(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の実施形態においては、地下施設の出入口として地下鉄の出入口用構造物に止水装置を設置した例について説明するが、止水装置が設置される出入口を限定する趣旨ではない。
止水装置は、例えば、地下通路ないし地下街の出入り口用の出入口構造物や、地下室を有する建築物の出入り口、地下鉄ないし地下街へ通じる通路を備えた建物の出入り口、地下駐車場への自動車の出入り口、および地下駐輪場への自転車の出入り口等に利用される。
なお、以下の説明において、「前後、左右、上下」は、
図1,
図2等において図示した方向を基準とする。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の止水装置は、出入口用構造物1の出入口Gを密閉する止水扉10と、止水扉10を昇降駆動する駆動手段20(
図2参照)と、止水扉10の内側(後側)に配置される防潮板30(
図2参照)とを備える。止水扉10は、河川の洪水や津波襲来時に出入口Gを密閉可能であり、
図2,3に示すように、上扉11と、上扉11の下端にヒンジ13を介して連結される下扉12とを有する。止水扉10は、不使用時に、
図2に示すように、ヒンジ13で折り畳まれた状態で出入口Gの上方に保持され、出入口Gを開放するように構成される。そして、使用時に止水扉10は、
図3に示すように、駆動手段20により下降して、上扉11と下扉12とが一直線状に展開する状態にされて出入口Gを密閉するように構成される。
【0020】
防潮板30は、増水時等の比較的水位の低い状況にて出入口Gの内側に設置されるものである。防潮板30は、人の通行を可能とする高さ、例えば、跨いで通行することのできる高さを備えている。
また、河川の洪水や津波襲来時には、防潮板30を設置するとともに止水扉10で出入口Gを密閉することによって、出入口Gに二重の防潮設備を形成することになる。以下、各部の構成について詳細に説明する。
【0021】
はじめに、出入口用構造物1を構成する骨組構造体について、
図4を参照して説明する。
図4に示すように、骨組構造体は、出入口用構造物1(
図1参照、以下同じ)の一部となる棒状の構造要素を組み合わせて構成された構造体であり、出入口Gを囲むように配置されている。骨組構造体は、左柱材1a,右柱材1bと、大梁材2と、支持部材3,3と、支持梁材4,4と、繋ぎ梁材5a,5bと、梁材6と、支柱7a,7bと、後側支柱8a,8bと、小梁材9と、を備えて構成されている。なお、各構造要素は、鋼製またはアルミニウム合金製の形材や板材からなるが、木製で構成しても差し支えない。
【0022】
左柱材1aは、出入口Gに向かって左側に配置される柱材であり、建物の基礎や土台等に固定されるベース1a1と、ベース1a1に立設された柱本体1a2と、を備えている。ベース1a1は、図示しないアンカー挿通孔が形成された板材からなる。柱本体1a2は、後フランジ1a3と、ウェブ1a4と、前フランジ1a5とを備える断面H形を呈する形材からなる。柱本体1a2は、溶接等によりベース1a1の上面に固着されている。
なお、左柱材1aの上端部の前面および後面には、小梁材9,9が接続される。小梁材9は、溝形(断面コ字形)を呈する形材からなる(以下同じ)。
【0023】
左柱材1aの前面には、
図2,3,10に示すように、断面T字形の取付ブラケット15aを介してガイドレール150が取り付けられている。ガイドレール150は、下扉12の下端左側面に設けられた戸車120a(
図3参照)を案内するものである。
ガイドレール150は、
図3に示すように、断面コ字形を呈しており、前後に対向する一対の対向片151,151と、対向片151,151を接続する側壁152とを有する。対向片151,151間には、下扉12の戸車120aが上下方向に転動可能に配置される。ガイドレール150は、鉛直方向に延在する鉛直部153と傾斜部154とを有する。
鉛直部153は、
図7に示すように、側面視で上扉11の回動支点O1よりも前方に配置されており、左柱材1aの前面から前方へ離間した位置で、戸車120aを案内する。
傾斜部154は、ガイドレール150の下部に設けられており、出入口Gの床面GLに近付くにつれて出入口Gの内側方向に傾斜している。傾斜部154は、鉛直部153の下端部から下斜め後方に延出しており、左柱材1aの前面に向けて戸車120a(下扉12の下端部)を案内する。
【0024】
右柱材1bは、
図2に示すように、出入口Gの右側に配置される柱材であり、建物の基礎や土台等に固定されるベース1b1と、ベース1b1に立設された柱本体1b2と、を備えている。ベース1b1は、図示しないアンカー挿通孔が形成された板材からなる。柱本体1b2は、後フランジ1b3と、ウェブ1b4と、前左フランジ1b5とを備える断面変形H形とされた形材からなる。柱本体1b2は、溶接等によりベース1a1の上面に固着されている。
なお、右柱材1bの上端部の後面には、小梁材9が接続される。
【0025】
ガイドレール160は内側ガイドレール161aと外側ガイドレール161bとから構成されている。
内側ガイドレール161aは、
図2,3に示すように、右柱材1bの前面に板状のブラケット部16aを介して取り付けられている。外側ガイドレール161bの前端には、
図15に示すように、右方へ延在する板状片16bが取り付けられている。板状片16bは、支柱7b(
図4参照)に溶接等によって固着されている。
ガイドレール160は、下扉12の下端右側面に設けられた戸車120b(
図3参照)を案内するものである。
ガイドレール160は、
