(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6187953
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ボルトに締め込むナットの緩み止めの構造
(51)【国際特許分類】
F16B 39/02 20060101AFI20170821BHJP
F16B 37/14 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
F16B39/02 P
F16B37/14 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-257914(P2016-257914)
(22)【出願日】2016年12月16日
【審査請求日】2017年2月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000203896
【氏名又は名称】太田 良三
(72)【発明者】
【氏名】太田 良三
【審査官】
熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02101678(US,A)
【文献】
実開平02−087113(JP,U)
【文献】
実公昭43−011636(JP,Y1)
【文献】
実開昭61−109909(JP,U)
【文献】
実開昭58−137114(JP,U)
【文献】
特開昭55−155908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 39/02−39/08
F16B 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトに締め込むナットの緩み止めの構造において、下部材(19)に固定され、前記下部材に重ねて置かれた上部材(17)を通るボルト(1)と、前記上部材の上から前記ボルトに締め込まれ、前記ボルト(1)の上端面(3)を掩う蓋部(7)を設けた袋状の形状を有し、前記蓋部上面の周辺に片寄った位置に、前記蓋部を貫通する少なくとも1つの直孔(8)が設けられた締付ナット(6)と、前記直孔に嵌合され、上端面(11)に電気ドリルの回転軸先端に取付けた角型ドライバーピンが差し込まれる角孔(12)が設けられ、下端面(13)に円環状に配置された数個の山形切刃(14)が突出するよう形成された少なくとも1つの切刃付ピン(10)と、前記締付ナット(6)の上にねじ込まれる袋状緩み止めナット(15)とを備え、前記切刃付ピンの前記山形切刃(14)によって、前記ボルトの前記上端面(3)の周辺に片寄った位置に円環状の切溝(4)を切込み、前記切溝(4)に前記山形切刃(14)を食い込ませると共に、前記袋状緩み止めナット(15)により前記切刃付ピン(10)を押圧することを特徴とするナットの緩み止めの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は強い締付け力を必要とする並目ねじボルトに締め込んだナットの緩み止めを行う方法である。
【背景技術】
【0002】
緩み止めのためボルトにナットを固定する方法としては、ナットとボルトを貫通する共孔を開けここに割ピンを押込んで固定する方法があるが、この穿孔は現地で行うこともあり面倒であり、又一度ねじ戻しの後、再びナットを締めこむときは合致しない欠点があり、又ころがり軸受を押え込む時に使用するナットは細目ねじであり、大きな荷重には耐えきれず、しかも軸には溝加工を必要とするため広範囲に使用する並目ねじボルトに用いることは不適である、又ねじ面の摩擦力を高めるためのダブルナット式の緩み止めナットもあるが、この効果は不明である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は強力な締付け力を必要とする並目ねじのボルトにそのボルトの上端面に袋状の締付ナットの切刃付ピンの切刃を食い込ませることにより、締付ナットのゆるみを確実に阻止するようにする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ボルトに締め込むナットの緩み止めの構造において、下部材19に固定され、前記下部材に重ねて置かれた上部材17を通るボルト1と、前記上部材の上から前記ボルトに締め込まれ、前記ボルト1の上端面3を掩う蓋部7を設けた袋状の形状を有し、前記蓋部上面の周辺に片寄った位置に、前記蓋部を貫通する少なくとも1つの直孔8が設けられた締付ナット6と、前記直孔に嵌合され、上端面11に電気ドリルの回転軸先端に取付けた角型ドライバーピンが差し込まれる角孔12が設けられ、下端面13に円環状に配置された数個の山形切刃14が突出するよう形成された少なくとも1つの切刃付ピン10と、前記締付ナット6の上にねじ込まれる袋状緩み止めナット15とを備え、前記切刃付ピンの前記山形切刃14によって、前記ボルトの前記上端面3の周辺に片寄った位置に円環状の切溝4を切込み、前記切溝4に前記山形切刃14を食い込ませると共に、前記袋状緩み止めナット15により前記切刃付ピン10を押圧することを特徴とするナットの緩み止めの構造である。
