特許第6187965号(P6187965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187965
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】蓄電装置及び該蓄電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20170821BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20170821BHJP
   H01G 9/26 20060101ALN20170821BHJP
   H01G 2/04 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
   H01M2/10 S
   B23K26/21 G
   !H01G9/00 521
   !H01G1/03 Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-174772(P2013-174772)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-43293(P2015-43293A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2016年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】西村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 教友
(72)【発明者】
【氏名】岸本 知徳
(72)【発明者】
【氏名】川田 政夫
(72)【発明者】
【氏名】町田 淳
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 英樹
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−216974(JP,A)
【文献】 特開2007−144431(JP,A)
【文献】 特開2002−346780(JP,A)
【文献】 特開2010−092610(JP,A)
【文献】 特開2009−072799(JP,A)
【文献】 特開2012−174693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01G 2/04
H01G 9/26
H01G 11/10
H01G 2/02
B23K 26/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に並んだ複数の蓄電素子と、
前記所定の方向において前記複数の蓄電素子の両側に配置される終端部材であって、前記所定の方向と直交する方向に拡がる第一接続面を有する終端部材と、
該終端部材に連結する連結部材であって、前記第一接続面に前記所定の方向で重ね合わせる第二接続面を有する連結部材と、
前記第一接続面及び前記第二接続面が互いに対向する領域内で、前記終端部材と前記連結部材とに亘って形成される溶接部と
を備え、
前記第一接続面及び前記第二接続面の少なくも何れか一方には、少なくとも前記溶接部の周囲に前記第一接続面と前記第二接続面とが前記所定の方向に離間した隙間部が設けられ
前記第一接続面及び前記第二接続面の少なくとも何れか一方には、凸部が設けられ、
前記凸部の先端部は、前記第一接続面又は前記第二接続面に当接し、
前記溶接部は、前記凸部の外側を通る環状に形成される、
蓄電装置。
【請求項2】
前記終端部材の前記第一接続面は、前記蓄電素子に対向する面と反対側の面に設けられ、
前記連結部材は、
前記終端部材に面して設けられる接続部であって、前記第二接続面を有する接続部と、
前記蓄電素子と前記終端部材とが並ぶ方向に沿って前記接続部から延びる梁部と
を備える
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
所定の方向に並んだ複数の蓄電素子の前記所定の方向の両側に配置される終端部材のうち前記所定の方向と直交する方向に拡がる第一接続面と該終端部材に連結する連結部材の第二接続面とが前記所定の方向に重ね合わされて、前記第一接続面及び前記第二接続面が互いに対向する領域内で前記所定の方向に離間した状態になるように、前記終端部材の前記第一接続面と前記連結部材の前記第二接続面とが配置される配置工程と、
前記終端部材の前記第一接続面と前記連結部材の前記第二接続面とが前記所定の方向において互いに離間した領域同士を部分的に溶接し、前記終端部材と前記連結部材とに亘り、且つ、前記第一接続面及び前記第二接続面の少なくとも何れか一方に設けられた凸部であって、その先端部を前記第一接続面又は前記第二接続面に当接させた凸部の外側を通るように、環状の溶接部を形成する溶接工程と
