(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を
図1ないし
図14によって詳細に説明する。
図1および
図2において符号1で示すものは、本発明の実施の形態に係る車両である。矢印Fで示す方向は、車両1の前方を示し、車両1の前部には左右一対の前輪3,3が前側懸架装置5を介して車体フレーム7に搖動自在に懸架され、車両1の後部には左右一対の後輪9,9が後側懸架装置11を介して車体フレーム7に搖動自在に懸架されている。
【0013】
車体フレーム7は、その前後方向中央部において、車両1の左右方向にそれぞれ広がる中央フレーム7aを備え、該中央フレーム7aは平面視において六角形状に形成されている。車体フレーム7は、中央フレーム7aを含めて、その横断面が四角形状に形成された中空管で構成されている。中央フレーム7a上は、乗員が搭乗するための乗車領域13となっており、この乗車領域13には、
図1に示すように、乗員が着座するためシート15と、シート15の前方にフロア17が設けられている。
【0014】
シート15とフロア17とは遮蔽体19で覆われ、遮蔽体19の前部は透明体21が組み付けられている。遮蔽体19と透明体21とで略球状の乗車室が形成されている。車体フレーム7の前部と後部との中空管の外周には、横断面が矩形状の筒状の衝撃吸収部材22がそれぞれ嵌合されボルトまたは溶接により固定されている。車両1が障害物に衝突したとき、ボルトまたは溶接部が破損して衝撃吸収部材22が車体フレーム7に対して相対移動することで衝撃を吸収するように構成されている。
【0015】
図2に示すように平面視において、左右の前輪3,3と乗車領域13との間にそれぞれ組電池23が配置され、左右の後輪9,9と乗車領域13との間にもそれぞれ組電池23が配置され、合計4個の組電池23が搭載されている。組電池23は、車両1に搭載される電気機器に電力を供給するものであり、該電気機器としては、前輪3,3または後輪9,9を回転駆動するための電動モータ、ヘッドライト等の灯火器および前記電動モータを制御するための制御装置等が挙げられる。その他、車両1には前輪3,3を操舵するためのハンドルも備えている。なお、作図の都合上、電気機器やハンドル等は図示を省略している。
【0016】
各組電池23…は、車両1の平面視において、中央フレーム7aの六角形状の前側2辺に相当する部位と後側2辺に相当する部位とにそれぞれ一定の間隙を隔てて対向するように配置され、中央フレーム7aに固定されている。詳細には各組電池23…は、中央フレーム7aの六角形状の前側および後側の各2辺に相当する部位にそれぞれ一端部が固定された一対の支持ブラケット25,25の他端部間にそれぞれ弾性部材27を介して架設されている。各支持ブラケット25…は、
図3の(C)図に示す側面視においてコの字状に形成された基部25aと、同側面視において該基部25aの側端面から延設された略二等辺三角形状の本体部25bとを備え、本体部25bの略二等辺三角形状の頂点に相当する部位に組電池23が弾性部材27を介して固定されている。
【0017】
弾性部材27による固定構造の詳細については後述する。支持ブラケット25の基部25aは、中央フレーム7aを上下で挟み込んだ状態でねじ部材29により中央フレーム7aに螺着されている。ねじ部材29が挿通される支持ブラケット25の基部25aに穿設された挿通孔は、中央フレーム7aの六角形状の辺に沿う方向に長い長円状の長孔に形成されている(
図4および
図5参照)。なお、この長孔は、組電池23の両端部を支持する一対の支持ブラケット25,25のうち何れか一方の支持ブラケット25のみに形成するようにしてもよい。この長孔を設けたことで、中央フレーム7aの六角形状の辺に沿う方向に支持ブラケット25を変位させて固定位置を任意に調整することができる。
【0018】
支持ブラケットは車両1が走行中に受ける上下方向の振動に対して組電池23を支持するため充分な機械的強度を有し、また、車両1が走行中に、支持ブラケット25または支持ブラケット25に取り付けられた組電池23が障害物に衝突した場合、組電池23が水平方向に移動し伝達される衝撃を吸収するように、一対の支持ブラケット25,25は、その水平方向の衝撃強度が鉛直方向の衝撃強度より低くなるように構成されている。
【0019】
また、車両1の前側に配置された左右の組電池23,23の表面は、その大部分が導風カバー31L,31Rでそれぞれ覆われており、車両1の後側に配置された左右の組電池23,23の表面は、その大部分が導風カバー33L,33Rでそれぞれ覆われている。各組電池23…の底面の中央部は、中央フレーム7aの六角形状の前側および後側の各2辺に相当する部位の中央部にそれぞれ一端部がねじ部材35により螺着された略二等辺三角形状の支持板37(
図3の(A)図参照)の他端部に支持されている。詳しくは、各組電池23…の底面の中央部が支持板37の略二等辺三角形状の頂点に相当する部位に円柱状の弾性部材39を介して支持され、略二等辺三角形状の底辺の両端部に相当する部位がねじ部材35により中央フレーム7aの底面に螺着されている。弾性部材39は、ゴム部材またはその他の樹脂材からなる部材により構成されている。弾性部材39による固定構造の詳細については後述する。
【0020】
車両1の前側に配置された左右の導風カバー31L,31Rの構造は、車両1の幅方向中心に対して対称になるよう構成され、車両1の後側に配置された左右の導風カバー33L,33Rの構造は、車両1の幅方向中心に対して対称になるよう構成されている。説明の都合上、導風カバー31L,33Lについて詳細に説明し、導風カバー31R,33Rについては説明を省略する。
【0021】
図4および
図5に示すように、導風カバー31Lは、断面形状がへの字状に屈曲形成された上面部41と、断面形状が下方に凸状に2か所連続して湾曲形成された下面部43と、上面部41と下面部43とのそれぞれの後縁を繋ぐ後面部45と、下面部43の前縁から上面部41の前縁に向かって中途部まで延設された前面部47と、上面部41と下面部43と後面部45と前面部47とで囲まれた両側面を塞ぐ側面部49Tおよびその反対側の側面部49N(
図2参照)と、導風カバー31L内に導入した空気を2箇所から外部へ排出する案内をするための仕切板51,53とを備えている。下面部43は本発明の「第2冷却風案内板」を構成し、仕切板51,53は本発明の「第1冷却風案内板」を構成する。
【0022】
