(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接着剤が、コア材に一液加熱硬化型接着剤を含むとともにシェルが前記加熱液体による加熱により融解するマイクロカプセル含有するマイクロカプセル一液加熱硬化型接着剤である、請求項1記載の自動車用窓ガラスに対する被着体の接着方法。
【背景技術】
【0002】
自動車用窓ガラスに対し、インナーミラー取付用ブラケット、モール、プロテクター、位置決め用基準ピン、ドアガラス締結用ホルダー、ヒンジ等の各部材を取り付ける手段としては、接着剤が一般的となっている。自動車ガラス用接着剤としては、通常、エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系、変性シリコーン系等の接着剤が使用されている。自動車には様々な振動が加わる為、比較的柔らかい接着剤が好ましく、特にウレタン系やシリコーン系のものがその大半を占めている。
【0003】
例えばポリウレタン組成物はポリウレタンを主成分とした可塑剤、顔料等を配合した組成物であって、目地材、シーリング材、接着剤および被覆材等に使用されている。ポリウレタン接着剤は自動車ガラスと自動車ボディーを接着する際のダイレクトグレージング用として広く使用される。こうした用途に用いられるポリウレタン組成物は一液型の湿気硬化型ポリウレタン組成物やイソシアネート化合物とポリオールの反応による二液型に分けられている。一液の場合は空気中の湿気によって架橋反応が進み、特に冬季の低湿状態では硬化の速度は非常に遅く、架橋が終結するには数日を必要としていた。また、それを効率よく硬化させる方法として養生乾燥室と言われる温湿度を均一にした場所に置く方法が用いられるが、それらの運搬工数や大がかりな設備投資が必要であった。また、二液の場合に関しても、大がかりな吐出装置が必要で、二液特有の混合不良や接着剤のロスなどの問題もあった。
【0004】
このような問題を解決するものとして、本出願人は熱硬化樹脂製の両面テープを高周波誘電加熱により、短時間で硬化させる方式を提案した(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この方式は自動車用ルームミラーをフロントガラス1に接着するには適しているものの、他の被着体、とりわけドアガラス締結用ホルダーの接着には適さないという問題点があった。すなわち、ドアガラスは車両のデザイン性や大きさに合わせ多種多様な形状が存在し、それに合わせてドアガラス締結用ホルダー50形状も多種多様であり、例えば
図1(a)〜(c)に示すように、一枚のドアガラス1におけるドアガラス締結用ホルダー50の取付個数は1個ないし2個などの違いがあり、ドアガラス締結用ホルダー50を2個接着する場合などはそれぞれ2個の間隔も車両により大きく異なる。このため、特許文献1の手法をドアガラス締結用ホルダーに採用するにはそれに合わせた機器が必要となるだけでなく、1台の機器で対応する場合には、段取り替えの工数が発生するなど多くの問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、養生乾燥室などの大がかりな設備を必要とせず、窓ガラスの寸法・形状や被着体の寸法・形状・取付位置・取付個数に拘らず、より短時間で確実に接着剤を硬化させる手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
自動車用窓ガラスに対して、接着剤を介して被着体を接着するにあたり、
前記接着剤として加熱硬化型接着剤を使用し、
前記自動車用窓ガラスに接着剤を介して被着体を付着させ、少なくとも前記接着剤の付着部分全体を、前記接着剤の硬化温度以上の加熱液体中に浸漬させた状態に維持することにより前記接着剤の硬化を進行させる、
ことを特徴とする自動車用窓ガラスに対する被着体の接着方法。
【0009】
(作用効果)
本発明は、加熱硬化型接着剤を使用するとともに、接着剤の付着部分を容器内の加熱液体中に浸漬することにより硬化促進を図るところに特徴を有するものである。このように、硬化促進に加熱液体への浸漬を利用するため、養生乾燥室などの大がかりな設備を必要とせず、窓ガラスの寸法・形状や被着体の寸法・形状・取付位置・取付個数に拘らず、より短時間で確実に接着剤を硬化させることができるようになる。
【0010】
<請求項2記載の発明>
前記接着剤が、コア材に一液加熱硬化型接着剤を含むとともにシェルが前記加熱液体による加熱により融解するマイクロカプセル含有するマイクロカプセル一液加熱硬化型接着剤である、請求項1記載の自動車用窓ガラスに対する被着体の接着方法。
【0011】
(作用効果)
