特許第6187908号(P6187908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187908
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】シリンダ錠の保護装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 17/18 20060101AFI20170821BHJP
   E05B 17/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   E05B17/18 G
   E05B17/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-252108(P2013-252108)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-108271(P2015-108271A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2015年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】株式会社ホンダロック
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】サムルーン ニワット
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−76204(JP,A)
【文献】 特開2009−203666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00− 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ錠(11)にメカニカルキー(14)を挿入するためのメカニカルキー挿入孔(27)を有するケーシング(28)と、前記メカニカルキー挿入孔(27)を閉じる閉じ位置ならびに前記メカニカルキー挿入孔(27)を開放する開き位置間で作動することを可能として前記ケーシング(28)に配設され、ばね(52)により前記開き位置側に向けて回動付勢されるシャッター板(29)と、そのシャッター板(29)を前記閉じ位置に規制する規制状態ならびに前記閉じ位置から前記開き位置への前記シャッター板(29)の作動を許容する規制解除状態を切換え可能とした作動規制機構(55)と、前記規制状態にある前記作動規制機構(55)を前記規制解除状態に切換え得る解除機構(65)とを備えるシリンダ錠の保護装置において、
前記メカニカルキー挿入孔(27)への前記メカニカルキー(14)の挿入方向と平行な方向に押圧操作することを可能とした操作部材(41)が、少なくとも前記シャッター板(29)を前記開き位置とした状態で前記ケーシング(28)の外面から前記操作部材(41)の一端部を突出させるようにして前記ケーシング(28)に支承され、前記シャッター板(29)を前記操作部材(41)の前記押圧操作に連動させて前記開き位置から前記閉じ位置に駆動する連動駆動機構(88)が、前記操作部材(41)および前記シャッター板(29)間に設けられ、前記操作部材(41)の前記押圧操作により、前記シャッター板(29)が前記ばね(52)の回動付勢力に抗して閉じることを特徴とするシリンダ錠の保護装置。
【請求項2】
前記シャッター板(29)が、前記閉じ位置および前記開き位置間での回動を可能として前記操作部材(41)に軸支されることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ錠の保護装置。
【請求項3】
前記解除機構(65)の一部が、マグネットキー(17)によって解錠するマグネット錠(66)で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のシリンダ錠の保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ錠にメカニカルキーを挿入するためのメカニカルキー挿入孔を有するケーシングと、前記メカニカルキー挿入孔を閉じる閉じ位置ならびに前記メカニカルキー挿入孔を開放する開き位置間で作動することを可能として前記ケーシングに配設されるシャッター板と、そのシャッター板を前記閉じ位置に規制する規制状態ならびに前記閉じ位置から前記開き位置への前記シャッター板の作動を許容する規制解除状態を切換え可能とした作動規制機構と、前記規制状態にある前記作動規制機構を前記規制解除状態に切換え得る解除機構とを備えるシリンダ錠の保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッター板が、閉じ位置および開き位置間で回動することを可能としてケーシングに配設され、シャッター板に