を備える
蓄電装置の製造方法。
【請求項4】
少なくとも前記第一接続面に、前記凸部が設けられ、
前記溶接工程は、前記終端部材の前記第一接続面上における前記凸部の周囲と前記連結部材の前記第二接続面とを溶接する
請求項3に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項5】
少なくとも前記第二接続面に、前記凸部が設けられ、
前記溶接工程は、前記連結部材の前記第二接続面上における前記凸部の周囲と前記終端部材の前記第一接続面とを溶接する
請求項3又は請求項に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項6】
前記配置工程は、前記終端部材に面した前記連結部材の前記第二接続面を前記終端部材の前記第一接続面に対向させて、前記連結部材を配置する
請求項3乃至請求項の何れか1項に記載の蓄電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子と、該蓄電素子と並んで配置される終端部材と、該終端部材に連結される連結部材とを備える蓄電装置及び該蓄電装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、蓄電装置は、蓄電素子と、該蓄電素子と並んで配置される終端部材と、該終端部材に連結される連結部材とを備える。連結部材は、終端部材に面して設けられる接続部と、蓄電素子と終端部材とが並ぶ方向に沿って接続部から延びる梁部とを備える。
【0003】
終端部材及び連結部材の接続部は、ボルト及びナットにより締結されている。そのため、ボルトの軸芯方向において、終端部材と連結部材とを挟んで締結するボルトの頭部とナットとを配置するスペースが蓄電装置には必要となる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ボルトがナットに締め付けられる際に、ボルトの頭部とナットとの間に挟まった連結部材の接続部がボルトとともに供回りすることがある。連結部材の位置が所望の位置からずれると、他の蓄電装置との適切な間隔を維持することができなくなったり、適切な水平度で設置することができなくなる。これ以外にも、ボルトに対してせん断方向の力が生じ、ボルトの座面の位置がずれた場合、蓄電素子を適切に保持できなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、終端部材と連結部材とが溶接されることで、このような問題が解決される。この場合、図11に示すように、終端部材3は、平面状の第一接続面31を有する。これに対し、連結部材4は、第一接続面31に重ね合わされる平面状の第二接続面41を有する。終端部材3と連結部材4とは、第一接続面31及び第二接続面41が互いに重ね合わされた状態で溶接される。すなわち、第一接続面31及び第二接続面41が互いに対向する領域内に終端部材3と連結部材4とに亘って溶接部7が形成される。
【0006】
ところで、上述のように、終端部材3の第一接続面31と連結部材4の第二接続面41とが密接した状態で、終端部材3と連結部材4とが部分的に溶接されると、溶接部7の周囲における第一接続面31及び第二接続面41の境界近傍に空洞化したブローホール(ガス溜まり)Bが形成される傾向にある。ブローホールBが発生すると、終端部材3と連結部材4との接合幅が狭くなるため、ブローホールBが発生していない場合と比較して溶接部7の溶接強度が低下する。
【0007】
さらに、蓄電素子や連結部材4が振動したりすると、溶接部7の周辺に応力集中が発生する。ブローホールBの形成により溶接強度が低下していた場合、溶接部7の周辺に集中した応力によって溶接部7の一部が破損する場合がある。そのため、この種の蓄電装置は、応力集中に起因して溶接部7が破損する虞があり、終端部材3と連結部材4との接続部分における剛性が確保できない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−092610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑み、ブローホールの形成を抑制することのできる蓄電装置及び該蓄電装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る蓄電装置は、所定の方向に並んだ複数の蓄電素子と、所定の方向において複数の蓄電素子の両側に配置される終端部材であって、所定の方向と直交する方向に拡がる第一接続面を有する終端部材と、該終端部材に連結する連結部材であって、第一接続面に所定の方向で重ね合わせる第二接続面を有する連結部材と、第一接続面及び第二接続面が互いに対向する領域内で、終端部材と連結部材とに亘って形成される溶接部とを備え、第一接続面及び第二接続面の少なくも何れか一方には、少なくとも溶接部の周囲に第一接続面と第二接続面とが所定の方向に離間した隙間部が設けられ、第一接続面及び第二接続面の少なくとも何れか一方には、凸部が設けられ、前記凸部の先端部は、前記第一接続面又は前記第二接続面に当接し、溶接部は、凸部の外側を通る環状に形成される。
