【実施例】
【0035】
原材料
以下の実施例および比較例で用いた原材料は、次のとおりである。
サンニックスGH−5000: ポリオキシプロピレントリオール、平均分子量5054、OH価:33.3mgKOH/g、三洋化成工業株式会社製
サンニックスPP−2000: ポリオキシプロピレンジオール、平均分子量1979、OH価56.7mgKOH/g、三洋化成工業株式会社製
ニューポールBP−5P: ポリオキシプロピレンジオール、平均分子量537、OH価:209mgKOH/g、三洋化成工業株式会社製
コロネートT−80: 2,4−トリレンジイソシアナート/2,6−トリレンジイソシアナート=80/20(質量比)の混合物、NCO含有量48.3質量%、日本ポリウレタン工業株式会社製
コロネートT−100: コロネートT−100、2,4−トリレンジイソシアナート、NCO含有量48.3質量%、日本ポリウレタン工業株式会社製
MC−2000ソルベント: 石油系炭化水素溶剤、ノルマルパラフィン、イソパラフィン混合物、三協化学株式会社製
DETDA: エタキュア100、ジエチルトルエンジアミン、2,4−ジアミノ−3,5−ジエチルトルエン/2,6−ジアミノ−3,5−ジエチルトルエン=80/20(質量比)の混合物、アルベマール社製
エタキュア420: 4,4′−メチレンビス(N−sec−ブチルアニリン)、芳香族2級ジアミン、アルベマール社製
DINP: サンソサイザーDINP、ジイソノニルフタレート、新日本理化株式会社製
ジオクチル錫ジラウレート: KS−1200A−1、共同薬品株式会社製
添加剤類: 楠本化成株式会社製
炭酸カルシウム: NS#100、NS#1000、日東粉化工業株式会社製
【0036】
主剤の調製
製造例1(ジオール60当量%のイソシアナート基末端T−80系プレポリマー)
サンニックスPP−2000の202g、サンニックスGH−5000の459g、ニューポールBP−5Pの55g(当量比PP−2000/BP−5P/GH−5000=3/3/4)およびMC−2000ソルベントの72g(主剤の8質量%)にコロネートT−80の113g(当量比NCO/OH=1.90)を95℃〜105℃で8時間反応させ、NCO含有率が2.73質量%、遊離TDI含有率が0.87質量%のイソシアナート基末端TDI系プレポリマーを得た。
【0037】
製造例2(ジオール50当量%のイソシアナート基末端T−80系プレポリマー)
サンニックスPP−2000の127g、サンニックスGH−5000の542g、ニューポールBP−5Pの52g(当量比PP−2000/BP−5P/GH−5000=2/3/5)およびMC−2000ソルベントの72g(主剤の8質量%)にコロネートT−80の106g(当量比NCO/OH=1.90)を95℃〜105℃で8時間反応させ、NCO含有率が2.59質量%、遊離TDI含有率が0.85質量%のイソシアナート基末端TDI系プレポリマーを得た。
【0038】
製造例3(ジオール40当量%のイソシアナート基末端T−80系プレポリマー)
サンニックスPP−2000の118g、サンニックスGH−5000の604g、ニューポールBP−5Pの32g(当量比PP−2000/BP−5P/GH−5000=2/2/6)およびMC−2000ソルベントの45g(主剤の5質量%)にコロネートT−80の101g(当量比NCO/OH=1.95)を95℃〜105℃で8時間反応させ、NCO含有率が2.50質量%、遊離TDI含有率が0.68質量%のイソシアナート基末端TDI系プレポリマーを得た。
【0039】
製造例4(ジオール80当量%のイソシアナート基末端T−80系プレポリマー)
サンニックスPP−2000の380g、サンニックスGH−5000の259g、ニューポールBP−5Pの62g(当量比PP−2000/BP−5P/GH−5000=5/3/2)およびMC−2000ソルベントの72g(主剤の8質量%)にコロネートT−80の127g(当量比NCO/OH=1.90)を95℃〜105℃で5.5時間反応させ、NCO含有率が3.11質量%、遊離TDI含有率が0.98質量%のイソシアナート基末端TDI系プレポリマーを得た。
