特許第6187892号(P6187892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6187892-保湿剤およびその製造方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187892
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】保湿剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20170821BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170821BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20170821BHJP
   C07H 15/04 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
   A61K8/60
   A61Q19/00
   A23L29/30
   !C07H15/04 D
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-108592(P2010-108592)
(22)【出願日】2010年5月10日
(65)【公開番号】特開2011-236152(P2011-236152A)
(43)【公開日】2011年11月24日
【審査請求日】2013年2月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000165000
【氏名又は名称】群栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】八木 優紀
(72)【発明者】
【氏名】矢田 元一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 明浩
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−262023(JP,A)
【文献】 特開2004−331583(JP,A)
【文献】 特開2004−099472(JP,A)
【文献】 特開平11−222496(JP,A)
【文献】 特開平05−000984(JP,A)
【文献】 Biotechnology and Bioengineering,2009年,103(5),p.865-872
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00
A23L 29/00
A61Q 19/00
C07H 15/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表される化合物とを45〜75:15〜25の質量比で含み、当該糖組成物中に含まれる全糖の合計量に対する前記式(1)で表される化合物の割合が58.4〜65.3質量%で、前記式(2)で表される化合物の割合が21.6〜24.5質量%である糖組成物からなる保湿剤。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の保湿剤を製造する方法であって、
グルコース源とグリセリンとを酸性触媒を用いて反応させる工程と、
前記グルコース源と前記グリセリンとを反応させて得られた反応生成物から、蒸留により前記グリセリンを除去する工程とを有し、
前記グルコース源のグルコース換算の仕込み量と前記グリセリンの仕込み量とのモル比が1:4〜1:16であり、
前記蒸留を、pH(25℃)6.5〜8.5の範囲内にて行うことを特徴とする保湿剤の製造方法。
【請求項3】
前記グルコース源と前記グリセリンとの反応を真空下で行う、請求項2に記載の保湿剤の製造方法。
【請求項4】
前記蒸留時のpHの制御に、ハイドロタルサイト類を用いる、請求項2または3に記載の保湿剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、D−ジヒドロキシプロピルグルコピラノシドを主成分として含有する糖組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α−D−ジヒドロキシプロピルグルコピラノシド(以下、α−D−DHPGと略記する。)は、清酒に0.5質量%程度含まれており、すっきりとした甘さを与えていることが知られている。また、近年では、α−D−DHPGが非う蝕性、難消化性、保湿性等の機能を有することが報告されており、その機能性材料としての有用性が注目されている。また、これらの機能に着目して、α−D−DHPGを各種飲食品や調味料、化粧品等に配合することが行われている。
