(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の対向する基板間に液晶が狭持され、前記基板に略平行な電界によってホモジニアス配向させた液晶を変形させることで表示を制御する横電界方式の液晶表示装置において、
一方の基板に複数の走査線と複数のデータ線とが配置され、
2本の走査線と2本のデータ線とを境界とする画素に分割されており、
各々の前記画素には、前記2本のデータ線のうちの一方のデータ線に近接し、当該一方のデータ線に沿って延在するストリップ状の画素電極が配置され、
前記走査線及び前記データ線を覆うように共通電極が配置されており、
前記画素電極と前記共通電極とは、絶縁膜を介して異なる層に形成されており、
前記一方のデータ線を覆うように形成された前記共通電極は、前記画素電極とオーバーラップする第1オーバーラップ領域を有し、
かつ、前記画素電極は、前記共通電極の第1オーバーラップ領域から画素の内側方向にはみ出す第1はみ出し領域を有し、
前記画素電極の前記第1はみ出し領域のエッジと前記2本のデータ線のうちの他方のデータ線を覆うように形成された共通電極のエッジとは離間しており、前記エッジ間に形成される横電界により液晶を駆動し、
前記画素電極は、前記2本の走査線のうちの少なくとも一方の走査線に近接し、当該一方の走査線に沿って延在するストリップ状部分を有し、
前記共通電極の前記一方の走査線を覆うように形成された部分は、前記画素電極の前記ストリップ状部分とオーバーラップする第2オーバーラップ領域を有し、
前記画素電極の前記ストリップ状部分は、前記第2オーバーラップ領域から画素の内側方向にはみ出す第2はみ出し領域を有し、
前記画素電極の前記第1はみ出し領域と前記共通電極の前記他方のデータ線に沿った部分との間に形成される横電界による液晶の回転方向と、前記画素電極の前記第2はみ出し領域と前記共通電極の前記他方のデータ線に沿った部分との間に形成される横電界による液晶の回転方向とが同一であること
を特徴とする横電界方式の液晶表示装置。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレットPCが急速に普及してきている。これらの端末は、携帯が可能な画面サイズでありながら、かつ多くの情報を高画質で表示することが求められている。そのため、表示装置では、高解像度の特性を有した、IPS(In-plane Switching)方式やFFS(Fringe field Switching)方式と言われる基板に略平行な電界を印加して、液晶分子を基板に略平行な面で回転させる視野角特性に優れた横電界方式の液晶表示装置が用いられている。
【0003】
一般的には、ストリップ状の画素電極と共通電極との間に生成される横電界を適用するIPS方式の方が、平面状の電極の上にストリップ状の電極を配置して形成されるフリンジ電界を用いるFFS方式に比べて、視野角特性に優れているものの、非常に高精細な画素においては、IPS方式では下記のような問題が発生する。
【0004】
図16、
図17に従来のIPS方式の平面図およびA−A’断面図をそれぞれ示す(従来例1)。データ線5から発せられる電界を遮断させるために、このデータ線5を覆うように絶縁膜を介して共通電極1を配置する。これと一定の間隔だけ離れた位置にストリップ状の画素電極2を配置する。1画素のサイズが90μm程度以下の高精細の液晶表示においては、RGB(R;赤画素、G;緑画素、B;青画素)に分けたサブ画素の各々の横方向の長さは30μm程度以下となるため、画素電極は1本のみとして、データ線に沿って延在させることにより、開口率を高くすることができる。
【0005】
従来の一般的なIPS方式の液晶表示装置においては、画素電極とサブ画素の両側に配置されている共通電極との間隔をほぼ均等に取ることが多い。ここで、データ線5の幅を3μm、共通電極1の幅を9μm、画素電極2の幅を3μmとして、1画素のサイズを小さくしていったときの、共通電極と画素電極との間の電極間隔は
図18のようになる。この場合、画素サイズが50μmより小さくなると、電極間隔が3μmより小さくなるため、電極の幅に対して、十分に電極間隔が取れなくなってしまい、光利用効率が著しく低下してしまうという問題がある。
【0006】
一方、特許文献1には、画素電極と共通電極とを画素の両側に1本ずつ形成して、画素電極と共通電極との間隔を一つだけにすることにより、電極間隔を広くする方法が開示されている(従来例2)。
図19は、当該の従来技術を示すものである。
図19(a)は一画素の平面図を示し、(b)は(a)中のB−B’の断面図を示す。当該の従来技術においては、
図19に示すように、データ線106を覆うように形成した凸形状部101の側壁の一方に画素電極105を形成し、他方には共通電極104を形成し、この間に横電界を印加させ、液晶を駆動させる構造である。
【0007】
しかしながら、データ線106の直上を電極で覆うことがないため、データ線106からの電界の漏れを抑制するために、共通電極104と画素電極105を広くとる必要がある。構造上、本発明と同様に1組の画素電極と共通電極との間の横電界で液晶を駆動しているが、上述の理由のために実質的に開口率を広くとることができないという課題がある。また、凸形状部を形成させているため、1画素のサイズが90μm程度以下になると、画素の半分以上は凸形状部が占める事になり、凸形状部が配置されない開口部におけるラビング等による液晶分子の初期配向の付与が困難になり、画質の低下を招くという課題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、IPS方式の横電界液晶表示装置においては、1画素のサイズが小さくなり、特に50μm以下となる場合、共通電極と画素電極との間隔が小さくなるため、光利用効率を著しく低下させてしまうという課題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、画素サイズが小さいIPS方式の横電界液晶表示装置において、高開口率で画質の劣化が生じない視野角特性に優れた高解像度な表示装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本願の第1の発明の液晶表示装置は、一対の対向する基板間に液晶が狭持され、前記基板に略平行な電界によってホモジニアス配向させた液晶を変形させることで表示を制御する横電界方式の液晶表示装置において、一方の基板に複数の走査線と複数のデータ線とが配置され、2本の走査線と2本のデータ線とを境界とする画素に分割されており、各々の前記画素には、前記2本のデータ線のうちの一方のデータ線に近接し、当該一方のデータ線に沿って延在するストリップ状の画素電極が配置され、
