(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外周旋回溝に前記ボールが収容された状態で前記ボールナットの外周面よりも外側に当該ボールがはみ出ないように、前記外周旋回溝の深さが設定されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のボールねじ装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るボールねじ装置11が適用された電動アクチュエータ1の模式的な断面図である。電動アクチュエータ1は、駆動軸2を軸方向Xに出退させることにより駆動対象を駆動する。
【0015】
電動アクチュエータ1は、電動モータ3と、駆動軸2と、電動モータ3の回転トルクを伝達する減速機構4と、減速機構4を介して伝達された電動モータ3の回転トルクを、駆動軸2の軸方向Xの直線運動に変換するボールねじ装置11と、駆動軸2、減速機構4およびボールねじ装置11を収容するハウジング6とを備えている。
ハウジング6は、第1ハウジング6Aと、その端面に突き合わされた第2ハウジング6Bとを有し、固定ボルト(図示しない)によって互いに結合されている。
【0016】
電動モータ3は、第1ハウジング6Aに取り付けられている。電動モータ3の出力軸3Aは第1ハウジング6Aを挿通し、第2ハウジング6Bに装着された転がり軸受7によって回転可能に支持されている。
駆動軸2は、ボールねじ装置11のねじ軸22と一体に形成されている。駆動軸2は、第2ハウジング6B内において、すべり軸受14を介して回転可能に支持されている。
【0017】
減速機構4は、第1歯車8と、第2歯車9とを備えている。第1歯車8は、第1および第2ハウジング6A,6Bの間に収容配置されており、電動モータ3の出力軸3Aの端部に相対回転不能に取り付けられている。第2歯車9は、ボールナット10の外周に外嵌され、かつ第1歯車8に噛み合っている。ボールナット10は、第1ハウジング6Aの内周に外嵌装着された転がり軸受13、および第2ハウジング6Bの内周に装着された転がり軸受16によって回転可能に支持されている。第2歯車9、転がり軸受13および転がり軸受16は、ボールナット10の外周に外嵌固定されている。
【0018】
図2は、ボールねじ装置11の模式的な側面図である。
図3は、ボールねじ装置11の分解斜視図である。
図3では、ボールねじ装置11のうちねじ軸22を省略した構成を示している。
図4は、ボールねじ装置11の模式的な縦断面図である。
図2〜
図4に示すように、ボールねじ装置11は、軸方向Xに沿って延びるねじ軸22と、ねじ軸22に対して外嵌されたボールナット10と、ねじ軸22とボールナット10との間に介在された複数のボール24と、ボールナット10の外周を包囲する円筒12と、一対のコマ40とを含む。また、換言すると、軸方向Xは、ねじ軸22の軸方向である。ボールねじ装置11は、理論上必要な有効巻数が2.7であり、その理論上の有効巻数をそのまま採用している。
【0019】
図2および
図4に示すように、ねじ軸22の外周面22Aにはねじ溝41が形成されている。ねじ溝41は、ねじ軸22の円中心を中心として旋回しながら軸方向Xの他方(
図2および
図4の右方)へ徐々にずれる螺旋状の溝である。ねじ溝41の断面は、略U字状の湾曲面である。外周面22Aには、軸方向Xに隣り合うねじ溝41の境界をなす螺旋状のねじ山42が形成されている。
【0020】
図3および
図4に示すように、ボールナット10は、鋼などの金属を用いて形成され、軸方向Xに延びる筒状体である。その内周面10Aおよび外周面10Bは、軸方向Xに延びる中心軸を有する円筒面となっている。
ボールナット10の内周面10Aには、ねじ溝43が形成されている。ねじ溝43は、内周面10Aの円中心を中心として旋回しながら軸方向Xの他方(
図4の右方)へ徐々にずれる螺旋状の溝である。ねじ溝43の断面は、略U字状の湾曲面である。内周面10Aには、軸方向Xに隣り合うねじ溝43の境界をなす螺旋状のねじ山44が形成されている。
【0021】
ボールナット10の内周面10Aには、2つの収容穴(収容凹所)45が形成されている。2つの収容穴45は、内周面10Aにおいて、軸方向Xに間隔を空けられた転動開始位置(他方の収用凹所形成位置)47Aおよび転動終了位置(一方の収容凹所形成位置)47Bに配置されている。より具体的には、転動開始位置47Aおよび転動終了位置47Bは、内周面10Aのねじ溝43の内壁に開口している。2つの収容穴45は、平行になった状態で、軸方向Xに間隔を隔てて(この実施形態では、ねじ溝43の3つ分に相当)に間隔を隔てて配置されている。各収容穴45は、内周面10Aの径方向外側へ延びて、ボールナット10の周壁10Cを径方向に貫通している。
【0022】
軸方向Xにおいてボールナット10の内周面10Aが存在する領域において、ボールナット10のねじ溝43と、ねじ軸22の外周面22Aにおいて内周面10Aに対向している部分におけるねじ溝41とによって、ボール転動路47(
図4参照)が形成されている。つまり、ボールナット10およびねじ軸22の互いのねじ溝41,43によって螺旋状のボール転動路47が形成されている。ボール転動路47は、略円形状の断面を有しており(
図4参照)、ボールナット10やねじ軸22の円中心を中心として旋回しながら軸方向Xの他方(
図4の右方)へ徐々にずれる螺旋状をなしている。軸方向Xにおいて隣り合うボール転動路47の間には、ねじ軸22のねじ山42とボールナット10のねじ山44とが径方向に対向した状態で配置されており、これらのねじ山42,44は、軸方向Xにおいて隣り合う2列のボール転動路47の境界をなしている。
【0023】
図4に示すように、各収容穴45は、ボールナット10の外周面10B側の外領域45Aと、外領域45Aよりも内周面10A側の内領域45Bとを含んでいる。ボールナット10の外側(径方向外側)から見て、各収容穴45(外領域45Aおよび内領域45Bの両方)は、ねじ溝43の傾斜角に相当する角度だけ周方向Yに対して傾斜する方向に沿って長い。
【0024】
ボールナット10において各収容穴45を区画する部分には、外領域45Aと内領域45Bとの境界をなす段差部分46が形成されている。
図3および
図4に示すように、ボールナット10の外周面10Bには、外周旋回溝49が形成されている。外周旋回溝49は、外周面10Bの円中心(すなわち、内周面10Aの円中心)を中心として旋回し、軸方向Xの一方(
図4の左方)へずれる螺旋状の溝である。換言すると、外周旋回溝49は、外周面10Bに沿って螺旋状に旋回している。
【0025】
この実施形態では、外周旋回溝49として一巻きの外周旋回溝を例示している。外周旋回溝49の断面は略U字状(略半円状)またはコ字状をなしており(
図4ではU字状)、外周旋回溝49は、ボール24(
図4では黒丸で示す)の全部分を収容できる溝深さD(
図4参照)を有し、エンドミル等を用いて切削形成される。外周旋回溝49の一端49A(
図3参照)は、転動開始位置47A側(
図3の左手前側)の収容穴45を区画している周壁10Cに接続されており、外周旋回溝49の他端49Bは、転動終了位置47B側(
図3の右奥側)の収容穴45を区画している周壁10Cに接続されている。
【0026】
外周旋回溝49と円筒12の内周面12Aとによって、旋回転動路60が形成される。旋回転動路60は、ボールナット10やねじ軸22の円中心を中心として旋回しながら、軸方向Xの一方(
図4の左方)へ徐々にずれる螺旋状をなしている。なお、旋回転動路60によって導かれる軸方向は、ボール転動路47によって導かれる軸方向とは逆向きの軸方向である。
【0027】
図4に示すように、ボール24は、金属等で形成された小さな球体であって、ボール転動路47内に配置されており、ボール転動路47内で自由に転動できる。なお、説明の便宜上、
図4では、ボール転動路47内に配置される全てのボール24のうちの一部のみ(黒丸部分参照)を図示している(後述する
図6、
図7、
図9、
図14、
図17、
図18、
図22〜
図25でも同様)。
【0028】
図3および
