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前記ブレードピッチ制御手段は、前記浮体運動検出手段の前記検出結果に基づいて前記ブレードピッチ制御手段の制御目標値を設定する目標設定部を有したことを特徴とする請求項1から請求項5のうちの1項に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置。
前記ブレードピッチ制御手段は、前記浮体運動検出手段の前記検出結果に基づいて前記ブレードピッチ制御手段の制御ゲインを調節する制御ゲイン調節部を有したことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置。
風の弱い前記弱風領域において、前記ブレードピッチ制御手段が前記浮体運動検出手段の前記検出結果に基づき前記ローターの前記ブレードピッチを制御し、前記弱風領域において、前記発電機出力制御手段が前記ローターの回転状態に基づいて前記発電機の出力を制御したことを特徴とする請求項4、又は請求項4を引用する請求項5から請求項7のうちの1項に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置。
前記ブレードピッチ制御手段は、前記浮体運動検出手段の前記検出結果に基づいて前記ブレードピッチ制御手段の制御目標値を設定する目標設定部を有したことを特徴とする請求項9に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置。
前記ブレードピッチ制御手段は、前記浮体運動検出手段の前記検出結果に基づいて前記ブレードピッチ制御手段の制御ゲインを調節する制御ゲイン調節部を有したことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置。
前記ブレードピッチ制御手段が前記浮体運動検出手段あるいは前記浮体の周囲の海象状態を検出するために備えた海象検出手段の検出結果に基づいて前記ローターの前記ブレードピッチをフィードフォワード制御したことを特徴とする請求項9から請求項14のうちの1項に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の水上風力発電装置は、複数の風車を備えた浮体風力発電装置に関するものであり、浮体構造物の揺動、振動の原因を特定するために、多くの要因を測定する必要がある。また、発電機の出力の安定化は浮体構造物の揺動、振動を減衰させた結果として間接的なものであり、風車の調整手段が直接発電機の制御にもかかわるものではない。
そこで、本発明は、簡単な構成により浮体の揺動を低減させ、発電機の出力を安定化させた上で最大の効率を得ることができる浮体式洋上風力発電施設の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明の浮体式洋上風力発電施設の制御装置は、風により回転するローターを有した浮体式洋上風力発電施設において、前記ローターのブレードピッチを制御するブレードピッチ制御手段と、浮体の運動を検出する浮体運動検出手段と
、風速を検出する風速検出手段とを備え、
弱風領域、中風領域、及び強風領域によって異なる制御を行う制御モードを有し、前記風速検出手段の検出結果に基づいて、前記弱風領域、前記中風領域若しくは前記強風領域のいずれであるか、又は前記弱風領域若しくは前記強風領域のどちらであるかを特定し、風の弱い
前記弱風領域において、前記浮体運動検出手段の検出結果に基づき前記ブレードピッチ制御手段で前記ローターの前記ブレードピッチを制御したことを特徴とする。この構成によれば、ブレードピッチを制御することによりローターの回転により生じる力を変化させて、風速変化及び波浪外力によって生じる浮体の運動を抑制でき、発電機の出力を安定させることができる。また、従来、制御目標値として発電機の回転数制御のみが用いられていた弱風領域において、浮体式洋上風力発電施設の運動を抑制することができる。
また、浮体の運動に加えて風速検出手段の検出結果を用いてブレードピッチを制御できる。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置において、前記浮体運動検出手段は、前記浮体の傾斜を検出する傾斜検出手段であることを特徴とする。この構成によれば、風速変化及び波浪外力による浮体の傾斜を増幅させず、また浮体の傾斜による発電機の出力の変動を減少させることができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置において、前記浮体運動検出手段は、2以上の自由度を検出することを特徴とする。この構成によれば、場合によっては6自由度で揺動する浮体式洋上風力発電施設において、少なくとも2以上の自由度の浮体の動きに対してブレードピッチを制御することで、風速変化及び波浪外力によって生じる浮体の運動を抑制でき、発電機の出力を安定させることができる
。
【0011】
請求項
4に記載の本発明は、請求項1から請求項
3のうちの1項に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置において、発電機の出力を制御する発電機出力制御手段をさらに備えたことを特徴とする。この構成によれば、ブレードピッチに加えて発電機の出力を制御することができる。
【0012】
請求項
5に記載の本発明は、請求項1から請求項
4のうちの1項に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置において、前記ローターの回転軸を収納したナセルを有し、前記ナセルのヨーイングを検出するヨーイング検出手段をさらに備え、前記ブレードピッチ制御手段が前記ヨーイング検出手段の検出結果に基づいて前記ローターの前記ブレードピッチを回転位置に応じて制御したことを特徴とする。この構成によれば、ナセルのヨーイングを抑制することができる。ここで「ブレードピッチを回転位置に応じて制御した」とは、各ブレードが所定の位置に達したときに所定のブレードピッチとなるように制御すること、あるいは各ブレードが所定の位置で所定のブレードピッチとなるように予め制御をすること等をいう。
