特許第6187875号(P6187875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187875
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】シールド導電路
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/18 20060101AFI20170821BHJP
   H01B 7/20 20060101ALI20170821BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20170821BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20170821BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20170821BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01B7/18 D
   H01B7/20
   H01B7/00 301
   H05K9/00 L
   H02G3/04 081
   B60R16/02 620A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-245073(P2014-245073)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-110753(P2016-110753A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 美生
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−165469(JP,A)
【文献】 特開2007−087628(JP,A)
【文献】 特開2006−310474(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/119404(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0256136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/18
H01B 7/20
B60R 16/02
H02G 3/04
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線を一括して包囲する筒状のシールド部と、
前記シールド部を構成するシールドパイプと、
前記シールドパイプの内部において仕切壁で区画され、前記電線を挿通させる複数の電線挿通路と、
前記シールドパイプの端部に接続されることで前記シールド部を構成し、前記電線のうち前記シールドパイプの端面から導出された領域を包囲する筒状の可撓性シールド部材と、
前記シールド部の内部と外部を連通させ、前記複数本の電線のうち特定の電線を前記シールド部の外部へ導出させる導出口と、
前記シールド部の内部において前記特定の電線を包囲し、前記特定の電線と他の前記電線との間における電磁ノイズの影響を抑制するシールド筒と、
前記シールド筒と前記導出口の開口縁との隙間を塞ぐ導電性の封止部材とを備えていることを特徴とするシールド導電路。
【請求項2】
前記シールド筒が、前記電線挿通路に隙間なく接続されていることを特徴とする請求項1記載のシールド導電路。
【請求項3】
前記シールド筒が、前記シールドパイプの端面から突出して前記可撓性シールド部材を貫通した形態であり、
前記可撓性シールド部材のうち前記シールド筒を貫通させる開口部が、前記導出口とされており、
前記封止部材が、前記導出口の開口縁部と前記シールド筒の外周とを結合する半田であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシールド導電路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の電線を筒状のシールド部で包囲して構成されるシールド導電路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイブリッド自動車等の車両において、例えば車両後部に設けた高圧バッテリ等の機器と、車両前部に設けたインバータやヒューズボックス等の機器とを接続する手段として、車両の床下に電線を配索する技術が開示されている。複数の電線は、シールド機能と異物干渉からの保護機能とを兼ね備える金属製のパイプに挿通される。また、パイプの端部には、編組線等からなる筒状の可撓性シールド部材を接続し、電線のうちパイプから導出した部分を可撓性シールド部材で包囲する。可撓性を有する可撓性シールド部材は、屈曲させ易いので、電線を曲げて配索して機器に接続する際に有効である。
【0003】
また、特許文献2には、複数本の電線が、例えば高電圧大電流が流れる動力電線や弱電系の電線などの種類の異なる電線であって、相互にまたは一方的に電磁ノイズの影響を受ける虞がある場合などには、その電磁ノイズの影響を防ぐため、パイプの内部を仕切り壁によって複数の挿通空間に分け、この複数の挿通空間に複数本の電線を別々に挿通させることで、電磁ノイズを遮蔽する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−171952号公報
