(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年のエレベーターは、起動時の乗り心地を良くするために、かご内乗客の重量を検出する秤装置を備え、この秤装置が検出した重量に応じて巻上電動機にトルクを供給し、ブレーキを開放した時にかごが飛び出し、あるいは反転することなく滑らかに起動するようにした起動補償機能を備えている。また、定期点検時に行われる乗り心地点検では、かごの飛び出しや反転を感じると、起動補償トルク量の調整を行い、乗り心地を調整している。この際、一般的には無負荷時の乗り心地調整を行っているのが現状である。
【0003】
図8は、ブレーキ開放時におけるかごが上昇する際の正常時(同図(a))、飛び出し時(同図(b))及び反転時(同図(c))のかごの速度変化を比較して示す速度線図である。同図において符号Aで示すように、かごは、正常時には停止時からスムーズに加速して上昇しているのに対し、飛び出し時には停止時から加速する前に瞬間的に急上昇し、反転時には急降下し、その後、それぞれ予め設定された加速度で加速しながら上昇している。このような速度変化(瞬間的な急上昇及び急降下)が、乗り心地の悪さにつながっている。
【0004】
この乗り心地点検と調整は、点検員が行うようになっており、点検員はエレベーターの走行を繰り返しながら起動時の乗り心地を体感的に確認して調整していた。すなわち、調整の際には、一旦、エレベーターのサービスを中断してエレベーターを停止し、制御盤内のスイッチを操作していた。その結果、点検及び調整に手間と時間が掛かるという問題があった。
【0005】
そこで、例えば、特開2011−131967号公報(特許文献1)には、予め定められたかご内負荷と巻上げ機電動機トルクとの関係を用いて計測されたかご内負荷から巻上げ機電動機トルクを求めるとともに上記求めた巻上げ機電動機トルクを起動時の駆動綱車に加えることにより起動時の乗り心地を快適に維持するエレベーター制御装置において、上記計測されたかご内負荷が無負荷のかごが起動するときかご移動量を計測し、上記計測したかご移動量が予め定められた基準範囲外のとき基準範囲外であることと当該かご移動量とを記憶し、範囲基準外の階床が少なくとも1つ出現したとき上記巻上げ機電動機トルクを補正するまたはかご内負荷を計測する秤装置を修正することを特徴とする技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記先行技術では、かご内負荷が無負荷のかごを起動する際のかご移動量を、既設の巻上電動機に付設されているエンコーダの出力から算出し、算出したかご移動量が基準の範囲外になると、自動的に巻上電動機トルクを補正して、起動時の乗り心地を快適に維持するようにしている。しかし、巻上電動機に付設されているエンコーダの出力からかごの移動量を推定して算出しているため、実際のかごの乗り心地を正しく捕えることが困難な場合があった。すなわち、巻上電動機がスムーズに回転していても、かご側のガイド装置の位置ずれ等、何らかの機構的な要因によって起動時に、かご側だけに引っ掛かりが生じた場合等には、乗り心地の異常を正しく捕えることが困難であった。
【0008】
また、このような乗り心地の異常発生が、起動補償時の巻上電動機トルク量に起因するものではなく、関連機器による機構的な要因のみに起因するものであっても、巻上電動機トルクを繰り返し補正する等の誤った処置を行う可能性があった。すなわち、起動時の乗り心地異常の原因は、起動補償トルクによるものだけではなく、
i)経年使用によってかごに歪みが生じてガイド装置がガイドレールに強く押し当てられることにより起動時に引っ掛かりが生じた。
ii)ブレーキが摩耗することによってブレーキが開放されるタイミングが起動補償時のトルク印加が完了するタイミングよりも少し早くなってしまった。
iii)関連機器の劣化によってブレーキが開放されるタイミングに少し遅れが生じ始めた。
