特許第6187852号(P6187852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187852
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】発電システムのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20170821BHJP
   F01K 27/02 20060101ALI20170821BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   F01K25/10 M
   F01K27/02 Z
   F01D25/00 X
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-288964(P2012-288964)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129800(P2014-129800A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平尾 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】舘石 太一
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−175108(JP,A)
【文献】 特開昭54−001741(JP,A)
【文献】 特開2009−210185(JP,A)
【文献】 特開2008−144456(JP,A)
【文献】 特開2005−002950(JP,A)
【文献】 特開2005−240776(JP,A)
【文献】 特開2011−017464(JP,A)
【文献】 特開2012−197629(JP,A)
【文献】 特開昭58−144613(JP,A)
【文献】 特開2003−302128(JP,A)
【文献】 特開昭55−072615(JP,A)
【文献】 特開昭64−053006(JP,A)
【文献】 特開昭59−005814(JP,A)
【文献】 特開平01−285607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F01K 25/10−25/14
F01K 27/02
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水よりも沸点の低い媒体を循環させる媒体循環回路と、
前記媒体を前記媒体循環回路内で循環させる循環ポンプと、
前記媒体を外部の熱源により加熱して蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器で蒸発された前記媒体によって駆動されるメンテナンス対象機器としての膨張器と、
前記膨張器から排出された前記媒体を凝縮する凝縮器と、
前記膨張器により駆動されて発電する発電機と、を備え、
前記媒体循環回路は、前記蒸発器の下流側と前記凝縮器の上流側との間で複数の分岐管に分岐し、
前記膨張器は、各前記分岐管にそれぞれ設けられており、
各前記分岐管における前記膨張器の前記媒体の流れ方向上流側に設けられ、前記媒体の流通を遮断可能な第一の開閉弁と、
各前記分岐管における前記膨張器の前記媒体の流れ方向下流側に設けられ、前記媒体の流通を遮断可能な第二の開閉弁と、
各前記分岐管における前記第一の開閉弁と前記第二の開閉弁との間の部分に連通可能なポートと、
前記ポートに設けられた第三の開閉弁と、
前記膨張器のそれぞれと接続されて、各前記膨張器の稼働状況に応じてメンテナンスする膨張器を決定する制御部と、を備える発電システムのメンテナンス方法であって、
前記メンテナンス対象機器の上流側の前記第一の開閉弁、および下流側の前記第二の開閉弁を閉じる工程と、
前記媒体を回収する媒体回収機器を前記ポートに接続した後、前記第三の開閉弁を開いて前記第一の開閉弁と前記第二の開閉弁の間の前記媒体を回収する工程と、
前記メンテナンス対象機器のメンテナンスの完了後、前記第一の開閉弁と前記第二の開閉弁との間を真空引きした後に前記第三の開閉弁を閉じる工程と、
前記媒体を供給する媒体供給機器を前記ポートに接続し、前記第三の開閉弁を開いて前記媒体供給機器から前記第一の開閉弁と前記第二の開閉弁との間に媒体を充填する工程と、
を備えることを特徴とする発電システムのメンテナンス方法。
【請求項2】
前記メンテナンス対象機器の稼働時間の積算値をカウントする稼働時間カウント部と、