生産効率だけを考慮するならば接着剤の硬化が速いに越したことはないが、作業及び品質の安定性も重要であるため、接着剤の貯蔵安定性を無視することはできない。しかし、接着剤の硬化促進と貯蔵安定性は一般に二律背反の関係にあるため、貯蔵安定性を確保するとき硬化促進は犠牲となってしまう。特に、上述のようなマイクロカプセル一液加熱硬化型接着剤は、貯蔵安定性に優れる反面、従来の養生乾燥室では硬化に長時間を要する。これに対して、本発明に従って、硬化促進に加熱液体への浸漬を利用すると、熱伝達にホルダー形状等の影響を受け難いことや、保温性が高いこともあって、非常に短時間での硬化が可能となる。
【0012】
<請求項3記載の発明>
前記自動車用窓ガラスは強化ガラス又は合わせガラスであり、
前記一液加熱硬化型接着剤は、一液加熱硬化型ウレタン接着剤であり、
前記マイクロカプセルのシェルの融点が80〜120℃であり、
前記加熱液体の温度が80〜120℃であって、かつ前記シェルの融点以上である、
請求項2記載の自動車用窓ガラスに対する被着体の接着方法。
【0013】
(作用効果)
ドアガラスとしては強化ガラスが一般的で、近年、車内空間の遮音性を高めるために合わせガラスを採用する事例も見受けられる。前述した強化ガラスの場合、生ガラスを熱処理することで、表面強度を強化させるため、ドアガラス締結用ホルダーを接着する際に過度な温度を与えてしまうとガラス自体の強度が低下してしまう。また、合わせガラスの場合は中間膜のポリビニルブチラール樹脂が溶解、発泡して、強度劣化や外観不良などの不具合が生じてしまう。よって、加熱液体の温度は120℃以下とすることが望ましい。この温度以下での加熱により硬化が促進される接着剤として好ましいものの一つが一液加熱硬化型ウレタン接着剤であり、80℃以上であれば、通常使用される被着体の形状や厚みの影響をあまり受けることなく硬化時間を飛躍的に短縮化することができる。したがって、マイクロカプセルのシェルの融点は80〜120℃とし、加熱液体の温度はこの範囲でかつシェルの融点以上とすることが望ましい。
【0014】
<請求項4記載の発明>
前記自動車用窓ガラスは自動車用ドアガラスであり、
前記被着体は、自動車用ドアガラス昇降装置のガイドチャンネルに組みつけられるドアガラス締結用ホルダーであり、
前記ドアガラス締結用ホルダーは、エンジニアプラスチック製であり、かつ前記自動車用ドアガラスの端部を挟持する一対の挟持部を有するものである、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車用窓ガラスに対する被着体の接着方法。
【0015】
(作用効果)
前述のとおり、ドアガラス締結用ホルダーは形状が複雑かつ多種多様であり、またドアガラスに対する接着位置も多種多様であるが、容器内の加熱液体中への浸漬を利用すれば同じ加熱設備で対応できる。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、本発明によれば、養生乾燥室などの大がかりな設備を必要とせず、ドアガラスの寸法・形状や被着体の寸法・形状・取付位置・取付個数に拘らず、より短時間で確実に接着剤を硬化させることができるようになる、等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について詳説する。
(接着方法)
本発明では、自動車用窓ガラス1に接着剤2を介して被着体10を接着するに際し、加熱硬化型接着剤2を使用し、
図2に示すように、自動車用窓ガラス1に接着剤2を介して被着体10を付着させた後、
図3に示すように少なくとも接着剤2の付着部分全体を、接着剤2の硬化温度以上の加熱液体21中に浸漬させた状態に維持することにより接着剤2の硬化を進行させる。このように、硬化促進に加熱液体21への浸漬を利用すると、養生乾燥室などの大がかりな設備を必要とせず、窓ガラス1の寸法・形状や被着体10の寸法・形状・取付位置・取付個数に拘らず、より短時間で確実に接着剤2を硬化させることができるようになる。
【0019】
浸漬方法としては、
図3に示すように、容器20内に加熱液体21を用意し、その加熱液体21中に接着剤2の付着部分全体を浸漬する限り、
図3〜
図5に示すようにガラス1一枚ずつバッチ式で浸漬しても、
図6に示すように複数枚(数枚、数十枚等)まとめて浸漬しても良い。ガラス1一枚ずつ浸漬する場合は、
図4に示すようにガラス1をコンベアー24で順次搬送しつつガラス1一枚ずつ浸漬する他、
図5に示すように多軸ロボットアーム25でガラス1を一枚ずつ保持して浸漬することもできる。また、ガラス1複数枚をまとめて浸漬する場合は、
図6に示すように複数枚のガラス1を載せたパレット30ごと浸漬させることができる。