図3に示すように、左側のガイドレール150の対向片1515,151に対応する前後一対の対向片161,161を有する。対向片161,161間には、縦溝162が形成されている。
図15に示すように、縦溝162には支軸121が挿通される。対向片161,161間には、下扉12の戸車120bが上下方向に転動可能に配置される。ガイドレール160は、鉛直方向に延在する鉛直部163と傾斜部164とを有する。鉛直部163は、ガイドレール150の鉛直部153に対応しており、また、傾斜部164は、ガイドレール150の傾斜部154に対応している。
つまり、鉛直部163は、
図5(b)に示すように、側面視で上扉11の回動支点O1よりも前方に配置されており、右柱材1bの前面から前方へ離間した位置で、戸車120bを案内する。傾斜部164は、ガイドレール160の下部に設けられており、出入口Gの床面GLに近付くにつれて出入口Gの内側方向に傾斜している。傾斜部164は、鉛直部163の下端部から下斜め後方に延出しており、右柱材1bの前面に向けて戸車120bを案内する。
【0026】
大梁材2は、
図2,4に示すように、出入口Gの上側に配置される梁材であり、左柱材1a、右柱材1b間に架設されている。大梁材2は、断面H形を呈する形材からなり、溶接等により左柱材1a,右柱材1bに固着されている。大梁材2の上部には、左右に間隔を空けて支持部材3,3が立設されている。支持部材3,3は、断面H形を呈する形材からなり、溶接等により大梁材2に固着されている。
【0027】
支持梁材4,4は、
図4に示すように、支持部材3,3に支持されて前後方向に延在する梁材であり、断面H形を呈する形材からなる。支持梁材4,4は、溶接等により支持部材3,3の上端に固着されている。支持梁材4,4の前部は、大梁材2よりも前方に延在しており、その先端部には、繋ぎ梁材5aが溶接等により固着されている。また、支持梁材4,4の後部は、大梁材2よりも後方に延在しており、その後端部には、梁材6が溶接等により固着されている。繋ぎ梁材5aおよび梁材6は断面H形を呈する形材からなる。繋ぎ梁材5aの右端部は、支柱7aの上端左側面に溶接等により固着されている。
なお、大梁材2よりも前方に延在する支持梁材4,4の前部により、後記する庇H(
図1参照)の骨組みの一部が構成される。
【0028】
支柱7aは、出入口Gの右前方に配置される柱材であり、建物の基礎や土台等に固定されるベース7a1と、ベース7a1に立設された柱本体7a2と、を備えている。ベース7a1は、図示しないアンカー挿通孔が形成された板材からなる。柱本体7a2は、断面矩形を呈する形材からなり、溶接等によりベース7a1の上面に固着されている。
【0029】
繋ぎ梁材5bは、繋ぎ梁材5aの下方において繋ぎ梁材5aと平行に配置された梁材であり、溝形(断面コ字形)を呈する形材からなる。繋ぎ梁材5bの右端部は支柱7aの左側面に溶接等により固着されている。繋ぎ梁材5bの左端部の後面には、左柱材1aの上端部の前面に接続された小梁材9が溶接等により固着されている。
【0030】
支柱7bは、右柱材1bの直近の前方に配置される柱材であり、建物の基礎や土台等に固定されるベース7b1と、ベース7b1に立設された柱本体7b2と、を備えている。ベース7b1は、図示しないアンカー挿通孔が形成された板材からなる。柱本体7b2は、断面矩形を呈する形材からなり、溶接等によりベース7b1の上面に固着されている。支柱7bの上端部の前面には小梁材9が溶接等により固着されている。この小梁材9の前端部は支柱7aの後面に溶接等により固着されている。
支柱7a,7bには、袖壁を構成するパネル材1j(
図1参照)が取り付けられる。
【0031】
後側支柱8a,8bは、
図4に示すように、腰壁部1c,1eに固定されるベース81(右側の後側支柱材8bのみ図示)と、ベース81に立設された柱本体82と、を備えている。ベース81は、図示しないボルト挿通孔が形成された板材からなる。柱本体82は、断面H形を呈する形材からなり、溶接等によりベース81の上面に固着されている。
腰壁部1cに固定された後側支柱8aの前面には、左柱材1aに固着された小梁材9が溶接等により接続されている。また、腰壁部1eに固定された後側支柱8bの前面には、右柱材1bに固着された小梁材9が溶接等により接続されている。
また、後側支柱8a,8b間には梁材6が架設されている。梁材6は、後側支柱8a,8bの対向面に溶接等により固着されている。
また、さらに後側の、後側支柱8a,8bは、腰壁部1c,1eに所定の間隔を空けて複数立設される。なお、後側支柱8a,8b間には、図示しない梁材が固着される。
【0032】
このような骨組構造体において、支持梁材4,4(および後側支柱8a,8b間に接続された図示しない梁材)の上方には、ブラケット4a(
図5(a)参照)を介して、天板1h(
図1,
図5(a)参照)が支持される。
また、腰壁部1c,1d(
図1参照),1eには、後側支柱8a,8bに支持されてガラス面1g(
図1参照)を有するパネル材1p(
図1参照)がそれぞれ取り付けられる。
また、繋ぎ梁材5a,5bと、繋ぎ梁材5aに接続される小梁材9と、支柱7aに接続される小梁材9とには、庇H(
図1参照、以下同じ)を構成するパネル材1k(
図1参照)がそれぞれ取り付けられる。庇Hの内側には、これらの部材と大梁材2とで囲まれる収納空間Sが形成される。この収納空間Sには、
図1に示すように、折り畳まれた状態の止水扉10が収納可能である。なお、庇Hの下面は、折り畳まれた状態の止水扉10の下扉12で塞がれる。
【0033】
