(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態のステアリング装置1の模式的な概略側面図である。ここで、
図1において、紙面左側が車体2の前側であり、紙面右側が車体2の後側であり、紙面上側が車体2の上側であり、紙面下側が車体2の下側である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリング軸3と、ステアリングコラム4と、アッパーブラケット5(ブラケット)と、ロアーブラケット6と、レバー7とを主に含んでいる。ステアリング装置1は、アッパーブラケット5およびロアーブラケット6によって車体2に取り付けられている。ステアリング軸3の一端(後端3A)には、ステアリングホイール等の操舵部材9が連結されている。ステアリング装置1は、レバー7を回動させることで、いわゆるテレスコ調整(ステアリングコラム4の伸縮量調整)とチルト調整(ステアリングコラム4の傾き調整)とが可能である(詳しくは、後述する)。
【0016】
ステアリング軸3は、全体として略円筒状または略円柱状である。ステアリング軸3は、同軸状に並ぶアッパーシャフト10とロアーシャフト11とを含んでいる。アッパーシャフト10は、ロアーシャフト11よりも操舵部材9側(後側)に位置し、ロアーシャフト11に対して軸方向に移動可能となっている。
以下では、ステアリング軸3が延びる方向を軸方向Xとする。軸方向Xは、
図1における紙面の左右方向と一致している。また、軸方向Xに直交する方向を左右方向Yと上下方向Zとする。左右方向Yは、
図1において紙面に直交する方向であり、上下方向Zは、
図1の紙面の上下方向である。
【0017】
ステアリングコラム4は、全体として略円筒状であり、ステアリング軸3を収容するものである。ステアリングコラム4は、同軸状に並ぶアッパーコラム12とロアーコラム13とを含んでいる。アッパーコラム12は、ロアーコラム13よりも操舵部材9側(後側)に位置し、ロアーコラム13に対して軸方向Xに移動可能となっている。
アッパーコラム12とアッパーシャフト10とは、図示しない軸受等を介して連結されており、ロアーコラム13とロアーシャフト11とは、図示しない軸受等を介して連結されている。そのため、アッパーコラム12およびアッパーシャフト10は、一体となって、ロアーコラム13およびロアーシャフト11に対して、軸方向Xに相対移動可能である。これにより、ステアリングコラム4およびステアリング軸3は、一度に伸縮できる。
【0018】
図2は、
図1のステアリング装置1を車体2の下側から見た図である。ここで、
図2における紙面の左右方向は、
図1における軸方向Xと一致している。また、
図2における紙面に直交する方向は、
図1における上下方向Zと一致している。また、
図2における紙面の上下方向は、
図1における左右方向Yと一致している。
以下では、
図1に加えて
図2も参照して説明する。
【0019】
アッパーブラケット5は、ステアリング軸3およびステアリングコラム4を保持し、ステアリング装置1を車体2に連結するものである。アッパーブラケット5は、板状部材14と、一対の側板15と、回転軸16(
図1参照)とを主に含んでいる。
板状部材14は、アッパーブラケット5に設けられている。板状部材14は、上下方向Zから見て左右方向Yに長手の四角形をなす平板状であり、ステアリング軸3を挟んで対称である(
図2参照)。板状部材14の板厚方向は、上下方向Zと一致している。
【0020】
一対の側板15は、板状部材14から下側に延びている。一対の側板15は、左右方向Yにおいて対向配置されており、ステアリング軸3を左右方向Yにおける両側から挟んでいる(
図2参照)。
回転軸16は、左右方向Yに延びており、ステアリングコラム4よりも下側において一対の側板15を貫通している。
図2では、回転軸16を説明の便宜上省略している。
【0021】
たとえば、一対の側板15には、上下方向Zに延びるチルトガイド溝17が形成されている(