設けられるとともに前記ケーシングから一部を突出させた突起を閉じ側にスライド操作することで、シャッター板を開き位置から閉じ位置に回動させるようにしたシリンダ錠の保護装置が、たとえば特許文献1で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3914043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1で開示されたものでは、シャッター板に設けられる突起を挿通させるようにしてケーシングに設けられる開口部を円弧状に形成しなければならず、ケーシングのデザイン上の自由度が狭められてしまうとともに、開口部からケーシング内に塵埃や水が入り込むのを防止するための広い範囲での防塵、防水構造が必要となる。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ケーシングのデザインの自由度を増大しつつ、防塵、防水構造上有利としたシリンダ錠の保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、シリンダ錠にメカニカルキーを挿入するためのメカニカルキー挿入孔を有するケーシングと、前記メカニカルキー挿入孔を閉じる閉じ位置ならびに前記メカニカルキー挿入孔を開放する開き位置間で作動することを可能として前記ケーシングに配設され、ばねにより前記開き位置側に向けて回動付勢されるシャッター板と、そのシャッター板を前記閉じ位置に規制する規制状態ならびに前記閉じ位置から前記開き位置への前記シャッター板の作動を許容する規制解除状態を切換え可能とした作動規制機構と、前記規制状態にある前記作動規制機構を前記規制解除状態に切換え得る解除機構とを備えるシリンダ錠の保護装置において、前記メカニカルキー挿入孔への前記メカニカルキーの挿入方向と平行な方向に押圧操作することを可能とした操作部材が、少なくとも前記シャッター板を前記開き位置とした状態で前記ケーシングの外面から前記操作部材の一端部を突出させるようにして前記ケーシングに支承され、前記シャッター板を前記操作部材の前記押圧操作に連動させて前記開き位置から前記閉じ位置に駆動する連動駆動機構が、前記操作部材および前記シャッター板間に設けられ、前記操作部材の前記押圧操作により、前記シャッター板が前記ばねの回動付勢力に抗して閉じることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記シャッター板が、前記閉じ位置および前記開き位置間での回動を可能として前記操作部材に軸支されることを第2の特徴とする。
【0008】
さらに本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記解除機構の一部が、マグネットキーによって解錠するマグネット錠で構成されることを第3の特徴とする。
【0009】
尚、実施の形態の第2ばね52は本発明のばねに対応する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の特徴によれば、開き位置に在るシャッター板を閉じ位置側に動かすときには、少なくともシャッター板が開き位置に在る状態ではケーシングの外面から一端部を突出させている操作部材を押し込み操作すればよく、ケーシングに、従来のような円弧状の開口部を設ける必要がなく、ケーシングのデザイン上の自由度が増大し、しかも操作部材の外周およびケーシング間のシールだけを考慮すればよいので防塵、防水構造上も有利となる。
【0011】
また本発明の第2の特徴によれば、操作部材にシャッター板が軸支されるので、シャッター板および操作部材をコンパクトに纏めて配置することができる。
【0012】
さらに本発明の第3の特徴によれば、シャッター板を閉じ位置に規制する規制状態にある作動規制機構を規制解除状態に切換え得る解除機構の少なくとも一部をマグネット錠で構成することで、解除機構のコンパクト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】シリンダ錠の保護装置の斜視図である。
図2】メカニカルキーおよびマグネットキーの斜視図である。
図3】保護装置の分解斜視図である。
図4】カバー部材を省略した状態での保護装置の正面図である。
図5図4の5矢視図である。
図6】シャッター板、操作部材、作動規制機構および解除機構の相対配置を示す斜視図である。
図7】スライド部材の斜視図である。
図8】解除機構で作動規制機構を規制解除状態としたときの図6に対応した斜視図である。
図9】シャッター板が開き位置に回動したときの図6に対応した斜視図である。
図10】シャッター板を開き位置から閉じ位置に動かしたときの図6に対応した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図1図10を参照しながら説明すると、先ず図1において、イグニッションスイッチのスイッチング態様の切換ならびにステアリングのロック状態およびアンロック状態を切換を可能として、車両たとえば自動二輪車等に用いられるシリンダ錠11のシリンダボディ12に保護装置13が取付けられる。