【0013】
請求項
6に記載の本発明は、請求項1から請求項
5のうちの1項に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置において、前記ブレードピッチ制御手段は、前記浮体運動検出手段の前記検出結果に基づいて前記ブレードピッチ制御手段の制御目標値を設定する目標設定部を有したことを特徴とする。この構成によれば、浮体運動を踏まえた上でブレードピッチ制御手段の制御目標値を設定することができる。
【0014】
請求項
7に記載の本発明は、請求項1から請求項
6のうちの1項に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置において、前記ブレードピッチ制御手段は、前記浮体運動検出手段の前記検出結果に基づいて前記ブレードピッチ制御手段の制御ゲインを調節する制御ゲイン調節部を有したことを特徴とする。この構成によれば、浮体運動に応じてブレードピッチ制御手段の制御ゲインを調節することができる。
【0015】
請求項
8に記載の本発明は、請求項
4、又は請求項
4を引用する請求項
5から請求項
7のうちの1項に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置において、風の弱い前記弱風領域において、前記ブレードピッチ制御手段が前記浮体運動検出手段の前記検出結果に基づき前記ローターの前記ブレードピッチを制御し、前記弱風領域において、前記発電機出力制御手段が前記ローターの回転状態に基づいて前記発電機の出力を制御したことを特徴とする。
この構成によれば、回転数や周期などの回転状態に基づいて、発電機の出力を制御することができる。
【0016】
請求項
9に記載の本発明の浮体式洋上風力発電施設の制御装置は、風により回転するローターを有した浮体式洋上風力発電施設において、前記ローターのブレードピッチを制御するブレードピッチ制御手段と、浮体の運動を検出する浮体運動検出手段とを備え、前記浮体運動検出手段の検出結果と前記ローターの回転状態の検出結果に基づき、前記浮体運動検出手段の前記検出結果と前記ローターの回転状態の前記検出結果の重み付けを行い前記ブレードピッチ制御手段で前記ローターの前記ブレードピッチを制御したことを特徴とする。この構成によれば、ブレードピッチを制御することによりローターの回転により生じる力を変化させて、風速変化及び波浪外力によって生じる浮体の運動を抑制でき、発電機の出力を安定させることができる。また、ブレードピッチ制御に複数の検出結果を用いることができる。また、ブレードピッチ制御をより適切なものとすることができる。
【0017】
請求項
10に記載の本発明は、請求項
9に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置において、前記ブレードピッチ制御手段は、前記浮体運動検出手段の前記検出結果に基づいて前記ブレードピッチ制御手段の制御目標値を設定する目標設定部を有したことを特徴とする。この構成によれば、浮体運動を踏まえた上でブレードピッチ制御手段の制御目標値を設定することができる。
【0018】
請求項
11に記載の本発明は、請求項
9又は請求項
10に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置において、前記ブレードピッチ制御手段は、前記浮体運動検出手段の前記検出結果に基づいて前記ブレードピッチ制御手段の制御ゲインを調節する制御ゲイン調節部を有したことを特徴とする。この構成によれば、浮体運動に応じてブレードピッチ制御手段の制御ゲインを調節することができる。
【0019】
請求項
12に記載の本発明は、請求項
10に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置において、発電機の出力を制御する発電機出力制御手段をさらに備え、前記目標設定部が、前記浮体運動検出手段の前記検出結果に基づいて前記発電機出力制御手段の目標回転数を設定変更したことを特徴とする。この構成によれば、浮体運動に応じて目標回転数を適切に設定変更し、浮体運動が生じている状態で発電機の出力効率が最大となる回転数にすることができる。
【0020】
請求項
13に記載の本発明は、請求項
10に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置において、発電機の出力を制御する発電機出力制御手段をさらに備え、前記目標設定部が、前記浮体運動検出手段の前記検出結果に基づいて、前記発電機出力制御手段の目標出力設定値を設定変更したことを特徴とする。この構成によれば、浮体運動に応じて目標出力設定値を適切に設定変更し、発電機が最大となる回転数にすることができる。
【0021】
請求項
14に記載の本発明は、請求項
12または請求項
13に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置において、前記浮体運動検出手段の前記検出結果としての揺動角に応じ、前記目標回転数あるいは前記目標出力設定値を設定変更したことを特徴とする。この構成によれば、浮体運動による揺動角を考慮して、発電機の回転数または出力を制御することができる。
【0022】
請求項
15に記載の本発明は、請求項
9から請求項