導風カバー31Lの上面部41の前縁と前面部47の上縁との間には、外気を導入する開口55が設けられている。導風カバー31Lの側面部49Tには、3箇所の切欠き部が設けられ、それらの切欠き部から、組電池23の側面部の一部と、仕切板51,53のそれぞれの一部とが外部に露出している。導風カバー31Lの側面部49Nには組電池23の側面部の一部を外部に露出させるための切欠き部と開口57(
図6参照)とが設けられ、該開口57には、車両1の前側の衝撃吸収部材22における前端の開口59Fから導入され車体フレーム7内を通過した外気を導風カバー31L内に導入するための吸気ダクト61が挿入されている。
【0023】
導風カバー31Lの上面部41,下面部43,後面部45,前面部47は、それらの端部に形成された水平方向に長い長円状の長孔に挿通されたねじ部材65により側面部49Tと締結されている。この長孔に対するねじ部材65の挿通位置を適宜選定することで、上面部41等に対する側面部49Tの固定位置を任意に調整して、組電池23の幅寸法の製造上のばらつきに対応することができる。なお、この長孔は、側面部49T側と側面部49N側との双方の側に形成してもよいが、何れか一方の側のみに形成するようにしてもよい。
【0024】
図6に示すように、導風カバー31Lの仕切板51,53間であって仕切板53の近傍には水平方向の軸回りに回転する略円柱状のファン67が配置されており、導風カバー31Lの側面部49Nの外側面に固定された電動モータ69によってファン67が回転駆動される。ファン67の回転軸の、電動モータ69とは反対側の端部は、側面部49Tに固定された軸受部材(図示せず)に軸方向に摺動可能に軸支され、電動モータ69と側面部49Tとの距離の製造上のばらつきを吸収できるように構成されている。
【0025】
なお、
図6に示すファン67は、クロスフローファンであるが、これに替えて遠心ファンでもよい。組電池23内に配置された温度センサ(図示せず)によって組電池23の温度が計測され、その計測値に基づいて電動モータ69が回転駆動されファン67が回転することで組電池23を冷却するように構成されている。ファン67が回転すると、衝撃吸収部材22の開口59Fから導入された外気が車体フレーム7内を通過したのち吸気ダクト61を介して導風カバー31L内に導入される。導風カバー31L内に導入された空気により組電池23が冷却されることで温まった空気が仕切板51で形成された開口51aと仕切板53および上面部41で形成された開口53aとから外部に排出される。
なお、開口51aと開口53aとは、車両1の側部に配設された図示されない排気ダクトに接続されるように構成されてもよい。排気ダクトに接続される場合は、高温の排気がそれより低温の吸気に混入する虞がないため、吸気ダクト61を廃止して、開口55から直接、外気を導風カバー31L内に導入することができる。
【0026】
次に、車両1の後側の導風カバー33Lについて説明する。導風カバー33Lの側面部49Nの外側面に固定された電動モータ69によってファン67が回転駆動されて外気が車両1の側部に配設された吸気ダクト68を介して側面部49Nに設けられた開口57から導入される。導風カバー33L内に導入された空気により組電池23が冷却されることで温まった空気が仕切板51,53により案内されて、仕切板51で形成された開口51aと仕切板53および上面部41で形成された開口53aとから排気ダクト70を介して車体フレーム7後部の内部に導入される。その後、車体フレーム7の後部に嵌合固定された衝撃吸収部材22の後端の開口59Rから排出される。
【0027】
なお、空気の流動抵抗を低減することからすると、吸気ダクト68と排気ダクト70とは何れか一方のみ配設するのが望ましい。しかし、高温の排気がそれより低温の吸気に混入しないように排気口と吸気口とを離隔して設けるために導風カバー33Lの両端部に両ダクト68,70を配設する場合は、少なくとも何れか一方のダクトの導風カバー33Lへの接続部を柔軟性を有する構造(例えば蛇腹構造)にしておくことが望ましい。そうすることで、組電池23の幅寸法の製造上のばらつきや車両1の走行時の路面振動による組電池23の変位を吸収することができる。
【0028】
また、
図2に示すように、内部に収納された組電池23を含んだ導風カバー31L,31R,33L,33Rの各重心位置をそれぞれG11,G12,G13,G14とし、車両1の重心位置をG2とし、前輪3,3と後輪9,9の各接地位置をそれぞれP1,P2,Q1,Q2とし、重心位置G2と各接地位置P1,P2,Q1,Q2とを結ぶ各仮想直線(線分)をそれぞれL1,L2,M1,M2としたとき、乗車領域13を除く各仮想直線L1,L2,M1,M2上に各重心位置G11,G12,G13,G14がそれぞれ近接するように各導風カバー31L,31R,33L,33Rが位置付けられている。なお、組電池23を含んだ各導風カバー31L,31R,33L,33Rの重量は、その割合では組電池23が大部分を占めるので、重心位置G11,G12,G13,G14は、組電池23の重心位置と等価であると言える。
【0029】
これによって、組電池23等の重量物が全て乗車領域13の下方に配置され質量が集中する場合と比べて、乗車領域13の高さを低くすることができ車両1の乗降性を良好にすることができる上、質量の分散化が図れることで、質量の集中化による車両1の旋回時の過度の俊敏性が回避でき乗り心地が良好になる。また、組電池23等の重量物は、上述した各位置にそれぞれ弾性部材27,39を介して位置付けられ支持されることから、ダイナミックダンパー(制振機構)としても機能し、車両1の走行時の路面振動を好適に抑制することができる。さらに、乗車領域13から離隔した位置に組電池23が配設されているので、組電池23の異常時に組電池23からガスが発生した場合でも乗車領域13に該ガスが到達するまでに外気に撹拌され消失する。
【0030】
また、
図3に示すように、各組電池23…の両端部が固定された一対の弾性部材27,27の中心を通る仮想直線N1上に重心位置G1が近接するように、かつ、弾性部材39の中心を通る仮想直線N2(鉛直方向の直線)上に重心位置G1が近接するように導風カバー31L,31R,33L,33Rおよび各組電池23…が位置付けられている。これによって、車両1の走行時等の路面からの振動に対しても組電池23等の重量物が安定的に支持される。なお、本実施の形態では、仮想直線N2の方向を鉛直方向としたが、重心位置G1に近接し、かつ、仮想直線N1に直交する方向であれば水平方向または水平方向もしくは鉛直方向に対して傾斜した方向であってもよい。
【0031】
(組電池23の構成)
次に、組電池23の構成について
図7ないし
