(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187987
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ソフトテニスボール製造方法
(51)【国際特許分類】
A63B 45/00 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
A63B45/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-196843(P2015-196843)
(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公開番号】特開2017-64310(P2017-64310A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】513137994
【氏名又は名称】福人化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】張振彬
【審査官】
吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−100028(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0064540(US,A1)
【文献】
特開昭61−052880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成型方式で二つの半球部材を製造し、該二つの半球部材のうちの一つの半球部材にバルブが設けられる、半球部材射出ステップと、
前記二つの半球部材の縁部に接着剤を付ける、膠付けステップと、
前記二つの半球部材をそれぞれ成形型における上型の型穴および下型の型穴に設置し、前記上型と下型との周縁面に気密リングを設け、該気密リングで囲まれた範囲において、前記上型と下型との間に空間が形成され、まだ合着されていない前記二つの半球部材の内部が該空間に連通され、また、該空間まで延在するノズルを有する充気パイプが設けられる、封止ステップと、
気体を前記成形型の上型と下型との間の空間に充填すると共に、既定の気圧になると、前記上型の型穴に設置される半球部材と下型の型穴に設置される半球部材とがソフトテニスボールの雛形になるように、前記上型の型穴に設置される半球部材と下型の型穴に設置される半球部材との縁部を互いに合着させるために、該上型と下型とを緊合させる、充気結合ステップと、
前記ソフトテニスボールの雛形を加熱型に配置し、前記ソフトテニスボールの雛形を熟成させ、ソフトテニスボールを製造する、造形ステップとを有することを特徴とするソフトテニスボール製造方法。
【請求項2】
前記半球部材射出ステップと、膠付けステップとの間に、さらに半球部材縁部仕上げステップを有し、前記半球部材縁部仕上げステップは、半球部材研磨機を利用して半球部材縁部のバリを除去して半球部材の縁部を仕上げすることを特徴とする請求項1に記載のソフトテニスボール製造方法。
【請求項3】
前記半球部材射出ステップにおいて、該バルブが設けられる半球部材と、該バルブが設けられる半球部材のバルブとは、同時に射出成型され
ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のソフトテニスボール製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空かつ軟質の球体の製造方法に係り、特にソフトテニスボールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトテニスボールは、内部に充填される空気により、形状を維持させるものであるので、周縁部に充気バルブが設けられる。内部の気体が不足する場合、気体を注入することができるが、製造段階で球体の形状が完全球体でない場合、気体を注入しても、完全球体の形状を保つことができず、該ソフトテニスボールを打つ時に、飛ぶ方向を好適にコントロールすることができなくなってしまう。
【0003】
前記問題を解決するために、例えば特許文献1に示すように、以下のステップを有する従来のソフトテニスボール製造方法が案出される。
半球部材成形ステップ:ゴム材料を混合後、プレス成形機により2種類の半球部材をプレス成形させ、各半球部材は共に半球状を呈するが、その中の一種類の半球部材にバルブが形成され、もう一種類の半球部材にバルブが形成されていない。
半球部材縁部仕上げステップ:半球部材をプレス成形させる時、余分の材料により、縁部に形成された突出部による不整形状を、半球部材研磨機による研磨でスムーズにする。
膠付けステップ:前記二種類の半球部材の縁部に接着剤を施す。
発泡剤配置ステップ:前記異なる形態を有する二種類の半球部材をそれぞれ成形型に配置し、二種類の半球部材のうちの一種類の半球部材の内部に、発泡剤を人工的に配置する。
接合ステップ:二組の成形型を緊合させ、前記異なる形態を有する二種類の半球部材を合着させ、合着させられる二つの半球部材の内部に略気密空間が形成され、該発泡剤は前記気密空間に位置する。