等のように機構的な調整を必要とする場合でも、誤って、巻上電動機トルクを繰り返し補正することがあり、その結果、乗り心地が悪化する可能性があった。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、かごの乗り心地を直接的に捕えて、起動補償時の巻上電動機トルク量を正しく調整することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明
の一態様は、予め定められたかご内負荷と巻上電動機トルクとの関係を用いて
前記かご内負荷から起動時の
前記巻上電動機トルクを求め、当該巻上電動機トルクを補正して巻上電動機を駆動することにより、起動時の乗り心地を快適に維持するエレベーターの制御装置において、
かごの動きと連動する調速器に付設したエンコーダの出力からかご移動量を計測し、
前記かご内負荷が無負荷の状態で起動する際に発生する前記かごの飛び出し量又は反転量が所定量以上であるかを判定し、飛び出しあるいは反転が発生したときに前記かご移動量に従って起動時の前記巻上電動機のトルクを補正し、前記
飛び出し量に対する前記巻上電動機のトルク補正の連続回数あるいは前記反転量に対する前記巻上電動機のトルク補正の連続回数が、所定回数以上となった場合には、起動時の前記巻上電動機のトルクの補正を禁止し、起動時に前記飛び出しあるいは前記反転のいずれも発生しなかったとき、前記
飛び出し量及び前記反転量に対する前記巻上電動機のトルク補正の連続回数をクリアすることを特徴とする
。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、かごの乗り心地を直接的に捕えて、起動補償時の巻上電動機トルク量を正しく調整することができる。
なお、前記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照し、本発明の実施形態について実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施形態における実施例1に係るエレベーターの制御装置の構成を示す図である。
図1において、エレベーター100の制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)から構成されている。このCPUには、かご移動量計測部21、補正可否判定部22、起動補償トルク補正部23、巻上電動機制御部24、連続補正回数カウント部25及び機構調整要求報知部26がソフトウェアにより設定される。機構調整要求報知部26は、(公衆)電話回線27を介して監視センター28と通信可能に接続されている。制御装置20であるCPUは例えば記憶装置上にあるプログラムを順に読み込んで解釈し、実行することにより、予めプログラムにより設定された処理を行う。
【0015】
エレベーター100は、かご1、釣り合いおもり2、主ロープ3、巻上電動機4、ガバナ6、エンコーダ5,7、ガバナロープ8、連結具9、ガイドレール10及びガイド装置11から基本的に構成されている。
【0016】
主ロープ3は、かご1と釣り合い錘2の自重を支え、その両端は建屋側に設置されている。巻上電動機4には、巻上電動機4の回転量に比例してパルスを発生する巻上電動機連動エンコーダ5が設置されている。ガバナ6はかご1の昇降に連動して回転することにより速度異常を検出してエレベーター100を安全に停止させるための調速機である。ガバナ6には、ガバナ6の回転量に比例してパルスを発生するガバナ連動エンコーダ7が設置され、このガバナ連動エンコーダ7によって実質的にかご1の移動量を正確に捕えることができる。ガバナ6は、ガバナロープ8の移動に伴って回転し、ガバナ連動エンコーダ7によってその回転量(移動量)が検出される。ガバナロープ8は連結具9によってかご1と連結され、かご1はガイドレール10に沿って昇降する。その際、かご1はガイド装置11によって案内される。
【0017】
制御装置(CPU)20に設定されたかご移動量計測部21は、ガバナ連動エンコーダ7からのパルス信号に基づいてかご1の移動量を計測する。一般的に、エレベーター100のかご1の移動量は、巻上電動機連動エンコーダ5でも計測可能であるが、何らかの機構的な要因によって、かご1側に引っ掛かり等が生じた場合には、巻上電動機連動エンコーダ5ではかご1の乗り心地や単位時間当たりの移動量を正しく捕らえることが困難な場合がある。そこで、本実施例では、ガバナ連動エンコーダ7によってかご1の移動量を計測するようにしている。