図4に示すように、円筒12は鋼などの金属を用いて形成されており、その内周面12Aおよび外周面12Bは、それぞれ、ボールナット10の内外周面10A,10Bと同軸を有する円筒面となっている。円筒12の内周面12Aおよび外周面12Bには溝が形成されておらず、換言すると、内周面12Aおよび外周面12Bは、次に述べる係合穴48が形成される位置を除いて、それぞれ円筒面のみから形成されている。円筒12は、ボールナット10の外周面10B全域をすっぽり包囲した状態で、ボールナット10に同伴回転可能かつ軸方向Xに同伴移動可能に取り付けられている。円筒12の内径はボールナット10の外径よりも若干大きく設定されており、そのため、ボールナット10に対する円筒12の取付状態では、円筒12の内周面12Aが、ボールナット10の外周面10Bとの間に微小間隔Sを隔てて設けられている。
【0029】
図3および
図4に示すように、円筒12の内周面12Aには、円筒12を厚み方向に貫通する2つの係合穴(係合凹所)48が形成されている。係合穴48は、収容穴45と同数(この実施形態では2つ)設けられている。2つの係合穴48は、平行になった状態で、軸方向Xに間隔を隔てて(この実施形態では、ねじ溝43の3つ分に相当)配置されている。円筒12がボールナット10に同伴回転可能に設けられる状態において、2つの係合穴48の径方向外方から見た形状が、それぞれ収容穴45の外領域45A(
図4参照)に整合している。
【0030】
コマ40は、小片状をなし、収容穴45と同数(この実施形態では2つ)設けられており、各収容穴45に1つずつ装着される。各コマ40は、収容穴45および係合穴48の双方を挿通している。コマ40の材質としては、樹脂や金属などを採用できる。
図5Aは、コマ40の斜視図である。
図5Bは、
図5Aを右奥側から見た斜視図である。
図5Aおよび
図5Bに示すように、コマ40は、外部分51と内部分52とを一体的に含んでいる。
【0031】
外部分51は、ブロック状をなしている。外部分51は、円筒12をボールナット10に取り付けた状態における、収容穴45の外領域45A(
図4参照)および係合穴48を足し合わせた領域にちょうど嵌る形状を有しており、たとえば、四隅の端縁が面取りされた直方体状である。なお、外部分51において
図5Aおよび
図5Bで大きく表れている表面を外面51Aと呼ぶことにすると、
図5Aおよび
図5Bでは外面51Aを平坦面状に描いているが、外面51Aが、円筒12の外周面12Bに面一になるように湾曲している。
【0032】
内部分52は、外部分51の長手方向に沿って長手のブロック状である。内部分52は、収容穴45の内領域45B(
図4参照)にちょうど嵌る形状を有しており、内部分52では、長手方向における両端部が丸められている。外部分51において、外面51Aとは反対側の面を内面51Bと呼ぶことにすると、内部分52は、内面51Bに固定されている。外部分51の厚み方向から見て、内部分52は、外部分51の輪郭の内側に位置している。
【0033】
各コマ40は、接続路54を有している。接続路54は、コマ40の内部をトンネル状に延び、コマ40の長手方向の一端面(
図5Aの左手前側端面)に開口する円形の外側開口55と、コマ40の長手方向の他端面(
図5Aの右奥側端面)に開口する円形の内側開口56とを連通し、断面円形をなしている。
外側開口55と内側開口56とは、径方向位置(円中心からの距離)が互いに異ならされており、外側開口55が内側開口56よりも径方向外側に配置されている。そのため、接続路54は、内側開口56から外側開口55に向かうに従って径方向外側に向かう傾斜状をなしている。
【0034】
図4に示すように、各コマ40は、ボールナット10の収容穴45および円筒12の係合穴48に対して、ボールナット10側から、より詳しくはボールナット10の径方向外側から装着(挿入)される。収容穴45および係合穴48の双方にコマ40が装着された状態では、外部分51が収容穴45の外領域45Aおよび係合穴48に収容され、内部分52が、収容穴45の内領域45Bに収容される。このとき、外部分51の内面51Bの周縁部が、収容穴45における段差部分46に対してボールナット10の径方向外側から当接しており、これによって、コマ40が収容穴45内で位置決めされる。また、長方体状の外部分51における四隅が外面51A側からかしめられることによって、各コマ40は、ボールナット10および円筒12の双方に固定される。各収容穴45に装着されているコマ40が係合穴48の周囲の周壁に係合すること(係合穴48への嵌合)により、円筒12のボールナット10に対する相対回転および相対軸方向X移動が阻止される。換言すると、第1実施形態では、特許請求の範囲の「相対回転阻止構造」は、係合穴48とコマ40とを有し、収容穴45に収容されているコマ40の一部が係合穴48に嵌合(係合)する構造である。
【0035】
図6は、コマ40の装着状態においてボールナット10を径方向外方から見た図である。
転動開始位置47A側(
図3の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ40と、転動終了位置47B側(
図3の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ40とは、周方向Yに関し互いに逆向きになるように装着される。転動開始位置47A側(
図3の左手前側)の収容穴45には、コマ40の外側開口55が外周旋回溝49の一端49Aに対向するようにコマ40が装着され、転動終了位置47B側(
図3の右奥側)の収容穴45には、コマ40の外側開口55が外周旋回溝49の他端49Bに対向するようにコマ40が装着される。
【0036】
ボールナット10および円筒12へのコマ40の装着状態において、コマ40の接続路54の外側開口55は、軸方向Xで同じ位置にある外周旋回溝49(旋回転動路60)に連通(合流)している。また、この状態において、コマ40の接続路54の内側開口56は、軸方向Xで同じ位置にあるボール転動路47に連通している。
これにより、2つのコマ40の接続路54と、外周旋回溝49と円筒12の内周面12Aとによって形成される旋回転動路60とが、軸方向Xにおけるボール転動路47のバイパスとなっている。換言すると、旋回転動路60および2つの接続路54によって、ボール転動路47内の転動終了位置47Bのボール24をボール転動路47内の転動開始位置47Aに戻すための循環路61が形成される。
【0037】
図7は、
図6の切断面線A−Aから見た断面図である。
図8は、
図7の切断面線B−Bから見た断面図である。なお、
図7では、便宜上、周方向Yが直線方向になるように描いている。したがって、ねじ軸22の外周面22A、およびボールナット10の内外周面10A,10Bは
図7においてそれぞれ直線状に示されているが、実際は円弧状をなしている(後述する
図9、
図17、
図18、
図24、
図25において同様)。
【0038】
図6〜
図8に示すように、転動終了位置47B側(
図3の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ40は、ボールナット10の内周側のボール転動路47から、外周側の旋回転動路60へとボール24を導くために用いられる。このとき、接続路54の内側開口56が入口54Aとして機能し、かつ接続路54の外側開口55が出口54Bとして機能する。
【0039】
図7に示すように、接続路54の外側開口55および内側開口56を除く部分では、接続路54に沿いかつ周方向Yに直交する方向の断面形状が直線状をなしている。接続路54において外側開口55付近および内側開口56付近の部分は、接続路54に沿いかつ周方向Yに直交する方向の断面形状が、接続路54の他の部分よりも勾配を緩やかにした湾曲状である。
【0040】
図8に示すように、接続路54は、周方向Yに沿う方向に関し、「く」の字状に屈曲している。具体的には、ねじ溝43とやや傾斜しつつ略直線状に延びる第1部分541と、外周旋回溝49に沿って略直線状に延びる第2部分542とを備えている。このような接続路54により、互いに向きの異なるねじ溝43と外周旋回溝49とを連通させることができる。