図1参照)。また、アッパーコラム12(厳密には、アッパーコラム12に固定された図示しない可動ブラケット)には、軸方向Xに延びるテレスコガイド溝18が形成されている。チルトガイド溝17およびテレスコガイド溝18の両方に対して、回転軸16が挿通されている。これにより、アッパーコラム12(ステアリングコラム4)は、回転軸16およびアッパーブラケット5を介して車体2に連結されている。また、回転軸16は、チルトガイド溝17およびテレスコガイド溝18のそれぞれによって、それぞれのガイド溝の長手方向にガイドされる。回転軸16がチルトガイド溝17内で上下に相対移動することによって、前述したチルト調整が可能となる。回転軸16がテレスコガイド溝18内で軸方向Xに相対移動することによって、前述したテレスコ調整が可能となる。
【0022】
ロアーブラケット6は、ステアリングコラム4(特に、ロアーコラム13)を支持し、ステアリング装置1を車体2に連結するものである。ロアーブラケット6は、天板部19と、一対の側板20と、チルト中心軸21(
図2では、図示しない)とを含んでいる。
天板部19は、上下方向Zから見て左右方向Yに長手の四角形をなす平板状であり、ステアリング軸3を挟んで対称である(
図2参照)。天板部19は、その四隅において、ボルト22によって車体2に取り付けられている。
【0023】
一対の側板20は、天板部19から下側に延びている。一対の側板20は、左右方向Yにおいて対向配置されており、ステアリング軸3を左右方向Yにおける両側から挟んでいる(
図2参照)。
チルト中心軸21は、左右方向Yに延びており、一対の側板20を貫通して、ロアーコラム13に連結されている。ロアーブラケット6は、チルト中心軸21を介してロアーコラム13を支持している。このため、ロアーコラム13を含むステアリングコラム4の全体は、チルト中心軸21を中心に回動可能となっている。ステアリングコラム4の回動によって前述したチルト調整が可能となる。
【0024】
レバー7(
図2では、説明の便宜上省略している)は、アッパーブラケット5の回転軸16の一端に設けられている棒状の部材である。レバー7は、回転軸16を中心として回転軸16とともに回動する。レバー7の回動に応じて、アッパーブラケット5とアッパーコラム12(厳密には、前述した可動ブラケット)とが、互いに圧接されたり、その圧接が解除されたりする。アッパーブラケット5とアッパーコラム12との圧接が解除された状態では、運転者は、ステアリング装置1をテレスコ調整したりチルト調整したりすることができる。テレスコ調整やチルト調整の後にレバー7を先程とは逆向きに回動させると、アッパーブラケット5とアッパーコラム12とが圧接されて、ステアリング装置1の姿勢がロックされる。
【0025】
図2を参照して、板状部材14の後側端部(
図2において右側の端部)14Aにおいて、ステアリング軸3を挟んで対称の位置には、アッパーブラケット5を車体2に固定するためのカプセル8が1つずつ(合計で一対)設けられている。各カプセル8は、全体としてブロック状であり、ステアリング装置1を構成している。各カプセル8は、板状部材14を上下から挟持することによってアッパーブラケット5全体を保持している。
【0026】
次に、カプセル8の形状について説明する。
図3は、本発明の一実施形態のカプセル8の斜視図である。
図4は、
図3とは異なる方向から見たカプセル8の斜視図である。ここで、
図3における紙面の上下方向をカプセル8の板厚方向Tとする。板厚方向Tに対して直交する方向を、幅方向Wおよび奥行き方向Dとする。幅方向Wは、
図3において紙面の右手前から左奥側に延びる方向であり、奥行き方向Dは、
図3において紙面の左手前から右奥側に延びる方向である。
図4は、
図3のカプセル8を奥行き方向Dの右奥側から見た図である。
【0027】
以下では、
図1および
図2に加えて
図3および
図4も参照して説明する。
図3を参照して、カプセル8は、板厚方向Tに並んだ第1挟持部24、対向部25および第2挟持部26を一体的に含んでいる。
第1挟持部24は、板厚方向Tから見て略正方形の板である。ここで、第1挟持部24の幅方向Wの中央において、奥行き方向Dに延びる1本の基準線24Aを定義する。
【0028】
対向部25は、板厚方向Tから見て略台形の板であり、
図3では、奥行き方向Dの左手前側から右奥側へ向かって幅方向Wに狭くなっている。対向部25は、第1挟持部24と板厚方向Tに並んでおり、第1挟持部24と一体的に形成されている。対向部25は、奥行き方向Dの最も左手前側において、第1挟持部24よりも幅方向Wに狭い。また、対向部25は、板厚方向Tから見て、基準線24Aを挟んで幅方向Wに対称である。
【0029】
対向部25において奥行き方向Dにおける端面のうち、