【0015】
図2において、前記シリンダ錠11を解錠操作するためのメカニカルキー14は、キープレート15と、そのキープレート15の一端部に設けられる合成樹脂製の把持部16とを有しており、前記キープレート15とは反対側で前記把持部16にマグネットキー17が回動可能に支持される。
【0016】
前記マグネットキー17のキー本体18は合成樹脂によって形成されており、前記把持部16側に畳まれた格納位置と、図2で示すように前記キープレート15とは反対側に向けて前記把持部16から突出する起立位置との間での回動を可能として、前記把持部16に軸19を介して支持される。
【0017】
前記キー本体18の一側面には、正方形の凹部20と、該凹部20の中央部に配置される円形突部21と、前記凹部20内で前記円形突部21の周囲に配置される4個の収容凹部22とが形成されており、4個の前記収容凹部22のうち選択された3個の収容凹部22にマグネット23がそれぞれ収容された状態で、前記円形突部21を嵌合させる円形孔24を中央部に有する蓋部材25を前記凹部20に嵌合して貼着することで、前記マグネットキー17が構成される。しかも前記マグネット23は、そのN極およびS極のいずれか一方を前記収容凹部22の外端側に臨ませるようにして前記収容凹部22に収容される。
【0018】
図3図5を併せて参照して、前記保護装置13は、前記シリンダ錠11にメカニカルキー14を挿入するためのメカニカルキー挿入孔27を有して前記シリンダボディ12の一端部を覆うケーシング28と、前記メカニカルキー挿入孔27を閉じる閉じ位置ならびに前記メカニカルキー挿入孔27を開放する開き位置間で作動することを可能として前記ケーシング28に配設されるシャッター板29とを備える。
【0019】
前記ケーシング28は、前記シリンダボディ12が結合されるボディ30と、該ボディ30を前記シリンダボディ12とは反対側から覆うようにして前記ボディ30に締結されるカバー部材31とから成る。このケーシング28には、前記メカニカルキー挿入孔27を閉じる閉じ位置(図4で示す位置)ならびに前記メカニカルキー挿入孔27を開放する開き位置間で、図4の矢印で示す回動方向32に回動することを可能としたシャッター板29が配設されており、このシャッター板29は前記ボディ30および前記カバー部材31間に配置される。
【0020】
前記カバー部材31は、前記ボディ30の前記シリンダ錠11とは反対側の一部を嵌合させるようにして該ボディ30を覆うものであり、前記メカニカルキー挿入孔27の軸線と直交する方向に長い略長方形の椀状に形成される。
【0021】
このカバー部材31の長手方向の一端部の幅方向中央部には第1のボス部31aが形成され、前記カバー部材31の長手方向他端寄りの中間両側部には第2および第3のボス部31b,31cが一体に形成される。一方、前記ボディ30の外周には、第1〜第3のボス部31a,31b,31cを当接させる第1〜第3の支持部30a,30b,30cが一体に形成されており、第1〜第3の支持部30a〜30cに前記シリンダ錠11側から挿通されるねじ部材33(図3参照)が第1〜第3のボス部31a〜31cにねじ込まれることによって前記ボディ30に前記カバー部材31が締結される。
【0022】
前記メカニカルキー挿入孔27は、前記シリンダ錠11内に通じ得るようにして前記ボディ30に設けられる円形の内部孔34と、該内部孔34に対応して前記カバー部材31に設けられる円形の外部孔35とで構成され、前記シャッター板29は、前記内部孔34および前記外部孔35間に介在することで前記メカニカルキー挿入孔27を閉じることになる。
【0023】
前記カバー部材31の外面にはリング状の標示シート36が貼着され、この標示シート36には、前記メカニカルキー挿入孔27に挿入される前記メカニカルキー14の複数の回動操作位置が、前記メカニカルキー挿入孔27の周囲に間隔をあけて表示される。
【0024】
前記ケーシング28には、前記メカニカルキー挿入孔27への前記メカニカルキー14の挿入方向と平行な方向に押圧操作することを可能とした操作部材41が支承される。前記ケーシング28における前記カバー部材31には、前記メカニカルキー挿入孔27と平行な軸線を有する挿通孔42が、前記シリンダ錠11の前記シリンダボディ12に前記ケーシング28が取付けられた状態で前記メカニカルキー挿入孔27の斜め上方に位置するようにして設けられ、前記ケーシング28における前記ボディ30には、前記挿通孔42に同軸に対応する支持筒部43が一体に形成されるとともに、前記支持筒部43の外周のうち前記メカニカルキー挿入孔27側のほぼ半周を臨ませる円弧孔44が形成される。
【0025】