前記走査線及び前記データ線を覆うように共通電極が配置されており、前記画素電極と前記共通電極とは、絶縁膜を介して異なる層に形成されており、前記一方のデータ線を覆うように形成された前記共通電極は、前記画素電極とオーバーラップする
第1オーバーラップ領域を有し、かつ、前記画素電極は、前
記共通電極
の第1オーバーラップ領域から画素の内側方向にはみ出す
第1はみ出し領域を有し、前記画素電極の前記
第1はみ出
し領域のエッジと前記2本のデータ線のうちの他方のデータ線を覆うように形成された共通電極のエッジとは離間しており、前記エッジ間に形成される横電界により液晶を駆動
し、前記画素電極は、前記2本の走査線のうちの少なくとも一方の走査線に近接し、当該一方の走査線に沿って延在するストリップ状部分を有し、前記共通電極の前記一方の走査線を覆うように形成された部分は、前記画素電極の前記ストリップ状部分とオーバーラップする第2オーバーラップ領域を有し、前記画素電極の前記ストリップ状部分は、前記第2オーバーラップ領域から画素の内側方向にはみ出す第2はみ出し領域を有し、前記画素電極の前記第1はみ出し領域と前記共通電極の前記他方のデータ線に沿った部分との間に形成される横電界による液晶の回転方向と、前記画素電極の前記第2はみ出し領域と前記共通電極の前記他方のデータ線に沿った部分との間に形成される横電界による液晶の回転方向とが同一であることを特徴とするものである。
【0012】
このようにすることにより、前記画素電極の前記共通電極からはみ出す領域のエッジと、この画素電極が近接しない方のデータ線を覆うように形成した共通電極のエッジとの間の距離を最も大きくすることができる。また、前記画素電極と前記共通電極とがオーバーラップしているため、前記画素電極と対向して横電界を生ずるところの前記共通電極に対して反対の方向には、画素電極と共通電極の隙間が生じない。そのため、この部分で、電圧−透過率特性が異なる領域が発生することがなく、効率よく表示を制御できる。また、共通電極と画素電極とがオーバーラップしていることにより、この部分で蓄積容量を形成することができるため、これ以外の領域で形成する蓄積容量の面積を減ずることができ、さらに高開口率化が図れる。また、データ線からの電界を、データ線上に配置する共通電極だけでなく、これとオーバーラップするように配置する画素電極によってもシールドすることになるので、より電界のシールドが完全となる。
【0013】
前記共通電極と前記画素電極がオーバーラップする領域で、前記画素電極は、前記共通電極から1μm以上外側にはみ出して形成することが好ましい。これにより、前記画素電極と、対向する側にある前記共通電極との間に、有効な横電界を形成することが可能になる。
【0014】
図20に、上述した本発明のIPS方式の液晶表示装置の画素サイズと電極間隔の関係を示す。データ線の幅を3μm、共通電極の幅を9.5μm(画素電極とオーバーラップさせる側でデータ線からの張出し幅を3.5μm、データ線上の幅3μm、画素電極とオーバーラップさせない側でデータ線からの張出し幅を3μm、これらの合計は9.5μm)、画素電極の幅を3μm(共通電極とオーバーラップさせる幅を1.5μm、共通電極からはみ出させる幅を1.5μm)としている。また、従来のように画素電極を画素中央部に配置して、画素電極と共通電極との間隔を2本形成する場合の画素サイズと電極間隔の関係も比較できるよう図示している。
図20が示すように、本発明の構造を適用することで、画素サイズが小さいIPS方式でも横電界を発生させる共通電極と画素電極の間隔が大きくとれ、従来のIPS方式の構造より高開口率である横電界方式液晶表示装置を得ることが可能となる。
また、画素電極と共通電極との間の横電界を形成する領域(コラム)内における液晶の配向が安定し、コラム端における光利用効率を上げることができ、輝度・コントラスト等を向上できるとともに、指押し等の表示画面への圧力等に対しても、表示を安定させることができる。
【0015】
本願の第2の発明は、第1の発明の横電界方式の液晶表示装置において、前記画素電極と前記共通電極とがオーバーラップする領域において、前記共通電極は前記画素電極よりも液晶層に近い側に配置されることを特徴とする。
【0016】
前記共通電極を液晶層に近い側にすることにより、前記画素電極と前記共通電極との間の絶縁膜を、前記共通電極と前記データ線との間の層間絶縁膜の全部もしくは一部で代用することができるため、絶縁膜の形成回数を少なくすることができて、より低コストで形成することができる。
【0017】
本願の第3の発明は、第2の発明の横電界方式の液晶表示装置において、前記画素電極と前記データ線とは、共通の絶縁膜上に形成されていることを特徴とする。
【0018】
このようにすることにより、前記共通電極と前記データ線との間の層間絶縁膜を、前記共通電極と前記画素電極との間の層間絶縁膜と共通にすることができるため、絶縁膜の形成回数を最も少なくすることができる。
【0019】
本願の第4の発明は、第2の発明の横電界方式の液晶表示装置において、前記画素電極と前記データ線との間には、絶縁膜が形成されていることを特徴とする。
【0020】
このように第2の発明において、前記画素電極と前記データ線との間に絶縁膜が形成されることにより、画素電極もしくはデータ線のパタン崩れに伴う相互の電極間の短絡を防止することができる。
【0021】
本願の第5の発明は、第1の発明の横電界方式の液晶表示装置において、前記画素電極と前記共通電極とがオーバーラップする領域において、前記画素電極は前記共通電極よりも液晶層に近い側に配置されることを特徴とする。
【0022】
このように前記画素電極を前記液晶層に近い側に配置することにより、前記画素電極と離間して対向する前記共通電極との間の電界が液晶層にかかりやすくなる。このため、画素電極に印加する電圧を低減することができる利点がある。
【0023】