図9を参照して説明する。これらの図において、上下方向をZ方向とし、上方向を方向Z1、下方向を方向Z2とする。Z方向に直交し、かつ、後述する冷却板71の挟持面71aに垂直な方向をX方向とし、X方向のそれぞれの向きに応じて方向X1、方向X2とする。Z方向とX方向とに直交する方向をY方向とし、Y方向のそれぞれの向きに応じて方向Y1と方向Y2とする。
【0032】
組電池23は、X方向に間隙を隔てて挟持面71a同士が平行になる状態で並設されたアルミニウム合金製の複数の冷却板71…と、各冷却板71…間の間隙のそれぞれに配置され冷却板71で挟持された単電池モジュールと、該単電池モジュールが冷却板71の挟持面71aで挟持された状態でその挟持を保持する保持部材75とを備える。前記単電池モジュールは、
図9に示すように、略直方体状のリチウムイオン電池からなる単電池77と該単電池77の外周(冷却板71の挟持面71aで挟持された面を除いた単電池77の外周)を囲繞するように各冷却板71…間の間隙のそれぞれに配置されたアルミニウム合金製の間隔調整体79とを備える。各冷却板71…で挟持されたときの単電池77と間隔調整体79との圧縮剛性は、単電池77より間隔調整体79の方が高くなるように構成されている。
【0033】
単電池77の上面部には、正極端子77aおよび負極端子77bと、単電池77の異常時に発生するガスを所定の圧力を超えたとき弁が開いて排出する排気口77cと、単電池77内に電解液を注入するための注入孔77dとが設けられている。なお、注入孔77dは、電解液が注入された後、密栓される。各単電池77…の正極端子77aおよび負極端子77bには、Sの字状に屈曲形成された導電性のバスバー80がそれぞれレーザー溶着されている。組電池23において隣り合う一対の単電池77,77のうち一方の単電池77の正極端子77aにレーザー溶着されたバスバー80と他方の単電池77の負極端子77bにレーザー溶着されたバスバー80とは、それらの端部同士が重合され、それら端部に穿設されたボルト孔に挿通されたボルトにより連結され電気的に接続されている。なお、連結される際に下側に位置するバスバー80の上端部の裏面にはナットが溶着されている。
【0034】
間隔調整体79は、それぞれ略矩形枠状の一対の第1間隔調整体片79aと第2間隔調整体片79bとを備え、各間隔調整体片79a,79bのZ方向の寸法は冷却板71のZ方向の寸法と略同一に構成されている。隣り合う冷却板71同士の対向する一対の挟持面71a,71aのうち一方の挟持面71aに当接する第1間隔調整体片79aの当接面と、前記一対の挟持面71a,71aのうち他方の挟持面71aに当接する第2間隔調整体片79bの当接面との間に位置付けられた分割面81で間隔調整体79の第1間隔調整体片79aと第2間隔調整体片79bとが分割接合されている。分割面81は、Z方向に平行な面であり、間隔調整体79の挟持面71aへの当接面に対して傾斜している。
【0035】
各冷却板71…は、単電池77で発生した熱が単電池77と当接して伝播する受熱部として機能する平坦な挟持面71aと、挟持面71aのY方向両側縁に延設され挟持面71aに伝播した熱を組電池23の外部に放出する放熱部71bとを備える。挟持面71aの上縁部の方向Y2側には、凹状に切り欠かれた矩形状切欠部82aが形成されている。挟持面71aは、Y方向の寸法が間隔調整体79よりやや大きく形成され、挟持面71aの内部には、空気が通過できる複数の通気孔82b…がZ方向に穿設されている。該Z方向は、本発明の「第1の方向」を構成する。各通気孔82b…の横断面は略矩形状に形成されている。
【0036】
放熱部71bは、間隔調整体79のY方向両端の外周より外方に延設され、Y方向およびZ方向に平行で、かつ、Z方向に長い放熱面を有する複数のフィン83…が形成されている。該Y方向は、本発明の「第2の方向」を構成する。挟持面71aの内部に穿設された通気孔82b…内と複数のフィン83…間とを空気が通過することで冷却板71全体が均一に冷却される。ここで、上述した導風カバー33L内の空気の流れを、組電池23の通気孔82b…およびフィン83…を含めて詳細に説明する。開口55,57から導風カバー33L内に導入された外気は、ファン67の回転による送風とファン67を囲むように配置された仕切板51,53による案内とによって各冷却板71…の通気孔82b…上部に向かって送られたのち各通気孔82b…内を下方に向かって通過する。その後、導風カバー33Lの下面部43の湾曲に沿って導風カバー33Lの後面部45側と前面部47側とに分岐案内された空気は、各冷却板71…の両側部のフィン83…下部に向かって送られたのち各フィン83…間を上方に向かって通過する。各フィン83…間を通過した空気は、仕切板51,53等によって案内されて開口51a,53aから導風カバー33L外に排気される。
【0037】
冷却板71は、後述する保持部材75のボルト87が挿通される貫通孔および矩形状切欠部82aを除き、挟持面71aの内部の通気孔82b…および放熱部71bのフィン83…を含めて素材の製造段階ではZ方向の押し出し成型により製造されている。各フィン83…が薄肉に形成されていることにより放熱部71bは、挟持面71aより衝撃強度が低くなっている。また、放熱部71bのX方向幅寸法T1は、挟持面71aのX方向幅寸法T2より大きく、該幅寸法T2と間隔調整体79のX方向幅寸法T3とを合わせたX方向幅寸法(T2+T3)より小さく設定されている。これによって、放熱部71bのX方向幅寸法T1が可及的大きく設定され、放熱部71bのフィン83…によって効果的に放熱される。
【0038】
保持部材75は、複数の冷却板71…のうち最も外側に位置するX方向両端の冷却板71,71の外側面にそれぞれ当接された略矩形状の一対の端板85,85と、これらの端板85,85に穿設された複数の貫通孔にそれぞれ挿通された長尺の横断面円形状のボルト87と、これらのボルト87に螺合されるナット89とを備える。ボルト87とナット89とで締結されることで、複数の冷却板71…間にそれぞれ介在された単電池77と間隔調整体79とを各冷却板71…で挟持した状態でその挟持が保持される。
また、一対の端板85,85の中央部には、一端部に雄ねじが刻設されたボルト85aの他端部が固着されており、これらのボルト85aは、方向X1,X2に沿う方向にそれぞれ延びている。
【0039】
