(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187895
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】密閉型電気化学デバイス用安全弁
(51)【国際特許分類】
H01G 9/12 20060101AFI20170821BHJP
H01M 2/12 20060101ALI20170821BHJP
H01M 2/04 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
H01G9/12 A
H01M2/12 101
H01M2/04 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-243927(P2012-243927)
(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-82432(P2014-82432A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】305011787
【氏名又は名称】睦月電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】睦月 邦年
【審査官】
田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−094249(JP,A)
【文献】
特開昭62−115655(JP,A)
【文献】
特開平11−167909(JP,A)
【文献】
実開昭57−197635(JP,U)
【文献】
特開平10−050569(JP,A)
【文献】
実開昭64−039627(JP,U)
【文献】
特開2013−143370(JP,A)
【文献】
特開2004−190802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/12
H01M 2/04
H01M 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス排出用孔を有し金属材でできた封口板により封口された本体内に電解液を有するコンデンサーやリチウム電池などの密閉型電気化学デバイス用安全弁において、前記安全弁が前記封口板の上面および下面に延出する中空筒部と前記中空筒部を閉塞し上側空間部と下側空間部とを形成する薄肉の弁膜部とからなり、前記弁膜部と前記中空筒部とをガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分としエラストマーを5から15重量%配合させた成形材で前記封口板と一体に成形して前記中空筒部を前記ガス排出用孔の周壁に密着接合させたことを特徴とする密閉型電気化学デバイス用安全弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材でできた封口板により封口された本体内に電解液を有するコンデンサーやリチウム電池などの密閉型電気化学デバイスにおいて、本体内に発生したガスを排出する安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材でできた封口板により封口された本体内に電解液を有するコンデンサーやリチウム電池などの密閉型電気化学デバイスにあっては、電解液が本体外に漏れ出ないように密閉されているので、充放電サイクルを繰り返したり、高温で放置したり、短絡・過充電・逆充電などにより電解液が分解されて、その本体内で水素ガスや炭酸ガスなどのガスが発生し、そのガスが本体内に蓄積されることにより急激に内圧が上昇して、その本体が膨れたり、破裂したりするおそれがある。このような本体が膨れたり、破裂したりするのを防止するために、発生したガスをその都度、本体外に排出させて内圧上昇となるガスを本体内に蓄積させないようにさらには本体内の密閉を開放させる安全弁が望まれている。
【0003】
そこで、金属材でできた封口板において、ガス排出用孔が形成されており、このガス排出用孔をガス透過性のある弁膜部で閉塞するようにして本体内を密閉させ、発生した水素ガスや炭酸ガスなどのガスのみをその都度、排出させて、内圧上昇となるガスを本体内に蓄積させないようにした密閉型電気化学デバイス用安全弁としては、特許文献1にて、封口部材のガス抜き孔を塞ぎ水素ガスを選択的に透過させる弁膜を設けて、初充電時に発生する水素ガスを弁膜から外部に排出させて、初充電時の内圧上昇が抑制された非水電解質二次電池用安全弁が提案されている。すなわち、この非水電解質二次電池は、容器と、容器内に収納され、正極と負極と非水電解質とを含む発電要素と、容器の開口部に配置された封口部材とからなり、封口部材がステンレスあるいはアルミニウムなどの金属製封口板で、その金属製封口板には円形のガス抜き用孔が開口されており、水素ガスを選択的に透過させる弁膜が弁膜支持具でガス抜き用孔を塞ぐように圧着されており、この水素ガスを選択的に透過させる弁膜の厚さは、10μm〜100μmの範囲内で、素材として、ZrとNiを含有するアモルファス合金膜、Pd系合金膜、ゼオライト膜、無機酸化物(例えば、アルミナ、ジルコニア、シリカ、ムライト、コージェライト、チタニアなど)の微粒子の焼結膜、水素ガス透過性高分子膜(例えば、テフロンFEP)等が例示されている。
【0004】
また、特許文献2にて、電解コンデンサーは外装ケースの開口端部が封口板により封口されており、使用中に電解コンデンサーの内部で漏れ電流が流れることによって、その内部では水素等のガスが発生し、そのガスが発生することにより内圧が上昇し、最悪の場合には電解コンデンサーが破裂するおそれがあるので、この封口板に形成された貫通孔を発泡シリコーンゴムで密閉されるように固定部材で固定させた安全弁により、電解コンデンサーの内部で発生したガスのみをこの発泡シリコーンゴムから外部に放出するようにした電解コンデンサー用安全弁が提案されている。
【0005】