本願の第6の発明は、第2の発明ないし第4の発明の横電界方式の液晶表示装置において、前記画素電極
の第1はみ出し領域が前記共通電極
の第1オーバーラップ領域から画素の内側方向にはみ出
す幅をaとし、前記画素電極の前記
第1はみ出
し領域のエッジと、前記2本のデータ線のうちの他方のデータ線を覆うように形成された共通電極のエッジとは離間しており、前記エッジ間の距離をbとした場合、aとbの関係が、b/a≦3を満たすことを特徴とする。
【0024】
この関係を満たすことにより、液晶分子には効率よく横電界がかかり、より高い透過率が得られる。
【0025】
本願の第7の発明は、第5の発明の横電界方式の液晶表示装置において、前記一方の基板と対向する基板側に前記走査線方向および前記データ線方向に沿って格子状にブラックマトリクスが配置され、当該画素と前記画素電極に最も近接する画素の境界に前記データ線方
向に沿って配置されるブラックマトリクスの前記画素電極と遠い側のエッジと、前記共通電極とオーバーラップする領域の前記画素電極のエッジとの距離をcとした場合、c≧6μmを満たすことを特徴とする。
【0026】
この関係を満たすことにより、当該画素内で発生した電界が隣接画素の開口部まで浸入することはないため、表示画質を劣化させることなく、液晶分子には効率よく横電界がかかり、より透過率の向上を達成することが可能となる。
【0027】
本願の第8の発明は、第1の発明ないし第7の発明の横電界方式の液晶表示装置において、前記データ線と前記共通電極と前記画素電極とは、液晶の初期配向に関して対称な向きに屈曲していることを特徴とする。
【0028】
このようにすることにより、前記画素電極と前記共通電極との間に電圧を印加した際の液晶の回転方向を2方向とすることができるため、視野角をさらに改善することが可能となる。
【0031】
本願の第
9の発明は、第1の発明ないし第
8の発明の横電界方式の液晶表示装置において、前記画素電極が画素右側の共通電極とオーバーラップしている第1画素と、前記画素電極が画素左側の共通電極とオーバーラップしている第2画素と、を有していることを特徴とする。
【0032】
別途実施例において詳述するように、第1の発明ないし第
8の発明の画素構造では、一画素の左右の視野角特性が非対称となる。第
9の発明のように、2種類の画素を表示装置面に配置することにより、お互いに左右の視野角特性を補償することができるため、さらに視野角を改善することができる。
【0033】
本願の第
10の発明は、第
9の発明の横電界方式の液晶表示装置において、前記第1画素と前記第2画素との組合せに関して、画素のRGBを構成するサブ画素の組を1セットとするとき、1セット内では、同じ側の共通電極と前記画素電極とがオーバーラップしていることを特徴とする。
【0034】
このようにRGBを構成するサブ画素で同じ側の共通電極と画素電極とがオーバーラップしている画素を配置することにより、サブ画素内のRGBごとで左右の視野角特性が異なることにより、斜め視野から色つきが生じるといった不具合を引き起こすことがなくなる。
【発明の効果】
【0035】
本願発明により、高精細かつ高画質で高開口率を有するIPS方式の液晶表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る液晶表示装置の1画素の構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係る液晶表示装置の平面図を示す
図1におけるA-A’の断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施例に係る液晶表示装置の1画素の構成を示す平面図である。
【
図4】本発明の第3の実施例に係る液晶表示装置の1画素の構成を示す平面図である。
【
図5】本発明の第4の実施例に係る液晶表示装置の1画素の構成を示す平面図である。
【
図6】本発明の第4の実施例に係る液晶表示装置の平面図を示す
図5におけるA-A’の断面図である。
【
図7】本発明の第5の実施例に係る液晶表示装置の1画素の構成を示す平面図である。
【
図8】本発明の第5の実施例に係る液晶表示装置の平面図を示す
図7におけるA-A’の断面図である。
【
図9】本発明の第6の実施例に係る液晶表示装置の画素I、画素IIの二種類の画素の構成を示す平面図である。
【
図10】本発明の第6の実施例に係る液晶表示装置の平面図を示す
図9における画素IのA−A’部の断面図と、
図9における画素IIのB−B’部の断面図である。
【
図11】実施例1ないし5における画素の斜め電界を示した断面図である。
【
図12】実施例6における画素I、画素IIの斜め電界を示した断面図である。
【
図13】本発明の第7の実施例に係る液晶表示装置の表示画面の構成を示す平面図である。
【
図14】本発明の第8の実施例に係る液晶表示装置の表示画面の構成を示す平面図である。
【
図15】本発明の第9の実施例に係る液晶表示装置の表示画面の構成を示す平面図である。
【
図16】従来のIPS方式の液晶表示装置の平面図である。
【
図18】従来のIPS方式の液晶表示装置の画素サイズと電極間隔の関係を示すグラフである。
【
図19】関連技術における液晶表示装置を説明する図であり、(a)は平面図で、(b)は(a)中のB−B’部の断面図である。
【
図20】従来のIPS方式の液晶表示装置の画素サイズと電極間隔の関係、および、本発明のIPS方式の液晶表示装置の画素サイズと電極間隔の関係を示すグラフである。
【
図21】本発明の第1の実施例に係る液晶表示装置の1画素の構成を示す図であり、液晶分子を逆回転させる横方向電界と、それによるディスクリネーションの発生領域を示す平面図である。
【
図22】本発明の第10の実施例に係る液晶表示装置のデータ線方向から見た1サブ画素の断面図である。
【
図23】本発明の第10の実施例に係る、画素電極の共通電極からの張り出し幅aと、電極間隔bの関係を示すグラフである。
【
図24】本発明の第10の実施例に係る、画素電極の共通電極からの張り出し幅aと、最大透過率となる電圧の関係を示すグラフである。
【
図25】本発明の第10の実施例に係る、画素電極の共通電極からの張り出し幅aと、最大透過率の関係を示すグラフである。
【