14のうちの1項に記載の浮体式洋上風力発電施設の制御装置において、前記ブレードピッチ制御手段が前記浮体運動検出手段あるいは前記浮体の周囲の海象状態を検出するために備えた海象検出手段の検出結果に基づいて前記ローターの前記ブレードピッチをフィードフォワード制御したことを特徴とする。この構成によれば、海象状態の急激な変化をふまえてブレードピッチを制御することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の浮体式洋上風力発電施設の制御装置によれば、風速変化及び波浪外力によって生じる浮体の運動を抑制でき、浮体式洋上風力発電施設の発電機の出力を安定化させた中で効率を最大に得ることが可能である。
【0024】
浮体運動検出手段を、浮体の傾斜を検出する傾斜検出手段とした場合には、風速変化及び波浪外力による浮体の傾斜を増幅させず、また浮体の傾斜による発電機の出力の変動を減少させることができる。
【0025】
浮体運動検出手段で2以上の自由度を検出する場合には、場合によっては6自由度で揺動する浮体式洋上風力発電施設において、少なくとも2以上の自由度の浮体の動きに対してブレードピッチを制御することで、風速変化及び波浪外力によって生じる浮体の運動を抑制でき、発電機の出力を安定させることができる。
【0026】
風速検出手段の検出結果に基づいてブレードピッチを制御する場合には、浮体の運動に加えて風速をもブレードピッチ制御に用いることができるから、浮体の運動制御と発電機の出力の制御をより精緻なものとすることができる。
【0027】
発電機出力制御手段をさらに備えた場合には、ブレードピッチに加え発電機出力を制御できるから、発電機の回転数や出力をより精密に制御することができる。
【0028】
ナセルとヨーイング検出手段をさらに備え、ローターのブレードピッチを回転位置に応じて制御する場合には、ナセルのヨーイングを抑制して発電機の出力をより安定化させ、効率を向上させることが可能である。
【0029】
浮体運動検出手段の検出結果に基づいて制御目標値を設定する目標設定部を備えた場合には、浮体運動を踏まえた制御目標値に基づいて制御できるから、浮体の運動を抑制し発電機の出力を安定化させた中で、より適切な制御によって効率を向上させることが可能となる。
【0030】
制御ゲイン調節部を有する場合には、浮体運動に応じてブレードピッチ制御手段の制御ゲインを調節できるから、浮体の運動の抑制と、発電機の出力を安定化させた中で効率を向上させることが可能となる。
【0031】
弱風領域においてローターのブレードピッチを制御する場合には、弱風領域においても浮体の揺動を抑制し、発電機の出力をより安定化させた中で効率を向上させ発電品質を向上させることが可能である。さらにローターの回転状態に基づいて発電機の出力を制御する構成とすれば、浮体の運動の抑制と、揺動抑制による発電品質向上に加えて、ローターの回転状態を踏まえて発電効率を向上させることが可能である。
【0032】
ブレードピッチの制御において検出結果を重み付けする場合には、浮体の運動の抑制と発電品質の向上の制御を重み付けして、より精密に制御を行うことが可能である。
【0033】
目標回転数または目標出力設定値を設定変更する場合には、発電機の出力を安定化した上で効率向上を図ることが可能である。この場合、揺動角に応じ、目標回転数あるいは目標出力設定値を設定変更する構成とすれば、簡単な構成で浮体の運動を検出し、浮体の運動の抑制と発電品質の向上が図れる。
【0034】
海象検出手段の検出結果に基づいてフィードフォワード制御する場合には、海象状態の急激な変化に対応してブレードピッチを制御することができるから、浮体の運動を予測して抑制し、発電機の出力を安定化させた中で効率を最大に得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、
図1〜
図11を参酌して以下に説明する。
図1は本実施形態による制御装置を備えた浮体式洋上風力発電施設の概略構成を示す正面図である。本実施形態の浮体式洋上風力発電施設10は、いわゆる浮体を海面に浮かべたスパー型のものであり、同図に示すように、ローター11と浮体12とから構成される。ローター11は、複数のブレード13、ブレード13のピッチを変更するブレード駆動手段14、回転軸19を内部に有するナセル18、及び回転軸19が接続された発電機(図示せず)を有する。
浮体式洋上風力発電施設10は、浮体12の運動を検出する浮体運動検出手段15、波高センサ(海象検出手段)16、風速計(風速検出手段)17を備えている。
【0038】
複数のブレード13は、ブレード駆動手段14を介して回転軸19に取り付けられている。本実施の形態のローター11は3枚のブレード13を備えている。ブレード13が風を受けることにより回転軸19が回転して、ナセル13内に設けられている発電機によって発電を行う。ブレード13のピッチを変更することで、ローター11の回転により生じる前後(
図1の手前と奥)方向の力を変化させることができる。
【0039】
ここでブレード13のピッチすなわちブレードピッチとは、回転面に対するブレード13の角度をいう。ナセル18内に設けられたブレード駆動手段14によりブレード13を駆動してブレード13の回転軸19への取付角を変更することにより、ブレードピッチを変更する。ブレード駆動手段14としては、例えば電気や油圧を動力とする一般的に用いられるアクチュエータを挙げることができる。
【0040】
本実施形態では、ローター11として、地面に対して水平な回転軸19を備えたいわゆる水平軸型風車を示したが、地面に対して垂直な回転軸を備えたいわゆる縦型風車を用いることもできる。
【0041】
浮体12は、その一部が海面Pの下に位置し、その浮力によって浮体式洋上風力発電施設10を海面P上に設置するものである。浮体12は、その全体が海面P下に位置する海面下部分12Aと、その一部が海面下に位置し大半の部分が海面P上に位置するタワー部12Bとを備えている。