【特許文献2】特開2011−146228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の前後にわたって複数種類の電線を配索する場合には、上記特許文献1及び2に記載された技術を組み合わせることにより、仕切り壁によって内部が複数の挿通空間に分けられた金属製のパイプに複数種の電線を分離して挿通するとともに、そのパイプの端部に可撓性シールド部材を接続する構造が考えられる。そして、複数種の電線のうちある種の電線をその接続先に向かって分岐する場合には、例えば可撓性シールド部材の途中位置からその電線を外側へ引き出すことが考えられる。
【0006】
しかしながら、このような構成の場合、パイプの内部では互いに電磁ノイズの影響を受けないように隔絶されていた複数種類の電線が、可撓性シールド部材の内部においては隔絶されていない状態となる。そのため、可撓性シールド部材の内部では、複数種類の電線の間で電磁ノイズの影響を及ぼす虞がある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シールド機能の確保を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシールド導電路は、
複数本の電線を一括して包囲する筒状のシールド部と、
前記シールド部を構成するシールドパイプと、
前記シールドパイプの内部において仕切壁で区画され、前記電線を挿通させる複数の電線挿通路と、
前記シールドパイプの端部に接続されることで前記シールド部を構成し、前記電線のうち前記シールドパイプの端面から導出された領域を包囲する筒状の可撓性シールド部材と、
前記シールド部の内部と外部を連通させ、前記複数本の電線のうち特定の電線を前記シールド部の外部へ導出させる導出口と、
前記シールド部の内部において前記特定の電線を包囲し、前記特定の電線と他の前記電線との間における電磁ノイズの影響を抑制するシールド筒と、
前記シールド筒と前記導出口の開口縁との隙間を塞ぐ導電性の封止部材とを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
シールド部の内部では、シールド部外へ導出される特定の電線をシールド筒が包囲するので、特定の電線と他の電線との間における電磁ノイズの影響が抑制される。また、シールド筒と導出口の開口縁との隙間を導電性の封止部材で塞いだので、シールド部内の電線と、シールド部外へ導出された特定の電線との間における電磁ノイズの影響も抑制される。したがって、本発明によれば、シールド機能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のシールド導電路の断面図
図2図1のA−A線断面図
図3図1のB−B線断面図
図4】実施例2のシールド導電路の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のシールド導電路は、前記シールド筒が、前記シールドパイプの端面から突出して前記可撓性シールド部材を貫通した形態であり、前記可撓性シールド部材のうち前記シールド筒を貫通させる開口部が、前記導出口とされており、前記封止部材が、前記導出口の開口縁部と前記シールド筒の外周とを結合する半田であってもよい。
この構成によれば、導出口の開口縁に沿った隙間を確実に封止できるとともに、導出口の開口縁とシールド筒との外周との間に隙間が発生することも防止できる。
【0012】
本発明のシールド導電路は、前記シールド筒が、前記電線挿通路に隙間なく接続されていてもよい。
この構成によれば、電線挿通路とシールド筒との間に隙間が生じないので、特定の電線を確実にシールドすることができる。
【0013】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した一実施例について、図1図3を参照しつつ詳細に説明する。本実施例1のシールド導電路Waは、筒状をなすシールド部10に複数本(本実施例では3本)の電線20が包囲されてシールドされたものである。シールド導電路Waは、ハイブリッド車等の車両において、車体(図示省略)の後部に搭載された高圧バッテリや低圧バッテリ等の機器類(図示省略)と、車体の前部に搭載されたインバータやヒューズボックス等の機器類(図示省略)とをそれぞれ接続するべく、車体の床下に配索されるものである。
【0014】
3本の電線20のうち2本の電線20は、車両の後部に備えられた高圧バッテリ等の機器と車両の前部に備えられたインバータ等の機器とを接続する第1電線20F(請求項に記載の他の電線)である。残り1本の電線20は、車両の後部に備えられた低圧バッテリ等の機器と車両の前部に備えられたヒューズボックス等の機器とを接続する第2電線20S(請求項に記載の特定の電線)である。尚、各機器のうち少なくとも第1電線20Fに接続された機器は、導電性のシールドケース内に収容されている。
【0015】
