(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、昨今、日系企業を含めアジア進出企業の増加トレンドが継続し、進出形態の多様化、多国籍化の進行に伴い、プーリングサービスなどの財務管理ニーズが高度化している。
【0007】
グループ企業の親会社口座、子会社口座を一体的に管理するプーリングには、大きく分けて、アクチュアルプーリングとノーショナルプーリングとの2種類が存在する。アクチュアルプーリングとは、資金移動を伴って実際に親会社口座に残高を集中する仕組みである。特徴としては、余剰資金集約により財務資源の有効活用が可能であるが、同一通貨の口座が基本であり、利息計算、利払いは勘定系に依存する。また、別法人のプーリングは会社間の賃借が必要となる。一方、ノーショナルプーリングとは、資金移動は伴わずに、親会社、子会社の口座残高を仮想的に集中したと見なして相殺する仕組みである。特徴としては、余剰資金集約により財務資源の有効活用が可能なのは同様であるが、異通貨口座でもプーリングが可能で、利息計算、利払い方法の自由度が高いことである。また、別法人でも会社間賃貸は不要となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、プーリングサービスにおける上記課題のうち、特にクロスボーダでのアクチュアルプーリングにおいて、異通貨の口座を含み、他行の口座も含めたマルチバンクのプーリングサービスを提供することを目的とする。したがって、本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0009】
(1)他行を含む複数の銀行間でプーリングを実行するマルチバンクのプーリングシステムであって、前記他行の口座の口座残高を照会し、前記口座残高の情報を取得する口座残高情報取得部と、前記取得した口座残高の情報に基づいて、資金集中及び資金配分の資金移動のための資金移動額を計算する資金移動額計算部と、前記資金移動額を含んだ送金依頼電文に、マルチバンクのプーリングのための電文であることを識別するためのマルチバンク識別文言を埋め込み、前記他行に送信する資金移動指図部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
(2)また、本発明は、(1)のシステムにおいて、前記マルチバンク識別文言は、SWIFTのメッセージタイプMT101のタグ70に付加されるようにしてもよい。
【0011】
(3)他行を含む複数の銀行間でプーリングを実行するマルチバンクのプーリング方法であって、
コンピュータが、前記他行の口座の口座残高を照会し、前記口座残高を取得する段階と、前記取得した口座残高に基づいて、資金集中及び資金配分の資金移動のための資金移動額を計算する段階と、前記資金移動額を含んだ送金依頼電文に、マルチバンクのプーリングのための電文であることを識別するためのマルチバンク識別文言を埋め込み、前記他行に送信する段階と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クロスボーダでのアクチュアルプーリングにおいて、異通貨の口座を含み、他行の口座も含めたマルチバンクのプーリングサービスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願明細書は、出願済の特願2014−260658の記載内容をベースとしており、上記出願の記載内容を引用することにより、本願の明細書の一部を構成するものとする。以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。また、機能構成の図において、機能ブロック間の矢印は、データの流れ方向、又は処理の流れ方向を表す。
【0015】
<マルチバンクプーリングシステムの概要>
図1は、本発明の実施形態に係るマルチバンクプーリングシステムの概要を示す図である。本システムは、GPS(Global Pooling System)を中核にし、他行を含む複数の銀行間でプーリングサービスを提供するマルチバンクのプーリングシステムであって、その処理は、図示するように、(1)残高照会/残高取得、(2)プーリング指示、(3)顧客決済、(4)プーリング結果還元の段階に分かれる。
【0016】
(1)残高照会/残高取得の段階では、GPSからSWIFTネットワークシステム経由で他行の口座へ電文(メッセージ)が送信される。ここでGPSは、国内の本店内(例えば東京)にあるものとしている。SWIFTネットワークシステムとは、国際銀行間通信協会(SWIFT:Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)が提供するグローバルな金融メッセージサービスのシステムであり、以下では、この金融メッセージサービスシステム自体を「SWIFT」と呼ぶことにし、図中ではSWIFTのシンボルマークで表現することにする。
