特許第6187824号(P6187824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6187824第1正極活物質、第2正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を含む組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187824
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】第1正極活物質、第2正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を含む組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1391 20100101AFI20170821BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20170821BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20170821BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20170821BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20170821BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01M4/1391
   H01M4/1397
   H01M4/525
   H01M4/505
   H01M4/58
   H01M4/36 E
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-46168(P2014-46168)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2015-170555(P2015-170555A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】江口 達哉
(72)【発明者】
【氏名】金田 潤
(72)【発明者】
【氏名】牧 剛志
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0057228(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
H01M 4/36
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 4/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦1.7、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Alから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)で表される第1正極活物質、一般式:LiMPO(MはMn,Fe,Co,Ni,Cu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B、Te及びMoから選ばれる少なくとも1の元素、0<h<2)で表される第2正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を含む組成物の製造方法であって、
a−1)前記導電助剤、前記結着剤及び前記溶剤を混合する工程、
a−2)前記a−1)工程で得られた液に前記第1正極活物質を混合し、分散液を製造する工程、
b)前記分散液に前記第2正極活物質を混合する工程
を有することを特徴とする組成物の製造方法。
【請求項2】
c)請求項1に記載の製造方法で製造された組成物を集電体に塗布する工程、
d)集電体に塗布された組成物から溶剤を除去し、正極活物質層を形成する工程、
を有する正極の製造方法。
【請求項3】
e)請求項2に記載の製造方法で製造された正極を配置する工程、
を有するリチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦1.7、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Alから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)で表される第1正極活物質、一般式:LiMPO(MはMn,Fe,Co,Ni,Cu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B,Te及びMoから選ばれる少なくとも1の元素、0<h<2)で表される第2正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を含む組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水系電解質二次電池の正極活物質には種々の材料が用いられることが知られており、さらに、正極活物質として複数の材料を採用した二次電池も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1及び2には、正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3及びLiFePOを採用したリチウムイオン二次電池が具体的に開示されている。特許文献3には、正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1及びLi(POを採用したリチウムイオン二次電池が具体的に開示されている。
【0004】
一般的にリチウムイオン二次電池の正極は、集電体と、該集電体上に形成された正極活物質層からなる。通常、正極活物質層は、集電体上に正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を含む組成物(スラリー)を塗布し、該組成物から該溶剤を除去する製造方法により製造される。ここで、正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を含む組成物は、該組成物の構成成分の固形分を混合した後に溶剤を加えて混合する製造方法で製造されるか、又は、組成物の成分全てを一度に混合する製造方法で製造されるのが通常であった。
【0005】