図26】本発明の第11の実施例に係る液晶表示装置のデータ線方向から見た1サブ画素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
背景技術で示したように、従来の一般的なIPS方式の液晶表示装置では、画素電極とサブ画素の両側に配置される共通電極との間隔をほぼ均等に取ることが多いが、画素サイズが小さくなると、電極の幅に対して十分に電極間隔が取れなくなってしまい、光利用効率が著しく低下してしまう。この問題に対して、特許文献1には、画素電極と共通電極とを画素の両側に1本ずつ形成して電極間隔を広くする構造が開示されているが、この構造では、データ線の直上を電極で覆うことがないため、データ線からの電界の漏れを抑制するために共通電極と画素電極の間隔を広くする必要があり、実質的に開口率を広くとることができない。また、この構造では凸形状部を形成するため、凸形状部が配置されない開口部におけるラビング等による液晶分子の初期配向の付与が困難になり、画質の低下を招いてしまう。
【0038】
そこで、本発明の一実施の形態では、IPS方式の液晶表示装置における、2本の走査線と2本のデータ線を境界とする各画素において、2本のデータ線のうちの一方のデータ線に近接し、この一方のデータ線に沿って延在するストリップ状の画素電極を配置し、データ線を覆う共通電極を画素電極とは異なる層に形成し、一方のデータ線を覆うように形成された共通電極に、前記画素電極とオーバーラップする領域を設け、画素電極に、上記オーバーラップする共通電極から画素の内側方向にはみ出す領域を設け、画素電極のはみ出す領域のエッジと他方のデータ線を覆う共通電極のエッジとを離間させ、このエッジ間に形成した横電界により液晶を駆動する構成とする。
【実施例1】
【0039】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の実施例1に係る横電界方式の液晶表示装置について、
図1、
図2を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る液晶表示装置の1画素の構成を示す平面図である。
図2は、
図1に示すA−A’部の断面図であり、液晶層と対向基板も図示している。
図1、
図2に示す実施例1を、以下詳細に説明する。
【0040】
まず、実施例1の液晶表示装置の製造方法の一例について、
図1及び
図2を参照して説明する。なお、以下の説明における各層の材料、厚み、順序等は一例であり、適宜変更可能である。
【0041】
TFT(Thin Film Transistor)側基板は、第一の透明絶縁性基板11としてのガラス基板上に、モリブデン合金からなる第一金属層をスパッタにより、300nmの厚さで形成させ、走査線6のパタンに加工する。
【0042】
次に、ゲート絶縁膜12として、酸化シリコンを100nm堆積させた後、PCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法により、窒化シリコンを300nm、i-a-Si(intrinsic amorphous Silicon)を170nm、n-a-Si(n-type amorphous Silicon)を30nm、それぞれ連続的に堆積させる。i-a-Siとn-a-Siとの積層膜は、薄膜半導体層4となる部分を残して、エッチング除去する。
【0043】
次に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜により、画素電極2を走査線6の延在方向に直交する方向に、また画素内の開口部となる領域の片側に寄せてストリップ状に40nmの厚さで形成する。
【0044】
次に、第二金属層として、モリブデン合金の膜を300nm形成させ、データ線5、ソース電極3のパタンに加工する。データ線5は、画素電極2と重ならないように、かつ平行に配置される。また、ソース電極3は、画素電極2と一部重なる領域を持ち、電気的に導通されるように配置される。なお、TFTは、走査線6の一部、ゲート絶縁膜12、薄膜半導体層4、データ線5の一部、およびソース電極3から構成される。前記画素電極2は、前記データ線5の一方と近接して、これに沿って延在させている。前記画素電極2と前記データ線5との間隔は2μmとした。
【0045】
次に、第二金属層をマスクとして、TFTの薄膜半導体層4の不要なn-a-Si層をエッチングによって除去する。
【0046】
次に、パッシベーション膜13として、窒化シリコンを500nm堆積させる。
【0047】
次に、表示画面周辺に引き出された走査線6およびデータ線5の端子部で金属層を露出させるために、ゲート絶縁膜12、およびパッシベーション膜13の所定部分をエッチング除去する。
【0048】
次に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜により、共通電極1を、走査線6およびデータ線5を覆い、かつ、画素電極2の一部を覆うように厚さ80nmで形成する。共通電極1は、表示画面周辺に第一の金属層および、または第二の金属層によって形成された共通電極配線とコンタクトホールを介して導通されるが、図による詳細は省略している。また、共通電極1は、TFTのチャネル部の直上は形成させないようにパタン加工してもよい。
【0049】
データ線5に沿って延在させた画素電極2と、データ線5を覆うように形成した共通電極1とはオーバーラップした領域を有し、前記画素電極2は、画素の内側方向にはみ出した領域を有する。オーバーラップさせる領域の幅は1.5μmとし、画素電極2は画素の内側に向けて1.5μmはみ出させるようにしてある。
【0050】
上述のようにして形成したTFT側基板に、配向膜14を塗布、焼成する。一方、対向基板には、ブラックマトリクス18、カラーフィルタとなる色層17、オーバーコート16、および、TFT側基板と対向基板との間に空間を確保させるための柱状スペーサ(図中には示していない)を形成し、更にその上に配向膜15を塗布、焼成する。
【0051】
そして、両基板の配向膜14、15に対し、走査線6の延在方向に垂直な方向に対して15°傾けた方向にラビング処理を施し、液晶配向方位7をとり、両基板を貼り合せて、周辺をシールで固めて、中に液晶9を注入し、封孔する。液晶セルギャップは3.0μmになるようにし、屈折率異方性Δn=0.10、誘電率異方性Δε=10の液晶9を用いる。液晶9の注入に際しては、十分に液晶9がセル内に入るように、注入時間を十分とって実施する。また、液晶セル内が所定の圧力となるように、加圧を行いながら、封孔を実施する。