図3における左手前側の端面25Aは、第1挟持部24において奥行き方向Dにおける端面のうち、
図3における左手前側の端面24Bと面一になっている。一方、対向部25において奥行き方向Dにおける端面のうち、
図3における右奥側の先端面25Bは、第1挟持部24において奥行き方向Dにおける端面のうち、
図3における右奥側の端面24Cよりも左手前側(第1挟持部24の内側)に位置している。また、対向部25の幅方向Wにおける両側の側端面25Cは、第1挟持部24において幅方向Wにおける両側の端面24Dよりも基準線24A側(第1挟持部24の内側)に位置している。
【0030】
第2挟持部26は、板厚方向Tから見て、略T字状の板である。詳述すると、第2挟持部26は、
図3における奥行き方向Dの左手前側において、幅方向Wに延びる基端部26Aを有している。第2挟持部26は、基端部26Aから、
図3における奥行き方向Dの右奥側の先端部26Bへ向かって幅方向Wに狭くなっている。第2挟持部26は、先端部26Bに対して基端部26A側から隣接して、幅方向Wの両側に突出する凸部26Cを有している。凸部26Cは、先端部26Bと連結されている(
図4も参照)。
【0031】
また、第2挟持部26は、板厚方向Tにおいて第1挟持部24との間で対向部25を挟むように、第1挟持部24とは反対側に配置されており、第1挟持部24および対向部25と一体的に形成されている。また、第2挟持部26は、板厚方向Tから見て、基準線24Aを挟んで幅方向Wに対称である。
図3の状態を基準として、第2挟持部26において奥行き方向Dにおける左手前側の端面26Dは、第1挟持部24の端面24Bと面一になっている。また、基端部26Aは、幅方向Wにおいて、第1挟持部24(厳密には、両側の端面24Dの間隔)と同じであり、対向部25において幅方向Wで同じ側にある側端面25Cから幅方向Wにおける外側へはみ出している。また、先端部26Bは、板厚方向Tから見て、第1挟持部24の端面24Cまで到達していて、対向部25の先端面25Bから端面24C側へはみ出している(
図4も参照)。第2挟持部26の幅方向Wにおける端面(厳密には、奥行き方向Dにおいて基端部26Aと凸部26Cとの間の領域における端面)26Eは、対向部25の(幅方向Wで同じ側にある)側端面25Cと面一になっている。凸部26Cは、幅方向Wで同じ側にある側端面25Cから幅方向Wにおける外側へ少しだけはみ出している。また、板厚方向Tから見たときの第2挟持部26の輪郭は、いずれの角も、尖らないように丸められている。
【0032】
このように、基端部26Aおよび凸部26Cにおいて、第2挟持部26は、対向部25よりも幅方向Wの両側に突出している。つまり、基端部26Aおよび凸部26Cは、基準線24Aを隔てた両側において、間隔(対向部25の厚み分)を隔てて第1挟持部24と対向している。また、先端部26Bにおいて、第2挟持部26は、対向部25よりも奥行き方向Dに突出している(
図4参照)。つまり、先端部26Bは、間隔(対向部25の厚み分)を隔てて第1挟持部24と対向している(
図4参照)。
【0033】
先端部26Bと凸部26Cとが連結されているため、第2挟持部26は、基端部26Aの幅方向Wの両側端部26F(2箇所)と、先端部26Bおよび凸部26C(1箇所)との3箇所において、第1挟持部24と間隔(対向部25の厚み分)を隔てて対向している。
一方、端面26Eにおいては、第2挟持部26は、対向部25と同じ位置にあり(幅方向Wに突出しておらず)、第1挟持部24とは対向していない。
【0034】
ここで、
図3に示すカプセル8において、奥行き方向Dの左手前側の端部のうち、幅方向Wの両端部を第1端部27とし、奥右側の端部を第2端部28とし、幅方向Wの両側の端部を側端部29とする。第1端部27は、基端部26Aの幅方向Wの両側端部26Fと、第1挟持部24の左手前側の端部24Eとを含んでいる。また、第2端部28は、先端部26Bおよび凸部26Cと、第1挟持部24の右奥側の端部24Fを含んでいる。また、側端部29は、基端部26Aと凸部26Cとの間における第2挟持部26および対向部25の(幅方向Wにおける)端部を含んでいる。つまり、側端部29は、第1端部27と第2端部28との間に設けられている。また、第1端部27と第2端部28との間において、第1挟持部24と第2挟持部26とは、板厚方向Tに対向していない。
【0035】