実際に、特許文献1に記載の2種の正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を含む組成物は、まず、2種の正極活物質を混合し、ここに導電助剤、結着剤、溶剤を加える製造方法で製造されている(実施例1を参照。)。特許文献2又は特許文献3に記載の2種の正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を含む組成物は、該組成物の成分を一度に混合する製造方法で製造されている(いずれも実施例1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−228293号公報
【特許文献2】特開2013−178935号公報
【特許文献3】特開2013−77421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、リチウムイオン二次電池及びその正極は、その機能からみて、当然に低抵抗の方が好ましい。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、より低抵抗な正極及びリチウムイオン二次電池を製造するための、2種類の正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を含む組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が鋭意検討した結果、意外にも、一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦1.7、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Alから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)で表される第1正極活物質、一般式:LiMPO(MはMn,Fe,Co,Ni,Cu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B,Te及びMoから選ばれる少なくとも1の元素、0<h<2)で表される第2正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を含む組成物の製造方法の違いに因り、該組成物を用いて製造される正極及びリチウムイオン二次電池の抵抗が変化することを見出した。そして、本発明者のさらなる検討の結果、本発明者は正極及びリチウムイオン二次電池の抵抗が最も小さくなる、上記組成物の製造方法を見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の組成物の製造方法は、一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦1.7、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Alから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)で表される第1正極活物質、一般式:LiMPO(MはMn,Fe,Co,Ni,Cu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B,Te及びMoから選ばれる少なくとも1の元素、0<h<2)で表される第2正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を含む組成物の製造方法であって、
a)前記第1正極活物質、前記導電助剤、前記結着剤及び前記溶剤を混合し、分散液を製造する工程、
b)前記分散液に前記第2正極活物質を混合する工程
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法で製造された組成物を用いて製造された正極及びリチウムイオン二次電池は、それ以外の製造方法で製造された組成物を用いて製造された正極及びリチウムイオン二次電池と比較して、低い抵抗値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0013】
本発明の組成物の製造方法は、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦1.7、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Alから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)で表される第1正極活物質、一般式:LiMPO(MはMn,Fe,Co,Ni,Cu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B,Te及びMoから選ばれる少なくとも1の元素、0<h<2)で表される第2正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を含む組成物の製造方法であって、
a)前記第1正極活物質、前記導電助剤、前記結着剤及び前記溶剤を混合し、分散液を製造する工程(以下、単に「a)工程」ということがある。)、
b)前記分散液に前記第2正極活物質を混合する工程(以下、単に「b)工程」ということがある。)
を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の製造方法で製造される組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある。)は、溶剤及び溶剤以外の固形分からなる。溶剤以外の固形分とは、第1正極活物質、第2正極活物質、導電助剤及び結着剤、並びに、必要に応じて用いられる分散剤等の添加剤をいう。本発明の組成物において、溶剤以外の固形分(以下、単に「固形分」ということがある。)の配合量は、30〜90質量%の範囲内が好ましく、50〜75質量%の範囲内がより好ましい。
【0015】
第1正極活物質は、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦1.7、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Alから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)で表される材料である。
【0016】