【0052】
上述のようにして作製した液晶表示パネルのTFT側基板に、偏光軸が液晶9のラビング方向となる液晶配向方位7に一致する入射側偏光板10を貼り付け、対向基板には、クロスニコルとなるように出射側偏光板20を貼り付ける。更に、周辺に必要な駆動ドライバを実装し、バックライト及び信号処理基板をしかるべき形に組み立てて、アクティブマトリクス型液晶表示装置を作製する。
【0053】
本実施例1では、液晶表示装置はIPS(In-Plane Switching)モードであり、ラビング方向にホモジニアス配向させた液晶を、データ線5に近接してこれに沿って延在させた画素電極2のエッジと、当該画素電極に近接しない方のデータ線5を覆うように配置した共通電極1のエッジとの間に形成される基板に略平行な横方向電界8により、面内にツイスト変形させることで、画素ごとの透過光量を制御する。以下、上述のように、横電界を発生させる画素電極2と共通電極1との間隔をコラムと称することとする。
【0054】
また、本実施例1では、解像度が横1024×RGB、縦768のXGA(Extended Graphics Array)を適用した。画素サイズを42μmとし、データ線幅3μm、データ線上の共通電極幅9.5μm、画素電極とオーバーラップしない側の共通電極のデータ線からの張出し幅3μm、画素電極とオーバーラップする側の共通電極のデータ線からの張出し幅3.5μm、画素電極幅3μm、共通電極と画素電極がオーバーラップする幅1.5μm、画素電極が共通電極からはみ出す幅1.5μmとした。この場合、画素電極と共通電極の間隔は3μmとなる。同様の画素サイズで、従来のIPS構造の場合、共通電極のデータ線からの張出し幅を3μmとすると、画素電極と共通電極の間隔は1μmとなり、トータルでも2μmのため、本発明の構造は従来のIPS構造から50%の開口率を増加させることが可能となる。
【0055】
こられの条件をもとに、本発明構造と従来IPS構造について、画素サイズ33μmから90μmの間における電極間隔との関係のグラフを
図20に示す。このグラフからもわかるように、本発明構造(図の白抜き丸)は従来IPS構造(図の黒塗り三角)に対して、同じ画素サイズに対して電極間隔を広く取れ、高開口化が可能となる。
【0056】
なお、上述してきたこれらの設定値は、本実施例1で適用している設定値であり、特に限定されるものではなく、適宜設定されるべき値である。ただし、前記共通電極と前記画素電極がオーバーラップする領域で、前記画素電極は、前記共通電極から1μm以上外側にはみ出して形成することが望ましい。これにより、前記画素電極と、対向する側にある前記共通電極との間に、有効な横電界を形成することが可能になる。
【0057】
また、本実施例1では、金属層にモリブデン合金を使用しているが、特にこれに限定されず、アルミニウム合金なども用いてよい。また、本実施例1では、薄膜半導体層4を形成後に、透明導電膜による画素電極2の形成、ソース電極3およびデータ線5の形成、薄膜半導体層4の不要なn-a-Si層のエッチング除去の工程順で作製したが、これに限定されず、例えば、薄膜半導体層4を形成後に、ソース電極3およびデータ線5の形成、薄膜半導体層4の不要なn-a-Si層のエッチング除去、透明導電膜による画素電極2の形成の工程順で作製してもよい。画素電極2及び共通電極1をITO等の透明導電膜で形成することにより、液晶表示パネルの透過率を向上することができる。
【0058】
以上説明したように、上述の構造を適用することにより、小さい画素サイズにおいても広く電極間隔をとることができ、開口率を大きくすることができる。また、前記画素電極と前記共通電極とがオーバーラップしているため、前記画素電極と対向して横電界を生ずるところの前記共通電極に対して反対の方向には、画素電極と共通電極の隙間が生じない。よって、この部分で、電圧−透過率特性が異なる領域が発生することがないため、効率よく表示を制御できる。
【0059】
また、共通電極と画素電極とがオーバーラップしていることにより、この部分で蓄積容量を形成することができるため、これ以外の領域で形成する蓄積容量の面積を減ずることができ、さらに高開口率化が図れる。さらに、データ線からの電界を、データ線上に配置する共通電極だけでなく、これとオーバーラップするように配置する画素電極によってもシールドすることになるので、より電界のシールドが完全となる。
【0060】
また、前記共通電極を液晶層に近い側にすることにより、前記画素電極と前記共通電極との間の絶縁膜を、前記共通電極と前記データ線との間の層間絶縁膜の全部もしくは一部で代用することができるため、絶縁膜の形成回数が少なくすることができて、より低コストで形成することができる。さらに、前記共通電極と前記データ線との間の層間絶縁膜を、前記共通電極と前記画素電極との間の層間絶縁膜と共通にすることができるため、絶縁膜の形成回数を最も少なくすることができる。
【実施例2】
【0061】
次に、本発明の実施例2に係る横電界方式の液晶表示装置について、
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の実施例2に係る液晶表示装置の1画素の構成を示す平面図である。
図3に示す実施例2を、以下詳細に説明する。
【0062】
実施例1では、
図21に示すように、液晶配向方位7を図のようにとった場合、画素電極2と共通電極1との間のコラムの端において発生する横方向電界25によって生じる液晶の回転方向は、画素電極2と共通電極1が平行に延在している領域で発生する横方向電界8によって生じる液晶の回転方向とは逆方向になる。このため、
図21に示すようなディスクリネーション発生領域26が画素内に生じて、透過率およびコントラストを低下させてしまい、また表示画面に指押しなどの外圧が加わったときの痕が残るムラが生じ、画質を著しく劣化させる要因となる。
【0063】
これに対して、実施例2では、液晶配向方位7を