さらに、特許文献3にて、電池またはコンデンサー等の圧力容器の開口部を閉塞する封口板において、樹脂材料、エラストマー(ゴム、熱可塑性エラストマー、樹脂材料とゴムの混合物またはブロック共重合体またはグラフト共重合体等の弾性体)、樹脂材料とエラストマーの積層板材料等で型成形された封口板に設けた貫通孔にプレート状のポーラスPTFEよりなるブリーザ膜(気液選択性透過膜)をインサート成形により接合させて、圧力容器の開口部に封着されて圧力容器の内部空間を密閉させるが、圧力容器の内部にガス等が発生して圧力が高くなると、このガスがブリーザ膜を透過されて外部へ放出される安全弁が提案されている。
【0006】
しかし、特許文献1および特許文献2のような安全弁は、それぞれ、弁膜支持具で圧着させたり固定部材で固定させるので、弁膜支持具や固定部材などの取り付け部材が必要であり、圧着させたり固定させたりする際に、薄肉の弁膜や発泡シリコーンゴムを損傷させないように配慮する必要がある。
【0007】
また、特許文献3のような安全弁は、プレート状のブリーザ膜を用いてインサート成形するので、上記のような弁膜支持具や固定部材などの取り付け部材は不要であるが、インサート成形時に、そのブリーザ膜を損傷させないように配慮する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−228019号公報
【特許文献2】特開2001−15391号公報
【特許文献3】特開2004−303711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解消するために、ガス排出用孔を有し金属材でできた封口板により封口された本体内に電解液を有するコンデンサーやリチウム電池などの密閉型電気化学デバイスで、電解液が本体外に漏れ出ないようにするとともに本体内に発生したガスをガス排出用孔から本体外に排出する機能をもたせるように形成された安全弁において、弁膜支持具や固定部材などの取り付け部材を必要とせず、損傷させずに封口板に形成する安全弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の密閉型電気化学デバイス用安全弁は、ガス排出用孔を有し金属材でできた封口板により封口された本体内に電解液を有するコンデンサーやリチウム電池などの密閉型電気化学デバイス用安全弁において、前記安全弁が前記封口板の上面および下面に延出する中空筒部
と前記中空筒部を閉塞し上側空間部と下側空間部とを形成する薄肉の弁膜部とからなり、前記弁膜部と前記中空筒部
とをガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分と
しエラストマーを5から15重量%配合させた成形材で前記封口板と一体に成形して
前記中空筒部を前記ガス排出用孔の周壁に密着接合させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の密閉型電気化学デバイス用安全弁は、ガス排出用孔を有し金属材でできた封口板により封口された本体内に電解液を有するコンデンサーやリチウム電池などの密閉型電気化学デバイス用安全弁において、前記安全弁が前記封口板の上面および下面に延出する中空筒部
と前記中空筒部を閉塞し上側空間部と下側空間部とを形成する薄肉の弁膜部とからなり、前記弁膜部と前記中空筒部
とをガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分と
しエラストマーを5から15重量%配合させた成形材で前記封口板と一体に成形して
前記中空筒部を前記ガス排出用孔の周壁に密着接合
させたので、前記ガス排出用孔を閉塞して電解液が漏れ出るのを防止するとともに
前記弁膜部が外部からの機械的な衝撃を受けてもクラックを生じないように柔軟性を向上させて、前記弁膜部にて中空筒部を閉塞した状態でガスのみを透過させる機能を
もたせて中空筒部と薄肉の弁膜部とからガスのみが透過してガスの発生の都度、ガスを排出することができる
などの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態1で電極端子と並設した安全弁を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1で電極端子と並設した安全弁を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に用いる封口板を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態1に用いる封口板を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態1で電極端子と並設した安全弁を有する密閉型電気化学デバイス用安全弁を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態2で電極端子と並設した安全弁を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態2で電極端子と並設した安全弁を示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態2に用いる封口板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1から
図5を参照して、ガス排出用孔11を有する金属材でできた封口板1とガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材とを一体に成形してできた安全弁2を説明する。
【0015】
封口板1はアルミニウム(その合金を含む)やステンレスなどの金属材でできており、その形状は矩形状で、開口端のある直方体状の箱型ケース100(
図5参照)を閉蓋するが、この封口板1の形状は、円板(楕円を含む)状で、開口端のある円筒状の箱型ケースを閉蓋する形状でもよい。この封口板1には、ガス抜き用孔11と電極端子挿入用孔12とが並設するように形成されており、電極端子挿入用孔12は中央位置に形成されているが、ガス抜き用孔11が中央位置に形成されていてもよい。
【0016】