従来、α−D−DHPGの工業的な製造方法としては、酵素法が用いられている。たとえば特許文献1〜3には、糖類とグリセリンとを溶解した溶液中の糖類にα−グルコシダーゼを作用させることによりグリセリンにα−D−グルコピラノシル基を導入し、α−D−DHPGとする方法が開示されている。また、これらの文献には、反応液中のα−D−DHPGをクロマトグラフィーにより分離して高純度のα−D−DHPGを回収する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−222496号公報
【特許文献2】特開2004−229668号公報
【特許文献3】特開2006−008703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
α−D−DHPGは上述したように優れた保湿性を有するが、より優れた保湿性を発揮する材料が求められる。
さらに、α−D−DHPGは、従来の製造方法が、製造に手間や時間がかかるなど大量生産に適さず、コストが高くなる問題がある。たとえば特許文献1〜3記載の製造方法では、α−D−グルコピラノシル基の導入反応を行うだけでも24時間程度かかってしまう。さらに、純度を上げるためにクロマトグラフィーによる分離を行うと、工程が複雑となり、コスト高となってしまう。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、α−D−DHPG単独の場合よりも保湿性が向上し、大量生産も容易な糖組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、α−D−DHPGと、その異性体であるβ−D−ジヒドロキシプロピルグルコピラノシド(以下、β−D−DHPGと略記する。)とを所定の割合で含む組成物が、α−D−DHPG単独の場合よりも、保湿性に優れることを見出した。また、このような組成物が、グルコース等のグルコース源と、該グルコース源に対して所定のモル比となるように配合したグリセリンとを酸性触媒により反応させる単純な有機合成法により製造できることを見出した。
上記課題を解決する本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、以下の態様を有する。
[1]下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表される化合物とを45〜75:15〜25の質量比で含み、当該糖組成物中に含まれる全糖の合計量に対する前記式(1)で表される化合物の割合が58.4〜65.3質量%で、前記式(2)で表される化合物の割合が21.6〜24.5質量%である糖組成物からなる保湿剤。
【0006】
【化1】
【0007】
[2][1]に記載の保湿剤を製造する方法であって、
グルコース源とグリセリンとを酸性触媒を用いて反応させる工程と、
前記グルコース源と前記グリセリンとを反応させて得られた反応生成物から、蒸留により前記グリセリンを除去する工程とを有し、
前記グルコース源のグルコース換算の仕込み量と前記グリセリンの仕込み量とのモル比が1:4〜1:16であり、
前記蒸留を、pH(25℃)6.5〜8.5の範囲内にて行うことを特徴とする保湿剤の製造方法。
[3]前記グルコース源と前記グリセリンとの反応を真空下で行う、[2]に記載の保湿剤の製造方法
]前記蒸留時のpHの制御に、ハイドロタルサイト類を用いる、[または[3]に記載の保湿剤の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、α−D−DHPG単独の場合よりも保湿性が向上し、大量生産も容易な糖組成物およびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例2で得た糖組成物のHPLCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の糖組成物は、下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表される化合物とを45〜75:15〜25の質量比で含み、当該糖組成物中に含まれる全糖の合計量に対する前記式(1)で表される化合物と前記式(2)で表される化合物との合計量の割合が60質量%以上である。
式(1)で表される化合物がα−D−DHPGであり、式(2)で表される化合物がβ−D−DHPGである。以下、α−D−DHPGという場合は式(1)で表される化合物を示し、β−D−DHPGという場合は式(2)で表される化合物を示す。
α−D−DHPGとβ−D−DHPGとを上記比率で含有することにより、α−D−DHPG単独の場合よりも保湿性が向上する。これは、α−D−DHPGとβ−D−DHPGとの間で何らかの相互作用が生じているためと推測される。
また、本発明の糖組成物は、後述するようにグルコース源とグリセリンとを酸性触媒により所定の仕込み比率で反応させる簡単な合成方法により製造できる。
【0011】
【化2】
【0012】
本発明の糖組成物中、α−D−DHPGとβ−D−DHPGとの質量比は、45〜75:15〜25であり、55〜65:18〜22がより好ましい。なお、この質量比はモル比に等しい。