また、板厚方向Tから見て、第1端部27は、幅方向Wに長い略長方形状であり、第2端部28は、次第に細くなる略Y字状の輪郭を有している。
また、
図3に示すカプセル8において、奥行き方向Dの端面のうち左手前側の端面には、符号「8A」を付すことにする。また、カプセル8において、端面26Eおよび側端面25Cが成す側面と先端面25Bとには、符号「8B」を付すことにする。
【0036】
図5は、
図2における要部の拡大図である。ここで、
図5の姿勢は、
図2と一致している。なお、
図5に示したカプセル8は、
図2において紙面の上側に配置されたものである。
図5における軸方向Xは、
図3におけるカプセル8の奥行き方向Dと一致している。また、
図5における左右方向Yは、
図3におけるカプセル8の幅方向Wと一致している。また、
図5における上下方向Zは、
図3におけるカプセル8の板厚方向Tと一致している。
【0037】
以下では、
図1〜
図4に加えて
図5も参照して説明する。
図2および
図5を参照して、板状部材14において、一対のカプセル8が設けられている位置には、一対の切り欠き溝23が形成されている。各切り欠き溝23は、板状部材14において軸方向Xと直交する端縁(左右方向Yに延びる端縁)のうち後側の端縁14Bを、前側へ向けて凹状に切り欠いている。詳しくは、各切り欠き溝23は、後側から前側へ向かって徐々に左右方向Yに小さくなる略台形状である。切り欠き溝23は、板状部材14を板厚方向(上下方向Z)に貫通している。切り欠き溝23を区画する板状部材14の端面のうち、切り欠き溝23の最深部において軸方向Xと直交する面を先端面14Cとし、左右方向Yにおける両側の端面を側端面14Dとする。
【0038】
一対のカプセル8は、一対の切り欠き溝23に1つずつ嵌め込まれている(
図2参照)。この状態で、各カプセル8の端面8Aは、板状部材14の端縁14Bと軸方向Xにおいて並んでいる。また、各カプセル8は、
図3における板厚方向Tの下側(第1挟持部24側)を車体2の上側に向けている。各カプセル8の対向部25の先端面25Bは、先端面14Cと対向配置されており、互いに平行になっている。また、各カプセル8の対向部25の側端面25Cは、側端面14Dと対向配置されており、互いに平行になっている。つまり、各カプセル8の端面8Bは、板状部材14において各切り欠き溝23を縁取る周縁部14Eと対向している。この状態で、端面8Bと周縁部14Eとは、接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
【0039】
また、各カプセル8の第1端部27は、(第2挟持部26の)両側端部26Fと(第1挟持部24の)端部24Eとによって、(端縁14B側の)周縁部14Eを上下方向Z(板状部材14の板厚方向)から挟持している。また、各カプセル8の第2端部28は、(第2挟持部26の)先端部26Bおよび凸部26Cと(第1挟持部24の)端部24Fとによって、(先端面14C側の)周縁部14Eを上下方向Zから挟持している。一方、各カプセル8の側端部29は、周縁部14Eを上下方向Zから挟持することなく、左右方向Yから周縁部14Eに対向しているだけである。
【0040】
ここで、左右方向Yにおいて、ステアリング軸3に近づく方向(ステアリング軸3側)を「内側」とし、左右方向Yにおいて、ステアリング軸3から離れる方向(ステアリング軸3側とは反対側)を「外側」とする。前述したように、一対のカプセル8は、ステアリング軸3を挟んで対称の位置に設けられているので、内側の第1端部27を内側端部30と呼び、外側の第1端部27を外側端部31と呼ぶことにする。内側端部30は、周縁部14Eにおいてステアリング軸3側の内側周縁部14Fを挟持している。また、外側端部31は、周縁部14Eにおいてステアリング軸3側とは反対側の外側周縁部14Gを挟持している。このように、第1端部27が内側端部30および外側端部31の両側2箇所で板状部材14を挟持しているため、カプセル8は、安定してアッパーブラケット5を支持することができる。
【0041】
なお、
図5では、カプセル8が切り欠き溝23の周縁部14Eを挟持している部分を網掛けで表している(後述ずる
図7においても同様)。内側端部30が周縁部14E(内側周縁部14F)を挟持している部分(上下方向Zから見て内側端部30と内側周縁部14Fとが重なる部分)を領域S