前記操作部材41は棒状に形成されており、この操作部材41の一端部は、少なくとも前記シャッター板29を前記開き位置とした状態で前記ケーシング28の外面から突出するものであり、この実施の形態では、前記シャッター板29の回動位置にかかわらず前記ケーシング28における前記カバー部材31の外面から前記操作部材41の一端部が突出する。
【0026】
前記操作部材41の一端部は前記カバー部材31の前記挿通孔42を移動可能に貫通して前記カバー部材31の外面から突出され、前記操作部材41の他端部は前記支持筒部43に摺動可能に嵌入される。しかも前記操作部材41の他端側には、前記円弧孔44に配置される押圧部45が、前記支持筒部43に設けられて軸方向に延びるスリット47に配置される連結腕部46を介して一体に連結されており、前記操作部材41はその軸線まわりに回動することを不能として前記ケーシング28に支承される。
【0027】
また前記操作部材41の他端部および前記ボディ30間には、コイル状の第1ばね48が縮設される。前記操作部材41は第1ばね48のばね力で該操作部材41の一端部を前記カバー部材31から突出させる方向にばね付勢されており、第1ばね48によるばね付勢方向での前記操作部材41の移動端は、前記押圧部45が前記カバー部材31の内面に当接することで規制される。
【0028】
前記カバー部材31の裏面への前記ボディ30の対向面には、前記シャッター板29をその回動時に摺接させる摺接支持部49が突設され、該摺接支持部49は、前記シリンダボディ12への前記ケーシング28の取り付け状態で前記摺接支持部49の一部が前記内部孔34の上下に配置されるように形成される。
【0029】
前記シャッター板29は、前記内部孔34および前記外部孔35間に介在して前記メカニカルキー挿入孔27を閉じ得るようにしつつ前記摺接支持部49に摺接する平板状の蓋部29aと、この蓋板部29aから前記操作部材41側に延出する支持腕部29bと、前記蓋板部29aから前記支持腕部29bと反対側に突出する突部29cとを一体に有する。
【0030】
しかも前記支持腕部29bには受圧部50が一体に連設されており、この受圧部50は、前記操作部材41の他端側に一体に連設された前記押圧部45に前記操作部材41の周方向で対向するようにして前記円弧孔44に配置される。
【0031】
前記支持腕部29bの先端部には、前記操作部材41を挿通させる支持孔51が設けられており、前記シャッター板29は、前記閉じ位置および前記開き位置間での回動を可能として前記操作部材41に軸支されることになる。
【0032】
前記ケーシング28における前記ボディ30の前記支持筒部43と、前記シャッター板29との間には、前記操作部材41を囲繞するねじりばねである第2ばね52が設けられており、この第2ばね52の一端部は前記支持筒部43に設けられたスリット状の係合孔53に係合され、第2ばね52の他端部は前記シャッター板29の前記支持腕部29bに一体に連設される前記受圧部50に係合され、前記シャッター板29は、第2ばね52のばね力によって前記開き位置側に向けて回動付勢されることになる。
【0033】
図6を併せて参照して、前記保護装置13は、前記シャッター板29を前記閉じ位置に規制する規制状態ならびに前記閉じ位置から前記開き位置への前記シャッター板29の作動を許容する規制解除状態を切換え可能とした作動規制機構55を備えており、この作動規制機構55は、前記シャッター板29が一体に有する前記突部29cと、該突部29cに前記開き位置側から係合し得る規制部材56と、前記ケーシング28の前記ボディ30および前記規制部材56間に縮設されるコイル状の第3ばね57とで構成される。
【0034】
前記規制部材56は、前記メカニカルキー挿入孔27に関して前記操作部材41とは反対側に配置されるものであり、前記メカニカルキー挿入孔27の軸線方向と平行な方向に長く延びる軸部56aと、該軸部56aの前記カバー部材31側の端部から前記メカニカルキー挿入孔27側に延びる連結腕部56bと、前記軸部56aと平行な軸線を有しつつ前記連結腕部56bの先端部に連結される円板部56cと、前記シャッター板29の前記突部29cに前記開き位置側から係合することを可能として前記円板部56cから前記メカニカルキー挿入孔27側に突出する規制突部56dと、前記規制突部56dとは異なる方向で前記軸部56aの前記カバー部材31とは反対側の端部に突設される第1係合突部56eとを一体に有するように形成される。
【0035】
この規制部材56は、閉じ位置に在る前記シャッター板29の前記突部29cに前記規制突部56dを当接させて前記シャッター板29を閉じ位置に規制する規制位置と、前記突部29cへの前記規制突部56dの当接を解除して前記閉じ位置から前記開き位置への前記シャッター板29の移動を許容する規制解除位置との間で、前記操作部材41の移動方向と平行な方向に移動することを可能として、前記ケーシング28の前記ボディ30に支承され、第3ばね57は前記規制位置側に前記規制部材56を付勢するばね力を発揮する。