前記稼働時間カウント部における前記積算値が予め定めた規定値に到達したら所定の信号を出力する稼働時間モニタ部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の発電システムのメンテナンス方法
【請求項3】
前記制御部は、前記熱源からの入力または前記発電機からの出力に応じて、前記メンテナンス対象機器の稼働台数を増減させるとともに、前記メンテナンス対象機器の稼働台数を減少させるときには、前記稼働時間カウント部における稼働時間の積算値が最も多い前記メンテナンス対象機器の稼働を優先して停止させることを特徴とする請求項2に記載の発電システムのメンテナンス方法
【請求項4】
水よりも沸点の低い媒体を循環させる媒体循環回路と、
前記媒体を前記媒体循環回路内で循環させる循環ポンプと、
前記媒体を外部の熱源により加熱して蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器で蒸発された前記媒体によって駆動される膨張器と、
前記膨張器から排出された前記媒体を凝縮する凝縮器と、
前記膨張器により駆動されて発電する発電機と、を備え、
前記媒体循環回路において、前記循環ポンプ、前記蒸発器、前記膨張器、前記凝縮器の少なくとも一つを含むメンテナンス対象機器における前記媒体の流れ方向上流側に設けられ、前記媒体の流通を遮断可能な第一の開閉弁と、
前記媒体循環回路において前記メンテナンス対象機器における前記媒体の流れ方向下流側に設けられ、前記媒体の流通を遮断可能な第二の開閉弁と、
前記第一の開閉弁と前記第二の開閉弁との間で前記媒体循環回路に連通可能なポートと、
前記ポートに設けられた第三の開閉弁と、
を備える発電システムのメンテナンス方法であって、
前記メンテナンス対象機器と対応する前記循環ポンプを停止させ、前記メンテナンス対象機器の上流側の前記第一の開閉弁、および下流側の前記第二の開閉弁を閉じる工程と、
前記媒体を回収する媒体回収機器を前記ポートに接続した後、前記第三の開閉弁を開いて前記第一の開閉弁と前記第二の開閉弁の間の前記媒体を回収する工程と、
前記メンテナンス対象機器のメンテナンスの完了後、前記第一の開閉弁と前記第二の開閉弁との間を真空引きした後に前記第三の開閉弁を閉じる工程と、
前記媒体を供給する媒体供給機器を前記ポートに接続し、前記第三の開閉弁を開いて前記媒体供給機器から前記第一の開閉弁と前記第二の開閉弁との間に媒体を充填する工程と、
を備えることを特徴とする発電システムのメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶,工場,ガスタービン等からの排熱、地熱、太陽熱、海洋温度差等を熱源として発電を行う発電システムのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギの有効利用、環境保全等の観点から、船舶,工場,ガスタービン等からの排熱、地熱、太陽熱、海洋温度差等を熱源として発電を行うシステムとして、ランキンサイクル式の発電システムが検討されている(例えば、特許文献1〜3参照)。この際、上記のような熱源を利用する場合には、媒体として、例えば、水よりも沸点の低い媒体、例えばフロン系媒体などの有機流体が用いられる。
このような発電システムにおいては、図4に示すように、予熱器1、蒸発器2、タービン3、凝縮器4を有したサイクル回路5内を、循環ポンプ6によって媒体を循環させる。そして、上記したような熱源から熱を回収した熱媒を、蒸発器2に送り込み、媒体と熱交換させ、媒体を蒸発させてガス化する。また、蒸発器2を経た熱媒は、蒸発器2の前段に設けられた予熱器1において、媒体を予熱する。
ガス化された媒体は、タービン3において膨張することによって主軸3aを回転駆動し、発電機7を駆動する。タービン3で膨張した媒体は、凝縮器4で凝縮され、循環ポンプ6に循環される。
発電機7が駆動されることによって出力される交流電流(AC)は、整流器9で直流電流(DC)に変換され、さらに、系統連系インバータ10で交流電流に再変換され、発電電力として外部に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−299996号公報
【特許文献2】特開2006−313048号公報
【特許文献3】特開2006−313049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したような発電システムにおいては、例えばタービン3の主軸3aの軸受等の消耗部品の点検や交換等、メンテナンスを行う必要がある。
このとき、環境保全や、媒体コスト等の面から、メンテナンスに先立って、サイクル回路5内の媒体を回収する必要がある。