【0040】
製造例5(ジオール80当量%のイソシアナート基末端T−100系プレポリマー)
サンニックスPP−2000の380g、サンニックスGH−5000の259g、ニューポールBP−5Pの62g(当量比PP−2000/BP−5P/GH−5000=5/3/2)およびMC−2000ソルベントの72g(主剤の8質量%)にコロネートT−100の127g(当量比NCO/OH=1.90)を95℃〜105℃で3.5時間反応させ、NCO含有率が3.12質量%、遊離TDI含有率が0.98質量%のイソシアナート基末端TDI系プレポリマーを得た。
【0041】
硬化剤の調製
表1および表2の配合に従って、金属容器に液物を仕込み、攪拌機(ディゾルバー羽根)で低速混合し均一にした後、炭酸カルシウムを配合し1500rpmで10分間混合して硬化剤を得た。
【0042】
実施例1
DETDAの0.97質量部、エタキュア420の2.52質量部(当量比DETDA/エタキュア420=40/60)、DINPの27.84質量部に添加剤類2.07質量部および炭酸カルシウムNS#100の66.60質量部を加え、攪拌機(ディゾルバー羽根、1500rpm)で10分間混合して硬化剤を得た。この硬化剤と製造例1の方法で合成したジオール含有率60当量%、NCO含有率2.73質量%のイソシアナート基末端T−80系プレポリマー主剤を質量比2:1で混合しTDI系ウレタン防水材組成物を得た。
当該防水材組成物の23℃の可使時間は65分と十分に長く、23℃の硬化時間は8時間であり翌日施工が十分に可能であった。また硬化塗膜の初期物性、80℃1週間の加熱処理後および60℃1週間のアルカリ処理後の物性、トップコート接着性はいずれも防水材として十分な性能を示した。
【0043】
実施例2
DETDA、エタキュア420およびDINPを表1の配合量に変えた以外は実施例1と同様に行い、当量比DETDA/エタキュア420=40/60の硬化剤を得た。この硬化剤と製造例2の方法で合成したジオール含有率50当量%、NCO含有率2.59質量%のイソシアナート基末端T−80系プレポリマー主剤を質量比2:1で混合しTDI系ウレタン防水材組成物を得た。
当該防水材組成物の23℃の可使時間は64分、23℃の硬化時間は8.5時間であり実施例1と同等であった。硬化塗膜の初期物性は実施例1に比べてやや劣るものの、防水材として十分な性能を示した。更に、80℃1週間の加熱処理後および60℃1週間のアルカリ処理後の引張強さ比は実施例1より向上しており、防水材として十分な性能を示した。
【0044】
実施例3
DETDA、エタキュア420、DINP、添加剤類および炭酸カルシウムを表1の配合量に変えた以外は実施例1と同様に行い、当量比DETDA/エタキュア420=35/65の硬化剤を得た。この硬化剤と製造例3の方法で合成したジオール含有率40当量%、NCO含有率2.50質量%のイソシアナート基末端プレポリマー主剤を質量比2:1で混合しTDI系ウレタン防水材組成物を得た。
当該防水材組成物の23℃の可使時間は81分、23℃の硬化時間は7時間であり実施例1よりも可使時間が長く、硬化時間が短い作業性に優れた防水材が得られた。硬化塗膜の初期物性は防水材として十分な性能を示した。また、80℃1週間の加熱処理後および60℃1週間のアルカリ処理後の引張強さ比は実施例1、2より向上しており、防水材として十分な性能を示した。
【0045】
比較例1
DETDA、エタキュア420およびDINPを表1の配合量に変えた以外は実施例1と同様に行い、当量比DETDA/エタキュア420=40/60の硬化剤を得た。この硬化剤と製造例4の方法で合成したジオール含有率80当量%、NCO含有率3.11質量%のイソシアナート基末端プレポリマー主剤を質量比2:1で混合しTDI系ウレタン防水材組成物を得た。
当該防水材組成物の23℃の可使時間は65分、23℃の硬化時間は9.5時間であった。硬化塗膜の初期物性は、防水材として十分な性能を示したが、80℃1週間の加熱処理後および60℃1週間のアルカリ処理後の引張強さ比は、実施例1に比べ劣化が激しく防水材としての耐久性能は不十分なものであった。