【0018】
例えば、かご1に備えられたガイド装置11の位置ずれによって、ガイド装置11がガイドレール10に強く押し当てられている場合がある。このような場合には、起動時に巻上電動機4がスムーズに回転し始めても、ガイド装置11に引っ掛かりが生じるため、主ロープ3にある程度のテンションが掛かった後に、かご1が飛び出すようにして動きだす現象が発生することがある。このように、何らかの機構的な要因によって、かご1側に引っ掛かり等が生じた場合には、巻上電動機連動エンコーダ5ではかご1の乗り心地や単位時間当たりの移動量を正しく捕らえることが困難な場合がある。このため、本実施例では、かご1の移動に追従して回転するガバナ連動エンコーダ7からのパルス信号に基づいてかご1の移動量を計測するようにしている。
【0019】
補正可否判定部22は、かご内負荷が無負荷であって、かご1が停止階から乗場呼びが登録されている階に向かって起動する際に、かご移動量計測部21によって計測された起動時の飛び出し量または反転量が所定量以上(基準範囲外)となっていないかを監視し、飛び出し量または反転量が所定量以上の場合には起動補償トルクの補正を指令する。また、当該補正可否判定部22は、起動補償トルクの補正が所定回数以上連続して行われていないかを監視して、連続補正回数が所定回数以上となった場合には起動補償トルクの補正を禁止する。
【0020】
起動補償トルク補正部23は、補正可否判定部22からの補正指令によって起動補償トルクを補正する。巻上電動機制御部24は起動補償トルク補正部23で補正された起動補償トルクに基づいて巻上電動機4を制御する。連続補正回数カウント部25は、補正可否判定部22から起動補償トルク補正部23に対して補正が指令された場合に、連続回数をカウントする。機構調整要求報知部26は、連続補正回数カウント部25でカウントした回数が所定回数以上となった場合に、補正可否判定部22からの指令を受けて、起動時の飛び出しや反転が起動補償トルクを要因とした制御的なものではなく、機構的な要因であることを報知する。
【0021】
図2は、巻上電動機の予め設定された初期の起動補償トルクの一例をグラフ化して示す図である。
図2に示すように、かご内負荷が無負荷の場合と定格負荷である100%負荷との間の巻上電動機トルクは、かご内負荷に対して直線で近似される。そして、この直線の傾きは予め定まっているので、無負荷時の巻上電動機トルクが決まると、定格負荷までの巻上電動機トルクを決めることができる。
【0022】
図3は、巻上電動機の飛び出しを補正したときの起動補償トルクの一例をグラフ化して示す図である。
図4は、反転を補正したときの起動補償トルクの一例をグラフ化して示す図である。
図5は、飛び出し量及び反転量に応じた巻上電動機の起動補償トルク補正量の一例をグラフ化して示す図である。例えば、かご無負荷上昇運転での起動時に、起動補償トルクが適正でないために、速度指令に対して飛び出しが発生したとすると、
図5に示す飛び出し量に応じた起動補償トルク補正量が選択される。通常、エレベーター100では、かご内無負荷上昇運転を例にとると、かご1が釣り合い錘2に引っ張られるため、起動時は上昇運転であっても、巻上電動機トルクは上昇運転方向に対してマイナス側である下降運転方向にトルクを生じる必要がある。
【0023】
図6は、実施例1におけるエレベーター100の制御装置(CPU)20で実行される処理手順を示すフローチャートである。
図1に示すエレベーター100が上昇運転を行う場合、まず、ステップS1で図示しない秤装置を用いてかご内負荷が無負荷かどうかを判定する。そして、かご内負荷が無負荷と判定されたときは、ステップS2で乗場呼びが登録されているか否かを判定する。この判定で、乗場呼びが登録されているときは、ステップS3に移行し、かご1が停止階から乗場呼びが登録されている階へ移動する時に、かご移動量計測部21においてガバナ連動エンコーダ7で発生するパルスに基づいてブレーキを解除した際の起動時のかご移動量を計測する。
【0024】