封口板1のガス抜き用孔11については、その周壁には、封口板1の上面および下面に延出する中空筒部21が密着接合されており、その中空筒部21は上側空間部23と下側空間部24とが形成されるように薄肉の弁膜部22にて閉塞されているので、ガス排出用孔11の周壁に中空筒部21を密着接合させてその接合部を多くして密着接合がより確実になり電解液が漏れ出るのを防止することができる。この中空筒部21および弁膜部22の素材は、電解液や水蒸気などの液体を透過させにくいが、水素ガスや炭酸ガスなどのガスのみを透過させやすい材料でしかも金属材と一体に成形できる成形材とする必要があり、そのために、中空筒部21および弁膜部22は、疎水性高分子でガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材でできている。このガス透過性のあるオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂などが例示でき、水蒸気を透過させにくく水素ガスや炭酸ガスなどのガスのみを透過させやすい成形材が提供できる。
【0017】
このポリオレフィン系樹脂にエラストマーを5から15重量%配合させることにより、金属材でできた封口板1とガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材とを一体に成形してガス透過性をもたせて金属材と成形材との成形時の密着接合を向上させることができるとともに、弁膜部22が外部からの機械的な衝撃を受けてもクラックを生じないように柔軟性をさらに向上させることができる。このエラストマーとしては、エチレンープロピレンゴム、スチレンーブタジェンゴムなどが例示できる。
【0018】
また、弁膜部22の厚さは0.05〜0.2mm好ましくはさらに薄肉であり、その厚さはガス透過率の大きさや弁膜部22が破断する圧力により設定すればよい。
【0019】
一方、ガス発生量に比しガス透過性が少なくても、弁膜部22を破断させて密閉型電気化学デバイスの本体内の密閉を開放させて一気にガスを排出すると、その本体の破裂をより一層防止させることができるので、弁膜部22の素材としてポリオレフィン系樹脂主成分に金属粉末を配合させて弁膜部22の柔軟性を低くして、弁膜部22を一気に破断させる。この金属粉末として、好ましくはアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を5から15重量%配合させることにより、鱗片状の補強フィラーとなり弁膜部22の柔軟性を低くしてもよい。
【0020】
また、電極端子挿入用孔12については、その周壁には、封口板1の上面および下面に延出するガスケット32が密着接合されるとともに、その
ガスケット32には銅(その合金を含む)やアルミニウム(その合金を含む)などでできた電極端子31が密着接合されている。このガスケット32はガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材でできており、金属材でできた封口板1と電極端子31とを電気的に絶縁させ、電極端子31はそのガスケット32を介してかしめまたは成形にて封口板1に密着接合するように固着されている。この実施形態においては、封口板1と電極端子31とをガスケット32を介して一体に成形することにより、電極端子31はガスケット32にて電気的に絶縁されて封口板1に密着接合するように固着されており、その際に使用するガスケット32はガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材を用いる。金属材でできた封口板1とガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材とを一体に成形して、薄肉の弁膜部22で閉塞された中空筒部21を封口板1のガス排出用孔11の周壁に密着接合させてガス排出用孔11を閉塞させる際に、電極端子挿入用孔12に電極端子31を配置して封口板1とガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材とを一体に
成形することにより、ガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材できたガスケットにて電気的に絶縁された電極端子31と安全弁2とを封口板1に並設させて、ガス排出用孔11の部位と電極端子挿入用孔12の部位とにおいて水素ガスや炭酸ガスなどのガスのみを透過させるので、ガスが排出しやすくなる。
【0021】
次に、
図5は、ガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材でできたガスケット32にて電気的に絶縁された電極端子31と安全弁2とを封口板1に並設した密閉型電気化学デバイスを示し、密閉型電気化学デバイスとしては、非水素電解液の密閉型電気化学デバイスが好ましい。この密閉型電気化学デバイスは電解液8を有するコンデンサーやリチウム電池などで、円板(楕円を含む)状や矩形状の封口板1が開口端のある円筒状または直方体状の箱型ケース100を閉蓋するように接合手段9で密閉型電気化学デバイスの本体を構成する。この金属材でできた封口板1で封口された本体内にはリード7、71、
電解液8および正負極素子部6が気密状態に設けられている。この封口板1には正極端子と負極端子の何れか一方の端子例えば正極端子を設けた場合を示すが、正極端子と負極端子の両方の端子を設けてあってもよい。封口板1の金属材としてはアルミニウム(その合金を含む)やステンレスなどが例示できる。また、箱型ケース100の素材も封口板1と同様なアルミニウム(その合金を含む)やステンレスなどの金属材であるので、封口板1と箱型ケース100とをレーザなどの接合手段9にて接合して密閉された本体が形成されて、封口板1と正負極素子部6とはリード71を介して電気接続されている。また、この封口板1には、正極端子である端子部3が設けられており、端子部3は銅(その合金を含む)やアルミニウム(その合金を含む)などでできた電極端子31を有し、この電極端子31と正負極素子部6とはリード7を介して正負極素子部6と電気接続されている。封口板1は金属材でできているので、電極端子31はガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材でできたガスケット32で電気的に絶縁されている。なお、ガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材でできたガスケット32を封口板1に一体に成形させておいて、電極端子31をガスケット32に挿入してかしめて封口板1に密着接合するように固着されてもよい。また、このガスケット32は安全弁2と同じ成形材であるが、封口板1と電極端子31とは電気的に絶縁させる必要があるので、このポリオレフィン系樹脂に金属粉末を配合させずに、エチレンープロピレンゴム、スチレンーブタジェンゴムなどのエラストマーを5から15重量%配合させてもよい。