図3のようにとった場合、画素電極2を画素内の開口領域上部にも配置させ、共通電極1からはみ出させる。これにより、共通電極1と画素電極2が近接している領域で発生する横方向電界21は、液晶を逆方向に回転させる方向には発生しないため、ディスクリネーションの発生がなくなる。したがって、コラム端において、光利用効率を上げることができ、輝度・コントラスト等を向上できるとともに、指押し等の表示画面への圧力等に対しても、表示を安定させることができる。
【実施例3】
【0064】
本発明の実施例3に係る横電界方式の液晶表示装置について、
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の実施例3に係る液晶表示装置の1画素の構成を示す平面図である。
図4に示す実施例3を、以下詳細に説明する。
【0065】
実施例1では、液晶に電界を印加し液晶を回転させた状態で表示画面の垂直な方向から視野角を傾ける際、液晶分子の短軸方向に視野角を傾ける場合と、液晶分子の長軸方向に視野角を傾ける場合とで、リターデーション(Δn×液晶セルギャップ)が異なる。短軸方向に視野角を傾ける場合は、液晶の見かけの屈折率異方性は変化せず、また、液晶セルを透過する光路長は大きくなるため、リターデーションは大きくなり、見た目、黄色づく。一方、長軸方向に視野角を傾ける場合には、液晶の見かけの屈折率異方性が小さくなるため、光路長は長くなるものの、リターデーションは小さくなり、見た目、青色づく。このため、視野を振る方向によって、色味が変化する。
【0066】
これに対し、実施例3では、データ線5、およびこれを覆う共通電極1、および、これに沿って配置させるストリップ状の画素電極2を液晶9の液晶配向方位7に関して対称な向きに屈曲させる。これにより、画素の屈曲させたところを境に、液晶の回転する方向が反対となり、液晶配向方位7に対して対称になる領域が生じ、この、両領域の液晶により、斜め視野からの長軸方向と短軸方向が補償し色つきを抑制することが可能となる。
【0067】
また、
図4のように、画素の上半分では、図で反時計回り方向に液晶が回転し、画素の下半分では、図で時計回りに液晶が回転する。これに伴い、それぞれの領域の液晶の回転方向に合わせた向きに液晶が回転するように、コラム端での横方向電界21の向きを規定すべく、電極を配置してある。これにより、ディスクリネーションの発生を抑制することが可能となり、光利用効率を上げることができ、輝度・コントラスト等を向上できるとともに、指押し等の表示画面への圧力等に対しても、表示を安定させることができる。
【実施例4】
【0068】
本発明の実施例4に係る横電界方式の液晶表示装置について、
図5、
図6を用いて説明する。
図5は、本発明の実施例4に係る液晶表示装置の1画素の構成を示す平面図である。
図6は、
図5に示すA−A’部の断面図であり、液晶層、対向基板も図示している。
図5、
図6に示す実施例4を、以下詳細に説明する。
【0069】
実施例1では、画素電極2とソース電極3、データ線5は、共にゲート絶縁膜12上に形成される。開口率を大きくするためには、データ線5と画素電極2の距離は極力小さくする必要がある。一方、距離を小さくすると短絡する可能性があり、データ線5と画素電極2が短絡した場合、その画素は常に意図しない駆動を起こし、表示画質を低下させることになる。
【0070】
これに対し、実施例4では、画素電極2は、共通電極1より下側に配置し、また、ソース電極3およびデータ線5とは透明絶縁膜23を挟むようにして形成する。さらに、画素電極2とソース電極3を電気的に導通させるため、パッシベーション膜13にコンタクトホール22を設ける。これにより、画素電極2とデータ線5の距離を小さくて開口率を大きくすると共に、短絡による表示画質の低下を抑制させることが可能となる。
【0071】
製造方法としては、実施例1で示した薄膜半導体層4を形成させる工程までは同じであり、次に、ソース電極3およびデータ線5を、モリブデン合金を用い300nm形成させ、薄膜半導体層4の不要なn-a-Si層のエッチングを行った後に、パッシベーション膜13として窒化シリコンを300nm堆積させる。次に、コンタクトホール22を配置させ、透明導電膜による画素電極2を配置させる。次に、透明絶縁膜23として窒化シリコンを300nm堆積させる。
【0072】
次に、表示画面周辺に引き出された走査線6およびデータ線5の端子部で金属層を露出させるために、ゲート絶縁膜12、およびパッシベーション膜13の所定部分をエッチング除去する。
【0073】
次に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜により、共通電極1を走査線6、およびデータ線5を覆うように、かつ、画素電極の一部を覆うように厚さ80nm形成させ、パタン加工する。共通電極1は、表示画面周辺に第一の金属層および、または第二の金属層によって形成された共通電極配線とコンタクトホールを介して導通されるが、図による詳細は省略している。
【実施例5】
【0074】
本発明の実施例5に係る横電界方式の液晶表示装置について、
図7、
図8を用いて説明する。
図7は、本発明の実施例5に係る液晶表示装置の1画素の構成を示す平面図である。
図8は、
図7に示すA−A’部の断面図であり、液晶層、対向基板も図示している。
図7、
図8に示す実施例5を、以下詳細に説明する。
【0075】
実施例1での画素電極2とデータ線5の短絡を抑制させるため、実施例5では、画素電極2は、共通電極1より上側に配置し、また、共通電極1上には、透明絶縁膜23を形成する。さらに、パッシベーション膜13および透明絶縁膜23にコンタクトホール22を設け、画素電極2とソース電極3との導通をとる。これにより、画素電極2とデータ線5の距離を小さくして開口率を大きくすると共に、短絡による表示画質の低下を抑制させることが可能となる。
【0076】
また、画素電極2を共通電極1より上側に配置することにより、画素電極2とこれと離間して液晶層に横電界を印加する共通電極1との間の電界を液晶9に印加しやすくなるため、画素電極2と共通電極1との間の電圧を小さくすることができる。さらに、画素電極2を、これとオーバーラップする共通電極1からはみ出させる量も小さくすることができる。本実施例においては、0.5μmとした。その他、電極の幅等は、実施例1に順ずるようにした。
【0077】