図1では省略しているが、浮体12は、係留索を介して海底のアンカーに係留されている。
【0042】
浮体運動検出手段15は、浮体12の運動(揺動)を検出するものであり、ローリング、ピッチング、ヨーイング、ヒービング、サージング、スウェイングの6自由度の内、少なくとも2以上の自由度を検出することが好ましい。特に、浮体運動検出手段15は、少なくとも傾斜検出手段として浮体12の傾斜(揺動角θ)を検出し、その時間的な変化から浮体12の傾斜運動を検出する。傾斜運動の検出に必要な時間計測や処理手段は、浮体運動検出手段(傾斜検出手段)15と一体的に設けることも、また別体の回路として設けることもできる。
ここで、傾斜検出手段は、浮体12の傾斜運動としてのピッチングを直接あるいは間接的に少なくとも検出する。一般的な浮体運動検出手段15は、例えば、ジャイロセンサー、傾斜計、加速度計、GPSを単独で、又は同種又は異種を組み合わせて構成することができる。また、浮体運動検出手段15を2次元センサーとすることにより、ピッチングのみならず浮体12の傾斜運動としてのローリングを直接あるいは間接的に検出することができる。この2次元の浮体運動を検出するには1次元センサーを2個組み合わせて構成することができる。また、ヨーイング、ヒービング、サージング、スウェイングと言った他の浮体運動を検出するには、専用の浮体運動検出手段を設けるか、例えば機能的に傾斜検出手段と兼ねることのできるジャイロセンサー等を用いることもできる。
本実施形態では、浮体運動検出手段15は、浮体12の重心位置(海面下部分12A)、浮体12の作業入り口付近(タワー部12B)、ならびにナセル18の3箇所に取り付けられている。作業入り口付近に取り付けることにより、浮体運動検出手段15のメンテナンスが容易になる。
【0043】
浮体運動検出手段15として加速度計を用いる場合、例えば、高さの異なる位置に取り付けられた複数の加速度計により測定された加速度に基づいて、浮体12の揺動角を検出することができる。
具体的には、浮体運動検出手段15で検出された検出値の時間的な変化を測定し、直接制御入力として利用したり、重心位置と浮体運動検出手段15取り付け位置の距離とかけ合わせることで浮体12の揺動レベル(揺動角)を推定し制御に利用する。
【0044】
波高センサ16は、海面Pにおける波の高さを測定するものであり、例えば、レーザ式波高計、超音波式波高計、容量式波高計、レーダー式波高計等を用いることができる。なお、本実施形態では、波高センサ16が浮体12に設けられている構成について説明したが、波高センサ16は必ずしも浮体12に取り付けられている必要はない。例えば、浮体式洋上風力発電施設10とは別体の波高センサを用い、有線または無線の通信手段を用いて測定結果を浮体式洋上風力発電施設10に送信する構成としてもよい。
【0045】
風速計17は、風向を伴ったベクトルとして風速を検出するものであり、例えば、風杯型風速計、風車型風速計、超音波式風速計などを用いることができる。
【0046】
図2(a)は風力発電施設の浮体揺動を説明する浮体式洋上風力発電施設の側面図であり、
図2(b)は(a)に示す揺動に伴う発電機の出力の変化を示すグラフである。
図2(a)に示すように、風速の変化や海面Pにおける波浪による外力により、浮体12にかかる荷重が変化して、同図に両側矢印を用いて示したように、浮体式洋上風力発電施設10の前後(図では左右)に運動(揺動)が生じる。
【0047】
浮体12に揺動が生じると、揺動に起因してローター11にあたる風の相対風速に変化が生じる。例えば、
図2(a)に片側矢印で示した風速Vが一定であったとしても、浮体12が前方向に揺動(ピッチング)する際には(両側矢印のA方向への運動)相対風速が風速Vよりも大きくなり、後方向に揺動する際には(両側矢印のB方向への運動)相対風速が風速Vよりも小さくなる。この結果、
図2(b)に示すように、時間の経過に伴って発電機の出力が変動する。
【0048】
浮体式洋上風力発電施設10は、浮体運動検出手段15の検出結果に基づいて、ブレード駆動手段14によりブレード13のブレードピッチを変更する。例えば、
図2(a)に示すように浮体12が前後方向に揺動(ピッチング)する際には、1サイクルの浮体12の運動の中で、ブレード駆動手段14によりブレード13のブレードピッチの変更も1サイクルが行われる。
これによりローター11に生じる力を変化させて、浮体12の揺動を低減させることができる。
図2(a)(b)において、実線は、浮体12の大きい揺動と発電機の出力の変化を示しており、破線は浮体12の小さい揺動と発電機の出力の変化を示している。ブレード駆動手段14によりブレード13のブレードピッチを変更することで、破線で示すように浮体12の揺動を小さくすることができる。浮体12の揺動を抑制して揺動角θを小さくすることにより、発電機の出力を安定させ、電力の品質を向上させることができる。また、浮体12がローリングする場合は、浮体運動検出手段15が傾斜(揺動角θ’)の2次元的な動きを検出してブレード駆動手段14によりブレード13のブレードピッチを変更する。また、ピッチングとローリングが組み合わさった浮体12の運動の場合は、2次元的な動きを考慮して最適にブレード駆動手段14によりブレード13のブレードピッチを制御する。更に、ヨーイング、ヒービング、サージング、スウェイングと言った浮体の運動を考慮して最適にブレード駆動手段14によりブレード13のブレードピッチを制御することもできる。
なお、浮体12の揺動周期は、通常は0.1〜0.3Hzであり、地上や浜辺に設置される固定式の風力発電施設のタワー(構造的には浮体12に相当)の1Hz以上の振動周期とは、数値的な範囲が異なっている。
【0049】
図3は風速と発電機の出力、および風速と発電機回転数との関係を示す発電機のタービン性能曲線のグラフである。同図の横軸は風速を示しており、太い実線で示した上側に位置するグラフでは縦軸が発電機の回転数を示しており、細い実線で示した下側に位置するグラフでは縦軸が発電機の出力を示している。