1とする。外側端部31が周縁部14E(外側周縁部14G)を挟持している部分(上下方向Zから見て外側端部31と外側周縁部14Gとが重なる部分)を領域S
2とする。第2端部28が周縁部14Eを挟持している部分(上下方向Zから見て第2端部28と周縁部14Eとが重なる部分)を領域S
3とする。領域S
1と領域S
2とは、基準線24Aを挟んで互いに対称である。領域S
3は、基準線24Aを挟んで対称である。ここで、領域S
1における内側周縁部14Fを、内側被挟持部分と定義することができ、領域S
2における外側周縁部14Gを、外側被挟持部分と定義することができる。
【0042】
各カプセル8の略中央(第1挟持部24の中央)には、略楕円形状のねじ孔8Cが形成されている。ねじ孔8Cの長軸は、軸方向Xに沿わされている。ねじ孔8Cには、ボルト32が挿通されている。また、各カプセル8の領域S
1、領域S
2および領域S
3には、上下方向Zから見て円形状の挿通孔34が形成されている。挿通孔34は、カプセル8を貫通している。
【0043】
図6Aは、
図5に示すVIa−VIa線に沿うカプセル8の断面図である。
図6Bは、
図5に示すVIb−VIb線に沿うカプセル8の断面図である。
図6Cは、
図5に示すVIc−VIc線に沿うカプセル8の断面図である。ここで、
図6Aは、基準線24Aと上下方向Zが成す平面によって切断された断面図であって、車体2の上側と、紙面の上側とが一致している。
図6Bは、第1端部27の挿通孔34の中心を通って左右方向Yに平行な直線と上下方向Zが成す平面によって切断された断面図であって、車体2の上側と紙面の上側とが一致している。
図6Cは、ボルト32の中心を通って左右方向Yに平行な直線と上下方向Zが成す平面によって切断された断面図であって、車体2の上側と紙面の上側とが一致している。
【0044】
以下では、
図1〜
図5に加えて
図6も参照して説明する。
図6Cを参照して、各カプセル8を車体2に取り付けるには、各カプセル8の第1挟持部24が車体2の上側に向いた状態で、第2挟持部26側(下側)からボルト32をねじ孔8Cに挿通させる。ボルト32を車体2に対して締め付けていくと、ボルト32の頭部32Aがカプセル8の下面8Dに当接する。その状態から、さらにボルト32を車体2に対して締め付けてカプセル8を車体2に押し付けることでカプセル8を車体2に対して固定する。
【0045】
図6Aを参照して、領域S
3において、挿通孔34には、樹脂ピン33が挿通されている。樹脂ピン33は、カプセル8(第1挟持部24および第2挟持部26)と、アッパーブラケット5の板状部材14(周縁部14E)を貫通している。
図6Bを参照して、領域S
1および領域S
2において、各挿通孔34には、樹脂ピン33が挿通されている。樹脂ピン33は、それぞれカプセル8および板状部材14を貫通している。
【0046】
次に、2次衝突時のステアリング装置1の動作について説明する。
2次衝突前では、各カプセル8は、ボルト32によって車体2に取り付けられており、アッパーブラケット5は、樹脂ピン33によってカプセル8に接続されている。つまり、カプセル8は、アッパーブラケット5を車体2に位置決めしている。
図1を参照して、2次衝突時に、ステアリング装置1が操舵部材9側から衝撃を受けると、アッパーブラケット5(板状部材14)は、車体2にカプセル8を残した状態(カプセル8の位置が固定された状態)で車体2の前側(所定の移動方向Aの下流側)へ移動しようとする。そのため、
図5に示す各樹脂ピン33が破断し、アッパーブラケット5は、操舵部材9を伴って移動方向Aにおける下流側へ向けて移動する。
【0047】
ここで、移動方向Aは、軸方向Xと一致している。移動方向Aにおける下流側は、車体2の前側と一致しており、移動方向Aにおける上流側は、車体2の後側と一致している。
この状態で、板状部材14は、移動方向Aに沿っている。また、移動方向Aを基準とすると、切り欠き溝23は、板状部材14において移動方向Aにおける上流側端縁14Bを移動方向Aにおける下流側へ向けて凹状に切り欠いていることが分かる。また、第1端部27は、カプセル8において移動方向Aにおける上流側に設けられており、第2端部28は、移動方向Aにおける下流側に設けられていることも分かる。
【0048】
この移動に伴い、カプセル8が板状部材14を挟持する領域S
1、領域S
2および領域S
3は、徐々に狭くなる。ここで、移動方向Aにおける領域S