また、本発明の糖組成物に含まれる全糖の合計量(100質量%)に対するα−D−DHPGとβ−D−DHPGとの合計量の割合は60質量%以上であり、75質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましい。該割合の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。つまり本発明の糖組成物に含まれる糖は、α−D−DHPGおよびβ−D−DHPGのみであってもよい。
以下、単にD−DHPGという場合は、α−D−DHPGおよびβ−D−DHPGの両方を示す。
また、本発明の糖組成物の全固形分に対するα−D−DHPGおよびβ−D−DHPGの合計量の割合、つまりD−DHPGとしての純度は、65質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
本明細書において「全固形分」とは、当該糖組成物中に含まれる、水を除く全成分の合計を意味する。
【0013】
本発明の糖組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、D−DHPG以外の他の糖を含有してもよい。該他の糖としては、グルコース以外の単糖でも、二糖以上の糖類でもよい。該糖類としては、たとえば後述するグルコース源として挙げる糖類と同様のものが挙げられる。該他の糖は、原料に由来するもの(たとえば糖組成物の製造原料として使用したグルコース等のグルコース源、該グルコース源が二糖以上の糖類である場合はその分解により生じた糖、それらの糖同士が反応して副生した糖類等)でも別途配合されたものでもよい。
該グルコース源については、詳しくは後の製造方法で説明する。
【0014】
本発明の糖組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、糖以外の他の成分(以下、非糖成分という。)を含んでいてもよい。非糖成分としては、たとえばグリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール等のアルコールが挙げられる。該非糖成分は、原料に由来するものでも別途配合されたものでもよい。
ただし、糖組成物中にグリセリンが含まれていると、飲食品、調味料、化粧品等への配合量が制限される場合がある。そのため、糖組成物中のグリセリンの割合は、糖組成物の全固形分に対し、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0015】
本発明の糖組成物の製造方法は、グルコース源とグリセリンとを酸性触媒を用いて反応させる工程(以下、グルコシル化工程という。)を有し、前記グルコース源のグルコース換算の仕込み量と前記グリセリンの仕込み量とのモル比が1:4〜1:16であることを特徴とする。該製造方法は、上記糖組成物を容易に大量生産できることから工業上有用である。
本製造方法は、さらに、前記グルコシル化工程にてグリセリンとグルコース源とを反応させて得られた反応生成物から、蒸留によりグリセリンを除去する工程(以下、蒸留工程という。)を有することが好ましい。グルコシル化工程で得られる反応生成物中には、通常、原料であるグリセリンが残留している。このグリセリンは必ずしも除去する必要はないが、飲食品、調味料、化粧品等に配合される成分はグリセリンの含有量が制限されていることが多く、グリセリンを除去することで、得られる糖組成物の有用性が向上する。また、このとき回収したグリセリンをグルコシル化工程に再利用することができる。
以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0016】
(グルコシル化工程)
グルコース源としては、グルコース単位を含み、グリセリンと反応させる際の反応条件下で分解してグルコースを生じ得る糖類およびグルコースから選ばれる少なくとも1種が用いられる。
前記糖類における「単位」は、グリコシド結合により当該糖類の分子鎖を構成している単糖単位である。
グルコース源として用いられる前記糖類は、オリゴ糖でも多糖でもよい。本明細書において、「オリゴ糖」は2以上10以下の単糖が結合したものとし、「多糖」は11以上の単糖が結合したものとする。前記オリゴ糖としては、たとえば、マルトース、スクロース、ラクトース、トレハロース等の二糖;マルトトリオース等の三糖等が挙げられる。前記多糖としては、たとえば、デンプン、プルラン等が挙げられる。これらの糖類は、グリセリンと反応させる際の反応条件下で(酸性触媒の存在下で所定の反応温度とした際に)分解してグルコースを生じ得る。糖類であっても、たとえばセルロースは、グリセリンと反応させる際の反応条件下では分解しないため、本発明における「グルコース源」には該当しない。
グルコース源として用いられる前記糖類は、当該糖類を構成する全単糖単位の合計に対するグルコース単位の割合が60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、該割合が100モル%、つまりグルコース単位のみからなることが特に好ましい。
【0017】