【0020】
また、浸漬に際して、ガラス1全体を浸漬させても構わないが、接着剤2の付着部分全体が浸漬されれば良いため、例えば被着体10全体が浸漬される程度とすることができる。ただし、この場合、あまり液面近くに接着剤2の付着部分が存在すると、外気との温度差で温度バラツキが生じるので、液面22から接着剤2の付着部分の上端までの離間距離dを50mm以上、好ましくは100mm以上とすることが望ましい。なお、被着体10をガラス1の一辺側にのみ接着する場合は、図示形態のように被着体10を下側にして、接着剤2の付着部分のみ浸漬すると、加熱液体21の深さを浅くすることができる。
【0021】
加熱液体21としては、水が好ましく、水道水や不純物が極端に少ない純水でも構わない。また、接着剤2等に影響を与えない範囲であれば、他の液体を用いることも可能であるが、防腐剤やアルコールを添加した水等、水溶液が好ましい。また、水道水を用いる場合、カルキなどにより、水滴の後残りが気になる場合はエアー噴射手段26などで水滴を吹き飛ばす工程があっても構わない。
【0022】
容器20内の加熱液体21の温度を上昇させる若しくは維持するために、ガス燃焼加熱(図示形態)や、電熱ヒータ、水蒸気注入等の加熱手段23を用いることが望ましい。これらの加熱手段23は図示形態のように容器20に装備し、容器20内の加熱液体21を直接に加熱するほか、給湯器等のように外部の加熱装置との間で加熱液体21を循環しつつ加熱することもできる。
【0023】
加熱液体21の温度は接着剤2の硬化温度以上であれば特に限定されないが、80℃以上が好ましく、より好ましくは90℃以上であり、また120℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以下である。この温度であれば、被着体10の形状や厚みにもよるが、2〜5分間で硬化させることができる。
【0024】
浸漬時間は適宜定めることができ、完全硬化まで浸漬するほか、実用強度が得られるまでとすることもできる。
【0025】
(加熱硬化型接着剤)
加熱硬化型接着剤2は熱により硬化が促進されるものであれば、特に限定されず、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系、変性シリコーン系など公知の接着剤が使用でき、一液加熱硬化でも、二液加熱硬化であっても構わない。自動車用接着剤としての実績から、特に一液ウレタン接着剤2が好ましい。
【0026】
一液ウレタン接着剤としては、アミン系潜在性硬化剤および硬化触媒内包や、ポリイソシアネート化合物をマイクロカプセルに内包したもの(つまりコアに含有するもの)が貯蔵安定性の面から好ましく、特に後者のポリイソシアネート化合物を用いたものが好ましい。
【0027】
マイクロカプセルは、球体直径がおよそ1μm〜1000μm程のきわめて微小なカプセルをさし、化学的または物理的な手法によって作られるものである。マイクロカプセルの中に閉じ込める物をコア材(内包材料)といい、カプセルの表面をシェル(壁膜形成材料)という。
【0028】
マイクロカプセルのシェルとしては、界面重合法、インサイチュー法、ラジカル重合法等の手法で得られるポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリウレタン、ポリウレア、アミノプラスト樹脂、ゼラチンとカルボキシメチルセルロースもしくはアラビアゴムとのコアセルベーション法を利用した合成あるいは、天然樹脂を用いたものがあり、使用用途等に応じて使い分けされている。さらに、物理的、化学的に安定で、且つ比較的安価で容易に作製できるインサイチュー法によるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂も使用可能である。
【0029】
マイクロカプセル内包材料のポリイソシアネート化合物としては、通常のポリウレタン樹脂の製造に用いられている種々のものがある。具体的には、2,4−トリレンジイソシアナートまたは2,6−トリレンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、キシレンジイソシアナート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアナート、ナフチレン−1,5−ジイソシアナート、およびこれらに水素添加した化合物、エチレンジイソシアナート、プロピレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、1−メチル−2、4−ジイソシアナートシクロヘキサン、1−メチル−2、6−ジイソシアナートシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート等が挙げられる。これらのポリイソシアナート化合物は単独でも2種以上を併用してもよい。