【0041】
図9は、
図6の切断面線C−Cから見た断面図である。
図6および
図9に示すように、転動開始位置47A側(
図3の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ40は、ボールナット10の外周側の旋回転動路60から、内周側のボール転動路47へとボール24を導くために用いられる。このとき、接続路54の外側開口55が入口54Aとして機能し、かつ接続路54の内側開口56が出口54Bとして機能する。なお、転動開始位置47A側(
図3の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ40は、転動終了位置47B側(
図3の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ40と同じ諸元を有している。
【0042】
図6〜
図9に示すように、ボール転動路47内のボール24は、ボールナット10の回転に伴ってボール転動路47内で転動しながらボール転動路47に沿って、転動開始位置47Aから転動終了位置47Bまで移動する。ボール24は、転動終了位置47Bに到達すると、転動終了位置47B側(
図3の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ40における接続路54の内側開口56から接続路54内に進入し、この接続路54を通って、ボールナット10の外周面10Bの外周旋回溝49に掬い上げられる(
図6に示す矢印参照)。
【0043】
その後、ボール24は、外周旋回溝49を含む旋回転動路60を移動してボールナット10の外周を旋回することで、軸方向Xにおいて今までとは逆向き(
図6の左側)へ進む。そして、旋回転動路60を通ったボール24は、転動開始位置47A側(
図3の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ40の接続路54の外側開口55(入口54A)から接続路54内に進入し、この接続路54を通って、ボール転動路47内の転動開始位置47Aに戻される(
図6に示す破線矢印参照)。つまり、ボール転動路47内を移動するボール24が、旋回転動路60および接続路54を含む循環路61によって循環され、これにより、ボール転動路47内におけるボール24の安定供給が可能になる。
【0044】
以上によりこの実施形態によれば、ボール24はボール転動路47内を、転動開始位置47Aから転動終了位置47Bまで移動し、転動終了位置47Bから一方のコマ40の接続路54を通って、ボールナット10の外周面10Bの外周旋回溝49に掬い上げられる。外周旋回溝49に掬い上げられたボール24は、外周旋回溝49によって形成される旋回転動路60を通ってボールナット10の外周を旋回した後、他方のコマ40の接続路54を通って、ボール転動路47内の転動開始位置47Aに戻される。すなわち、ボール転動路47内における転動終了位置47Bのボール24が、旋回転動路60を含む循環路61によって、ボール転動路47内における転動開始位置47Aに戻される。これにより、ボール24を、ボール転動路47内でスムーズに循環させることができる。
【0045】
また、ボールナット10の外周面10Bの外周旋回溝49と円筒12の内周面12Aとによって、循環路61に含まれる旋回転動路60が形成される。そのため、転動開始位置47Aおよび転動終了位置47Bが軸方向Xおよび周方向Yに如何なる相対関係を有していても、転動開始位置47Aと転動終了位置47Bとを循環路61でつなぐことが可能である。そのため、コマ40の相対的な配置位置に、軸方向Xに沿って延びる貫通孔をボールナット10の周壁10Cを形成する場合のような周方向Yの制約がない。これにより、コマ40の配置位置のレイアウトの自由度を高めることができる。そして、コマ40の配置位置に周方向Yの制約がなくなる結果、ボールねじ装置11の理論上の有効巻数をそのまま採用でき、ゆえに、ボールねじ装置11を軸方向Xに小型化することが可能になる。
【0046】
また、収容穴45に装着されているコマ40が係合穴48の周囲の周壁に係合することにより、円筒12のボールナット10に対する相対回転および相対軸方向X移動が阻止される。すなわち、ボールナット10および円筒12が互いに、軸方向Xおよび周方向Yの双方に関して位置決めされる。これにより、他の部材を用いることなく、相対回転阻止構造を設けることができ、これにより、円筒12のボールナット10に対する相対回転および相対軸方向X移動を阻止しつつ、部品点数が増加するのを防止できる。
【0047】
以上、この発明の第1実施形態について説明したが、前述の態様に限られない。たとえば、コマ40の有する接続路54の態様を変更することもできる。
図10は、第1実施形態の第1変形例に係る外周旋回溝49とねじ溝43との接続を説明するための図である。
図10に示すように、接続路154は、周方向Yに関し、ねじ溝43に沿って直線状に延びている。接続路154は、接続路154に沿いかつ周方向Yに直交する方向の断面形状が、接続路54(
図8等参照)の場合と同様である。
【0048】
この場合、螺旋状の外周旋回溝49と接続路154とをつなぐ接続溝101が、ボールナット10の外周面10Bに形成される。接続溝101は、接続路154に沿って略直線状に延び、外周旋回溝49の他端49Bにつながっている。
また、前述の第1実施形態では、コマ40が周方向Yに関し揃って配置されるとしたが、
図11に示すように、コマ40を周方向Yにずらして配置することが可能である。
【0049】
図11は、第1実施形態の第2変形例に係る収容穴45およびコマ40の配置を説明するための図である。この場合、一対の収容穴45は周方向Yにずれている。この場合、理論上必要な有効巻数がたとえば2.3であり、その理論上の有効巻数(2.3)をボールねじ装置11にそのまま採用している。これにより、コマ40の配置位置のレイアウトの自由度を高めることができ、ゆえに、ボールねじ装置11を、より一層、軸方向Xに小型化することができる。
【0050】
また、
図12は、第1実施形態の第3変形例に係るコマ40の構成を示す要部断面図である。第3変形例においては、
図12に示すように、接続路54,154に代えて用いられる接続路254が溝状をなしていてもよい。接続路254は、コマ40の長手方向に沿う、コマ40の側壁を突き破るように形成されている。
<第2実施形態>
図13は、本発明の第2実施形態に係るボールねじ装置311の分解斜視図である。
図14は、ボールねじ装置311の模式的な縦断面図である。
図13では、ボールねじ装置311からねじ軸22を省略した構成を示している。ボールねじ装置311は、たとえば、
図1を用いて説明した電動アクチュエータ1と同等の電動アクチュエータに適用される。
【0051】
第2実施形態において、第1実施形態に示された各部に対応する部分には、
図1〜
図9の場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
図13および
図14に示すように、ボールねじ装置311は、ねじ軸22と、ねじ軸22に対して外嵌されたボールナット10と、ねじ軸22とボールナット10との間に介在された複数のボール24と、ボールナット10の外周を包囲する円筒312と、一対のコマ340とを含む。ボールねじ装置311は、円筒として円筒312を採用しかつコマとしてコマ340を採用する点において、本発明の第1実施形態に係るボールねじ装置11と相違している。ボールねじ装置311は、理論上必要な有効巻数が2.7であり、その理論上の有効巻数をそのまま採用している。
【0052】
ボールナット10は、第1実施形態に係るボールナット10とほぼ同等の構成である。すなわち、ボールナット10は鋼などの金属を用いて形成され、軸方向Xに延びる筒状体であり、その内周面10Aおよび外周面10Bは、軸方向Xに延びる中心軸を有する円筒面となっている。ボールナット10の内周面10Aには、転動開始位置47Aおよび転動終了位置47Bに、ボールナット10の周壁10Cを厚み方向に貫通する2つの収容穴45が形成されている。
【0053】
図15は、円筒312の模式的な断面図である。