しかし、上記発電システムのサイクル回路5内の媒体は量が多く、媒体の回収や、メンテナンス終了後に媒体をサイクル回路5内に再充填する際の真空引き等に時間がかかる。
その結果、メンテナンス期間が長期化し、その間、発電システム全体を用いることができないことから稼働率が低下し、経済的損失も大きい。
そこでなされた本発明の目的は、メンテナンス期間を短縮化し、発電システムの稼働率を高めることのできる発電システムのメンテナンス方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の発電システムのメンテナンス方法は、水よりも沸点の低い媒体を循環させる媒体循環回路と、前記媒体を前記媒体循環回路内で循環させる循環ポンプと、前記媒体を外部の熱源により加熱して蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発された前記媒体によって駆動されるメンテナンス機器としての膨張器と、前記膨張器から排出された前記媒体を凝縮する凝縮器と、前記膨張器により駆動されて発電する発電機と、を備え、前記媒体循環回路は、前記蒸発器の下流側と前記凝縮器の上流側との間で複数の分岐管に分岐し、前記膨張器は、各前記分岐管にそれぞれ設けられており、各前記分岐管における前記膨張器の前記媒体の流れ方向上流側に設けられ、前記媒体の流通を遮断可能な第一の開閉弁と、各前記分岐管における前記膨張器の前記媒体の流れ方向下流側に設けられ、前記媒体の流通を遮断可能な第二の開閉弁と、各前記分岐管における前記第一の開閉弁と前記第二の開閉弁との間の部分に連通可能なポートと、前記ポートに設けられた第三の開閉弁と、前記膨張器のそれぞれと接続されて、各前記膨張器の稼働状況に応じてメンテナンスする膨張器を決定する制御部と、を備える発電システムのメンテナンス方法であって、前記メンテナンス対象機器の上流側の前記第一の開閉弁、および下流側の前記第二の開閉弁を閉じる工程と、前記媒体を回収する媒体回収機器を前記ポートに接続した後、前記第三の開閉弁を開いて前記第一の開閉弁と前記第二の開閉弁の間の前記媒体を回収する工程と、前記メンテナンス対象機器のメンテナンスの完了後、前記第一の開閉弁と前記第二の開閉弁との間を真空引きした後に前記第三の開閉弁を閉じる工程と、前記媒体を供給する媒体供給機器を前記ポートに接続し、前記第三の開閉弁を開いて前記媒体供給機器から前記第一の開閉弁と前記第二の開閉弁との間に媒体を充填する工程と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この発電システムのメンテナンス方法によれば、メンテナンス対象機器をメンテナンスするに際しては、第一の開閉弁と第二の開閉弁を閉じた後、媒体を回収する媒体回収機器をポートに接続し、第三の開閉弁を開いて第一の開閉弁と前記第二の開閉弁の間の媒体を回収する。そして、メンテナンス対象機器のメンテナンスの完了後、真空ポンプをポートに接続して第一の開閉弁と第二の開閉弁との間を真空引きし、第三の開閉弁を閉じる。次いで、媒体を供給する媒体供給機器をポートに接続して第三の開閉弁を開き、媒体供給機器から第一の開閉弁と第二の開閉弁との間に媒体を充填した後、第三の開閉弁を閉じる。そして、第一の開閉弁と第二の開閉弁を開き、循環ポンプを起動させることによって、発電システムを再起動させる。
このようにして、メンテナンス対象機器をメンテナンスするに際して、媒体循環回路全体の媒体を抜く必要がなく、第一の開閉弁と第二の開閉弁との間の媒体のみを抜けばよい。また、メンテナンス後に媒体を充填する際に行う真空引きも、第一の開閉弁と第二の開閉弁との間のみ行えばよい。
ここで、メンテナンス対象機器は、循環ポンプ、蒸発器、膨張器、凝縮器の少なくとも一つを含んでいればよく、もちろんこれらの中の二つ以上を含んでいてもよい。また、二つ以上のメンテナンス対象機器に対し、第一の開閉弁、第二の開閉弁、ポート、第三の開閉弁を備えるようにしてもよい。
また、一つの媒体循環回路に複数組のメンテナンス対象機器を並列して備える構成においても、それぞれのメンテナンス対象機器に対して、上記と同様にしてメンテナンスを行うことができる。
【0011】
さらに、本発明の発電システムのメンテナンス方法は、前記メンテナンス対象機器の稼働時間の積算値をカウントする稼働時間カウント部と、前記稼働時間カウント部における前記積算値が予め定めた規定値に到達したら所定の信号を出力する稼働時間モニタ部と、をさらに備えるようにしてもよい。
【0012】
これによって、メンテナンス対象機器の稼働時間の積算値が規定値に到達したら、稼働時間モニタ部において、所定の信号が、例えばインジケータランプの点灯やアラーム音の発生等によって出力され、適切なタイミングでメンテナンスを行うことができる。