各端板85,85の外側面には、複数の部位を六角形状に窪ませて凹部85b…が形成され、その分、材料の節約および軽量化を図っている。端板85に穿設された複数の貫通孔のうち4個は、端板85の略矩形状の四隅に相当する部位に穿設され、残りの2個は、端板85の略矩形状の上辺と下辺のそれぞれの中間に相当する部位にそれぞれ形成された突出部85cに穿設されている。各単電池77…および各間隔調整体79…の各冷却板71…による挟持を保持部材75により保持している状態において、端板85の四隅に穿設された前記4個の貫通孔に対応する、各冷却板71…および各間隔調整体79…のそれぞれの部位に貫通孔が穿設されている。これによって、端板85の四隅に穿設された前記4個の貫通孔に挿通された4本のボルト87は、一対の端板85,85の貫通孔に加え、各冷却板71…と各間隔調整体79…との貫通孔にも挿通される。
【0040】
一方、端板85の突出部85cに穿設された2個の貫通孔に挿通された2本のボルト87は、各冷却板71…および各間隔調整体79…の上方および下方にそれぞれ近接して配置されている。これらの2本のボルト87は、端板85の四隅の貫通孔に挿通された前記4本のボルト87とは挿通方向が逆向きになってるが、全て同一の挿通方向であってもよい。また、前記6本のボルト87は、一端部に雄ねじが刻設され他端部に六角形状の頭部が一体形成されたボルトを使用したが、これに替えて両端部とも雄ねじが刻設されたボルトを使用してもよい。なお、
図8および
図9では、作図の都合上、ボルト87を適宜切断して図示している。
【0041】
各冷却板71…に穿設された前記貫通孔は、その直径がボルト87の外径と略等しい円形状に形成されており、各間隔調整体79…に穿設された前記貫通孔は、ボルト87がY方向に相対移動できるようにY方向に長い長円状の長孔90aに形成されている。なお、本実施の形態では、間隔調整体79の長孔90aは、間隔調整体79を構成する第1間隔調整体片79aと第2間隔調整体片79bの双方の間隔調整体片の貫通孔をそれぞれ同様の長円状の長孔に形成している。また、第1間隔調整体片79aにおける方向Y2側のZ方向中間部と第2間隔調整体片79bにおける方向Y1側のZ方向中間部とには、接着剤を注入するための注入孔90bがX方向にそれぞれ穿設されている。第2間隔調整体片79b上部における中央よりやや方向Y2側には、単電池77の温度を計測するために単電池77内に配設された温度センサ(図示せず)に接続される電線や単電池77の電圧を計測するための電線を取り出すための開口として貫通孔90cが穿設されている(
図9参照)。
【0042】
第1間隔調整体片79aと第2間隔調整体片79bとのそれぞれの上部におけるY方向中間部には、凹状に切り欠かれた矩形状切欠部91aがそれぞれ形成されている。矩形状切欠部91aは、両間隔調整体片79a,79bの接合時に、それぞれの接合面に略一致した位置に位置付けられるよう形成されている。また、両間隔調整体片79a,79bのそれぞれの上部(方向Z1側)および下部(方向Z2側)における内周面のY方向中間部には、円弧状切欠部91bがそれぞれ形成されている。円弧状切欠部91bは、両間隔調整体片79a,79bの接合時に略一致した位置に位置付けられるよう形成されている。
【0043】
矩形状切欠部91aは、単電池77の異常時に単電池77の排気口77cから排出されたガスを排出するための排気口として機能する。円弧状切欠部91bは、バスバー80がレーザー溶着された状態の単電池77を間隔調整体79から取り外す際、間隔調整体79の内周面に単電池77が干渉することなく間隔調整体79に対して単電池77を回動させその姿勢を変化させて取り外すことができる形状に切り欠かれている。該円弧状切欠部91bは、組電池23中の一部の単電池77が不良となった場合に、その単電池77だけを取り外すとき等に利用される。
【0044】
また、第1間隔調整体片79a上部の方向Y1側および第2間隔調整体片79b上部の方向Y2側には、凹状に切り欠かれた矩形状切欠部91cがそれぞれ形成されている。組電池23において冷却板71を挟んで隣り合う一対の単電池77,77に電気的に接続された一対のバスバー80,80は、第1間隔調整体片79aおよび第2間隔調整体片79bの各矩形状切欠部91cと、これらの間隔調整体片79a,79b間の冷却板71の矩形状切欠部82aとで形成された収容部に収容され、間隔調整体79と冷却板71との上縁から大きく食み出さないように構成されている。第1間隔調整体片79aと第2間隔調整体片79bとは、貫通孔90cを除き同一の形状に形成されており、素材の製造段階ではX方向の押し出し成型により製造される。
【0045】
<組電池23の組み立て手順>
次に、組電池23の組み立て手順について、
図10ないし
図13を参照して説明する。なお、下記のステップS1ないしS12とフローF1ないしF4とは、それぞれ
図10と
図11とに示したものである。
まず、希望する電源容量分の個数以上の単電池77と、希望する電源容量分の単電池77の個数と同じ個数の間隔調整体79(第1間隔調整体片79aおよび第2間隔調整体片79b)と、その個数より1つ多い個数の冷却板71と、保持部材75と、複数のバスバー80等を準備する(ステップS1,S2,S3,S4)。
【0046】
次に、ステップS1で準備した複数の単電池77のエージングを行う(ステップS5)。この場合のエージングとは、予め設定された環境温度下で単電池に予め設定された容量の充電(満充電を含む。)を行うことである。
次に、ステップS5でエージングを行った各単電池77…の性能の検査を行う(ステップS6)。この場合の検査とは、予め設定された環境温度下で各単電池77…の放電特性および充電時の電圧や充電容量が適正か否か等の検査や外観の検査を行うことである。検査の結果、不適と判定された単電池77は廃棄される。
【0047】
次に、ステップS6で検査した各単電池77…を、予め設定された充電状態(満充電を含む。)で、かつ、予め設定された環境温度下で、冷却板71の挟持面71aで挟持される単電池77の面を予め設定された圧縮荷重で計測装置101の挟持部により挟持する。そのときの厚さを計測装置101で計測して記憶装置103に記憶する(ステップS7、フローF1参照)。そのときの厚さの計測値は、
図12の(a)図に示すt
0となる。単電池77の厚さは、2箇所以上の部位(例えば両端部)を計測して、それらの計測値の平均値または最小値を単電池77の厚さとしてもよい。計測装置101で計測したときの厚さが、予め設定された単電池用の上限閾値と下限閾値との間に入らないため不適と判定された単電池77は廃棄される。なお、ステップS6の検査とステップS7の計測とは、実施する順番を入れ替えてもよい。
【0048】