一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦1.7、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Alから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)において、b、c及びdの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが0<b<80/100、0<c<70/100、10/100<d<1の範囲であることが好ましく、10/100<b<68/100、12/100<c<60/100、20/100<d<68/100の範囲であることがより好ましく、25/100<b<60/100、15/100<c<50/100、25/100<d<60/100の範囲であることがさらに好ましく、1/3≦b≦50/100、20/100≦c≦1/3、30/100≦d≦1/3の範囲であることが特に好ましく、b=1/3、c=1/3、d=1/3、または、b=50/100、c=20/100、d=30/100であることが最も好ましい。
【0017】
aは、0.5≦a≦1.5の範囲内が好ましく、0.7≦a≦1.3の範囲内がより好ましく、0.9≦a≦1.2の範囲内がさらに好ましく、1≦a≦1.1の範囲内が特に好ましい。
【0018】
e、fについては一般式で規定する範囲内の数値であればよく、e=0、f=2を例示することができる。
【0019】
第1正極活物質はその形状が特に制限されるものではないが、平均粒子径でいうと、100μm以下が好ましく、0.1μm以上50μm以下がさらに好ましい。0.1μm未満では、電極を製造した際に集電体との密着性が損なわれやすいなどの不具合を生じることがある。100μmを超えると電極の大きさに影響を与えたり、二次電池を構成するセパレータを損傷するなどの不具合を生じることがある。なお、本明細書における平均粒子径は、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で計測した場合のD50の値を意味する。
【0020】
第2正極活物質は、一般式:LiMPO(MはMn,Fe,Co,Ni,Cu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B,Te及びMoから選ばれる少なくとも1の元素、0<h<2)で表される材料である。リチウムイオン二次電池における第2正極活物質の充放電電位は第1正極活物質の充放電電位よりも低い。そのため、第1正極活物質及び第2正極活物質を具備するリチウムイオン二次電池では、実質的に第1正極活物質が正極の充放電の役割を担っている。
【0021】
具体的な第2正極活物質としては、LiFePO、LiMnPO、LiVPO、LiNiPO、LiCoPO、LiTePO、Li(PO、LiFe(PO、LiMn7/8Fe1/8POを挙げることができる。リチウムイオン二次電池の正極活物質層に第2正極活物質が存在すると、電池の正極と負極の短絡時であっても、電池の発熱をある程度抑制することができる。なお、第2正極活物質は、その表面をカーボンコートしたものを採用するのが好ましい。
【0022】
第2正極活物質はその形状が特に制限されるものではないが、平均粒子径でいうと、100μm以下が好ましく、0.01μm以上10μm以下がさらに好ましい。
【0023】
本発明の組成物の固形分に対する、第1正極活物質と第2正極活物質の合計配合量は、60〜99.5質量%の範囲内が好ましく、70〜99質量%の範囲内がより好ましく、80〜98質量%の範囲内がさらに好ましく、90〜97質量%の範囲内が特に好ましい。また、本発明の組成物における第1正極活物質と第2正極活物質の配合質量比は、95:5〜50:50の範囲内が好ましく、90:10〜55:45の範囲内がより好ましく、80:20〜60:40の範囲内がさらに好ましく、80:20〜65:35の範囲内が特に好ましい。
【0024】
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)、および各種金属粒子などが例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて本発明の組成物に添加することができる。
【0025】
導電助剤はその形状が特に制限されるものではないが、その役割からみて、平均粒子径は小さいほうが好ましい。導電助剤の好ましい平均粒子径を挙げると、10μm以下が良く、0.01〜1μmの範囲内がさらに好ましい。
【0026】
本発明の組成物における導電助剤の配合量は、第1正極活物質と第2正極活物質の合計配合量に対し、0.5〜20質量%の範囲内が好ましく、1〜10質量%の範囲内がより好ましく、2〜5質量%の範囲内が特に好ましい。
【0027】
結着剤は、正極活物質や導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂を例示することができる。また、結着剤として、親水基を有するポリマーを採用してもよい。親水基を有するポリマーの親水基としては、カルボキシル基、スルホ基、シラノール基、アミノ基、水酸基、リン酸基が例示される。親水基を有するポリマーの具体例として、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリメタクリル酸、ポリ(p−スチレンスルホン酸)を挙げることができる。
【0028】
本発明の組成物における結着剤の配合量は、第1正極活物質、第2正極活物質及び導電助剤の合計配合量に対し、0.5〜20質量%の範囲内が好ましく、1〜10質量%の範囲内がより好ましく、2〜5質量%の範囲内が特に好ましい。結着剤の配合量が少なすぎると組成物を正極活物質層とした場合に当該層の成形性が低下するおそれがある。また、結着剤の配合量が多すぎると、正極活物質層における正極活物質の量が減少するため、好ましくない場合がある。
【0029】
溶剤としては、具体的にN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略す場合がある。)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、及びテトラヒドロフランを例示できる。これらの溶剤は、1種類を単独で本発明の組成物に用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
本発明の組成物において、その全質量に対する上記溶剤の配合量は、10〜70質量%の範囲内が好ましく、20〜50質量%の範囲内がより好ましく、25〜50質量%の範囲内が特に好ましい。
【0031】