次いで、ステップS3で計測したかご移動量を基に、ステップS4で飛び出しが発生していたかどうかを判定する。すなわち、上昇運転では、速度指令を上回って更に上昇方向にかご移動量が飛び出しているか否かを判定する(
図8(b)参照)。この判定で、飛び出しが発生していると判定された場合、ステップS5に移行し、ステップS3で計測したかご移動量から飛び出し量を求め、飛び出し量が所定量以上となっていないかを判定する。
【0025】
ステップS5で飛び出し量が所定量以上(予め設定された基準範囲外)であると判定された場合は、ステップS6に移行し、起動補償トルク補正部23で
図5に示した関係に基づいて、飛び出し量から補正すべき起動補償トルク補正量を求める。そして、
図3に示すように起動補償トルクを当該起動補償トルク補正量分だけ低減し(破線の特性から実線の特性に変更)、巻上電動機制御部24に適切な起動補償トルク量を指令する。これにより、乗り心地の改善を図ることができる。なお、ステップS4及びS5の処理は、補正可否判定部22で実行される。また、前記ステップS5で飛び出し量が所定量以上であると判定されない場合は、乗り心地を改善する必要はないので、起動補償トルクの補正は行わず、処理を終了する。
【0026】
一方、ステップS4で、飛び出しが発生していないと判定された場合は、ステップS7に移行し、ステップS3で計測したかご移動量に基づいて反転が発生していたかどうかを判定する。すなわち、上昇運転を例にとると、起動時に一旦かごが下降方向に移動した後に上昇方向に移動するような反転が発生しているかを判定する(
図8(c)参照)。ステップS7で反転が発生していると判定した場合は、ステップS8に移行し、ステップS3で計測したかご移動量から反転量を求め、反転量が所定量以上となっていないかを判定する。ステップS8で反転量が所定量以上(予め設定された基準範囲外)であると判定された場合は、ステップS9に移行し、起動補償トルク補正部23で、
図5に示した関係に基づいて、反転量から補正すべき起動補償トルク補正量を求め、
図4に示すように起動補償トルクを当該起動補償トルク補正量分だけ増加して(破線の特性から実線の特性に変更)、巻上電動機制御部24に適切な起動補償トルク量を指令する。これにより乗り心地の改善を図ることができる。ステップS7及びS8の処理も、補正可否判定部22で実行される。
【0027】
一方、ステップS7で反転が発生していないと判定された場合、及びステップS8で反転量が所定量以上であると判定されない場合は、乗り心地を改善する必要がないため、起動補償トルクの補正は行わず、処理を終了する。
【0028】
なお、本実施例では、上昇運転時を例に説明したが、下降運転時も上昇運転と同様にして起動補償トルクの補正を行うことにより乗り心地の改善を図ることができる。
【0029】
以上、本実施例によれば、かご1の動きと連動するガバナ6に付帯したガバナ連動エンコーダの出力からかご移動量を計測し、当該かご移動量が予め定められた所定量以上の場合には、当該かご移動量に応じてエレベーター起動時の巻上電動機トルクを自動的に補正することにより、起動時の乗り心地を快適に維持することができる。
【実施例2】
【0030】
図7は、実施例2に係るエレベーターの制御装置の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図1に示したエレベーター100及びエレベーター100の制御装置20の構成、
図2ないし
図4に示した巻上電動機トルクとかご内負荷との関係、及び
図5に示した飛び出し量(反転量)と起動補償トルク補正値との関係は、実施例1と同一であるので、重複する説明は割愛する。なお、
図7において、ステップS1からステップS9までの各処理は
図6に示した処理と同等なので、適宜説明を省略する。
【0031】
図7において、ステップS1からS9までは、
図6に示した実施例1と同様に処理される。そこで、ステップS1からステップS3まで処理し、ステップS4で飛び出し有りと判定されると、ステップS5で、補正可否判定部22において飛び出し量が所定量以上(予め設定された基準範囲外)であるか否かが判定される。ここで、所定量以上であると判定されると、ステップS6に移行する。ステップS6では、起動補償トルク補正部23で、