【0011】
かかる構成によれば、溶接部は、終端部材の第一接続面と連結部材の第二接続面とが溶接されるときに発生するガスを隙間部に逃がして形成される。つまり、本発明に係る蓄電装置には、溶接時に発生するガスが第一接続面と第二接続面との間に閉じ込められず、ブローホールの形成が抑制される。そのため、溶接部の接合幅が狭くなることが抑制される。例え、終端部材や連結部材に外力が加わって、溶接部における第一接続面と第二接続面との境界近くに応力が集中した場合であっても、溶接部が容易に破損しない。そのため、終端部材と連結部材との接続部分における剛性が確保される。
【0012】
ここで、本発明に係る蓄電装置の一態様として、終端部材の第一接続面は、蓄電素子に対向する面と反対側の面に設けられ、連結部材は、終端部材に面して設けられる接続部であって、第二接続面を有する接続部と、蓄電素子と終端部材とが並ぶ方向に沿って接続部から延びる梁部とを備えるようにすることができる。
【0013】
かかる構成によれば、蓄電素子が発熱するなどして、蓄電素子のケース内の収容物の体積が増加し、該ケースが膨張して、ケースにおける終端部材に面する面によって終端部材の第一接続面が押される場合、接続部の第二接続面が終端部材の第一接続面を受け止める。蓄電素子のケースが終端部材を押す外力は、溶接部の圧縮方向に加わり、溶接部のせん断方向には作用しない。そのため、溶接部がケースの膨張に対して容易に破損しない。そして、終端部材と連結部材との接続部分における剛性が確保される。
【0014】
本発明に係る蓄電装置の製造方法は、所定の方向に並んだ複数の蓄電素子の所定の方向の両側に配置される終端部材のうち所定の方向と直交する方向に拡がる第一接続面と該終端部材に連結する連結部材の第二接続面とが所定の方向に重ね合わされて、第一接続面及び第二接続面が互いに対向する領域内で所定の方向に離間した状態になるように、終端部材の第一接続面と連結部材の第二接続面とが配置される配置工程と、終端部材の第一接続面と連結部材の第二接続面とが所定の方向において互いに離間した領域同士を部分的に溶接し、終端部材と連結部材とに亘り、且つ、第一接続面及び第二接続面の少なくとも何れか一方に設けられた凸部であって、その先端部を前記第一接続面又は前記第二接続面に当接させた凸部の外側を通るように、環状の溶接部を形成する溶接工程とを備える。
【0015】
かかる構成によれば、配置工程により第一接続面及び第二接続面が互いに対向する領域内を離間させた終端部材及び連結部材が溶接工程で溶接されることになる。終端部材と連結部材とが溶接されるときに発生するガスは、第一接続面と第二接続面との間の隙間に逃がす。つまり、溶接時に発生するガスが第一接続面と第二接続面との間に閉じ込められず、ブローホールの形成が抑制される。そのため、溶接部の接合幅が狭くなることが抑制される。例え、終端部材や連結部材に外力が加わって、溶接部における第一接続面と第二接続面との境界近くに応力が集中した場合であっても、容易に破損しない溶接部を有する蓄電装置が製造される。さらに、この蓄電装置には、終端部材と連結部材との接続部分における剛性が確保されている。
【0016】
この場合、少なくとも第一接続面に凸部が設けられ、溶接工程は、終端部材の第一接続面上における凸部の周囲と連結部材の第二接続面とを溶接することが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、第一接続面上における凸部の周囲と第二接続面との間には、隙間が形成される。そのため、溶接工程において、終端部材及び連結部材は、第一接続面上における凸部と第二接続面とが密接している領域を避けて、終端部材及び連結部材が溶接されるときに発生するガスを逃がす隙間のある領域を溶接することができる。
【0020】
また、少なくとも前記第二接続面に、凸部が設けられ、溶接工程は、連結部材の第二接続面上における凸部の周囲と終端部材の第一接続面とを溶接することが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、第一接続面と第二接続面上における凸部の周囲との間には、隙間が形成される。そのため、溶接工程において、終端部材及び連結部材は、第一接続面と第二接続面上における凸部とが密接している領域を避けて、終端部材及び連結部材が溶接されるときに発生するガスを逃がす隙間のある領域を溶接することができる。