【0050】
浮体式洋上風力発電施設10は、風速の大きさによって3つの異なるモードでの制御を行う。
図3に示すように、縦の破線で区切った(1)〜(3)で示す各領域に対応して、制御モード(1)〜(3)があり、下記のとおり風速の大きさに基づいてモードの切替を行う。
モード(1)発電機の最大回転数に到達する前
発電機のタービンの最大出力係数Cpmaxに合わせて発電機の回転数を制御する(発電機の負荷変更、ブレードのピッチ角固定)
モード(2)発電機の最大回転数に達した後、発電機の定格出力に達する前
発電機の回転数が一定になるように制御する(ブレードのピッチ角変更)
モード(3)発電機の定格出力に達した後
発電機の出力が一定になるように制御する(ブレードのピッチ角変更)
【0051】
なお、本発明では、適宜、発電機の最大回転数に到達する前の風速領域を弱風領域といい、発電機の最大回転数に達した後、発電機の定格出力に達するまでの風速領域を中風領域といい、発電機の定格出力に達した後の領域を強風領域という。なお、発電機の定格出力に達する前を弱風領域、定格出力に達した以降を強風領域と定義することも場合によっては可能である。
【0052】
浮体式洋上風力発電施設10は、ローター11の回転数、発電機の出力以外に、浮体運動検出手段15により浮体12の揺動角θもモニターしている。浮体12の揺動角θが大きくなった場合は、風速計17により測定された風速に基づいて特定されるモード毎に、ブレード駆動手段14によりブレード13のピッチ角制御を実施して、浮体12の運動を低減させる。これにより、発電機の出力変化を抑制して、電力品質を向上することができる。
【0053】
図4は、
図3の領域(1)のタービン性能曲線を示しており、(a)は揺動角が所定値未満の場合における目標回転数のグラフであり、(b)は揺動角が所定値以上の場合における目標回転数を示すグラフである。
【0054】
浮体運動検出手段15により検出された浮体12の揺動角θが所定値未満である場合、浮体12の揺動による発電機の出力変化(
図2参照)が電力の品質および発電効率に与える影響は大きくない。そこで、この場合、
図4(a)に示すように、
図3のモード(1)と同様、発電効率が最大となる回転数Cpmaxを目標回転数(目標値)として発電機の負荷を変化させる制御を行う。
【0055】
対して、浮体運動検出手段15により検出された浮体12の揺動角θが所定値以上である場合、浮体12の揺動による出力の変化が電力の品質低下および発電効率に与える影響は大きい。そこで、この場合、
図4(b)に示すように、
図3におけるモード(1)とは異なり、目標回転数をCpmaxよりも低く設定変更した上、発電機の負荷を変化させる制御に加えて、ブレードピッチ制御手段21により浮体12の揺動の抑制制御を行う。
なお、発電機制御手段20やブレードピッチ制御手段21などの制御手段は、例えば、制御に用いられる各種情報が記録された記憶手段および演算処理装置により構成される。
【0056】
図5は、
図3の領域(1)における制御系の概略を示すブロック図である。同図に示すように、浮体式洋上風力発電施設10は、制御手段として、発電機制御手段20とブレードピッチ制御手段21を備えている。発電機制御手段20は、目標回転数Ndに基づいて発電機トルクTrqを変化させることにより、発電システム30を構成する発電機25におけるタービンの回転数Nを制御するものである。発電システム30からは発電機25のタービンの回転数Nがフィードバックされる。回転数Nは発電機25の軸に取り付けられた回転数検出手段28で検出するが、発電機25の軸はローター11の回転軸19と直結されているため、ローター11の回転数Nと実質的には同一の値である。
【0057】
ブレードピッチ制御手段21は、浮体運動検出手段15により検出された揺動角θが所定値以上である場合に、発電システム30を構成するブレード駆動手段14によりブレードピッチ角β
θを変化させて浮体12の揺動を抑制し、発電機25の出力を安定化するものである。発電システム30からブレードピッチ制御手段21へ揺動角θがフィードバックされる。
【0058】
上述したように浮体運動検出手段15により検出された揺動角θが所定値以上である場合に、ブレードピッチ制御手段21によるブレードピッチ角β
θを変化させる制御がなされる。上記所定値は、要求される電力品質に応じて、適宜設定すればよい。また、ブレードピッチ制御手段21が常にブレードピッチ角β
θを制御することとしてもよい。この点は、後述する、中風領域および強風領域における制御でも同様である。
【0059】
発電機制御手段20が、発電効率が最大となる回転数Cpmaxを得るために用いる目標回転数Ndよりも低い回転数に設定変更することにより、すなわち目標回転数Ndを、揺動していない状態での発電効率が最大となる回転数よりも低く設定変更することにより、所定の揺動角θ以上の浮体運動が生じている状態において、変動する発電機25の効率の平均値を最大とし、また発電機25の出力変動幅を最小とすることができる。これにより、電力品質を向上させることができる。
【0060】
図6は、
図3の領域(2)のタービン性能曲線を示しており、(a)は揺動角が所定値未満の場合における目標回転数のグラフであり、(b)は揺動角が所定値以上の場合における目標回転数を示すグラフである。
【0061】
図6(a)に示すように、浮体運動検出手段15により検出された浮体12の揺動角θが所定値未満である場合、浮体12の揺動による出力変化が電力の品質および発電効率に与える影響は大きくない。そこで、この場合、
図3のモード(2)と同様、Cpmaxを目標回転数としてブレードピッチを変化させる制御を行う。
【0062】