【0022】
(実施形態2)
図6から
図8を参照して、金属材でできた封口板により封口された本体内に電解液を有するコンデンサーやリチウム電池などの密閉型電気化学デバイスで電解液が本体外に漏れ出ないようにするとともにその本体内に発生したガスのみを透過させて本体外に排出する機能をもたせた安全弁の異なる実施形態を説明する。
【0023】
図8は、金属材でできた封口板4を示し、この封口板4は、実施形態1と同様にアルミニウム(その合金を含む)やステンレスなどの金属材でできており、その形状は矩形状を図示するが、円板(楕円を含む)状で、ガス抜き用孔41と電極端子挿入用孔42とが並設されるように形成されているが、ガス抜き用孔41の周壁には上方に径大部41Aが形成されている。なお、電極端子挿入用孔42は、実施形態1と同様に中央位置に形成されているが、ガス抜き用孔41が中央位置に形成されていてもよい。
【0024】
図6および
図7は、このガス排出用孔41を有する金属材でできた封口板4と、ガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材とを、一体に成形してできた安全弁5を示す。この安全弁5において、ガス抜き用孔41の周壁に封口板4の上面および下面に延出する中空筒部51が密着接合されており、その中空筒部51は上側空間部53と下側空間部54とが形成されるように薄肉の弁膜部52にて閉塞されているので、封口板4とガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材との接合部位が多くなり、密着接合がより確実になる。弁膜部52は中空筒部51の内周壁から延びる環状の薄肉部55と連結して下面に下側空間部54が
形成されている。この薄肉部55は安全弁5における他の部位に比し、応力を受けたとき破断しやすい形状となっているので、ガス発生量に比しガス透過性が少なくても、この破断により弁膜部52が一気に開放されて、密閉型電気化学デバイスの本体の破裂をより一層防止させることができる。この中空筒部51および弁膜部52は、ガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材でできており、封口板4とガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材とを一体に成形することにより、中空筒部51および弁膜部52からなる安全弁5が封口板4に設けられる。このガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材としては、実施形態1と同様に、水蒸気を透過させにくく水素ガスや炭酸ガスなどのガスのみを透過させやすい成形材が提供できるようにポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂などである。このポリオレフィン系樹脂にエチレンープロピレンゴム、スチレンーブタジェンゴムなどのエラストマーを5から15重量%配合させることが好ましい。また、弁膜部52の厚さは0.05〜0.2mm好ましくはさらに薄肉であるが、その厚さはガス透過率の大きさや弁膜部52が破断する圧力により設定すればよい。
【0025】
また、電極端子挿入用孔42については、その周壁には、封口板4の上面および下面に延出するガスケット32が密着接合されており、その
ガスケット32には実施形態1と同様に銅(その合金を含む)やアルミニウム(その合金を含む)などでできた電極端子31が実施形態1と同様に、このガスケット32は安全弁5と同じ成形材で、電極端子挿入用孔42に電極端子31を配置して封口板4とガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材とを一体に成形することにより、ガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材でできたガスケット32にて電気的に絶縁された電極端子31と安全弁5とを封口板4に並設させて、ガス排出用孔41の部位と電極端子挿入用孔42の部位とにおいて
ガスのみを透過させるので、ガス透過性が向上する。なお、ガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂としては、安全弁5と同じ成形材で、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂などが例示でき、金属粉末を配合させずに、エチレンープロピレンゴム、スチレンーブタジェンゴムなどのエラストマーを5から15重量%配合させてもよい。
【0026】
このように電極端子31のガスケット32および安全弁5がガス透過性のあるポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材で構成して、電極端子31と安全弁5とを封口板4に並設して、
図5に示すように密閉型電気化学デバイスとして用いる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の封口板は、ガス排出用孔を有し金属材でできており、その封口板により封口された本体内に電解液を有するコンデンサーやリチウム電池などの密閉型電気化学デバイス、特に非水素電解液の密閉型電気化学デバイスにおいて、その本体内で発生する水素ガスにより本体が膨れるのを抑制し充放電サイクル特性を向上させる安全弁として有用である。
【符号の説明】
【0028】
1、4 封口板
11、41 ガス抜き用孔
2、5 安全弁
21、51 中空筒部
22、52 弁膜部
3 電極端子部
31 電極端子
32
ガスケット