a)工程は、前記第1正極活物質、前記導電助剤、前記結着剤及び前記溶剤を混合し、分散液を製造する工程である。a)工程に用いる混合装置としては、混合攪拌機、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、分散機、超音波分散機、ホモジナイザー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー、遊星式攪拌脱泡装置を例示できる。具体的な混合装置としては、商品名ディスパーミキサー(プライミクス株式会社)、商品名クレアミックス(エム・テクニック株式会社)、商品名フィルミックス(プライミクス株式会社)、商品名ペイントコンディショナー(レッドデビル社)、商品名DYNO-MILL(株式会社シンマルエンタープライゼス)、商品名アイリッヒ インテンシブ ミキサー(日本アイリッヒ株式会社)、商品名脱泡機DP-200(エム・テクニック株式会社)、商品名あわとり練太郎(株式会社シンキー)を挙げることができる。a)工程における混合速度及び混合時間は、各成分が好適に分散若しくは溶解できる速度及び時間を適宜設定すればよい。
【0032】
a)工程にて、まず、第1正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を混合することで、第1正極活物質の粒子の周りに導電助剤が存在する、一定程度の粘度の分散液を得ることができる。層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦1.7、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Alから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)で表される第1正極活物質は電気伝導性がそれほど高くない。しかし、a)工程により、第1正極活物質の周りに電気伝導性の高い導電助剤が好適に分散しつつ付着した、第1正極活物質及び導電助剤の集合体が形成されることが期待できる。そして、本発明の組成物を用いて製造される正極活物質層には、上記集合体の存在に因り、正極集電体、第1正極活物質及び正極活物質層表面を連結する低抵抗な導電通路が形成されることが期待される。
【0033】
a)工程で混合される第1正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤の投入順序には特に制限は無い。例えば、前記a)工程が、
a−1)前記導電助剤、前記結着剤及び前記溶剤を混合する工程、
a−2)前記a−1)工程で得られた液に前記第1正極活物質を混合し、分散液を製造する工程を有してもよい。
【0034】
b)工程は、前記a)工程で製造された分散液及び第2正極活物質を混合する工程である。b)工程に用いる混合装置としては、a)工程で述べた混合装置を採用すれば良い。本発明の組成物において、第2正極活物質は、第1正極活物質及び導電助剤の集合体の周辺に存在すると推定される。
【0035】
本発明の組成物は、必要に応じて、分散剤を含有してもよい。分散剤としては、本発明の組成物中で正極活物質を分散し得るものであればよい。
【0036】
具体的な分散剤としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ビニルピロリドン、ビニルアルコール若しくはアルキレンオキサイドから選択される少なくとも1種のモノマーを用いた重合体又はその誘導体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系ポリマー又はその塩、リン酸エステル若しくはその塩、ポリウレタン、脂肪酸アミド、アルキルアルコールアミン、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。分散剤が高分子の場合、その平均分子量は1000〜100000の範囲内が好ましく、2000〜60000の範囲内がより好ましく、3000〜50000の範囲内が特に好ましい。
【0037】
これらの分散剤は、1種類を単独で本発明の組成物に用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
好ましい分散剤としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ビニルピロリドン若しくはアルキレンオキサイドから選択される少なくとも1種のモノマーを用いた重合体又はその誘導体、リン酸エステルのアミン塩、ポリウレタン、脂肪酸アミド、アルキルアルコールアミンから選択される1種以上を挙げることができる。
【0039】
本発明の組成物における分散剤の配合量は、第1正極活物質と第2正極活物質の合計配合量に対し、0.01〜2質量%の範囲内が好ましく、0.05〜1.5質量%の範囲内がより好ましく、0.1〜1質量%の範囲内がさらに好ましく、0.2〜0.8質量%の範囲内が特に好ましく、0.25〜0.6質量%の範囲内が最も好ましい。また、分散剤の配合量が多すぎると、組成物における正極活物質等の分散には好適であるものの、該組成物を用いて製造した正極及び二次電池において、多量の分散剤の存在が抵抗となりその充放電の妨げとなるおそれがある。
【0040】
分散剤を混合する工程は、a)工程と同時でもよいし、b)工程と同時でもよく、また、a及びb)工程とは独立に存在しても良い。
【0041】
本発明の組成物を用いて正極活物質層を製造でき、さらに、該正極活物質層を具備する正極、及び該正極を具備するリチウムイオン二次電池を製造できる。当該リチウムイオン二次電池では、実質的に第1正極活物質が正極の充放電の役割を担っている。
【0042】
正極は、集電体と、集電体の表面に結着させた正極活物質層で構成される。
【0043】
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体をいう。集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。
【0044】
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状などの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが10μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0045】
集電体の表面に正極活物質層を形成させる方法としては、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に本発明の組成物を塗布すればよい。具体的には、本発明の組成物を集電体の表面に塗布する塗布工程後、乾燥により溶剤を除去して正極活物質層を形成させ、正極とする。必要に応じて電極密度を高めるべく、乾燥後の正極を圧縮しても良い。
【0046】
リチウムイオン二次電池は、電池構成要素として、正極、負極、セパレータ及び電解液を含む。