【0030】
一液加熱硬化型接着剤を用いる場合は、上述のように接着成分をコアに含有することができ、二液加熱硬化型接着剤を用いる場合は、一方の成分をコアに含有させたマイクロカプセルを、他方の成分を含む溶剤又は溶媒に溶解又は分散させることができる。
【0031】
マイクロカプセル化の方法は特に限定されず、複合エマルジョン法によるカプセル化法(特開昭62−1452号公報)、蓄熱物質粒子の表面に熱可塑性樹脂を噴霧する方法(特開昭62−45680号公報)、蓄熱物質粒子の表面に液中で熱可塑性樹脂を形成する方法(特開昭62−149334号公報)、蓄熱物質粒子の表面でモノマーを重合させ被覆する方法(特開昭62−225241号公報)、界面重縮合反応によるポリアミド皮膜マイクロカプセルの製法(特開平2−258052号公報)等に記載されている方法等、公知の方法を採用することができる。
【0032】
マイクロカプセルの平均粒径としては、数μm〜数百μmが好ましく、特に好ましいのは数十μmである。マイクロカプセルの外殻が溶解する温度としては80〜120℃程度が好ましく、80〜100℃が特に好ましい。80℃以下であると、生活環境における保管時に接着剤の劣化や経時変化が起こり易く、120℃を超えると、硬化に必要とされる加熱により、自動車用窓ガラスや被着体へのダメージが問題となるおそれがある。
【0033】
接着剤には充填剤、可塑剤、酸化防止剤、顔料、シランカップリング剤、分散剤、溶剤等を配合してもよい。
【0034】
充填剤としては炭酸カルシウム、シリカ等が挙げられる。炭酸カルシウムは重質炭酸カルシウムと沈降性炭酸カルシウムに大別されるが、イソシアネート基と水分との反応を妨げ貯蔵安定性を向上させるために、脂肪酸エステルで表面を処理してなる沈降性炭酸カルシウムであることが好ましい。
【0035】
炭酸カルシウムの表面処理を行う脂肪酸エステルは、これを構成する脂肪酸、エステル共に限定されない。例えば、ステアリン酸ステアレート、ステアリン酸ラウレート、パルミチン酸ステアレート、パルミチン酸ラウレートである。また、一価アルコールから得られるエステルも有用である。表面処理に使用する脂肪酸エステルの量は、特に限定されないが、炭酸カルシウムの粒度に応じて増減することが好ましい。一般的には、炭酸カルシウム重量の1〜20%程度を使用する。
【0036】
上記の脂肪酸エステルで表面処理した沈降性炭酸カルシウムの添加量は、ウレタンポリマー100重量部に対して50〜150重量部の範囲であることが好ましい。
【0037】
シリカを用いる場合、シリカには親水性グレードのものと疎水性グレードのものとがあるが、いずれのグレードのものを用いてもよい。
【0038】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ジブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、トリオクチルフォスフェート、トリス(クロロエチル)フォスフェート、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、エポキシステアリン酸アルキル、エポキシ化大豆油が挙げられ、単独、あるいは混合して使用することができる。
【0039】
酸化防止剤は種々の自動酸化性物質に対し、光や熱などの条件下における酸素の作用を防止ないし抑制する性質をもつ有機化合物をいい、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等のフェノール誘導体、ジフェニルアミン、フェニレンジアミン等の芳香族アミン、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸エステルなどのラジカル連鎖禁止剤を挙げることができる。
【0040】
顔料は、無機顔料と有機顔料とがあり、無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ等の金属酸化物、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム等の硫黄物、塩酸塩、硫酸塩等を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等を挙げることができる。
【0041】
シランカップリング剤は、一般に、相互になじみの悪いガラス、シリカ、金属、粘土等の無機材料と高分子等の有機材料とを化学結合できる官能基を有する下記式(1)で表される有機ケイ素化合物をいう。