【0036】
前記シリンダボディ12への前記ケーシング28の取り付け状態で前記メカニカルキー挿入孔27の下方に位置する横断面矩形かつ有底のスライド支持孔58が、前記カバー部材31の裏面側に対向して開口するとともに前記メカニカルキー挿入孔27の軸線に沿う方向に延びるようにして前記ボディ30に設けられ、前記カバー部材31には、前記スライド支持孔58に対応した長方形状の挿入孔60が設けられる。また前記メカニカルキー挿入孔27の軸線方向と平行な方向への前記規制部材56の移動をガイドするガイド孔59が、前記摺接支持部49の一部を切欠くとともに前記スライド支持孔58に連なるようにして前記ボディ30に設けられる。
【0037】
図3に注目して、前記カバー部材31の裏面には、前記挿入孔60を内方側から閉じる蓋部材61が支軸62を介して回動可能に支承されており、この蓋部材61は第4ばね63によって閉じ側に付勢される。
【0038】
また前記保護装置13は、規制状態にある前記作動規制機構55を規制解除状態に切換え得る解除機構65を備えるものであり、この解除機構65の一部は、前記マグネットキー17によって解錠するマグネット錠66で構成される。
【0039】
前記マグネット錠66は、前記ケーシング28の前記ボディ30に配設されており、前記ケーシング28の前記ボディ30で回動可能に支承されるロータ67を備える。
【0040】
前記ロータ67は、円形の皿状部67aと、該皿状部67aの開口端から半径方向外方に張り出す鍔部67bと、その鍔部67bの周方向1箇所から外側方に延びる連結腕部67cと、該連結腕部67cの外端から前記皿状部67aと同一側に突出する第2係合突部67dとを一体に有し、非磁性材料によって形成される。
【0041】
前記ケーシング28の前記ボディ30には、前記ロータ67の鍔部67bおよび前記連結腕部67cを回動可能に嵌合させる嵌合凹部68と、該嵌合凹部68に外端を開口するとともに前記スライド支持孔58の前記シャッター板29とは反対側の側面に内端を開口させて前記ロータ67の前記皿状部67aを回動可能に嵌合する円形の嵌合孔69と、前記第2係合突部67dが挿入されるようにして前記嵌合凹部68に外端を開口するとともに前記スライド支持孔58の前記シャッター板29とは反対側の側面に内端を開口させた長孔70とが設けられており、前記長孔70は、前記嵌合凹部68および前記嵌合孔69内での前記ロータ67の回動を許容するようにして該ロータ67の回動軸線を中心とした円弧状に形成される。
【0042】
前記嵌合凹部68は、前記ロータ67の前記皿状部67a内に嵌合して前記ロータ67の回動を支持する支持突部71aを一体に有するとともにねじ部材72で前記ボディ30に締結される蓋部材71で閉じられており、前記支持突部71aの基部および前記ロータ67間にOリング73が介装される。
【0043】
前記支持突部71aの先端部には、マグネットから成る複数個たとえば3個のピン74が前記ロータ67における前記皿状部67aの閉塞端内面に設けられる4つの係止凹部75のうちの3つに係合する位置ならびにその係合を解除する位置間での移動を可能として摺動可能に嵌合されており、各ピン74は、個別に対応したコイルばねである第5ばね76(図3参照)によって前記ロータ67に係合する側に弾発付勢される。
【0044】
3つの前記ピン74は、前記ロータ67における前記皿状部67aの閉塞端外面に、前記マグネットキー17が対向配置されたときに、該マグネットキー17が有する3つのマグネット23に対応する位置に配置されるようにして前記係止凹部75に嵌合される。しかも前記マグネットキー17における前記マグネット23の前記マグネット錠66側の極と同一極が前記係止凹部75の内端側に配置されるようにして、前記ピン74が配置されており、前記ロータ67における前記皿状部67aの閉塞端外面に対向する位置に正規のマグネットキー17を配置することで第5ばね76の弾発付勢力に抗して前記ピン74を前記ロータ67との係合を解除する側に移動させることができ、それによって前記ロータ67の回動が許容されることになる。
【0045】
前記ケーシング28における前記ボディ30の前記スライド支持孔58には、前記マグネットキー17の前記キー本体18を前記ケーシング28の前記挿入孔60に挿入するのに応じて該キー本体18とともに移動するスライド部材78がスライド可能に収容されており、前記解除機構65は、前記マグネット錠66と、前記スライド部材78と、該スライド部材78に収容される可動係合部材79と、前記スライド部材78および前記可動係合部材79間に設けられるコイル状の第6ばね80とで構成される。
【0046】