次に、ステップS2で準備した複数の間隔調整体79のうち任意に選んだ一対の第1間隔調整体片79aと第2間隔調整体片79bとの傾斜面同士を当接させ計測装置104のサーボモータを作動させて一定の圧縮荷重を付与した状態で、これら両間隔調整体片79a,79bを分割面81の傾斜する方向に沿って、計測装置104のサーボモータを作動させて相対的に変位させながら、これら両間隔調整体片79a,79bの全厚さを計測装置104により計測する。そのときの計測値が、先に計測した単電池77のうち任意に選んだ1つの単電池77の厚さ計測値に基づいて設定された間隔調整体用の上限閾値と下限閾値との間に入るように両間隔調整体片79a,79bの相対位置を特定する(ステップS8、フローF2参照)。
図12の(b)ないし(d)図においては、(b)図に示す両間隔調整体片79a,79bの相対位置の場合が両間隔調整体片79a,79bの全厚さが最も大きい値(t
1+s)となり、(d)図に示す場合が全厚さが最も小さい値(t
1−s)となり、(c)図に示す場合がそれらの中間の値(t
1)となる。
【0049】
前記間隔調整体用の上限閾値および下限閾値は、それらの値の範囲内に入るように、任意に選んだ前記単電池77を圧縮して保持すれば該単電池77の劣化を低減することができる値で、実験により求めた値である。前記間隔調整体用の上限閾値および下限閾値のうち上限閾値は単電池77の満充電時の厚さに相当する厚さの値(ステップS7で計測した厚さに基づいて算出した値)より小さな値に設定しており、下限閾値はその値の厚さになるまで単電池77を圧縮したときの圧縮力が単電池77の圧縮強度を超えないような値に設定している。任意に選んだ前記単電池77と相対位置を特定した両間隔調整体片79a,79bとを1つの単電池モジュールを構成する部材として関連付けて保管する。
【0050】
次に、ステップS8で特定した両間隔調整体片79a,79bの相対位置で両間隔調整体片79a,79bを保持した状態で両間隔調整体片79a,79bの各注入孔90bに接着剤を注入装置105により注入し、該接着剤により両間隔調整体片79a,79bを仮固定する(ステップS9、フローF3参照)。
次に、ステップS3で準備した複数の冷却板71のうち任意に選んだ1つの冷却板71を水平に保持し、その冷却板71の挟持面71a上に、ステップS9で両間隔調整体片79a,79bを仮固定してなる間隔調整体79を載置すると共に、その間隔調整体79の内周側に臨む挟持面71a上に、ステップS7で厚さを計測した単電池77であって両間隔調整体片79a,79bと1つの単電池モジュールを構成する部材として関連付けた単電池77を載置する(ステップS10、フローF4参照)。冷却板71の挟持面71a上での間隔調整体79と単電池77との位置決めは治具によって行われる。
【0051】
次に、間隔調整体79と単電池77とを冷却板71に載置したステップS10の状態を治具によって保持したまま間隔調整体79の内周面と単電池77の外周面との間隙に緩衝剤107を充填装置109により充填して冷却板71と間隔調整体79と単電池77とを一体化して結合体を製作する(ステップS11、
図13参照)。このとき充填する緩衝剤としては、エポキシ系樹脂等の緩衝剤が挙げられる。緩衝剤は、硬化した後も、ある程度の柔軟性は残存する。
次に、ステップ5からステップ11までのステップを、ステップS1で準備した全ての単電池77について終了するまで行ったのち、ステップ11で一体化した冷却板71等の全ての結合体を間隔調整体79および単電池77と冷却板71とが交互になるよう積層する。
【0052】
このとき、単電池77の表面層がステンレス製またはアルミニウム合金製の場合は、アルミニウム合金製の冷却板71を介して単電池77同士が互いに電気的に導通しないよう絶縁するために、積層する前記結合体同士のうち一方の冷却板71と他方の単電池77との当接面の間に熱伝導性のよい絶縁シートを介在させておく。なお、該絶縁シートに替えて当接面の間に絶縁性グリスを均一な厚さに塗布してもよい。また、単電池77の表面層がアルミニウム合金製の場合は、絶縁シートに替えて陽極酸化被膜により絶縁するようにしてもよい。また、単電池77の表面層が絶縁性樹脂の場合は、前記絶縁シートや絶縁性グリスは省略することができる。
【0053】
次に、積層した前記結合体を、ステップ4で準備した保持部材75(一対の端板85,85、ボルト87、ナット89)により締結して挟持する(ステップS12)。ボルト87に対するナット89の締め付けトルクは、単電池77の劣化を低減することができる圧縮力を付与できる所定のトルクで、実験により予め求めておいたトルクである。
次に、一対のバスバー80,80の一端部同士を重合してボルトにより予め連結し、一体となったバスバー対の各他端部をレーザー溶着装置により各単電池77…の正極端子77aおよび負極端子77bにそれぞれレーザー溶着する。
以上で、組電池23の組み立てを終了し、
図7に示す組電池23が完成する。完成した組電池23は、組電池としての性能が適正か否かの確認検査が行われ、検査の結果、不適と判定された組電池23は原因を特定して再調整または廃棄される。
【0054】
<単電池77の保守方法>
次に、組電池23の保守方法について説明する。
まず、使用中の組電池23または保守対象の組電池23について、組電池23内の複数のセンサーで検出された温度,電圧および充放電状態を監視し、組電池23内の劣化または故障している単電池77を特定する。
単電池77の劣化または故障が特定された場合は、次の手順により単電池モジュール単位(単電池77および間隔調整体79)で新しいものに交換される。
劣化または故障が特定された不良の単電池モジュールとその隣の単電池モジュールとの単電池77同士を連結するバスバー対のボルトを外し、さらに保持部材75のボルト87…を外すことにより、不良の単電池モジュールだけを組電池23から取り外すことができる。
【0055】
なお、取り外した不良の単電池モジュールは、間隔調整体79と単電池77との間に部分的に充填された緩衝剤107を剥離した後、単電池77を間隔調整体79に対し、Z方向の軸回りに回動させた後、さらにX方向の軸回りに回動させて間隔調整体79から離脱させる。この際、間隔調整体79の円弧状切欠部91bにより、バスバー80が溶着された状態でも、間隔調整体79の内周面に単電池77が干渉することなく単電池77を取り外すことができる。この結果、単電池77を破壊して内部の電解質を放出することなく、安全に単電池77と間隔調整体79を分離することができる。なお、分離された間隔調整体79および単電池77は、適宜の方法で安全にリサイクルされる。
【0056】
次に、新しい単電池77と該単電池77の厚さに対応して厚さ調整された間隔調整体79とからなる新しい単電池モジュールが用意される。この新しい単電池モジュールには、各単電池77の正極端子77aおよび負極端子77bにそれぞれバスバー80の端部が単電池77の端面を基準として位置決めされた位置にレーザー溶着されている。