グルコース源は、無水結晶グルコース、含水結晶グルコース等の固体状のものを用いてもよく、水分を20〜30質量%含んだ液糖を用いてもよい。反応系内の水分量が少ないほどグルコース源とグリセリンとの反応性が向上することから、固体状のものを用いることが好ましい。
グルコース源としては、上記グルコースおよび糖類の中でも、反応性が良好である点から、グルコースが好ましく、中でも、水分が少なく、安価で、反応時の着色も比較的低いことから、無水結晶グルコースが好ましい。
使用するグルコース源は、1種でも2種以上でもよい。
【0018】
グリセリンとしては、動物由来のもの、植物由来のもの、合成品等があるが、いずれも使用できる。安全性と価格面から、植物由来のグリセリンが好ましい。
製造上は純度ができるだけ高いグリセリンが望まれるが、取り扱い上、粘度を下げる目的で水分を10〜20%程度含んでいるものを使用してもよい。
また、後述するように、反応生成物に対し、グリセリンを除去するための蒸留処理を行う場合は、該蒸留処理により分離、回収したグリセリンを、グルコース源との反応に再利用してもよい。
【0019】
本工程では、グルコース源のグルコース換算の仕込み量とグリセリンの仕込み量とのモル比を1:4〜1:16の範囲内としてグリセリンとグルコース源と反応させる。つまり、グルコース源と、該グルコース源のグルコース換算の仕込み量(モル)に対して4〜16モル倍量のグリセリンとを反応させる。該モル比は、1:6〜1:12の範囲内が好ましい。
該モル比が上記範囲外であると、目的の糖組成物を得ることが難しくなる。さらに、グリセリンの比率が低すぎると、反応生成物中のD−DHPGの純度が低くなる。純度が低くなると、保湿性等の機能が低くなるため、本工程後、蒸留等の精製処理を行う必要が生じ、また、その負荷も大きいものとなる。グリセリンの比率が高すぎると、生産性が大きく低下し経済的でない。
ここで、グルコース源のグルコース換算の仕込み量(モル)は、グルコース源がグルコースの場合は、その仕込み量(モル)であり、[グルコース源の固形分としての仕込み量(g)/グルコース源の分子量]により算出できる。
グルコース源が前記糖類の場合は、その仕込み量(モル)に、該グルコース源1分子中に含まれるグルコース単位の数を乗じた値が「グルコース源のグルコース換算の仕込み量(モル)」となる。たとえばグルコース源がマルトースの場合、グルコース源1分子中に含まれるグルコース単位の数は2であるため、マルトースの仕込み量(モル)×2がグルコース換算の仕込み量(モル)となる。
【0020】
グルコース源とグリセリンとを反応させる際に用いる酸性触媒としては、たとえば塩酸、硫酸等の無機酸であってもよく、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸であってもよく、これらを併用してもよい。
酸性触媒の使用量は、グルコース源の固形分とグリセリンとの合計(100質量%)に対し、0.05〜5.0質量%が好ましく、0.07〜0.15質量%がより好ましい。酸性触媒の使用量が0.05質量%以上であれば、反応が充分に進行し、5.0質量%以下であれば、反応生成物の着色を抑制できる。
【0021】
グルコース源とグリセリンとを反応させる際の反応温度は、90〜140℃が好ましく、110〜120℃がより好ましい。反応温度が90℃以上であれば、充分に反応させることができる。140℃以下であれば過分解を抑制できる。
反応時間は、反応温度によっても異なるが、0.5〜5時間が好ましく、1〜3時間がより好ましい。反応時間が0.5時間以上であれば、グルコース源を充分消費でき、高い収率で目的の糖組成物を得ることができる。5時間以下であれば、生産性が良好である。
【0022】
グルコシル化工程においては、前記グルコース源とグリセリンとの反応を真空下で行うことが好ましい。
グルコース源とグリセリンとが反応すると、D−DHPGとともに水が生成する。反応系内に水が存在すると、グルコース源とグリセリンとの反応性が悪くなる。そのため、反応を真空下で行うことで、反応系内の水を除去しながら反応を行うことができ、反応性が大きく向上する。
このときの「真空」の程度は、水分の除去効率を考慮すると、15kPa(N/cm)以下が好ましく、5kPa(N/cm)以下がより好ましい。水分の除去効率が高いほど、短時間で反応が進行する。該圧力の下限は特に限定されないが、実用的には1kPa(N/cm)程度であれば充分である。
【0023】
上記グルコシル化反応は、アルカリを添加し、酸性触媒を中和することで停止させることができる。
中和に用いるアルカリとしては、たとえばアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。
アルカリ金属の水酸化物としては、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物として、たとえば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、経済性から、水酸化ナトリウムが好ましい。