止水扉10の上扉11および下扉12は、アルミニウム合金等の耐食性および耐候性を備えた部材からなるパネル材にて構成されている。このパネル材は、例えば、内部にアルミニウム合金製のハニカム状コア材10a(
図16参照)を備え、このコア材10aをアルミニウム合金製の表面材10b,10cで挟み込んだサンドイッチハニカムパネルとして構成されている。
なお、パネル材としては、アルミニウム合金製の押出形材を利用してもよいし、鋼材、プラスチック、木材等で構成してもよい。
【0034】
上扉11は、
図2に示すように、支持手段を介して出入口Gの上方に回動可能に支持されている。支持手段は、支持部材3,3の前面にそれぞれ固定されたブラケット14a,14aと、水平の支軸14c,14cを介してブラケット14a,14aに揺動可能に枢支された扉ブラケット14b,14bと、を備えて構成されている。扉ブラケット14b,14bは、ブラケット14a,14aに対応して上扉11の上端面に取り付けられている。これにより、上扉11は、水平軸周りに回動可能となっている。
【0035】
下扉12は、上扉11の下端にヒンジ13,13を介して連結されており、ヒンジ13,13を介して上扉11に重なるように折り畳み可能である(
図5(a)(b)参照)。下扉12は、上扉11に対し水平軸周りに回動可能となっている。止水扉10は、折り畳まれた状態で、庇H(
図1参照)の内側の収納空間Sに収納される。下扉12の下端左側面には、戸車120a(
図3参照)が設けられている。戸車120aは、ガイドレール150内に配置されており、ガイドレール150に沿って転動可能である。また、下扉12の下端右側面には、戸車120b(
図3参照)が設けられている。戸車120bは、ガイドレール160内に配置されており、ガイドレール160に沿って転動可能である。
【0036】
図8(a)に示すように、上扉11の下面と下扉12の上面とは、展開時においてヒンジ13の介設によって生じる隙間S2を空けて対向し、その対向面には、連結部パッキン11a,12aが取り付けられている。連結部パッキン11aは板状を呈しており、また、連結部パッキン12aは後端部に突状リブ12bが備わる板状を呈している。連結部パッキン11aと連結部パッキン12aとは、止水扉10を展開する過程で相互に近付き、
図11(c)に示すように、完全に展開した状態では、連結部パッキン12aの突状リブ12bが連結部パッキン11aに弾力をもって密着する。これにより、連結部分に形成される隙間が止水される。
【0037】
また、下扉12の下面には、
図16に示すように、下部パッキン12cが取り付けられている。下部パッキン12cは、後端部に突状リブ12dが備わる板状を呈している。下部パッキン12cは、止水扉10を完全に展開した状態で、突状リブ12dが出入口Gの床面GLに弾力をもって密着する。これにより、止水扉10の下端部(下扉12の下端部)と床面GLとの隙間が止水される。なお、出入口Gの床面GLは、溝や突起を有さない平らな面に形成されている(
図1参照)。
【0038】
出入口Gの開口縁部には、
図9に示すように、左側部パッキン18a、右側部パッキン18bおよび上側部パッキン18cが取り付けられている。左側部パッキン18aは、左柱材1aの前左フランジ1a5の開口縁部1a7に沿って取り付けられており、展開された止水扉10の内側左縁部に密着可能である。右側部パッキン18bは、右柱材1bの前左フランジ1b5の開口縁部1b7に沿って取り付けられており、展開された止水扉10の内側右縁部に密着可能である。上側部パッキン18cは、大梁材2の開口縁部2a7に沿って取り付けられており、展開された止水扉10の内側上縁部に密着可能である。
【0039】
これらのパッキンは、いずれも帯板状を呈している。パッキンの幅方向の端部には断面円筒状の中空リブ18d(
図8(b)参照)が形成されている。各中空リブ18dは、展開された状態の止水扉10の内側の左右側縁部および上側縁部に弾力をもって密着可能である。これにより、止水扉10の左右側縁部および上側縁部と出入口Gの開口縁部との隙間が止水される。
なお、各パッキンは、押え板18eと、押え板18eを固定する複数のボルト18fにより、開口縁部にそれぞれ取り付けられる(
図8(b)参照)。
【0040】
出入口Gの左右開口縁部には、
図6(a)に示すように、締付手段110が複数設けられている。締付手段110は、展開された止水扉10を、出入口Gの左右開口縁部に向けて締め付ける役割をなす。なお、締付手段110は、左右で同様の構成であるので、ここでは、
図10を参照して、出入口Gの左側に設けられる締付手段110を例にとって説明する。
【0041】
図10に示すように、締付手段110は、固定部材111と、固定軸112と、ハンドル113と、締付部材114と、を備えて構成されている。
固定部材111は、固定軸112を保持する部材であり、ガイドレール150の前側の対向片151にボルト111aとナット111bで固定される。固定軸112は、固定部材111に保持され扉側に向けて延出する部材であり、固定部材111に取り付け取り外し可能に設けられている。固定軸112の先端部には、ハンドル113の基部113aが取り付け取り外し可能に支持される。ハンドル113は、基部113aを中心として固定軸112周りに回動操作可能である。締付部材114は、基部113aを挟んで扉の前面側に延出している。
【0042】
このような締付手段110は、ガイドレール150,160に対して固定部材111が予め取り付けられているだけであり、止水扉10の使用時に各固定部材111に固定軸112、ハンドル113が取り付けられて使用される。すなわち、使用時に止水扉10が展開されたら、各固定部材111に対して固定軸112を取り付け、各固定軸112の先端部に基部113aを装着してハンドル113を組み付ける。ハンドル113は、基部113aに対し取り外し自在とされている。