1の幅を距離D
1とし、移動方向Aにおける領域S
2の幅を距離D
2とし、移動方向Aにおける領域S
3の幅を距離D
3とする。カプセル8は、切り欠き溝23から外れるために、距離D
1、距離D
2および距離D
3のうち最も長い距離を、移動方向Aに(板状部材14に対して)相対移動する。ちなみに、実際に移動するのは板状部材14である。カプセル8に対して板状部材14が移動方向Aの下流側に動いた後、カプセル8は、切り欠き溝23から移動方向Aにおける上流側へ外れることによって、移動方向Aにおける下流側へのアッパーブラケット5の移動を許可する。つまり、アッパーブラケット5(板状部材14)は、車体2側から分離される。また、カプセル8は、第1端部27と第2端部28との間に設けられた側端部29では、切り欠き溝23の周縁部14Eを挟持していない。そのため、カプセル8が切り欠き溝23から外れるまでにアッパーブラケット5が動く距離(詳しくは、距離D
1、距離D
2および距離D
3)を短くすることができる。
【0049】
ここで、2次衝突による衝撃が操舵部材9に対して斜めから入力されることで、アッパーブラケット5が移動方向Aに対して傾こうとした場合(移動方向Aから上下方向Zの上下に傾いた方向に傾こうとした場合)、アッパーブラケット5の板状部材14(上下方向Zから見て、第1端部27および第2端部28と重なる位置の周縁部14E)と、板状部材14を挟持するカプセル8との間にこじりが発生しそうになる。
【0050】
しかし、前述したようにカプセル8に側端部29を設けていることで、カプセル8が切り欠き溝23から外れるまでにアッパーブラケット5が動く距離(距離D
1、距離D
2および距離D
3)を短くしているため、カプセル8は、板状部材14とこじることなく切り欠き溝23から外れる。
これにより、2次衝突時にカプセル8からアッパーブラケット5が離脱するために必要な荷重(「離脱荷重」と呼ぶことにする)は、低く抑えられる(離脱荷重のばらつきを抑えられる)。なお、距離D
1、距離D
2および距離D
3を調整することで、カプセル8がアッパーブラケット5を挟持する力や離脱荷重を微調整することが可能である。
【0051】
アッパーブラケット5が車体2から分離されると同時に、ステアリングコラム4およびステアリング軸3は、一度に前方(移動方向Aの下流側)へ移動する。この移動によって、2次衝突の衝撃が吸収される。
以上のように、このステアリング装置1では、アッパーブラケット5の板状部材14とカプセル8との間におけるこじりを防止できる。
【0052】
次に、本発明の変形例について説明する。
図7は、本発明の変形例における要部の拡大図である。ここで、
図7の姿勢は、
図2と一致している。なお、
図7において、上記に説明した部材と同様の部材には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
以下では、
図1〜
図6に加えて
図7も参照して説明する。
【0053】
図7を参照して、本発明の変形例における各カプセル8では、領域S
1(内側周縁部14Fにおいて内側端部30に挟持される部分)は、領域S
2(外側周縁部14Gにおいて外側端部31に挟持される部分)よりも小さい。
図7では、左右方向Yにおいて内側端部30における第2挟持部26は、
図5で領域S
1にあった樹脂ピン33よりも外側に位置している。この状態においても内側端部30は、内側周縁部14Fを挟持しており、内側端部30における第2挟持部26は、内側周縁部14Fとひっかかる程度に左右方向Yに側端部29よりも突出していればよい。具体的には、内側端部30における第2挟持部26は、1mm程度突出していればよい。また、領域S
1(正確には、領域S
1の近傍)の樹脂ピン33は、カプセル8の第2挟持部26には挿通されておらず、板状部材14と第1挟持部24(挿通孔34)とに挿通されている。なお、領域S
1の樹脂ピン33は、説明の便宜上、図示しただけであるので、実際には存在しなくてもよい。
【0054】
次に、2次衝突時の変形例におけるステアリング装置1の動作について説明する。