【0046】
比較例2
製造例5の方法で合成したジオール含有率80当量%、NCO含有率3.12質量%のイソシアナート基末端T−100系プレポリマー主剤を使用した以外は比較例1と同様に行いTDI系ウレタン防水材組成物を得た。
当該防水材組成物の23℃の可使時間は77分、23℃の硬化時間は12時間であった。硬化塗膜の初期物性は、防水材として十分な性能を示したが、80℃1週間の加熱処理後および60℃1週間のアルカリ処理後の引張強さ比は、実施例1に比べ劣化が激しく防水材としての耐久性能は不十分なものであった。
【0047】
実施例4
DETDA、エタキュア420、ジオクチル錫ジラウレートの10質量%MC−2000溶液およびDINPを表2の配合量に変えた以外は実施例1と同様に行い、当量比DETDA/エタキュア420=30/70の硬化剤を得た。この硬化剤と製造例1の方法で合成したジオール含有率60当量%、NCO含有率2.73質量%のイソシアナート基末端プレポリマー主剤を質量比2:1で混合しTDI系ウレタン防水材組成物を得た。
硬化剤中のDETDA/エタキュア420当量比が実施例1の40/60から30/70となることにより、当該防水材組成物の23℃の可使時間は86分まで延長し、23℃の硬化時間は12時間とやや長くなるものの、翌日施工が十分に可能であった。硬化塗膜の初期物性、80℃1週間の加熱処理後および60℃1週間のアルカリ処理後の引張強さ比は、実施例1に比べてやや劣るものの、防水材として十分な性能を示した。
【0048】
実施例5
DETDA、エタキュア420、ジオクチル錫ジラウレートの10質量%MC−2000溶液およびDINPを表2の配合量に変えた以外は実施例1と同様に行い、当量比DETDA/エタキュア420=50/50の硬化剤を得た。この硬化剤と製造例1の方法で合成したジオール含有率60当量%、NCO含有率2.73質量%のイソシアナート基末端プレポリマー主剤を質量比2:1で混合しTDI系ウレタン防水材組成物を得た。
硬化剤中のDETDA/エタキュア420当量比が実施例1の40/60から50/50となることにより、当該防水材組成物の23℃の可使時間は52分とやや短くなるものの、23℃の硬化時間は7時間であり、翌日施工が十分に可能であった。硬化塗膜の初期物性、80℃1週間の加熱処理後および60℃1週間のアルカリ処理後の物性は、防水材として十分な性能を示した。
【0049】
比較例3
DETDA、エタキュア420、ジオクチル錫ジラウレートの10質量%MC−2000溶液およびDINPを表2の配合量に変えた以外は実施例1と同様に行い、当量比DETDA/エタキュア420=15/85の硬化剤を得た。この硬化剤と製造例1の方法で合成したジオール含有率60当量%、NCO含有率2.73質量%のイソシアナート基末端プレポリマー主剤を質量比2:1で混合しTDI系ウレタン防水材組成物を得た。
硬化剤中のDETDA/エタキュア420当量比が実施例1の40/60から15/85となることにより、当該防水材組成物の23℃の可使時間は129分と長くなるものの、23℃の硬化時間は15時間まで延長し、気温の低い冬季においては翌日施工が難しい硬化性となった。また、硬化塗膜の初期物性は引張強さおよび引裂き強さがJIS規格を満たしていなかった。更に、80℃1週間の加熱処理後および60℃1週間のアルカリ処理後の引張強さ比は、実施例1に比べ劣化が激しく防水材としての耐久性能は不十分なものであった。
【0050】
比較例4
DETDA、エタキュア420、ジオクチル錫ジラウレートの10質量%MC−2000溶液およびDINPを表2の配合量に変えた以外は実施例1と同様に行い、当量比DETDA/エタキュア420=70/30の硬化剤を得た。この硬化剤と製造例1の方法で合成したジオール含有率60当量%、NCO含有率2.73質量%のイソシアナート基末端プレポリマー主剤を質量比2:1で混合しTDI系ウレタン防水材組成物を得た。