なお、出入口Gの右側に設けられる締付手段110は、ガイドレール160の図示しない左側面にブラケット等を介して固定部材111が固定される。
【0043】
一方、止水扉10の前面には、締付部材114に対向するようにプレート126が取り付けられている(
図11(a)参照)。プレート126は、平面視でL字形に形成されており、止水扉10の左側面に取り付けられる側部126aと、止水扉10の前面左縁部に配置される前部126bとを有する。前部126bは、
図11(b)に示すように、締付部材114の先端部の回動軌跡L1上に位置しており、回動操作された締付部材114の先端部が圧接可能である。前部126bと止水扉10の前面左縁部との間には、合成ゴム等の部材からなる緩衝部材126cが介設されている。
【0044】
止水扉10の左側面には、ボルト127aによって矩形板状の規制部材127が取り付けられている。規制部材127は、止水扉10の後方へ延在しており、止水扉10の展開時にその後端部127bが左柱材1aの前左フランジ1a5に当接可能となっている。後端部127bが前左フランジ1a5の前面に当接した状態で、止水扉10の内側左縁部と前左フランジ1a5との間には、間隙D1を有して左側部パッキン18aの配置スペースが形成される。間隙D1は、左側部パッキン18aの中空リブ18dが、必要以上に押し潰されることなく、止水扉10の内側左縁部に対して止水可能に密着する大きさに設定されている。
本実施形態では、締付手段110のハンドル113を操作して締付部材114をプレート126の前部126bに当接させて締め付けた際に、規制部材127の後端部127bが左柱材1aの前左フランジ1a5に当接するように設定されている。
【0045】
次に、駆動手段20について説明する。
図5(a)に示すように、駆動手段20は、噛合チェーンユニット21と、動力源22と、を備えて構成されている。
動力源22には、電力の供給を受けて作動する電動モータと、電動モータの出力軸に接続された減速機構とが備わる。減速機構の出力軸22aは、
図5(a)に示すように、噛合チェーンユニット21に向けて延出し、噛合チェーンユニット21に備わる駆動用スプロケット26に接続されている。
【0046】
噛合チェーンユニット21は、
図12(a)に示すように、一対のチェーン25a,25bと、駆動用スプロケット26とを備える。
一対のチェーン25a,25bは、いずれも、図示しないフック状内歯プレートおよびフック状外歯プレートを備え、これらがチェーン長手方向に連結ピンで多数連結されて構成されている。一対のチェーン25a,25bは、相互に噛み合って対向した状態で一体に剛直化されるとともに、相互に噛み外れて分岐してユニットのケース25c内に収納されるようになっている。一体に剛直化された剛直化部分25は、ケース25cの鉛直下方に送り出され、その先端部25e(下端部)は、連結装置17に接続されている。また、噛み外れて分岐された一対のチェーン25a,25bは、ユニットのケース25c内に設けられたチェーン収納ガイド27a,27bに沿って、それぞれ巻き取られた状態に収納される。
本実施形態において、一対のチェーン25a,25bは所定の遊びを有して噛み合っており、剛直化部分25は、
図12(b)に一点鎖線で模式的に示すように、前記遊びの範囲内で前後方向に偏倚可能となっている。
ここで、
図5(b)に示すように、剛直化部分25の先端部25eは、止水扉10の折り畳み時に右側面視でガイドレール160の対向片161,161間の延長上に位置している。
また、
図6(b)に示すように、剛直化部分25の先端部25eは、前記遊びにより、止水扉10の展開時に右側面視でガイドレール160の対向片161,161間から外れた後方に位置している。
剛直化部分25には、完全に下方に送り出された後(止水扉10が降下した後)も押圧力が加えられる。これによって前記遊びがなくなり、剛直化部分25は、強固に噛み合った状態に一体化される。
【0047】
駆動用スプロケット26は、一対のチェーン25a,25bが一体に噛み合わされる剛直位置(剛直化部分25)にてチェーンに係合している。駆動用スプロケット26は、動力源22により駆動され、剛直化部分25を送り出し方向(下降方向)、または引き込み方向(上昇方向)に駆動する。
なお、駆動用スプロケット26は、剛直位置に設けられるものに限られず、噛み外れて相互に分岐された分岐部分(分岐領域)にて一方のチェーン25a(または25b)に係合されてもよい。
なお、噛合チェーンユニット21には、剛直化部分25の送り出しを規制する図示しないブレーキ(ロック装置)が備わる。ブレーキを有することにより、止水扉10が自重で下降することが防止される。また、ブレーキ(ロック装置)は、停電時においても自重による止水扉10の下降を防止するように作用する。
このブレーキにより、剛直化部分25は、止水扉10の下端を下方に押圧した状態に維持される(前記押圧力が加えられた状態にロックされる)。
【0048】
なお、動力源22は、電源喪失時等の緊急時に図示しない操作部材を接続することで手動操作可能(人力操作可能)に構成されている。操作部材は、例えば、出入口G周りの袖壁内や腰壁部1c,1e内等に収納部を設けて配置しておくことが可能である。なお、前記ブレーキは、操作部材により手動操作される際に解除されるように構成されており、また、手動操作中に操作部材が誤って外れたり脱落したりしても、ブレーキロックがかかるように構成され、フェールセーフ構造となっている。