造形ステップ:該略気密空間に気体を充填するように、加熱プロセスを行い、前記発泡剤で二酸化炭素および窒素などの気体を発生させると同時に、前記接着剤で合着する二つの半球部材を熟成させる。内部に充填された気体により、該二つの半球部材からなるソフトテニスボールの形状を維持することができるので、飛ぶ方向を好適にコントロールすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5369254号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のソフトテニスボールの製造方法には、以下のような問題があり、ソフトテニスボールを大量生産することができるが、理想的にソフトテニスボールを完全球体の形状にすることができなかった。
1.該従来の製造方法では、プレス成形機によりプレス成形させられる半球部材を製造する時、余分なコム材料が溢出し、半球部材の縁部に不規則的な突出部が形成されるので、該半球部材の縁部を仕上げする工程により、作業時間が増大してしまうと共に、バリが発生しやすくなることから、ソフトテニスボールの品質が低下してしまう。
2.該従来の製造方法では、気体を発生させる発泡剤は人工的に配置されるので、人的コストが増大してしまう。また、発泡剤が気体を徐々に発生すると同時に、該二つの半球部材の間の接着剤がすでにその接着力を発揮し始めているので、リアルタイムに該ソフトテニスボールの内部を充分に充気することができず、形状を維持する効果が限られていった。
【0006】
そこで、出願されたのが本発明であって、前記従来の方法を改善するための、半球部材射出ステップと、膠付けステップと、封止ステップと、充気結合ステップと、造形ステップとを有するものである。
該半球部材射出ステップにおいては、ゴム材料を射出成形機により直接に二種類の半球部材を有効に成形させることができるので、生産時間を短縮すると共に、成形型で精密に半球部材のサイズおよび品質をコントロールすることができる。よって、ソフトテニスボールに対する、品質の高度に対する異なる要求に応じて、半球部材縁部仕上げステップを行うか否かを選択することができる。また、半球部材縁部仕上げステップを行うと選択しても、バリ除去のみを行い、縁部における不規則形状の突出部を除去しなくても良い。
【0007】
また、封止ステップにおいて、上下の成形型の間に封止リングが設置されると共に、上下の成形型の間に連通される充気パイプが設けられる。さらに、このステップにおいて、該二つの半球部材にすでに接着剤が付けられている状態であるが、該二つの半球部材はいまだに気密に合着されていない。この状態で瞬間充気することにより、該二つの半球部材の間の空間および該二つの成形型の間に気体を充満させるので、成形型が緊合する時、該二つの半球部材が気密に合着され、該二つの半球部材の間の空間に圧縮された気体は、該二つの半球部材が合着してなるソフトテニスボールの形状を作り上げる。よって、迅速かつ簡単に、高品質のソフトテニスボールを製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1の発明は、射出成型方式で二つの半球部材を製造し、該二つの半球部材のうちの一つの半球部材にバルブが設けられる、半球部材射出ステップと、前記二つの半球部材の縁部に接着剤を付ける、膠付けステップと、前記二つの半球部材をそれぞれ成形型における上型の型穴および下型の型穴に設置し、前記上型と下型との周縁面に気密リングを設け、該気密リングで囲まれた範囲において、前記上型と下型との間に空間が形成され、まだ合着されていない前記二つの半球部材の内部が該空間に連通され、また、該空間まで延在するノズルを有する充気パイプが設けられる、封止ステップと、気体を前記成形型の上型と下型との間の空間に充填すると共に、既定の気圧になると、前記上型の型穴に設置される半球部材と下型の型穴に設置される半球部材とがソフトテニスボールの雛形になるように、前記上型の型穴に設置される半球部材と下型の型穴に設置される半球部材との縁部を互いに合着させるために、該上型と下型とを緊合させる、充気結合ステップと、前記ソフトテニスボールの雛形を加熱型に配置し、前記ソフトテニスボールの雛形を熟成させ、ソフトテニスボールを製造する、造形ステップとを有することを特徴とするソフトテニスボール製造方法である。
【0009】
本願の請求項2の発明は、前記半球部材射出ステップと、膠付けステップとの間に、さらに半球部材縁部仕上げステップを有し、前記半球部材縁部仕上げステップは、半球部材研磨機を利用して半球部材縁部のバリを除去して半球部材の縁部を仕上げすることを特徴とする請求項1に記載のソフトテニスボール製造方法である。
【0010】
本願の請求項3の発明は、前記半球部材射出ステップにおいて、該バルブが設けられる半球部材と、該バルブが設けられる半球部材のバルブとは、同時に射出成型され
ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のソフトテニスボール製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るソフトテニスボールの製造方法は、上述した工程を有するので、以下の効果を発揮することができる。
1.射出成形機で半球部材を射出することにより、生産時間を短縮することができるだけでなく、半球部材の縁部に不規則形状の突出部を形成しない。これにより、半球部材縁部仕上げのプロセスをより素早く完成させることができると共に、ソフトテニスボールの品質を向上させることができる。
2.封止ステップおよび充気結合ステップの連携により、発泡剤の人工的な配置作業が不要となり、また、瞬間充気の方式で、二つの半球部材が完全に合着していない段階では、該二つの半球部材の間の空間が気体で満たされているので、ソフトテニスボールの完全球体形状をより良く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る第一製造方法を示す流れ図である。