図6(b)に示すように、浮体運動検出手段15により検出された浮体12の揺動角θが所定値以上である場合、浮体12の運動による出力の変化が電力の品質低下および発電効率に与える影響が大きい。そこで、
図3のモード(2)とは異なり、目標回転数をCpmaxよりも低く設定変更した上、発電機25の負荷を変化させる制御に加えて、ブレードピッチ制御手段21により浮体12の揺動を抑制する。
【0063】
図7は
図3の領域(2)における制御系の概略を示すブロック図である。同図に示すように、浮体式洋上風力発電施設10は、制御手段として、発電機制御手段20とブレードピッチ制御手段21を備えている。領域(2)(中風領域)においては、発電機25の回転数Nが最大回転数に達している(
図3参照)。このため発電機制御手段20は、回転数Nを最大回転数に維持する手段としてブレードピッチを変化させる。発電システム30からは発電機25のタービンの回転数Nがフィードバックされる。回転数Nは発電機25の軸に取り付けられた回転数検出手段28で検出するが、発電機25の軸はローター11の回転軸19と直結されているため、ローター11の回転数Nと実質的には同一の値である。
【0064】
ブレードピッチ制御手段21は、領域(1)(弱風領域)と同様に機能するものである。しかし、領域(2)(中風領域)では、弱風領域とは異なり、ブレードピッチが発電機制御手段20による発電機25の回転数Nを制御する手段としても用いられている。そこで、領域(1)とは異なり、発電機制御手段20からの出力β
Nとブレードピッチ制御手段21からの出力β
θが加算された後に発電システム30に出力され、発電機25およびブレード駆動手段14の制御に用いられる。このように、発電機制御手段20およびブレードピッチ制御手段21からの出力に基づいて、ブレード駆動手段14によりローター11のブレード角を制御する。これにより浮体12の揺動を抑えると共に、発電機25の回転数Nを制御して、浮体式洋上風力発電施設10の発電機25の出力を安定化させた中で発電効率を最大とすることが可能となる。
【0065】
発電システム30におけるブレードピッチの制御は、β
Nとβ
θとの重み付けを行って加算した結果に基づいて行うこととしてもよい。重み付けは、浮体運動検出手段15により検出された揺動角θや風速Vなどに基づいて行うことができる。例えば、電力品質の安定性(出力の安定性)を重視する場合、揺動角θが所定値未満のときにはβ
Nのみに基づいて発電システム30を制御し、揺動角θが所定値以上のときにはβ
θのみに基づいて制御することとしてもよい。また、発電効率を重視する場合、発電機25の発電効率への影響が大きくなる揺動角θを所定値として、揺動角θが所定値未満のときにはβ
θのみに基づいて発電システム30を制御し、揺動角θが所定値以上のときにはβ
Nのみに基づいて制御することとしてもよい。無論、β
N、β
θに適切な重み付け係数を掛けて双方の出力に基づいて制御することもできる。
【0066】
図8(a)は、
図3の領域(3)のタービン性能曲線のうち揺動角が所定値未満の場合および揺動角が所定値以上の場合における目標定格出力のグラフである。
浮体運動検出手段15により検出された浮体12の揺動角θ(
図2参照)が所定値未満である場合、浮体12の揺動による出力の変化が電力の品質低下に与える影響は大きなものではない。そこで、
図8(a)に破線で示すように、発電機25が定格出力となるように制御することで、発電効率を良好にすることができる。
【0067】
対して、浮体運動検出手段15により検出された浮体12の揺動角θが所定値以上である場合、浮体12の運動による出力の変化が電力の品質低下に与える影響は大きい。そこで、
図3のモード(3)とは異なり、ブレードピッチ制御手段21により浮体12の揺動を抑制する。これにより、揺動による電力の出力変化を抑制し、電力品質を向上させることができる。
【0068】
図8(b)は目標出力と揺動に伴う発電機の出力の変化を示すグラフである。浮体12が揺動している場合に定格出力を目標出力とすると、浮体12が揺動して相対風力が大きくなったときに発電機25の定格出力を超えるおそれがある。そこで、所定値以上の揺動角θが検出された場合、定格出力よりも低い値が目標出力となるように設定を変更する。これにより、定格出力を超えた状態で発電機25が運転されることを防いで、浮体式洋上風力発電施設10の安全性を向上させることができる。
【0069】
図9は、
図3の領域(3)における制御系の概略を示すブロック図である。同図に示すように、浮体式洋上風力発電施設10は制御手段として、発電機制御手段20およびブレードピッチ制御手段21を備えている。領域(3)(強風領域)においては、発電機25の回転数Nが最大回転数に達し、発電機25の出力Pが定格出力に達している(
図3参照)。そこで、発電機25の定格出力を目標出力Pdとして設定する。また、発電機制御手段20は、発電機25の出力Pを定格出力に維持するための手段としてブレードピッチを変化させる。発電システム30からは、発電機25の出力Pがフィードバックされる。なお、発電機25の出力Pは、出力検出手段29により検出される。
【0070】
ブレードピッチ制御手段21は、領域(1)(弱風領域)と同様の機能を有するものである。しかし、強風領域ではブレードピッチが発電機制御手段20による発電機25の出力Pを制御する手段としても用いられている。このため、領域(2)同様、発電機制御手段20からの出力β
Pとブレードピッチ制御手段21からの出力β
θが加算されて、発電システム30に出力される。両者の加算においては、領域(2)(中風領域)同様、重み付けすることとしてもよい。このように、発電機制御手段20からの出力β
Pとブレードピッチ制御手段21からの出力β
θに基づいて、ブレード駆動手段14によりローター11のブレード角を制御する。これにより浮体12の揺動を抑えると共に発電機25の出力Pを制御することができるから、浮体式洋上風力発電施設10の発電機25の出力Pを安定化させた中で発電効率を最大にすることが可能となる。