【0049】
連結装置17は、
図13,14に示すように、戸車120bの支軸121に固定されるプレート170と、プレート170の後端に取り付けられる連結体171と、を備えて構成されている。
プレート170は、横長板状であり、ガイドレール160の下端部に戸車120bが位置する状態で、ガイドレール160の下端部から後方に延出している。プレート170の前端部は、支軸121の右端部にボルト124(
図14参照)で固定されている。
本実施形態では、
図13に示すように、右側面視において、下扉12の前面に平行で支軸121の中心を通る中心線L11と、支軸121の中心と回動軸170aの中心とを通る中心線L12と、のなす角度θ1が略90度となるように設定されている。
【0050】
支軸121には、
図14に示すように、規制部材125が取り付けられている。規制部材125は、戸車120bの右側方に取り付けられ、支軸121上を戸車120bが右方向に移動するのを規制している。これにより、戸車120bは、
図15に示すように、ガイドレール160の対向片161,161間に保持される。
なお、支軸121は、下扉12の下端右側面にボルト123で固定された取付プレート122に支持されて右側方に延出している。
【0051】
図13に示すように、プレート170の後端部には、支軸121と平行な回動軸170aが突設されている。回動軸170aは、連結体171の下部に設けられた軸受け部171bに挿通支持されている。
【0052】
連結体171は、
図13に示すように、平板状のベース部171aと、ベース部171aの上面に固定された連結具173と、ベース部171aの下面に固定された軸受け部171bと、を備えて構成されている。
連結具173には、剛直化部分25の先端部25eが取付ボルト173aにより連結されている。軸受け部171bは、内部に備わるベアリング(不図示)を介して、プレート170の回動軸170aを回動可能に支持する。
【0053】
ベース部171aの前端部には、
図13,14に示すように、ベース部171aを鉛直方向に貫通するボルト孔171cが形成されている。ボルト孔171cには、ボルト175が貫通する状態に螺合されている。ボルト175の下端部は、プレート170の上面に当接可能であり、ボルト175の突出量を変更することで、回動軸170a周りにプレート170と連結体171との角度を調節することができる。本実施形態では、
図13に示すように、右側面視において、中心線L12と、ベース部171aの上面に直行して回動軸170aの中心を通る中心線L13と、のなす角度θ2が略90度となるように設定されている。
ボルト175には、締め付け固定用のナット175bが介設されている。ナット175bを締め付けることにより、ボルト175の突出量が固定される。
【0054】
図14に示すように、袖壁の下部には、点検口1j1が形成されている。点検口1j1を通じて、ガイドレール160の傾斜部164周りの点検(下降させた連結体171の点検)が可能である。
【0055】
次に、
図16を参照して、防潮板30について説明する。防潮板30は、アルミニウム合金等の耐食性および耐候性を備えた部材からなるパネル材にて構成されている。このパネル材は、例えば、内部にアルミニウム合金製のコア材30aを備え、このコア材30aをアルミニウム合金製の上枠材30b、下枠材30c、左枠材30d、右枠材30eで囲ったハニカムパネル(サンドイッチパネル)として構成されている。上枠材30b、下枠材30c、左枠材30d、右枠材30e(
図17参照)は、例えば、上下左右の四つの角部に、図示しないジョイント部材を配置してねじ止めや溶接等により組み付けられる。なお、各枠材30b〜30eとコア材30aとの間には、適宜、パッキン等が介設される。
防潮板30は、後に述べるように人手により運搬、設置されるため軽量であることが好ましく、このためにアルミニウム合金製のハニカムパネル以外でも軽量であればよく、例えばアルミニウム合金製の押出形材のみの組み合わせにより構成することもできる。
【0056】
上枠材30bの上面には、左右方向に間隔を空けて取手32が取り付けられている(
図2参照)。また、下枠材30cの下面には、パッキン33が取り付けられている。パッキン33は平板状を呈しており、床面GLに弾力をもって密着する。なお、パッキン33の下面には、横溝33aが形成されている。この横溝33aを利用して図示しないビス等でパッキン33を下枠材30cの下面に固定している。
【0057】
下枠材30cの前面には、横長の補強部材31がボルト等により一体的に取り付けられている。補強部材31は、溝形(断面コ字形)を呈する形材からなり、上部31aと、側部31bと、下部31cとを備える。補強部材31の上部31aは、間隙S3を空けて止水扉10(下扉12)の内側面(後面)に対向している。また、下部31cの前端部は、間隙S3を空けて止水扉10の下部パッキン12c(突状リブ12d)に対向している。間隙S3は、止水扉10が水圧によって撓んだときの撓み量より小さく設定されている。すなわち、止水扉10が水圧によって撓んだときには、補強部材31の上部31aに対して止水扉10(下扉12)の内側面(後面)が当接するとともに、下部31cに対して下部パッキン12cが当接するようになっている。
左枠材30dおよび右枠材30eの後面には、
図17、
図18(a)に示すように、固定用のレバー37a,37bが設けられている。
【0058】
このような防潮板30は、
図17に示すように、左柱材1aのウェブ1a4と、右柱材1bのウェブ1b4との間に設置され(