【0024】
また、本発明に係る蓄電装置の製造方法の一態様として、配置工程は、終端部材に面した連結部材の第二接続面を終端部材の第一接続面に対向させて、連結部材を配置するようにすることができる。
【0025】
かかる構成によれば、配置工程において終端部材と連結部材とが連結部材の第二接続面で終端部材の第一接続面を受け止める位置関係となる。そのため、蓄電素子が発熱するなどして、蓄電素子のケース内の収容物の体積が増加し、該ケースが膨張して、ケースによって終端部材の第一接続面が押されるようなことがあっても、蓄電素子のケースが終端部材を押す外力は、溶接部の圧縮方向に加わり、溶接部のせん断方向には作用しない。つまり、溶接部がケースの膨張に対して容易に破損しない蓄電装置が製造される。そして、この蓄電装置は、終端部材と連結部材との接続部分における剛性を有したものとなる。
【発明の効果】
【0026】
以上の如く、本発明に係る蓄電装置及び該蓄電装置の製造方法によれば、ブローホールの形成を抑制することのできるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電池モジュールの全体斜視図である。
図2図2は、同実施形態に係る電池モジュールの正面図である。
図3図3は、同実施形態に係る電池モジュールの終端部材及び連結部材の全体斜視図である。
図4図4は、終端部材と連結部材との接続部分をX方向に沿って切断した要部断面図であって、溶接前の状態を示す断面図である。
図5図5は、終端部材と連結部材との接続部分をX方向に沿って切断した要部断面図であって、溶接後の状態を示す断面図である。
図6図6は、本発明の他の実施形態に係る電池モジュールの終端部材及び連結部材の全体斜視図である。
図7図7は、終端部材と連結部材との接続部分をY方向に沿って切断した断面図であって、この接続部分をX方向における連結部材側から見た断面図である。
図8図8は、本発明の別の実施形態に係る電池モジュールの終端部材と連結部材との接続部分をX方向に沿って切断した要部断面図であって、溶接後の状態を示す断面図である。
図9図9は、本発明の更に別の実施形態に係る電池モジュールの終端部材と連結部材との接続部分をX方向に沿って切断した要部断面図であって、溶接後の状態を示す断面図である。
図10図10は、本発明の更に別の実施形態に係る電池モジュールの終端部材と連結部材との接続部分をX方向に沿って切断した要部断面図であって、溶接後の状態を示す断面図である。
図11図11は、従来における終端部材の第一接続面と連結部材の第二接続面とが重ね合わされて溶接されたときに終端部材と連結部材とに形成される溶接部を説明する要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る蓄電装置の一実施形態である電池モジュールについて、添付図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る電池モジュールは、図1に示すように、電池セル(蓄電素子)1と、該電池セル1と並んで配置されるスペーサ8と、該電池セル1及びスペーサ8を保持するフレーム2とを備える。
【0029】
電池モジュールは、複数の電池セル1を有する。複数の電池セル1は、第一方向Xに一列に整列している。各電池セル1は、第一方向Xに扁平な角形電池である。各電池セル1は、互いに絶縁された正極板と負極板とを含む電極体(図示せず)が収容されるケース11と、該ケース11の上面に設けられる外部端子12とを備える。
【0030】
スペーサ8は、隣り合う電池セル1の間に配置されている。そのために、スペーサ8は、隣り合う電池セル1のケース11の間に流路を形成する。更に、スペーサ8は、第一方向Xに一列に整列する複数の電池セル1の両側にもそれぞれ配置されている。つまり、スペーサ8は、電池セル1のケース11とフレーム2の終端部材3との間に配置されている。そして、スペーサ8は、電池セル1のケース11と終端部材3との間に流路を形成する。これらの流路には、電池セル1のケース11の側面に沿って冷却媒体が流通する。
【0031】
以下においては、便宜上、第一方向をX方向(各図に示された直交軸のうちのX軸方向)といい、第一方向と直交する第二方向をY方向(各図に示された直交軸のうちのY軸方向)といい、第一方向及び第二方向と直交する第三方向をZ方向(各図に示された直交軸のうちのZ軸方向)という。各図においては、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれ一方側に対し、X、Y、Zの記号を付している。なお、Z方向が鉛直方向に置かれた場合、X方向は前後方向となり、Y方向は左右方向となる。
【0032】