【0071】
浮体式洋上風力発電施設10の制御手段について、
図10を参酌して以下に説明する。
図10は本実施形態の浮体式洋上風力発電施設の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、浮体式洋上風力発電施設10は、既に説明した発電機制御手段20、ブレードピッチ制御手段21に加えて、ターゲットスケジューラ(目標設定部)22、ゲインスケジューラ(制御ゲイン調整部)23、フィードフォワード制御手段24、および海象の状態を総合的に把握する海象状態検出手段31を備えている。
【0072】
ターゲットスケジューラ22は、弱風領域、中風領域および強風領域のうちどの領域に属するかにより、制御モードを切換えて、目標回転数Nrefまたは目標出力Prefを変更する。例えば、発電機25のタービン性能曲線のグラフ(
図3参照)に対応した情報のテーブルが記憶された記憶手段と演算処理装置とを用いてターゲットスケジューラ22を構成することができる。
【0073】
ターゲットスケジューラ22が制御モードを切換えるトリガ(きっかけ)としては、発電システム30の風速計17(
図1参照)により測定された風速Vおよび/または発電機25の回転数Nを用いることができる。ターゲットスケジューラ22により、風速Vおよび回転数検出手段28で検出される発電機25の回転数Nに応じた適切な制御モードに自動的に切換えて制御を行うことができる。また、各制御モードにおいて、目標回転数Nrefまたは目標出力Prefを変更するトリガとしては、揺動角θが用いられる。
【0074】
ターゲットスケジューラ22には、発電システム30から、回転数検出手段28で検出される発電機25の回転数N、出力検出手段29で検出される出力P、風速計17で検出される風速V、浮体運動検出手段15による揺動角θ、及びヨーイング検出手段46で検出されるヨー角ψがフィードバックされる。フィードバックされたこれら出力は、制御モードに応じて用いられる。弱風領域および中風領域においては、制御目標値として目標回転数Nrefが用いられるから、回転数Nがフィードバック制御に用いられる(
図5、7参照)。強風領域においては、制御目標値として目標出力Prefが用いられるから、出力Pがフィードバック制御に用いられる(
図9参照)。
【0075】
また、揺動角θは、ゲインスケジューラ23を介してブレードピッチ制御手段21に出力され、全領域においてブレードピッチ制御に用いられる。なお、ブレードピッチ制御手段21による制御は、揺動角θが所定値以上となることをトリガとして開始する構成としてもよい。
【0076】
ゲインスケジューラ23は、発電機制御手段20およびブレードピッチ制御手段21における入力に対する出力の比である制御ゲインを調節するものである。ゲインスケジューラ23による制御は、例えばPID制御などのような一般的に用いられる方式を用いることができる。ゲインスケジューラ23は、フィルタ26’を通した浮体運動検出手段15による揺動角θの検出結果に基づいて、ブレードピッチ制御手段21の制御ゲインを調節する。これによりブレード駆動手段14がローター11のブレードピッチを変化させて、浮体12の揺動による発電機25の出力変化を抑制する。
【0077】
フィードフォワード制御手段24は、フィルタ26とフィードフォワード制御システム27とを備えている。そして、海象状態検出手段31により検出された浮体12の周囲の海象状態を発電機制御手段20およびブレードピッチ制御手段21の制御に反映させるものである。フィルタ26は、海象状態検出手段31により検出された海象に対応した信号から各種ノイズを取り除くものである。フィードフォワード制御システム27は、海象状態検出手段31により検出された外乱を予測して、発電機制御手段20およびブレードピッチ制御手段21の制御に反映させるものである。
【0078】
海象状態検出手段31は、浮体12の回りの周囲の海象状態を検出するものである。海象状態としては、例えば、波高、波向き、波周期、流速、流向などが挙げられる。なお、海象状態検出手段31は、浮体12とは別体のものとして構成することもできる。また、別体とする場合、例えば、無線や有線の通信手段を介して、浮体式洋上風力発電施設10に海象状態を送信する構成としてもよい。
【0079】
海象状態検出手段31により検出された海象は、フィードフォワード制御手段24を介してブレード駆動手段14および発電機25の制御に用いられる。すなわち、
図10に示すように、発電機制御手段20は、発電システム30からのフィードバック信号およびゲインスケジューラ23からの信号に加えて、フィードフォワード制御手段24からの信号をも制御に用いる。
【0080】
フィードフォワード制御では、海象状態検出手段31の検出結果に基づいて浮体運動を予測して予め必要な制御量を計算することが可能である。アクチュエータとしてのブレード駆動手段14の応答時間等に起因する制御時間の遅れがあると、フィードフォワード制御することによって逆に浮体揺動を増幅することもある。そこで、フィードバック制御によってロバスト性を確保しながら、フィードフォワード制御で出力変動に対する速応性を向上させている。
【0081】
図11は、
図10に示すブロック図の要部詳細ブロック図である。
図10に示すフィードフォワード制御システム27は、発電機制御手段20の出力に対してトルク変化量△Tqを出力する回転数補正部と、ブレードピッチ制御手段21の出力に対してブレードピッチ変化量△βを出力するブレードピッチ補正部からなる。
【0082】
回転数補正部は、ローター11及び浮体12の運動モデル部27aとPID制御部27bとを有する。