図18(a)(b)参照)、止水扉10の内側に配置される。ウェブ1a4の下部右側面には、防潮板30の左側部を支持する左支持部材35aが取り付けられており、また、ウェブ1b4の下部左側面には、防潮板30の右側部を支持する右支持部材35bが取り付けられている。
左支持部材35aには、防潮板30の左後縁部を支持するフランジ状の係止突起36aが設けられ、右支持部材35bには、防潮板30の右後縁部を支持するフランジ状の係止突起36bが設けられている。係止突起36aの後面には、固定用のレバー37aの係止部が係止可能であり、また、係止突起36bの後面には、固定用のレバー37bの係止部が係止可能である。この左支持部材35a、右支持部材35bの高さは防潮板30の高さと略同じである。
なお、腰壁部1c、1eや袖壁の内側等に収納スペースを形成することで、不使用時に防潮板30を収納しておくことができる。
【0059】
次に、防潮板30および止水扉10の設置手順について説明する。
はじめに、増水時等の比較的水位の低い状況では、防潮板30を出入口Gに設置する。この場合、袖壁等にある収納スペースから防潮板30を取り出し、取手32,32を把持して、ウェブ1a4,1b4間に防潮板30を移動させる(
図2参照)。
【0060】
そして、ウェブ1a4の左支持部材35aに防潮板30の左側部をあてがうとともに、ウェブ1b4の右支持部材35bに防潮板30の右側部をあてがい、左支持部材35a、右支持部材35bに沿わせて、防潮板30を床面GLに降ろす。その後、防潮板30の左後縁部を係止突起36aに押し当て、固定用のレバー37aを係止突起36aの後面に係止する。同様に、防潮板30の右後縁部を係止突起36bに押し当て、固定用のレバー37bを係止突起36bの後面に係止する。
これにより、防潮板30がウェブ1a4,1b4間に設置される(
図17,
図18参照)。なお、防潮板30は、その自重によりパッキン33を介して床面GLに密着する。
【0061】
防潮板30は、人の通行を可能とする高さを有しているので、出入口Gに設置された状態においても、人が跨いで通行することが可能である。
【0062】
次に、河川の洪水や津波襲来が予想される際には、防潮板30を設置するとともに止水扉10で出入口Gを密閉し、出入口Gに二重扉を構成して対処する。
前記のように防潮板30の設置後、例えば、人の通行が終了した時点で、駆動手段20により止水扉10を作動させる。具体的に、図示しない操作スイッチを操作して、動力源22に電力を供給し、電動モータを作動させる。電動モータが作動すると減速機構の出力軸22aを介して噛合チェーンユニット21の駆動用スプロケット26が駆動され、剛直化部分25が送り出し方向に駆動される。
【0063】
剛直化部分25が送り出されると、剛直化部分25の先端部25eに接続された連結装置17の連結体171が下降を開始し、連結体171の軸受け部171b、回動軸170a、プレート170、支軸121を通じて、下扉12が下降される。これにより、
図19(a)に示す止水扉10の折り畳み状態から、ヒンジ13を介して上扉11と下扉12とが徐々に展開される。下扉12の下端部は、ガイドレール150,160内を転動する戸車120a,120bによって、ガイドレール150,160に沿って下降案内される。
【0064】
ここで、
図19(a)に示すように、止水扉10の折り畳み状態において、連結装置17の回動軸170aは、右側面視でガイドレール160の対向片161,161間に位置し、剛直化部分25の先端部25eも同位置の延長上に位置している。しかしながら、回動軸170aおよび剛直化部分25の先端部25eの位置は、
図19(b)に示すように、展開されるにつれて、これよりも後方のガイドレール160から外れた位置に偏倚することとなる。これは、プレート170が下扉12に対して略90度の角度θ1(
図13参照)に取り付けられているためであり、
図19(b)に示すように、止水扉10が展開されると前記位置よりも回動軸170aが後方側に徐々に突出する状態にされるためである。つまり、戸車120bの移動軌跡と、回動軸170a(剛直化部分25の先端部25e)の移動軌跡とは、常に異なっており、回動軸170aの移動軌跡が、戸車120bの移動軌跡よりも後側に位置している。
【0065】
剛直化部分25は、前記した遊びを有することによってこの偏倚に追従しながら下降するようになっており、下降するにつれて(止水扉10が展開されるにつれて)、全体が前後方向にしなる状態にされる(
図3参照)。
【0066】
その後、
図19(c),
図20(a)に示すように、止水扉10が展開する過程でガイドレール160の鉛直部163の下端に戸車120bが差し掛かると、
図19(d),
図20(b)に示すように、鉛直部163から傾斜部164に戸車120bが移動する。これにより、傾斜部164を移動する戸車120bに導かれて、下扉12の下端部が出入口Gの内側方向に移動する。また、戸車120bは、内側方向へ移動しつつ、下方向へも導かれるので、下扉12は、出入口Gに近付く過程で下方向へも引っ張られることとなり、傾斜部164の下端部に戸車120bが移動した状態で一直線状に展開されることとなる。つまり、止水扉10は、傾斜部164を戸車120bが移動する過程で、一直線状に展開されつつ同時に出入口Gに対して密着することとなる。したがって、止水扉10と出入口Gの開口縁との密封を容易に図ることができる。
また、ガイドレール150,160の傾斜部154,164は、止水扉10を出入口Gの開口縁部に押し付ける方向に曲がっている(傾斜している)ので、止水扉10の密着性が高まり、優れた止水効果が得られる。