フレーム2は、図1乃至図3に示すように、複数の電池セル1と並んで配置される終端部材3と、該終端部材3に連結する連結部材4とを備える。終端部材3及び連結部材4は、共に、溶融亜鉛メッキ鋼板(SGCC)により製造されている。
【0033】
フレーム2は、一対の終端部材3を備えている。一対の終端部材3は、第一方向Xにおける複数の電池セル1及び複数のスペーサ8の両側に配置される。つまり、一対の終端部材3は、複数の電池セル1及び複数のスペーサ8を挟んでいる。フレーム2は、複数の連結部材4を備えている。各連結部材4は、一対の終端部材3のそれぞれに連結されている。本実施形態に係る複数の連結部材4は、一対の連結部材4である。一方の連結部材4は、一対の終端部材3のうちの一方の終端部材3の一辺と、他方の終端部材3の一辺とを連結する。他方の連結部材4は、一対の終端部材3のうちの一方の終端部材3の一辺と対向する一辺と、他方の終端部材3の一辺と対向する一辺とを連結する。このため、フレーム2は、一対の終端部材3が複数の電池セル1及び複数のスペーサ8を挟んだ状態で、複数の電池セル1及び複数のスペーサ8を一体に締結する。
【0034】
なお、一対の終端部材3は、共に、同一の形状及び同一の構造を有する。一対の連結部材4は、共に、同一の形状及び同一の構造を有する。これに伴い、以下、単一の終端部材3及び単一の連結部材4について説明する。
【0035】
終端部材3は、Y−Z平面上におけるケース11の形状に対応して略四角形状に形成されている。終端部材3は、図2乃至図4に示すように、第一接続面31を有する。第一接続面31は、少なくとも終端部材3の四隅に設けられる。第一接続面31は、平面状である。より詳しく説明すると、終端部材3は、電池セル1に対向する第一面31aと、該第一面31aと反対側の第二面31bとを備える。第一接続面31は、第二面31bに設けられる。
【0036】
連結部材4は、終端部材3の第二面31bに面して設けられる接続部5と、電池セル1と終端部材3とが並ぶ方向(X方向)に沿って接続部5から延びる梁部6とを備える。
【0037】
連結部材4は、図4に示すように、第一接続面31に重ね合わせる第二接続面41を有する。第二接続面41は、接続部5に設けられており、終端部材3の第一接続面31と面対向する面である。
【0038】
接続部5は、図2又は図3に示すように、連結部材4における終端部材3に面する部分である。具体的には、接続部5は、終端部材3のX方向に向いた面(Y−Z平面に沿う面)に対向する第一接続部51と、終端部材3のZ方向に向いた面(X−Y平面に沿う面)に対向する第二接続部52と、終端部材3のY方向に向いた面(X−Z平面に沿う面)に対向する第三接続部53とを備える。
【0039】
第一接続部51は、X方向における梁部6の両端に設けられる。一つの連結部材4には、一対の梁部6が設けられるため、第一接続部51は、一つの連結部材4の4箇所に設けられる。第一接続部51は、梁部6から略直交する方向(Y方向)に延びる。第一接続部51は、一対の終端部材3、複数の電池セル1及び複数のスペーサ8をX方向に位置決めする。
【0040】
第一接続部51は、平面状に形成されている。第一接続部51は、図4に示すように、終端部材3に面する第一面51aと、該第一面51aと反対側の第二面51bとを有する。第一接続部51は、終端部材3に向かって突出する凸部51cを有する。凸部51cは、第一面51aに設けられる。更に、第一接続部51は、第一面51aにおける凸部51cが設けられた位置の反対側の第二面51b上の位置に凹部51dを有する。凹部51dは、第一面51aに凸部51cを形成するために、第二面51bを凹ませて膨出させた部分である。
【0041】
凸部51cは、円柱状に形成されている。凸部51cの先端部は、平面状に形成されており、第一面51aと平行に形成されている。凸部51cの先端部は、終端部材3に当接する部分である。凸部51cは、第一面51a上に複数設けられる。本実施形態には、二つの凸部51cが設けられている。二つの凸部51cは、第一面51a上の中央部近傍に離間して配置される。二つの凸部51cは、第一面51aにおける終端部材3の対角方向と交差する方向に並んで配置される。
【0042】
第二接続部52は、図3に示すように、一対の梁部6のうちの一方の梁部6における両端部の上部と、他方の梁部6における両端部の下部に設けられる。第二接続部52は、梁部6から略直交する方向(Y方向)に延びる。これらの第二接続部52のうち、Z方向に並んで設けられる一対の第二接続部52は、終端部材3の上端と下端とに接するように配置されており、終端部材3をZ方向に位置決めする。第二接続部52は、平面状に形成されている。
【0043】
第三接続部53は、一対の梁部6の間に設けられて、一対の梁部6同士を繋ぐ。第三接続部53は、梁部6の一端部と梁部6の他端部とに設けられる。第三接続部53は、終端部材3のY方向における両端に接するように配置されており、終端部材3をY方向に位置決めする。第三接続部53は、平面状に形成されている。