アルカリの使用量は、使用した酸性触媒の規定量に合わせて適宜設定すればよい。
【0024】
上記グルコシル化工程により得られた反応生成物は、そのまま本発明の糖組成物として利用できる。また、必要に応じて、不純物(残存グリセリン、残存グルコース源、副生物等)を除去するための精製処理(後述する蒸留等)、その他任意の処理を行ってもよい。
【0025】
(蒸留工程)
蒸留工程では、前記グルコシル化工程で得られた反応生成物から、蒸留によりグリセリンを除去する。
蒸留によるグリセリンの除去は、たとえば真空下で加熱することにより実施できる。このときの「真空」の程度は、グリセリンの除去効率を考慮すると、7kPa(N/cm)以下が好ましく、5kPa(N/cm)以下がより好ましい。
また、加熱は、蒸留温度の上限が200〜250℃となるように行うことが好ましい。蒸留温度の上限が200℃以上であると、グリセリンを効率的に除去でき、得られる糖組成物中に残存するグリセリンがその機能性に影響を与えないレベルまで低減可能である。蒸留温度の上限が250℃以下であると、着色を充分に抑制でき、得られる糖組成物の色相が良好となる。
【0026】
蒸留工程を行う場合、グリセリンの蒸留は、pH(25℃)5.0〜10.0の範囲内にて行うことが好ましい。該pHは、5.0〜9.0がより好ましく、6.5〜8.5がさらに好ましい。これにより、蒸留時の熱による着色が抑制され、得られる糖組成物が色相に優れたものとなる。
pHが上記範囲外であると、D−DHPGの熱安定性がα型、β型ともに低下し、蒸留時に分解して純度が低下する。また、得られる糖組成物の色相も悪くなる。つまり、D−DHPGは、α型、β型ともに、糖類特有のヘミアセタール構造を有しており、強酸性下で容易にグリセリンとグルコースに分解する。更に、強酸性下では、分解により遊離したグルコースが、熱履歴によってカラメル様の着色成分や酸性成分に分解してその色相を大きく悪化させる。更に、このグルコースはpHを低下させ、D−DHPGのさらなる分解を誘発するなど、悪循環に陥ってしまう。また、強アルカリ性下では糖組成物が着色しやすい。
一方、pHが上記範囲内であると、D−DHPGが熱的に安定なため、高温下での蒸留時の分解が充分に抑制され、着色の原因物質であるグルコースの生成が抑制される。また、糖組成物だけでなく、回収されるグリセリンの色相も良好となるため、新たな再生工程(脱色処理等)を必要とせず再利用することができる。
【0027】
グリセリン蒸留時のpHの制御は、たとえば、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、無機吸着剤から選ばれる少なくとも1種の無機化合物を添加することにより実施できる。これらの無機化合物は、蒸留時に生じる酸性成分を中和または吸着してpH低下を抑制する。
アルカリ金属の炭酸塩としては、たとえば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、たとえば炭酸マグネシム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。アルカリ金属の酸化物としては、たとえば酸化ナトリム、酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、たとえば酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム等が挙げられる。
無機吸着剤としては、ハイドロタルサイト類が好ましい。ハイドロタルサイト類は、ハイドロタルサイト(MgAl(OH)16・CO・nHO)およびこれに類似した構造の化合物であり、ハイドロタルサイト様化合物、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide(LDH))とも称され、たとえば一般式[M1−x(OH)][A]x/n・mHOで表される化合物、その焼成物等が挙げられる。
該一般式において、Mは、2価の金属イオン(Mg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等)であり、Mは3価の金属イオン(Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、In3+等)であり、Aはn価のアニオンである。該アニオンとしては、CO2−、ハロゲンイオン、NO3−、SO2−、Fe(CN)3−、CHCO2−、シュウ酸イオン、サリチル酸イオン等が挙げられる。該化合物は、複水酸化物層([M1−x(OH)])の層間にアニオン(A)を保持し、インターカレーションによって該アニオンを他のアニオンに交換するアニオン交換能を有している。また、該化合物を焼成するとHOが脱離するが、これを水中に戻すとHOを取り込んで再生し、同様のアニオン交換能を発揮する。