【
図2】本発明に係る第二製造方法を示す流れ図である。
【
図3】本発明に係る製造方法における封止ステップで用いられる成形型を示す平面図である。
【
図4】本発明に係る製造方法において、封止ステップが完成された状態を示す側面断面図である。
【
図5】本発明に係る製造方法における、充気ステップを示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明に係るソフトテニスボール製造方法は、半球部材射出ステップ、膠付けステップ、封止ステップ、充気結合ステップ、および造形ステップを有する。また、前記半球部材射出ステップと、膠付けステップとの間に、ソフトテニスボールの品質の高度に対する要求に応じて、半球部材縁部仕上げステップを行うか否かを選択することができる。以下、
図2に示すように、半球部材縁部仕上げステップをおこなう例について説明する。
【0015】
半球部材射出ステップ:本発明係るソフトテニスボールは同じく二つの半球部材からなるものである。該二つの半球部材は共に半球状を呈するが、その中の一つの半球部材にバルブが形成され、もう一つの半球部材にバルブが形成されていない。
本発明は、ゴム材料を射出成形機により射出成形することで直接二種類の半球部材を有効に成形させる。そのうち、バルブが形成される半球部材のバルブは、該半球部材と同時に射出成型されてもよいが、該半球部材が成形された後、該バルブを該半球部材に設けるもう一つのステップを行ってもよい。本発明の半球部材は射出成型されてなるものであるので、高品質の半球部材の製造に繋がる。
【0016】
半球部材縁部仕上げステップ:このステップは、半球部材の品質をさらに向上させるためのものである。半球部材研磨機を利用し、半球部材の縁部を仕上げすることにより、半球部材のバリを除去することができる。
【0017】
膠付けステップ:前記異なる形態を有する二種類の半球部材の縁部に膠付け工程を行い、互いに合着するための該二つの半球部材の縁部に接着剤を施す。
【0018】
封止ステップ:このステップでは、成形型を利用し、前記二つの半球部材をほぼ気密な空間に配置する。
図3および
図4に示すように、
図4に示される半球部材10および半球部材20は成形型30に配置され、該成形型30は上型31および下型32からなる。半球部材10は上型31の型穴311に配置されると共に、半球部材20は下型32の型穴321に配置される。また、該半球部材10を配置するための上型31に、該半球部材10を吸引するための保持手段を設置してもよい。これにより、上型31が下型32に覆設される時、該半球部材10は先に該上型31の型穴311に位置するように保持される。
また、本発明において用いられる成形型は公知技術である。故に、該半球部材10を吸引するための前記保持手段、前記上型31と下型32との連結関係ならびにその作動方法は、単純化した図面で示すか、図示しないものとする。
前記上型31と下型32との周縁面に気密リング33が設けられる。該気密リング33で囲まれた範囲において、前記上型31と下型32との間にほぼ気密の空間34が形成される。この際、まだ合着されていない半球部材10および半球部材20の内部は該空間34に連通される。また、該空間34まで延在する充気パイプ35が設けられる。該充気パイプ35のノズル351の形状が、該気密リング34における圧縮されていない状態での厚さより小さな高さを有する扁平状であることが好ましい。
【0019】
充気結合ステップ:前記封止ステップが完成した後、
図4に示すように、気体を該充気パイプ35のノズル351から該上型31と下型32との間の空間34に充填し、気圧が
55158.08paになるまで、該空間34を気体で満たせる。さらに、該上型31と下型32とを緊合させる。
図5に示すように、この際、該気密リング34が徐々に圧縮され、該空間34を満たす気体はやがて該半球部材10および半球部材20の内部空間を満たすようにする。該半球部材10および半球部材20が互いに合着され、ソフトテニスボールの雛形になるまでには、内部空間に高圧気体が充満している。
【0020】
造形ステップ:このステップでは、内部を気体で満たされているソフトテニスボールの雛形をほかの加熱型に配置する。該ソフトテニスボールの雛形を該加熱型に配置する時、該元の半球部材10と半球部材20都の間の合着縁部を、該加熱型の上型と下型との接触面に合致させなくてもよい。該ソフトテニスボールの雛形を熟成させる時、同時に該合着縁部を溶かし、ソフトテニスボールの厚さを一致させることができる。
【0021】
本発明は、射出成型方式で半球部材を製造するので、迅速に必要な半球部材を製造することができるのみならず、仕上げの工程を短縮させることもできる。また、二つの半球部材を合着させる時、瞬間で充気することにより、器械を用い、二つの半球部材の間の空間を空気で満たせるので、発泡剤の人工的な配置作業を不要にすることができる。さらに、前記瞬間で充気する手法によれば、該二つの半球部材が完全に合着される前に、内部空間に空気が充満しているので、該半球部材を膨張させてから合着させることから、ソフトテニスボールを完全球体の形状にすることができる。
【0022】
よって、本発明に係る製造方法は、生産時間の低減、工程の短縮、および高品質のソフトテニスボールの製造に寄与することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 半球部材
20 半球部材
30 成形型
31 上型
311 型穴
32 下型
321 型穴
33 気密リング
34 空間
35 充気パイプ
351 ノズル