負極は、集電体と、集電体の表面に結着させた負極活物質層を有する。
負極活物質層は負極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を含む。
集電体、結着剤及び導電助剤は、正極又は本発明の組成物で説明したものを採用すればよい。また、負極活物質層用の結着剤としてスチレン−ブタジエンゴムを採用しても良い。
【0047】
負極活物質としては、リチウムを吸蔵及び放出可能な炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、リチウムと合金化可能な元素を有する元素化合物、あるいは高分子材料などを例示することができる。
【0048】
炭素系材料としては、難黒鉛化性炭素、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭あるいはカーボンブラック類が例示できる。ここで、有機高分子化合物焼成体とは、フェノール類やフラン類などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。
【0049】
リチウムと合金化可能な元素としては、具体的にNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biが例示でき、特に、Si又はSnが好ましい。
【0050】
リチウムと合金化可能な元素を有する元素化合物としては、具体的にZnLiAl、AlSb、SiB、SiB、MgSi、MgSn、NiSi、TiSi、MoSi、 CoSi、NiSi、CaSi、CrSi、CuSi、FeSi、MnSi、NbSi、TaSi、VSi、WSi、ZnSi、SiC、Si、SiO、SiO(0<v≦2)、SnO(0<w≦2)、SnSiO、LiSiO あるいはLiSnOを例示でき、特に、SiO(0.3≦x≦1.6)が好ましい。また、リチウムと合金化反応可能な元素を有する元素化合物として、スズ合金(Cu−Sn合金、Co−Sn合金等)などの錫化合物を例示できる。
【0051】
高分子材料としては、具体的にポリアセチレン、ポリピロールを例示できる。
【0052】
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンなどの合成樹脂を1種又は複数用いた多孔質膜、或いはセラミックス製の多孔質膜が例示できる。
【0053】
電解液は、非水溶媒とこの溶媒に溶解された電解質とを含んでいる。
【0054】
非水溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類等が使用できる。環状エステル類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。電解液には、これらの溶媒を単独で用いてもよいし、又は、複数を併用してもよい。
【0055】
電解質としては、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO等のリチウム塩を例示できる。
【0056】
電解液としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの非水溶媒に、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSOなどのリチウム塩を0.5mol/lから1.7mol/l程度の濃度で溶解させた溶液を例示できる。
【0057】
リチウムイオン二次電池の製造方法としては、本発明の組成物を用いて製造された正極を配置する工程を有していればよい。以下、リチウムイオン二次電池の具体的な製造方法を例示する。正極および負極にセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。
【0058】
リチウムイオン二次電池は車両に搭載することができる。リチウムイオン二次電池は、大きな充放電容量を維持し、かつ優れたサイクル性能を有するため、これを搭載した車両は、高性能の車両となる。
【0059】
車両としては、電池による電気エネルギーを動力源の全部または一部に使用する車両であればよく、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、電動フォークリフト、電気車椅子、電動アシスト自転車、電動二輪車が挙げられる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、「部」とは質量部を意味し、「%」とは質量%を意味する。
【0062】
(実施例1)
導電助剤としてのアセチレンブラック1.6g、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン1.6g(ポリフッ化ビニリデン8質量%含有のNMP溶液(株式会社クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製のL#7208)を使用)、溶剤としてNMPを全量で約26gを、ディスパーミキサー(プライミクス株式会社)を用いて、撹拌速度1400rpm、撹拌時間10分で混合し、第1分散液を得た(a−1)工程)。なお、第1分散液におけるアセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデンの合計量は、第1分散液全体の質量に対して11質量%であった。
【0063】
第1分散液に第1正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3を35g加え、遊星式攪拌脱泡装置を用いて、撹拌速度2000rpm、撹拌時間8分で混合し、第2分散液を得た(a−2)工程)。
【0064】
第2分散液に第2正極活物質として表面をカーボンコートしたLiFePOを15g加え、遊星式攪拌脱泡装置を用いて、撹拌速度2000rpm、撹拌時間8分で混合し、第3分散液を得た(b)工程)。
【0065】
第3分散液にNMPを1g程度加え、粘度10000mPa・s程度の組成物を得た。これを実施例1の組成物とした。
【0066】
実施例1の組成物を用いて、正極を以下のとおり作製した。
正極用集電体として厚み20μmのアルミニウム箔を準備した。該アルミニウム箔の表面に実施例1の組成物をのせ、ドクターブレードを用いて該組成物が膜状になるように塗布した。組成物を塗布したアルミニウム箔を80℃で20分間乾燥することで、NMPを揮発により除去し、アルミニウム箔表面に正極活物質層を形成させた。表面に正極活物質層を形成させたアルミニウム箔を、ロ−ルプレス機を用いて圧縮し、アルミニウム箔と正極活物質層とを強固に密着接合させた。接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱し、所定の形状(25mm×30mmの矩形状)に切り取り、厚さ120μm程度の正極を得た。これを実施例1の正極とした。なお、正極集電体の塗工面単位面積あたりの正極合材の目付量は30.0mg/cmであった。