ハイドロタルサイト類としては、市販のものが利用でき、たとえば協和化学工業社製のキョーワード(登録商標)シリーズが挙げられる。具体的には、キョーワード500、キョーワード1000、キョーワード2000(いずれも商品名)等が挙げられる。これらの中でもキョーワード2000が、少量の添加量でpH制御が可能で、水希釈後にろ過分離が容易であることから好ましい。
上記無機化合物の中でも、ハイドロタルサイト類が好ましい。
添加する無機化合物は1種でも2種以上でもよい。
該無機化合物の添加量は、反応系内のpHおよび使用する無機化合物の種類に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、通常、グルコース源の固形分とグリセリンとの合計(100質量%)に対し、0.01〜0.20質量%の範囲内である。0.01質量%以上の添加でpH制御は充分可能で、0.20質量%以下であればコストの影響も小さい。
【0028】
前記グルコシル化工程後、または蒸留工程後、必要に応じて、得られた糖組成物に水を添加し、水溶液としてもよい。水溶液とすることは、粘度が低下し、ハンドリング性が向上するため好ましい。
この場合、該水溶液は、充分に色相の良好なものであるが、さらに色相を向上させるため、脱色処理を施してもよい。脱色処理は、糖溶液の脱色に用いられている公知の方法を利用でき、たとえば該水溶液に活性炭を加えて加熱することにより実施できる。添加した活性炭はろ過等により除去できる。
また、必要に応じて、pH調整、固形分濃度調整等を行ってもよい。
該水溶液のpHは、用途(食品や化粧品)を考慮すると、25℃において、4〜7が好ましく、5.5〜6.5がより好ましい。
該水溶液の固形分濃度は、扱いやすさ(ハンドリング)を考慮すると、60〜90質量%が好ましく、70〜80質量%がより好ましい。
【0029】
本発明の製造方法において、得られる糖組成物中のα−D−DHPGとβ−D−DHPGとの質量比(=モル比)は、たとえば下記の方法により調整できる。
(1)グルコース源のグルコース換算の仕込み量とグリセリンの仕込み量とのモル比を調節する方法。
上述したように、グルコシル化工程では、グルコース源のグルコース換算の仕込み量とグリセリンの仕込み量とのモル比の範囲内として反応を行うが、この範囲内においては、グリセリンの比率が高いほど、α−D−DHPGおよびβ−D−DHPGの合計に対するβ−D−DHPGの比率が高くなる傾向がある。そのため、このモル比を調節することで、α−D−DHPGとβ−D−DHPGとの比率を調節できる。
(2)グルコシル化工程での反応温度を調節する方法。
グルコシル化工程での反応温度が低いほど、α−D−DHPGおよびβ−D−DHPGの合計に対するβ−D−DHPGの比率が高くなる傾向がある。そのため、この反応温度を調節することで、α−D−DHPGとβ−D−DHPGとの比率を調節できる。
(3)グルコシル化工程で使用する酸性触媒量を調節する方法。
グルコシル化工程で使用する酸性触媒量が少ないほど、α−D−DHPGおよびβ−D−DHPGの合計に対するβ−D−DHPGの比率が高くなる傾向がある。そのため、この酸性触媒量を調節することで、α−D−DHPGとβ−D−DHPGとの比率を調節できる。
また、グルコシル化工程後または蒸留工程後、適宜精製処理を行うことで、糖組成物中のα−D−DHPGとβ−D−DHPGとの質量比やD−DHPGの純度を調節できる。
【0030】
以上説明したとおり、本発明の糖組成物は、α−D−DHPG単独の場合よりも保湿性が向上した高品質なものであり、たとえば化粧品などに配合する保湿剤として有用である。また、β−D−DHPGはα−D−DHPGと同様に非還元性の糖類であるため、本発明の糖組成物には食品用途では非う蝕性や難消化性の機能が期待される。
また、本発明の糖組成物は、酵素法を用いて製造されているα−D−DHPGに比べて大量生産が容易であり、製造コストも低い。そのため、α−D−DHPGに比べて安価に提供できる。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明するが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例で用いた測定方法および評価方法は以下の通りである。
[pH]
中和後の粗糖組成物、蒸留後の精製糖組成物それぞれの25℃におけるpHは以下の手順で測定した。
粗糖組成物または精製糖組成物を固形分濃度が50質量%となるように水で希釈し、この希釈液のpH(25℃)を電極式pHメーターにより測定した。
【0032】
[色相]
蒸留後の精製糖組成物の色相は以下の手順で評価した。
精製糖組成物を固形分濃度が50質量%となるように水で希釈し、この希釈液の色相(APHA(ハーゼン色数ともいう))をJIS K 3331に準拠して測定した。
【0033】
[糖組成、遊離グリセリン量]
最終的に得られた脱色精製糖組成物(固形分濃度50質量%の水溶液)の糖組成および該脱色精製糖組成物中の遊離グリセリン量(質量%)は、以下の手順で測定した。