第1電線20Fおよび第2電線20Sは、ともに導体21の外周を絶縁被覆22で包囲してなる円形断面のノンシールド電線である(図2参照)。第1電線20Fは、高圧回路を構成する高圧電線であり、高電圧・大電流に対応可能とされている。第1電線20Fの両端部には、図示しない端子金具が接続され、それぞれ各機器に電気的に接続される。第2電線20Sは、低圧回路を構成する低圧電線であり、その両端部には端子金具(図示省略)が接続され、それぞれ各機器に電気的に接続される。
【0016】
シールド部10は、3本の電線20F,20Sを一括して包囲するシールドパイプ11と、シールドパイプ11の両端部に接続されて3本の電線20F,20Sのうちシールドパイプ11から導出された部分を一括して包囲可能な筒状の可撓性シールド部材12と、を有している。
【0017】
シールドパイプ11は金属製(鉄、アルミニウム、銅、ステンレス等)であって、その断面の外形形状は略真円形とされている(図2参照)。シールドパイプ11は、電線20の配索経路に沿って3次元方向に屈曲され、本実施例1では、車両の床下において概ね車両の前後方向に沿って配索され、その前後両端部は上向きに屈曲されて車両の内部に導入されている。なお、シールドパイプ11は、複数の図示しない樹脂製の取り付け具によって車両ボディ側に固定される。
【0018】
可撓性シールド部材12は、導電性の金属細線(例えば、銅)をメッシュ状に編み込んで筒状に形成してなる編組部材である。可撓性シールド部材12の一端側は、シールドパイプ11の外周面に金属バンド13によってカシメ付けられて導通可能に固着され、また他端側は機器類に接続されるコネクタに金属バンド等によって導通可能に固着されている。なお、可撓性シールド部材12としては、編組部材の代わりに金属箔等を巻くものとしてもよい。
【0019】
シールドパイプ11の内部には、図2に示すように、その内部空間を複数(本実施例では3つ)の電線挿通路14に分ける仕切壁15が設けられている。3つの電線挿通路14のうち2つの電線挿通路14は、第1電線20Fが挿通される第1挿通路14Fとなっており、第1仕切壁15Fによって区画されている。残りの1つの電線挿通路14は、第2電線20Sが挿通される第2挿通路14Sとなっている。
【0020】
第2挿通路14Sの断面形状は、その全長にわたり真円形状とされている。第2挿通路14Sは、2つの第1挿通路14Fの並び方向の略中心位置、換言すると、第1仕切壁15Fの延長線上に配置されている。仕切壁15のうち第1挿通路14Fと第2挿通路14Sとを仕切る第2仕切壁15Sは、第2挿通路14Sの形状に沿った円弧形状とされている。
【0021】
シールドパイプ11の両端部には、シールド筒17が一体に組み付けられている。シールド筒17は、金属製(鉄、アルミニウム、銅、ステンレス等)であってシールド機能を有するものとされている。シールド筒17の外周形状は真円形状とされている。シールド筒17の基端部は、第2挿通路14Sの端部に圧入され、シールド筒17の基端部と第2挿通路14Sの端部とは、電気的導通が確保された状態で接続されている。また、シールド筒17の外周面と第2挿通路14Sの内周面との間には、電磁ノイズを通過させるようなクリアランス(隙間)は存在していない。
【0022】
シールド筒17のうちシールドパイプ11の先端面から突出した部分は、シールド部10のうち可撓性シールド部材12で包囲された空間内に配されている。そして、シールド筒17の先端部が、可撓性シールド部材12を貫通してシールド部10(可撓性シールド部材12)の外部へ導出されている。可撓性シールド部材12のうちシールド筒17が貫通する部分は、シールド筒17が通過できるように編み目が拡げられた導出口24となっている。
【0023】
シールド筒17の内部は、シールドパイプ11の第2挿通路14Sと同軸状に連なる延長挿通路18となっている。上述のように、第2挿通路14Sと延長挿通路18との接続部分には、電磁ノイズを通過させるようなクリアランスは存在しない。延長挿通路18は、第2電線20Sのうちシールドパイプ11(第2挿通路14S)の外部へ導出された領域を包囲する。可撓性シールド部材12で包囲された空間内においては、高圧用の第1電線20Fと低圧用の第2電線20Sの両方が存在するのであるが、第2電線20Sは、シールド筒17で包囲されているので、高圧用の第1電線20Fから電磁ノイズの影響を受ける虞はない。
【0024】
また、可撓性シールド部材12における導出口24の開口縁と、シールド筒17の外周との間には、隙間25が存在する。この隙間25は、導出口24の開口縁に沿うように存在し、シールド部10の内部と外部とを連通させる。そのため、高圧用の第1電線20Fから発せられる電磁ノイズが、この隙間25を通り、第2電線20Sのうちシールド筒17の外部へ露出している領域に影響を及ぼすことが懸念される。そこで、本実施例1では、この隙間25を、導電性を有する封止部材26によって塞いでいる。この封止部材26は、半田27からなり、導出口24の開口縁とシールド筒17の外周とを電気的に接続すると同時に機械的に結合している。
【0025】
上述のように、本実施例1のシールド導電路Waは、複数本の電線20F,20Sを一括して包囲する筒状のシールド部10と、シールド部10を構成するシールドパイプ11と、シールドパイプ11の内部において仕切壁15で区画され、電線20F,20Sを挿通させる複数の電線挿通路14F,14Sと、シールドパイプ11の端部に接続されることでシールド部10を構成し、電線20F,20Sのうちシールドパイプ11の端面から導出された領域を包囲する筒状の可撓性シールド部材12とを有する。