【0013】
また、本発明の発電システムのメンテナンス方法は、前記制御部は、前記熱源からの入力または前記発電機からの出力に応じて、前記メンテナンス対象機器の稼働台数を増減させるとともに、前記メンテナンス対象機器の稼働台数を減少させるときには、前記稼働時間カウント部における稼働時間の積算値が最も多い前記メンテナンス対象機器の稼働を優先して停止させるようにしてもよい。
メンテナンス対象機器が、上記したように、媒体循環回路ごと複数並列して設けられている場合や、一つの媒体循環回路に複数のメンテナンス対象機器が並列して設けられている場合、稼働時間の長いメンテナンス対象機器の稼働を優先して停止させることによって、メンテナンス対象機器の稼働時間を平均化することができる。それにより、メンテナンス対象機器のメンテナンス時期を近付けることができ、メンテナンスを効率良く行える。
【0015】
この方法によれば、メンテナンス対象機器をメンテナンスするに際して、媒体循環回路全体の媒体を抜く必要がなく、第一の開閉弁と第二の開閉弁との間の媒体のみを抜けばよい。また、メンテナンス後に媒体を充填するときにも第一の開閉弁と第二の開閉弁との間のみを真空引きすればよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、メンテナンス対象機器をメンテナンスするに際して、媒体循環回路全体の媒体を抜いたり真空引きしたり必要がないので、メンテナンス期間を短縮化し、発電システムの稼働率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る発電システムの構成を示す図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る発電システムの構成を示す図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る発電システムの構成を示す図である。
図4】従来の発電システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明による発電システム、発電システムのメンテナンス方法を実施するための形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0019】
(第1の実施形態)
図1に示すように、発電システム20Aは、船舶,工場,ガスタービン等からの排熱、地熱、太陽熱、海洋温度差等の熱源から熱媒が送り込まれる熱媒回路21と、この熱媒回路21の熱媒と熱交換することによって熱エネルギを得る媒体を循環させる媒体循環回路22と、を備える。
ここで、媒体循環回路22の媒体としては、例えば、HFC−134a,HFC245fa,HFO−1234yf,HFO−1234zeといったフロン系媒体等を用いることができる。
【0020】
熱媒回路21は、熱源から熱を回収することによって得た蒸気、水(湯)等の熱媒を供給する。
【0021】
媒体循環回路22には、循環ポンプ23、予熱器24、蒸発器25、タービン(膨張器)26、凝縮器27が備えられている。
【0022】
循環ポンプ23は、媒体を圧縮して送り出すことで、媒体が予熱器24、蒸発器25、タービン26、凝縮器27を順に経るよう、媒体を媒体循環回路22内で循環させる。
予熱器24および蒸発器25は、熱媒回路21の熱媒と媒体循環回路22の媒体とを熱交換するもので、蒸発器25は、加圧された媒体を熱媒(外部の熱源)との熱交換によって加熱して蒸発させ、予熱器24は、蒸発器25を経た熱媒の余熱によって媒体を予熱する。
タービン26は、媒体がタービン室内で膨張することによって、主軸26aをその軸線周りに回転駆動させる。この主軸26aには、発電機28の回転子(図示無し)が連結されており、この回転子(図示無し)が発電機28の固定子(図示無し)に対向して回転駆動される。これによって、発電機28では交流電流を出力する。
発電機28から出力された交流電流は、整流器29で直流電流に変換され、さらに、系統連系インバータ30で交流電流に再変換されて、発電電力として外部の送電網に出力される。
【0023】
このような媒体循環回路22において、メンテナンス対象となる機器、例えばタービン26の上流側と下流側には、開閉弁(第一の開閉弁)40A,開閉弁(第二の開閉弁)40Bが設けられている。
また、媒体循環回路22において、開閉弁40A,40Bの間には、ポート管41が設けられ、このポート管41の先端は、媒体循環回路22に連通可能で、媒体循環回路22内に媒体を出し入れするための機器が接続可能なサービスポート(ポート)42とされている。また、ポート管41には、開閉弁(第三の開閉弁)43が形成されている。