Y〜CH
2SiX
3 …(1)
(式中のXはアルコキシ基やアセトキシ基、イソプロポキシ基、アミノ基、ハロゲン等の加水分解性の置換基で、無機と反応し、Yは有機質と反応しやすいビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基などである)
【0042】
分散剤は、固体を微細な粒子にして液中に分散させる物質をいい、ヘキサメタリン酸ナトリウム、縮合ナフタレンスルホン酸ナトリウム、界面活性剤を挙げることができる。
【0043】
接着剤は溶剤を含有していなくても良いが、使用する場合はキシレン、トルエン等の芳香族系炭化水素溶媒を用いることが好ましい。
【0044】
接着剤の塗布量は、ガラスに付着させる部材の質量や形状等に応じて適宜変更可能であるが、通常の場合0.01〜0.1g/cm
2程度とすることが好ましい。
【0045】
本発明に好適な接着剤としては、マイクロカプセル含有一液加熱硬化型ウレタン接着剤であるHenkel社の商品名Terolan1510を例示することができる。
【0046】
(被着体)
被着体10の種類は特に限定されないが、自動車用窓ガラス1に取り付けられるものの例としては、インナーミラー取付用ブラケット、モール、プロテクター、位置決め用基準ピン、ドアガラス締結用ホルダー、ヒンジ等を挙げることができる。本発明は、被着体10の寸法・形状・取付位置・取付個数の影響を受け難いため、比較的に多種多様な形状、取付位置、取付数であるドアガラス締結用ホルダーの接着に適している。
【0047】
図7〜
図10はドアガラス締結用ホルダー50の一例を示している。このドアガラス1締結ホルダーは、上部に位置するガラス保持部51と、このガラス保持部51の下側に突出する連結部52とを有する。ガラス保持部51は、ほぼU字状の断面をもってガラス1の水平延在方向(水平方向に沿ってガラス1が延在する方向)に延在する部分であり、底部51b及び底部51b上に所定の間隔で立設された一対の平板状挟持部51aを有している。挟持部51a間の溝状部分にはドアガラス1の下端部が挿入され、接着剤2を介して接着される。連結部52は挟持部51aに対してほぼ平行をなすように延在する平板状部分であり、所定部分に、室内側面から室外側面に貫通するボルト挿通孔52hが形成されており、このボルト挿通孔52hを利用して、ウインドレギュレータ(昇降装置)により昇降自在に支持されたキャリアプレートに連結されるようになっている。
【0048】
ドアガラス締結用ホルダー50の形状は特に限定されず、図示例と異なり、ドアガラス1との接着面がドアガラス1の片側のみであっても、また、二枚に分割された挟持部で挟持する構造のもでも用いることができるが、特に図示例のように断面U字型に一体成型されたものは外部からの加熱が困難なため、本発明が特に有用となる構造ということができる。
【0049】
被着体10の接着面の大きさは特に限定されず、ガラス1の大きさ、重量、形状を考慮し、任意に選択できる。
【0050】
被着体10の材質は鋼鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属でも構わないが、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂などのエンジニアリングプラスティックが適しており、中でもポリブチレンテレフタレートが最適である。強度を上げる為に、ガラス1繊維を含んだり、ABSやポリカーボネイトなどアロイなどでも構わない。このようなポリブチレンテレフタレートの具体例としてはポリブチレンテレフタレート樹脂としてはポリプラスチックス(株)からジュラネックス、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)からノバデュラン、東レ(株)からトレコンという商品名でそれぞれ市販されているが、これに限定されるものではない。また被着体10をプラスティック製とする場合、その成型方法は射出成型等、特に限定されない。
【0051】
自動車用窓ガラス1と被着体10とのクリアランス、つまり接着剤2の厚みは、0.1mm〜3.0mmが好ましく、特に好ましくは0.2mm〜1.0mmである。0.1mm以下であると、クッション効果が減少し、ガラス1の割れに繋がり易く、3.0mmを超えると振動が発生し易くなる。そのクリアランスを維持するために、被着体10の接着面には一般的にリブと言われる突起11を設けることが好ましい。リブの幅や個数は特に限定されない。
【0052】
(自動車用窓ガラス)