【0017】
残高照会において、相手方の銀行に送信される電文は、リクエストメッセージ(メッセージタイプがMT920)と呼ばれる。この電文を送信する際には、専用に新設されたBICコード(Bank Identifier Code;国際送金システム上で相手方の銀行を特定するために用いられる金融機関識別コード)を使用する。
【0018】
MT920に対する応答として、すなわち、残高取得する段階では、メッセージタイプが、MT940(Customer Statement Message)、MT941(Balance Report Message)、MT942(Interim Transaction Report)と呼ばれる各種メッセージによって、相手口座の残高に関する情報が取得される。
【0019】
(2)プーリング指示の段階では、GPSからSWIFT経由で、送金依頼のメッセージ(送金依頼電文)であるMT101(Request for Transfer Message)を送信する。このときMT101には、マルチバンクのプーリングの電文であることを識別するための識別子が付加される。以降、この識別子を「マルチバンク識別文言」と呼ぶことにする。このマルチバンク識別文言を相手行から発信されるMT103電文内に設定することで、MT103受信時にマルチバンクプーリング独自の振る舞いを可能にすることができる。なお、マルチバンク識別文言の具体例については後述する。
【0020】
(3)顧客決済の段階では、顧客口座からの送金のためのメッセージであるMT103(Interbank Customer Payment;銀行間顧客送金)が、入金口座保有拠点(親口座)へ他行から送信される。このときのMT103にもマルチバンク識別文言が含まれる。SWIFT経由で送信されたMT103は、各国の行内送金システムがそれぞれの勘定系システムに合わせたメッセージを起票する。このときのメッセージにもマルチバンク識別文言が含まれるのは言うまでもない。
【0021】
そして各国の勘定系システムでは、口座異動明細がプーリング結果還元(レポート)のためのシステム、例えば、各国のEBシステム(Electronic Banking System又はInternet Banking System)に送られる。GPSではプーリング実行のタイミング制御として、MT920(残高照会のためのリクエストメッセージ)の発信、MT940、MT941、MT942(残高受信)、MT101(プーリングのための送金依頼)の発信処理時刻のいずれかひとつを選択して設定する。
【0022】
(4)プーリング結果還元の段階では、図示するような、口座ステートメント(プーリング対象明細特定)、口座番号確認、顧客番号(顧客・親子関係把握)、賃借計算の処理を経て、プーリングレポートが作成され、EBシステムで顧客が参照可能となる。
【0023】
<機能構成>
図2は、本発明の実施形態に係るグローバルプーリングシステムの機能構成を示す図である。本システムの全体像は、グローバルプーリングシステムであるGPS100が、自国の勘定系システムと通信可能に構成され、また、SWIFT300を経由して、他行の勘定系システム400A,400B,400Cと通信可能に構成されている。また、各国又はその地域の勘定系システムは、各国又はその地域の送金システムを介して、SWIFT経由で、他行の勘定系システム400A,400B,400Cと通信が可能に構成されている。この図では、各国の勘定系システムと送金システムをまとめて符号200を付している。
【0024】
他行の勘定系システム400A,400B,400Cには、それぞれ、GPSへの口座残高の情報を連携する口座残高情報連携部41a,41b,41cと、GPSからの資金移動指図を受信し、勘定起票を行う資金移動実行部42a,42b,42cが備わっているものとする。口座残高情報連携部41a,41b,41cには、口座残高をMT940,MT942,MT941にて発信できる機能が備えられる。また、資金移動実行部42a,42b,42cは、前述のマルチバンク識別文言をMT103送金メッセージ内に設定を行うだけでよい。すなわち、本サービスを提供する際には、他行のシステムは、SWIFTの標準メッセージであるMT920にさえ対応していればよく、本サービスが他行のシステムに影響することはない。
【0025】
本実施形態におけるグローバルプーリングシステムは、顧客情報登録手段1とプーリングエンジン2を備える。顧客情報登録手段1とプーリングエンジン2は、一つのサーバ内に構築しても、複数のサーバをネットワークなどによって接続して構築しても構わない。