なお、糖組成は、該脱色精製糖組成物に含まれる全糖の合計(100質量%)に対する各糖の割合(質量%)である。また、実施例1〜3および比較例1〜3で得られた脱色精製糖組成物は、それぞれ、糖および遊離グリセリン以外の成分を含んでいなかったため、(100−遊離グリセリン量)が、脱色精製糖組成物の全固形分に対する全糖の合計の割合(質量%)である。
脱色精製糖組成物を、下記測定条件の高速液体クロマトグラフィー(以下HPLC)にて分析した。
(測定条件)
・カラム:Shim−Pack SCR−101(内径7.9mm×長さ30cm、島津製作所社製)
・カラム温度:60℃
・溶出液:水
・流速:0.6ml/min
・検出器:示差屈折率計
・サンプル濃度:5%
【0034】
上記測定条件により分析した、実施例2の脱色精製糖組成物についてのHPLCチャートを図1に示す。図1中、丸付き数字1〜5が付された各ピークの帰属(それぞれNMRにより確認した。)は以下の通りである。
1(保持時間9.728分):α−D−DHPG。
2(保持時間9.100分):β−D−DHPG。
3(保持時間7.960分):二糖。
4(保持時間7.059分):三糖以上。
5(保持時間13.233分):遊離グリセリン。
【0035】
[保湿性]
最終的に得られた脱色精製糖組成物(固形分濃度50質量%の水溶液)の保湿性は以下の手順で評価した。
アルミシャーレに2gの脱色精製糖組成物を入れ、該アルミシャーレを温度25℃、湿度60%の恒温・恒湿器の中に入れ、その直後に湿度を35%に変化させ、その状態を12時間維持した。処理前後の該脱色精製糖組成物の質量から、下記式により質量減少率(%)を求めた。
【0036】
【数1】
【0037】
[実施例1]
温度計、攪拌装置、冷却管を備えた内容量1Lの三口フラスコに、グリセリン:552g(6mol)、無水結晶グルコース:180g(1mol)、パラトルエンスルホン酸:0.73gを仕込んだ。反応系内の圧力を5kPa(N/cm)とし、反応温度115℃で2時間、真空脱水反応を行った。その後、少量の水に溶解させた水酸化ナトリウム0.15gを添加して中和し、更に、ハイドロタルサイト類(商品名「キョーワード2000」、協和化学工業社製)を0.5g添加した。この時、反応生成物(粗糖組成物)の一部を取り出し、等量の純水で希釈し、固形分濃度50質量%の水溶液としてそのpHを測定したところ7.8であった。
その後、5kPa(N/cm)下で230℃まで昇温し、粗糖組成物から余剰のグリセリンを蒸留除去した。これにより、精製糖組成物259.2gが得られ、別途、グリセリンが450.4g回収された。得られた精製糖組成物を、等量の純水を添加して溶解させ、固形分濃度50質量%の水溶液とした。この時のpHは7.6であり、色相はAPHA300であった。
この精製糖組成物の水溶液に活性炭:6.5gを添加し、80℃で30分加熱した後、ろ過により活性炭を除去して脱色精製糖組成物を得た。
得られた脱色精製糖組成物の糖組成、遊離グリセリン量、色相、保湿性を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
温度計、攪拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三口フラスコに、グリセリン:1104g(12mol)、無水結晶グルコース:180g(1mol)、パラトルエンスルホン酸:1.28gを仕込んだ。反応系内の圧力を5kPa(N/cm)とし、反応温度115℃で2時間、真空脱水反応を行った。その後、少量の水に溶解させた水酸化ナトリウム0.27gを添加して中和し、更に、ハイドロタルサイト類(商品名「キョーワード2000」、協和化学工業社製)を1.0g添加した。この時、反応生成物(粗糖組成物)の一部を取り出し、等量の純水で希釈し、固形分濃度50質量%の水溶液としてそのpHを測定したところ7.7であった。
その後、5kPa(N/cm)下で230℃まで昇温し、粗糖組成物から余剰のグリセリンを蒸留除去した。これにより、精製糖組成物277.6gが得られ、別途、グリセリンが982.6g回収された。得られた精製糖組成物を、等量の純水を添加して溶解させ、固形分濃度50質量%の水溶液とした。この時のpHは7.3であり、色相はAPHA250であった。
この精製糖組成物の水溶液に活性炭:7.0gを添加し、80℃で30分加熱した後、ろ過により活性炭を除去して脱色精製糖組成物を得た。
得られた脱色精製糖組成物の糖組成、遊離グリセリン量、色相、保湿性を表1に示す。
【0039】
[実施例3]
温度計、攪拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三口フラスコに、グリセリン:1104g(12mol)、水アメ(商品名「KM55」、群栄化学工業社製、マルトースを主体とし、水分量が25%の水あめ):228g(1mol)、パラトルエンスルホン酸:1.28gを仕込んだ。反応系内の圧力を5kPa(N/cm)とし、反応温度115℃で2時間、真空脱水反応を行った。その後、少量の水に溶解させた水酸化ナトリウム0.27gを添加して中和し、更に、ハイドロタルサイト類(商品名「キョーワード2000」、協和化学工業社製)を1.0g添加した。この時、反応生成物(粗糖組成物)の一部を取り出し、等量の純水で希釈し、固形分濃度50質量%の水溶液としてそのpHを測定したところ8.0であった。
