【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜を2価のマンガン塩及び特定のアニオン性界面活性剤を含有する封孔処理液に浸漬することによって、皮膜外観を損なうことなく、ニッケル塩を含有する封孔処理液を用いた場合と同程度の染料定着性を付与でき、さらに耐食性、封孔度等の封孔性能を同程度付与することができ、しかも、酢酸ニッケル封孔を行う場合に比べ、比較的低い温度で封孔処理を行うことが可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液、及び該封孔処理液を用いる封孔処理方法を提供するものである。
項1. 水溶性の2価のマンガン塩、並びにスルホン酸塩型アニオン性界面活性剤及び硫酸エステル塩型アニオン性界面活性剤からなる群より選ばれた少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を含有する水溶液からなるアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液。
項2. 水溶性の2価のマンガン塩を0.1〜300g/L、アニオン性界面活性剤を0.05〜40g/L含有するpH5.3〜6.5の水溶液である上記項1に記載のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液。
項3. マンガン塩が、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、及びメタンスルホン酸マンガンからなる群より選ばれた少なくとも1種である上記項1又は2に記載のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液。
項4. マンガン塩が、酢酸マンガンである上記項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液。
項5. アニオン性界面活性剤が、疎水基として、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、ナフチル基、アルキルナフチル基、又はこれらの基が互いにエーテル結合若しくはエステル結合で結合した基を有するものである上記項1〜4のいずれかに記載のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液。
項6. アニオン性界面活性剤が、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩及びアルキル硫酸エステル塩からなる群より選ばれた少なくとも1種である上記項1〜5のいずれかに記載のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の封孔処理液。
項7. 上記項1〜6のいずれかに記載のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液中に、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品を浸漬することを特徴とするアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の封孔処理方法。
項8. 封孔処理液の液温が65〜95℃である上記項7に記載のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の封孔処理方法。
項9. 上記項7又は8に記載の方法により封孔処理されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品。
【0013】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0014】
封孔処理液
本発明の封孔処理液は、2価のマンガン塩、並びにスルホン酸塩型アニオン性界面活性剤及び硫酸エステル塩型アニオン性界面活性剤からなる群より選ばれた少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を含有する水溶液からなるものである。
【0015】
2価のマンガン塩としては、水溶性の塩であれば特に限定なく使用できる。このような2価のマンガン塩としては、硫酸マンガン、硝酸マンガン等の無機塩、酢酸マンガン等のカルボン酸塩、メタンスルホン酸マンガン等の有機スルホン酸塩等が好ましく、pH緩衝性のある酢酸マンガンが特に好ましい。これらの2価のマンガン塩は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0016】
本発明の封孔処理液では、2価のマンガン塩の濃度が低すぎる場合には、十分な耐汚染性、耐食性、封孔度等が得られないので好ましくない。また、濃度が高すぎる場合には、カブリなどの外観不良が発生しやすく、やはり好ましくない。よって、このような観点から2価のマンガン塩の濃度は、0.1〜300g/L程度とすることが好ましく、1〜150g/L程度とすることがより好ましい。
【0017】
アニオン性界面活性剤としては、親水基がスルホン酸塩であるスルホン酸塩型アニオン性界面活性剤、又は親水基が硫酸エステル塩である硫酸エステル塩型アニオン性界面活性剤であれば特に限定なく使用できる。このようなアニオン性界面活性剤としては、疎水基としてアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、ナフチル基、アルキルナフチル基等を有するスルホン酸塩型アニオン性界面活性剤、同様の疎水基を有する硫酸エステル塩型アニオン性界面活性剤等が例示される。これらの疎水基は、互いにエーテル結合又はエステル結合で結合したものであってもよい。
【0018】
また、このようなアニオン性界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等のスルホン酸塩型アニオン性界面活性剤;アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩型アニオン性界面活性剤が好ましい。
【0019】
アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩等に含まれるアルキル基としては、炭素数6〜30程度の直鎖又は分岐の高級アルキル基が挙げられる。このような高級アルキル基の具体例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコサニル、トリアコンタニル等が挙げられる。
【0020】
アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等における置換基として含まれるアルキル基としては、炭素数1〜20程度の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコサニル等が挙げられる。
【0021】
また、塩の形態としては、水溶性の塩であれば特に限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0022】
本発明の封孔処理液では、アニオン性界面活性剤の濃度が低すぎる場合には、十分な耐汚染性、耐食性及び封孔度が得られないので好ましくない。また、濃度が高すぎる場合にはシミ状ムラなどの外観不良が発生しやすく、やはり好ましくない。よって、このような観点からアニオン性界面活性剤の濃度は、0.05〜40g/L程度とすることが好ましく、0.2〜20g/L程度とすることがより好ましい。
【0023】
本発明の封孔処理液は、pHが5.3〜6.5程度の範囲内にあることが好ましく、5.5〜6.3程度の範囲内にあることがより好ましい。pHがこの範囲内にある場合には、後述する条件で封孔処理を行うことによって、陽極酸化皮膜の外観を損なうことなく染料定着性を向上させることができ、さらに耐食性、封孔度等の封孔性能を向上させることができる。これに対してpHが低すぎると、十分な耐汚染性、耐食性、封孔度等が得られないので好ましくない。一方、pHが高すぎる場合には、カブリなどの外観不良が発生しやすく、やはり好ましくない。封孔処理液のpHは、例えば、酢酸、硝酸、硫酸等の酸類の水溶液;アンモニア水、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の弱アルカリ類の水溶液を用いて上記pH範囲となるように調整すればよい。
【0024】
本発明の封孔処理液は、封孔性能、液の使用実用性等を向上させるために、必要に応じて、pH緩衝剤、pH調整剤、分散剤、防かび剤、錯化剤等の添加剤成分を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酢酸、酢酸塩、硝酸、硝酸塩、アンモニア、アンモニウム塩等のpH緩衝剤又はpH調整剤;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩等のスルホン酸系分散剤;安息香酸、安息香酸塩等の防カビ剤;クエン酸、クエン酸塩等の錯化剤などが挙げられる。
【0025】
封孔処理方法
本発明の封孔処理方法では、処理対象物はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品である。
【0026】
処理対象とするアルミニウム合金の陽極酸化皮膜は、一般的なアルミニウム合金に硫酸、シュウ酸等を用いた公知の陽極酸化法を適用して得られたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜であればよい。アルミニウム合金としては特に限定的ではなく、各種のアルミニウム主体の合金を陽極酸化の対象とすることができる。アルミニウム合金の具体例としては、JISに規定されているJIS−A 1千番台〜7千番台で示される展伸材系合金、AC、ADCの各番程で示される鋳物材、ダイカスト材等を代表とするアルミニウム主体の各種合金群等が挙げられる。
【0027】
アルミニウム合金に施される陽極酸化法としては、例えば、硫酸濃度が100〜400g/L程度の水溶液を用い、液温を0〜30℃程度として、0.5〜4A/dm
2程度の陽極電流密度で電解を行う方法が挙げられる。
【0028】
また、本発明の封孔処理方法においては、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に染色又は電解着色を施したものを処理対象としてもよい。
【0029】
染色方法としては、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜染色用染料を用いた染色方法であれば、いかなる方法で行われていてもよい。例えば、染料の水溶液にアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を浸漬する方法が挙げられる。染料としては、一般的なアルミニウム合金の陽極酸化皮膜染色用染料を用いることができる。具体的には、クロム含金アゾ系、無含金アゾ系、無含金キサンテン系、無含金アントラキノン系、銅フタロシアニン系、鉄含金アゾ系等の染料が挙げられる。これらの染料は、一種単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0030】
電解着色方法としては、公知の着色技術の方法を採用できる。例えば、陽極酸化を行った後、電解着色浴に浸漬し、二次電解を行うことにより陽極酸化皮膜に着色を施すことができる。電解着色浴としては、ニッケル塩−ホウ酸浴、ニッケル塩−スズ塩−硫酸浴などを例示できる。
【0031】
本発明の封孔処理方法では、上記したアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品を被処理物として用い、前述した封孔処理液中に被処理物を浸漬すればよい。また、必要に応じて、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品に染色、電解着色等を施した後、十分に水洗を行い、前述した封孔処理液中に被処理物を浸漬してもよい。これにより、被処理物のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の染料定着性を向上させることができ、さらに耐食性、封孔度等の封孔性能を大きく向上させることができる。
【0032】
また、本発明の封孔処理方法では、前述した封孔処理液を用いることにより、酢酸ニッケル封孔を行う場合に比べ、比較的低温で封孔処理を行うことができる。封孔処理温度は、酢酸ニッケル封孔を行う場合と同様に90℃以上であってもよく、65〜95℃程度であることが好ましい。熱エネルギー削減、作業安全性、封孔性能等の観点から、70〜85℃程度であることがより好ましい。
【0033】
封孔処理時間は、通常、処理対象とする陽極酸化皮膜の膜厚により決定することができる。処理時間が極端に短い場合には十分な耐食性、封孔度、耐汚染性等の向上が認められない。また、処理時間が極端に長い場合には、カブリなどの外観不良が生じ、陽極酸化皮膜の外観を損なうことがあるので好ましくない。このため、封孔処理時間は、通常、膜厚(μm)数×1〜5分程度の封孔処理時間とすればよく、膜厚(μm)数×1.5〜3分程度の封孔処理時間とすることが好ましい。例えば、陽極酸化皮膜の膜厚が10μmであるならば、浸漬時間は15〜30分程度とすることが好ましい。