図7を併せて参照して、前記スライド部材78は、前記スライド支持孔58の前記シャッター板29側の側面に摺接する第1側壁部78aと、前記スライド支持孔58の前記シャッター板29とは反対側の側面に摺接するようにして第1側壁部78aに対向する第2側壁部78bと、前記スライド支持孔58の横断面形状における長手方向一端側で第1および第2側壁部78a,78b間を連結する第1連結壁部78cと、前記スライド支持孔58の横断面形状における長手方向他端側で第1および第2側壁部78a,78b間を連結して第1連結壁部78cに対向する第2連結壁部78dと、前記スライド支持孔58の内端側で第1側壁部78a、第2側壁78b、第1連結壁部78cおよび第2連結壁部78dを連結する端壁部78eとを一体に有するように形成され、このスライド部材78には、前記蓋部材71をあけて前記カバー部材31の前記挿入孔60から前記マグネットキー17のキー本体18を挿入するための有底のマグネットキー挿入孔81が、略矩形の横断面形状を有するようにして形成される。
【0047】
前記マグネットキー挿入孔81に挿入される前記キー本体18の先端部は、前記端壁部78eに当接されるものであり、前記キー本体18を押し込むことで前記スライド部材78は前記スライド支持孔58内をスライド移動する。しかもこのスライド部材78の第1および第2連結壁部78c,78dと、前記スライド支持孔58の閉塞端との間には、コイルばねである第7ばね82がそれぞれ縮設されており、前記スライド部材78は前記カバー部材31に近接する側にばね付勢されている。
【0048】
前記スライド部材78の第2側壁部78bには、前記マグネットキー挿入孔81に挿入されたマグネットキー17を前記マグネット錠66側に臨ませる窓83が形成されており、前記スライド部材78は、前記キー本体18の挿入に応じて該マグネットキー17とともに移動して前記マグネット錠66における前記ロータ67の閉塞端外面に前記マグネットキー17を対向させることで該マグネット錠66を解錠する解錠位置までの前記マグネットキー17の挿入操作を可能とするだけでなく、前記解錠位置から前記キー本体18をさらに押し込むことによる押し込み位置までの移動が可能である。
【0049】
前記スライド部材78の第2連結壁部78dには、前記規制部材56が一体に有する第1係合突部56eと、前記ロータ67が一体に有する第2係合突部67dとを両側から突入させる収容孔84が、前記スライド支持孔58の前記シャッター板29側の側面ならびに前記シャッター板29とは反対側の側面に向かって開口しつつ、前記スライド支持孔58の延出方向両端を閉じるようにして設けられており、前記可動係合部材79および前記第6ばね80は前記収容孔84内に収容される。
【0050】
前記可動係合部材79は、前記マグネット錠66の鎖錠状態では前記ロータ67で移動が規制されるようにしつつ該ロータ67が有する前記第2係合突部67dに係合されて前記スライド部材78に保持され、第6ばね80は、前記スライド部材78の前記押し込み位置側への移動に応じて前記ロータ67を回動駆動する側に前記可動係合部材79を押圧する弾発力を発揮するようにして前記スライド部材78および前記可動係合部材79間に設けられ、この第6ばね80のばね荷重は第3ばね57のばね荷重よりも大きく設定される。
【0051】
前記可動係合部材79は、前記ロータ67が有する第2係合突部67dを係合させる係止溝85を有して前記ロータ67の前記連結腕部67c側に開放した略C字状に形成される可動係合部材主部79aと、前記規制部材56が有する第1係合突部56eに前記カバー部材31側から係合するようにして前記可動係合部材主部79aから突出される第3係合突部79bとを一体に有するように形成される。また第6ばね80の可動係合部材79側の端部を受けるための円形の受け凹部86が前記可動係合部材主部79aに形成される。
【0052】
正規のマグネットキー17の前記キー本体18を前記スライド部材78のマグネットキー挿入孔81に挿入して押し込むと、解錠位置で前記マグネット錠66が解錠することで前記ロータ67の回動が許容されることになり、前記キー本体18とともに前記スライド部材78を前記解錠位置からさらに押し込むと、スライド部材78の移動による押圧力が第6ばね80および前記可動係合部材79を介して前記ロータ67の連結腕部67cに伝達され、図8で示すように、前記可動係合部材79が移動するとともにロータ67が回動し、第3ばね57で規制位置側に付勢された前記規制部材56の第1係合突部56eに前記可動係合部材79の第3係合突部79bが係合していることによって前記規制部材56が規制解除位置に強制的に駆動され、図9で示すように、前記シャッター板29の前記突部29cへの前記規制突部56dの係合が解除されるので規制部材56による前記シャッター板29の閉じ位置への規制が解除され、前記シャッター板29は第2ばね52のばね付勢力で開き位置に移動することになる。
【0053】