【0024】
上記発電システム20Aにおいては、制御部35が備えられている。この制御部35では、熱媒回路21の熱媒供給、媒体循環回路22の循環ポンプ23、開閉弁40A,40B,43の作動を制御するとともに、発電システム20Aを構成する各機器の作動状態等をモニタリングする。
また、制御部35においては、定期的なメンテナンス対象となる機器、例えばタービン26について、その稼働時間の積算値をカウントする稼働時間カウント部35と、稼働時間カウント部35でカウントされたタービン26の稼働時間の積算値をモニタリングする稼働時間モニタ部37と、を備えている。
稼働時間モニタ部37では、タービン26の稼働時間の積算値が、予め定めた規定値に到達したら、メンテナンスが必要であることを示すアラーム信号を出力する。また、制御部35においては、上記の稼働時間以外にも、タービン26に何らかの異常が検知された場合、同様に、メンテナンス(点検)を要求するアラーム信号を出力することができる。アラーム信号としては、例えば、インジケータランプの点灯やアラーム音の発生等、適宜の方式を採用すればよい。
発電システム20Aのユーザ側においては、このアラーム信号が出力されたら、以下のようにしてタービン26をメンテナンスする。
【0025】
上記したような発電システム20Aにおいて、タービン26をメンテナンスするには、まず、熱媒回路21のポンプ(図示無し)や開閉弁(図示無し)によって熱媒の供給を停止するとともに、媒体循環回路22の循環ポンプ23を停止させる。
次いで、開閉弁40A,40Bを閉じる。これにより、タービン26の上流側と下流側で、媒体循環回路22が遮断される。
【0026】
そして、ポート管41のサービスポート42に、媒体を回収するための媒体回収機器100を接続した後、開閉弁43を開く。これにより、媒体循環回路22において、開閉弁40A,40B間の媒体が回収される。
【0027】
この後、タービン26に対して、所要のメンテナンスを施す。メンテナンスとしては、例えばシール部材の交換、ブレードの破損の有無の点検や破損部分の修復、各種センサの点検及び交換等が挙げられる。なお、ここでは、タービン26のメンテナンス内容についてはなんら限定するものではない。
【0028】
タービン26のメンテナンス終了後、サービスポート42に真空ポンプを接続し、この真空ポンプ110を作動させることによって、開閉弁40A,40Bの間の媒体循環回路22内を真空引きする。真空ポンプ110において、予め定めた規定の真空度まで真空引きがなされた後、開閉弁43を閉じる。
【0029】
そして、サービスポート42に媒体供給機器120を接続し、開閉弁43を開いて媒体循環回路22内に媒体を充填する。
【0030】
媒体の充填後、開閉弁43を閉じ、しかる後、開閉弁40A,40Bを開く。
これにより、発電システム20Aが再起動可能な状態となるので、熱媒回路21のポンプ(図示無し)および媒体循環回路22の循環ポンプ23を作動させ、所定の手順で発電システム20Aを再起動させる。
【0031】
上述したような構成によれば、媒体循環回路22においてメンテナンス対象となるタービン26の上流側と下流側に開閉弁40A,40Bが設けられ、さらに、開閉弁40A,40Bの間にサービスポート42が設けられている。これにより、タービン26のメンテナンス時には、開閉弁40A,40Bを閉じ、媒体循環回路22において、開閉弁40A,40Bの間の、タービン26を含んだ一部区間のみの媒体を出し入れすればよい。したがって、媒体の抜き取り・真空引き・媒体の充填に掛かる時間を短縮することができ、メンテナンス期間を短縮化して、発電システムの稼働率を高めることができる。また、メンテナンスの際に必要な媒体量も少なくて済むので、メンテナンスコストを抑えることができる。
【0032】
また、制御部35においては、タービン26の稼働時間をカウントしており、規定の稼働時間となったら、メンテナンスを要求するアラーム信号を出力するようにした。したがって、適切なタイミングでタービン26にメンテナンスを施すことができる。
【0033】
ところで、上記実施形態においては、メンテナンス対象となる機器としてタービン26を例示したが、これに限るものではなく、発電システム20Aを構成する機器であれば、タービン26以外のものをメンテナンス対象とすることもできる。その場合、メンテナンス対象となる機器の前後に、上記実施形態と同様にして開閉弁40A,40Bおよびサービスポート42を設けるようにする。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかる発電システム、発電システムのメンテナンス方法の第2の実施形態について説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態においては、上記第1の実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