硬化剤中のDETDA/エタキュア420当量比が実施例1の40/60から70/30となることにより、当該防水材組成物の23℃の可使時間は32分と短くなり気温の高い夏季などは作業性に問題が生ずると思われた。また、トップコート接着性も悪く防水材として不適であった。
【0051】
なお、各評価項目の測定方法は次のとおりである。
【0052】
[NCO(質量%)]
200mLの三角フラスコに主剤約1gを精秤し、これに0.5Nジ−n−ブチルアミン(トルエン溶液)10mL、トルエン10mLおよび適量のブロムフェノールブルーを加えた後メタノール約100mLを加え溶解する。この混合液を0.25N塩酸溶液で滴定する。NCO(質量%)は以下の式によって求められる。
NCO(質量%)=(ブランク滴定値−0.5N塩酸溶液滴定値)×4.202×0.25N塩酸溶液のファクター×0.25÷サンプル重量
【0053】
[遊離TDI量(質量%)]
主剤をナス型フラスコに20g精秤し、イソアミル安息香酸を100mL加えて溶解させ、ロータリーエバポレーターによって蒸留する(イソアミル安息香酸とTDIを共沸させる)。蒸発がとまったところでイソアミル安息香酸を50mL追加してさらに蒸留する。回収した蒸留分に0.5Nジ−n−ブチルアミン(トルエン溶液)10mLとトルエン10mLを加え、0.25N塩酸溶液で滴定する。遊離TDI量は以下の式によって求められる。
遊離TDI量(質量%)=[(ブランク滴定値−回収した蒸留分の滴定値)×0.25N塩酸溶液のファクター×0.25÷(主剤重量×TDI1gあたりの当量)]×100
【0054】
[可使時間(分)]
23℃、湿度50%の空気循環型環境試験室内において、主剤と硬化剤を所定の割合で攪拌・混合開始から、BH型粘度計で2rpmにおける粘度が60,000mPa・sになるまでの時間を測定した。
【0055】
[硬化性(23℃)]
23℃、湿度50%の空気循環式型環境試験室内において、主剤と硬化剤を所定の割合で攪拌・混合した防水材を2kg/m
2塗布し、完全に硬化しており靴で歩行できる状態になるまでの時間を硬化時間とした。
【0056】
[引張強さ(N/mm
2)]
JIS A 6021に基づいて測定を行った(JIS規格では引張強さは2.3N/mm
2以上)。
【0057】
[破断時の伸び率(%)]
JIS A 6021に基づいて測定を行った(JIS規格では破断時の伸び率は450%以上)。
【0058】
[引裂き強さ(N/mm)]
JIS A 6021に基づいて測定を行った(JIS規格では引張強さは14N/mm以上)。
【0059】
[硬度(デュロメーター)]
JIS K 7312に基づいて測定を行った。
【0060】
[加熱処理後の引張強さ比(%)と破断時の伸び率(%)]
JIS A 6021に基づいて行い、処理前に対する引張強さ比(%)および破断時の伸び率(%)を求めた。
【0061】
[アルカリ処理後の引張強さ比(%)と破断時の伸び率(%)]
処理条件を60℃、1週間(JIS A 6021では23℃で1週間)に変えた以外は、JIS A 6021に基づいて行い、処理前に対する引張強さ比(%)および破断時の伸び率(%)を求めた。
【0062】
[トップコート接着性]
23℃、湿度50%の空気循環型環境試験室内において、主剤と硬化剤を所定の割合で攪拌・混合した防水材を2kg/m
2塗布した。その3日後、トップコート(OTコートQ、田島ルーフィング株式会社製)を0.15kg/m
2塗布した。さらにその翌日、接着性試験を行った。接着試験は、トップコート面を2mmの碁盤目(25マス)にカットした部分を、ゴムベラ先端を厚さ5mmにカットした角の部分で10往復(5cm巾で移動)こすった後のトップコートの剥れを観察するラビング試験で行った。
評価○:全く剥れない。
評価○△:10%以下剥れるが実用上問題ない。
評価△:一部分(30%以下)剥れる。
評価×:30%以上剥れる。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】