液(0.014mol/L)及び硝酸パラジウム水溶液(0.0063mol/L)を用いて、前記アルミナ粉末150gに対して白金の担持量が5.4g及びパラジウムの担持量が1.35gとなるように含浸させて担持せしめた後、大気中、550℃において2時間焼成し、続いて、大気中、550℃において5時間焼成することにより、比較用触媒を得た。
【0057】
(比較例3)
アルミナ粉末へのイットリウム担持量を、イットリウムクエン酸錯体水溶液を用いてイットリウム0.30molに相当する量とした以外は、実施例1と同様にしてイットリア表面修飾アルミナ担体を作製し、得られたイットリア表面修飾アルミナ担体を用いて実施例1と同様にして、比較用触媒を得た。
【0058】
なお、実施例1〜
2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜
4で得られた比較用触媒について、表1に、担体中のイットリアの含有量(質量%)、アルミナ100g当たりの白金及びパラジウムの担持量(g)及び白金とパラジウムの含有比率を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
[実施例1〜
2及び比較例1〜
4で得られた触媒の特性の評価]
<活性評価試験>
実施例1〜
2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜
4で得られた比較用触媒をそれぞれ用いて、各触媒の酸化性能を測定した。
【0061】
このような酸化性能の測定試験においては、先ず、固定床流通式反応装置を用い、内径15mmの石英反応管に酸化アルミニウム粉末1gを含む重量の触媒を充填し、CO
2(10容量%)、O
2(10容量%)、CO(800ppm)、C
3H
6(400ppmC)、NO(100ppm)、H
2O(5容量%)、N
2(残部)からなるモデルガスを10L/分の流量で供給しながら、触媒への入りガス温度を10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、300℃で5分間加熱した後、触媒の床温(触媒への入りガス温度)が100℃となるまで冷却する処理(前処理)を施した。
【0062】
次いで、前記前処理後の触媒に対して前記モデルガスを10L/分で供給しながら、触媒への入りガス温度を10℃/分の昇温速度で100℃から300℃まで昇温した。そして、このような昇温中における触媒からの出ガス(触媒に接触した後に石英反応管から排出されるガス)中のCO濃度を連続ガス分析計を用いて測定し、上記モデルガス中のCO濃度と出ガス中のCO濃度とからCO転化(酸化)率を算出し、CO転化(酸化)率が50%に到達したときの温度を50%CO酸化温度(℃)として求めた。また、同様にしてHC(C
3H
6)転化(酸化)率が50%に到達したときの温度を50%HC酸化温度(℃)として求めた。なお、実施例1〜
2及び比較例1〜
4で得られた排ガス浄化触媒の50%CO酸化温度を示すグラフを
図1に示す。また、実施例1〜
2及び比較例1〜
4で得られた排ガス浄化触媒の50%HC酸化温度を示すグラフを
図2に示す。
【0063】
表1及び
図1〜2に示した結果から明らかなように、実施例1〜
2の排ガス浄化触媒は、50%CO酸化温度及び50%CO酸化温度において高いCO酸化活性及びHC酸化活性を示していることが確認された。なお、実施例1〜2の排ガス浄化触媒は、比較例1〜
4より高いCO酸化活性及びHC酸化活性を示すことが確認され
た。
【0064】
<白金とパラジウムの固溶状態の測定:X線回折測定>
実施例1〜
2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜
4で得られた比較用触媒について、X線回折(XRD)パターンを粉末X線回折装置(リガク社製、「RINT−TTR」RINT−TTR」)を用いて、スキャンステップ0.01°、発散スリット2/3°、発散スリット8mm、CuKα線、40kV、40mA、スキャン速度10°/minの条件で測定を行なった。また、白金、パラジウム及びその固溶体の(311)結晶面に由来する81.2°〜82.1°の間の回折線ピーク(2θ)の値を確認した。得られた結果を表1に示す。
【0065】
次に、実施例1〜
2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜
4で得られた比較用触媒について、貴金属(白金、パラジウム及び/又はその固溶体)の粒子径(平均粒子径)を、その(311)結晶面に由来する回折線ピークの半値幅より、シェラーの式(Scherrer’s equation)を用いて算出することにより測定した。得られた結果を
図3に示す。
【0066】
表1及び
図3に示した結果から明らかなように、実施例1〜
2の排ガス浄化触媒の貴金属(白金、パラジウム及び/又はその固溶体)の粒子径は、比較例1及び3と比較して同等或いは小さいことが確認された。
【0067】
一方、比較例2の比較用触媒は、貴金属粒子径が最も小さかったが、表1に示されるように、比較例2の触媒では(311)結晶面に由来する回折線ピークが81.5°未満であり、白金とパラジウムとの固溶度が低いことが確認された。