図2に示すように、本実施形態に係る発電システム20Bは、複数組の発電モジュール50A,50B,50C,…を備える。
発電モジュール50A,50B,50C,…のそれぞれは、上記第1の実施形態で示した同様の構成の、熱媒回路21、媒体循環回路22、循環ポンプ23、予熱器24、蒸発器25、タービン26、凝縮器27、発電機28、整流器29を備えている。
そして、複数組の発電モジュール50A,50B,50C,…のそれぞれの整流器29が、一つの系統連系インバータ30に接続されている。
【0035】
このような発電システム20Bにおいては、発電モジュール50A,50B,50C,…のそれぞれにおいて、循環ポンプ23は、媒体循環回路22内で、媒体が、予熱器24、蒸発器25、タービン26、凝縮器27を順に経るよう、媒体を循環させる。そして、予熱器24で予熱され、さらに蒸発器25で蒸発してガス化したガス媒体は、タービン26のタービン室内で膨張することによって、発電機28を駆動する。発電機28においては、交流電流を出力し、これが整流器29で直流電流に変換され、系統連系インバータ30へと出力する。
そして、系統連系インバータ30では、複数の発電モジュール50A,50B,50C,…の整流器29から出力された直流電流を、交流電流に再変換し、発電電力として外部の送電網に出力する。
【0036】
上記発電システム20Bにおいて、発電モジュール50A,50B,50C,…のそれぞれにおいては、上記第1の実施形態と同様、メンテナンス対象となる機器、例えばタービン26の上流側と下流側に開閉弁40A,40Bが設けられ、開閉弁40A,40Bの間には、サービスポート42および開閉弁43を有したポート管41が設けられている。
【0037】
発電システム20Bの制御部35は、複数の発電モジュール50A,50B,50C,…のそれぞれにおいて、媒体循環回路22の循環ポンプ23、開閉弁40A,40B,43の作動を制御するとともに、発電システム20Aを構成する各機器の作動状態、タービン26の稼働時間等をモニタリングする。
【0038】
このような発電システム20Bは、制御部35の制御により、熱媒回路21から送られてくる熱媒の入力熱エネルギ量や、出力側における要求電力量に応じて、複数の発電モジュール50A,50B,50C,…を選択的に稼働させることによって、稼働させるモジュール数(すなわちタービン26の稼働台数)を変化させ、発電量を段階的に変えることができるようになっている。
また、制御部35においては、複数の発電モジュール50A,50B,50C,…のうち、稼働させるモジュール数を減らすときには、制御部35の稼働時間モニタ部37において、稼働時間が最も長いタービン26を備えたモジュールから先行して稼働を停止させるようにする。
【0039】
発電モジュール50A,50B,50C,…のそれぞれにおいてタービン26をメンテナンスするには、上記第1実施形態で示したように、まず、複数の発電モジュール50A,50B,50C,…のうち、メンテナンス対象のタービン26を備えたモジュール(例えば発電モジュール50A)において熱媒回路21による熱媒の供給、および媒体循環回路22の循環ポンプ23による媒体の循環を停止させる。
次いで、開閉弁40A,40Bを閉じる。そして、ポート管41のサービスポート42に、媒体を回収するための媒体回収機器100を接続した後、開閉弁43を開く。これにより、媒体循環回路22において、開閉弁40A,40B間の媒体が回収される。
【0040】
この後、タービン26に対して、所要のメンテナンスを施す。そして、タービン26のメンテナンス終了後、サービスポート42に真空ポンプ110を接続して開閉弁40A,40Bの間の媒体循環回路22内を真空引きする。そして、規定の真空度まで真空引きがなされた後、開閉弁43を閉じる。次いで、サービスポート42に媒体供給機器120を接続し、開閉弁43を開いて媒体循環回路22内に媒体を充填する。
媒体の充填後、開閉弁43を閉じ、しかる後、開閉弁40A,40Bを開く。この状態から、メンテナンスを行っていた発電モジュール50Aを再起動させる。
【0041】