【0067】
実施例1の正極を用いて、リチウムイオン二次電池を以下のとおり作製した。
負極は以下のように作製した。
負極活物質としてSiO(0.3≦x≦1.6)及び天然黒鉛を用いた。結着剤としてポリイミド及びポリアミドイミドを用いた。導電助剤としてアセチレンブラックを用いた。SiO(0.3≦x≦1.6):天然黒鉛:ポリイミド:ポリアミドイミド:アセチレンブラックが質量比で32:50:5:5:8となるように混合し、NMPを加えて、スラリー状の負極合材調製液を得た。負極合材調製液を負極集電体としての厚み20μmのアルミニウム箔表面に塗布し、次いで、上記実施例1の正極と同様に、乾燥工程及び圧縮工程を経て、負極を得た。なお、負極集電体の塗工面単位面積あたりの負極合材の目付量は、9.6mg/cmであり、負極集電体の塗工面は26mm×31mmであった。
実施例1の正極および上記負極を用いて、ラミネート型リチウムイオン二次電池を以下のとおり作製した。
正極および負極の間に、セパレータとしてポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造の樹脂膜からなる矩形状シート(27×32mm、厚さ25μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに電解液を注入した。電解液としては、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比3:3:4で混合した溶媒にLiPF6を1モル/Lとなるよう溶解した溶液を用いた。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉された実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。なお、正極および負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネート型リチウムイオン二次電池の外側に延出している。
【0068】
(比較例1)
導電助剤としてのアセチレンブラック1.6g、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン1.6g(ポリフッ化ビニリデン8質量%含有のNMP溶液(株式会社クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製のL#7208)を使用)、溶剤としてNMPを全量で約26gを、ディスパーミキサー(プライミクス株式会社)を用いて、撹拌速度1400rpm、撹拌時間10分で混合し、第1分散液を得た。なお、第1分散液におけるアセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデンの合計量は、第1分散液全体の質量に対して11質量%であった。
第1分散液に第1正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3を35g、及び、第2正極活物質として表面をカーボンコートしたLiFePOを15g加え、遊星式攪拌脱泡装置を用いて、撹拌速度2000rpm、撹拌時間8分で混合し、第2’分散液を得た。
第2’分散液にNMPを1g程度加え、粘度10000mPa・s程度の組成物を得た。これを比較例1の組成物とした。
【0069】
比較例1の組成物を用いて、実施例1と同様の方法で、比較例1の正極及びリチウムイオン二次電池を作製した。
【0070】
(比較例2)
導電助剤としてのアセチレンブラック1.6g、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン1.6g(ポリフッ化ビニリデン8質量%含有のNMP溶液(株式会社クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製のL#7208)を使用)、溶剤としてNMPを全量で約26gを、ディスパーミキサー(プライミクス株式会社)を用いて、撹拌速度1400rpm、撹拌時間30分で混合し、第1分散液を得た。なお、第1分散液におけるアセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデンの合計量は、第1分散液全体の質量に対して11質量%であった。
第1分散液に第2正極活物質として表面をカーボンコートしたLiFePOを15g加え、遊星式攪拌脱泡装置を用いて、撹拌速度2000rpm、撹拌時間8分で混合し、第2’ ’分散液を得た。
第2’ ’分散液に第1正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3を35g加え、遊星式攪拌脱泡装置を用いて、撹拌速度2000rpm、撹拌時間8分で混合し、第3’ ’分散液を得た。
第3’ ’分散液にNMPを1g程度加え、粘度10000mPa・s程度の組成物を得た。これを比較例2の組成物とした。
【0071】
比較例2の組成物を用いて、実施例1と同様の方法で、比較例2の正極及びリチウムイオン二次電池を作製した。
【0072】
<評価例1>
実施例1、比較例1、比較例2のそれぞれの正極を、径16mmの円柱状に切り抜いた。円柱状の正極の上面と下面間に荷重をかけながら、上面と下面間の抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例1の正極の抵抗が、他の正極の抵抗と比較して、著しく低いのがわかる。本発明の組成物を用いて製造した正極には、正極活物質層に低抵抗な導電通路が形成されていると推察できる。
【0075】
<評価例2>
実施例1、比較例1、比較例2のそれぞれのリチウムイオン二次電池につき、電位差3.3Vまで充電し(二次電池の容量に対して20%相当)、この状態からレート3Cで10秒間放電させたときの電池の抵抗を測定した。結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例1のリチウムイオン二次電池の抵抗は、他のリチウムイオン二次電池の抵抗と比較して低かった。本発明の組成物を用いて製造したリチウムイオン二次電池は、その稼働状態においても低い抵抗を示すことが裏付けられた。本発明の組成物を用いて製造したリチウムイオン二次電池には、正極集電体、第1正極活物質及び電解液を連結する低抵抗な導電通路が形成されていると推察できる。