【0044】
梁部6は、一対の終端部材3、複数の電池セル1及び複数のスペーサ8に沿ってX方向に設けられる。
【0045】
電池モジュールでは、図5に示すように、終端部材3と連結部材4とが溶接(本実施形態では、レーザー溶接)にて接続されている。そして、第一接続面31及び第二接続面41が互いに対向する領域内で、終端部材3と連結部材4とに亘って形成される溶接部7が形成されている。第一接続面31及び第二接続面41の少なくも何れか一方には、少なくとも溶接部7の周囲に第一接続面31と第二接続面41とが離間して形成される隙間部Cが形成されている。溶接部7は、その隙間部Cが形成された領域が溶接されて形成されている。
【0046】
具体的には、溶接部7は、連結部材4の各接続部5の第一面51a上における凸部51cの周囲と終端部材3の第一接続面31とが溶接されて形成されている。溶接部7は、図1乃至図3に示すように、接続部5の第二面51b上に平面視環状(長円状)に形成される。溶接部7は、第一面51a上における一対の凸部51cの外側を通る環状に形成される。そのため、連結部材4に対してY方向又はZ方向から外力が作用しても、溶接部7に応力が集中することが抑えられる。従って、溶接部7の強度が高められる。また、溶接部7は、連結部材4の接続部5の第二面51bから終端部材3の第一接続面31に亘って形成されている。厚さ方向における溶接部7の断面積が第二面51bから第一接続面31に向かうほど小さくなっている。すなわち、厚さ方向における溶接部7の断面形状は、逆三角形状若しくは逆台形状に形成されている。
【0047】
本実施形態に係る電池モジュールは、以上の通りである。続いて、電池モジュールの製造方法について添付図面を参照しつつ説明する。
【0048】
まず、複数の電池セル1及び複数のスペーサ8は、図1に示す完成時と同じ整列状態に配置される。そして、この状態の複数の電池セル1及び複数のスペーサ8は、その整列方向(X方向)の両側から一対の終端部材3で挟まれる。一対の連結部材4は、一対の終端部材3の四隅に接続部5の第一面51aが対向するように配置される。
【0049】
具体的には、図4に示すように、複数の電池セル1及び複数のスペーサ8と並んで配置される終端部材3の第一接続面31と該終端部材3に連結する連結部材4の第二接続面41とが重ね合わされて、第一接続面31及び第二接続面41が互いに対向する領域内で離間した状態になるように、終端部材3の第一接続面31と連結部材4の第二接続面41とが配置される(配置工程)。この配置工程では、連結部材4は、終端部材3に面した連結部材4の第二接続面41を終端部材3の第一接続面31に対向させて、配置される。
【0050】
連結部材4が終端部材3に押し付けられた状態で、図5に示すように、溶接装置は、溶接ヘッドHからレーザ光Lを出射させる。溶接装置は、図2に示されているように、レーザ光Lが接続部5の第二面51bの凹部51dの外側を通るように溶接ヘッドHを環状に移動させる。その結果、終端部材3の第一接続面31と連結部材4の第二接続面41との互いに離間した領域同士が部分的に溶接されて、終端部材3と連結部材4とに亘って溶接部7が形成される。溶接部7は、連結部材4の第二接続面41上における凸部51cの周囲と終端部材3の第一接続面31とが溶接されたものである。
【0051】
そして、溶接装置が終端部材3と連結部材4とを溶接することで、フレーム2が複数の電池セル1及び複数のスペーサ8を一体に保持する。このようにして、大容量かつ高電圧の電池(電池モジュール)が完成する。
【0052】
以上より、本実施形態に係る電池モジュールによれば、溶融亜鉛メッキ鋼板で製造されている終端部材3及び連結部材4の溶接において、溶融金属中でガス化した亜鉛が大量に形成されるが、溶接部7は、終端部材3の第一接続面31と連結部材4の第二接続面41とが溶接されるときに発生するガスを隙間部Cに逃がして形成される。つまり、本実施形態に係る電池モジュールには、溶接時に発生するガスが第一接続面31と第二接続面41との間に閉じ込められず、ブローホールの形成が抑制される。そのため、溶接部7の接合幅が狭くなることが抑制される。例え、終端部材3や連結部材4に外力が加わって、溶接部7における第一接続面31と第二接続面41との境界近くに応力が集中した場合であっても、溶接部7が容易に破損しない。そのため、終端部材3と連結部材4との接続部分における剛性が確保される。
【0053】