次に、不良の電池モジュールが取り付けられていた組電池23の位置に新しい単電池モジュールを位置させ、保持部材であるボルトを貫通させて適宜な圧縮力で組電池23を組み付け、最後にバスバー80の端部同士をボルトにて連結して単電池77の交換が完了する。
【0057】
<組電池23および導風カバー31Lの組み付け手順>
次に、組電池23および導風カバー31Lの組み付け手順について説明する。
まず、導風カバー31Lの側面部49T,49Nの切欠き部から組電池23の各端板85,85を外部に露出させた状態で側面部49T,49Nを組電池23の冷却板71に当接させる。このとき、ファン67および電動モータ69を側面部49T,49Nに組み付ける。
次に、側面部49T,49Nに組電池23の各端板85,85を含む両端部分を除いた組電池23の表面部分を覆うように導風カバー31Lの上面部41,下面部43,後面部45,前面部47をねじ部材65で固定する。
なお、導風カバー31Lの下面部43の組付けに際しては、組電池23を組付ける際に、弾性部材39に穿設された貫通孔39aにボルト87を予め挿通させて組電池23のX方向中央に位置させ、導風カバー31Lの下面部43に穿設された貫通孔43aから弾性部材39を挿通して下面部43が組付けられる(
図14参照)。
次に組電池23の両端の端板85に固定された各ボルト85aに弾性部材27をそれぞれ挿通する。弾性部材27は、同軸に配置された金属性の外筒と内筒との間隙にゴム部材またはその他の樹脂材からなる弾性材料が結着された構造によって構成されている。
【0058】
次に、中央フレーム7aに固定された一対の支持ブラケット25,25におけるUの字状の凹部113(
図4参照)に前記弾性部材27の外筒部分を嵌合するように、ボルト85aに対する弾性部材27の軸方向の相対位置を調整したのち、各ボルト85aにナット115(
図4参照)をそれぞれ螺着する。ナット115を螺着するボルト85aの雄ねじ部は、ボルト85aに対する弾性部材27の軸方向の相対位置を任意に調整できるように軸方向に長目に刻設されている。ナット115はダブルナット構造とし、螺着したナットが緩まないようにしている。
【0059】
<組電池23の車両1への組み付け手順>
次に、組電池23の底面側に組み付けていた弾性部材39の凹部39bを、中央フレーム7aに固定された支持板37の先端部に設けられた円錐台状の凸部37a(
図14参照)に嵌合すると共に各支持ブラケット25,25の凹部113に、前記組電池23等の組み付けで位置調整された各弾性部材27を上方から嵌合する。
【0060】
次に、各支持ブラケット25,25の凹部113に嵌合した各弾性部材27を上方から押圧するように押圧部材(図示せず)をそれぞれ押し当ててねじ部材により凹部113に固定する。
なお、ねじ部材により固定される押圧部材に替えて、車両側と組電池側にそれぞれに係合部(図示せず)と被係合部(図示せず)を設けることにより固定する方法であってもよい。
【0061】
なお、弾性部材27の軸方向の位置調整のために長目に刻設したボルト85aの雄ねじ部と、支持ブラケット25の位置調整のためにその基部25aに長目に穿設したねじ部材29の挿通用の長孔とは、何れの構成も組電池23の幅寸法の製造上のばらつきに対応するためのものであるが、何れか一方の構成を止めて通常の長さのボルト雄ねじ部または円形状のねじ部材挿通用孔にしてもよい。
なお、組電池23側の接続端子(図示せず)と車両1側の接続端子(図示せず)とが設けられ、組電池23が車両1に組付けられた状態で両接続端子同士が互いに電気的に接続されるように両接続端子がそれぞれ配置されており、組電池23を車両1に組み付けると同時に該電気的接続が完了するように構成されている。
【0062】
以上の作業により、導風カバー31L内に組み込まれた組電池23の中央フレーム7aへの固定作業が終了する。
同様の方法により、他の3個の組電池23の中央フレーム7aへの固定作業も行うことで、全ての組電池23の中央フレーム7aへの固定作業が終了する。このようにして、各組電池23…が車両1に搭載されることで、各組電池23…を車両1の電源として有効に活用することができる。
【0063】
上述したような本発明の実施の形態によれば、単電池77と間隔調整体79とが冷却板71の挟持面71aで挟持され、かつ、単電池77と間隔調整体79との圧縮剛性は単電池77より間隔調整体79の方が高くなるように構成されているので、各間隔調整体79…の厚さを適宜設定することで、ボルト87とナット89とで強固に締結しても単電池77を損傷する虞がなく最適な圧縮力で各単電池77…を挟持することができる。また、強固に締結することで単電池77と冷却板71との熱伝導を良好にすると共に、各単電池77…を強固に保持することができ、振動によって組電池23に曲げ荷重が加わっても組電池23が撓みにくくなる。また、組電池23に圧縮荷重が発生して単電池モジュールに過度の圧縮荷重が付与されても単電池モジュールの構成部材のうちの一方である間隔調整体79が圧縮荷重の殆どを受けることになり、他方の単電池77は過度の圧縮荷重を受けることが回避される。
また、間隔調整体79は、傾斜した分割面81で分割接合されているので、分割した一対の間隔調整体片79a,79b同士を分割面81の傾斜した方向に沿って相対的に適宜変位させることで、間隔調整体79の厚さを各単電池77ごとの厚さに対応した厚さにすることができる。
【0064】
また、間隔調整体79は、単電池77の外周を囲繞する枠状に形成されているので、間隔調整体79によって単電池77を保護することができる。また、単電池77から冷却板71の挟持面71aに伝播した熱を組電池23の外部に放出する冷却板71の放熱部71bを、冷却板71で挟持した間隔調整体79の外周より外方に位置付けたので、放熱部71bによって間隔調整体79および単電池77を保護することができる。
【0065】
また、放熱部71bの各フィン83…が薄肉に形成されていることにより放熱部71bは挟持面71aより衝撃強度が低くなっているので、組電池23に外部から衝撃力が加わった場合は、放熱部71bのフィン83…が塑性変形して衝撃を吸収することで単電池77が保護される。
また、冷却板71の挟持面71aに垂直な方向の放熱部71bのX方向幅寸法T1を、同方向の挟持面71aのX方向幅寸法T2より大きくしたので、フィン83を可及的多く形成して放熱部71bの面積を広くすることができ、冷却性能を十分確保することができる。
【0066】
また、車両1の中央フレーム7aに対する支持ブラケット25の固定位置は任意に調整可能に構成されているので、一対の支持ブラケット25,25間に架設される組電池23の幅寸法の製造上のばらつきに対応することができる。