図16は、円筒312の模式的な側面図である。
図13〜
図16に示すように、円筒312は鋼などの金属を用いて形成されている。円筒312の内周面312Aおよび外周面312Bは、それぞれ、ボールナット10の内外周面10A,10Bと同軸を有する円筒面をなしている。換言すると、外周面312Bは円筒面のみから形成されている。円筒312は、ボールナット10の外周面10B全域をすっぽり包囲した状態で、ボールナット10に同伴回転可能に取り付けられている。円筒312の内径はボールナット10の外径よりも若干大きく設定されており、そのため、ボールナット10に対する円筒312の取付状態では、円筒312の内周面312Aが、ボールナット10の外周面10Bとの間に微小間隔Sを隔てて設けられている。円筒312は、係合凹所として一対の係合穴48に代えて軸方向溝348を設ける点で、本発明の第1実施形態に係る円筒12と異なっている。
【0054】
円筒312の内周面312Aには、係合凹所としての軸方向溝348が形成されている。軸方向溝348は、コマ340の外部分351を嵌合可能に設けられている。軸方向溝348は軸方向Xに沿って直線状に、円筒312の軸方向Xの一端(
図14に示す左端)から、円筒312の軸方向Xの他端(
図14に示す右端)に亘って延びている。軸方向溝348は、
図13〜
図16に示すように、一定の周方向Yの幅および一定深さに設定されている。円筒312がボールナット10に同伴回転可能に設けられる状態において、径方向外方から見た形状が、2つの収容穴45の外領域45Aに重複している。軸方向溝348の溝幅は、次に述べる各コマ340が嵌った状態においてボールナット10と円筒348とが相対回転しないように、各コマ340の周方向Yに沿う方向の長さと同じ長さに設定されている。
【0055】
コマ340は小片状をなし、収容穴45と同数(この実施形態では2つ)設けられており、各収容穴45に1つずつ装着される。各コマ340は、収容穴45に収容されており、その状態でボールナット10の外周面10Bから外方に突出する外部分351が、軸方向溝348に嵌合している。コマ340の材質としては、第1実施形態に係るコマ40と同様、樹脂や金属などを採用することができる。
【0056】
図13に示すように、コマ340は、外部分351と内部分52とを一体的に含んでいる。コマ340には、その内部をトンネル状に延びる接続路54が形成されている。コマ340は、本発明の第1実施形態に係るコマ40の外部分51よりも径方向の厚みが小さくされた厚肉の外部分351を設ける点で、本発明の第1実施形態に係るコマ40と異なっている。
【0057】
外部分351はブロック状をなしている。外部分351は、円筒312をボールナット10に取り付けた状態において、径方向外方から見て収容穴45の外領域45Aに整合する形状を有しており、たとえば、四隅の端縁が面取りされた直方体状である。なお、外部分351において外側の表面を外面351Aと呼ぶことにすると、この外面351Aが、軸方向溝348の底面に沿う形状とされている。すなわち、軸方向溝348の底面が断面円弧状をなしている場合(周方向Yに曲率を有する)には、軸方向溝348の底面に沿って外面351Aが湾曲しており、軸方向溝348の底面が平面をなしている場合(周方向Yに曲率を有さない)には、外面351Aも平面である。
【0058】
次に、ボールねじ装置311の組付けについて説明する。作業者は、まず、各コマ340を、ボールナット10の収容穴45に、その径方向外側から挿入(装着)する。コマ340の装着状態では、コマ340の内部分52が、収容穴45の内領域45Bに収容される。また、コマ340の装着状態において、コマ340の外部分351の一部は収容穴45の外領域45Aに収容されるが、コマ340の外部分351の大部分は、ボールナット10の外周面10Bから外方に突出する。
【0059】
このとき、外部分351の内面351B(外部分351における外面351Aとは反対側の面)の周縁部が、収容穴45における段差部分46に対してボールナット10の径方向外側から当接しており、これによって、コマ340が収容穴45内で位置決めされる。また、長方体形状の外部分351における四隅が外面351A側からかしめられることによって、各コマ340は、ボールナット10の外周面10Bに固定される。なお、外部分351に対するかしめは、四隅の全てでなく、四隅のうちの少なくとも2箇所以上であれば足りる。
【0060】
また、コマ340をかしめるのでなく、ボールナット10側をかしめることにより、コマ340を収容穴45内に位置決めすることもできる。
さらに、コマ340は、ボールナット10の外周面10Bに固定されていなくてもよい。コマ340は、円筒312の軸方向溝348の底面によって、収容穴45からの離脱が防止されており、コマ340を外周面10Bに固定しておかなくても、コマ340の収容穴45への収容状態が保持される。
【0061】
次いで、軸方向溝348とコマ340の外部分351とが周方向Yに関して合致するように、円筒312とボールナット10とを位置合わせする。その後、コマ340の外部分351を軸方向溝348に嵌合させつつ、ボールナット10を円筒312に対して軸方向X移動させることにより、コマ340が装着された状態のボールナット10を、円筒312の軸方向Xの一方側または他方側から、軸方向Xに沿って円筒312内に内挿させることができる。軸方向溝348に対するコマ340の嵌合状態で、コマ340は周方向Yに関し軸方向溝348に丁度嵌っている。ボールナット10を円筒312に内挿した状態では、各収容穴45に装着されているコマ340の軸方向溝348への嵌合により、円筒312のボールナット10に対する相対回転が阻止される。換言すると、第2実施形態では、特許請求の範囲の「相対回転阻止構造」は、軸方向溝348とコマ340とを有し、収容穴45に収容されているコマ340の一部が軸方向溝348に嵌合(係合)する構造である。
【0062】
転動開始位置47A側(
図13の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ340と、転動終了位置47B側(
図13の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ340とは、周方向Yに関し互いに逆向きになるように装着される。転動開始位置47A側(
図13の左手前側)の収容穴45には、コマ340の外側開口55が外周旋回溝49の一端49Aに対向するようにコマ340が装着され、転動終了位置47B側(
図13の右奥側)の収容穴45には、コマ340の外側開口55が外周旋回溝49の他端49Bに対向するようにコマ340が装着される。
【0063】
2つのコマ340の接続路54と、外周旋回溝49と円筒12の内周面12Aとによって形成される旋回転動路60とが、軸方向Xにおけるボール転動路47のバイパスとなっている。換言すると、旋回転動路60および2つの接続路54によって、ボール転動路47内の転動終了位置47Bのボール24をボール転動路47内の転動開始位置47Aに戻すための循環路61が形成される。
【0064】
図17および
図18は、ボールねじ装置311の模式的な横断面図である。
図17は、転動終了位置47B側(
図13の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ340の接続路54の延びる方向に沿う断面で切断している。
図18は、転動開始位置47A側(
図13の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ340の接続路54の延びる方向に沿う断面で切断している。
【0065】
図13および
図17に示すように、転動終了位置47B側(
図13の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ340は、ボールナット10の内周側のボール転動路47から、外周側の旋回転動路60へとボール24を導くために用いられる。このとき、接続路54の内側開口56が入口54Aとして機能し、かつ接続路54の外側開口55が出口54Bとして機能する。