なお、ブローホールの形成が抑制されたか否かの判断は、本実施形態に係る電池モジュールの溶接部7が、第一接続面31と第二接続面41との間に隙間を形成せずに製造された電池モジュールの溶接部7と比較して、単位面積当たりの空孔面積が減少したか否かで行う。単位面積当たりの空孔面積は、例えば、溶接部7の断面を光学顕微鏡により観察することにより計測される。つまり、本実施形態に係る電池モジュールによれば、隙間を形成せずに製造された電池モジュールと比較して溶接部7の空孔面積が減少する。
【0054】
また、電池セル1が発熱するなどして、電池セル1のケース11内の収容物の体積が増加し、該ケース11が膨張して、ケース11における終端部材3に面する面によって終端部材3の第一接続面31がX方向に押される場合、接続部5の第二接続面41が終端部材3の第一接続面31を受け止める。
【0055】
しかも、複数の電池セル1(積層体)がフレーム2によって抱え込むように把持されている。梁部6の両端に設けられる一対の接続部5の第二接続面41は、積層方向(X方向)に変位した複数の電池セル1(積層体)によって押されてくる終端部材3の第一接続面31を互いに受け止め合う。
【0056】
そのため、電池セル1のケース11が終端部材3を押す外力は、溶接部7の圧縮方向に加わり、せん断方向に作用しない。また、溶接部7の引っ張り方向にも作用しない。そのため、電池モジュールが振動したときのせん断方向における荷重を考慮して溶接部7の強度が設計されておれば、溶接部7がケース11の膨張に対して容易に破損しない。そして、終端部材3と連結部材4との接続部分における剛性が確保される。
【0057】
また、従来のように終端部材3と連結部材4とをボルトとナットとで締結していた場合と比較して、ボルト及びナットを配置するスペースが不要となり、X方向における電池モジュールの全体長さが短くなる。これに伴い、電池モジュールの容積及び重量も低減される。
【0058】
また、本実施形態に係る電池モジュールの製造方法によれば、配置工程により第一接続面31及び第二接続面41が互いに対向する領域内を離間させた終端部材3及び連結部材4が溶接工程で溶接されることになる。終端部材3と連結部材4とが溶接されるときに発生するガスは、第一接続面31と第二接続面41との間の隙間に逃がす。つまり、溶接時に発生するガスが第一接続面31と第二接続面41との間に閉じ込められず、ブローホールの形成が抑制される。そのため、溶接部7の接合幅が狭くなることが抑制される。例え、終端部材3や連結部材4に外力が加わって、溶接部7における第一接続面31と第二接続面41との境界近くに応力が集中した場合であっても、容易に破損しない溶接部7を有する電池モジュールが製造される。さらに、この電池モジュールには、終端部材3と連結部材4との接続部分における剛性が確保されている。
【0059】
また、第一接続面31と第二接続面41上における凸部51cの周囲との間には、隙間(隙間部C)が形成される。そのため、溶接工程において、終端部材3及び連結部材4は、第一接続面31と第二接続面41上における凸部51cとが密接している領域を避けて、終端部材3及び連結部材4が溶接されるときに発生するガスを逃がす隙間のある領域を溶接することができる。
【0060】
また、配置工程において終端部材3と連結部材4とが連結部材4の第二接続面41で終端部材3の第一接続面31を受け止める位置関係となる。そのため、電池セル1が発熱するなどして、電池セル1のケース11内の収容物の体積が増加し、該ケース11が膨張して、ケース11によって終端部材3の第一接続面31が押されるようなことがあっても、電池セル1のケース11が終端部材3を押す外力は、溶接部7の圧縮方向に加わり、溶接部7のせん断方向には作用しない。つまり、溶接部7がケース11の膨張に対して容易に破損しない電池モジュールが製造される。そして、この電池モジュールは、終端部材3と連結部材4との接続部分における剛性を有したものとなる。
【0061】
なお、本発明に係る蓄電装置及び製造方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記した変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0062】
上記実施形態においては、溶接部7が平面視円環状に形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、溶接部7は、平面視線状や平面視点状であってもよい。
【0063】
上記実施形態においては、溶接部7が終端部材3の第一接続面31と第一接続部51の第二接続面41を溶接して形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、溶接部は、終端部材3の上端又は下端(第一接続面)と第二接続部52の第二接続面とを溶接して形成されていてもよいし、終端部材3のY方向の端部(第一接続面)と第三接続部53の第二接続面とを溶接して形成されていてもよい。
【0064】