【0026】
(顧客情報登録手段)
顧客情報登録手段1は、企業グループ登録部11、契約情報登録部12、プーリングルール保持部13、口座登録部14、及び口座グループ登録部15を備える。以下、顧客情報登録手段1の各部について説明する。
【0027】
企業グループ登録部11には、顧客として金融機関とプーリングサービスの契約を結ぶ企業グループが登録される。登録される情報は企業グループ名、統括会社名など企業グループに関する情報である。
【0028】
契約情報登録部12には、企業グループ登録部11に登録された企業グループと金融機関との、プーリングのサービス契約の内容が登録される。登録される契約情報には、プーリングのサービス契約開始日と終了日、レポート配信方式、利息計算方式、適用する為替レートなどがある。
【0029】
プーリングルール保持部13には、プーリングエンジン2が資金移動を指図する際のプーリングルールが、口座グループごとに登録される。プーリングルールとしては、プーリングエンジン2の起動条件、起動時間、口座間の資金の移動方向(1Way/2Way)、プーリング方式などの条件が登録される。プーリングルール保持部13は、上記の条件をデータとして保持するだけでなく、プーリングルールを実行するロジック又はそのロジックを実行するプログラム自体を記憶するようにしてもよい。そのようにすることで、プーリングエンジンを修正することなく、プーリングルールの新設や変更に柔軟に対応することができる。なお、以下に記載する口座グループ及びプーリングルールの詳細については、特願2014−260658の明細書を参照されたい。
【0030】
口座登録部14には、登録された会社のプーリングで取り扱う口座情報が登録される。口座情報には、口座名、口座種別、口座番号など、各国の勘定系システム200と連携させるために必要な情報と、プーリングシステムにおいて顧客が指定する口座グループ名、及び口座グループにおける役割が親口座か子口座かについての情報が登録される。
【0031】
口座グループ登録部15は、口座登録部14に登録されている各口座の、指定された口座グループ名と親口座か子口座かの役割についての情報に基づいて、口座グループに属する口座のリストを作成し、各口座グループの親口座と子口座を設定し登録する。このとき、顧客によって2つの口座グループに属することが指定されている口座は、1つの口座グループ(第1口座グループ)では親口座、別の口座グループ(第2口座グループ)では子口座として登録される。
【0032】
また、口座グループ登録部15は、作成した口座グループにプーリングルール保持部13に登録されたプーリングルールを割り付ける。口座グループ登録部15に登録される情報には、口座グループ名、親子口座、プーリングルール名、通貨方式、銀行種別、及び口座情報が登録される。口座情報には、詳しい説明は省略するが、グループ企業の口座ごとに、口座名、銀行種別、通貨、会社名、BICコード、拠点名、口座番号、用途、着地残高/トリガー、ターゲット残高、レンジ上限/下限などの情報が登録される。
【0033】
(プーリングエンジン)
プーリングエンジン2は、設定されたプーリングルールに従って、口座残高情報を取得し、子口座から親口座に移動する資金集約と親口座から子口座に移動する資金分配の額である資金移動額を計算し、資金移動指図を行う。プーリングエンジン2は、口座残高情報取得部21、資金移動額計算部22、資金移動指図部23を有している。以下、プーリングエンジン2の各部について説明する。
【0034】
顧客情報登録手段1は、プーリングルール保持部13に口座グループのプーリングルールとして登録されている起動条件から、口座グループのプーリングを実施するタイミングであると判断すると、プーリングエンジン2にプーリングの開始を指示し、プーリングエンジン2は、プーリングルール保持部13及び口座グループ登録部15に登録されているプーリングルール及び口座グループの情報を取得する。
【0035】
プーリングエンジン2の口座残高情報取得部21は、入手した口座グループに属する口座の情報に基づいて、データ連携システムを介して勘定系システムから口座グループに属する口座の口座残高情報を取得する。口座残高の取得手段としては、前日の最終残高、日中の時点残高、に加え、前日最終残高から残高照会時点までに発生した入出金金額(差分)を勘案して残高情報を取得することを可能とする。
【0036】
資金移動額計算部22は、取得した口座残高情報とプーリングルールに従って、口座グループの親口座と各子口座の間で移動する資金額を算出する。
【0037】