上述したような構成によれば、発電モジュール50A,50B,50C,…のそれぞれにおいて、媒体循環回路22においてメンテナンス対象となるタービン26の上流側と下流側に開閉弁40A,40Bが設けられ、さらに、開閉弁40A,40Bの間にサービスポート42が設けられている。これにより、タービン26のメンテナンス時には、開閉弁40A,40Bを閉じ、媒体循環回路22において、開閉弁40A,40Bの間の、タービン26を含んだ一部区間のみの媒体を出し入れすればよい。したがって、媒体の抜き取り・真空引き・媒体の充填に掛かる時間を短縮することができ、メンテナンス期間を短縮化して、発電システムの稼働率を高めることができる。また、メンテナンスの際に必要な媒体量も少なくて済むので、メンテナンスコストを抑えることができる。
【0042】
また、制御部35においては、タービン26の稼働時間をカウントしており、規定の稼働時間となったら、メンテナンスを要求するアラーム信号を出力するようにした。したがって、適切なタイミングでタービン26にメンテナンスを施すことができる。
ここで、制御部35の稼働時間モニタ部37の制御により、複数の発電モジュール50A,50B,50C,…のうち、稼働させるモジュール数を減らすときには、稼働時間が最も長いタービン26を備えたモジュールか優先して稼働を停止させるようにした。これにより、タービン26の稼働時間を平均化することができ、メンテナンスの間隔を延ばすことができる。また、これにより、すべてのタービン26のメンテナンスタイミングを近くすることによって、メンテナンスを集中的に効率良く行うこともできる。
【0043】
(第2の実施形態の変形例)
上記第2の実施形態においては、複数の発電モジュール50A,50B,50C,…の整流器29を、一つの系統連系インバータ30に接続する構成としたが、これに限るものではない。例えば、複数の発電モジュール50A,50B,50C,…のそれぞれにおいて、整流器29にそれぞれ系統連系インバータ30を備えるようにしてもよい。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、本発明にかかる発電システム、発電システムのメンテナンス方法の第3の実施形態について説明する。なお、以下に説明する第3の実施形態においては、上記第1、第2の実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態に係る発電システム20Cは、複数組の発電モジュール60A,60B,60C,…を備える。
【0045】
発電システム20Cにおいては、一つの熱媒回路21に対し、一組の媒体循環回路22、循環ポンプ23、予熱器24、蒸発器25、凝縮器27が設けられ、蒸発器25と凝縮器27との間で、熱媒回路21が複数の分岐管21a,21b,21c,…に分岐している。そして、分岐管21a,21b,21c,…のそれぞれに、タービン26、発電機28、整流器29が設けられることで、発電モジュール60A,60B,60C,…が形成されている。
【0046】
そして、複数組の発電モジュール60A,60B,60C,…のそれぞれの整流器29が、一つの系統連系インバータ30に並列に接続されている。
【0047】
このような構成の発電システム20Cにおいては、循環ポンプ23から送り出された媒体は、媒体循環回路22内で、予熱器24、蒸発器25を経た後、発電モジュール60A,60B,60C,…の分岐管21a,21b,21c,…に分岐する。この媒体は、発電モジュール60A,60B,60C,…のそれぞれにおいて、タービン26を駆動させて発電機28で発電した後、凝縮器27を順に経て循環ポンプ23に戻る。
そして、系統連系インバータ30では、複数の発電モジュール60A,60B,60C,…の整流器29から出力された直流電流を、交流電流に再変換し、発電電力として外部の送電網に出力する。
【0048】
このような発電システム20Cにおいても、上記第2の実施形態と同様にして、制御部35の制御により、熱媒回路21から送られてくる熱媒の熱エネルギ量や出力側における要求電力量に応じて、複数の発電モジュール60A,60B,60C,…のうち、稼働させるモジュール数を変化させることによって、発電量を段階的に変えることができるようになっている。
また、制御部35においては、複数の発電モジュール60A,60B,60C,…のうち、稼働させるモジュール数を減らすときには、稼働時間が最も長いタービン26を備えたモジュールから先行して稼働を停止させるようにする。
【0049】
上記発電システム20Cにおいて、発電モジュール60A,60B,60C,…のそれぞれは、上記第1の実施形態と同様、メンテナンス対象となる機器、例えばタービン26の上流側と下流側には、開閉弁40A,40Bが設けられている。また、媒体循環回路22において、開閉弁40A,40Bの間には、サービスポート42および開閉弁43を備えたポート管41が設けられている。