本発明の自動車用窓ガラス1とは自動車用の強化ガラス、黒色セラミックプリントガラス、中間層にポリビニルブチラールを使用した合せガラス等を指し、特に限定されない。ドアガラスとしては強化ガラスが一般的であるが、近年、車内空間の遮音性を高めるために合わせガラスを採用することもある。強化ガラスの場合、生ガラスの熱処理により表面強度を強化させるため、被着体10を接着する際に過度な温度を与えてしまうとガラス1自体の強度が低下してしまう。また、合わせガラスの場合は中間膜のポリビニルブチラール樹脂が溶解、発泡して、強度劣化や外観不良などの不具合が生じてしまう。よって、加熱液体21の温度は前述の範囲内とすることが望ましい。
【0053】
(その他)
自動車用窓ガラス1及び被着体10の少なくとも一方にはポリイソシアネート組成物やシランカップリング剤などの、一般的にプライマーと呼ばれるものを塗布しても良く、特に限定されるものではない。
【0054】
シランカップリング剤は、接着剤の項で述べたものと同様のものを用いることができる。
【0055】
このようなプライマーの市販品としては、Henkel社製の商品名TEROSTAT-8521、TEROSTAT-8617Hを例示することができる。
【0056】
自動車用窓ガラス1及び被着体10には接着する前に、埃や油分を除去する為に、脱脂をしても良い。脱脂は通常、有機溶剤で行い、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールや、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類が代表的であるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
(ポリブチレンテレフタレート製ドアガラス締結用ホルダーの成型)
【0058】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ(株)製、(ガラス繊維30%入り)、グレード名 トレコン1101−G30)を用いて、公知の方法で射出成型を行い、
図7〜
図10に示すドアガラス締結用ホルダー50(接着面積:45mm×12mm×2面、接着剤の厚さ(突起11(リブ)の高さ):0.5mm)を作製した。
【0059】
(実施例1)
上記作製したドアガラス締結用ホルダー50の中心部に、
図2に示すように、硬化温度約80℃のマイクロカプセル含有一液加熱硬化型ウレタン接着剤(Henkel製:商品名Terolan1510)を約1.6g塗布し、自動車用強化ガラスと同じ材質のテストピース(厚み:4mm/100×100mm)に接着させた後、
図3に示すようにして実測値で80℃の加熱水にホルダー接着部全体が浸かるように浸漬し、この浸漬状態で10分間保持した後に取り出し、室温に戻ってから上下方向の引張強度(引張速度10mm/min)を測定した。なお、接着に先立って、プライマーとして、ドアガラス締結用ホルダー50にはTEROSTAT-8521、ガラス側にはTEROSTAT-8617H(共にHenkel製)をそれぞれ塗布した。
【0060】
(実施例2)
熱水の温度を97℃(実測値)とした点、及び浸漬時間を4分とした点以外は、実施例1と同様にして試験を行った。
【0061】
(比較例1)
熱水への浸漬の代わりに、40℃/60%RHに設定された恒温槽中で24時間養生させた以外は、実施例1と同様にして試験を行った。
【0062】
(比較例2)
熱水の温度を70℃(実測値)とした点、及び浸漬時間を60分とした点以外は、実施例1と同様にして試験を行った。
【0063】
(比較例3)
上記作製したドアガラス締結用ホルダー50の中心部に、マイクロカプセルを含有せず、末端にイソシアネート基を有するウレタンポリマーで構成される湿気硬化型ウレタン接着剤(Dow Automotive Systems製:商品名BETASEAL Express)を約1.6g塗布し、自動車用強化ガラスと同じ材質のテストピース(厚み:4mm/100×100mm)に接着させた後、40℃/60%RHに設定された恒温槽中で24時間養生した後に取り出し、室温に戻ってから上下方向の引張強度(引張速度10mm/min)を測定した。なお、接着に先立って、プライマーとして、ドアガラス締結用ホルダー及びガラス側にBETAPRIME5504G(Dow Automotive Systems製)をそれぞれ塗布した。その他は実施例1と同様とした。
【0064】
(比較例4)
恒温槽を用いた養生に代えて、実測値で97℃の加熱水にホルダー接着部全体が浸かるように浸漬し、この浸漬状態で4分間保持した後に取り出した以外は、比較例3と同様にして試験を行った。
【0065】
(試験結果)
表1に試験結果を示す。この結果から、本発明によれば短時間で接着剤を硬化できることが判明した。
【0066】
【表1】