資金移動指図部23は、資金移動額計算部22で算出された資金額を、勘定系システムに送信する。このとき、前述したマルチバンク識別文言を送金依頼の電文であるMT101に埋め込む。このような処理により、マルチバンクプーリングで口座グループの各口座の資金移動が実行される。
【0038】
他の口座グループについてもプーリングを実施するタイミングになると、同じ手順で親口座と子口座の間で資金移動が行われる。プーリングエンジン2は、口座グループごとに口座残高情報を取得し、移動する資金を算出し、資金の移動を指図する。このため企業グループのプーリングに参加する全ての口座情報をプーリングエンジン2が同時に処理する必要はなく、多くの会社がプーリングに参加した場合のプーリングエンジン2の負荷を軽減することができる。また、口座グループごとに異なる様々なバリエーションのプーリングルールを設定することが可能なので、国、地域、顧客の事情に応じた多様な資金移動が実現でき、プーリングルールの変更にも柔軟に対応できる。
【0039】
上記のシステムの機能構成は、あくまで一例であり、一つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて一つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)又はハードディスクなどの記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブルなどの必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0040】
(マルチバンク識別文言)
図3は、送金指示電文のマルチバンク識別文言を示す図である。この図はGPSが発信する他行宛てのMT101と、他行から発信されるMT103の構成を示したものである。図示するようにMT101及びMT103には、タグ70と呼ばれるフィールドが規定されており、タグ70は、「Remittance Information」(送金情報)と呼ばれる任意のテキストを記述することが可能である。
【0041】
先に説明したマルチバンク識別文言は、このタグ70のフィールドを利用する。図の例では、「GPSXXXXXX0150415000100001」という文字列がマルチバンク識別文言を表しており、システムで任意に定義したものであってよい。この例では、マルチバンク識別文言を2つの文字列で構成し、最初の文字列「GPSXXXXXX」がマルチバンクプーリングであることを示す「ヘッダ部」であり、後続の文字列が「0150415000100001」が電文の識別子としている。もちろん、このような文字列の組合せに限定されるものではない。また、タグ70の上には、タグ59A、「Beneficiary」(受益者)と呼ばれるフィールドがあり、プーリング対象口座の顧客の名前、住所などが記述できる。
【0042】
本システムでは、SWIFTを介して、複数の方法で他行口座の残高を取得することが可能となり、照会時点の残高、前日最終から当日の入出金を加減した残高、当日最終の残高、それぞれの残高取得方法に対応可能が可能となる。また、相手銀行に合わせたタイミングで残高取得が可能となり、マルチバンクプーリング識別文言をSWIFT電文に埋め込みプーリング対象取引を自動的に切り分け可能となる。
【0043】
<連動フロー>
図4は、本発明の実施形態に係るマルチバンクプーリングシステムにおける連動フロー(資金集中)を示す図である。この図は、資金集中の段階において、プーリング実行前からプーリング実行後までの各処理で、親口座(図では「Master」と表記)、子口座(図では「Sub」と表記)間の資金移動がどのようになされるかを示したものである。ここでは例として、Masterが当行のHKG拠点であり、Subが他行のSNGの拠点であり、Masterの口座残高が+400USD、Subの口座残高が+100USDであったとする。
【0044】
この状態においてプーリングの資金集中が開始すると、まず、MasterからのSWIFT経由で、残高照会が発信され、その残高照会に対するSubからの応答として、+100USDの残高が取得される。そして、プーリング指示が発動すると、Subの残高分である+100USDを子口座から親口座に送金するように指示する。その指示に応え、子口座から親口座に100USDが送金されると、プーリング実行後、すなわち資金集中の結果、当行のHKG拠点の口座残高は+500USDとなり、他行のSNG拠点の口座残高は0USDとなる。
【0045】
<資金集中の具体例>
多通貨の資金集中の方法には、母国通貨集中型と多通貨1カ国集中型とがある。どちらも他行の口座を含むことができる。以下、その具体例を説明する。
【0046】