【0068】
したがって、実施例1〜
2の排ガス浄化触媒のCO酸化活性及びHC酸化活性が高いのは、白金とパラジウムとの固溶度が高く、かつ、その粒子径が小さいためであることが確認された。
【0069】
また、実施例1〜
2の排ガス浄化触媒の性能評価試験結果から、担体中のイットリア含有量が
3.5重量%〜
12重量%の範囲内において、かつ、(311)結晶面に由来する回折線ピークが81.5°以上である場合において、低温でのCO及びHCに対する十分に高い酸化活性を有する排ガス浄化触媒が得られていることが確認された。
【0070】
<塩基点量及び酸点量の測定>
実施例1〜
2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜
4で得られた比較用触媒について、塩基点量及び酸点量の測定を行った。
【0071】
このような塩基点量の測定方法においては、先ず、測定用の試料として、担体を1g準備した。次に、昇温脱離装置(ヘンミ計算尺社製、TP5000)を用いて、前記測定用試料に対して、表2に示す前処理用モデルガスを供給しながら、昇温速度を40℃/分として600℃になるまで昇温した。次いで、このようなガスの温度が600℃になった後においては、前記前処理用モデルガスを供給しながらガスの温度を600℃に保持し20分間接触させた。その後、前記前処理用モデルガスの供給を停止し、N
2ガスを30分間供給して、100℃まで冷却した。次に、表2に示すCO
2吸着用モデルガスを供給し、100℃で10分間CO
2を吸着させた。その後、表2に示すCO
2脱離用モデルガスを供給しながら100℃で10分間パージした。次に、前記測定用試料に対して、初期温度を100℃として10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温しながら表2に示すCO
2脱離用モデルガスを供給して、担体からCO
2を脱離させる(CO
2脱離処理)。そして、このようなCO
2脱離処理において、CO
2脱離用モデルガスを昇温し始めた時点からガス温度が600℃になるまでの間の出ガス中のCO
2の量を測定する(CO
2昇温脱離測定)。
図4に、実施例1〜
2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜
4で得られた比較用触媒の二酸化炭素昇温脱離測定による担体1g当たりの二酸化炭素の脱離量を基準として求められる塩基点量を示す。
【0072】
【表2】
【0073】
次に、酸点量の測定方法においては、先ず、測定用の試料として、担体を1g準備した。次いで、前記と同様に、昇温脱離装置(ヘンミ計算尺社製、TP5000)を用いて、前記測定用試料に対して、表3に示す前処理用モデルガスを供給しながら、昇温速度を40℃/分として600℃になるまで昇温した。次に、このようなガスの温度が600℃になった後においては、前記前処理用モデルガスを供給しながらガスの温度を600℃に保持し20分間接触させた。その後、前記前処理用モデルガスの供給を停止し、N
2ガスを30分間供給して、100℃まで冷却した。次いで、表3に示すNH
3吸着用モデルガスを供給し、100℃で20分間NH
3を吸着させた。その後、表3に示すNH
3脱離用モデルガスを供給しながら100℃で10分間パージした。次に、前記測定用試料に対して、初期温度を100℃として10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温しながら表3に示すNH
3脱離用モデルガスを供給して、担体からNH
3を脱離させる(NH
3脱離処理)。そして、このようなNH
3脱離処理において、NH
3脱離用モデルガスを昇温し始めた時点からガス温度が600℃になるまでの間の出ガス中のNH
3の量を測定する(NH
3昇温脱離測定)。
図5に、実施例1〜
2で得られた排ガス浄化触媒及び比較例1〜
4で得られた比較用触媒のアンモニア昇温脱離測定による担体1g当たりのアンモニアの脱離量を基準として求められる酸点量を示す。
【0074】
【表3】
【0075】
図4及び
図5に示した結果から明らかなように、実施例1〜
2の排ガス浄化触媒は、担体が適度な塩基点量と酸点量とを併せ持つことにより、貴金属(白金、パラジウム及び/又はその固溶体)の高分散化とメタル化を両立させることができ、高いCO酸化活性及びHC酸化活性が発現することが確認された。
【0076】
なお、一般的にイットリアはアルミナと比べて塩基性が高いので、担体中のイットリア含有量が多いほど塩基点量が多くなると予想される。実施例1〜
2の排ガス浄化触媒は、担体中のイットリア含有量を
3.5重量%〜
12重量%とすることにより、担体中にイットリアを含まない比較例1の比較用触媒と比べて塩基点量が多く、かつ、担体中のイットリア含有量が
12重量%より多い比較例3
、4の比較用触媒と比べて塩基点量が少なかった。一方、実施例1〜
2の排ガス浄化触媒は、比較例1の比較用触媒と比べて酸点量が多かった。
【0077】
以上、表1及び
図1〜5に示した実施例1〜
2の結果と比較例1〜
4の結果との比較から明らかなように、実施例1〜
2の排ガス浄化触媒は、低温でのCO及びHCに対する十分に高い酸化活性を有していることが確認された。