その後、5kPa(N/cm)下で230℃まで昇温し、粗糖組成物から余剰のグリセリンを蒸留除去した。これにより、精製糖組成物270.2gが得られ、別途、グリセリンが977.0g回収された。得られた精製糖組成物を、等量の純水を添加して溶解させ、固形分濃度50質量%の水溶液とした。この時のpHは7.8であり、色相はAPHA350であった。
この精製糖組成物の水溶液に活性炭:7.0gを添加し、80℃で30分加熱した後、ろ過により活性炭を除去して脱色精製糖組成物を得た。
得られた脱色精製糖組成物の糖組成、遊離グリセリン量、色相、保湿性を表1に示す。
【0040】
[比較例1]
温度計、攪拌装置、冷却管を備えた内容量0.5Lの三口フラスコに、グリセリン:276g(3mol)、無水結晶グルコース:180g(1mol)、パラトルエンスルホン酸:0.46gを仕込んだ。反応系内の圧力を5kPa(N/cm)とし、反応温度115℃で2時間、真空脱水反応を行った。その後、少量の水に溶解させた水酸化ナトリウム0.10gを添加して中和し、更に、ハイドロタルサイト類(商品名「キョーワード2000」、協和化学工業社製)を0.4g添加した。この時、反応生成物(粗糖組成物)の一部を取り出し、等量の純水で希釈し、固形分濃度50質量%の水溶液としてそのpHを測定したところ7.6であった。
その後、5kPa(N/cm)下で230℃まで昇温し、粗糖組成物から余剰のグリセリンを蒸留除去した。これにより、精製糖組成物220.3gが得られ、別途、グリセリンが193.2g回収された。得られた精製糖組成物を、等量の純水を添加して溶解させ、固形分濃度50質量%の水溶液とした。この時のpHは7.2であり、色相はAPHA350であった。
この精製糖組成物の水溶液に活性炭:6.5gを添加し、80℃で30分加熱した後、ろ過により活性炭を除去して脱色精製糖組成物を得た。
得られた脱色精製糖組成物の糖組成、遊離グリセリン量、色相、保湿性を表1に示す。
【0041】
[比較例2]
温度計、攪拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三口フラスコに、グリセリン:1104g(12mol)、無水結晶グルコース:180g(1mol)、パラトルエンスルホン酸:1.28gを仕込んだ。反応系内の圧力を5kPa(N/cm)とし、反応温度115℃で2時間、真空脱水反応を行った。その後、少量の水に溶解させた水酸化ナトリウム0.27gを添加して中和した。この時、反応生成物(粗糖組成物)の一部を取り出し、等量の純水で希釈し、固形分濃度50質量%の水溶液としてそのpHを測定したところ6.9であった。
その後、5kPa(N/cm)下で230℃まで昇温し、粗糖組成物から余剰のグリセリンを蒸留除去した。これにより、精製糖組成物243.7gが得られ、別途、グリセリンが1015.7g回収された。得られた精製糖組成物を、等量の純水を添加して溶解させ、固形分濃度50質量%の水溶液とした。この時のpHは4.2であり、色相はAPHA500以上(濃茶色)であった。
この精製糖組成物の水溶液に活性炭:10.0gを添加し、80℃で30分加熱し、ろ過して脱色精製糖組成物を得た。
得られた脱色精製糖組成物の糖組成、遊離グリセリン量、色相、保湿性を表1に示す。
【0042】
[比較例3]
実施例2で得た脱色精製糖組成物:100g用い、イオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィーによりα−D−DHPGを分離して、α−D−DHPGを高純度に含む脱色精製糖組成物(固形分濃度50質量%の水溶液)20gを得た。
得られた脱色精製糖組成物の糖組成、遊離グリセリン量、色相、保湿性を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
上記結果に示すとおり、実施例1〜3の脱色精製糖組成物は、比較例1〜3の脱色精製糖組成物に比べて、質量減少率が小さく、高い保湿性を有していた。また、色相(APHA)も良好であった。
一方、原料のグリセリンの仕込みモル比が低い比較例1は、得られた脱色精製糖組成物中の全糖の合計に対するα−D−DHPGおよびβ−D−DHPGの合計の含有量の割合が60%に満たなかった。また、該脱色精製糖組成物は、保湿性が低く、色相も悪かった。
また、蒸留時にpHが4.2まで低下した比較例2は、得られた脱色精製糖組成物中の全糖の合計に対するα−D−DHPGおよびβ−D−DHPGの合計の含有量の割合が60%に満たなかった。また、該脱色精製糖組成物は、保湿性が低く、色相も悪かった。これは、pH低下によりα−D−DHPGおよびβ−D−DHPGが分解し、純度が下がるとともに、生成したグルコースにより褐変が引き起こされたためと考えられる。
また、比較例3の脱色精製糖組成物は、α−D−DHPGを高純度に含むにもかかわらず、実施例1〜3よりも保湿性が低かった。
図1