図5は、他行口座を含むマルチバンクプーリングの具体例1(通貨母国集中型)を示す図である。図示するように、当行英国拠点では、日本時間の9:00(開店時刻)の時点で、前日最終残高が200EURであるとし、同じ時刻でSNGの他行口座では、日本円での前日最終残高が0JPY、当日出金総額が50JPY、当日入金総額が100JPYであったとする。そして、日本時間の例えば14:00におけるユーロ通貨での前日最終残高が0EUR、当日出金総額が100EUR、当日入金総額が200EURであったとすると、SNGにおける現在のJPYの実質残高は、0JPY−50JPY+100JPY=50JPYであり、日本時間の例えば16:00時点でのEURの実質残高は、0EUR−100EUR+200EUR=100EURとなる。
【0047】
一方、日本の当行東京拠点では、同じ時刻での前日最終残高が150JPYであったとし、SNGの現在のJPYの実質残高である50JPYを、JPYの通貨母国である日本に資金集中させると、その結果、プーリング後の残高は200JPYとなる。また、SNGのEURの通貨母国を英国であるとすると、日本時間の例えば18:00に、SNGの現在の実質残高100EURを英国に資金集中させる。その結果、英国のプーリング後の残高は300EURとなり、SNGのプーリング残高は0EUR,0JPYとなる。
【0048】
図6は、他行口座を含むマルチバンクプーリングの具体例2(多通貨1カ国集中型)を示す図である。図示するように、当行英国拠点では、日本時間9:00(開店時刻)の時点で、ユーロ通貨での前日最終残高が200EURで、USドル通貨の最終残高100USDであったとする。また、同程度の時刻でSNGでは、ユーロ通貨での前日最終残高が0EUR、当日出金総額が100EUR、当日入金総額が200EURであったとする。また、同程度の時刻でHKGでは、USドル通貨の前日最終残高が0USD、当日出金総額が50USD、当日入金総額が100USDであったとする。
【0049】
そして、日本時間の例えば18:00でのSNGの実質残高100EURを英国に資金集中したとする。また、同時刻でのHKGの実質残高50USDを同じく英国に資金集中させたとする。その結果、英国のプーリング後の残高は、300EUR、150USDとなり、SNGのプーリング残高は、0EUR、HKGのプーリング残高は0USDとなる。
【0050】
図7は、本発明の実施形態に係るマルチバンクプーリングシステムにおける連動フロー(資金配分)を示す図である。この図は、資金配分の段階において、プーリング実行前からプーリング実行後までの各処理で、Master(親口座)、Sub(子口座)間の資金移動がどのようになされるかを示したものである。ここでは、Masterの口座残高が+400USD、Subの口座残高が▲100USDであったとする。残高照会の結果、Subの▲100USDが取得されるが、プーリング指示が発動されると、GPSから+100USDのMT101が豪亜送金システムに送信され、これを受けた豪亜送金システムは、▲100USDの送金(入金)を豪亜勘定系システムに行い、同時に送金システムから+100USDの送金指示であるMT103が他行のSNG拠点に対して送信される。プーリング実行後、すなわち資金配分の結果、当行のHKG拠点の口座残高は+300USDとなり、他行のSNG拠点の口座残高は0USDとなる。
【0051】
<実施形態の効果>
上記したように本発明の実施形態によれば、クロスボーダでのアクチュアルプーリングにおいて、異通貨の口座を含み、他行の口座も含めたマルチバンクのプーリングサービスを提供することができる。資金移動の送金依頼電文に、マルチバンクのプーリングのための電文であることを識別するためのマルチバンク識別文言を埋め込み、このマルチバンク識別文言を相手行から発信されるMT103電文内に設定をすることで、MT103受信時にマルチバンクプーリング独自の振る舞いを可能にすることができる。すなわち、他行のシステムに影響をおよぼすことなく、自行内のシステムだけで、マルチバンクプーリング独自の処理の振り分けなどを行うことができる。
【0052】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。なお、上記の実施形態では、本発明を物の発明としてマルチバンクプーリングシステムについて説明したが、本発明は、方法の発明(マルチバンクのプーリング方法)としても捉えることもできる。
【解決手段】マルチバンクプーリングシステムは、他行の子口座の口座残高を照会し、他行の子口座の口座残高を取得する手段を有する。そして、取得した口座残高に基づいて、資金集中及び資金配分の資金移動のための資金移動額を計算し、資金移動額を含んだ送金依頼電文に、マルチバンクのプーリングのための電文であることを識別するマルチバンク識別文言を埋め込み、他行に送信する。