また、図6及び図7に示すように、終端部材3の第一面31aに連結部材4を連結する電池モジュールである場合、溶接部107は、第一接続部51の第二面51b(上記実施形態における第一接続部51の第二面51bと同じ面)と終端部材3の第一面31a(上記実施形態における終端部材3の第一面31aと同じ面)とを溶接して形成されていてもよい。
【0065】
上記実施形態において、凸部51cが連結部材4の第二接続面41に形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、図8に示すように、凸部131cは、終端部材3の第一接続面31に形成されていてもよい。この場合、溶接工程では、終端部材3の第一接続面31上における凸部131cの周囲と連結部材4の第二接続面41とを溶接することになる。第一接続面31上における凸部131cの周囲と第二接続面41との間には、隙間(隙間部C)が形成される。そのため、溶接工程において、終端部材3及び連結部材4は、第一接続面31上における凸部131cと第二接続面41とが密接している領域を避けて、終端部材3及び連結部材4が溶接されるときに発生するガスを逃がす隙間のある領域を溶接することができる。なお、凸部は、終端部材3の第一接続面31及び連結部材4の第二接続面41の両面に設けられていてもよい。
【0066】
上記実施形態において、隙間部Cが凸部51cにより形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、隙間部Cは、連結部材4の第二接続面41に凹部251cを形成することにより設けられていてもよい。この場合、溶接工程では、連結部材4の第二接続面41に設けられる凹部251cと終端部材3の第一接続面31とを溶接することになる。第一接続面31と第二接続面41上における凹部251cの凹んだ部分との間には、隙間(隙間部C)が形成される。そのため、溶接工程において、終端部材3及び連結部材4は、第一接続面31と第二接続面41上における凹部251cの突出した部分とが密接している領域を避けて、終端部材3及び連結部材4が溶接されるときに発生するガスを逃がす隙間のある領域を溶接することができる。
【0067】
また、図10に示すように、隙間部Cは、終端部材3の第一接続面31に凹部331cを形成することにより設けられていてもよい。この場合、溶接工程では、終端部材3の第一接続面31に設けられる凹部331cと連結部材4の第二接続面41とを溶接することになる。第一接続面31上における凹部331cの凹んだ部分と第二接続面41との間には、隙間(隙間部C)が形成される。そのため、溶接工程において、終端部材3及び連結部材4は、第一接続面31上における凹部331cの突出した部分と第二接続面41とが密接している領域を避けて、終端部材3及び連結部材4が溶接されるときに発生するガスを逃がす隙間のある領域を溶接することができる。なお、隙間部Cは、終端部材3の第一接続面31及び連結部材4の第二接続面41の両面に凹部を形成することにより設けられていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、終端部材3及び連結部材4が溶融亜鉛メッキ鋼板によって形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、終端部材3及び連結部材4は、銅やSUS、アルミニウム等の金属材料によって形成される他、ニッケルメッキ鋼板や錫メッキ鋼板によって形成されてもよい。
【0069】
上記実施形態においては、レーザ溶接により終端部材3及び連結部材4を溶接したが、これに限定されない。例えば、一般的なアーク溶接やガス溶接等であってもよい。
【0070】
上記実施形態においては、電池セル1が角形電池であったが、これに限定されない。例えば、電池セルは、外観直方体状の角形電池や、外観円柱状の丸形電池などであってもよい。
【0071】
本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタにも適用可能である。そして、電池の種類や大きさ(容量)は任意である。
【符号の説明】
【0072】
1…電池セル、2…フレーム、3…終端部材、4…連結部材、5…接続部、6…梁部、7…溶接部、11…ケース、12…外部端子、31…第一接続面、31a…第一面、31b…第二面、41…第二接続面、51…第一接続部、51a…第一面、51b…第二面、51c…凸部、51d…凹部、52…第二接続部、53…第三接続部、107…溶接部、131c…凸部、251c…凹部、207…溶接部、331c…凹部、307…溶接部、B…ブローホール、C…隙間部、H…溶接ヘッド、L…レーザ光、X…第一方向、Y…第二方向、Z…第三方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11