製造方法としては、実施例4のパッシベーション膜13として窒化シリコンを堆積させる工程までは同じであり、次に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜により、共通電極1を走査線6、およびデータ線5を覆うように、厚さ80nm形成させ、パタン加工する。
【0078】
次に、透明絶縁膜23を窒化シリコン膜300nmで形成し、その後、パッシベーション膜13および透明絶縁膜23にコンタクトホール22をソース電極3上に形成させ、同時に、表示画面周辺に引き出された走査線6およびデータ線5の端子部で金属層を露出させるために、ゲート絶縁膜12、パッシベーション膜13および透明絶縁膜23の所定部分をエッチング除去する。
【0079】
次に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜により、画素電極2を走査線6の延在方向に直交する方向に、また画素内の開口部となる領域の片側に寄せて、かつ共通電極1の一部を覆うようにストリップ状に300nmの厚さで形成する。なお、共通電極1は、表示画面周辺に第一の金属層および、または第二の金属層によって形成された共通電極配線とコンタクトホール、および、上層の透明導電膜を介して導通させているが、図による詳細は省略している。
【実施例6】
【0080】
本発明の実施例6に係る横電界方式の液晶表示装置について、
図9、
図10を用いて説明する。
図9は、本発明の実施例6に係る液晶表示装置の画素I、画素IIの二種類の画素の構成を示す平面図である。
図10は、
図9に示す画素IのA−A’部の断面図と、
図9に示す画素IIのB−B’部の断面図であり、ともに液晶層、対向基板も図示している。
図9、
図10に示す実施例6を以下詳細に説明する。
【0081】
実施例1ないし実施例5では、画素電極2を画素の片側に寄せている。したがって、表示面内のすべての画素において、共通電極1と画素電極2の位置関係は同じである。そのため、
図11に示す断面図のように、共通電極1と画素電極2がオーバーラップした領域での斜め電界24により、液晶の立ち上がる方向が画素内の左右で非対称となる。この非対称な液晶の立ち上がりによる視野角特性の劣化を招くことになる。
【0082】
この視野角特性を改善させるために、実施例6では、
図9のように画素電極2を画素の左側に寄せる画素Iと、画素電極2を画素の右側に寄せる画素IIの二種類の画素を設ける。以上により、
図12に示すように、画素I、画素IIで共通電極1と画素電極2とがオーバーラップした領域での斜め電界24による液晶の立ち上がり方向が反対となるために、両画素の視野角特性が補償されて、良好な視野角特性が得られる。
【0083】
また、これらの二種類の画素は、それぞれコラムの端においてディスクリネーションが発生しないよう各電極が配置されている。液晶配向方位7を
図9のようにとった場合、画素Iでは、画素下部で共通電極1から画素電極2をはみ出させ、画素IIでは、画素上部で共通電極1から画素電極2をはみ出させるようにする。これによりディスクリネーションの発生を抑制することができる。
【0084】
また、画素I、画素IIそれぞれにおいて、共通電極1と画素電極2が重なる領域で形成される蓄積容量および画素電極2と走査線6が重なる領域で形成される蓄積容量の和がほぼ同じとなるように各電極および配線のパタンを配置させている。さらに、画素内の開口領域がほぼ同じになるように各電極を配置させることにより、画素I、画素IIの開口率をほぼ同じにさせている。
【実施例7】
【0085】
本発明の実施例7に係る横電界方式の液晶表示装置について、
図13を用いて説明する。
図13は、本発明の実施例7に係る液晶表示装置の画素I、画素IIの二種類の画素の構成を示す平面図である。
図13に示す実施例7を以下詳細に説明する。
【0086】
実施例6では、液晶に電界を印加し液晶を回転させた状態で表示画面の垂直な方向から視野角を傾ける際、液晶分子の短軸方向に視野角を傾ける場合と、液晶分子の長軸方向に視野角を傾ける場合とで、リターデーションが異なる。このため、視野を振る方向によって、色味が変化する。
【0087】
そこで、実施例7では、データ線5、およびこれを覆う共通電極1、および、これに沿って配置させるストリップ状の画素電極2を液晶9の液晶配向方位7に関して対称な向きに屈曲させる。これにより、画素の屈曲させたところを境に、液晶の回転する方向が液晶配向方位7に対して対称になる領域が生じ、この、両領域の液晶により、斜め視野からの長軸方向と短軸方向が補償し色つきを抑制することが可能となる。
【0088】
また、これらの二種類の画素は、それぞれディスクリネーションが発生しないように、また、透過率や蓄積容量がほぼ同じになるように、各電極パタンが加工されている。画素Iでは、画素上下で共通電極1から画素電極2をはみ出させ、画素IIでは、画素上下で共通電極1から画素電極2をはみ出させないようにする。これによりディスクリネーションの発生を抑制する。また、画素I、画素IIそれぞれにおいて、共通電極1と画素電極2が重なる領域で形成される蓄積容量および画素電極2と走査線6が重なる領域で形成される蓄積容量の和がほぼ同じとなるように各電極および配線のパタンを配置させている。さらに、画素内の開口領域がほぼ同じになるように各電極を配置させることにより、画素I、画素IIの開口率をほぼ同じにさせている。
【実施例8】
【0089】
本発明の実施例8に係る横電界方式の液晶表示装置について、
図14を用いて説明する。
図14は、本発明の実施例8に係る液晶表示装置の表示画面を示す平面図である。
図14に示す『L』は、
図9、または、
図13に示す画素Iの構造をもった青、緑、赤の3色のサブ画素を一単位とした画素を示し、また、
図14に示す『R』は、
図9、または、
図13に示す画素IIの構造をもった青、緑、赤の3色のサブ画素を一単位とした画素を示す。
【0090】
これらの『L』の画素と『R』の画素を、隣接する上下左右のどこにおいても交互に配置させることで、バランスよく良好な視野角特性が得られる。このように青、緑、赤の3色のサブ画素で同じ方向の共通電極と画素電極とがオーバーラップしている画素を配置することで、サブ画素内のRGBごとで左右の視野角特性が異なることにより、斜め視野から色つきが生じるといった不具合を引き起こすことがなくなる。
【実施例9】
【0091】