【0066】
図13および
図18に示すように、転動開始位置47A側(
図13の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ340は、ボールナット10の外周側の旋回転動路60から、内周側のボール転動路47へとボール24を導くために用いられる。このとき、接続路54の外側開口55が入口54Aとして機能し、かつ接続路54の内側開口56が出口54Bとして機能する。なお、転動開始位置47A側(
図13の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ340は、転動終了位置47B側(
図13の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ340と同じ諸元を有している。
【0067】
各コマ340において、第1実施形態に係るコマ40と同様、互いに向きの異なるねじ溝43と外周旋回溝49とを接続路54によって連通させるために、接続路54は、周方向Yに沿う方向に関して「く」の字状に屈曲している。
図13、
図17および
図18を参照して、第2実施形態に係るボールねじ装置311のボール24の動きについて説明する。ボールねじ装置311では、第1実施形態(
図3および
図6参照)と同様、ボール転動路47内のボール24は、ボールナット10の回転に伴ってボール転動路47内で転動しながらボール転動路47に沿って、転動開始位置47Aから転動終了位置47Bまで移動する。ボール24は、転動終了位置47Bに到達すると、転動終了位置47B側(
図13の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ340における接続路54の内側開口56から接続路54内に進入し、この接続路54を通って、ボールナット10の外周面10Bの外周旋回溝49に掬い上げられる。
【0068】
その後、ボール24は、外周旋回溝49を含む旋回転動路60を移動してボールナット10の外周を旋回することで、軸方向Xにおいて今までとは逆向き(
図13の左手前側)へ進む。そして、旋回転動路60を通ったボール24は、転動開始位置47A側(
図13の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ340の接続路54の外側開口55(入口54A)から接続路54内に進入し、この接続路54を通って、ボール転動路47内の転動開始位置47Aに戻される。つまり、ボール転動路47内を移動するボール24が、旋回転動路60および接続路54を含む循環路61によって循環され、これにより、ボール転動路47内におけるボール24の安定供給が可能になる。
【0069】
以上により第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、ボール転動路47内における転動終了位置47Bのボール24が、旋回転動路60を含む循環路61によって、ボール転動路47内における転動開始位置47Aに戻されることにより、ボール24を、ボール転動路47内でスムーズに循環させることができる。また、転動開始位置47Aおよび転動終了位置47Bが軸方向Xおよび周方向Yに如何なる相対関係を有していても、転動開始位置47Aと転動終了位置47Bとを循環路61でつなぐことが可能であるので、コマ340の相対的な配置位置に、軸方向Xに沿って延びる貫通孔をボールナット10の周壁10Cに形成する場合のような周方向Yの制約がない。その結果、ボールねじ装置311の理論上の有効巻数をそのまま採用でき、ゆえに、ボールねじ装置311を軸方向Xに小型化することが可能になる。
【0070】
また、第2実施形態によれば、収容穴45に装着されているコマ340が軸方向溝348に嵌合することにより、円筒312のボールナット10に対する相対回転が阻止される。これにより、他の部材を用いることなく、相対回転阻止構造を設けることができ、これにより、円筒312のボールナット10に対する相対回転を阻止しつつ、部品点数が増加するのを防止できる。
【0071】
なお、円筒312の内周面312Aに形成される軸方向溝348として、円筒312の軸方向Xの一端(
図16の左端)から他端(
図16の右端)まで延びる態様(軸方向貫通溝)を例に挙げたが、円筒312の軸方向Xの一端または他端から、軸方向Xの途中部(円筒312における一端と他端との中間位置)までしか延びていない溝を軸方向溝として採用することもできる。この場合、この軸方向溝は、ボールナット10の収容穴45に装着されている2つのコマ340の双方に係合可能な長さを有している必要がある。
【0072】
ところで、前述の
図13〜
図18に示す第2実施形態では、コマ340が周方向Yに関し揃って配置されるとしたが、コマ340を周方向Yにずらして配置することが可能である。この場合、一対の収容穴45も、周方向Yにずれている。このような第1変形例について
図19および
図20Aを参照して説明する。
図19および
図20Aは、本発明の第2実施形態の第1変形例に係る円筒312Cの構成を示す図である。
図19に模式的な横断面図を示し、
図20Aに模式的な側面図を示す。
【0073】
円筒312Cが円筒312と相違する点は、係合凹所として、互いに周方向Yにずれた2つの軸方向溝348A,348Bを設けた点である。その他の構成において、円筒312Cと円筒312との間に相違はない。
軸方向溝348Aは、転動開始位置47A側の収容穴45に装着されるコマ340の外部分351を嵌合可能に設けられている。軸方向溝348Aは、それぞれ、軸方向Xに沿って直線状に、円筒312Cの軸方向Xの一端(
図20Aの左端)から、円筒312Cの軸方向Xの他端(
図20Aの右端)に亘って延びている。軸方向溝348Aは、一定の周方向Yの幅および一定深さに設定されている。円筒312Cがボールナット10に同伴回転可能に設けられる状態において、軸方向溝348Aの径方向外方から見た形状が、転動開始位置47A側の収容穴45の外領域45Aに重複している。軸方向溝348Aの溝幅は、転動開始位置47A側の収容穴45に装着されるコマ340の周方向Yに沿う方向の長さと同じ長さに設定されている。
【0074】
転動開始位置47A側の収容穴45に装着されるコマ340は、その収容状態においてボールナット10の外周面10Bから外方に突出する外部分351が、軸方向溝348Aに嵌合している。
軸方向溝348Bは、転動終了位置47B側の収容穴45に装着されるコマ340の外部分351を嵌合可能に設けられている。軸方向溝348Bは、それぞれ、軸方向Xに沿って直線状に、円筒312Cの軸方向Xの一端(
図20Aの左端)から、円筒312Cの軸方向Xの他端(
図20Aの右端)に亘って延びている。軸方向溝348Bは、一定の周方向Yの幅および一定深さに設定されている。円筒312Cがボールナット10に同伴回転可能に設けられる状態において、径方向外方から見た形状が、転動終了位置47B側の収容穴45の外領域45Aに重複している。軸方向溝348Bの溝幅は、転動終了位置47B側の収容穴45に装着されるコマ340の周方向Yに沿う方向の長さと同じ長さに設定されている。
【0075】
転動終了位置47B側の収容穴45に装着されるコマ340は、その収容状態においてボールナット10の外周面10Bから外方に突出する外部分351が、軸方向溝348Bに嵌合している。
各収容穴45に装着されているコマ340の軸方向溝348A,348Bへの嵌合により、円筒312Cのボールナット10に対する相対回転が阻止される。換言すると、
図19および
図20Aに示す第2実施形態の第1変形例では、特許請求の範囲の「相対回転阻止構造」は、軸方向溝348A,348Bとコマ340とを有し、収容穴45に収容されているコマ340の一部が軸方向溝348A,348Bに嵌合(係合)する構造である。
【0076】
この場合、理論上の有効巻数をボールねじ装置311にそのまま採用できる。これにより、コマ340の配置位置のレイアウトの自由度を高めることができ、ゆえに、ボールねじ装置311を、より一層、軸方向Xに小型化することができる。