ローター及び浮体の運動モデル部27aは、あらかじめ計算された応答関数を有しており、海象状態検出手段31からの直前の波高、波向計測データHw(t)と、発電システム30からの直前の発電機25の回転数N及び浮体運動検出手段15により検出される直前の揺動角θが入力されることで、回転数偏差△Nを出力する。
【0083】
PID制御部27bでは、回転数偏差△Nが入力され、P制御、PI制御、PD制御又はPID制御を行うことでトルク変化量△Tqを出力する。
ブレードピッチ補正部は、ローター11及び浮体12の運動モデル部27cとPID制御部27dとブレードピッチ変化量変換部27eを有する。
【0084】
ローター11及び浮体12の運動モデル部27cは、あらかじめ計算された応答関数を有しており、海象状態検出手段31からの直前の波高、波向計測データHw(t)と、発電システム30からの直前の発電機25の回転数N及び浮体運動検出手段15により検出される直前の揺動角θが入力されることで、出力偏差△Pを出力する。PID制御部27dでは、出力偏差△Pが入力され、P制御、PI制御、又はPID制御を行うことでトルク変化量△Tqを出力する。ブレードピッチ変化量変換部27eでは、トルク変化量△Tqが入力され、ブレードピッチ変化量△βを出力する。
【0085】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、
図12及び
図13を参酌して以下に説明する。
図12は本実施形態による浮体式洋上風力発電施設の概略構成を示す斜視図、
図13は本実施形態による浮体式洋上風力発電施設の構造を示す要部側面図である。
本実施形態では、ローター11の回転軸19を収納したナセル18のヨーイングを検出するヨーイング検出手段46を備えている。
なお、ナセル18のヨーイングを検出し、検出結果に基づいてローター11のブレードピッチを回転位置に応じて制御することに関係する構成以外の部分は、第1の実施形態と同様である。
【0086】
浮体式洋上風力発電施設40は、浮体12が係留索42を介して海底Bのアンカー43に係留されたものである。なお、浮体12の下から出ている線は送電線44である。
【0087】
浮体式洋上風力発電施設40は、風により回転するローター11と、ローター11の回転軸19を収容するナセル18と、ナセル18を水面に対して回動自在に支持する回動座軸受45を有した浮体12と、ナセル18の水面に対する回動揺動であるヨーイングを検出するヨーイング検出手段46を備えている。
【0088】
ローター11は、複数のブレード13が放射状に設けられているハブ47と、ハブ47に連結された回転軸19とを備えている。回転軸19は、ナセル18内に回転可能に軸支されており、ローター11が風を受けることにより回転軸19が回転して、ナセル18内に設けられている発電機(図示しない)によって発電を行う。
【0089】
ナセル18は、浮体12の上部に設けられている回動座軸受45により、海面Pに対して回動自在に支持されている。これにより、ナセル18の回動によって風向の変化に応じて回転軸19の方向を変化させて、ローター11の回転面を風に正対させることができる。
【0090】
ヨーイング検出手段46は、ローター11が回転している際、波浪により鉛直方向の力が加わったときなどにナセル18に生じる回動揺動(ヨーイング)を検出するものである。なお、本実施形態では浮体12にヨーイング検出手段46を設けているが、ナセル18側にヨーイング検出手段46を設ける構成としても良い。ヨーイング検出手段46としては、例えば、ジャイロセンサー等を用いることができる。
【0091】
ブレード駆動手段14は、ヨーイング検出手段46の検出結果に基づいて、回転位置に応じてブレード13毎に個別に変化するようにブレード13を駆動する。たとえば、
図12のローター11の回転面Lに二点鎖線で示した回転位置Aと回転位置Bにおけるブレードピッチをブレード13毎に個別に制御
することにより、同図にTで示したヨーイングを抑制することができる。
【0092】
(第3の実施形態)
図14は、第3の実施形態による浮体式洋上風力発電施設の概略構成を示す斜視図である。同図に示すように、浮体式洋上風力発電施設50は、ナセル51と浮体52とを一体にして、ナセル51が浮体52に対して回動しないように構成したものである。浮体52は、水に浮くものであって、その上端にはナセル51が固定されており、その下端が回動手段53を介して海底Bのアンカー54に繋がれている。回動手段53は、浮体52が風向Wの変化に応じて回動可能となるように浮体52をアンカー54に繋ぐものである。
【0093】
浮体52に設けられているヨーイング検出手段55は、ヨーイング検出手段46同様、浮体52(ナセル51)のヨーイングを検出するものである。浮体式洋上風力発電施設50は、ヨーイング検出手段55の検出結果に基づいて、浮体式洋上風力発電施設40同様の手段によりヨーイングを抑制する。
なお、浮体52は係留索等の他の係留方式を併用して係留することもできる。
【0094】
(第4の実施形態)
図15は、第4の実施形態による浮体式洋上風力発電施設の概略構成を示す上面図である。
この第4の実施形態は、
図1に示す浮体式洋上風力発電施設において、タワー部12Bからナセル15が回動自在に支持されて風の方向にローター11が正対するように構成されている場合に、ナセル15にもヨーイング検出手段48を組み込んでいるものである。
浮体式洋上風力発電施設の場合、陸上や浜辺に設置されるタワーが固定された風力発電施設と異なり、風の方向と浮体12の揺動する方向が異なる場合が多い。このような場合に、浮体12の運動を考慮することに加え、ローター11の向き、すなわちナセル15の浮体12に対するヨー角を考慮して、あるいはヨーイング運動を考慮して、更にブレード駆動手段14によりブレード13のブレードピッチを制御することができる。これにより、更に浮体式洋上風力発電施設の発電機の出力を安定化させたり、効率を向上させることが可能となる。