【0026】
そして、可撓性シールド部材12には、シールド部10(可撓性シールド部材12)の内部と外部を連通させ、複数本の電線20F,20Sのうち第2電線20Sをシールド部10の外部へ導出させる導出口24が形成されている。また、シールド導電路Waは、シールド部10の内部において第2電線20Sを包囲し、第2電線20Sと第1電線20Fとの間における電磁ノイズの影響を抑制するシールド筒17と、シールド筒17と導出口24の開口縁との隙間25を塞ぐ導電性の封止部材26とを備えている。
【0027】
シールド部10の内部では、シールド部10外へ導出される第2電線20Sをシールド筒17が包囲するので、第2電線20Sと第1電線20Fとの間における電磁ノイズの影響が抑制される。また、シールド筒17と導出口24の開口縁との隙間25を導電性の封止部材26で塞いだので、シールド部10内の第1電線20Fと、シールド部10外の第1電線20Sとの間における電磁ノイズの影響も抑制される。したがって、本実施例1のシールド導電路Waは、シールド機能の信頼性に優れている。
【0028】
また、本実施例1のシールド導電路Waは、シールド筒17が、シールドパイプ11の端面から突出して可撓性シールド部材12を貫通した形態であり、可撓性シールド部材12のうちシールド筒17を貫通させる開口部が、第2電線20Sをシールド部10外へ導出させる経路としての導出口24とされている。そして、封止部材26は、導出口24の開口縁部とシールド筒17の外周とを結合する半田27である。この構成によれば、導出口24の開口縁に沿った隙間25を確実に封止できる。さらに、導出口24の開口縁とシールド筒17との外周との間に隙間25が発生することも防止できる。
【0029】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2に係るシールド導電路Wbを図4によって説明する。本実施例2のシールド導電路Wbは、シールド筒33と導出口31に関して実施例1と相違する。本実施例2では、実施例1と同様の構成について同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0030】
本実施例2に係るシールド導電路Wbは、実施例1と同様に、2本の第1電線20F(請求項に記載の他の電線)と1本の第2電線20S(特定の電線)とを一括して包囲するシールドパイプ11と、シールドパイプ11の端部に接続された筒状をなす可撓性シールド部材12とを有している。シールドパイプ11の内部には、その内部空間を3つの電線挿通路14(第1挿通路14Fと第2挿通路14S)に分ける仕切壁15(第1仕切壁15Fと第2仕切壁15S)が設けられている。第1挿通路14Fには第1電線20Fが挿通され、第2挿通路14Sには第2電線20Sが挿通されている。シールドパイプ11の外部のうち可撓性シールド部材12で包囲された空間は、シールドパイプ11の先端面に臨むパイプ外シールド空間30となっている。
【0031】
第1挿通路14Fは、シールドパイプ11の両端面(先端面)に開放され、パイプ外シールド空間30に連通している。第1挿通路14Fには、第1電線20Fが貫通した形態で挿通されている。第2挿通路14Sも、第1挿通路14Fと同様、シールドパイプ11の両端面に開放され、パイプ外シールド空間30に連通している。したがって、第1挿通路14Fと第2挿通路14Sは、パイプ外シールド空間30を介して連通している。
【0032】
シールドパイプ11を構成する周壁16のうち第2挿通路14Sを構成する第2周壁部16Sには、第2挿通路14Sの内部とシールドパイプ11(シールド部10)の外部とを連通させる導出口31が形成されている。導出口31は、シールドパイプ11の外周面のうち軸線方向における両端に近い位置に開口しているが、可撓性シールド部材12で覆われてはいない。第2挿通路14S内に挿通された第2電線20Sは、導出口31を通してシールド部10(シールドパイプ11)の外部へ導出されている。
【0033】
本実施例2のシールド筒33は、可撓性シールド部材12と同様、編組線や金属箔などから構成されている。シールド筒33の基端部は、その全周に亘り、第2挿通路14Sの内周に溶接等によって固着されている。したがって、シールド筒33の基端部の外周と第2挿通路14Sの内周との間には、電磁ノイズの授受の影響を受けるようなクリアランスは存在していない。また、シールド筒33の先端部は、導出口31からシールドパイプ11の外部へ導出されている。
【0034】
第2挿通路14Sの端部は、パイプ外シールド空間30を介して第1挿通路14Fと連通しているため、第2電線20Sが第1電線20Fからの電磁ノイズの影響を受けることが懸念される。その対策として、第2電線20Sのうち導出口31の近い領域は、第2挿通路14Sの内部においてシールド筒33で包囲され、シールド筒33で包囲されたままの状態で導出口31を貫通してシールドパイプ11(シールド部10)の外部へ導出されている。そして、シールド筒33の基端部は、導出口31を挟んでパイプ外シールド空間30と反対側の位置において第2挿通路14Sの内周に固着されている。したがって、第2挿通路14Sの内部においては、第2電線20Sが第1電線20Fからの電磁ノイズの影響を受ける虞はない。