【発明の効果】
【0005】
本発明を実施することにより中大口径のナットは激しい振動に確実に耐えることができるようになる、又ボルトのねじ面は雨水、泥水にも保護されるため建設機械等の用途にも使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態の一例として、ボルトに袋状締付ナットを締め込み、緩み止を行った状態の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
ボルトに締め込むナットの緩み止めの構造において、締付ナット6の形状をボルト1の上端面3を掩う厚肉の蓋部7を設けた袋状とし、この蓋部上面の周辺に片寄った位置に、この蓋部を貫通する直孔8を1箇所又は数箇所設けておく、直孔を2箇所設ける場合は蓋部上面の相対する位置に直孔を設ける、
図1、
図2、
図3及び
図4は直孔を1箇所のみ設けた場合を示している、そしてこの直孔に密接して円滑に回転するように切刃付ピン10が挿入されている、切刃付ピンの上端面11には角孔12を設け、その下端面13に円環状に配置された数個の山形切刃14を突出するよう形成しておく、この山形切刃は硬く焼入れされ、鋭く研磨されている。猶作業中、切刃付ピンの落脱を防止するため、磁化しておくことは望ましい、下部材19にボルト1を固定し、これを通して上部材17を重ねて置き、その上より袋状締付ナット6を強く締め込んだ後、その蓋部7上面の直孔8に切刃付ピン10を挿入し、この切刃付ピンの角孔12に電気ドリルの回転軸先端に取付けた角型ドライバーピンを差し込んで、切刃付ピンを回転させ、その下端の山形切刃14によって、ボルトの上端面3の周辺に片寄った位置に円環状の切溝4を切込み、この溝に山形切刃を食い込ませた状態とする、これにより袋状の締付ナットをボルトに固定する。
図4は切込みピンにより切込まれたボルト上端面の円環状の切溝を示すものであって袋状締付ナットの着脱を繰返したとき、その都度その数は増加するが、切込ピンの切込の効果に支障は生じない。
【0008】
袋状締付ナットの蓋部7の外周には雄ねじ9を設け、これに袋状緩み止めナット15の雌ねじ16をねじ込むようにしている、そしてこの袋状緩み止めナットの締め付けにより、切刃付ピン10を押圧して袋状締付ナット6のボルト1への固定を確実にし、振動等の外力により緩むことを阻止しうるようにする、袋状緩み止めナットの雌ねじ16と袋状締付ナットの雄ねじ9のねじ結合は、切刃付ピンを押圧するだけの働きであるため大きな力を必要としないため細目ねじとし、且嵌合をきつくすることができる、従って特に廻り止め用歯付座金等を併用する必要なく、充分振動に耐えることができる。
【0009】
ボルトの締付ねじは袋状締付ナット、切刃付ピン及び袋状緩み止めナットにより密閉されているため、雨水、泥水の浸入なくねじ面の錆びの発生し難い利点を持っている。
【符号の説明】
【0010】
1・・・ボルト 2・・・ボルトの締付ねじ
3・・・ボルトの上端面 4・・・上端面の円環状の切溝
5・・・植込ねじ 6・・・袋状締付ナット
7・・・袋状締付ナットの蓋部 8・・・袋状締付ナット蓋部の直孔
9・・・袋状締付ナット蓋部の雄ねじ 10・・・切刃付ピン
11・・・切刃付ピンの上端面 12・・・切刃付ピン上端面の角孔
13・・・切刃付ピンの下端面 14・・・切刃付ピン下端面の円環状の山形切刃
15・・・袋状緩み止めナット 16・・・袋状緩み止ナットの雌ねじ
17・・・上部材 18・・・上部材のボルト孔
19・・・下部材 20・・・下部材の雌ねじ
【要約】 (修正有)
【課題】締付ナットの緩みを確実に阻止する。
【解決手段】締付ナット6の形状をボルト1の上端面3を掩う厚肉の蓋部7を設けた袋状とし、この蓋部上面の周辺に片寄った位置に、この蓋部を貫通する直孔8を設けておく、袋状締付ナット6を強く締め込んだ後、その蓋部7上面の直孔8に切刃付ピン10を挿入し、この切刃付ピンの角孔12に電気ドリルの回転軸先端に取付けた角型ドライバーピンを差し込んで、切刃付ピンを回転させ、その下端の山形切刃14によって、ボルトの上端面3の周辺に片寄った位置に円環状の切溝4を切込み、この溝に山形切刃を食い込ませた状態とする、これにより袋状の締付ナットをボルトに固定し、そしてこの食い込みを保持するため、この上より袋状緩み止めナット15をかぶせて、これをねじ込むことにより切刃付ピン10を強く押圧して、袋状締付ナット6のボルト1への固定を確実にして、外力により緩むことを阻止する。
【選択図】
図1