また、端板85に設けられたボルト85aに対する弾性部材27の軸方向の相対位置は任意に調整可能に構成されているので、一対の支持ブラケット25,25間に弾性部材27を介して架設される組電池23の幅寸法の製造上のばらつきに対応することができる。
【0067】
また、一対の支持ブラケット25,25は、その水平方向の衝撃強度が鉛直方向の衝撃強度より低くなるように構成されているので、車両1の走行中に組電池23または支持ブラケット25に障害物が衝突して衝撃荷重が加わった場合でも、一対の支持ブラケット25,25が水平方向に容易に塑性変形するため組電池23への損傷を低減することができる。
【0068】
また、一対の支持ブラケット25,25に対する組電池23の両端部の各固定位置は、それらの固定位置を通る仮想直線N1上に、組電池23を含む導風カバー31Lの重心位置G11が近接するように位置付けられる一方、組電池23の底面部の固定位置は、前記重心位置G11を通る仮想直線N2上に近接するように位置付けられるので、弾性部材27,37を介して組電池23が支持されることと相俟って、車両1の走行時の路面振動が組電池23に伝播するのを好適に抑制することができる。また、組電池23を含む他の導風カバー31R,33L,33Rの各重心位置G12,G13,G14についても同様に位置付けられているので、同様の振動抑制効果を奏することができる。
【0069】
さらにまた、平面視において、乗車領域13を除く各仮想直線L1,L2,M1,M2上に、組電池23を含む各導風カバー31L,31R,33L,33Rの重心位置G11,G12,G13,G14がそれぞれ近接するように各導風カバー31L,31R,33L,33Rが位置付けられるので、弾性部材27,37を介して各組電池23…を支持したことと相俟って、重量物である組電池23をダイナミックダンパー(制振機構)として機能させて走行時の路面振動による車両1の振動を好適に抑制することができる。
【0070】
次に、本発明の2つの参考例および3つの変形例について以下に述べる。なお、これらの参考例および変形例の説明で参照する図において、上述した実施の形態で説明したものと同一または同等の部材等については、同一符号を付し詳細な説明は省略する。これらの参考例および変形例においても、上述した本発明の実施の形態と同一または同等の構成については、同様の作用・効果を奏することができるのは言うまでもない。
(第1の参考例)
上述した実施の形態では、正極端子77aと負極端子77bとが上部に設けられた単電池77を組み込んだ組電池23の例を示したが、
図15および
図16に示す第1の参考例のように、正極端子117aと負極端子117bとが両側部にそれぞれ設けられた単電池177を組み込んだ組電池123でもよい。
【0071】
この参考例の単電池177は、前記実施の形態の単電池77より扁平な矩形状に形成されており、正極端子117aと負極端子117bとは、矩形状の両側部の上下方向中間部に該両側部から外側方に向かって突出するようにそれぞれ設けられている。単電池177の外周を囲繞するように配置される間隔調整体片119a,119bの両側部には、正極端子117aと負極端子117bとの位置に対応して切欠部121,122がそれぞれ形成されている。間隔調整体片119a,119bの分割面81が傾斜していることで肉厚が薄くなった間隔調整体片119a,119bの各側部の一方の切欠部121は部材が完全に除去され、他方の切欠部122は凹状に切り欠かれている。
【0072】
単電池177を挟持する冷却板125の方向Y1またはY2側の何れか一方の側部にも単電池177の正極端子117aまたは負極端子117bの位置に対応して凹状に切り欠かれた矩形状切欠部125aが形成されている。冷却板125の外周に沿うように外周縁の近傍には、ボルト87を挿通する貫通孔125bが6個穿設されている。該貫通孔125bは、ボルト87の直径と略同一の円形状に形成されている。
【0073】
この参考例の単電池177は、前記実施の形態の単電池77に比べて、扁平な分、1個当たりの電池の容量も少ないため、前記実施の形態の単電池77と同等の電池の容量を得るためには、前記実施の形態の単電池77の個数より多い単電池を必要とする。そのため、単電池177と冷却板125とを積層したときに積層方向の寸法が大きくならないように間隔調整体片119a,119bおよび冷却板125の厚さを薄くしている。その結果、前記実施の形態における冷却板71に穿設された通気孔82bに相当する通気孔は、この参考例の冷却板125には設けられていない。この参考例の単電池177は、扁平な分、冷却板125に熱が伝播し易い上、組み込まれる冷却板125の個数が多いので放熱性が比較的良いこともあって、冷却板125に通気孔を設けなくても支障はない。
【0074】
(第1変形例)
上述した実施の形態および第1の参考例では、単電池の外周全域を囲繞する略矩形枠状に形成された間隔調整体の例を示したが、
図17に示す第1変形例のように、車両1の走行時に水平方向より上下方向の衝撃荷重を受ける頻度が高いことに配慮して、単電池77の外周全域ではなく外周の両側のみを囲繞する間隔調整体127であってもよい。この変形例の間隔調整体127は、前記実施の形態における間隔調整体79の両間隔調整体片79a,79bの両側部を長孔90a近傍の部位で切断して残った両端部をそれぞれ第1間隔調整体片129aと第2間隔調整体片129bとして構成したものである。
【0075】
第1間隔調整体片129aは、厚さの薄い薄型第1間隔調整体片131aと厚さの厚い厚型第1間隔調整体片131bとで構成されている。第2間隔調整体片129bは、厚型第1間隔調整体片131bと接合される厚さの薄い薄型第2間隔調整体片133aと、薄型第1間隔調整体片131aと接合される厚さの厚い厚型第2間隔調整体片133bとで構成されている。厚型第1間隔調整体片131bと厚型第2間隔調整体片133b同士および薄型第1間隔調整体片131aと薄型第2間隔調整体片133a同士は、それぞれ同一の形状に形成されている。厚型第1間隔調整体片131bと薄型第2間隔調整体片133aとの接合面(分割面81)および薄型第1間隔調整体片131aと厚型第2間隔調整体片133bとの接合面(分割面81)は、Z方向に平行な面であり、間隔調整体127が冷却板71の挟持面71aで挟持されるときの間隔調整体127の当接面に対してそれぞれ傾斜している。
【0076】