また前記保護装置13は、前記シャッター板29が前記開き位置にある状態で、前記操作部材41を前記メカニカルキー挿入孔27への前記メカニカルキー14の挿入方向と平行な方向に押圧操作することで、その押圧操作に連動させて前記シャッター板29を前記開き位置から前記閉じ位置に駆動する連動駆動機構88を備えており、この連動駆動機構88は、前記操作部材41および前記シャッター板29間に設けられる。
【0054】
この実施の形態で前記連動駆動機構88は、前記操作部材41に一体に設けられる押圧部45に前記操作部材41の他端側(カバー部材31とは反対側)に臨むようにして形成される押圧カム面89と、前記シャッター板29に一体に設けられる受圧部50に前記押圧カム面89に対向するようにして形成される受圧カム面90とで構成される。
【0055】
前記押圧カム面89は、前記シャッター板29の回動方向32で閉じ位置側に進むにつれて前記操作部材41の一端側(カバー部材31側)に位置するようにして螺旋状に形成されるものであり、前記受圧カム面90も前記押圧カム面89に対応して螺旋状に形成され、前記シャッター板29が前記開き位置にある状態では、図9で示すように前記押圧カム面89および前記受圧カム面90は相互に当接もしくは近接対向している。
【0056】
このような連動駆動機構88では、シャッター板29が開き位置にある状態で前記操作部材41を押圧操作するのに応じて、図10で示すように、前記押圧カム面89からの押圧力が前記受圧カム面50に作用して前記シャッター板29が閉じ位置側に回動駆動されることになる。
【0057】
ところで前記シャッター板29が前記開き位置から前記閉じ位置に回動する際に、前記シャッター板29の前記突部29cは、規制位置側に向けて第3ばね57で付勢された前記規制部材56の規制突部56dを乗り越えるものであり、その際の乗り越え作動を円滑とするために、前記規制突部56dの前記カバー部材31側に臨む面の前記回動方向32に沿う少なくとも開き位置側の部分には、前記開き位置側に向かうにつれて前記カバー部材31から遠くなるように傾斜した傾斜面91が形成され、前記突部29cの前記カバー部材31とは反対側に臨む面には、前記傾斜面91に対応して前記開き位置側に向かうにつれて前記カバー部材31から遠くなるように傾斜した傾斜面92が形成される。
【0058】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、メカニカルキー挿入孔27へのメカニカルキー14の挿入方向と平行な方向に押圧操作することを可能とした操作部材41が、少なくともシャッター板29を開き位置とした状態、この実施の形態では前記シャッター板29の作動位置にかかわらずでケーシング28におけるカバー部材31の外面から前記操作部材41の一端部を突出させるようにして前記ケーシング28に支承され、前記シャッター板29を前記操作部材41の前記押圧操作に連動させて前記開き位置から前記閉じ位置に駆動する連動駆動機構88が、前記操作部材41および前記シャッター板29間に設けられるので、開き位置に在る前記シャッター板29を閉じ位置側に動かすときには、ケーシング28の外面から一端部を突出させている操作部材41を押し込み操作すればよく、ケーシング28に、従来のような円弧状の開口部を設ける必要がなく、ケーシング28のデザイン上の自由度が増大し、しかも操作部材41の外周およびケーシング28間のシールだけを考慮すればよいので防塵、防水構造上も有利となる。
【0059】
また前記シャッター板29が、前記閉じ位置および前記開き位置間での回動を可能として前記操作部材41に軸支されるので、前記シャッター板29および前記操作部材41をコンパクトに纏めて配置することができる。
【0060】
さらにシャッター板29を閉じ位置に規制する規制状態ならびに前記閉じ位置から開き位置への前記シャッター板29の作動を許容する規制解除状態を切換え可能とした作動規制機構55を、その規制状態から規制解除状態に切換え得る解除機構65の一部が、マグネットキー17によって解錠するマグネット錠66で構成されるので、解除機構65のコンパクト化が可能となる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0062】
たとえば解除機構の一部をシリンダ錠で構成することもでき、また遠隔操作によって作動するアクチュエータを含むように解除機構を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
11・・・シリンダ錠
14・・・メカニカルキー
17・・・マグネットキー
27・・・メカニカルキー挿入孔
28・・・ケーシング
29・・・シャッター板
41・・・操作部材
52・・・第2ばね
55・・・作動規制機構
65・・・解除機構
88・・・連動駆動機構
66・・・マグネット錠
図1
図2
図3
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図7
図8
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図10