なお、円筒312Cの内周面312Aに形成される軸方向溝348A,348Bとして、円筒312の軸方向Xの一端または他端から、軸方向Xの途中部(円筒312における一端と他端との中間位置)までしか延びていない溝を軸方向溝として採用することもできる。この場合、軸方向溝348Aおよび軸方向溝348Bが、軸方向Xの共通する側の端部(一端または他端)において、その端部に亘って延びている必要がある。また、軸方向溝348Aは、転動開始位置47A側(
図13の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ340に係合可能な長さを有している必要があり、軸方向溝348Bは、転動終了位置47B側(
図13の右奥側)の収容穴45に装着されているコマ340に係合可能な長さを有している必要がある。
【0077】
また、一対のコマ340の配置位置が周方向Yに関し隔てられているものの、
図20Bに示すように、当該一対の配置位置の周方向Yの間隔S0が微小間隔である場合には、円筒312Cの内周面312Aに1つの軸方向溝348Cを設け、軸方向溝348C内に一対のコマ340を収容させるようにしてもよい。これが、第2実施形態の第2変形例である。1つの軸方向溝348Cの溝幅は、周方向Yに関しずれた2つのコマ340を収容可能な大きさに設定されている。この場合、軸方向溝348Cは、第1変形例の軸方向溝348A,348Bを周方向Yにつなげた(一体化させた)ものと換言することができる。
【0078】
なお、一対のコマ340の配置位置が周方向Yに関し一部重複する場合にも、円筒312Cの内周面312Aに1つの軸方向溝(軸方向溝348Cと同等の構成)を設け、当該軸方向溝によって、周方向Yに関しずれた2つのコマ340を収容させるようにしてもよい。
また、第2実施形態において、コマ340内に設けられる接続路として、周方向Yに関しねじ溝43に沿って直線状に延びる接続路54に代えて、接続路154(
図10参照)を採用することもできる。この場合、本発明の第1実施形態の第1変形例に係る場合と同様、螺旋状の外周旋回溝49と接続路154とをつなぐ接続溝101が、ボールナット10の外周面10Bに形成され、接続溝101は、接続路154に沿って略直線状に延び、かつ外周旋回溝49の他端49Bにつながっている。
【0079】
また、第2実施形態において、コマ340内に設けられる接続路として、接続路54,154に代えて、溝状をなす用いられる接続路254(
図12参照)が形成されていてもよい。この場合、本発明の第1実施形態の第3変形例に係る場合と同様、接続路254は、コマ340の長手方向に沿い、コマ340の側壁を突き破るように形成されている。
<第3実施形態>
図21は、
本発明の第3実施形態に係るボールねじ装置411の分解斜視図である。
図22および
図23は、ボールねじ装置411の模式的な縦断面図である。
図21では、ボールねじ装置411からねじ軸22を省略した構成を示している。ボールねじ装置411は、たとえば、
図1を用いて説明した電動アクチュエータ1と同等の電動アクチュエータに適用される。
【0080】
第3実施形態において、第1実施形態に示された各部に対応する部分には、
図1〜
図9の場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
図21〜23に示すように、ボールねじ装置411は、ねじ軸22と、ねじ軸22に対して外嵌されたボールナット410と、ねじ軸22とボールナット410との間に介在された複数のボール24と、ボールナット410の外周を包囲する円筒412と、一対のコマ440と、円筒412をボールナット410に連結させるためのキー嵌合構造K1とを含む。キー嵌合構造K1は、ボールナット410の外周面410Bに形成されたボールナット側キー溝(ボールナット側キー凹所)401、円筒412に形成された円筒側キー穴402、ならびにボールナット側キー溝401および円筒側キー穴402に跨って嵌るキー403を有している。
【0081】
また、この実施形態では、円筒412の内周面412Aが、周方向Yの全域に関し、ボールナット410の外周面410Bとの間に所定の間隔S1(
図22および
図23参照)を隔てて設けられており、かつ外周旋回溝449が浅溝によって形成されている。この点においても、ボールねじ装置411はボールねじ装置11と相違している。なお、ボールねじ装置411は、理論上必要な有効巻数が2.7であり、その理論上の有効巻数をそのまま採用している。
【0082】
ボールナット410は鋼などの金属を用いて形成され、軸方向Xに延びる筒状体であり、その内周面410Aおよび外周面410Bは、軸方向Xに延びる中心軸を有する円筒面となっている。
ボールナット410の外周面410Bには、外周旋回溝449が形成されている。外周旋回溝449は、外周面410Bの中心軸線を中心として旋回し、軸方向Xの他方(
図22の左方)へずれる螺旋状の溝である。外周旋回溝449の一端449A(
図21参照)は、転動開始位置47A側(
図21の左手前側)の収容穴45を区画している周壁10Cに接続されており、外周旋回溝449の他端449Bは、転動終了位置47B側(
図21の右奥側)の収容穴45を区画している周壁10Cに接続されている。外周旋回溝449の断面は略U字状(略半円状)またはコ字状をなしている(
図22および
図23では略半円状)。外周旋回溝449は、ボール24(
図22および
図23では黒丸で示す)の内側半分を収容できる溝深さD1(
図22および
図23参照)を有し、エンドミル等を用いて切削形成される。この溝深さD1において、外周旋回溝449は本発明の第1実施形態に係る外周旋回溝49と相違しており、それ以外の構成は外周旋回溝49と共通している。外周旋回溝449がこのような浅溝であるので、外周旋回溝449に嵌ったボール24の外側半分は、ボールナット410の外周面410Bよりも外側にはみ出す。
【0083】
ボールナット410の外周面410Bには、外周旋回溝449の形成位置を除く、軸方向Xおよび周方向Yの途中部に、ボールナット側キー溝401が形成されている。ボールナット側キー溝401は、径方向外方から見た形状が矩形をなしている。
ボールナット側キー溝401および外周旋回溝449を除いて、ボールナット410は、第1実施形態に係るボールナット10とほぼ同等の構成である。すなわち、ボールナット10の内周面10Aには、ねじ溝43が形成されており、また、ボールナット10の内周面10Aの転動開始位置47Aおよび転動終了位置47Bには、ボールナット10の周壁10Cを厚み方向に貫通する2つの収容穴45が形成されている。
【0084】
図21〜
図23に示すように、円筒412は鋼などの金属を用いて形成されている。円筒412の内周面412Aおよび外周面412Bは、それぞれ、ボールナット410の内外周面410A,410Bと同軸を有する円筒面をなしている。換言すると、内周面412Aおよび外周面412Bは、次に述べる円筒側キー穴402が形成される位置を除いて、それぞれ円筒面のみから形成されている。円筒412は、ボールナット410の外周面410B全域をすっぽり包囲した状態で、ボールナット410に同伴回転可能かつ軸方向Xに同伴移動可能に取り付けられている。
【0085】
円筒412の内径はボールナット410の外径よりも所定量だけ大きく設定されており、そのため、ボールナット410に対する円筒412の取付状態では、円筒412の内周面412Aが、ボールナット410の外周面410Bとの間に間隔S1(
図22および
図23参照)を隔てて設けられている。たとえば、間隔S1は、ボール24の直径の半分程度に相当する大きさである。そのため、ボールナット410に円筒412が取り付けられた状態において、円筒412の内周面412Aとボールねじ410の外周面410Bとの間に、円環状の空間SP(
図23参照)が形成される。
【0086】
第3実施形態では、外周旋回溝449と、円筒412の内周面412Aと、外周旋回溝449および内周面412Aの間の空間SPとによって、旋回転動路60が形成される。
円筒412の軸方向Xおよび周方向Yの途中部には、円筒412を厚み方向に貫通する円筒側キー穴402が形成されている。円筒側キー穴402は、円筒412をボールナット410に取り付けた状態において、ボールナット側キー溝401に対向するように配置されている。円筒側キー穴402は、径方向外方から見てボールナット側キー溝401に整合する形状を有している。