図5に示した関係に基づいて、飛び出し量から補正すべき起動補償トルク補正量を求め、
図3に示すように起動補償トルクを当該起動補償トルク補正量分だけ低減し、巻上電動機制御部24に適切な起動補償トルク量を指令する。これにより、乗り心地の改善を図ることができる。次いで、ステップS10に移行し、連続補正回数カウント部25で飛び出し補正連続回数をカウントアップし、ステップS12に移行する。
【0032】
一方、ステップS5で、補正可否判定部22において飛び出し量が所定量以上であると判定されない場合は、乗り心地を改善する必要はないため、起動補償トルクの補正は行わずにステップS11に移行する。そして、ステップS11において、連続補正回数カウント部25で飛び出し補正連続回数をクリアし、ステップS12に移行する。
【0033】
ステップS12では、ステップS4において飛び出しが発生していると判定しているので、連続補正回数カウント部25で反転補正連続回数をクリアする。
【0034】
次に、ステップS13で、補正可否判定部22において、飛び出し補正連続回数が所定回数以上となっているかを判定する。ここで、もし、飛び出し補正連続回数が所定回数以上となっていると判定された場合は、ステップS19に移行する。ステップS19では、補正可否判定部22で、起動補償トルクの再補正を禁止し、ステップS20で、機構調整要求報知部26に対して指令を発する。これにより、指令を受けた機構調整要求報知部26は、電話回線27を通じて、監視センター28に対し、乗り心地異常が起動補償トルクを補正しても改善しないことから、機器の調整が必要である旨を報知し、一連の処理を終丁する。
【0035】
他方、ステップS4で飛び出しが発生していないと判定された場合は、ステップS7で反転が発生していたかどうかを判定する。ステップS7で反転有りと判定されると、ステップS8に移行する。ステップS8では、補正可否判定部22において反転量が所定量以上(予め設定された基準範囲外)であるかを判定する。そして、反転量が所定量以上であると判定されると、ステップS9に移行する。ステップS9では、起動補償トルク補正部23において
図5に示した関係に基づいて、反転量から補正すべき起動補償トルク補正量を求め、
図4に示すように起動補償トルクを当該起動補償トルク補正量分だけ増加して、巻上電動機制御部24に適切な起動補償トルク量を指令する。これにより、乗り心地の改善を図ることができる。次いで、ステップS14に移行し、連続補正回数カウント部25で反転補正連続回数をカウントアップし、ステップS16に移行する。
【0036】
一方、ステップS8で、補正可否判定部22において反転量が所定量以上であると判定されない場合は、乗り心地を改善する必要はないので、起動補償トルクの補正は行わずにステップS15に移行する。そして、ステップS15において、連続補正回数カウント部25で反転補正連続回数をクリアし、ステップS16に移行する。
【0037】
ステップS16では、ステップS4において飛び出しが発生していないと判定しているので、連続補正回数カウント部25で飛び出し補正連続回数をクリアする。
【0038】
次に、ステップS17で、補正可否判定部22において、反転補正連続回数が所定回数以上となっているかを判定する。ここで、もし、反転補正連続回数が所定回数以上となっていると判定された場合は、ステップS19に移行する。ステップS19では、補正可否判定部22で起動補償トルクの再補正を禁止し、ステップS20で、機構調整要求報知部26に対して指令を発する。これにより、指令を受けた機構調整要求報知部26は、電話回線27を通じて、監視センター28に対し、乗り心地異常が起動補償トルクを補正しても改善しないことから、機器の調整が必要である旨を報知し、一連の処理を終了する。
【0039】
他方、ステップS7で、反転が発生していないと判定された場合は、ステップS18に移行し、ステップS4において飛び出しも発生していないと判定されているので、乗り心地の改善は不要であることから、連続補正回数カウント部25で飛び出し補正連続回数及び反転補正連続回数の両者ともクリアし、一連の処理を終了する。