【0035】
シールドパイプ11における導出口31の開口縁と、シールド筒33の先端部外周との間には、隙間32が存在する。この隙間32は、導出口31の開口縁に沿うように存在し、シールド部10の内部と外部とを連通させる。そのため、高圧用の第1電線20Fから発せられる電磁ノイズが、パイプ外シールド空間30と第2挿通路14Sのうち導出口31よりも先端側の領域と、隙間32とを通り、第2電線20Sのうちシールド部10の外部に導出された領域に影響を及ぼすことが懸念される。そこで、本実施例2では、この隙間32を、導電性を有する封止部材34によって塞いでいる。この封止部材34は、半田35からなり、導出口31の開口縁とシールド筒33の先端部外周とを電気的に接続すると同時に機械的に結合している。
【0036】
本実施例2のシールド導電路Wbは、シールド部10の内部では、シールド部10外へ導出される第2電線20Sをシールド筒33が包囲するので、第2電線20Sと第1電線20Fとの間における電磁ノイズの影響が抑制される。また、シールド筒33と導出口31の開口縁との隙間32を導電性の封止部材34で塞いだので、シールド部10内の第1電線20Fと、シールド部10外の第1電線20Sとの間における電磁ノイズの影響も抑制される。したがって、本実施例2のシールド導電路Wbは、シールド機能の信頼性に優れている。また、封止部材34は、導出口31の開口縁部とシールド筒33の外周とを結合する半田35となっている。この構成によれば、導出口31の開口縁に沿った隙間32を確実に封止できる。さらに、導出口31の開口縁とシールド筒33との外周との間に隙間32が発生することも防止できる。
【0037】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1,2では、封止部材を半田としたが、封止部材は、導電性及び粘着性を有するテープ状又は箔状のものや、金属細線をメッシュ状に編み込んだ編組線等であってもよい。
(2)上記実施例1,2では、複数本の電線が高圧電線および低圧電線からなる場合について説明したが、複数本の電線は電源線および信号線との組み合わせであってもよい。
(3)上記実施例1,2では、複数本の電線を、近接して配線すると互いに電磁ノイズの影響が懸念される電線同士の組み合わせとしたが、複数本の電線は、信号線同士のように、シールド部内において互いに電磁ノイズの影響を及ぼし合わないような組み合わせであってもよい。この場合、シールド部の内部には仕切部を設けなくてもよい。
(4)上記実施例1,2では、シールドパイプを金属材料だけで構成したが、これに限らず、シールドパイプは、シールド機能を有するものであればどのような材質、構成のものであってもよく、例えば、樹脂製のパイプ内に金属箔を同心で埋め込んだ構造のものであってもよい。
(5)上記実施例1,2では、可撓性シールド部材は、導電性の金属細線(例えば、銅)をメッシュ状に編み込んで筒状に形成してなる編組部材とされているが、これに限らず、例えば可撓性シールド部材は、金属箔を全周かつ全長に亘ってインサートしたコルゲートチューブであってもよい。
(6)上記実施例1,2では、シールドパイプの内部は3つの電線挿通路に分けられているが、これに限らず、シールドパイプ内に設ける電線挿通路の数は、分離して配線することが望ましい電線の種類に応じて適宜変更することができる。
(7)上記実施例1,2では、2種の電線のうち1種の電線がシールド部から外部に導出されるものとしているが、これに限らず、例えば3種以上の電線をシールド部によって包囲するものとし、そのうち2種以上の電線が、それぞれに対応して設けられた導出口からシールド部の外部に引き出されるものとしてもよい。
(8)上記実施例1,2では、シールドパイプの断面の外形形状は略真円形とされているが、これに限らず、例えば楕円形状であってもよい。
(9)上記実施例1,2では、電線の本数を3本としたが、電線の本数は、2本でもよく、4本以上でもよい。
(10)上記実施例1,2では、電線の接続対象が、車両の後部に備えた高圧バッテリ等の機器、車両の前部に備えたインバータ等の機器、車両の後部に備えた低圧バッテリ等の機器、車両の前部に備えたヒューズボックス等の機器であるが、電線の接続対象は、車両の前部に搭載された低圧バッテリ、車両の後部に搭載されたDC/DCコンバータ等であってもよい。
(11)上記実施例2では、導出口が、シールドパイプの周壁を貫通して、全周に亘って閉じた孔状であるが、シールドパイプの端部に切欠かれたスリット部を導出口としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
Wa…シールド導電路
10…シールド部
11…シールドパイプ
12…可撓性シールド部材
14…電線挿通路
15…仕切壁
17…シールド筒
20…電線
20F…第1電線(他の電線)
20S…第2電線(特定の電線)
24…導出口
25…隙間
26…封止部材
27…半田
Wb…シールド導電路
31…導出口
32…隙間
33…シールド筒
34…封止部材
35…半田
図1
図2
図3
図4