【0087】
キー403はたとえば四角柱状をなしている。ボールナット410のボールナット側キー溝401は、ボールナット410の外周面に沿う平坦な底面404を有している。キー403の長手方向に直交する断面形状および断面寸法は、円筒側キー穴402およびボールナット側キー溝401の形状および断面寸法にそれぞれ整合しており、キー403は、軸方向Xまたは周方向Yにほとんど遊びのない状態で、円筒側キー穴402およびボールナット側キー溝401に嵌合している。
【0088】
図23では、キー403とボールナット側キー溝401との嵌合状態で、キー403の外端面403Aが円筒412の外周面412Bよりも径方向外方に突出している。そして、キー403が外端側からかしめられることによって、キー403が円筒412の外周面412Bに固定される。なお、キー403がボールナット410側に落ちない形状であれば、キー403のかしめは必ずしも必要ではない。
【0089】
また、キー403の径方向長さは、ボールナット側キー溝401の溝深さW1と間隔S1とを足し合わせた長さよりも長くなるように設定されていればよい。この場合、ボールナット側キー溝401からキー403が抜けず、キー403とボールナット410との係合が達成され、その結果、ボールナット410に対する円筒412の相対回転および相対軸方向X移動が阻止される。
【0090】
コマ440は小片状をなし、収容穴45と同数(この実施形態では2つ)設けられており、各収容穴45に1つずつ装着される。各コマ440は、収容穴45に収容されており、その状態でボールナット410の外周面410Bから外方に突出する外部分451が、円環状の空間SPに収容される。コマ440の材質としては、第1実施形態に係るコマ40と同様、樹脂や金属などを採用することができる。
【0091】
図21に示すように、コマ440は、外部分451と内部分452とを一体的に含んでいる。コマ440には、その内部をトンネル状に延びる接続路54が形成されている。コマ440は、本発明の第1実施形態に係るコマ40の外部分51よりも径方向の厚みの小さい外部分451を設ける点、およびコマ40の内部分52よりも径方向の厚みの小さい内部分452を設ける点において、本発明の第1実施形態に係るコマ40と異なっている。
【0092】
外部分451はブロック状をなしている。外部分451は、円筒412をボールナット410に取り付けた状態において、径方向外方から見て収容穴45の外領域45Aに整合する形状を有しており、たとえば、四隅の端縁が面取りされた直方体状である。なお、外部分451において外側の表面を外面451Aと呼ぶことにすると、この外面451Aが、円筒412の内周面412Aに面一になるように湾曲している。すなわち、円筒412がボールナット410に取り付けられた状態で、コマ440の外部分451の外面451Aが内周面412Aに当接している。コマ440が収容穴45に収容された状態でボールナット410の外周面410Bから突出する外部分451の大きさが、ボールナット410の外周面410Bと円筒412の内周面412Aとの間隔S1とほぼ一致するように、外部分451の径方向厚みが設定されている。
【0093】
内部分452は、外部分451の長手方向に沿って長手のブロック状である。内部分452は、収容穴45の内領域45B(
図22参照)にちょうど嵌る形状を有しており、内部分452では、長手方向における両端部が丸められている。外部分451において、外面451Aとは反対側の面を内面451Bと呼ぶことにすると、内部分452は、内面451Bに固定されている。外部分451の厚み方向から見て、内部分452は、外部分451の輪郭の内側に位置している。
【0094】
次に、ボールねじ装置411の組付けについて説明する。作業者は、まず、各コマ440を、ボールナット410の収容穴45に、その径方向外側から装着する。コマ440の装着状態では、コマ440の内部分452が、収容穴45の内領域45Bに収容される。また、コマ440の装着状態において、コマ440の外部分451の一部は収容穴45の外領域45Aに収容されるが、コマ440の外部分451の大部分は、ボールナット410の外周面410Bから外方に突出する。
【0095】
このとき、外部分451の内面451B(外部分451における外面451Aとは反対側の面)の周縁部が、収容穴45における段差部分46に対してボールナット410の径方向外側から当接しており、これによって、コマ440が収容穴45内で位置決めされる。また、長方体形状の外部分451における四隅が外面451A側からかしめられることによって、各コマ440は、ボールナット410の外周面410Bに固定される。なお、外部分451に対するかしめは、四隅の全てでなく、四隅のうちの少なくとも2箇所以上であれば足りる。
【0096】
また、コマ440をかしめるのでなく、ボールナット410側をかしめることにより、コマ440を収容穴45内に位置決めすることもできる。
さらに、コマ440は、ボールナット410の外周面410Bに固定されていなくてもよい。コマ440は、円筒412の内周面412Aによって、収容穴45からの離脱が防止されており、コマ440を外周面410Bに固定しておかなくても、コマ440の収容穴45への収容状態が保持される。
【0097】
次いで、コマ440が装着された状態のボールナット410を、円筒412の軸方向Xの一方側または他方側から、軸方向Xに沿って円筒412内に内挿させる。前述のように、コマ440が収容穴45に収容された状態でボールナット410の外周面410Bから突出する外部分451の大きさが、ボールナット410の外周面410Bと円筒412の内周面412Aとの間隔S1とほぼ一致するように、コマ440の径方向厚みが設定されているので、ボールナット410を円筒412に対して軸方向X移動させることができ、これにより、ボールナット410を円筒412内に内挿させることができる。
【0098】
そして、ボールナット410および円筒412を相対軸方向X移動および相対回転させて、ボールナット側キー溝401と円筒側キー穴402とを対向させた後、キー403を、円筒側キー穴402およびボールナット側キー溝401に挿入する。挿入されたキー403が、円筒側キー穴402およびボールナット側キー溝401に嵌合することにより、円筒412のボールナット410に対する相対回転が阻止される。換言すると、第3実施形態では、特許請求の範囲の「相対回転阻止構造」は、キー嵌合構造K1である。
【0099】
転動開始位置47A側(
図21の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ440と、転動終了位置47B側(
図21の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ440とは、周方向Yに関し互いに逆向きになるように装着される。転動開始位置47A側(
図21の左手前側)の収容穴45には、コマ440の外側開口55が外周旋回溝449の一端449Aに対向するようにコマ440が装着され、転動終了位置47B側(
図21の右奥側)の収容穴45には、コマ440の外側開口55が外周旋回溝449の他端449Bに対向するようにコマ440が装着される。
【0100】
2つのコマ440の接続路54と、外周旋回溝449と円筒12の内周面12Aとによって形成される旋回転動路60とが、軸方向Xにおけるボール転動路47のバイパスとなっている。換言すると、旋回転動路60および2つの接続路54によって、ボール転動路47内の転動終了位置47Bのボール24をボール転動路47内の転動開始位置47Aに戻すための循環路61が形成される。
【0101】
図24および
図25は、ボールねじ装置411の模式的な横断面図である。
図24は、転動終了位置47B側(
図21の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ440の接続路54の延びる方向に沿う断面で切断している。