この変形例の間隔調整体127は、冷却板71の挟持面71aで挟持される単電池77の一対の面の平行度は、不良品とはならない程度に具備しているものの単電池77の厚さが一定でないため、挟持される単電池77の一対の面が平行でない場合でも単電池77を最適な状態で挟持することができる。すなわち、この変形例の間隔調整体127は、互いに接合される厚型第1間隔調整体片131bと薄型第2間隔調整体片133aとのY方向相対位置および薄型第1間隔調整体片131aと厚型第2間隔調整体片133bとのY方向相対位置を単電池77の不均一な厚さに応じてそれぞれ個別に調整することで、厚さが一定でない単電池77に対しても間隔調整体127の厚さを最適な厚さに設定することができる。この結果、単電池77を最適な状態で挟持することができる。
また、この変形例の間隔調整体127は、単電池77の両側のみを囲繞するものであるので、各単電池77の正極端子77aと負極端子77bとを接続するバスバー80と干渉することがなく、材料を節約して小型化、軽量化することができる。
【0077】
(第2変形例)
上述した第1変形例では、厚型第1間隔調整体片131bと薄型第2間隔調整体片133aとの接合面(分割面81)および薄型第1間隔調整体片131aと厚型第2間隔調整体片133bとの接合面(分割面81)は、Z方向に平行な面で傾斜している間隔調整体の例を示したが、
図18に示す第2変形例のように、前記接合面(分割面81)がY方向に平行な面で傾斜している間隔調整体であってもよい。この変形例の間隔調整体135は、同一の形状をした4個の間隔調整体片137を組み合わせたものであり、各間隔調整体片137…はY方向から見て、Z方向に長い略台形状に形成されている。
【0078】
方向Y1側と方向Y2側とのそれぞれ一対の間隔調整体片137,137の傾斜した分割面81同士を上下逆向きに対向させ接合させることで、接合面(分割面81)は、冷却板71の挟持面71aで挟持されるときの間隔調整体135の当接面に対して傾斜するY方向に平行な面となる。この変形例も前記第1変形例と同様に、方向Y1側と方向Y2側との一対の間隔調整体片137,137同士のZ方向相対位置を単電池77の不均一な厚さに応じてそれぞれ調整することで、間隔調整体135の厚さを単電池77にとって最適な厚さに設定することができる。この結果、単電池77を最適な状態で挟持することができる。
【0079】
(第2の参考例)
上述した実施の形態および第1,第2の各変形例では、Y方向およびZ方向に平行で、かつ、Z方向に長い放熱面を有する複数のフィン83…が形成された冷却板71の例を示したが、
図19に示す第2の参考例のように、X方向およびY方向に平行な放熱面を有する複数のフィン139…が形成された冷却板141であってもよい。この参考例の冷却板141は、素材の製造段階ではZ方向の押し出し成型により製造され、複数のフィン139…はスカイブ加工により形成される。なお、複数のフィン139…を、さらにZ方向に切削加工することで、ピン状のフィンが形成される。ピン状のフィンの場合は、フィンに導入される冷却風の方向によって冷却性能が大きく変化することがない。
この参考例の冷却板141によれば、車両1の走行時に走行風が流れる方向に対して複数のフィン139…の放熱面が略平行になるように組電池を車両1に配置することが容易になるので、そうすることで、電動ファン等で各フィン139…に冷却風を導くことなく走行風を各フィン139…の放熱面に簡単に導入することができる。
【0080】
(第3変形例)
上述した実施の形態、第1,第2の各参考例および第1,第2の各変形例では、各冷却板のY方向長さを同一にした例を示したが、
図20に示す第3変形例の冷却板143のように、各冷却板143…の放熱部71bの先端をなぞった稜線が略円弧状になるように、冷却板143のY方向寸法がX方向中央部に位置する冷却板143ほど大きくなるように放熱部71bを形成してもよい。そうすることで、充放電時に最も高温になり、熱が滞留し易い組電池のX方向中央部が効果的に冷却される。
【0081】
さらに、
図20に示すように、各冷却板143…のY方向寸法がZ方向中央部ほど大きくなるように各冷却板143…の放熱部71bの側端を略円弧状に形成してもよい。そうすることで、充放電時に最も高温になり、熱が滞留し易い各単電池77…のZ方向中央部が効果的に冷却される。なお、全ての冷却板143による略円弧状の稜線の形成と各冷却板143側端の略円弧状の形成とは、充放電時における組電池23の温度状況に応じて何れか一方の形成のみを採用してもよい。
【0082】
上述した本発明の実施の形態、第1,第2の各参考例および第1ないし3の各変形例は本発明を説明するための一例であり、本発明は、前記の実施の形態および各変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲と明細書との全体から読み取れる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更後の組電池等もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
例えば、上述した実施の形態、各参考例および各変形例においては、組電池を車両1に搭載した例を示したが、車両としては、四輪車以外に、前側または後側の何れか一方側が1輪で他方側が2輪の三輪車であってもよい。
【0083】
また、上述した実施の形態、各参考例および各変形例においては、単電池としてリチウムイオン電池の例を示したが、これ以外にニッケル水素電池その他の二次電池あるいはキャパシタ等の蓄電素子を単電池とした組電池であってもよい。
また、上述した実施の形態、各参考例および各変形例においては、単電池を1個だけ冷却板間に挟持するようにしたが、前記第1の参考例の単電池177のような扁平な単電池を複数個(例えば2ないし3個)重ねてそれら単電池群の外周を間隔調整体で囲繞して構成された単電池モジュールを両側から冷却板で挟持し該単電池モジュールと冷却板とを積層するようにして組電池を構成してもよい。
【0084】
さらにまた、上述した実施の形態、各参考例および各変形例においては、傾斜した分割面で分割された間隔調整体の間隔調整体片同士を相対変位させて、間隔調整体の厚さを単電池の厚さに対応した所定の厚さにする例を示したが、これに替えて、傾斜することなく互いに平行な表面と裏面とを有し厚さの異なる複数の間隔調整体片を適宜選定して積層することで間隔調整体の厚さを前記所定の厚さにするようにしてもよい。なお、この代替例では、前記所定の厚さに合致させるために積層する間隔調整体片の個数が多くなる可能性があるが、上述した実施の形態、各参考例および各変形例のように、傾斜した分割面で分割された間隔調整体片同士を相対変位させて前記所定の厚さにする場合は、そのような虞はない。