本発明の実施例9に係る横電界方式の液晶表示装置について、
図15を用いて説明する。
図15は、本発明の実施例9に係る液晶表示装置の表示画面を示す平面図である。
図15に示す『L』は、
図9、または、
図13に示す画素Iの構造をもった青、緑、赤の3色のサブ画素を一単位とした画素を示し、また、
図15に示す『R』は、
図9、または、
図13に示す画素IIの構造をもった青、緑、赤の3色のサブ画素を一単位とした画素を示す。さらに、
図15に示す『I』および『II』は、
図9、または、
図13に示す『画素I』および『画素II』を示す。
【0092】
図15には、実施例8で示した、画素I、画素IIの配置パタン以外のものを4つ示している。なお、画素IIの配置パタンはこれらに限定されることはなく、適宜変更可能である。
【実施例10】
【0093】
本発明の実施例10に係る横電界方式の液晶表示装置について、
図22を用いて説明する。
図22は、本発明の実施例10に係る液晶表示装置のデータ線方向から見た1サブ画素の断面図である。ただし、便宜上、対向基板側および液晶層は省略している。
図22に示す実施例10を、以下詳細に説明する。
【0094】
実施例10は、実施例1と同様な構造を有し、また製造方法も実施例1と同じである。
図22に示すように、画素電極2はオーバーラップする共通電極1から画素の内側方向にはみ出す領域を有し、このはみ出す領域の幅をa、横電界を発生させる画素電極2と他方の共通電極1との間隔をbとする。
【0095】
実施例1においては、サブ画素サイズ42μm×14μm、データ線5の幅を3μm、データ線5をシールドする共通電極1の画素電極2とオーバーラップする方向の張り出し幅を3.5μm、反対側の張り出し幅を3μm、画素電極2の幅を3μmのもとで、a=1.5μm、b=3μmとしていた。
【0096】
実施例10においては、サブ画素サイズを51μm×17μmとして、データ線5の幅を3μm、データ線5をシールドする共通電極1の画素電極2とオーバーラップする方向の張り出し幅を3.5μm、反対側の張り出し幅を3μmとした。このとき、a+b=7.5μmとなり
図23のグラフに示す関係となる。この関係をもとに、シミュレーションを実施したところ、最大透過率となる電圧と、画素電極2の共通電極1からの張り出し幅aの関係は、
図24に示す結果となった。画素電極2の共通電極1からの張り出し幅aを1.5μmとすると、
図24のグラフに示すように透過率を最大とする駆動電圧が7V以上となり、ドライバーICなどの駆動装置のコストが上昇してしまう等の問題が生じる。
【0097】
そこで実施例10では、a=3μm、b=4.5μmとした。このようにすることにより、電圧が5V程度となり、適切な駆動が行えるようになった。また、a+b=7.5μmの関係をもとにしたシミュレーション結果から、最大透過率と、画素電極2の共通電極1からの張り出し幅aの関係は、
図25に示す結果となり、透過率も上昇した。これは、画素電極2と共通電極1がオーバーラップする領域で形成されるフリンジ電界と、画素電極2のエッジと反対側の共通電極1の間隔で発生する横電界とのバランスで、前者に比べて、後者が十分強くないと、フリンジ電界の影響による液晶の立上りが強くなりすぎ、駆動電圧が上昇すると同時に透過率の低下が生じてしまう。検討の結果、b/aの値が3以下、望ましくは2以下となることにより、これらのバランスが取れて、電圧上昇を抑え、透過率が高く維持できることが判明した。また、本実施例は、
図1の他、
図3、
図4、
図5、
図9、
図13、
図14、
図15に示す平面図の態様で適用することも可能である。
【実施例11】
【0098】
本発明の実施例11に係る横電界方式の液晶表示装置について、
図26を用いて説明する。
図26は、本発明の実施例11に係る液晶表示装置のデータ線方向から見た1サブ画素の断面図である。
図26に示す実施例11を、以下詳細に説明する。
【0099】
実施例11は実施例5と同様な構造を有し、また製造方法も実施例5と同じである。実施例5では、サブ画素サイズ42μm×14μm、データ線5の幅を3μm、データ線5をシールドする共通電極1の画素電極2とオーバーラップする方向への張り出し幅を3.5μm、反対方向への張り出し幅を3μm、画素電極2の共通電極1からの張り出しaを0.5μm、画素電極2の幅を3μmとしていた。
【0100】
図26に示すように、共通電極1とオーバーラップする領域の画素電極2のエッジから隣接画素のブラックマトリクス18のエッジまでの距離をcとする。cがある程度以上小さい場合、共通電極1上に配置された画素電極2との間に発生した電界がデータ線5を挟んで隣接する画素の開口部まで浸入し、意図しない画素の液晶分子を駆動させることになり、表示画質は劣化することになる。
【0101】
検討の結果、画素電極2のエッジから、隣接画素のブラックマトリクス18のエッジまでの距離cは6μm以上あることにより、良好な表示を得ることができることがわかった。実施例5の場合においては、ブラックマトリクス18の幅をデータ線に対称に7μmとすることにより、上述の問題を避けることができる。下記の表に、検討したcの値と表示画質の関係をまとめる。
【0102】
実施例11では、サブ画素サイズ42μm×14μm、データ線5の幅を2μm、データ線5をシールドする共通電極1の画素電極2とオーバーラップする方向への張り出し幅を3.5μm、反対方向への張り出し幅を2μm、画素電極2の共通電極1からの張り出しaを1.5μm、画素電極2の幅を2μmとした。また、データ線5に対向する部分でのブラックマトリクス18の幅は6μmとした。このようにすることにより、隣接画素のブラックマトリクス18までの距離cが7μmとなり、画素電極2と共通電極1のオーバーラップ部で生成されるフリンジ電界が隣接画素の透過部分まで侵入してくることがなくなるため、良好な表示を得ることができる。また、本実施例は、
図7の他、
図3、
図4、
図5、
図9、
図13、
図14、
図15に示す平面図の態様で適用することも可能である。
【0103】
以上、上記各実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施例の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。