2次衝突による衝撃が操舵部材9に対して斜め(軸方向Xに対して上下に交差する方向)から入力され、アッパーブラケット5が斜めに移動した場合を想定する。このとき、入力される衝撃によっては、板状部材14が上下方向Zに部分的に撓みながらカプセル8に押し当てられることがある。板状部材14は、一対のカプセル8によって挟持されているため、板状部材14において、一対のカプセル8よりも内側(ステアリング軸3側)の部分は特に撓みやすい。つまり、板状部材14の内側周縁部14Fにおいて内側端部30に挟持されている部分(領域S
1)の方が、板状部材14の外側周縁部14Gにおいて外側端部31に挟持されている部分(領域S
2)よりも撓みやすい。よって、内側端部30が外側端部31よりも左右方向Yに短い場合(領域S
1が領域S
2よりも小さい場合)は、2次衝突の衝撃によって、板状部材14において、内側の方が外側よりも撓んでも、カプセル8は板状部材14とこじることなく切り欠き溝23から離脱できる。
【0055】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、外側端部31が内側端部30よりも左右方向Yに短い場合もあり得る。2次衝突によって受ける衝撃の入力方向によっては、板状部材14において、外側の方が内側よりも撓むことが想定される。また、アッパーブラケット5の形状によっては(たとえば板状部材14において外側よりも内側の剛性が高い場合など)、板状部材14において、一対のカプセル8よりも外側の方が内側よりも撓みやすいことも想定される。これらの場合、板状部材14の領域S
2は、領域S
1よりも撓みやすい。よって、外側端部31が左右方向Yに短い場合は、2次衝突の衝撃によって、板状部材14において、外側の方が内側よりも撓んでも、カプセル8は板状部材14とこじることなく切り欠き溝23から離脱できる。
【0056】
このように、板状部材14の外側周縁部14Gにおいて外側端部31に挟持されている部分(領域S
2)の大きさと、板状部材14の内側周縁部14Fにおいて内側端部30に挟持されている部分(領域S
1)の大きさとが不等であってもよい。この場合、2次衝突の衝撃によって板状部材14が撓んだ場合において、内側と外側とで板状部材14の撓み量が違っても、ここでの撓み量の差に応じて、領域S
1と領域S
2との大きさに差を持たせておけば、カプセル8は、板状部材14とこじることなく切り欠き溝23から離脱できる。
【0057】
また、第1端部27および第2端部28は、実施形態で示した形状に限定されることはなく、板厚方向T(上下方向Z)から見て、円弧形状または多角形状であってもよい。
また、カプセル8は、チルト調整およびテレスコ調整ができるステアリング装置1にのみ用いられるものではなく、チルト調整およびテレスコ調整のうちのどちらかのみが可能なステアリング装置などの全てのステアリング装置に適用可能である。
【0058】
また、ステアリング装置1は、電動モータによる操舵の補助される電動パワーステアリング装置に適用されてもよいし、電動モータによる操舵の補助が省略されたマニュアルステアリング装置に適用してもよい。
また、実施形態において、カプセル8は、樹脂ピン33によって板状部材14と連結されているが、必ずしも樹脂ピン33を用いる必要はない。たとえば、かしめによってカプセル8と板状部材14を連結していてもよいし、板状部材14を係止する構造をカプセル8に設けてもよいし、別部品を用いてもよい。
【0059】
また、カプセル8などの車体2側に固定される部材には、2次衝突時の衝撃を吸収するための板状の吸収部材(図示しない)などを設けていてもよい。当該吸収部材は、2次衝突によってアッパーブラケット5が車体2の前側に移動する際に、アッパーブラケット5などによりしごかれるように変形することで、当該衝撃を吸収する。実施形態では、カプセル8がアッパーブラケット5から離脱するまで距離(距離D
1、距離D
2および距離D
3)が短いので、当該EAプレートが変形を開始するまでの間にカプセル8がアッパーブラケット5から離脱することができる。アッパーブラケット5とカプセル8との間でこじりが発生しないので、2次衝突時のエネルギーは、こじりによって損失することがない。そのため、当該EAプレートは、荷重特性を十分に発揮することができる(狙い通りの量のエネルギーを吸収することができる)。
【0060】
また、アッパーブラケット5およびカプセル8の材質は、鉄などの金属に限られず、樹脂などを用いてもよい。
また、カプセル8は、必ずしも板状部材14において左右方向Yの両側に設けられている必要はなく、たとえば左右方向Yの中央に1つだけ設けられていてもよい。