【0040】
以上、本実施例によれば、起動補償トルク量を補正したにも関わらず、かご1の飛び出しや反転が改善されない場合には、要因が制御的なものではないことを判断して起動補償トルク量の補正を中断し、要因が機構的なものであることを報知して、点検員による機器調整を促すことができる。よって、本実施例によれば、起動補償トルク量を誤って繰り返し補正することもなく、乗り心地を更に悪化させてしまうことも防止できる。
【0041】
なお、本実施例では、上昇運転時を例に説明したが、実施例1と同様に下降運転時も上昇運転と同様にして起動補償トルクの補正を行うことにより乗り心地の改善を図ることができる。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、次のような効果を奏する。なお、以下の実施形態における効果の説明では、本実施形態の各部について、特許請求の範囲における各構成要素をかっこ書きで示し、若しくは参照符号を付し、両者の対応関係を明確にした。
【0043】
1)予め定められたかご内負荷と巻上電動機トルクとの関係を用いてかご内負荷から起動時の巻上電動機トルクを求め、当該巻上電動機トルクを補正して巻上電動機4を駆動することにより、起動時の乗り心地を快適に維持するエレベーター100の制御装置20において、かご内負荷が無負荷の状態で起動する際に、かご1の動きと連動するガバナ(調速機)6に付設したガバナ連動エンコーダ(エンコーダ)7の出力からかご移動量を計測し、当該かご移動量が予め設定された基準範囲外となっている場合には、当該かご移動量に応じて前記起動時の巻上電動機トルクを補正するので、自動的に起動時の乗り心地を最適な状態に維持することができる。言い換えれば、エレベーター起動時のかご1の移動量を正しく捕え、若しくはかご1の乗り心地を直接的に捕え、移動量に応じた起動補償トルク量を補正することが可能となる。
【0044】
なお、前記かご移動量はかご移動量計測部21により計測され、前記予め設定された基準範囲外であるか否かは補正可否判定部22により判定され、前記巻上電動機トルクは起動補償トルク補正部23で補正される。
【0045】
2)前記かご移動量が、飛び出し時又は反転時の移動量であるので、エレベーター起動時のかご1の飛び出し時、あるいは反転時の移動を抑制することができる。
【0046】
3)前記起動時の巻上電動機トルクの連続補正回数をカウントし、前記連続補正回数が所定回数以上となった場合には、前記起動時の巻上電動機トルクの補正を禁止するので、乗り心地の異常発生が、起動補償時の巻上電動機トルク量に起因するものでない場合に、巻上電動機トルクを繰り返し補正することがなくなり、乗り心地の悪化を防止することができる。言い換えれば、起動補償時の起動補償トルク量を補正したにも拘わらず、かご1の飛び出しあるいは反転が改善されない場合には、起動補償トルク量の補正を中断することにより、巻上電動機トルクを繰り返し補正することがなくなり、乗り心地の悪化の制御的な要因を排除することができる。
【0047】
なお、前記連続補正回数は連続補正回数カウント部25でカウントされ、前記起動時の巻上電動機トルクの補正は補正可否判定部22の判定結果に基づいて禁止される。
【0048】
4)前記補正の禁止に加え、前記かご移動量が予め設定された基準範囲外になる要因が、(電気的なものではなく)機構的なものであることを報知するので、点検員による機器調整を促すことができる。なお、前記機構的なものであることは、機構調整要求報知部26から電話回線27を介して監視センター28に報知される。
【0049】
5)前記報知が監視センター28に対して行われるので、監視センター28で集約的に管理することができると共に、点検員に対して対象となるエレベーター100と乗り心地の悪化の要因を的確に指示することができる。
【0050】
さらに、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施例は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。