図25は、転動開始位置47A側(
図21の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ440の接続路54の延びる方向に沿う断面で切断している。
【0102】
図21および
図24に示すように、転動終了位置47B側(
図21の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ440は、ボールナット410の内周側のボール転動路47から、外周側の旋回転動路60へとボール24を導くために用いられる。このとき、接続路54の内側開口56が入口54Aとして機能し、かつ接続路54の外側開口55が出口54Bとして機能する。
【0103】
図21および
図25に示すように、転動開始位置47A側(
図21の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ440は、ボールナット410の外周側の旋回転動路60から、内周側のボール転動路47へとボール24を導くために用いられる。このとき、接続路54の外側開口55が入口54Aとして機能し、かつ接続路54の内側開口56が出口54Bとして機能する。なお、転動開始位置47A側(
図21の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ440は、転動終了位置47B側(
図21の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ440と同じ諸元を有している。
【0104】
各コマ440において、第1実施形態に係るコマ40と同様、互いに向きの異なるねじ溝43と外周旋回溝449とを接続路54によって連通させるために、接続路54は、周方向Yに沿う方向に関して「く」の字状に屈曲している。
図21、
図24および
図25を参照して、第3実施形態に係るボールねじ装置411のボール24の動きについて説明する。ボールねじ装置411では、第1実施形態(
図3および
図6参照)と同様、ボール転動路47内のボール24は、ボールナット410の回転に伴ってボール転動路47内で転動しながらボール転動路47に沿って、転動開始位置47Aから転動終了位置47Bまで移動する。ボール24は、転動終了位置47Bに到達すると、転動終了位置47B側(
図21の右奥側)の収容穴45に装着されるコマ440における接続路54の内側開口56から接続路54内に進入し、この接続路54を通って、ボールナット410の外周面10Bの外周旋回溝449に掬い上げられる。
【0105】
その後、ボール24は、外周旋回溝449を含む旋回転動路60を移動してボールナット410の外周を旋回することで、軸方向Xにおいて今までとは逆向き(
図21の左手前側)へ進む。そして、旋回転動路60を通ったボール24は、転動開始位置47A側(
図21の左手前側)の収容穴45に装着されるコマ440の接続路54の外側開口55(入口54A)から接続路54内に進入し、この接続路54を通って、ボール転動路47内の転動開始位置47Aに戻される。つまり、ボール転動路47内を移動するボール24が、旋回転動路60および接続路54を含む循環路61によって循環され、これにより、ボール転動路47内におけるボール24の安定供給が可能になる。
【0106】
以上により第3実施形態によれば、ボール転動路47内における転動終了位置47Bのボール24が、旋回転動路60を含む循環路61によって、ボール転動路47内における転動開始位置47Aに戻されることにより、ボール24を、ボール転動路47内でスムーズに循環させることができる。また、転動開始位置47Aおよび転動終了位置47Bが軸方向Xおよび周方向Yに如何なる相対関係を有していても、転動開始位置47Aと転動終了位置47Bとを循環路61でつなぐことが可能であるので、コマ440の相対的な配置位置に、軸方向Xに沿って延びる貫通孔をボールナット410の周壁10Cに形成する場合のような周方向Yの制約がない。その結果、ボールねじ装置411の理論上の有効巻数をそのまま採用でき、ゆえに、ボールねじ装置411を軸方向Xに小型化することが可能になる。
【0107】
また、第3実施形態において、コマ440内に設けられる接続路として、周方向Yに関しねじ溝43に沿って直線状に延びる接続路54に代えて、接続路154(
図10参照)を採用することもできる。この場合、本発明の第1実施形態の場合と同様、螺旋状の外周旋回溝449と接続路154とをつなぐ接続溝101が、ボールナット410の外周面410Bに形成され、接続溝101は、接続路154に沿って略直線状に延び、かつ外周旋回溝449の他端449Bにつながっている。
【0108】
また、前述の第3実施形態では、コマ440が周方向Yに関し揃って配置されるとしたが、コマ440を周方向Yにずらして配置することができ、この場合、理論上必要な有効巻数をボールねじ装置411にそのまま採用することも可能である。これにより、コマ40の配置位置のレイアウトの自由度を高めることができ、ゆえに、ボールねじ装置411を、より一層、軸方向Xに小型化することができる。
【0109】
また、第3実施形態において、コマ440内に設けられる接続路として、接続路54,154に代えて、溝状をなす接続路254(
図12参照)が形成されていてもよい。接続路254は、コマ440の長手方向に沿い、コマ440の側壁を突き破るように形成されている。
以上、この発明の3つの形態について説明したが、本発明は他の形態を採用することもできる。
【0110】
たとえば第1および第2実施形態において、ボールナット10の外周面10Bと円筒12,312の内周面12A,312Aとの間が微小間隔Sである例を例に挙げて説明したが、外周面10Bと内周面12A,312Aとの間が所定の間隔(たとえばボール24の直径の半分程度の大きさであり、
図22および
図23に示す間隔S1)が設けられていてもよい。この場合、ボールナット10の外周面10Bに形成される外周旋回溝49の溝深さは、ボール24の一部分のみ収容可能な浅溝(たとえば
図22および
図23の外周旋回溝449の溝深さD1)に設定される。
【0111】
また、第3実施形態において、ボールナット410の外周面410Bと円筒412の内周面412Aとの間が所定大きさの間隔S1である例を例に挙げて説明したが、外周面410Bと内周面412Aとが、微小間隔(たとえば
図22および
図23に示す間隔S1)を隔てて設けられていてもよい。この場合、ボールナット410の外周面410Bに形成される外周旋回溝449の溝深さは、ボール24の全部分を収容可能な深溝(たとえば
図4および
図14の外周旋回溝49の溝深さD)に設定される。
【0112】
また、第3実施形態において相対回転阻止構造の一例としてキー嵌合構造K1を例示したが、相対回転阻止構造はキー嵌合構造K1だけに限られない。たとえば、ボールナット410の軸方向Xの端部に、二面幅形状や六角形状からなる係合部を設け、当該係合部に嵌合可能な嵌合部を円筒412の軸方向Xの端部に設け、このような係合部および嵌合部の嵌合により相対回転阻止構造が構成されていてもよい。
【0113】
また、第1〜第3実施形態において、ボールナット10,410において各収容穴45を区画する部分に、ボールナット10,410へのコマ40,340,440の脱落を防止するために段差部分46を形成する構成を採用したが、段差部分46を設けず、各収容穴45を内領域45Bのみで構成するようにしてもよい。
また、第1〜第3実施形態において、外周旋回溝49,449を、ボールナット10,410の外周を一回旋回させる構成を例に挙げて説明したが、1回より多く旋回させる構成であってもよい。また、外周旋回溝49,449を、周方向への旋回数を1周未満(たとえば0.3巻や0.5巻)に設けるようにしてもよい。
【0114】
また、円筒12,312,412が、転がり軸受13,16の内輪として機能していてもよい。すなわち、円筒12,312,412の外周面12B,312B,412Bに内輪軌道が形成されており、この内輪軌道を軸受け用のボールが転動する構成であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。