【0067】
なお、止水扉10が一直線状に展開した状態では、
図13に示すように、連結装置170のボルト175を介して、回動軸170aよりも戸車120bに近い側でプレート170が押圧されることとなる。これにより、剛直化部分25による下降方向への押圧力が連結装置17に好適に伝わることとなり、止水扉10の展開状態が好適に維持される。
【0068】
止水扉10が展開したら締付手段110の各固定部材111に対して固定軸112を取り付け、各固定軸112の先端部に基部113aを装着してハンドル113を組み付ける。そして、ハンドル113を操作して、締付部材114を止水扉10のプレート126に締結する。これにより、止水扉10が出入口Gの開口縁部の左側部パッキン18a、右側部パッキン18bおよび上側部パッキン18cに押し付けられ、止水扉10の左右側縁部および上側縁部と出入口Gの開口縁部との隙間が止水される。また、下扉12の下端と出入口Gの床面GLとの隙間が下部パッキン12cにより止水される。
【0069】
次に、止水扉10を開放する際(上昇させる際)の作用について説明する。
止水扉の上昇時には、締付手段110による締結を解除した後、図示しない操作スイッチを操作して動力源22に電力を供給し、剛直化部分25が上昇される方向(引き込まれる方向)に電動モータを作動させる。電動モータが作動すると減速機構の出力軸22aを介して噛合チェーンユニット21の駆動用スプロケット26が駆動され、剛直化部分25が引き込まれる方向に駆動される。
【0070】
そうすると、傾斜部164に沿って戸車120が上昇しつつ、ガイドレール160の傾斜部分と戸車120bとの接点部分が支点となって、下扉12が傾動(回動)する。これにより、出入口Gの前方へ下扉12が押し出され、上扉11と下扉12との折り畳みが好適に形成される。つまり、傾斜部164の傾斜が、上扉11に対する下扉12の折れ曲がりのキッカケとして機能し、止水扉10のスムーズな上昇が実現される。
【0071】
上扉11に対して下扉12が折れ曲がった後は、
図19(b)に示すように、剛直化部分25の引き込み駆動により下扉12がさらに折れ曲がりつつ上昇し、
図19(a)に示すように、庇Hの収納空間S内に止水扉10が折り畳まれた状態で収納される。
【0072】
なお、電源喪失時等の緊急時には、例えば、出入口G周りの袖壁内に収納しておいた操作用部材を用いて、電動モータで駆動した場合と同様に、止水扉10の展開あるいは折り畳みを行うことができる。
【0073】
以上説明した本実施形態によれば、止水扉10を1枚の板材で形成せずに上扉11と下扉12とに分けて形成したので、扉の収納スペースの大型化を避けることができる。しかも、不使用時には、折り畳まれた状態で出入口Gの上方に保持されるので、収納性に優れている。また、使用時には、上扉11と下扉12とが側面視で一直線状に展開するので、止水扉10が出入口Gの開口縁部に密着し易くなる。
【0074】
また、噛合チェーンユニット21を利用することで、例えば、無端状のワイヤ、チェーン、ロープを用いて駆動力を得る場合に比べて、駆動手段20の構造や機構をコンパクト化することができ、ひいては止水装置の小型化が可能になる。
また、高速運転可能なチェーン駆動式なので、迅速に止水扉10を開閉できる。さらに、一対のチェーン25a,25bにおいて相互に噛み合って剛直化した剛直化部分25は、棒状に一体化するので、通常のチェーン式のものに比べて押圧力が強く、押圧力で駆動力を得ることができるので無端状のワイヤ、チェーン、ロープを用いた場合に比べて駆動構造を簡単にできる。
また、一対のチェーン25a,25bにおいて噛み外れた部分は、屈曲可能であるので、収納スペースにおけるレイアウト上の制限が小さい。これにより噛合チェーンユニット21を小型化でき、出入口Gの周囲の骨組構造体の狭いスペースにも噛合チェーンユニット21を好適に設置することができる。
【0075】
また、ガイドレール150,160の下部に傾斜部154,164が設けられているので、下降にともなって、下扉12の下端部がガイドレール150,160の下部の傾斜に沿って出入口Gの内側方向に導かれる。
このため、止水扉10は、出入口Gの側縁部(左側部パッキン18a,右側部パッキン18b)に接触することなく下降されることとなり、下端まで下降した際に出入口Gの側縁部に接触される。したがって、スムーズな止水扉10の閉鎖が実現される。これにより止水扉10と開口縁との密封を容易に図れる。
さらに、止水扉10の上昇時には、上扉11と下扉12とが一直線状であると、うまく折れ曲がりが形成されないが、傾斜により出入口Gの前方へ下扉12が一旦押し出されるようになるので、傾斜が折れ曲がり形成のキッカケとして機能する。これにより、折れ曲がった後は止水扉10がスムーズに上昇される。
【0076】
また、上昇時にプレート170の内側方向の端部が駆動手段20により上方へ引っ張られると、ガイドレール160の傾斜部分と戸車との接点部分が支点となって、下扉12が傾動(回動)し、出入口Gの前方へ下扉12が押し出されるので、上扉11と下扉12との折り畳みが好適に形成される。したがって、止水扉10のよりスムーズな上昇が実現される。
【0077】
また、止水扉10は、下部パッキン12c、連結部パッキン11a,12a、左側部パッキン18a、右側部パッキン18bおよび上側部パッキン18cを有しているので、出入口Gを好適に密閉することができる。なお、連結部パッキン11a,12aはどちらか一方を設けてもよい。