【0050】
そして、発電モジュール60A,60B,60C,…のそれぞれにおいては、タービン26をメンテナンスするには、複数の発電モジュール60A,60B,60C,…のうち、メンテナンス対象のタービン26を備えたモジュール(例えば発電モジュール50A)において、開閉弁40A,40Bを閉じる。そして、ポート管41のサービスポート42に、媒体を回収するための媒体回収機器100を接続した後、開閉弁43を開く。これにより、開閉弁40A,40B間の媒体が回収される。
【0051】
この後、タービン26に対して、所要のメンテナンスを施す。そして、タービン26のメンテナンス終了後、サービスポート42に真空ポンプ110を接続して開閉弁40A,40Bの間の媒体循環回路22内を真空引きし、規定の真空度まで真空引きがなされた後、開閉弁43を閉じる。そして、サービスポート42に媒体供給機器120を接続し、開閉弁43を開いて媒体循環回路22内に媒体を充填する。
媒体の充填後、開閉弁43を閉じ、しかる後、開閉弁40A,40Bを開く。この状態から、例えば発電モジュール50Aを再起動させる。
【0052】
上述したような構成によれば、発電モジュール60A,60B,60C,…のそれぞれにおいて、タービン26のメンテナンス時に、開閉弁40A,40Bを閉じ、媒体循環回路22において、開閉弁40A,40Bの間のタービン26を含んだ一部区間のみの媒体を出し入れすればよい。したがって、媒体の抜き取り・真空引き・媒体の充填に掛かる時間を短縮することができ、メンテナンス期間を短縮化して、発電システムの稼働率を高めることができる。また、メンテナンスの際に必要な媒体量も少なくて済むので、メンテナンスコストを抑えることができる。
【0053】
さらに、制御部35においては、複数の発電モジュール60A,60B,60C,…のうち、稼働させるモジュール数を減らすときには、稼働時間が最も長いタービン26を備えたモジュールから優先して稼働を停止させるようにした。これにより、タービン26の稼働時間を平均化することができ、メンテナンスの間隔を延ばすことができる。また、これにより、すべてのタービン26のメンテナンスタイミングを近くすることによって、メンテナンスを集中的に効率良く行うこともできる。
【0054】
(その他の実施形態)
なお、本発明の発電システム、発電システムのメンテナンス方法は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記各実施形態の発電システム20A,20B,20Cにおいては、船舶,工場,ガスタービン等からの排熱、地熱、太陽熱、海洋温度差等を熱源として発電に用いるようにしたが、その熱源の種類はなんら問うものではない。
また、上記各実施形態では、膨張器としてタービン26を例示したが、タービン26に代えてスクロール式の膨張器等を採用することもできる。
さらに、メンテナンスに際しての手順は、本発明の主旨の範囲内であれば、上記した手順を適宜変更することができる。
加えて、本発明は発電システムにフロン系媒体を使用する場合のみならず、環境保全の観点からにシステムの系外への流出を忌避すべき媒体を発電システムに使用する場合にも用いることができる。
また、上記第2、第3実施形態において複数の発電機の運転時間を記憶する装置と、その運転時間を表示する装置を備えていてもよい。この場合、運転時間は発電システムの表示盤に表示しても良いし、インターネットを介して発電システム外への表示盤に表示しても良い。この場合、発電システムの管理者、メンテナンス従事者は各発電機の運転状況を確認でき、運転管理、メンテナンスを行うことが可能である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記各実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
20A,20B,20C 発電システム
21 熱媒回路
21a,21b,21c, 分岐管
22 媒体循環回路
23 循環ポンプ
24 予熱器
25 蒸発器
26 タービン(膨張器)
26a 主軸
27 凝縮器
28 発電機
29 整流器
30 系統連系インバータ
35 制御部
36 稼働時間カウント部
37 稼働時間モニタ部
40A 開閉弁(第一の開閉弁)
40B 開閉弁(第二の開閉弁)
41 ポート管
42 サービスポート(ポート)
43 開閉弁(第三の開閉弁)
50A,50B,50C, 発電モジュール
60A,60B,60C, 発電モジュール
100 媒体回収機器
110 真空ポンプ
120 媒体供給機器
図1
図2
図3
図4