なお、出入口Gの床面GLは、溝や突起を有さない平らな面に形成されているので、下部パッキン12cの密着性がよく、止水扉10の防水性に優れる。また、溝や突起を有さないので、つまずいたり、ゴミが入り込む等の不具合を生じることもない。
なお、水没しない高さを止水扉10が有していれば、上側部パッキン18cは、必ずしも設けなくてもよい。
【0078】
また、出入口Gの開口縁部には、締付手段110が設けられているので、出入口Gの開口縁部に向けて止水扉10を好適に締め付けることができる。これにより、出入口Gに対する止水扉10の密閉度を高めることができる。さらに、止水扉10に対して外側方向の外力が仮に作用した場合にも、出入口Gに対する止水扉10のバタツキを生じることがない。なお、締付手段110は、止水扉10の側縁部側に設けてもよい。
また、止水扉10の左側面(右側面)には、規制部材127が取り付けられているので、左側部パッキン18aの中空リブ18dおよび右側部パッキン18bの中空リブ18dが、必要以上に押し潰されることなく、止水扉10の内側左縁部および内側右縁部における止水を好適に維持することができる。
【0079】
また、駆動手段20は電動モータにて駆動されるので、止水扉10の開閉時の操作が容易になる。これにより、開閉時の安全確認、特に展開して密閉する際の安全確認に注意を払うことができる。また、津波等の緊急時にも迅速に対処することができる。さらに、夜間の閉鎖扉として止水扉10を利用することも容易になる。
【0080】
また、駆動手段20は操作部材により手動操作可能であるので、停電時においても手動操作で止水扉10を下降させることができる。また、操作部材を出入口Gの側方に設けられた袖壁内に収納した場合には、津波等の緊急時にも迅速に対処することができる。
【0081】
また、止水扉10が、アルミニウム合金製のハニカムパネルを含んで構成されているので、止水扉10を容易に製造することができる。また、アルミニウム合金製のハニカムパネルは、寸法精度が高く、また、強度の割に軽量である。
また、アルミニウム合金製のハニカムパネルの利用により剛性の高い止水扉10とすることも可能である。この場合には、駆動手段20を出入口Gの片側に設けることで開閉操作をすることも可能となる。
また、アルミニウム合金製のハニカムパネルの利用により軽量で剛性の高い止水扉10とすることができるので、噛合チェーンユニット21(駆動手段)の小型化を図ることが可能となる。
なお、噛合チェーンユニット21(駆動手段)は、出入口Gの両側に設けてもよい。このように構成することで、横幅のある止水扉10や重量のある止水扉10においても1箇所にかかる負担が少なくなる。これにより、開閉を容易に行うことができる。なお、両側に設けた場合には、左右で駆動を同期させるとよい。
【0082】
また、比較的水位の低い増水時には、止水扉10を設置することなく防潮板30を設置することにより、人の出入口Gとして機能させながら水の浸入を好適に防止することができる。
また、止水扉10と防潮板30とにより、出入口Gに二重の防潮設備を形成することができ、出入口Gにおける防水性能を高めることができる。
【0083】
また、止水扉10と防潮板30との間隙S3は、止水扉10が水圧によって撓んだときの撓み量より小さく設定されているので、出入口Gの内側方向への止水扉10の変形を防潮板30によって規制することができる。これにより、出入口Gにおける防水性能を高めることができる。
【0084】
図21に変形例の止水装置を示す。この例では、止水扉10の不使用時にガイドレール150,160の開口をカバー部材70a,70bでそれぞれ塞ぐことが可能に構成されている。
カバー部材70aは、左柱材1aの前左フランジ1a5にボルト18fで取り付けられており、支点71aを中心として揺動可能に設けられている。カバー部材70aは、前側に揺動させた状態で、ガイドレール150の開口を塞ぐようになっている。また、カバー部材70aは、後側に揺動させた状態で、止水扉10と防潮板30との間に配置可能である。
カバー部材70bは、右柱材1bの前左フランジ1b5にボルト18fで取り付けられており、支点71bを中心として揺動可能に設けられている。カバー部材70bは、前側に揺動させた状態で、ガイドレール160の開口を塞ぐようになっている。また、カバー部材70bは、後側に揺動させた状態で、止水扉10と防潮板30との間に配置可能である。
【0085】
なお、カバー部材70a,70bがガイドレール150,160の開口を塞いでいる状態では、カバー部材70a,70bに当接して戸車120a,120bの転動(下降方向の転動)が規制されるので、カバー部材70a,70bを止水扉10の下降規制用の部材として用いることもできる。
【0086】
このようなカバー部材70a,70bを用いることにより、止水扉10の不使用時に、出入口Gにガイドレール1450,160の開口が露出するのを防止することができる。
【0087】
前記実施形態では、止水扉10が庇H内の収納空間Sに収納される例を示したが、これに限られることはなく、庇Hを形成することなく、出入口Gの前方上方に折り畳まれた状態で露出するようにして、止水扉10を設置してもよい。この場合には、折り畳まれた状態の止水扉10自体を庇として用いることができる。
【0088】
また、駆動手段20は、噛合チェーンユニット21を備えるものを説明したが、これに限られることはなく、無端状のチェーンや無端状のワイヤに下扉12の下端部を連結して、無端状のチェーンや無端状のワイヤを駆動することにより、止水扉10が昇降するように構成してもよい。
また、本発明の止水扉10は平時にあっては、出入口Gを閉鎖するシャッタとして利用することもできる。